説明

グリセリンを用いてアルキルエステルを製造する方法

油源からバイオディーゼルのようなアルキルエステル又は特定的にはメチルエステルを製造する方法が記載されている。該方法は、油源の遊離脂肪酸をモノ、ジ及びトリグリセリドの混合物に転換し、そして引き続いてこれらの新たに形成されたグリセリド並びにもともと存在するグリセリドを脂肪酸アルキルエステルにエステル交換することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
バイオディーゼルのようなアルキルエステル又は特定的にメチルエステルは、慣用の石油系ディーゼルのクリーン燃焼性の代替品である。バイオディーゼルは、新しい又は使用済みの植物油及び動物脂のような天然の再生可能源から製造され得る。バイオディーゼルは脂肪酸アルキルエステル(典型的にはC16からC18である)であり、そして一般に、石油系ディーゼルの直接的代替品として燃焼−点火機関において燃焼され得る。バイオディーゼルが再生可能源から生成され得るという利益を与えることは別として、バイオディーゼルはまた、石油系ディーゼルの燃焼と比較して、その燃焼からの減少放出物という追加的利益を与える。
【0002】
アルキルエステル特にバイオディーゼルは、大豆又はナタネの油から誘導され得る。これらの源からの粗製植物油は、該油がバイオディーゼルとして使用可能であり得る前に、濾過され、精製され及びいくつかの加工工程に付され得る。加えて、バイオディーゼルは、様々な品位の植物油から誘導され得る。かかる品位は、バージン油、黄色グリース、食品加工からの使用済み油、又は食用油精製過程からの副生成物(ソープストックのような)を包含する。これらの源の各々は、バイオディーゼルに加工され得るところの様々な量の遊離脂肪酸及び/又はグリセリド(すなわち、モノ、ジ又はトリグリセリド)を有する。
【0003】
これらの植物油源のうちで、ソープストックは、一般に、最もコスト効率的な源と考えられる。ソープストックは、大豆又はナタネから抽出された粗製油から誘導される。これらの種子の粗製油は、2つの成分に分離され得る。すなわち、精製油(次いで、更に加工されそして食用油に転換され得る)及びソープストック。ソープストックは、次いで、約70%の遊離脂肪酸を有する組成物をもたらすように硫酸で酸性にされ得、そして該組成物は更にバイオディーゼルに加工され得る。
【0004】
これらの様々な品位の植物油からの遊離脂肪酸を加工する一つの想定方法は、バイオディーゼルとしての使用のための脂肪酸アルキルエステルを生成させるために、アルカリの存在下での遊離脂肪酸の直接的エステル交換である。しかしながら、かかる手法は遊離脂肪酸をセッケンとして沈殿させ、しかしてこの想定方法に追加の回収工程を引き起こす。
【0005】
沈殿問題を回避するために、遊離脂肪酸を加工するための二工程方法が提案されている。この方法は欧州特許第07,708,813号明細書及び国際公開第02/28811号パンフレットに見出され得、そして一般に(1)硫酸の存在下でのメタノールでもっての遊離脂肪酸の酸触媒エステル化及び(2)酸触媒の中和後の慣用の塩基触媒エステル交換の工程から成る。これらの工程は、次の反応スキームにより記載され得る。
【化1】

ここで、各Rは同じ又は異なり得、そして植物又は動物油源に典型的に存在する脂肪族鎖典型的にはC8からC22であり得る。
【0006】
エステル交換は酸及び塩基の両方で触媒されるとしても、酸触媒の中和が必要であり、何故なら酸触媒エステル交換は、典型的には、比較可能な条件下で塩基触媒エステル交換より遅い速度論を示すからである。欧州特許第07,708,813号明細書及び国際公開第02/28811号パンフレットに開示されているような二工程方法の不利は、中和からの追加の塩廃物、長いサイクル時間及び残留遊離脂肪酸の厄介な回収スキーム、並びに回収及び/又は廃物処分の理由のために水からメタノールを分離する必要性である。
【0007】
発明の簡単な要約
それ故、本発明の目的は、植物又は動物油源からの遊離脂肪酸をアルキルエステルに加工する方法において、塩及び水性廃物を減らすか又は排除する方法を提供することである。
【0008】
本発明の更なる目的は、植物又は動物油源からの遊離脂肪酸をアルキルエステルに加工する方法において、反応水からアルキルアルコール(たとえばメタノール)を分離する必要性を減じるか又は排除する方法を提供することである。
【0009】
本発明の更なる目的は、植物又は動物油源からの遊離脂肪酸をアルキルエステル特にバイオディーゼルに加工する方法において、残留遊離脂肪酸の回収スキームを好都合に遂行するか又はかかる回収の必要性を排除する方法を提供することである。
【0010】
これらの及び他の利点は、最初に植物又は動物油源をグリセリン源に暴露して該油源の遊離脂肪酸分をグリセリドに転換し、そして第2工程においてこれらの新たに生成されたグリセリド並びにもともと存在するグリセリドをバイオディーゼルとしての使用のための脂肪酸アルキルエステルに転換することにより達成される。本発明の二工程方法は中和工程又はメタノールと水の分離を伴わず、かくして先行技術の方法を単純にする。本発明の方法は、一般に、下記において油源中にもともと存在するグリセリドがトリグリセリドにより代表される場合について記載されるが、しかし油源中にもともと存在するグリセリドはモノ、ジ及び/又はトリグリセリドであり得ることが理解される。
【化2】

