グルココルチコイド代償療法用の医薬組成物
【課題】グルココルチコイド代償療法に関し、臨床的に妥当な時間、健常被験者の血清グルココルチコイド濃度にほぼ類似する血清グルココルチコイド濃度を生じるように、1種以上のグルココルチコイドを、それらを必要とする患者に送達するように設計された医薬組成物およびキットの提供。
【解決手段】1種以上のグルココルチコイドを含み、1種以上のグルココルチコイドの第一部分は実質的に即時に放出され、1種以上のグルココルチコイドの第二部分は少なくとも約8時間という長時間にわたり放出され、ヒドロコルチゾン当量として表される1種以上のグルココルチコイドの第一部分の量は総ヒドロコルチゾン当量の約15〜約50%の範囲内である錠剤。
【解決手段】1種以上のグルココルチコイドを含み、1種以上のグルココルチコイドの第一部分は実質的に即時に放出され、1種以上のグルココルチコイドの第二部分は少なくとも約8時間という長時間にわたり放出され、ヒドロコルチゾン当量として表される1種以上のグルココルチコイドの第一部分の量は総ヒドロコルチゾン当量の約15〜約50%の範囲内である錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグルココルチコイド代償療法に関し、臨床的に妥当な時間、健常被験者の血清グルココルチコイド濃度にほぼ類似する血清グルココルチコイド濃度を生じるように、1種以上のグルココルチコイドを、それらを必要とする患者に送達するように設計された医薬組成物およびキットを提供する。
【0002】
この医薬組成物は1種以上のグルココルチコイドを含み、1種以上のグルココルチコイドの第一部分は実質的に即時に放出され、1種以上のグルココルチコイドの第二部分は少なくとも約8時間という長時間にわたり放出され、ヒドロコルチゾン当量として表される1種以上のグルココルチコイドの第一部分の量は総ヒドロコルチゾン当量の約15〜約50%の範囲内である。
【0003】
本発明は第一成分および第二成分を含むキットにも関し、この第一成分は1種以上のグルココルチコイドを実質的に即時に放出し、第二成分は1種以上のグルココルチコイドを少なくとも8時間という長時間にわたり放出するように設計される。本発明は、グルココルチコイド欠乏障害を有する患者における場合のように、グルココルチコイド処置を必要とする疾患を治療する方法にも関する。
【0004】
本発明は別の態様において、グルココルチコイド欠乏障害の治療用の医薬組成物またはキットの調製用の1種以上のグルココルチコイドの第一の量および第二の量の使用に関する。
【背景技術】
【0005】
グルココルチコイドは中間代謝、免疫機能、筋骨格系・結合組織および脳機能に重要なステロイドである。その重要性はグルココルチコイド欠乏障害患者において明らかである。
【0006】
代償療法以前ではその1年生存率は20%未満であった。最も重要なグルココルチコイドであるコルチゾールの産生および分泌は、視床下部、下垂体および副腎を含む複雑且つ高効率なシステム、即ち、視床下部−下垂体−副腎系により統御されている。コルチゾール分泌は視床下部視交叉上核により放出日内リズムに調節されている。そのタイミングは明暗変化による太陽日と同期しており、通常、習慣的睡眠・覚醒パターンを反映する。
【0007】
したがって、健常者ではコルチゾール分泌は24時間日内変動を有し、最大血清濃度は早朝、入眠後3〜6時間であり、最小濃度は真夜中頃である。身体的および心理的ストレス要因もコルチゾール分泌を活性化する。手術、発熱、身体活動または精神的ストレスのようなストレス条件下では、視床下部からの副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の放出によりコルチゾールの血清濃度は上昇する。
【0008】
CRHは下垂体における副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の合成および分泌を刺激し、ACTHは副腎皮質にコルチゾールの産生および分泌を増大させるように反応させる。ACTHの分泌バーストの推定数は24時間あたり40回である。各ACTHの分泌バーストの約15分後、循環系に分泌されるコルチゾールは急増する。
【0009】
グルココルチコイド欠乏障害には種々の原因がある。グルココルチコイド欠乏障害と関連する個々の障害発生率は低い。しかし、これらの障害は小児および若年成人に発現することが多く、このような病態に罹患した個々の患者はその余生を代償療法に依存しなければならなくなる。したがって、これらの慢性障害の有病率は有意である。今日提供可能な代償療法は、使用製剤由来のグルココルチコイドの血漿濃度プロファイルおよび放出プロファイルの点において非生理的とみなし得る。
【0010】
副腎皮質機能不全の発現は潜行性から重篤な塩・水欠乏を伴う急性の生命危機まで多様と言え、この場合、適切に治療しないとショックおよび死に至る。より潜行性の副腎皮質機能不全と関連する症状で報告される頻度が高いものに、無気力、衰弱、嗜眠、易疲労性、神経過敏、興奮性、感情鈍麻、眩暈、頭痛、筋肉痛、食欲不振、体重減少、悪心、嘔吐および下痢がある。Aritらの最近のレビュー(Lancet (2003) 361、1881−1893)では、特に副腎機能不全に至る病態を報告しており、これを参照して本明細書に組み込む。3種類の一般的な副腎皮質機能不全が識別可能である。通常、第一の副腎皮質機能不全はアジソン病と称される。この疾患では副腎皮質が影響を受け、副腎皮質で産生される3つのホルモン系の機能が損傷されることになる。したがって、アジソン病の結果、コルチゾール、副腎アンドロゲンおよびミネラルコルチコイド(アルドステロン)の産生および分泌が不十分になる。
【0011】
第二のあるいは中心的な副腎皮質機能不全は、主に視床下部−下垂体領域における腫瘍が原因となる。しかし、第二のグルココルチコイド欠乏障害の問題点および治療の検討は、第一の副腎機能不全患者と同様である。
【0012】
第三の副腎機能不全は、おそらくグルココルチコイド欠乏障害の最も一般的な原因である。これは、肺疾患、自己免疫疾患および炎症性疾患患者の治療の一部として、また、内生副腎グルココルチコイド分泌の抑制を生じさせる、種々の悪性疾患の治療における長期的な高用量グルココルチコイド療法の結果である。第三の副腎機能不全は数週間〜1年間持続する。
【0013】
第一および第二の副腎機能不全の大部分の症例において、グルココルチコイドによる代償療法は生涯にわたる治療となる。グルココルチコイド代償療法の目的は、血清コルチゾールの日周期プロファイルを模倣し、身体的および心理的刺激の間に増大するコルチゾールの必要性に応え、正常な健康状態、代謝および長期的転帰を得ることにある。小児期においても成人期においても治療不足は倦怠感、起立性低血圧、ストレスへの応答不良、電解質障害、更には副腎急性発症を生じさせ得る。小児期では成長抑制および最終的な身長の可能性が低減することを避けるため、グルココルチコイドの適切な補充用量が重要である。成人期では過度のグルココルチコイド補充は耐糖能障害、腹部肥満、高血圧、蛋白異化および骨粗鬆症を誘発し得る。
【0014】
現在、成人における通常のコルチゾール補充の治療プログラムは、1日に2回または3回ヒドロコルチゾン15〜30mgを投与する。長時間持続性のデキサメタゾンまたはプレドニゾロンのような合成グルココルチコイドも代償療法に用いられる。しかし、これらの合成化合物はヒドロコルチゾンより強力である。したがって、これらの使用は過剰治療および有害作用のリスクを高める。
【0015】
正常な被験者における推定コルチゾール1日産生率は1日あたり4〜15mg/m2で変動し、あるいはより最近の研究によると1日あたり9〜11mg/m2である。血清コルチゾール濃度の24時間変動を適切に説明するため、ある試験では1日を4期に分けた。
【0016】
第一期は入眠前4時間および入眠後2時間の最小分泌活性の6時間である。第二期は事前の夜間分泌事象が存在する場合の入眠後3〜5時間を指す。第三期は睡眠の最後の3時間および覚醒後1時間の4時間の主要分泌期である。第四期は血清コルチゾール濃度が緩徐に低下する場合の間欠的分泌活性の11時間期である。
【0017】
Mahらによる研究(Clinical Endocrinology (2004) 61、367−375)では正常被験者の血清コルチゾールの日内リズムが報告されている。
【0018】
それぞれほぼ午前6時、午後2時および午後9時に、約400〜800mmol/l、約150〜300mmol/lおよび約150mmol/lの最大濃度が認められ、最小濃度は真夜中頃である。同研究では内生コルチゾール濃度が覚醒後30分以内に最大濃度に達することが認められている。日内リズムを模倣するため、Mahらはヒドロコルチゾンの1日3回の治療治療プログラムを推奨しており、1回目の用量は絶食状態で摂取して朝食を1〜3時間遅延させ、他の2用量は食前15〜60分以内に摂取するというものである。ヒドロコルチゾンの短い半減期により1日3回の治療プログラムはCzockらの最近のレビューにおいても推奨されており(Clin. Pharmacokinet (2005) 44、61−98)、プレドニゾロンでは1日1回の治療プログラムより1日2回の治療プログラムが好ましい。
【0019】
ヒドロコルチゾンの総用量の3分の2を午前中に、残用量を午後(4〜6時)に投与する1日2回投与では、夕方(3〜6時)および深夜/早朝(3〜8時)に血清コルチゾール濃度は非常に低下する。この投与の治療プログラムでは最大血清コルチゾール濃度は健常被験者に認められる濃度を上回ることが見出されている。更に、長期グルココルチコイド代償療法を受けている患者は骨塩濃度が低く、耐糖能が異常である頻度が高い。
【0020】
現在の治療下における1日2回または3回投与の必要性の別の問題点は、服用を抜かし、あるいは服用の時期を逸するというノンコンプライアンスが生じることであり、これは特に長期にわたり至適以下の転帰に至る。本発明者らは本発明の1日1回態様によりこの課題に対処する。
【0021】
WO 02/072033(Penwest Pharmaceuiticals Co)ではグルココルチコステロイドを有する時間治療的投与形態を報告している。この投与形は投与後2〜18時間の遅延時間後にグルココルチコステロイドを放出するように設計されている。この投与形は覚醒時に必要な血清濃度を付与するため、就寝前に投与され、就寝中に放出を開始するようになっている。しかし、個体内および個体間の様々な消化管部分における通過時間の大幅な変動に起因し、覚醒前の所望の時間に所望の血清コルチゾール濃度に達することは困難であると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、血清コルチゾールの日周期プロファイルを模倣するようにより適合された、グルココルチコイド欠乏障害の治療に対する改善された治療法の必要性がある。
この目的のため、市販組成物に比べ、早い作用発現および長く持続する効果を可能にする、改善された医薬組成物またはキットの必要性がある。更に、このようなキットまたは組成物は投与頻度が1日1回に縮小可能となり、より良好な患者コンプライアンスに繋がり得る。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、速い作用発現を可能にするためグルココルチコイドの第一部分を比較的速やかに放出し、グルココルチコイドの長期持続効果を得るためグルココルチコイドの第二部分を長期的に放出するように設計されたグルココルチコイド含有医薬組成物およびキットを提供する。この組成物およびキットは1日1回の投与用に設計されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例6の結果を示す図である。インビボ血漿プロファイルである。徐放錠、直径7mm、中等度の圧縮力、ヒドロコルチゾン20mg、経口投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【図2】実施例6の結果を示す図である。IR−ER錠の溶出プロファイル。
【図3】実施例11の結果を示す図である。インビボ血漿プロファイル。徐放錠、直径7mm、中等度の圧縮力、ヒドロコルチゾン20mg、経口投与および粘膜粘着性薄膜層フィルムのヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【図4】実施例12の結果を示す図である。インビボ血漿プロファイル。徐放錠、直径7mm、中等度の圧縮力、ヒドロコルチゾン20mg、経口投与および水200ml中ヒドロコルチゾン10mgの液剤、経口投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【図5】実施例18の結果を示す図である。組成物Aの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。
【図6】実施例18の結果を示す図である。組成物Bの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。
【図7】実施例18の結果を示す図である。組成物Cの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。
【図8】実施例19の結果を示す図である。フィルムAの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。非粘膜粘着性薄膜層フィルム、6cm2、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【図9】実施例19の結果を示す図である。フィルムBの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。非粘膜粘着性薄膜層フィルム、6cm2、酢酸ヒドロコルチゾン11.2mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【0025】
【図10】実施例20の結果を示す図である。組成物Aの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。粘膜粘着性薄膜層フィルム、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【図11】実施例20の結果を示す図である。組成物Aの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。粘膜粘着性薄膜層フィルム、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【図12】実施例21の結果を示す図である。組成物Cの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。粘膜粘着性速放錠、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【図13】実施例22の結果を示す図である。実施例21の組成物Cの溶出曲線。
【図14】実施例22の結果を示す図である。実施例20の組成物Aの溶出曲線。
【0026】
【図15】IR/ER組合せ製品からのヒドロコルチゾン(HC)の目標インビトロ放出を示す図である。IR部分:総用量の30%;ER部分:総用量の70%;IR部分:20分以内にて>90%放出、目標:できる限り速やかに100%(15分以内);ER部分:14〜16時間一定速度にて90%(本実施例において15時間)。残余の10%はより遅い速度にて放出される。累積的放出を示す。
【図16】図15と同じ放出を示す図である。しかし、本図では放出率として示す(1時間あたりの放出%)。
【図17】IR15%とER85%のIR/ER組合せ製品からのヒドロコルチゾン(HC)の目標インビトロ放出を示す図である。IR部分:総用量の15%であり、50%が40分にて放出。残余は75分以内に放出される;ER急速部分:総用量の85%であり、このうち90%が10時間にて放出される(残余はより遅く放出);ER緩徐部分:総用量の85%であり、このうち90%が24時間にて放出される(残余はより遅く放出)。
【図18】IR/ER組合せ製品からのヒドロコルチゾン(HC)の目標インビトロ放出を示す図である。IR部分:総用量の50%;ER部分:総用量の50%;IR部分:総用量の50%であり、50%が40分にて放出。残余は75分以内に放出される;ER急速部分:総用量の50%であり、このうち90%が10時間にて放出される(残余はより遅く放出);ER緩徐部分:総用量の50%であり、このうち90%が24時間にて放出される(残余はより遅く放出)。
