説明

グリッパ

【課題】グリッパ2によりボトル4を保持した状態で電子線の照射を受けた場合に、グリッパ2により電子線が遮られる面積をできるだけ小さくする。
【解決手段】樹脂製ボトル4の両側に位置する一対の支持部22A、22Bと、これら各支持部22A、22Bに設けられ、上下に離隔した2枚の薄い板体26A、28A、26B、28Bからなる当接部24A、24Bを有しており、両側の当接部24A、24Bによってボトル4のネック部4aを両側から挟んでボトル4を保持する。ボトル4を保持した状態で、支持部22A、22Bはボトル4の外面に接触することはなく、ネック部4aの周囲を電子線が回り込んで全面を殺菌できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製ボトルのネック部を両側から挟んで保持するグリッパに係り、例えば、搬送装置によって搬送している容器に電子線を照射して殺菌を行う電子線殺菌装置等に用いられるグリッパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
搬送装置によって搬送している容器に、電子線照射装置から電子線を照射して殺菌を行う装置は従来から知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。特許文献1に記載された容器搬送手段は、PETボトル等の容器の口部外周にあるフランジ部の直下のネック部が摺動自在に懸吊支持される平行2条のレールを有している。前記平行なレールを構成するレール部材は、EB(電子線)照射室の横幅に相当する範囲がEB照射を妨げないように切り欠かれており、この切り欠き部の部分は、薄い帯状のチタン膜が張られてEB照射に支障なくレールの途切れをなくしている。
【0003】
また、特許文献2に記載された発明の搬送手段は、二本のワイヤを有するものであり、照射室内に設けられている。そして、二本のワイヤを移動させることにより、容器は立てた状態のまま搬送される。
【0004】
特許文献3に記載された搬送コンベヤは、その内周側にリング状の搬送ギヤが取り付けられており、このリング状の搬送ギヤに所定間隔毎に支柱を立設し、これら支柱の上端にリング状のガイドリングが取り付けてある。このガイドリングに、容器のピッチ間隔と対応する位置にネックガイドが取り付けてあり、このネックガイドにより各容器の首部を保持して搬送する。
【0005】
また、電子線殺菌装置に関するものではないが、樹脂製ボトルのネック部を両側から挟持して搬送するグリッパとして、特許文献4に示すように、2つのアームの端部にそれぞれ把持爪を設け、ボトルの頸部を両側から締め付けて保持する構成のものが従来から知られている。
【特許文献1】特開平11−1212号公報(第4−5頁、図2)
【特許文献2】特開平1−19190号公報(第3−4頁、図1)
【特許文献3】特開2000−214300号公報(第4頁、図3)
【特許文献4】特許第3787328号公報(第4頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1および特許文献2の容器搬送手段の構成では、搬送される容器の前後の間隔や送り速度が不安定になり、電子線の照射条件がばらつくおそれがあるという問題があった。また、特許文献3の構成では、容器を保持しているネックガイドが陰となり電子線が容器全面に充分に行き渡らないおそれがあるという問題があった。
【0007】
一方、特許文献4に記載された形状のグリッパでは、把持爪の容器への接触面が広いほど安定して容器を保持することができる。従って、把持爪の厚さ、つまり容器への接触面の上下の高さが高いほど確実に容器を保持して安定した搬送をすることが可能である。ところが、このようなグリッパを電子線殺菌装置の搬送装置に使用すると、容器に接触する部分が電子線の照射を遮断するため、グリッパの容器に接触する面積が大きい場合には、容器を完全に殺菌することができないという問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、樹脂製ボトルのネック部を両側から挟んで保持するグリッパにおいて、ボトルのネック部の両側に位置する一対の支持部と、これら各支持部にそれぞれ設けられ、ネック部の外周面に当接する当接部とを備え、この当接部が、上下に離隔した支持体からなることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記支持部が、ボトルを保持した状態でボトルのネック部の外周面に接触しないことを特徴とするものである。