ここで、各Rは同じ又は異なり得、そして植物又は動物油源に典型的に存在する脂肪族鎖典型的にはC8からC22であり得る。
【0011】
発明の詳細な説明
上記に記されたように、植物又は動物油源を加工する本発明の方法は、油源中にもともと存在するグリセリドがトリグリセリドにより代表される次の反応スキームにより表され得るが、しかし油源中にもともと存在するグリセリドはモノ、ジ及び/又はトリグリセリドであり得ることが理解される。
【化3】

ここで、各Rは同じ又は異なり得、そして植物又は動物油源に典型的に存在する脂肪族鎖典型的にはC8からC22であり得る。反応は典型的には図1に示されているような小規模回分システムにおいて、又は一層典型的には商業的適用のために図1に示されたシステムのスケールアップしたものにおいて行われ得る。図1のシステム8は1Lの樹脂製反応器10を含む。反応器10は、テフロン(登録商標)タービン掻き混ぜ機12、関連の温度制御器16及び加熱マントル17を備えたサーモカップル14、関連窒素ガス源20を備えた窒素スパージ管18、並びに凝縮器26を備えたディーンスタークトラップ24に取り付けられた充填還流カラム22(30cmの高さ及び2.5cmの直径)を備えていた。真空管路28が凝縮器26の上部に取り付けられ、また管路内アイストラップ32を経て真空ポンプ30に連結された。真空は、ソレノイド34で制御された。バブラー36も用いられ得る。本発明の方法は、化学過程において典型的に用いられる標準装置を用いて連続方式で行われ得る、ということも当業者は認識するであろう。
【0012】
遊離脂肪酸がグリセリドに転換される反応の第1工程は、約140℃から約245℃の間一層好ましくは約160℃と約200℃の間最も好ましくは約180℃の温度にて遂行され得る。第1工程は、更に、約760mmHgから約1mmHgの範囲の減圧にて、一定の窒素流下で、又は減圧及び一定の窒素流下の両方の併用にて遂行され得る。
【0013】
本発明は、植物油又は他の脂肪のメタノリシスから誘導された粗製グリセリン(又は油脂分解法から回収された)を用いる場合に特に有効であると分かった。メタノリシス過程から生成された粗製グリセリンは、おおよそ80〜85%のグリセリン、13〜18%のメタノール、約1〜2%の水、少量のモノ及びジグリセリド、並びに残留アルカリを含有する。しかしながら、本発明の方法は、USP品位のグリセリン又は精製グリセリンにも適用可能である。グリセリン源は、少なくとも0.3当量の濃度にて用いられ得る。
【0014】
粗製グリセリンの使用はプロセス副生成物を更なる精製なしに利用する機会を与え、また精製グリセリンの使用に対して酸性化ソープストックにおける酸転換の速度を高める。これは、粗製グリセリンが実質量のアルカリ触媒を含有するので予期されない。それ故、酸性化ソープストック及び粗製グリセリンを含有する混合物は中性に近くて約5.5のpHにあるのに対して、精製グリセリンとソープストックの混合物は約2.5〜3.5のpHを示す。「Advanced Organic Chemistry」,第4版,p.395,John Wiley & Sons,ニューヨーク,1992に報告されているように、エステル化反応は酸で触媒される。かくして、より高いpHにおける速度向上は予期されない。
【0015】
精製グリセリン(たとえばUSP品位)とソープストックの間の反応は、220〜245℃にておおよそ6時間で完了まで(0.5又はそれ以下の酸価により決定されるように)進行する(追加の触媒なしに)(下記の例9参照)。180℃の温度にて、添加触媒なしに、USP品位のグリセリンを用いて、エステル化はおおよそ14時間後に完了している(下記の例1参照)。完了までの約9時間と約10時間の間のはるかに短い反応時間が、粗製グリセリンを用いることにより実現される(下記の例2及び3参照並びに図2参照)。
【0016】