【図19】口腔内の様々な投与部位を示す図である。
【図20】口腔内の様々な投与部位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
したがって、本発明は第一の態様において、1種以上のグルココルチコイドを含む医薬組成物であって、1種以上のグルココルチコイドの第一部分が実質的に即時に放出され、1種以上のグルココルチコイドの第二部分が少なくとも約8時間という長時間にわたり放出され、ヒドロコルチゾン当量として表される1種以上のグルココルチコイドの第一部分の量が組成物中の総ヒドロコルチゾン当量の約15〜約50%の範囲内であって、USP(米国薬局方)溶出試験第2法(パドル法)に準拠した、回転数が50rpmで酵素を含有しない擬似腸液を溶出溶媒とした溶出試験器を用いたUSPに従ったインビトロ溶出試験における組成物の試験の開始1時間後に放出される量として求められ、第一部分のヒドロコルチゾン当量の少なくとも約50%が溶出試験の最初の45分以内に放出される医薬組成物を提供する。
【0028】
本発明による医薬組成物は1日1回の経口投与を意図した単一組成物として好適に設計される。このような組成物は患者が摂取するのに簡便であり、したがって、好ましい態様である。
【0029】
しかし、本発明の範囲内において、本発明の組成物は二重組成物、即ち、異なる2種類の薬剤形態を含む組成物でもよく、例えば、徐放錠がグルココルチコイドの速放性経口医薬製剤と同時に(あるいは、他の好適な組合せにて)摂取される。
通常、このような二重組成物はキットのような単一パッケージにて提供される。
【0030】
したがって、本発明は、i)1種以上のグルココルチコイドを含み、この1種以上のグルココルチコイドを実質的に即時に放出するように設計された第一成分と、ii)1種以上のグルココルチコイドを含み、1種以上のグルココルチコイドを徐放するように設計された第二成分とを含み、この第一成分の1種以上のグルココルチコイドの少なくとも約50%が、USP溶出試験第2法(パドル法)に準拠した、回転数が50rpmで酵素を含有しない擬似腸液を溶出溶媒とした溶出試験器を用いた溶出試験の最初の45分以内に放出されるキットも提供する。
【0031】
本発明は第三の態様において、グルココルチコイド欠乏障害に罹患した患者を治療する方法であって、グルココルチコイドの血清濃度の急激な上昇を生じさせる第一有効量の1種以上のグルココルチコイドと、少なくとも約8時間という長時間、1種以上のグルココルチコイドの有効血清濃度を生じさせる第二有効量の1種以上のグルココルチコイドとを患者に投与するステップを含む方法に関する。
【0032】
本発明は第四の態様において、本明細書に記載のグルココルチコイド欠乏障害の治療用の医薬組成物またはキットの調製用の1種以上のグルココルチコイドの第一の量および第二の量の使用に関する。
【0033】
本発明の内容において、用語「徐放性」は、通常の錠剤から得られる放出と異なり、また、通常の錠剤から得られる時間より長い時間である8時間以上の放出を付与するあらゆる種類の放出を含むものとする。したがって、該用語はいわゆる「制御放出」、「放出制御」、「持続放出」、「パルス放出」、「延長放出」、「遅放出」、「時間至適化放出」および「pH依存性放出」という用語を含む。
【0034】
同様に、用語「速放」は、通常の錠剤から得られる放出と異なり、また、通常の錠剤から得られる放出より速い放出を付与するあらゆる種類の放出を含むものとする。
【0035】
1種以上のグルココルチコイドを速放に、1種以上のグルココルチコイドを徐放に用いることにより、個々の患者の薬剤感受性および体重の全般的放出プロファイルの相違を斟酌し、好適な治療効果を得るのに必要な1日用量の範囲を狭めることが可能であることが考えられる。
【0036】
したがって、内生コルチゾール分泌が極少量濃度であるか、あるいは0濃度である平均的な成人には、内生放出プロファイルをほぼ模倣するため、総1日用量が15〜30mgの範囲のヒドロコルチゾンまたは等用量の他のグルココルチコイドを1日1回投与することができる。
【0037】
本発明の内容において、用語「ほぼ模倣する」は、本発明による組成物またはキットの投与後約0.5〜1時間から約6.5〜7時間に対応する時間に得られる血清プロファイルが、午前6時〜正午における健常被験者のコルチゾールの血清プロファイルの形状を実質的に模倣するか、あるいは同形状に実質的に類似することを示すものである。1種以上のグルココルチコイドの第一および第二部分(または、キットの場合には成分)を連続的に摂取する場合、時間は第一部分の投与から開始する。
【0038】
本発明の医薬組成物またはキットは投与後約12〜18時間、薬剤の腸管吸収を付与するはずである。
【0039】
以下、医薬組成物に関して本発明を詳細に説明する。しかし、本発明のこの態様の下に開示される詳細および明細はすべて、本発明の他の態様ついて準用する。特に、本発明による組成物の第一および/または第二部分に関する開示は、本発明によるキットの第一および第二成分にも適用されることに留意する必要がある。
(医薬組成物−第一および第二部分)
前述のように本発明はグルココルチコイド含有医薬組成物に関する。この組成物の第一部分はグルココルチコイドを比較的速やかに放出する。ある種の医薬組成物ではどの部分が速放部分であるのかを明示することは容易であり得る(例えば、異なる色のペレットを含有するカプセルの場合、ある色を速放用に、別の色を徐放用にし、あるいは層状錠剤の場合、速放層を徐放層の上部にする)。
【0040】
この組成物の製造中に放出動態を評価するため、個々の部分(即ち、速放部分および徐放部分)を、例えばインビトロ溶出試験に付すことも比較的容易であり得る。しかし、最終組成物を開始点とした場合、組成物のどの部分が速放部分であるのか、また、徐放部分であるのかを明示することは、ほとんどの場合、困難となり得る。
【0041】
したがって、本発明の内容において、本発明による組成物の「速放部分」とは、USP溶出試験第2法(パドル法)に準拠した、回転数が50rpmで酵素を含有しない擬似腸液を溶出溶媒とした溶出試験器を用いたUSPに従ったインビトロ溶出試験におけるこの組成物の試験の開始1時間後に放出され、ヒドロコルチゾン当量として表される量と定義付けする。
【0042】
速放部分および徐放部分の両方は有さない既知の組成物と対照的に、i)速放部分は組成物中に含有される総ヒドロコルチゾン当量の約15%〜約50%を含有し、ii)第一部分のヒドロコルチゾン当量の少なくとも約50%は溶出試験の最初の45分以内に放出され、iii)第二部分は少なくとも約8時間という長時間にわたりグルココルチコイドを放出する。
【0043】
本明細書において用語「ヒドロコルチゾン当量」は、医師により総体的に理解されるグルココルチコイド全身療法を目的に、ヒドロコルチゾン1mgに相当する特定のグルココルチコイドのmg量を定義付けするために用いられる。該用語は、個々のグルココルチコイドが異なる効力を有し、また、所望の治療効果を得るため、個々のグルココルチコイドの異なる用量が必要であるという事実に基づく。
【0044】
グルココルチコイドの等用量は次の表1に基づいて計算することができる。
【0045】
【表1】
したがって、組成物の第一部分がベタメタゾン1.5mg(ヒドロコルチゾン40mgに相当)を含有し、組成物の第二部分がヒドロコルチゾン40mgを含有する場合、組成物中のヒドロコルチゾン当量の総量はヒドロコルチゾン80mgに相当する。したがって、第一部分が組成物の総ヒドロコルチゾン当量の50%を含有する。
【0046】
第一部分のグルココルチコイドの総量が前述の溶出試験において1時間以内に放出されると仮定した場合、最初の45分以内における第一部分からのグルココルチコイドの放出に関する必要条件は、総ヒドロコルチゾン当量の少なくとも25%が放出されることである。
【0047】
(第一部分の放出)
組成物の第一部分の具体的な実施形態は次の表2に示す必要条件の1つ以上を満たす。概して、溶出試験の開始後30分以内において提示された必要条件が満たされることが好ましい。好ましい実施形態において、第一部分に含有されるヒドロコルチゾン当量の少なくとも70%または少なくとも80%が、溶出試験の最初の30分以内に放出される。
【0048】
【表2】
本発明による組成物の投与後に比較的速やかに比較的高い血清濃度のグルココルチコイドを得られるようにするため、ヒドロコルチゾン当量として表される1種以上のグルココルチコイドの速放部分の量は、この組成物中の総ヒドロコルチゾン当量の約15%〜約50%、例えば、約20%〜約40%または約25%〜約35%の範囲内である。
【0049】
この組成物の第二部分は1種以上のグルココルチコイドを長期的に放出するように、即ち、少なくとも約8時間放出するように設計される。
【0050】
具体的な実施形態において、1種以上のグルココルチコイドの第二部分は少なくとも約10時間という長時間にわたり放出される。本発明による組成物を調製するために用いられる具体的な製剤技術に依存し、異なる放出パターンが可能になり、インビボ−インビトロ相関性は製剤技術により異なり得る。
【0051】
したがって、インビトロでの放出がインビボでの動態を変化させることなく、より長い時間持続する状況もあり得る。したがって、具体的な実施形態において、1種以上のグルココルチコイドの第二部分は少なくとも約12時間、例えば、少なくとも約15時間または少なくとも約20時間という長時間にわたり放出され得る。更に、本発明の内容において24時間という長時間が妥当であり得る。
【0052】
前述の放出は妥当な方法によりインビボで測定され得る。このような方法は現在開発中であり、多大な関心を集めている。しかし、一般的には本明細書に記載したようなインビトロの方法が好ましい。
【0053】
(総放出)
1種以上のグルココルチコイドの放出に関し、組成物の具体的な実施形態は次の表3に示す必要条件の1つ以上を満たす。概して、組成物に含有されるヒドロコルチゾン当量の少なくとも約80%または少なくとも90%は溶出試験の最初の24時間以内に放出されることが好ましい。一般的に、次の表3に記載の必要条件が適用される。
【0054】
【表3】
しかし、前述で考察したように、i)第二部分の放出がはるかに速く、ii)1種以上のグルココルチコイドが約15時間または14時間以内に放出され、および/またはiii)組成物の第一部分における1種以上のグルココルチコイドの量が比較的多い状況が存在する。このような場合、次の表4の必要条件の1つ以上が適用され得る。
【0055】
【表4】
図15〜18は本発明の範囲内にある異なる放出パターンを示す。
【0056】
(第二部分の放出)
通常、1種以上のグルココルチコイドの第二部分の放出は投与と同時に開始する。しかし、例えば、組成物の第二部分が腸溶錠またはペレットの剤形である場合のように、ある種の遅延時間が生じる状況があり得る。放出に関し、具体的な実施形態は次の表5に示す必要条件の1つ以上を満たす。
【0057】
【表5】
具体的な実施形態において、本明細書に定義する溶出試験の開始後、
i)1〜約6時間、1時間あたり第二部分に含有されるヒドロコルチゾン当量の約3%〜約15%が放出され、
ii)約6〜約10時間、1時間あたり第二部分に含有されるヒドロコルチゾン当量の約3%〜約10%が放出され、
iii)約10〜約12時間、1時間あたり第二部分に含有されるヒドロコルチゾン当量の約3%〜約7.5%が放出される。
【0058】
徐放部分に関し、原則的に徐放用に設計された任意の医薬製剤を用い得る。特に、放出が24時間放出として設計されている場合、一部の徐放製剤(例えば、マトリックス錠)からの活性物質の放出が極めて緩徐であり得ることは周知である。このような場合、第二部分の含量を定量するため、組成物中のヒドロコルチゾン当量の総量を推定することが必要であり得る。したがって、組成物の第二部分のヒドロコルチゾン当量の量は、妥当であれば(H総量−H第一部分)と定量され、式中、H総量は前述で明示した試験の開始後24時間以内に放出されるヒドロコルチゾン当量の総量であり、H第一部分は本明細書に定義するように決定される組成物の第一部分のヒドロコルチゾン当量の量である。
【0059】
(活性物質)
本発明の内容において、用語「グルココルチコイド」または「グルココルチコステロイド」は、治療、予防および/または診断上活性なグルココルチコイドあるいは生理作用を有するグルココルチコイドを示すものとする。該用語は、任意の物理形状、例えば、結晶形、非晶形または多形、妥当であれば鏡像体形またはラセミ体形を含む任意の立体異性体形あるいは前述の任意の組合せの形状の、例えば、医薬上許容な塩、複合物、溶媒和物、エステル、活性代謝物またはこれらのプロドラッグのような任意の妥当な形態のグルココルチコイドを含むものとする。
【0060】
本発明による組成物に含有される1種以上のグルココルチコイドは、医薬上許容なエステル、塩およびこれらの複合物を含むヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、トリアムシノロン、パラメタゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾンおよびフルドロコルチゾンからなる群より選択される。
【0061】
前述の段落に示すように、1種以上のグルココルチコイドの第一部分と第二部分は同じグルココルチコイドまたは同じグルココルチコイドの混合物でよい。第一および第二部分が同じ剤形の一部である場合(例えば、第一および第二部分が錠剤に含有され、第一部分がコーティングとして、あるいは別の層として第二部分を有するコア上に設けられる場合)、製造上の観点から容易であるため、通常はこのようになる。しかし、第一部分と第二部分が同じ剤形の一部でない場合(例えば、第一部分が発泡錠であり、第二部分が徐放錠の形態である場合)、あるいは異なるグルココルチコイドを用いる際に治療結果の向上が期待される場合、1種以上のグルココルチコイドの第一部分と第二部分は異なるグルココルチコイドまたは異なるグルココルチコイドの混合物である。
【0062】
グルココルチコイドの第一部分は速放用として用いられるため、組成物が経口投与される場合、放出および/または吸収は口腔の段階ですでに生じ得る。このような場合、第一部分に至適なグルココルチコイドは、活性物質が苦味を有するためヒドロコルチゾン(それ自体)またはコルチゾンの2種ではない可能性がある。しかし、風味が十分にマスキングされるのであれば、これらの物質を用い得る。「医薬上許容な賦形剤」に関する段落において、風味のマスキングについてより詳細に考察する。したがって、1種以上のグルココルチコイドの第一部分は許容な風味を有し、無味であり、あるいは効果的に風味がマスキングされ得る。
【0063】
1種以上のグルココルチコイドの第一部分の例には(前述したように)合成グルココルチコイド、例えば、その医薬上許容なエステル、塩および複合物を含むヒドロコルチゾン21−スクシネート、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、トリアムシノロン、パラメタゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾンおよびフルドロコルチゾンがある。
【0064】
第二部分に関しては前述の任意のグルココルチコイドを用い得る。特定の実施形態ではヒドロコルチゾンが好ましい。
【0065】
(投与経路−投与量)
本発明の医薬組成物は好適な投与経路により投与され得る。通常、患者の利便性により経口経路が好ましいが、この組成物の第一部分と第二部分が異なる剤形である場合、この組成物の第一部分は口腔、鼻腔、直腸、消化管の粘膜または肺、気管支もしくは呼吸器の粘膜・上皮を通じて投与されるように好適に設計され得る。
【0066】
特に高速の作用発現には口腔粘膜を通じた投与が妥当である。図19および20は使用に適した部位または口腔粘膜投与を示す。明確な4つの部位を用いることができ、これは即ち、用語「口唇」投与を含み、歯肉(歯茎)と頬の内側の間の粘膜に医薬組成物を投与するために用いられる「口腔」投与;舌下に医薬組成物を投与することを指す「舌下」投与;硬口蓋および/または軟口蓋に医薬組成物を投与することを指す「口蓋」投与;並びに上歯肉および/または下歯肉に医薬組成物を投与することを指す「歯肉」投与である。
【0067】