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記支持部の少なくともいずれか一方に、保持したボトルが振れることを防止する振れ止め部を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記当接部が、ボトルのネック部の周方向に離隔した複数の箇所で当接することを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、保持したボトルを電子線照射手段の照射部へ搬送するものであって、前記照射部の正面におけるボトルを保持した姿勢が、前記支持部が電子線の照射方向と交差する方向に対向し、かつ、前記当接部の支持体が電子線の照射方向とほぼ平行な状態であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のグリッパは、樹脂製ボトルのネック部の両側に位置する支持部に設けられた当接部が、それぞれ上下に離隔した支持体からなっているので、ボトルへの接触面積を小さくしながらもボトルを安定的に保持することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
樹脂製ボトルのネック部の両側に配置した各支持部にそれぞれ当接部が設けられており、これら当接部が上下に離隔した支持体を有するという構成により、容器を確実に把持して安定した搬送をするとともに、電子線の照射等を妨げないようにグリッパと容器の接触面積を小さくするという目的を達成する。
【実施例1】
【0015】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は本発明の一実施例に係るネックグリッパの正面図、図2はその側面図、図3は樹脂製ボトルをグリップするグリップ部を示す平面図である。この実施例のグリッパ2は、例えば、電子線の照射により殺菌を行う電子線殺菌装置等に用いられるもので、このグリッパ2に保持されて搬送されるボトル4が、電子線照射手段の前面を通過することにより、電子線の照射を受けて殺菌される。なお、この実施例に係るグリッパ2に保持されるボトル4は、ペットボトル等の樹脂製ボトルであり、ネック部4a(傾斜した肩部4bよりも上方のほぼ同一の径を有する小径の部分)の外周にフランジ4cが形成されている。
【0016】
このネックグリッパ2は、回転ホイールあるいは循環走行する無端状の搬送帯等に等間隔で設けられており、それぞれ垂直なロッド6の下端に固定された水平な取付体8の下方側に、ボトル4を保持する一対のグリップ部10A、10Bが設けられている。取付体8の両端面には、一対の板ばね12A、12Bの上端が鉛直方向を向けて固着されている。前記垂直なロッド6の真下の位置でボトル4が保持されるようになっており、これら両側の板ばね12A、12Bは、図2に示すように、下部側がボトル4のネック部4aを避けるように傾斜して切り取られた形状をしている。また、前記水平な取付体8の両側(両板ばね12A、12Bの外側)に水平な連結部材14A、14Bが固定され、これら各水平連結部材14A、14Bの端部下面に、下方に向けた垂直な支持部材16A、16Bが取り付けられている。これら垂直な支持部材16A、16Bは、ボトル4のネック部4aから横方向へ外れた位置にある板ばね12A、12Bの下部とオーバーラップするように配置されている(図2参照)。
【0017】
垂直な支持部材16A、16Bは、板ばね12A、12Bの長さよりもやや短くなっており、この支持部材16A、16Bの下端には、内側に向けてピン18A、18Bが立設され、このピン18A、18Bは板ばね12A、12Bの下端よりもやや上方の位置に挿通されている。支持部材16A、16Bと板ばね12A、12Bの間のピン18A、18Bの外周にコイルスプリング20A、20Bが介装されて、各板ばね12A、12Bを互いに接近する方向へ付勢している。この板ばね12A、12Bの内面側に位置しているピン18A、18Bの先端に設けた拡径部18Aa、18Baによりスプリング20A、20Bに付勢された板ばね12A、12Bの位置を規制しており、通常は板ばね12A、12Bが支持部材16A、16Bと平行な鉛直状態を維持している。また、板ばね12A、12Bの下端部が内面側から押されると、スプリング20A、20Bの付勢力に抗して互いに拡開する方向に移動できるようになっている。
【0018】
両板ばね12A、12Bの下端部の内面側(互いに向かい合う面)に、それぞれグリップ部10A、10Bが設けられている。各グリップ部10A、10Bは、板ばね12A、12Bに取り付けられて水平方向に延びる対をなす支持部22A、22Bと、支持部22A、22Bの先端側に形成された当接部24A、24Bとを有している(なお、この明細書では、薄い板体から成る部分を当接部24A、24B、この当接部24A、24Bを除いた部分を支持部22A、22Bと呼ぶ)。両支持部22A、22Bは、先端部(図3の上方側)側がボトル4のネック部4aの両側に位置するように平行して配置されている。これら両支持部22A、22Bの先端寄りの内面側、つまり、互いに対向する面側に、ボトル4のネック部4aに両側から当接してこのボトル4を保持する当接部24A、24Bが形成されている。各当接部24A、24Bは、それぞれ上下に間隔を隔てて配置された2枚の薄い板体26A、28A、26B、28Bからなっている。この実施例では、2枚の薄い板体26A、28A、26B、28Bはほぼ同一の形状をしており、ボトル4のネック部4aに当接する側の面が円弧状をしている。