生じたグリセリドの混合物は、次いで、塩基触媒メタノリシスに付されて、メチルエステル及び副生成物としてのグリセリンを形成する。本方法のこの第2工程において生成されたグリセリンは、酸性化ソープストック又は他の油源中に含有されている遊離脂肪酸とのグリセリドを形成させるために、第1工程において用いるために再循環され得る。この後者の場合において、再循環グリセリンの更なる精製は必要でない。
【0017】
反応スキーム、特に反応スキームの第1工程は、触媒でもって遂行され得る。想定触媒は、有機スズ化合物(たとえばジブチルスズオキシド)、有機チタン化合物(たとえばテトラブチルチタネート)、アルカリ酢酸塩、アルカリ土酢酸塩、ルイス酸、アルカリ炭酸塩、アルカリ土炭酸塩及びそれらの組合わせを包含するが、しかしそれらに限定されない。
【0018】
本発明の方法の利点は、次のとおり要約され得る。すなわち、1)脂及び油のアルコーリシスによって得られた未変質グリセリン画分の使用、2)精製グリセリンよりむしろ脂及び油のアルコーリシスからのメタノール、水及び残留アルカリを含有する未変質グリセリン画分を用いることにより得られる速度向上、3)本発明の方法のグリセリン画分の再循環適性、4)脂及び油のメタノリシスからの未変質グリセリン画分を用いてのより低い加工温度、5)低減塩形成、並びに6)過剰アルコール(たとえばメタノール)と水の分離のための設備の排除。
【0019】
本発明の上記の反応スキームの有効性を実例で示すために、酸性化ソープストックサンプルを反応スキームに付し、そして反応生成物の酸価を時間の関数として決定した。減少する酸価により、該反応スキームが酸性化ソープストックの遊離脂肪酸をグリセリドに転換する満足な方法を与えることが実例で示された。反応スキームの第1工程は、好ましくは5mgKOH/gより小さい残留酸価まで、一層好ましくは約0.1と約1mgKOH/gの間の残留酸価まで行われる。
【0020】
例1
549gの酸性化ソープストック及び108gのUSP品位のグリセリンを、1Lの樹脂製反応釜10(図1)中に装填した。図1の反応設備8を用いた。樹脂製反応釜10を大気圧にて、60分の期間をかけて180℃の反応温度に加熱した。入熱の時点からおおよそ65分後、反応水の除去を助けるために、表1に報告されているように、真空を段階的に適用した。340分の反応時間後(入熱の開始から計って)、真空に加えて窒素の流れを適用した。反応の進行を監視するために、サンプルを間欠的に取った。おおよそ880分後、反応は完了していた(AV=<0.5)。捕集留出物は、軽質(C6〜C8)脂肪酸で構成されたところの反応水の上の薄層を含めて、26.11gと測定された。グリセリド混合物の総回収質量は、622.67gであった。
【0021】
表1は例1の反応パラメーター及び測定酸価を示し、しかしてグリセリドへのソープストックサンプルの遊離脂肪酸の転換の進行を実例で示している。
【表1】

【0022】
例2
583.9gの酸性化ソープストック及び135.97gの粗製グリセリン(86%のグリセリン、並びに水、メタノール及び残留塩基触媒として残余を含有する)(大豆油のメタノリシスから誘導されたもの)を、1Lの樹脂製反応釜10(図1)中に装填した。図1の反応設備8を用いた。イソプロパノールと水の容量により50/50の混合物中の10%懸濁液としての一緒にされた原料のpHは、5.34と測定された。この混合物を180℃の反応温度に加熱し、そして反応水の除去を促進するために、表2に報告されているように、真空を窒素スパージと共に適用した。留出物の総量は、メタノール及び反応水並びにおおよそ3.5mlの低分子量脂肪酸を含めて、58.58gと測定された。グリセリドの回収重量は、654.68g(総質量投入量を基準として90.9%)であった。一般に、例1と比較して、粗製グリセリンを用いることにより、窒素スパージングと併用された真空適用の継続時間はかなり短くあり得ること、並びに匹敵し得る酸価に達するべき全反応時間は有意的に減じられた(880min対615min)ことを、この例は示している。
【0023】
表2は例2の反応パラメーター及び測定酸価を示し、しかしてグリセリドへのソープストックサンプルの遊離脂肪酸の転換の進行を実例で示している。
【表2】