高速の作用発現を必要とする場合、組成物の第一部分には口腔投与経路、即ち、歯肉と頬の内側の間の口腔粘膜に医薬組成物を投与し、2つの部位、即ち、歯肉粘膜と頬粘膜に吸収を生じさせることが好ましい。
【0068】
組成物の第一部分と第二部分に異なる剤形を用いる場合、通常、最終組成物はキットとして好適に提示される。
【0069】
しかし、本発明の特定の実施形態において、医薬組成物は速放部分および徐放部分を含む単一剤形である。このような組成物は好ましくは1日1回投与されるように設計されるため、特に長期的治療における使用に適する。しかし、患者が補充用量のグルココルチコイドを必要とする状況があり得る(例えば、身体活動、ストレスなどのため)。このような状況では速やかな発現を生じさせる速放部分の別な用量を患者に投与することができる。
【0070】
本発明による組成物では1日1回の投与頻度を目的とする。本発明の内容において、用語「1日1回」/「1日に1回」は、好適な治療および/または予防上の反応を得るため、1日に1回のみ医薬組成物を投与する必要があるということを意味するものとする。しかし、如何なる投与であっても2以上の用量単位、例えば、2〜4用量単位または異なる用量単位の投与を含み得る(例えば、錠剤およびフィルム)。
【0071】
前述のように、本発明の組成物は、総体的に1日1回投与されて血漿コルチゾールの日内リズムを模倣するように設計される。完全に生理的なコルチゾールの血清濃度時間プロファイルをインビボにて得るため、低/検出不能なコルチゾールの血清濃度からの有意な上昇を午前4時頃に得る必要がある。就寝時に投与される遅延放出医薬製剤では個体内および個体間における消化管通過時間(特に、結腸通過時間)の大幅な変動に起因し、これを十分な精度にて得ることができない。故に、吸収開始の目標時間を午前4時とするこのような製剤は吸収開始に大幅な変動を生じさせ、一部の患者は夜間早く、また遅く、血清における高ピーク値を得るであろう。したがって、本発明は早朝にできる限り早く十分且つ生理的な血清コルチゾール濃度を得るべく、患者に迅速な吸収を提供することを目的とする。本発明は30分以内に臨床的に有意なコルチゾールの血清濃度(>200nmol/L)を生じさせる迅速な吸収を提供する。これは、後述の実施例に示す本発明の新規の速放経口製剤または非経口的経頬投与により実行可能である。更に、本明細書に例示するような単一組成物を用いることにより、速放と徐放の組合せも可能である。したがって、本発明による組成物またはキットにて1種以上のグルココルチコイドを投与すると、グルココルチコイドの生体日内リズムと同期した血漿濃度−時間プロファイルが得られる。本発明の内容において、用語「同期」または「模倣」は、本発明による組成物またはキットの投与後のグルココルチコイドの血清濃度プロファイルが、少なくとも投与後0.5〜6時間に対応する時間、正常な健常被験者の血清濃度プロファイルと同様の形状を有する状況を示すために用いられる(即ち、組成物またはキットが午前6時に投与される場合、患者のグルココルチコイドの血清プロファイルは午前6時30分〜正午に対応する時間に測定される健常被験者の血清プロファイルと同じ形状を有する)。
【0072】
ヒドロコルチゾンを用いたグルココルチコイド代償療法の現在のモニタリングは煩雑であって実行可能ではない。b.i.d.(即ち、1日2回)投与の間に2つのピークが現れ、その間に低濃度または検出不能なコルチゾールの血清濃度を伴う。より高頻度の投与にてより日周期的なプロファイルが生じるが、ピーク値およびトラフ値を示し続ける。したがって、このような曲線の臨床的意義は適切に実証されていない。しかし、速放部分(IR)および徐放部分(ER)を用いた本発明の組成物の投与により、通常の人間生理学において十分に実証されたプロファイルが生じる。これにより、後述の表に示す目標値を有する日周期性血清プロファイルを得るため、用量を個々人の必要性に合わせて調整する可能性が広がる。
【0073】
好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は午前中に1日1回投与するように設計される。典型的には、この組成物は覚醒時、即ち、午前4時〜正午、午前4時〜10時、午前4時〜9時、午前5時〜8時または午前6時〜8時、最も典型的には午前6時〜8時に投与される。また、この組成物は夕方以降および夜間における低濃度または検出不能なグルココルチコイドの血清濃度(<50nmol/lコルチゾールに相当)を意味する、6〜9時間の「グルココルチコイド非含有」間隔を提供するようにも設計される。
【0074】
概して、本発明による組成物中に存在するグルココルチコイドの用量は、とりわけ具体的な薬剤物質、患者の年齢および病態および治療の対象となる疾患に依存する。
【0075】
医薬組成物の第一および第二部分のグルココルチコイドは、ヒドロコルチゾン当量5〜50mgの1日量を含む必要がある。比較のため、種々のグルココルチコイドの等価ミリグラム用量を記載した表を本明細書に示す。したがって、等価用量での他の形態の合成グルココルチコイドを用い得る。通常、本発明に従った医薬組成物は組成物中のヒドロコルチゾンとして表されるヒドロコルチゾン当量の総量約1〜80mgを含有する。具体的な実施形態において、組成物中のヒドロコルチゾン当量の総量は約1〜約75mg、例えば、約1〜約70mg、約5〜約60mg、約5〜約50mg、約5〜約40mgまたは約10〜約30mgである。
【0076】
より具体的に通常の1日量の範囲を以下に示す。
ヒドロコルチゾン 1〜30mg
コルチゾン 1〜20mg
ベタメタゾン 1〜20mg
プレドニゾロン 1〜10mg
デキサメタゾン 0.1〜2mg
フルドロコルチゾン 0.05〜5mg
プレドニゾン 10〜50mg
メチルプレドニゾロン 2〜20mg
【0077】
前述の1日1回投与の用量を含有する本発明に従った医薬組成物は、次の表6に記載する血清濃度を提供するように設計される(狭範囲が好ましいが、個体変動に起因し、より広範囲でも良好である)。以下に示す血清濃度はヒドロコルチゾン当量に関して示す。ヒドロコルチゾンとは別のグルココルチコイドを用いる場合、当業者には妥当な血清濃度を定量する術は既知である(本明細書に示した指針を参照されたい)。
【0078】
【表6】
したがって、グルココルチコイドが単回用量として2つの異なる部分にて投与されると同時に、グルココルチコイドの生体日内リズムとほぼ同期した血漿濃度−時間プロファイルが得られる。グルココルチコイドは以下の表7に示す血清濃度を提供するように放出されることが好ましい。
【0079】
【表7】
医薬製剤は1日1回の投薬として覚醒時、典型的には午前中の6時〜8時に投与されると考えられる。したがって、この医薬製剤は夕方以降および夜間に6〜9時間のグルココルチコイド非含有間隔の血清濃度<50nmol/lを提供するようにも設計され、この間、患者に外来性グルココルチコイドを投与する必要はない。
【0080】
(医薬剤形)
前述から示されるように、本発明に従った組成物は経口投与用に設計される。本発明に基づくキットの場合、徐放成分は経口投与用に好適に設計され、速放部分は任意の好適な投与経路用に、好ましくは粘膜を通じた投与経路用に設計され得る。好ましい態様において、本発明に従った組成物またはキットは経口投与、即ち、経口摂取による投与または口腔への投与用に設計される。
【0081】
最も好適には、本発明に基づくキットの医薬組成物および少なくとも徐放成分は、固体剤形、例えば、顆粒、ビーズ、ペレットおよび粉末のような剤形である。
【0082】
通常、本発明によるキットの組成物および個々の成分は、錠剤、カプセルまたはサシェットを含む単位剤形として提示される。本発明によるキットの速放部分または成分に関しては異なる単位剤形として提示され、例えば、口腔粘膜に適用する薄膜フィルム、好適なデバイス、例えば、口腔粘膜または鼻粘膜に対する噴霧器、肺、気管支または呼吸器の粘膜および上皮を通じて適用する吸入器または粉末吸入器を通じて適用する溶剤、坐剤または直腸粘膜への投与に適した他の組成物を含み、あるいは咀嚼錠、吸飲錠、発泡錠、溶融錠、トローチ剤、芳香錠を含む速放錠として提示され、あるいはよりキャンディ様の剤形として提示され得る。
【0083】
原則的に、経口制御放出組成物を調製する如何なる関連製剤技術もこの組成物の徐放部分に適用され得る。このような組成物は、例えば、拡散制御薬剤送達システム、浸透圧制御薬剤送達システム、腐食性薬剤送達システムなどを含む。したがって、この組成物は単一ユニットまたは複数ユニットの剤形としての用途を意図する形態であり得る。同様に、本発明による組成物またはキットの速放部分を製剤化する際、医薬組成物を調製する如何なる関連製剤技術も適用され得る。医薬製剤分野の当業者は手引書であるRemington's Pharmaceutical Sciencesおよび本明細書における実施例に指針を見出すことができる。
【0084】
本明細書に記載の徐放部分の溶出プロファイルのタイプを得ることを目的に、全般的な速放および徐放製剤技術に関し、以下に手短に述べる。以下に述べる組成物において、1種以上のグルココルチコイドの速放を生じさせる部分の組込み方は当業者には既知であろう。
【0085】
(本発明による組成物の速放部分またはキットの速放成分)
速放部分は、通常は1種以上の医薬上許容な賦形剤または担体(本明細書において「速放担体」とも示す)を併用する活性物質としてのグルココルチコイドを含み、インビトロでのグルココルチコイドの迅速な放出/溶出、医薬組成物の患者への投与後、インビボでの口腔または消化管のような投与部位におけるグルココルチコイドの迅速な溶出およびグルココルチコイドの迅速な吸収を提供する。速放部分に用いる1種以上の医薬上許容な賦形剤は固有であるか、あるいは速放に寄与し得るが、決して放出を遅延または抑制するものではない。
【0086】
速放担体は好適な医薬賦形剤を含み、グルココルチコイドの迅速な溶出を付与するようにインビトロおよびインビボにてグルココルチコイドを溶出溶媒に呈示する。速放部分はそれ自体既知の技術により製剤化され、例えば、以下のような技法がある。
【0087】
微粉砕/超微粉砕されたグルココルチコイド粒子は水溶性の医薬上許容な賦形剤、例えば、ラクトース、マンニトールまたは他の任意の好適な賦形剤と完全に混合され、任意で好適な顆粒化液による顆粒化後、任意で好適な結合剤、崩壊剤、潤滑剤、着香料、着色剤または他の好適な作用剤と混合され、組成物の好適な速放部分を形成する。速放部分は層状錠剤の独立層への圧縮により、あるいは有核錠の外層として形成することができる。
【0088】
速放部分を製剤化する他の方法は、まず、好適な医薬賦形剤、例えば、ラクトース、マンニトールまたは他の好適な賦形剤上にグルココルチコイド液剤を配置し、前述のように継続するか、あるいはまず、好適な賦形剤、例えば、ポリエチレングリコール、好適なポロキサマーまたは他の任意の好適な賦形剤中にグルココルチコイド固溶体を作製し、前述のように継続することである。
【0089】
速放部分は粉末混合物または粉末顆粒の剤形にし、徐放部分と混合しカプセルまたはサシェットに配合することもできる。また、速放部分は小ペレットに製剤化し、徐放ペレットと混合しカプセルに配合することもできる。速放部分と徐放部分の混合物は、好適な医薬賦形剤と混合して均質な混合物にした後、錠剤に圧縮することができる。
【0090】
本発明の別の実施形態において、速放部分はグルココルチコイドの徐放錠または徐放ペレットにグルココルチコイドを含有する迅速溶出コーティングを施すことにより製剤化し得る。
【0091】
本明細書において前述したように、速放部分または成分は、例えば、口腔用途または例えば、他の口腔粘膜用の薄膜フィルムの剤形にて、例えば、粘膜付着性組成物のような別個の用量単位でもあり得る。
【0092】
また、速放部分は、例えば、鼻内噴霧組成物のような鼻腔への投与を目的とした剤形でもよく、あるいは例えば、坐剤としての直腸用固形組成物またはレクチオルとしての直腸用半固形組成物または直腸用液剤としての直腸用流体組成物のような直腸投与用に設計され得る。
【0093】
肺、気管支または呼吸器の粘膜および上皮への投与では、組成物は吸入器または粉末吸入器の形式をとり得る。
【0094】
(本発明による組成物の徐放部分またはキットの徐放成分)
徐放部分は、医薬上許容な賦形剤または担体(本明細書において「徐放担体」とも示す)における活性物質としてのグルココルチコイドを含み、インビトロでのグルココルチコイドの長時間の放出/溶出、医薬組成物の患者への投与後、インビボでの消化管におけるグルココルチコイドの長時間の溶出およびグルココルチコイドの長時間の吸収を提供する。
【0095】
徐放担体は好適な医薬賦形剤を含み、長時間妥当な速度にてグルココルチコイドの溶出を付与するようにインビトロおよびインビボにてグルココルチコイドを溶出溶媒に呈示する。放出動態はゼロ次、一次または一次とゼロ次の混合動態に従い得る。様々な徐放技術の例に、例えば、単一ユニット(例えば、マトリックス錠、被覆マトリックス錠、層状錠剤、多層被覆ユニットなど)および複数ユニット(例えば、徐放コーティングを有するユニット、徐放圧縮コーティングを有するユニット、多層コーティングを有するユニットなど)がある。全般的に適用可能な徐放製剤技術について以下に説明する。以下に記載の組成物において、当業者には1種以上のグルココルチコイドの比較的速やかな放出を生じさせる速放部分の組込み方は既知であろう。一例として、このような部分は速放用のグルココルチコイドを含むコーティング最外層に組み込まれ、2層または多層状錠剤における独立層に組み込まれ、あるいは放出遅延剤を用いずに製剤化されるペレットの剤形にて組み込まれ得る。徐放部分はそれ自体既知の技法により製剤化され、例えば、以下のような技法がある。
【0096】
グルココルチコイドは不水溶性の多孔性マトリックスに埋め込まれ、このマトリックスから細孔を通じた拡散によりグルココルチコイドが放出される。このような多孔性マトリックスは不溶性可塑材、例えば、PVC、ステアリン酸、パラフィンまたは他の好適な不溶性材料から作製することができ、細孔を形成するため任意で好適な賦形剤も用いる。
【0097】
また、グルココルチコイドは不水溶性の多孔性マトリックスに埋め込まれ、このマトリックスの漸進的腐食によりこのマトリックスからグルココルチコイドの溶出が得られる。このような腐食マトリックスは好適な脂質または難溶性もしくは不溶性の医薬賦形剤から作製することができ、任意で他の好適な医薬賦形剤と混合され得る。
【0098】
また、グルココルチコイドは親水性膨潤ゲルマトリックスに埋め込まれ、このマトリックスの腐食を通じた拡散によりこのマトリックスからグルココルチコイドが放出される。通常、このようなマトリックスは修飾セルロース材料、例えば、好適な医薬賦形剤と混合され、錠剤に製剤化されたヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。親水性ゲルマトリックスに好適な他の賦形剤として種々のメタクリル酸共重合体、高分子量ポリオキシエチレンおよびポロキサマーを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
また、グルココルチコイドは、例えば、好適な溶出特性を有する錠剤またはペレットのような個体形状に製剤化され、次に、例えば、膜または膜の細孔を通じた活性物質の拡散の速度を制御する膜のような放出速度制御膜を被覆され得る。このような膜は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、糖、塩化ナトリウムまたは他の任意の好適な水溶性物質および任意で可塑剤のような水溶性細孔形成物質を任意で含有する、例えば、エチルセルロースまたは他の任意の好適な膜形成賦形剤から作製することができる。
【0100】
特定の実施形態において、本発明による医薬組成物は錠剤の剤形であり、第一部分の1種以上のグルココルチコイドはコーティングとして設けられる。別の特定の実施形態において、第一および第二部分の1種以上のグルココルチコイドはペレット、顆粒、ビーズまたは粉末として提供される。
【0101】
したがって、投与手段は速放部分と徐放部分の両方の経口投与用の製剤であり得る。例えば、経口投与用の組成物は第二部分(徐放部分)の外側にコーティングされた第一部分(速放部分)を含む錠剤であり得る。また、経口投与用の組成物は本発明による組成物の第一部分またはキットの成分を含むカプセルでもよい。
(医薬上許容な賦形剤)