【0019】
各支持部22A、22Bの先端部側に設けられている2枚の板体26A、28A、26B、28Bは、この実施例では、ほぼ1mm程度の厚さを有しており、また、これら2枚の板体26A、28A、26B、28Bの間隔は約3mmになっている。従って、上下2枚の薄い板体26A、28A、26B、28Bを含む当接部24A、24B全体の厚さは約5mmである。2枚の薄い板体26A、28A、26B、28Bの上下の間隔が広いほど安定してボトル4を保持することができるが、当接部24A、24Bの全体の厚さ(上側の板体26A、26Bの上面と下側の板体28A、28Bの下面との間の距離)が5mmを越えると、ボトル4のフランジ4cよりも下側を掴みにくくなる。そこで、この当接部24A、24Bの厚さを5mm以下とすることが好ましい。また、この実施例ではボトル4のネック部4aに形成されたフランジ4cの下方を把持するようにしているが、前記寸法とすれば、フランジ4cの上方を把持することも可能である。
【0020】
前記支持部22A、22Bの、ボトル4側の板体26A、28A、26B、28Bが立設された面22Aa、22Baは平面からなり、当接部24A、24Bによってボトル4を保持した状態の時でもボトル4に接触することはなく、最もボトル4に接近した位置で約0.5mm程度の間隔を有している。従って、ボトル4を保持した状態で当接部24A、24Bに接しているネック部4aの外周面と支持部22A、22Bの前面22Aa、22Baとの間に間隙が形成されている。このように当接部24A、24Bがボトル4のネック部4aの外周面に当接している部分を除いて、ボトル4の外面を覆うものはなく、このグリッパ2が電子線殺菌装置に用いられた場合でも、電子線照射手段から照射された電子線を遮らず、また、支持部22A、22Bの各面22Aa、22Baに沿って板体26A、28A、26B、28B間に電子線を通過させ、ネック部4aの周囲を回り込むことができるようになっている。
【0021】
当接部24A、24Bの2枚の薄い板体26A、28A、26B、28Bは、ボトル4のネック部4aに当接する面が円弧状になっているが、この円弧の曲率がネック部4aの外周面の曲率よりも大きくなっている。従って、各当接部24A、24Bの先端部側突出部24Aa、24Ba(図3の上方側の端部)と後端部側突出部24Ab、24Bbとの、ネック部4aの周方向に離隔した2点の箇所(上下の板体としては4点)が、ボトル4のネック部4aに当接しており、その他の部分はネック部4aの外周面に対して僅かな間隙を有している。なお、板体26A、28A、26B、28Bの円弧の曲率がネック部4aの外周面の曲率とほぼ等しく、両者の間にほぼ間隙が無い状態にしても良い。なお、この実施例では、ボトル4のネック部4aに当接する当接部24A、24Bを上下2枚の薄い板体26A、28A、26B、28Bから構成したが、必ずしも板体に限るものではなく、その他の形状、例えば小突起等の支持体によってネック部4aに当接するようにしても良い。
【0022】
両当接部24A、24Bの先端側の内面は、最も先端側の間隔が広くなるように傾斜面24Ac、24Bcが形成されており、前方側(図3の上方側)からボトル4が押し込まれると、当接部24A、24Bが設けられている両支持部22A、22Bが板ばね12A、12Bとともにスプリング20A、20Bを撓めて離隔し、ボトル4が両当接部24A、24B間に挿入される。ボトル4が当接部24A、24Bの先端部側の突出部24Aa、24Ba(前記傾斜面24Ac、24Bcと円弧状部との間)を通過すると、ボトル4は当接部24A、24Bの円弧状部内に入るとともに、板ばね12A、12Bおよびスプリング20A、20Bのばね力によって両支持部22A、22Bおよび当接部24A、24Bが接近して元の状態に戻り、ボトル4のネック部4aを両側から把持する。また、両当接部24A、24Bの、後端部側突出部24Ab、24Bbが形成されている後方側の延長部24Ad、24Bdは、互いに接近する方向に延長されており、後端部側の突出部24Ab、24Bbは先端部側の突出部24Aa、24Baよりもそれぞれ内側に位置し、先端側から押し込まれたボトル4は、この両側の突出部24Ab、24Bbによって前進位置を規制され、両当接部24A、24Bの円弧状部間に挿入され、前後の突出部24Aa、24Ba、24Ab、24Bbによって保持される。
【0023】
一対のグリップ部10A、10Bの一方(図1および図3の左側のグリップ部10A)には、このネックグリッパ2によって保持されて搬送されるボトル4が搬送中に振れないように、当接部24Aのやや上方でフランジ部4cの上方に位置する振れ止め部30Aが設けられている。保持したボトル4が傾くとこの振れ止め部30Aがフランジ4cの上面に当接することによって、それ以上に傾くことを規制して高速搬送時の遠心力や反転時に生じるボトル4の振れを抑制することができる。
【0024】