【0024】
例3
真空と窒素スパージの併用をこの過程においてより早期に利用することにより、最終生成物にマイナス的に影響を及ぼすことなくサイクル時間が、たとえば反応器から原料を除去する(減少収量をもたらすことになる)ことにより、更に減じられ得る、ということを例3は実例で示す。528.5gの酸性化ソープストックを124.4gの粗製グリセリンと一緒にし、そして例1〜2下のように加工した。原料を一緒にした直後の反応混合物のpHは、5.04と測定された。留出物の総重量は54.77gと測定され、そしてグリセリドの単離収量は589.68g(総質量投入量を基準として90.3%)であった。
【0025】
表3は例3の反応パラメーター及び測定酸価を示し、しかしてグリセリドへのソープストックサンプルの遊離脂肪酸の転換の進行を実例で示している。
【表3】

【0026】
図2は例1、2及び3についてのソープストックの遊離脂肪酸の転換速度を比較し、そして例3の条件が最も促進された転換をもたらすことを実例で示している。
【0027】
例4
例4は、低減グリセリン装填量の効果を実例で示す。520.2gの量の酸性化ソープストック及び91.8gの量の粗製グリセリン(15wt%の有効グリセリン)を1Lの樹脂製反応釜10(図1)中に装填し、そして前の諸例においてのように処理した。例1及び2においてと同様なpHを維持するために、メタノール中のナトリウムメトキシドの7.35gの25%溶液を用いて、調整を成した。回収された留出物の総量は53.5gであり、そしてグリセリド収量は548.71gであった。
【0028】
表4は例4の反応パラメーター及び測定酸価を示し、しかしてグリセリドへのソープストックサンプルの遊離脂肪酸の転換の進行を実例で示している。
【表4】

【0029】
例5
例5は例4と類似しているが、しかしpH調整なしである。一緒にされたグリセリンとソープストックのpHは5.03であった。最後の1時間の窒素スパージを、30mL/hrから60mL/hrに増加した。捕集留出物の最終量は55.25gであり、そして552.73gのグリセリドが回収された。
【0030】
表5は例5の反応パラメーター及び測定酸価を示し、しかしてグリセリドへのソープストックサンプルの遊離脂肪酸の転換の進行を実例で示している。
【表5】

【0031】
例6
例6は、グリセロリシスが黄色グリース及び酸性化グリセリン(大豆油メタノリシスからのしかしアルカリ又はメタノールを有さない再循環グリセリン)のような様々な原料流でもって行われ得そして慣用のエステル化触媒反応に付され得るという事実を強調する比較反応である。498.1gの黄色グリース及び50.0gの酸性化グリセリンを1.0gのジブチルスズオキシドと一緒に1Lの樹脂製反応釜10(図1)中に装填し、そして200℃の反応温度に加熱した。反応温度が200℃に達した時、250mmHgの真空を適用した。おおよそ6時間後、酸価は0.5AVであると測定され、また約5.5mLの液体がディーン−スタークトラップ中に捕集されていた。この反応混合物を適切な温度に冷却して、116gのメタノール及びメタノール中のナトリウムメトキシドの7.5gの25%溶液を慎重に添加した。次いで、掻き混ぜながら、反応器を77℃に2時間加熱した。加熱をやめ、そしてこの混合物を沈降させた。総量147.43gのグリセリン含有相を、この混合物の底部から除去した。残存物質を60℃にて放散して、過剰のメタノールを除去した。次いで、残存粗製エステル相を110mLの水で洗浄し、5分間撹拌し、そして約30分間沈降させた後、底部から水性層を排出した。この手順を同じ量の水でもって、更に2回繰り返した。それらの水性層を集めて一緒にし、そして秤量した(408.2g)。次いで、洗浄されたエステルを真空下で約60℃にて、乾燥する(最終水分430ppm)まで放散した。バイオディーゼルエステルの収量は366.3gであった。
【0032】
例7
684gの酸性化ソープストック及び163gの粗製グリセリンを3.5gの酢酸カリウムと一緒に(混合物のpHは5.48であった)、1Lの樹脂製反応釜10(図1)中に装填した。この反応混合物を表6に報告されているような温度に加熱し、また前の諸例においてのように真空及び窒素を適用した。最終酸価は0.21AVであり、72.56gの留出物が捕集され、またグリセリド収量はおおよそ758.76g(反応中のサンプリングを考慮して)であった。
【0033】
反応を冷却した後、120gのメタノール及び5.7gのナトリウムメトキシド溶液(メタノール中25%)を添加し、そして反応器を65〜68℃に1.25時間加熱し、その後にこの反応混合物を1.25時間沈降させた。次いで、グリセリン画分を反応器の底部から除去し(198.33g)、そして次いで過剰のメタノールを真空中で除去した(17.66g)。次いで、この反応器に22gの蒸留水を装填し、そして10分間掻き混ぜた。3時間の沈降時間後、52.57gの水性相を除去した(一晩して、更に10.57gのエステルが初期水性相から回収された)。このようにして製造された254.95gのエステルを真空(10〜20mmHg)下で蒸留して、224.61gのほぼ無色のメチルエステル生成物が得られた。
【0034】
表6は例7の反応パラメーター及び測定酸価を示し、しかしてグリセリドへのソープストックサンプルの遊離脂肪酸の転換の進行を実例で示している。
【表6】