本発明の内容において、用語「医薬上許容な賦形剤」は、それ自体が治療および/または予防効果を実質的に全く有さないという意味において不活性な任意の物質を示すものとする。このような賦形剤は、許容な技術的性質を有する医薬、化粧および/または食品組成物を得ることを可能にすることを目的に添加し得る。
【0102】
本発明による組成物またはキットに用いる好適な賦形剤の例には、充填剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤などまたはこれらの混合物が含まれる。本発明による組成物またはキットの個々の部分は異なる目的で使用されるため(例えば、速放および徐放)、通常、賦形剤はこのような異なる使用を考慮して選択される。当該の特定の剤形に依存し、どのような医薬上許容な賦形剤が妥当な選択であるかは当業者には既知であろう。好適な用途用の他の医薬上許容な賦形剤は、例えば、酸性化剤、アルカリ化剤、保存剤、抗酸化剤、緩衝剤、キレート化剤、着色剤、錯化剤、乳化剤および/または可溶化剤、着香料・芳香剤、保湿剤、甘味剤、湿潤剤などである。
【0103】
好適な充填剤、希釈剤および/または結合剤の例には、ラクトース(例えば、噴霧乾燥ラクトース、α−ラクトース、β−ラクトース、タブレトース(Tabletose)(登録商標)、種々のグレードのファルマトース(Pharmatose)(登録商標)、ミクロトース(Microtose)(登録商標)またはファースト-フロック(Fast−Floc)(登録商標))、微結晶セルロース(種々のグレードのアビセル(Avicel)(登録商標)、エルセマ(Elcema)(登録商標)、ビバセル(Vivacel)(登録商標)、ミン タイ(Ming Tai)(登録商標)またはソルカ-フロック(Solka−Floc)(登録商標))、ヒドロキシプロピルセルロース、L−ヒドロキシプロピルセルロース(低置換)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(例えば、信越化学工業(株)のメトセルE,FおよびK、メトローズSH、例えば、4,000cpsグレードのメトセルEおよびメトローズ60SH、4,000cpsグレードのメトセルFおよびメトローズ65SH、4,000、15,000および100,000cpsグレードのメトセルK;並びに4,000、15,000、39,000および100,000グレードのメトローズ90SH)、メチルセルロースポリマー(例えば、メトセルA、メトセルA4C、メトセルA15C、メトセルA4M)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチレン、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、ショ糖、アガロース、ソルビトール、マンニトール、デキストリン、マルトデキストリン、デンプンまたは改質デンプン(ポテトデンプン、トウモロコシデンプンおよび米デンプンを含む)、リン酸カルシウム(例えば、塩基性リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二カルシウム水和物)、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、コラーゲンなどが含まれる。
【0104】
希釈剤の具体例は、例えば、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストラン、デキストリン、デキストロース、フルクトース、カオリン、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、ショ糖、糖などである。
【0105】
崩壊剤の具体例は、例えば、アルギニン酸またはアルギン酸、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよび他のセルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、グリコール酸ナトリウムデンプン、デンプン、アルファ化デンプン、カルボキシメチルデンプン(例えば、プリモゲル(Primogel)(登録商標)およびエクスプロッタ(Explota)(登録商標)などである。
【0106】
結合剤の具体例は、例えば、アカシア、アルギニン酸、寒天、カラギーナンカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、液状グルコース、グアールガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ペクチン、PEG(ポリエチレングリコール)、ポビドン、アルファ化デンプンなどである。
【0107】
滑沢剤および潤滑剤も組成物中に含まれ得る。この例にはステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは他のステアリン酸金属塩、タルク、ワックスおよびグリセリド、軽油、PEG、ベヘン酸グリセリル、コロイド状シリカ、水素添加植物油、トウモロコシデンプン、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、アルキル硫酸塩、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどが含まれる。
【0108】
本発明の組成物または固体剤形に含まれ得る他の賦形剤は、例えば、着香料、着色剤、風味マスキング剤、pH調節剤、緩衝剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、湿潤剤、湿度調節剤、界面活性剤、懸濁剤、吸収促進剤、懸濁剤、放出制御剤などである。
【0109】
本発明による組成物またはキット成分にフィルムコーティング、腸容コーティング、放出制御コーティング、保護コーティング、抗粘着コーティングなども施し得る。
【0110】
また、例えば、1種以上のグルココルチコイドの徐放に関する妥当な特性を得るためにも、本発明による組成物(またはその一部)に被覆し得る。コーティングは速放用の1種以上のグルココルチコイドを含有する易溶性フィルムとしても施し得る。また、コーティングは1種以上のグルココルチコイドの不快な風味をマスキングするためにも施し得る。コーティングは単一ユニット剤形(例えば、錠剤、カプセル)上に施し、あるいはポリデポット(polydepot)剤形またはその個々のユニットに施し得る。
【0111】
好適なコーティング材料は、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリルポリマー、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、ゼラチン、メタクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、セラック、ショ糖、二酸化チタン、カルナウバワックス、微結晶性ワックス、グリセリルモノステアレート、ゼインである。
【0112】
可塑剤および他の成分をコーティング材料に加え得る。同種または異種の活性物質もコーティング材料に加え得る。
【0113】
(風味のマスキング)
一般的に、大部分の場合、刺激性の性質または分子凝集体形成能を有する薬物から口腔粘膜または経鼻投与用の十分な安全性および安定性を有する製剤を調製することは困難であるが、これは使用する薬物の種類に依存する。ヒドロコルチゾンの場合、主成分が明らかな苦味を有し、反復使用できるように製剤には風味のマスキングを施す必要がある。
【0114】
風味マスキング剤はメントール、ペパーミント、バニリンまたはテルペンベースの化合物でよい。加えて、風味マスキング剤は人工甘味剤、例えば、ソルビトール、キシリトールまたはアスパルテームでよい。風味マスキングは粒子としてグルココルチコイドをマイクロカプセル化することによっても可能である。例えば、これはレシチンベースの化合物により実施可能である。風味マスキング剤は投与製剤の表面および内部に存在するように活性薬物と慎重に混合される。風味マスキングはシクロデキストリンとの包接複合物の形成によっても可能である。
【0115】
シクロデキストリン化合物の典型例はα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、ジメチルβ-シクロデキストリン、マルトシルβ-シクロデキストリンおよび硫酸化β-シクロデキストリンである。α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンが特に好ましい。これらのシクロデキストリン化合物は単独で、あるいは組み合わせて用い得る。
【0116】
使用するシクロデキストリン化合物の量はその可溶度およびヒドロコルチゾン濃度により変動し得る。しかし、シクロデキストリン化合物の量は0.5〜4.0mol、好ましくは2.0〜4.0mol、ヒドロコルチゾンと同程度のモルである。
【0117】
(方法の態様)
本発明による医薬組成物またはキットは、グルココルチコイド欠乏障害に罹患したヒトを含む哺乳動物のような対象の治療における使用に好適である。
【0118】
本発明により治療されるグルココルチコイド欠乏障害は、一次性、二次性または三次性副腎機能不全であり得る。グルココルチコイド慢性投与が適応となる他の病態、例えば、炎症性腸疾患としての全身性炎症性疾患、リウマチ関節炎および他の全身性リウマチ様疾患も本発明により治療することができる。
【0119】
本発明は別の態様において、グルココルチコイド欠乏障害に罹患した患者を治療する方法であって、血清グルココルチコイド濃度の急激な上昇を生じさせる第一有効量の1種以上のグルココルチコイドと、少なくとも約8時間という長時間、1種以上のグルココルチコイドの有効血清濃度を生じさせる第二有効量の1種以上のグルココルチコイドとを患者に投与するステップを含む方法に関する。
【0120】
第一と第二有効量の1種以上のグルココルチコイドは、実質的に同時(長くて10分以内、好ましくは5分以内)に、あるいは連続的(約10分〜約1時間の間隔)に投与され得る。
【0121】
第一および第二有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与により、次の血清濃度が得られる(ヒドロコルチゾンとして表す)。
【0122】
第一有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与後45分以内、好ましくは30分以内または20分以内に、血清濃度は少なくとも約200nmol/lである。
【0123】
第一有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与後約2時間、血清濃度は約200〜約1000nmol/lの範囲、好ましくは約400〜約700nmol/lの範囲である。
【0124】
第一有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与後約6時間、血清濃度は約200〜約600nmol/lの範囲、好ましくは約200〜約400nmol/lの範囲である。
【0125】
第一有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与後約10時間、血清濃度は約50〜約400nmol/lの範囲、好ましくは約100〜約300nmol/lの範囲である。
【0126】
第一有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与後約14時間、血清濃度は最大で約300nmol/l、好ましくは最大で200nmol/l、例えば、約50〜約200nmol/lの範囲である。
【0127】
第一有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与後約18時間、血清濃度は約100nmol/l未満、好ましくは約50nmol/l未満である。
【0128】
少なくとも特定の時間、例えば午前中にヒトのような健常被験者の血清プロファイルを模倣する血清プロファイルを得るため、早朝覚醒時の午前4時〜正午の間、例えば、午前5時〜正午の間、午前6時〜10時の間、午前6時〜9時の間、午前6時〜8時の間に、第一および第二有効量の1種以上のグルココルチコイド投与される。
【0129】
第一および第二の量の1種以上のグルココルチコイド投与後の血清濃度は、第一有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与後約0.5〜1時間から約6.5〜7時間に対応する時間にて、午前6時〜正午における健常被験者のコルチゾールの血清濃度を模倣し、通常、実質的に3時間のグルココルチコイド非含有の血清濃度が毎日午後10時頃〜午前6時頃の時間に得られる。
【0130】
第一および第二有効量は本明細書に定義する医薬組成物またはキットの形態にて投与される。通常、第一および第二の量は絶食状態にて(即ち、投与前少なくとも4時間および投与後少なくとも0.5〜1時間は食物摂取なしで)午前中に患者に投与する必要があり、キットの成分の組成物が錠剤の剤形である場合、組成物を水、例えば、50〜300mlまたは約200mlの水と共に摂取することが推奨される。
(本発明による組成物またはキットの使用)
本発明は別の態様において、グルココルチコイド欠乏障害を治療し、本明細書に定義する血清濃度を提供すべく、本明細書に定義する医薬組成物またはキットを調製するための第一および第二の量の1種以上のグルココルチコイドの使用に関する。
図面の簡単な説明
【0131】
図1は、実施例6の結果を示す図である。インビボ血漿プロファイルである。徐放錠、直径7mm、中等度の圧縮力、ヒドロコルチゾン20mg、経口投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
図2は、実施例6の結果を示す図である。IR−ER錠の溶出プロファイル。
図3は、実施例11の結果を示す図である。インビボ血漿プロファイル。徐放錠、直径7mm、中等度の圧縮力、ヒドロコルチゾン20mg、経口投与および粘膜粘着性薄膜層フィルムのヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
図4は、実施例12の結果を示す図である。インビボ血漿プロファイル。徐放錠、直径7mm、中等度の圧縮力、ヒドロコルチゾン20mg、経口投与および水200ml中ヒドロコルチゾン10mgの液剤、経口投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
図5は、実施例18の結果を示す図である。組成物Aの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。
【0132】
図6は、実施例18の結果を示す図である。組成物Bの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。
図7は、実施例18の結果を示す図である。組成物Cの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。
図8は、実施例19の結果を示す図である。フィルムAの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。非粘膜粘着性薄膜層フィルム、6cm2、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
図9は、実施例19の結果を示す図である。フィルムBの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。非粘膜粘着性薄膜層フィルム、6cm2、酢酸ヒドロコルチゾン11.2mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
図10は、実施例20の結果を示す図である。組成物Aの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。粘膜粘着性薄膜層フィルム、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【0133】
図11は、実施例20の結果を示す図である。組成物Aの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。粘膜粘着性薄膜層フィルム、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