次に、図4によって、前記ネックグリッパ2を電子線殺菌装置に使用した場合の一例について説明する。ネックグリッパ2は、鉛製の壁面から構成される殺菌チャンバー32内に設置された容器搬送手段34に設けられている。容器搬送手段34は、2つのスプロケット34a、34bと、これら2つのスプロケット34a、34b間に掛け回された無端状の搬送帯34cとを備えており、グリッパ2は前記無端状搬送帯34cに等間隔で取り付けられている。ネックグリッパ2は、前記搬送帯34cに上下に2個一組として取り付けられており、これら2個のネックグリッパ2がそれぞれボトル4のネック部4aを把持し、一方を正立状態で、他方を倒立状態で搬送する。一組のネックグリッパ2は、一方のスプロケット(図4の右側のスプロケット34b)から他方のスプロケット34aに向かう直線経路の途中の反転位置Aで反転し、2本のボトル4の上下を入れ換えるようになっている。
【0025】
容器搬送手段34のグリッパ2には、殺菌チャンバー32の外部からこのチャンバー32の入口側に配置されている供給ホイール36を介してボトル4が供給され、このボトル4は、電子線照射により殺菌が終了した後、排出ホイール38を介して無菌チャンバー32から排出される。供給ホイール36から容器搬送手段34への供給位置を符号B、容器搬送手段34から排出ホイール38への排出位置を符号Cで示す。
【0026】
前記殺菌チャンバー32の側部に電子線照射装置40が配置されている。殺菌チャンバー32の壁面に開口部32aが形成され、この開口部32a内に電子線照射装置40の照射面40aが臨んでいる。この照射面40aにはチタン等の薄い箔が取り付けられており、この箔を介して電子線が照射される。本実施例では、チタン箔が取り付けられた照射面40aを備えた部分が電子線照射手段の照射部Dになっており、この照射部Dの前方側を囲んで電子線照射室42が形成されている。ボトル4を保持しているグリッパ2がこの電子線照射室42を通過する際に、前記電子線照射装置40から電子線の照射を受ける。図3および図4中の矢印Eが電子線の照射方向を示す。
【0027】
前記構成のネックグリッパ2の作用について、このグリッパ2を電子線殺菌装置に使用した場合を例として説明する。容器搬送手段34に取り付けられたグリッパ2が容器供給位置Bに到達すると、供給ホイール36からボトル4が供給される。グリッパ2の前進に伴ってボトル4が当接部24A、24Bの先端に形成されている傾斜面24Ac、24Bcに押しつけられると、両グリップ部10A、10Bが押し広げられ、ボトル4は先端の傾斜面24Ac、24Bcと円弧状部との間の先端部側突出部24Aa、24Baを通過して円弧状部内に入る。その後、両グリップ部10A、10Bは板ばね12A、12Bおよびスプリング20A、20Bの反発力によって復帰し、両円弧状部内にボトル4のネック部4aを保持する。このとき円弧状部は接触せずに各当接部24A、24Bの先端部側突出部24Aa、24Baと後端部側突出部24Ab、24Bbがボトル4のネック部4aに当接する。その結果、当接部24A、24Bがネック部4aに接触する面積が減少するので、電子線が照射されない部分を極力小さくしつつ、ボトル4を安定して保持することができる。
【0028】
前記グリッパ2は、ボトル4のネック部4aを保持して電子線照射装置40の照射面40aの前方まで搬送する。このときグリッパ2の先端部側が前記照射面40a方向を向いて、照射面40aの正面で矢印E方向から電子線の照射を受けるようになり、このときグリッパ2の姿勢は両支持部22A、22Bが、電子線の照射方向Eと直交する方向であり搬送方向前後方向(図3の矢印F参照)に対向しており、これにより各面22Aa、22Baが電子線の照射方向Eとほぼ平行となり電子線を遮ることなくボトル4の背後へ通過させることができる。また、板体26A、28A、26B、28Bは、ほぼ水平で電子線の照射方向Eとほぼ平行な状態になっており、電子線が板体26A、28A、26B、28Bの上面や下面で遮られることがない。このように、ネックグリッパ2に保持されたボトル4は、電子線が照射されて殺菌される。各ボトル4は、一回目の電子線の照射を受けた後、再度反転位置Aで反転されて照射面40aの前方に送られて1回目とは反対の方向から2回目の電子線の照射を受け、外周面全体が殺菌される。殺菌が終了したボトル4は、排出位置Cで排出ホイール38に引き渡されて排出される。
【0029】
従来のグリッパ(例えば、特許文献4に記載されたグリッパ)では、安定した搬送を行うためにはボトルに接触している部分の面積を広くしなければならないので、このグリッパによって電子線が遮断されて充分な殺菌が行われない。しかも、グリッパに接している部分の後方側には電子線が到達しないので、殺菌されない部分が広く残ってしまう。一方、この実施例に係るグリッパ2の構成では、当接部24A、24Bが2枚の薄い板体26A、26B、28A、28Bでできているので、その中間の間隙は電子線が通過することができ、しかも、ネックグリッパ2がボトル4を保持した状態でも支持部22A、22Bはボトル4の外面に接触することはないので、ネック部4aの外面と支持部22A、22bの表面との間を通って電子線が後方側にも回り込むことができ、ボトル4のほぼすべての面を殺菌することができる。