【0035】
例8
541.29gの酸性化ソープストック及び108.5gのUSPグリセリンを一緒に1Lの樹脂製反応釜10(図1)中に装填し、そして180℃の反応温度に加熱した。反応温度が180℃に達した時、真空を徐々に適用した。テトラブチルチタネート(Tyzor(登録商標)TBT)を反応器中の液面の下に、シリンジを通じて2回、すなわち経過反応時間270minにおいて1回そして405minにおいて再び注入した。おおよそ12時間後、酸価は0.94AVであると測定され、そして約24.15gの留出物がディーン−スタークトラップ中に捕集されていた。
【0036】
表7は、例8についての反応パラメーター及び測定酸価を示す。
【表7】

【0037】
例9
250.7gの黄色グリース(AV29.5mgKOH/g)を14.7gの酸性化グリセリンと一緒に装填し、そして230℃の反応温度に加熱した。45分の反応後、水の除去を促進するために、真空を23インチにて適用した。8時間の反応時間後、酸価は0.37であった。
【0038】
例10
515.0gの酸性化ソープストック(酸価126mgKOH/g)を133.1gの酸性化グリセリンと一緒に装填し、そして230℃に加熱した。230℃において45分後、反応水の除去を助けるために、真空を20インチにて適用した。7.5時間の総反応時間後、酸価は0.34であった。
【0039】
表8は、例1から10についての反応パラメーター及びAV結果を要約する。
【表8】