図12は、実施例21の結果を示す図である。組成物Cの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。粘膜粘着性速放錠、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
図13は、実施例22の結果を示す図である。実施例21の組成物Cの溶出曲線。
図14は、実施例22の結果を示す図である。実施例20の組成物Aの溶出曲線。
図15は、IR/ER組合せ製品からのヒドロコルチゾン(HC)の目標インビトロ放出を示す図である。IR部分:総用量の30%;ER部分:総用量の70%;IR部分:20分以内にて>90%放出、目標:できる限り速やかに100%(15分以内);ER部分:14〜16時間一定速度にて90%(本実施例において15時間)。残余の10%はより遅い速度にて放出される。累積的放出を示す。
【0134】
図16は、図15と同じ放出を示す図である。しかし、本図では放出率として示す(1時間あたりの放出%)。
図17は、IR15%とER85%のIR/ER組合せ製品からのヒドロコルチゾン(HC)の目標インビトロ放出を示す図である。IR部分:総用量の15%であり、50%が40分にて放出。残余は75分以内に放出される;ER急速部分:総用量の85%であり、このうち90%が10時間にて放出される(残余はより遅く放出);ER緩徐部分:総用量の85%であり、このうち90%が24時間にて放出される(残余はより遅く放出)。
図18は、IR/ER組合せ製品からのヒドロコルチゾン(HC)の目標インビトロ放出を示す図である。IR部分:総用量の50%;ER部分:総用量の50%;IR部分:総用量の50%であり、50%が40分にて放出。残余は75分以内に放出される;ER急速部分:総用量の50%であり、このうち90%が10時間にて放出される(残余はより遅く放出);ER緩徐部分:総用量の50%であり、このうち90%が24時間にて放出される(残余はより遅く放出)。
図19は、口腔内の様々な投与部位を示す図である。
図20は、口腔内の様々な投与部位を示す図である。
以下の実施例において本発明を更に例示する。
【0135】
(材料)
以下の実施例に用いた材料を表8に示す。
【0136】
【表8−1】
【表8−2】
【0137】
(方法)
本明細書にて報告するインビボ試験は健常ボランティアを対象に行った。試験組成物の投与前日の午後6時および午後11時に、ベタメタゾン2mgの経口投与により内生コルチゾール分泌を抑制した。試験組成物を健常ボランティアに投与した。ボランティアらを絶食状態にし、正午まで食物摂取を許可しなかった。錠剤投与の場合、水200mlと共に摂取させた。内生コルチゾール分泌の抑制翌日の午前8時〜午前10時に試験組成物を投与した。
【実施例】
【0138】
実施例1
(拡散によりグルココルチコイドを放出する多孔性マトリックス)
次の実施例は拡散によりグルココルチコイドが放出される多孔性マトリックスに関する。このマトリックスに速放用の易水溶性グルココルチコイドを含有するフィルムをコーティングする。
ヒドロコルチゾン 20g
ラクトース 30g
パラフィン粉末 20g
珪酸アルミニウムナトリウム 20g
を乾式混合し、エチルセルロースの5%エタノール溶液により造粒する。
【0139】
この湿潤塊を篩過、乾燥、混練し、
リン酸カルシウム 40g
と混合し、最後に
ステアリン酸マグネシウム 3g
と混合する。
【0140】
この混合物を、7mm凹型丸パンチを用いてヒドロコルチゾン20mgを含有する錠剤に打錠する。錠剤重量は約140mgである。
【0141】
この錠剤に
ヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム 10%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 3%
タルク 10%
を含有する水懸濁液をコーティングし、各錠剤のコーティングがヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム6.7mgを含有するようにする。
【0142】
実施例2
(細孔形成物質を含有する不水溶性フィルムをコーティングした錠剤)
次の実施例は細孔形成物質を含有する不水溶性フィルムをコーティングした錠剤に関する。この錠剤に速放用のグルココルチコイド部分を含有する水溶性フィルムを更にコーティングする。
ヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム 20g
リン酸カルシウム 75g
タルク 5g
ステアリン酸マグネシウム 2g
を乾式混合し、はす縁を有する6mm凹型丸パンチを用いてヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム20.1mgを含有する錠剤に打錠する。錠剤重量は約103mgである。
【0143】
この錠剤に
エチルセルロース 5%
粒子サイズ<10μmに超微粉砕した糖 10%
のアセトン懸濁液をコーティングし、各錠剤が約40mgのコーティングを担持するようにする。
【0144】
この錠剤に
ヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム 10%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、6cps 3%
タルク 10%
を含有する水懸濁液を更にコーティングし、各錠剤の外側コーティングがヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム6.7mgを含有するようにする。
【0145】
実施例3
(親水性マトリックス錠)
本実施例は、速放用のグルココルチコイド部分を含有するコーティングを乾式被覆した親水性ゲル状マトリックス錠に関する。
ヒドロコルチゾン 20g
珪酸アルミニウムナトリウム 15g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、60cps 80g
を混合し、エタノールにより造粒する。この湿潤塊を篩過、乾燥、混練する。この乾燥混合物に
タルク 5g
ステアリン酸マグネシウム 2g
を加える。
【0146】
約2分間混合した後、この混合物を、7mm平坦型丸パンチを用いて徐放錠に打錠する。各錠剤はヒドロコルチゾン20mgを含有し、約117mgの錠剤重量を有する。
ヒドロコルチゾン 10g
ラクトース 40g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、6cps 5g
を乾式混合し、次に、水により造粒する。この湿潤塊を篩過、乾燥、混練する。この乾燥塊に
ポリビニルピロリドン(架橋結合) 5g
を加え、混合後、
ステアリン酸マグネシウム 1g
を加え、更に2分間混合し続ける。
【0147】
9mm凹型丸パンチを具備したManesty DryCota(商標)錠剤製造機を用いて、各徐放錠の周囲上の約61mgの錠塊を打錠することにより有核錠を製造する。有核層はヒドロコルチゾン10mgを含有する。
【0148】
実施例4
(速放用ペレット(IRペレット)と徐放用ペレット(ERペレット)の混合物を含有するカプセル)
(ERペレット)
糖/デンプン種子、直径0.25〜0.35mm 1kg
に
エチルセルロース、10cps 5%
クエン酸トリエチル 0.4%
のエタノール/アセトン40/60溶液を、Wursterカラムを備えた流動床にてまずコーティングし、厚さ約3μmのコーティングとし、次に、
ヒドロコルチゾン 5%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、6cps 1%
のエタノール/アセトン40/60溶液を更にコーティングし、約25%の重量増加とする。
【0149】
同じ装置を用いてこのペレットに
エチルセルロース、10cps 5%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、6cps 1.5%
クエン酸トリエチル 0.3%
のエタノール/アセトン40/60溶液を更にコーティングし、厚さ約20μmのコーティングとする。
【0150】
(IRペレット)
糖/デンプン種子、直径0.25〜0.35mm 1kg
に
ヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム 10%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、6cps 3%
タルク 10%
を含有する水懸濁液を、Wursterカラムを備えた流動床にてコーティングし、約75%の重量増加とする。
【0151】
ヒドロコルチゾン20mgを含有するERペレット量(約140mg)とヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム13.4mgを含有するIRペレット量(約70mg)を、2充填ステーション型カプセル充填機にてサイズ番号2の硬質ゼラチンカプセルに充填する。
【0152】
実施例5
(2層錠)
本実施例は、速放用のグルココルチコイド部分を含有する更なる層が打錠される、徐放用の親水性ゲル状マトリックス錠を含む2層錠に関する。
ヒドロコルチゾン 20g
珪酸アルミニウムナトリウム 15g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、60cps 80g
をエタノールにより造粒する。この湿潤塊を篩過、乾燥、混練する。
【0153】
この乾燥混合物に
タルク 5g
ステアリン酸マグネシウム 2g
を加える。
【0154】
約2分間混合した後、この混合物を、2ステーション型錠剤製造機の第一ステーションにて8mm平坦型丸パンチを用い、低圧縮力にて約117mg錠に打錠する。各錠剤はヒドロコルチゾン20mgを含有する。
ヒドロコルチゾン 10g
ラクトース 40g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、6cps 5g
を乾式混合し、次に、水により造粒する。この湿潤塊を篩過、乾燥、混練する。
【0155】
この乾燥塊に
ポリビニルピロリドン(架橋結合) 5g
を加え、混合後、
ステアリン酸マグネシウム 1g
を加え、更に2分間混合し続ける。
【0156】
約61mgの錠塊(ヒドロコルチゾン10mgを含有)を、錠剤製造機の第二ステーション上にて緩やかに打錠した錠剤の上部に充填することにより、2層錠を製造する。
【0157】
実施例6
(ER錠)
1錠あたりのMg
ヒドロコルチゾン 20
メトセル(登録商標)KV 100LV 64
微結晶セルロース、Avicel(登録商標)PH−102 98
スターチ1500(登録商標)、英国Colorcon社 16
コロイド状二酸化ケイ素 1
ステアリン酸マグネシウム 1
ステアリン酸マグネシウムを除き、すべての材料を均質化するまで乾式混合した。ステアリン酸マグネシウムを加え、更に2分間混合し続けた。8mm凹型丸パンチを用いてこの粉末混合物を200mg錠に打錠した。この錠剤は厚さが平均4.25mmであり、その平均破壊強度は10.8kpであった。ヒドロコルチゾンの平均含量は1錠あたり19.3mgであった。
【0158】
酵素を含有しない擬似腸液500mlおよび撹拌速度50rpmにてUSP溶出試験第2法(パドル法)に準拠した溶出試験器を用いて、溶出に関してこの錠剤を分析した。試料を様々な時間にて採取し、HPLCによりヒドロコルチゾンを分析した。個別に分析した3つの錠剤の中央値を表9に示す。
【0159】
【表9】
徐放剤はヒトボランティアにおいて試験を行った。図1は得られた結果を示す。
【0160】
Wursterカラムを備えた流動床にて、ER錠に
ヒドロコルチゾン 2%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.7%
タルク 2%
を含有する水懸濁液をコーティングし、各錠剤上のコーティングがヒドロコルチゾン7mgを含有するまで続ける。
【0161】
コーティングは迅速に溶出し、15分以内に溶出は完了する。コーティング錠のヒドロコルチゾンの累積的溶出を図2に示す。
【0162】
実施例7
(速放(IR)錠および徐放(ER)錠を含有するキット)
経口または舌下用途用のIR錠:
1錠あたりのMg
ベタメタゾン 0.4
Xylitab(登録商標)300a 40
無水ラクトース USP/NF 5
微結晶セルロース USP/NF 10
クロスポビドン USP/NF 4
ステアリルフマル酸ナトリウム 1
水 適量。
a英国Danisco Sweeteners社から市販されている直接打錠キシリトール
ラクトースおよび微結晶セルロースを乾式混合する。ベタメタゾンを少量の水に溶解し、この溶液を粉末混合物上に散布する。混合して乾燥させる。Xylitabおよびクロスポビドンを加え、この混合物が均質化するまで乾式混合する。ステアリルフマル酸ナトリウムを加え、更に2分間混合し続ける。6mm凹型丸パンチを用いて打錠機においてこの混合物を錠剤に打錠する。
【0163】
ER錠:
1錠あたりのMg
ベタメタゾン 0.8
メトセルK100プレミアムLV CRb 65
微結晶セルロース USP/NF 70
コロイド状二酸化ケイ素 1
ステアリルフマル酸ナトリウム 1
bDow Chemical社
ステアリン酸マグネシウムを除き、すべての材料を均質化するまで好適な混合機にて混合する。次に、ステアリン酸マグネシウムを加え、更に2分間混合する。7.5mm凹型丸パンチを具備した打錠機にて錠剤に打錠する。
【0164】
好適に設計したパッケージにIR錠1錠とER錠1錠をパッケージし、キットを得る。
【0165】
実施例8
(速放(IR)フィルムおよび徐放(ER)錠を含有するキット)
口腔投与用フィルム:
重量%
プレドニゾロン 0.75
PEG400 USP/NF 2
メトセルE5、Dow Chemical社 4
キシリトール、フランスRoquette社 1
水 100となるまで
【0166】
メトセルを総量の約90%の蒸留水に加え、メトセルが完全に溶解するまで磁気撹拌機により撹拌した。撹拌継続下にてPEG400を加え、次に、キシリトールおよびプレドニゾロンを加えた。最終重量に水を加え、4時間撹拌し続けた。
【0167】
この溶液330μlをピペットにより直径16mmの平底PVCブリスターに加えた。この溶液を一晩室温にて乾燥させ、ブリスターパックを熱シールラッカー仕上アルミニウムホイルにより密封した。
【0168】
ER錠:
1錠あたりのMg
プレドニゾロン 1.5
メトセルK100プレミアムLV CRb 65
微結晶セルロース USP/NF 70
コロイド状二酸化ケイ素 1
ステアリン酸マグネシウム 1
bDow Chemical社
ステアリン酸マグネシウムを除き、すべての材料を均質化するまで好適な混合機にて混合する。次に、ステアリン酸マグネシウムを加え、更に2分間混合する。7.5mm凹型丸パンチを具備した打錠機にて錠剤に打錠する。
【0169】
IRフィルムブリスター1枚とER錠1錠をパッケージし、好適に設計したキットを得る。
【0170】
実施例9
(速放(IR)経口用溶液および徐放(ER)錠を含有するキット)
経口用溶液:
酢酸プレドニゾロン 0.9mg
ソルビトール 60mg
メントール 1.2mg
滅菌水 5ml
溶液を作製し、湿密性のアルミニウム製葉状分包包装に充填する。
【0171】
1つの分包包装とER錠1錠をパッケージし、好適に設計したキットを得る。
【0172】
実施例10
(速放(IR)舌下噴霧剤および徐放(ER)錠を含有するキット)
ヒドロコルチゾンの舌下噴霧:
mg/ml
酢酸ヒドロコルチゾン 10
カルボキシメチルセルロース 0.8(0.08%)
2−OH−プロピル−β−シクロデキストリン 40
PEG300 5
メントール 0.3
ソルビトール 12
レボメントール 2.0
NaH2PO4・2H2O 2
水 適量
【0173】
酢酸ヒドロコルチゾンを少量の水に溶解する。これを2−OH−プロピル−β−シクロデキストリンと混合し、1時間放置する。カルボキシメチルセルロースを加え、混合する。PEG300、メントール、ソルビトール、レボメントールおよびNaH2PO4・2H2Oを加える。水を加えて最終容量となるようにする。1用量あたり0.58ml(ヒドロコルチゾン5mg)を送達する噴霧パッケージにこれを分配する。
【0174】
ヒドロコルチゾンER錠:
1錠あたりのMg
ヒドロコルチゾン 10
メトセル(登録商標)KV 100LV 64
微結晶セルロース、Avicel(登録商標)PH−102 98