【0030】
ネックグリッパ2を前記のように構成したことにより、ボトル4を確実に把持して安定した搬送を行うことができ、高速化も可能であり、しかも、電子線殺菌装置に適用して電子線の照射を受けた場合でも、充分な電子線量を確保して効果的に殺菌を行うことができる。また、前記構成のグリッパ2では、板ばね12A、12Bとスプリング20A、20Bにより保持機構を構成しており、これらを撓めて当接部24A、24B間にボトル4のネック部4aを挿入できれば、ネック部4aの形状やサイズが変更になった場合でも、型替えの必要がなく、幅広く兼用することができる。さらに、ボトル4を反転させて2回の照射を行うので電子線照射装置を1箇所配置するだけで、ボトル4全面の殺菌が可能である。なお、この実施例では、当接部24A、24Bの上方の板体26A、26Bの上面が平坦面になっており、ボトル4のネック部4aに形成されたフランジ4cの下面に当接する場合があるが、前記上方の板体26A、26Bの上面に突起または段差を設けて点または線接触でフランジ4cの下面と当接するように構成すれば、当接部24A、24Bとボトル4との接触面積をさらに小さくすることができ、フランジ4cの下面にも電子線を効果的に照射することができる。また、前記実施例では、各当接部24A、24Bの先端側と後端側の2箇所でボトル4のネック部4aに当接するようにしているが、当接箇所は必ずしも2箇所に限るものではなく、3箇所あるいは4箇所等その数を変更することもできる。また、各当接箇所は上下で各々1枚の板体による共通の円弧により繋がっているが、板体は3枚以上でも良く、また、当接箇所間の形状は円弧形状である必要はなくそれ以外の形状とすることもでき、さらに、連続しない2つ以上の板体により当接部自体を独立させて、各支持部22A、22B毎に複数の当接部をネック部4aの周方向に沿って設けるようにしても良い。また、前記実施例では、グリッパを電子線殺菌装置に適用した場合に付いて説明したが、必ずしも電子線殺菌装置に限定されるものではなく、紫外線や赤外線等の光線やその他の放射媒体を照射する殺菌およびその他の処理装置や、蒸気や気体、液体をボトルに噴射して殺菌、洗浄およびその他の処理を行う装置等にも適用可能であり、これらにおいてもボトルへの接触面積が小さいことで電子線殺菌装置の場合と同様に有効である。また、安定的に保持できることでボトルを搬送するように構成したその他のボトル処理装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ネックグリッパの正面図である(実施例1)
【図2】ネックグリッパの側面図である。
【図3】前記ネックグリッパのグリップ部を示す平面図である。
【図4】前記ネックグリッパを電子線殺菌装置に使用した場合の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0032】
2 グリッパ
4 樹脂製ボトル
4a ネック部
22A 支持部
22B 支持部
24A 当接部
24B 当接部
26A 支持体(板体)
26B 支持体(板体)
28A 支持体(板体)
28B 支持体(板体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製ボトルのネック部を両側から挟んで保持するグリッパにおいて、
ボトルのネック部の両側に位置する一対の支持部と、
これら各支持部にそれぞれ設けられ、ネック部の外周面に当接する当接部とを備え、
この当接部が、上下に離隔した支持体からなることを特徴とするグリッパ。
【請求項2】
前記支持部は、ボトルを保持した状態でボトルのネック部の外周面に接触しないことを特徴とする請求項1に記載のグリッパ。
【請求項3】
前記支持部の少なくともいずれか一方に、保持したボトルが振れることを防止する振れ止め部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のグリッパ。
【請求項4】
前記当接部が、ボトルのネック部の周方向に離隔した複数の箇所で当接することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のグリッパ。
【請求項5】
保持したボトルを電子線照射手段の照射部へ搬送するものであって、前記照射部の正面におけるボトルを保持した姿勢が、前記支持部が電子線の照射方向と交差する方向に対向し、かつ、前記当接部の支持体が電子線の照射方向とほぼ平行な状態であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のグリッパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−207962(P2008−207962A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297118(P2007−297118)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】