n.d.=決定されず
*=比較として黄色グリース(12wt%の遊離脂肪酸)でもっての反応実験
DBTO=ジブチルスズオキシド
TBT=テトラブチルチタネート
粗製グリセリン約86%純度(C)
USPグリセリン>99.9%純度(P)
再循環グリセリン約98%純度(R)
【0040】
例11
例11は、大規模にての本発明の方法の有効性を実例で示す。1,670lbの酸性化ソープストックに、304lbのグリセロールを添加した。この混合物を掻き混ぜそして180℃の反応温度に加熱する一方、再循環グリセリンから残留メタノールを並びにグリセリドの形成物から反応水を除去した。真空(最大40mmHg)及び窒素スパージングの使用により、反応水の除去を促進した。おおよそ16時間(おおよそ2時間の昇温時間を含めて)後、1.0の酸価が達せられた。反応を<60℃に冷却し、そしてメタノール(732lb)及び45lbのナトリウムメチラート(メタノール中21%溶液)を装填した。この反応器を68℃に加熱し、そしてこの温度に1時間維持した。次いで、掻き混ぜを停止し、そしてグリセロール相を反応器の底部におおよそ1時間沈降させた。グリセロール相を排出した後、残留メタノールを真空によって除去しそして20lbの洗浄水を添加し、そしてこの混合物を15min撹拌しそして次いで沈降させた。水性相を反応器の底部から除去した。次いで、この反応器を排気して残留水を除去して、粗製メチルエステル生成物がもたらされた。次いで、この粗製メチルエステルを真空蒸留に付して、おおよそ1,429lbのほぼ無色の蒸留エステルがもたらされた。
【0041】
例12
例12は、大規模にての本発明の方法の有効性を実例で示す。1,521lbの酸性化ソープストックに、大豆油のメタノリシスからの304lbの粗製グリセロールと前の例10の大規模実験の76lbの再循環グリセリン画分とから成る380lbのグリセロールを添加した。この混合物を掻き混ぜそして180℃の反応温度に加熱する一方、再循環グリセリンから残留メタノールを並びにグリセリドの形成物から反応水を除去した。真空(最大40mmHg)及び窒素スパージングの使用により、反応水の除去を促進した。おおよそ12時間(おおよそ2時間の昇温時間を含めて)後、0.5の酸価が達せられた。反応を<60℃に冷却し、そしてメタノール(434lb)及び4lbのナトリウムメチラート(メタノール中21%溶液)を装填した。この反応器を68℃に加熱し、そしてこの温度に1時間維持した。次いで、掻き混ぜを停止し、そしてグリセロール相を反応器の底部におおよそ1時間沈降させた。グリセロール相を排出した後、残留メタノールを真空によって除去しそして20lbの洗浄水を添加し、そしてこの混合物を15分撹拌しそして次いで沈降させた。水性相を反応器の底部から除去した。次いで、この反応器を排気して残留水を除去して、粗製メチルエステル生成物がもたらされた。次いで、この粗製メチルエステルを真空蒸留に付して、おおよそ1,370lbのほぼ無色の蒸留エステルがもたらされた。
【0042】
本発明の特定の要素、具体的態様及び適用が示され及び記載されてきたけれども、特に以上の教示に鑑みて、改変が当業者により成され得るので、本発明はそれらに限定されないことが理解されるであろう。それ故、上記に記載された具体的態様は単に例示の目的のためであり、そして本発明の精神及び範囲を限定するようには意図されておらず、しかして本発明は、等価物のドクトリンを含めて特許法の原則に従って解釈される添付請求項により定められる、ということが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の方法を遂行するために用いられ得る反応設備を示す。
【図2】図2は、本発明の3つの例について時間の関数として酸価を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルエステルを製造する方法であって、次の工程すなわち
油源を用意し、しかも該油源は遊離脂肪酸及び/又はグリセリドを含み、
少なくとも0.3当量のグリセロール源を用意し、
該グリセロール源と該油源を、モノ、ジ及びトリグリセリドの混合物への該遊離脂肪酸及びグリセリドの有効な転換に十分な時間接触させ、
約1.0当量から約3当量の間の過剰量のメタノールを用意し、
グリセリドの該混合物を該メタノールと、脂肪酸アルキルエステルへのグリセリドの有効な転換のために反応させ、
該脂肪酸アルキルエステルを回収する
工程を含む方法。
【請求項2】
グリセロール源と油源を接触させる工程を触媒の存在下で遂行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒が、有機スズ化合物、有機チタン化合物、アルカリ酢酸塩、アルカリ土酢酸塩、ルイス酸、アルカリ炭酸塩、アルカリ土炭酸塩及びそれらの組合わせから成る群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
触媒がジブチルスズオキシドである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
触媒がテトラブチルチタネートである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
グリセロール源が、USP品位のグリセロール又は精製グリセロールである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
グリセロール源が、植物油の油脂分解又はメタノリシスから回収された粗製グリセロールである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
グリセリドとメタノールの反応から生成されたグリセロールを回収する工程を更に含み、しかもグリセロール源が少なくとも部分的に、更なる精製なしにこの再循環グリセロールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
グリセロール源と油源を接触させる工程を約140℃から245℃の間の温度にて遂行する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
温度が、約160℃から200℃の間にある、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
温度が約180℃である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
グリセロール源と油源を接触させる工程を約760mmHgから1mmHgの範囲の減圧にて遂行する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
グリセロール源と油源を接触させる工程を、減圧にて及び一定の窒素流下で遂行する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
グリセロール源と油源を接触させる工程を、一定の窒素流下で遂行する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
方法を回分法にて遂行する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
方法を連続法にて遂行する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
グリセロール源と油源を接触させる工程を、5(mgKOH/g)未満の残留酸価まで行う、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
グリセロール源と油源を接触させる工程を、約0.1から約1(mgKOH/g)の残留酸価まで行う、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−502271(P2007−502271A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523185(P2006−523185)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/021592
【国際公開番号】WO2005/019153
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(591066100)ステパン カンパニー (5)
【Fターム(参考)】