スターチ1500(登録商標)、英国Colorcon社 16
コロイド状二酸化ケイ素 1
ステアリン酸マグネシウム 1
【0175】
ステアリン酸マグネシウムを除き、すべての材料を均質化するまで乾式混合する。ステアリン酸マグネシウムを加え、更に2分間混合し続ける。8mm凹型丸パンチを用いてこの粉末混合物を200mg錠に打錠する。
舌下噴霧剤およびER錠を好適に設計したキットに分配する。
【0176】
実施例11
(速放用フィルムおよび徐放錠を含有するキット)
i)ヒドロコルチゾン10mgを含有し、実施例20の組成物Aに記載するように調製される速放用フィルムおよびii)ヒドロコルチゾン20mgを含有し、実施例6に従って調製される徐放錠を含有するキットを提供する。成分i)は口腔投与され、ii)、即ち、錠剤は水200mlと共に摂取される。2成分は同時に摂取される。この結果を図3に示す。
【0177】
実施例12
(速放用のヒドロコルチゾン経口用溶液および徐放錠を含有するキット)
経口用溶液はヒドロコルチゾン10mgを水200ml中に溶解することにより調製し、徐放錠は実施例6に対応する。この2成分をヒトボランティアに同時に投与し、その結果を図4に示す。
【0178】
以下に速放組成物の実施例を述べる。各例示組成物は本発明によるキット中の速放成分として使用することができる。徐放成分は本明細書に記載するように長時間的にグルココルチコイドを放出する、任意の好適なグルココルチコイド含有組成物でよい。
【0179】
実施例13
(経口または口腔投与用のベタメダゾンIR錠)
1錠あたりのMg
ベタメタゾン 0.4
Xylitab(登録商標)300a 45
微結晶セルロース NF 10
クロスポビドン NF 4
水 適量
ステアリルフマル酸ナトリウム NF 1
a英国Danisco Sweeteners社から市販されている直接打錠キシリトール
【0180】
ベタメタゾンを少量の水に溶解する。この溶液を微結晶セルロース上に散布する。これを混合して乾燥させる。Xylitabおよびクロスポビドンを加え、均質な混合物が得られるまで好適な混合機にて乾式混合する。次に、ステアリルフマル酸ナトリウムを加え、更に2分間混合し続ける。6mm凹型丸パンチを用いて好適な打錠機にてこの粉末混合物を打錠する。
【0181】
実施例14
(ベタメダゾンの舌下噴霧)
mg/ml
ベタメタゾン 0.4
カルボキシメチルセルロース 0.8(0.08%)
PEG300 5
メントール 0.3
ソルビトール 12
レボメントール 2.0
NaH2PO4・2H2O 2
水 適量
ベタメタゾンを少量の水に溶解する。カルボキシメチルセルロースを加え、混合する。PEG300、メントール、ソルビトール、レボメントールおよびNaH2PO4・2H2Oを加える。水を加えて最終容量となるようにする。
【0182】
実施例15
(ベタメダゾンの舌下噴霧)
mg/ml
ベタメタゾン 0.4
グルタミン酸キトサン 10
メントール 0.1
レボメントール 1.5
NaH2PO4・2H2O 2
水 適量
ベタメタゾンを少量の水に溶解する。グルタミン酸キトサンを加え、混合する。0.2μm膜フィルタを通して濾過する。メントール、レボメントールおよびNaH2PO4・2H2Oを加える。水を加えて最終容量となるようにする。
【0183】
実施例16
(ヒドロコルチゾンの舌下噴霧)
mg/ml
酢酸ヒドロコルチゾン 10
カルボキシメチルセルロース 0.8(0.08%)
2−OH−プロピル−β−シクロデキストリン 40
PEG300 5
メントール 0.3
ソルビトール 12
レボメントール 2.0
NaH2PO4・2H2O 2
水 適量
ヒドロコルチゾンを少量の水に溶解する。2−OH−プロピル−β−シクロデキストリンと混合し、1時間放置する。カルボキシメチルセルロースを加え、混合する。PEG300、メントール、ソルビトール、レボメントールおよびNaH2PO4・2H2Oを加える。水を加えて最終容量となるようにする。
【0184】
実施例17
(ヒドロコルチゾンの舌下噴霧)
mg/ml
酢酸ヒドロコルチゾン 10
グルタミン酸キトサン 10
2−OH−プロピル−β−シクロデキストリン 40
メントール 0.1
レボメントール 1.5
NaH2PO4・2H2O 2
水 適量
ヒドロコルチゾンを少量の水に溶解する。2−OH−プロピル−β−シクロデキストリンと混合し、1時間放置する。グルタミン酸キトサンを加え、混合する。0.2μm膜フィルタを通して濾過する。メントール、レボメントールおよびNaH2PO4・2H2Oを加える。水を加えて最終容量となるようにする。
【0185】
実施例18
(ヒドロコルチゾンの薄膜層フィルム)
組成物A:
重量%
ヒドロコルチゾン 3%
アルギン酸ナトリウムPH157 2%
水 95%
組成物B:
酢酸ヒドロコルチゾン 3.4%
アルギン酸ナトリウムPH157 2%
水 94.6%
組成物C:
ヒドロコルチゾン 3%
メトローズ60SH−50 2%
水 95%
【0186】
フィルムは以下に述べるように作製した。
1.ポリマー、グルココルチコイドおよびH2Oを計量した。
2.撹拌中にグルココルチコイドを水に加えた。
3.懸濁液が得られるまでこの配合物を撹拌し続けた。
4.この懸濁液にポリマーを加えた。
5.均一なゲルが得られるまでこの配合物を撹拌し続けた(最低2時間)。
6.ゲル0.5gを空ブリスターに計量し、加熱乾燥器に配置した(乾燥:25℃で22時間)。
【0187】
表10はヒドロコルチゾン10mgのパーセントとして1,3,5,10および15分後のインビトロ溶出を示す(回転バスケット 100rpm、リン酸緩衝液 pH=7.0、溶剤500mlあたり1ユニット)。アルギン酸ナトリウム(Na−alg)、ヒプロメロース(HPMC)のポリマーにヒドロコルチゾン10mgを有するユニットであり、約7mg/ユニットである。2ユニットをNa−algおよびHPMCにより試験した。平均値を一覧表にした。次の表に示す結果は粘度に関する順位を示し、即ち、HPMCが最も低い粘度を有し、Na−algが最も高い粘度を有する。
【0188】
【表10】
ヒトにおけるインビボの血漿プロファイル、1組成物あたりN=1。
デキサメタゾン抑制試験、絶食状態、他は「方法」と示す段落に記載の通り。
【0189】
これらの結果(図5〜7)により、酢酸ヒドロコルチゾンの使用は速放組成物には適さないように思われることが示される。このことは次の実施例において更に検討した。
【0190】
実施例19
(非粘膜粘着性速放用フィルム)
実施例20−組成物Aにほぼ類似した2種類のフィルムを調製した。フィルムAはヒドロコルチゾン10mgを含有し、フィルムBは酢酸ヒドロコルチゾン11.2mgを含有する。口腔投与後のインビボ試験の結果を図8および9に示す。これらの結果により、フィルムが生体粘着性でない場合であっても、フィルムAの単回投与後の全身循環系への吸収の速やかな開始が得られることが示される。対照的に、酢酸ヒドロコルチゾンを含有するフィルムに関して得られる結果では、全身循環系へのグルココルチコイドの吸収の速やかな開始が必要とされる場合、この化合物は妥当ではないように思われることが示される。
【0191】
実施例20
(速放または徐放用薄膜層フィルム)
次の組成物AおよびBからグルココルチコイドフィルムのバッチを調製した:
迅速放出組成物A:成分 重量%
PEG400 2.0
ヒドロコルチゾン 3.0
メトセルE5 4.0
キシリトール 1.0
水 90
【0192】
緩徐放出組成物B:成分 重量%
PEG400 1.3
ヒドロコルチゾン 3.0
メトセルE5 5.7
水 90
磁気撹拌器を備えた50ml丸底ガラス製フラスコ中の蒸留水(18ml)にメトセルE5を加えた。メトセルが完全に溶解した後、撹拌継続下でPEG400を加え、続いてキシリトール(組成物Aのみ)およびヒドロコルチゾンを加えた。撹拌は4時間続けた。
【0193】
直径16mmの平底PVCブリスター(スウェーデン、Lund、Inpack社)中に溶液AまたはB 330μlをピペット(フィンピペット;自動式)により加え、各ブリスター容器へと加えた。この溶液を一晩室温にて乾燥させた。翌日、用量分析のためにフィルム10枚を取り外した。各フィルムを水/エタノール(95%)9:1(w/w)100ml中に溶解した。この溶液を242nmでのUV分光法により分析した。組成物A、Bに1ブリスターあたりそれぞれヒドロコルチゾン10.19mg、9.83mgの平均含量が見出された(それぞれSD 0.29、0.14)。
【0194】
口唇投与後にヒト被験者2人においてヒドロコルチゾン組成物を試験した。被験者は合成グルココルチコイドにより内生グルココルチコイド分泌が抑制された。口唇投与後360分間、コルチゾールの血漿濃度をモニタリングした。これらの異なる被験者2人由来の血清濃度時間プロファイルを図10および11に示す。
【0195】
ヒドロコルチゾンの粘膜吸収の速度および程度が高く、また、最初に測定した血漿濃度が既に10〜15分にて得られたため、血清中のコルチゾールの発現が迅速であることが明確に認められる。
【0196】
これらの薬物動態データにより、この薬剤送達経路では投与および吸収部位にて溶出可能な液体の量は少ないが、経口粘膜投与用の本発明の製剤により活性薬物の粘膜吸収の速度および程度が亢進することが示される。
【0197】
実施例21
(速放または徐放グルココルチコイド錠)
乾式混合した粉末状成分を次の組成物CおよびDに直接打錠することにより、グルココルチコイド錠を製造した:
迅速放出組成物C:成分 1バッチあたり
PEG6000 8.7g
ヒドロコルチゾン 2.5g
Xylitab300 8.7g
ステアリン酸マグネシウム 0.16g
【0198】
緩徐放出組成物D:成分 1バッチあたり
PEG6000 6.94g
ヒドロコルチゾン 2.5g
Xylisorb 6.94g
ポリオックスWSR301 3.46g
ステアリン酸マグネシウム 0.16g
(バッチサイズ100の錠剤)
粉末状成分を篩過し(メッシュサイズ0.7mm)、5分間小型ブリキ缶にて手で振とうすることにより乾式混合した。この混合物の均一性は錠剤の分析に用いた方法と同じ方法により分析した。錠剤成形は直径7mmの平坦な円形パンチを用いてDIAF製錠機により行った(分割スコアを記録)。錠剤10個中のヒドロコルチゾン用量をフィルムで用いたのと同じ方法で評価した。組成物CとDに対し、1錠あたりそれぞれヒドロコルチゾン9.53mg、9.72mgの平均含量が見出された(それぞれSD 0.15、0.14)。
【0199】
錠剤の厚さ(10錠):1.72〜1.76mm(C);1.79〜1・84mm(D)、
脆砕性(20錠):0.6%(C);0.4%(D)、
錠剤の硬度(10錠):23.7N(C);22.9N(D)
【0200】
ヒト被験者2人への口腔投与後、組成物の試験を行った(図12)。
【0201】
実施例21の固体剤形から全身循環系への活性物質の吸収速度は、実施例20の組成物より多少緩やかであり、これは口唇用医薬製剤の組成および機能に変化をもたらすことにより、ヒドロコルチゾンの全身循環系への吸収速度を調整することが可能であるということである。
【0202】
実施例22
(インビトロ溶出プロファイル)
実施例20および21による製剤からのヒドロコルチゾンのインビトロ溶出プロファイルを、標準化制御インビトロ環境にて経時的に追跡した。自動試料採取装置およびソフトウェアに結合した、米国薬局方溶出試験第2法(パドル法)に準拠した溶出試験器を用いて、中性pH環境における製剤の放出プロファイルを得ようとした。溶出プロファイルは総水量300ml中、37℃でパドル50rpmにて得られた。実施例の医薬組成物を溶出溶媒に挿入してから0,1,3,5,7,10および15分後、試料採取を行った。
【0203】
各製剤からの溶出プロファイルを投与後最大360分、2つの試験にてモニタリングし、対応する溶出時間プロファイルをそれぞれ図13、14に示す。放出速度は経時的な用量パーセントとして示す。
【0204】
実施例21の固体剤形からの放出速度は多少緩徐であった(図14)。これは口鼻咽頭部用の医薬製剤の組成および機能に変化をもたらすことにより、ヒドロコルチゾンの放出速度を調整することが可能であるということである。
【技術分野】
【0001】
本発明はグルココルチコイド代償療法に関し、臨床的に妥当な時間、健常被験者の血清グルココルチコイド濃度にほぼ類似する血清グルココルチコイド濃度を生じるように、1種以上のグルココルチコイドを、それらを必要とする患者に送達するように設計された医薬組成物およびキットを提供する。
【0002】
この医薬組成物は1種以上のグルココルチコイドを含み、1種以上のグルココルチコイドの第一部分は実質的に即時に放出され、1種以上のグルココルチコイドの第二部分は少なくとも約8時間という長時間にわたり放出され、ヒドロコルチゾン当量として表される1種以上のグルココルチコイドの第一部分の量は総ヒドロコルチゾン当量の約15〜約50%の範囲内である。
【0003】
本発明は第一成分および第二成分を含むキットにも関し、この第一成分は1種以上のグルココルチコイドを実質的に即時に放出し、第二成分は1種以上のグルココルチコイドを少なくとも8時間という長時間にわたり放出するように設計される。本発明は、グルココルチコイド欠乏障害を有する患者における場合のように、グルココルチコイド処置を必要とする疾患を治療する方法にも関する。
【0004】
本発明は別の態様において、グルココルチコイド欠乏障害の治療用の医薬組成物またはキットの調製用の1種以上のグルココルチコイドの第一の量および第二の量の使用に関する。
【背景技術】
【0005】
グルココルチコイドは中間代謝、免疫機能、筋骨格系・結合組織および脳機能に重要なステロイドである。その重要性はグルココルチコイド欠乏障害患者において明らかである。
【0006】
代償療法以前ではその1年生存率は20%未満であった。最も重要なグルココルチコイドであるコルチゾールの産生および分泌は、視床下部、下垂体および副腎を含む複雑且つ高効率なシステム、即ち、視床下部−下垂体−副腎系により統御されている。コルチゾール分泌は視床下部視交叉上核により放出日内リズムに調節されている。そのタイミングは明暗変化による太陽日と同期しており、通常、習慣的睡眠・覚醒パターンを反映する。
【0007】
したがって、健常者ではコルチゾール分泌は24時間日内変動を有し、最大血清濃度は早朝、入眠後3〜6時間であり、最小濃度は真夜中頃である。身体的および心理的ストレス要因もコルチゾール分泌を活性化する。手術、発熱、身体活動または精神的ストレスのようなストレス条件下では、視床下部からの副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の放出によりコルチゾールの血清濃度は上昇する。
【0008】
CRHは下垂体における副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の合成および分泌を刺激し、ACTHは副腎皮質にコルチゾールの産生および分泌を増大させるように反応させる。ACTHの分泌バーストの推定数は24時間あたり40回である。各ACTHの分泌バーストの約15分後、循環系に分泌されるコルチゾールは急増する。
【0009】
グルココルチコイド欠乏障害には種々の原因がある。グルココルチコイド欠乏障害と関連する個々の障害発生率は低い。しかし、これらの障害は小児および若年成人に発現することが多く、このような病態に罹患した個々の患者はその余生を代償療法に依存しなければならなくなる。したがって、これらの慢性障害の有病率は有意である。今日提供可能な代償療法は、使用製剤由来のグルココルチコイドの血漿濃度プロファイルおよび放出プロファイルの点において非生理的とみなし得る。
【0010】
副腎皮質機能不全の発現は潜行性から重篤な塩・水欠乏を伴う急性の生命危機まで多様と言え、この場合、適切に治療しないとショックおよび死に至る。より潜行性の副腎皮質機能不全と関連する症状で報告される頻度が高いものに、無気力、衰弱、嗜眠、易疲労性、神経過敏、興奮性、感情鈍麻、眩暈、頭痛、筋肉痛、食欲不振、体重減少、悪心、嘔吐および下痢がある。Aritらの最近のレビュー(Lancet (2003) 361、1881−1893)では、特に副腎機能不全に至る病態を報告しており、これを参照して本明細書に組み込む。3種類の一般的な副腎皮質機能不全が識別可能である。通常、第一の副腎皮質機能不全はアジソン病と称される。この疾患では副腎皮質が影響を受け、副腎皮質で産生される3つのホルモン系の機能が損傷されることになる。したがって、アジソン病の結果、コルチゾール、副腎アンドロゲンおよびミネラルコルチコイド(アルドステロン)の産生および分泌が不十分になる。
【0011】
第二のあるいは中心的な副腎皮質機能不全は、主に視床下部−下垂体領域における腫瘍が原因となる。しかし、第二のグルココルチコイド欠乏障害の問題点および治療の検討は、第一の副腎機能不全患者と同様である。
【0012】
第三の副腎機能不全は、おそらくグルココルチコイド欠乏障害の最も一般的な原因である。これは、肺疾患、自己免疫疾患および炎症性疾患患者の治療の一部として、また、内生副腎グルココルチコイド分泌の抑制を生じさせる、種々の悪性疾患の治療における長期的な高用量グルココルチコイド療法の結果である。第三の副腎機能不全は数週間〜1年間持続する。
【0013】
第一および第二の副腎機能不全の大部分の症例において、グルココルチコイドによる代償療法は生涯にわたる治療となる。グルココルチコイド代償療法の目的は、血清コルチゾールの日周期プロファイルを模倣し、身体的および心理的刺激の間に増大するコルチゾールの必要性に応え、正常な健康状態、代謝および長期的転帰を得ることにある。小児期においても成人期においても治療不足は倦怠感、起立性低血圧、ストレスへの応答不良、電解質障害、更には副腎急性発症を生じさせ得る。小児期では成長抑制および最終的な身長の可能性が低減することを避けるため、グルココルチコイドの適切な補充用量が重要である。成人期では過度のグルココルチコイド補充は耐糖能障害、腹部肥満、高血圧、蛋白異化および骨粗鬆症を誘発し得る。
【0014】
現在、成人における通常のコルチゾール補充の治療プログラムは、1日に2回または3回ヒドロコルチゾン15〜30mgを投与する。長時間持続性のデキサメタゾンまたはプレドニゾロンのような合成グルココルチコイドも代償療法に用いられる。しかし、これらの合成化合物はヒドロコルチゾンより強力である。したがって、これらの使用は過剰治療および有害作用のリスクを高める。
【0015】
正常な被験者における推定コルチゾール1日産生率は1日あたり4〜15mg/m2で変動し、あるいはより最近の研究によると1日あたり9〜11mg/m2である。血清コルチゾール濃度の24時間変動を適切に説明するため、ある試験では1日を4期に分けた。
【0016】
第一期は入眠前4時間および入眠後2時間の最小分泌活性の6時間である。第二期は事前の夜間分泌事象が存在する場合の入眠後3〜5時間を指す。第三期は睡眠の最後の3時間および覚醒後1時間の4時間の主要分泌期である。第四期は血清コルチゾール濃度が緩徐に低下する場合の間欠的分泌活性の11時間期である。
【0017】
Mahらによる研究(Clinical Endocrinology (2004) 61、367−375)では正常被験者の血清コルチゾールの日内リズムが報告されている。
【0018】
それぞれほぼ午前6時、午後2時および午後9時に、約400〜800mmol/l、約150〜300mmol/lおよび約150mmol/lの最大濃度が認められ、最小濃度は真夜中頃である。同研究では内生コルチゾール濃度が覚醒後30分以内に最大濃度に達することが認められている。日内リズムを模倣するため、Mahらはヒドロコルチゾンの1日3回の治療治療プログラムを推奨しており、1回目の用量は絶食状態で摂取して朝食を1〜3時間遅延させ、他の2用量は食前15〜60分以内に摂取するというものである。ヒドロコルチゾンの短い半減期により1日3回の治療プログラムはCzockらの最近のレビューにおいても推奨されており(Clin. Pharmacokinet (2005) 44、61−98)、プレドニゾロンでは1日1回の治療プログラムより1日2回の治療プログラムが好ましい。
【0019】
ヒドロコルチゾンの総用量の3分の2を午前中に、残用量を午後(4〜6時)に投与する1日2回投与では、夕方(3〜6時)および深夜/早朝(3〜8時)に血清コルチゾール濃度は非常に低下する。この投与の治療プログラムでは最大血清コルチゾール濃度は健常被験者に認められる濃度を上回ることが見出されている。更に、長期グルココルチコイド代償療法を受けている患者は骨塩濃度が低く、耐糖能が異常である頻度が高い。
【0020】
現在の治療下における1日2回または3回投与の必要性の別の問題点は、服用を抜かし、あるいは服用の時期を逸するというノンコンプライアンスが生じることであり、これは特に長期にわたり至適以下の転帰に至る。本発明者らは本発明の1日1回態様によりこの課題に対処する。
【0021】
WO 02/072033(Penwest Pharmaceuiticals Co)ではグルココルチコステロイドを有する時間治療的投与形態を報告している。この投与形は投与後2〜18時間の遅延時間後にグルココルチコステロイドを放出するように設計されている。この投与形は覚醒時に必要な血清濃度を付与するため、就寝前に投与され、就寝中に放出を開始するようになっている。しかし、個体内および個体間の様々な消化管部分における通過時間の大幅な変動に起因し、覚醒前の所望の時間に所望の血清コルチゾール濃度に達することは困難であると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
したがって、血清コルチゾールの日周期プロファイルを模倣するようにより適合された、グルココルチコイド欠乏障害の治療に対する改善された治療法の必要性がある。
この目的のため、市販組成物に比べ、早い作用発現および長く持続する効果を可能にする、改善された医薬組成物またはキットの必要性がある。更に、このようなキットまたは組成物は投与頻度が1日1回に縮小可能となり、より良好な患者コンプライアンスに繋がり得る。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、速い作用発現を可能にするためグルココルチコイドの第一部分を比較的速やかに放出し、グルココルチコイドの長期持続効果を得るためグルココルチコイドの第二部分を長期的に放出するように設計されたグルココルチコイド含有医薬組成物およびキットを提供する。この組成物およびキットは1日1回の投与用に設計されることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例6の結果を示す図である。インビボ血漿プロファイルである。徐放錠、直径7mm、中等度の圧縮力、ヒドロコルチゾン20mg、経口投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【図2】実施例6の結果を示す図である。IR−ER錠の溶出プロファイル。
【図3】実施例11の結果を示す図である。インビボ血漿プロファイル。徐放錠、直径7mm、中等度の圧縮力、ヒドロコルチゾン20mg、経口投与および粘膜粘着性薄膜層フィルムのヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【図4】実施例12の結果を示す図である。インビボ血漿プロファイル。徐放錠、直径7mm、中等度の圧縮力、ヒドロコルチゾン20mg、経口投与および水200ml中ヒドロコルチゾン10mgの液剤、経口投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【図5】実施例18の結果を示す図である。組成物Aの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。
【図6】実施例18の結果を示す図である。組成物Bの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。
【図7】実施例18の結果を示す図である。組成物Cの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。
【図8】実施例19の結果を示す図である。フィルムAの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。非粘膜粘着性薄膜層フィルム、6cm2、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【図9】実施例19の結果を示す図である。フィルムBの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。非粘膜粘着性薄膜層フィルム、6cm2、酢酸ヒドロコルチゾン11.2mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【0025】
【図10】実施例20の結果を示す図である。組成物Aの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。粘膜粘着性薄膜層フィルム、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【図11】実施例20の結果を示す図である。組成物Aの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。粘膜粘着性薄膜層フィルム、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【図12】実施例21の結果を示す図である。組成物Cの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。粘膜粘着性速放錠、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【図13】実施例22の結果を示す図である。実施例21の組成物Cの溶出曲線。
【図14】実施例22の結果を示す図である。実施例20の組成物Aの溶出曲線。
【0026】
【図15】IR/ER組合せ製品からのヒドロコルチゾン(HC)の目標インビトロ放出を示す図である。IR部分:総用量の30%;ER部分:総用量の70%;IR部分:20分以内にて>90%放出、目標:できる限り速やかに100%(15分以内);ER部分:14〜16時間一定速度にて90%(本実施例において15時間)。残余の10%はより遅い速度にて放出される。累積的放出を示す。
【図16】図15と同じ放出を示す図である。しかし、本図では放出率として示す(1時間あたりの放出%)。
【図17】IR15%とER85%のIR/ER組合せ製品からのヒドロコルチゾン(HC)の目標インビトロ放出を示す図である。IR部分:総用量の15%であり、50%が40分にて放出。残余は75分以内に放出される;ER急速部分:総用量の85%であり、このうち90%が10時間にて放出される(残余はより遅く放出);ER緩徐部分:総用量の85%であり、このうち90%が24時間にて放出される(残余はより遅く放出)。
【図18】IR/ER組合せ製品からのヒドロコルチゾン(HC)の目標インビトロ放出を示す図である。IR部分:総用量の50%;ER部分:総用量の50%;IR部分:総用量の50%であり、50%が40分にて放出。残余は75分以内に放出される;ER急速部分:総用量の50%であり、このうち90%が10時間にて放出される(残余はより遅く放出);ER緩徐部分:総用量の50%であり、このうち90%が24時間にて放出される(残余はより遅く放出)。
【図19】口腔内の様々な投与部位を示す図である。
【図20】口腔内の様々な投与部位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
したがって、本発明は第一の態様において、1種以上のグルココルチコイドを含む医薬組成物であって、1種以上のグルココルチコイドの第一部分が実質的に即時に放出され、1種以上のグルココルチコイドの第二部分が少なくとも約8時間という長時間にわたり放出され、ヒドロコルチゾン当量として表される1種以上のグルココルチコイドの第一部分の量が組成物中の総ヒドロコルチゾン当量の約15〜約50%の範囲内であって、USP(米国薬局方)溶出試験第2法(パドル法)に準拠した、回転数が50rpmで酵素を含有しない擬似腸液を溶出溶媒とした溶出試験器を用いたUSPに従ったインビトロ溶出試験における組成物の試験の開始1時間後に放出される量として求められ、第一部分のヒドロコルチゾン当量の少なくとも約50%が溶出試験の最初の45分以内に放出される医薬組成物を提供する。
【0028】
本発明による医薬組成物は1日1回の経口投与を意図した単一組成物として好適に設計される。このような組成物は患者が摂取するのに簡便であり、したがって、好ましい態様である。
【0029】
しかし、本発明の範囲内において、本発明の組成物は二重組成物、即ち、異なる2種類の薬剤形態を含む組成物でもよく、例えば、徐放錠がグルココルチコイドの速放性経口医薬製剤と同時に(あるいは、他の好適な組合せにて)摂取される。
通常、このような二重組成物はキットのような単一パッケージにて提供される。
【0030】
したがって、本発明は、i)1種以上のグルココルチコイドを含み、この1種以上のグルココルチコイドを実質的に即時に放出するように設計された第一成分と、ii)1種以上のグルココルチコイドを含み、1種以上のグルココルチコイドを徐放するように設計された第二成分とを含み、この第一成分の1種以上のグルココルチコイドの少なくとも約50%が、USP溶出試験第2法(パドル法)に準拠した、回転数が50rpmで酵素を含有しない擬似腸液を溶出溶媒とした溶出試験器を用いた溶出試験の最初の45分以内に放出されるキットも提供する。
【0031】
本発明は第三の態様において、グルココルチコイド欠乏障害に罹患した患者を治療する方法であって、グルココルチコイドの血清濃度の急激な上昇を生じさせる第一有効量の1種以上のグルココルチコイドと、少なくとも約8時間という長時間、1種以上のグルココルチコイドの有効血清濃度を生じさせる第二有効量の1種以上のグルココルチコイドとを患者に投与するステップを含む方法に関する。
【0032】
本発明は第四の態様において、本明細書に記載のグルココルチコイド欠乏障害の治療用の医薬組成物またはキットの調製用の1種以上のグルココルチコイドの第一の量および第二の量の使用に関する。
【0033】
本発明の内容において、用語「徐放性」は、通常の錠剤から得られる放出と異なり、また、通常の錠剤から得られる時間より長い時間である8時間以上の放出を付与するあらゆる種類の放出を含むものとする。したがって、該用語はいわゆる「制御放出」、「放出制御」、「持続放出」、「パルス放出」、「延長放出」、「遅放出」、「時間至適化放出」および「pH依存性放出」という用語を含む。
【0034】
同様に、用語「速放」は、通常の錠剤から得られる放出と異なり、また、通常の錠剤から得られる放出より速い放出を付与するあらゆる種類の放出を含むものとする。
【0035】
1種以上のグルココルチコイドを速放に、1種以上のグルココルチコイドを徐放に用いることにより、個々の患者の薬剤感受性および体重の全般的放出プロファイルの相違を斟酌し、好適な治療効果を得るのに必要な1日用量の範囲を狭めることが可能であることが考えられる。
【0036】
したがって、内生コルチゾール分泌が極少量濃度であるか、あるいは0濃度である平均的な成人には、内生放出プロファイルをほぼ模倣するため、総1日用量が15〜30mgの範囲のヒドロコルチゾンまたは等用量の他のグルココルチコイドを1日1回投与することができる。
【0037】
本発明の内容において、用語「ほぼ模倣する」は、本発明による組成物またはキットの投与後約0.5〜1時間から約6.5〜7時間に対応する時間に得られる血清プロファイルが、午前6時〜正午における健常被験者のコルチゾールの血清プロファイルの形状を実質的に模倣するか、あるいは同形状に実質的に類似することを示すものである。1種以上のグルココルチコイドの第一および第二部分(または、キットの場合には成分)を連続的に摂取する場合、時間は第一部分の投与から開始する。
【0038】
本発明の医薬組成物またはキットは投与後約12〜18時間、薬剤の腸管吸収を付与するはずである。
【0039】
以下、医薬組成物に関して本発明を詳細に説明する。しかし、本発明のこの態様の下に開示される詳細および明細はすべて、本発明の他の態様ついて準用する。特に、本発明による組成物の第一および/または第二部分に関する開示は、本発明によるキットの第一および第二成分にも適用されることに留意する必要がある。
(医薬組成物−第一および第二部分)
前述のように本発明はグルココルチコイド含有医薬組成物に関する。この組成物の第一部分はグルココルチコイドを比較的速やかに放出する。ある種の医薬組成物ではどの部分が速放部分であるのかを明示することは容易であり得る(例えば、異なる色のペレットを含有するカプセルの場合、ある色を速放用に、別の色を徐放用にし、あるいは層状錠剤の場合、速放層を徐放層の上部にする)。
【0040】
この組成物の製造中に放出動態を評価するため、個々の部分(即ち、速放部分および徐放部分)を、例えばインビトロ溶出試験に付すことも比較的容易であり得る。しかし、最終組成物を開始点とした場合、組成物のどの部分が速放部分であるのか、また、徐放部分であるのかを明示することは、ほとんどの場合、困難となり得る。
【0041】
したがって、本発明の内容において、本発明による組成物の「速放部分」とは、USP溶出試験第2法(パドル法)に準拠した、回転数が50rpmで酵素を含有しない擬似腸液を溶出溶媒とした溶出試験器を用いたUSPに従ったインビトロ溶出試験におけるこの組成物の試験の開始1時間後に放出され、ヒドロコルチゾン当量として表される量と定義付けする。
【0042】
速放部分および徐放部分の両方は有さない既知の組成物と対照的に、i)速放部分は組成物中に含有される総ヒドロコルチゾン当量の約15%〜約50%を含有し、ii)第一部分のヒドロコルチゾン当量の少なくとも約50%は溶出試験の最初の45分以内に放出され、iii)第二部分は少なくとも約8時間という長時間にわたりグルココルチコイドを放出する。
【0043】
本明細書において用語「ヒドロコルチゾン当量」は、医師により総体的に理解されるグルココルチコイド全身療法を目的に、ヒドロコルチゾン1mgに相当する特定のグルココルチコイドのmg量を定義付けするために用いられる。該用語は、個々のグルココルチコイドが異なる効力を有し、また、所望の治療効果を得るため、個々のグルココルチコイドの異なる用量が必要であるという事実に基づく。
【0044】
グルココルチコイドの等用量は次の表1に基づいて計算することができる。
【0045】
【表1】
したがって、組成物の第一部分がベタメタゾン1.5mg(ヒドロコルチゾン40mgに相当)を含有し、組成物の第二部分がヒドロコルチゾン40mgを含有する場合、組成物中のヒドロコルチゾン当量の総量はヒドロコルチゾン80mgに相当する。したがって、第一部分が組成物の総ヒドロコルチゾン当量の50%を含有する。
【0046】
第一部分のグルココルチコイドの総量が前述の溶出試験において1時間以内に放出されると仮定した場合、最初の45分以内における第一部分からのグルココルチコイドの放出に関する必要条件は、総ヒドロコルチゾン当量の少なくとも25%が放出されることである。
【0047】
(第一部分の放出)
組成物の第一部分の具体的な実施形態は次の表2に示す必要条件の1つ以上を満たす。概して、溶出試験の開始後30分以内において提示された必要条件が満たされることが好ましい。好ましい実施形態において、第一部分に含有されるヒドロコルチゾン当量の少なくとも70%または少なくとも80%が、溶出試験の最初の30分以内に放出される。
【0048】
【表2】
本発明による組成物の投与後に比較的速やかに比較的高い血清濃度のグルココルチコイドを得られるようにするため、ヒドロコルチゾン当量として表される1種以上のグルココルチコイドの速放部分の量は、この組成物中の総ヒドロコルチゾン当量の約15%〜約50%、例えば、約20%〜約40%または約25%〜約35%の範囲内である。
【0049】
この組成物の第二部分は1種以上のグルココルチコイドを長期的に放出するように、即ち、少なくとも約8時間放出するように設計される。
【0050】
具体的な実施形態において、1種以上のグルココルチコイドの第二部分は少なくとも約10時間という長時間にわたり放出される。本発明による組成物を調製するために用いられる具体的な製剤技術に依存し、異なる放出パターンが可能になり、インビボ−インビトロ相関性は製剤技術により異なり得る。
【0051】
したがって、インビトロでの放出がインビボでの動態を変化させることなく、より長い時間持続する状況もあり得る。したがって、具体的な実施形態において、1種以上のグルココルチコイドの第二部分は少なくとも約12時間、例えば、少なくとも約15時間または少なくとも約20時間という長時間にわたり放出され得る。更に、本発明の内容において24時間という長時間が妥当であり得る。
【0052】
前述の放出は妥当な方法によりインビボで測定され得る。このような方法は現在開発中であり、多大な関心を集めている。しかし、一般的には本明細書に記載したようなインビトロの方法が好ましい。
【0053】
(総放出)
1種以上のグルココルチコイドの放出に関し、組成物の具体的な実施形態は次の表3に示す必要条件の1つ以上を満たす。概して、組成物に含有されるヒドロコルチゾン当量の少なくとも約80%または少なくとも90%は溶出試験の最初の24時間以内に放出されることが好ましい。一般的に、次の表3に記載の必要条件が適用される。
【0054】
【表3】
しかし、前述で考察したように、i)第二部分の放出がはるかに速く、ii)1種以上のグルココルチコイドが約15時間または14時間以内に放出され、および/またはiii)組成物の第一部分における1種以上のグルココルチコイドの量が比較的多い状況が存在する。このような場合、次の表4の必要条件の1つ以上が適用され得る。
【0055】
【表4】
図15〜18は本発明の範囲内にある異なる放出パターンを示す。
【0056】
(第二部分の放出)
通常、1種以上のグルココルチコイドの第二部分の放出は投与と同時に開始する。しかし、例えば、組成物の第二部分が腸溶錠またはペレットの剤形である場合のように、ある種の遅延時間が生じる状況があり得る。放出に関し、具体的な実施形態は次の表5に示す必要条件の1つ以上を満たす。
【0057】
【表5】
具体的な実施形態において、本明細書に定義する溶出試験の開始後、
i)1〜約6時間、1時間あたり第二部分に含有されるヒドロコルチゾン当量の約3%〜約15%が放出され、
ii)約6〜約10時間、1時間あたり第二部分に含有されるヒドロコルチゾン当量の約3%〜約10%が放出され、
iii)約10〜約12時間、1時間あたり第二部分に含有されるヒドロコルチゾン当量の約3%〜約7.5%が放出される。
【0058】
徐放部分に関し、原則的に徐放用に設計された任意の医薬製剤を用い得る。特に、放出が24時間放出として設計されている場合、一部の徐放製剤(例えば、マトリックス錠)からの活性物質の放出が極めて緩徐であり得ることは周知である。このような場合、第二部分の含量を定量するため、組成物中のヒドロコルチゾン当量の総量を推定することが必要であり得る。したがって、組成物の第二部分のヒドロコルチゾン当量の量は、妥当であれば(H総量−H第一部分)と定量され、式中、H総量は前述で明示した試験の開始後24時間以内に放出されるヒドロコルチゾン当量の総量であり、H第一部分は本明細書に定義するように決定される組成物の第一部分のヒドロコルチゾン当量の量である。
【0059】
(活性物質)
本発明の内容において、用語「グルココルチコイド」または「グルココルチコステロイド」は、治療、予防および/または診断上活性なグルココルチコイドあるいは生理作用を有するグルココルチコイドを示すものとする。該用語は、任意の物理形状、例えば、結晶形、非晶形または多形、妥当であれば鏡像体形またはラセミ体形を含む任意の立体異性体形あるいは前述の任意の組合せの形状の、例えば、医薬上許容な塩、複合物、溶媒和物、エステル、活性代謝物またはこれらのプロドラッグのような任意の妥当な形態のグルココルチコイドを含むものとする。
【0060】
本発明による組成物に含有される1種以上のグルココルチコイドは、医薬上許容なエステル、塩およびこれらの複合物を含むヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、トリアムシノロン、パラメタゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾンおよびフルドロコルチゾンからなる群より選択される。
【0061】
前述の段落に示すように、1種以上のグルココルチコイドの第一部分と第二部分は同じグルココルチコイドまたは同じグルココルチコイドの混合物でよい。第一および第二部分が同じ剤形の一部である場合(例えば、第一および第二部分が錠剤に含有され、第一部分がコーティングとして、あるいは別の層として第二部分を有するコア上に設けられる場合)、製造上の観点から容易であるため、通常はこのようになる。しかし、第一部分と第二部分が同じ剤形の一部でない場合(例えば、第一部分が発泡錠であり、第二部分が徐放錠の形態である場合)、あるいは異なるグルココルチコイドを用いる際に治療結果の向上が期待される場合、1種以上のグルココルチコイドの第一部分と第二部分は異なるグルココルチコイドまたは異なるグルココルチコイドの混合物である。
【0062】
グルココルチコイドの第一部分は速放用として用いられるため、組成物が経口投与される場合、放出および/または吸収は口腔の段階ですでに生じ得る。このような場合、第一部分に至適なグルココルチコイドは、活性物質が苦味を有するためヒドロコルチゾン(それ自体)またはコルチゾンの2種ではない可能性がある。しかし、風味が十分にマスキングされるのであれば、これらの物質を用い得る。「医薬上許容な賦形剤」に関する段落において、風味のマスキングについてより詳細に考察する。したがって、1種以上のグルココルチコイドの第一部分は許容な風味を有し、無味であり、あるいは効果的に風味がマスキングされ得る。
【0063】
1種以上のグルココルチコイドの第一部分の例には(前述したように)合成グルココルチコイド、例えば、その医薬上許容なエステル、塩および複合物を含むヒドロコルチゾン21−スクシネート、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、トリアムシノロン、パラメタゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾンおよびフルドロコルチゾンがある。
【0064】
第二部分に関しては前述の任意のグルココルチコイドを用い得る。特定の実施形態ではヒドロコルチゾンが好ましい。
【0065】
(投与経路−投与量)
本発明の医薬組成物は好適な投与経路により投与され得る。通常、患者の利便性により経口経路が好ましいが、この組成物の第一部分と第二部分が異なる剤形である場合、この組成物の第一部分は口腔、鼻腔、直腸、消化管の粘膜または肺、気管支もしくは呼吸器の粘膜・上皮を通じて投与されるように好適に設計され得る。
【0066】
特に高速の作用発現には口腔粘膜を通じた投与が妥当である。図19および20は使用に適した部位または口腔粘膜投与を示す。明確な4つの部位を用いることができ、これは即ち、用語「口唇」投与を含み、歯肉(歯茎)と頬の内側の間の粘膜に医薬組成物を投与するために用いられる「口腔」投与;舌下に医薬組成物を投与することを指す「舌下」投与;硬口蓋および/または軟口蓋に医薬組成物を投与することを指す「口蓋」投与;並びに上歯肉および/または下歯肉に医薬組成物を投与することを指す「歯肉」投与である。
【0067】
高速の作用発現を必要とする場合、組成物の第一部分には口腔投与経路、即ち、歯肉と頬の内側の間の口腔粘膜に医薬組成物を投与し、2つの部位、即ち、歯肉粘膜と頬粘膜に吸収を生じさせることが好ましい。
【0068】
組成物の第一部分と第二部分に異なる剤形を用いる場合、通常、最終組成物はキットとして好適に提示される。
【0069】
しかし、本発明の特定の実施形態において、医薬組成物は速放部分および徐放部分を含む単一剤形である。このような組成物は好ましくは1日1回投与されるように設計されるため、特に長期的治療における使用に適する。しかし、患者が補充用量のグルココルチコイドを必要とする状況があり得る(例えば、身体活動、ストレスなどのため)。このような状況では速やかな発現を生じさせる速放部分の別な用量を患者に投与することができる。
【0070】
本発明による組成物では1日1回の投与頻度を目的とする。本発明の内容において、用語「1日1回」/「1日に1回」は、好適な治療および/または予防上の反応を得るため、1日に1回のみ医薬組成物を投与する必要があるということを意味するものとする。しかし、如何なる投与であっても2以上の用量単位、例えば、2〜4用量単位または異なる用量単位の投与を含み得る(例えば、錠剤およびフィルム)。
【0071】
前述のように、本発明の組成物は、総体的に1日1回投与されて血漿コルチゾールの日内リズムを模倣するように設計される。完全に生理的なコルチゾールの血清濃度時間プロファイルをインビボにて得るため、低/検出不能なコルチゾールの血清濃度からの有意な上昇を午前4時頃に得る必要がある。就寝時に投与される遅延放出医薬製剤では個体内および個体間における消化管通過時間(特に、結腸通過時間)の大幅な変動に起因し、これを十分な精度にて得ることができない。故に、吸収開始の目標時間を午前4時とするこのような製剤は吸収開始に大幅な変動を生じさせ、一部の患者は夜間早く、また遅く、血清における高ピーク値を得るであろう。したがって、本発明は早朝にできる限り早く十分且つ生理的な血清コルチゾール濃度を得るべく、患者に迅速な吸収を提供することを目的とする。本発明は30分以内に臨床的に有意なコルチゾールの血清濃度(>200nmol/L)を生じさせる迅速な吸収を提供する。これは、後述の実施例に示す本発明の新規の速放経口製剤または非経口的経頬投与により実行可能である。更に、本明細書に例示するような単一組成物を用いることにより、速放と徐放の組合せも可能である。したがって、本発明による組成物またはキットにて1種以上のグルココルチコイドを投与すると、グルココルチコイドの生体日内リズムと同期した血漿濃度−時間プロファイルが得られる。本発明の内容において、用語「同期」または「模倣」は、本発明による組成物またはキットの投与後のグルココルチコイドの血清濃度プロファイルが、少なくとも投与後0.5〜6時間に対応する時間、正常な健常被験者の血清濃度プロファイルと同様の形状を有する状況を示すために用いられる(即ち、組成物またはキットが午前6時に投与される場合、患者のグルココルチコイドの血清プロファイルは午前6時30分〜正午に対応する時間に測定される健常被験者の血清プロファイルと同じ形状を有する)。
【0072】
ヒドロコルチゾンを用いたグルココルチコイド代償療法の現在のモニタリングは煩雑であって実行可能ではない。b.i.d.(即ち、1日2回)投与の間に2つのピークが現れ、その間に低濃度または検出不能なコルチゾールの血清濃度を伴う。より高頻度の投与にてより日周期的なプロファイルが生じるが、ピーク値およびトラフ値を示し続ける。したがって、このような曲線の臨床的意義は適切に実証されていない。しかし、速放部分(IR)および徐放部分(ER)を用いた本発明の組成物の投与により、通常の人間生理学において十分に実証されたプロファイルが生じる。これにより、後述の表に示す目標値を有する日周期性血清プロファイルを得るため、用量を個々人の必要性に合わせて調整する可能性が広がる。
【0073】
好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は午前中に1日1回投与するように設計される。典型的には、この組成物は覚醒時、即ち、午前4時〜正午、午前4時〜10時、午前4時〜9時、午前5時〜8時または午前6時〜8時、最も典型的には午前6時〜8時に投与される。また、この組成物は夕方以降および夜間における低濃度または検出不能なグルココルチコイドの血清濃度(<50nmol/lコルチゾールに相当)を意味する、6〜9時間の「グルココルチコイド非含有」間隔を提供するようにも設計される。
【0074】
概して、本発明による組成物中に存在するグルココルチコイドの用量は、とりわけ具体的な薬剤物質、患者の年齢および病態および治療の対象となる疾患に依存する。
【0075】
医薬組成物の第一および第二部分のグルココルチコイドは、ヒドロコルチゾン当量5〜50mgの1日量を含む必要がある。比較のため、種々のグルココルチコイドの等価ミリグラム用量を記載した表を本明細書に示す。したがって、等価用量での他の形態の合成グルココルチコイドを用い得る。通常、本発明に従った医薬組成物は組成物中のヒドロコルチゾンとして表されるヒドロコルチゾン当量の総量約1〜80mgを含有する。具体的な実施形態において、組成物中のヒドロコルチゾン当量の総量は約1〜約75mg、例えば、約1〜約70mg、約5〜約60mg、約5〜約50mg、約5〜約40mgまたは約10〜約30mgである。
【0076】
より具体的に通常の1日量の範囲を以下に示す。
ヒドロコルチゾン 1〜30mg
コルチゾン 1〜20mg
ベタメタゾン 1〜20mg
プレドニゾロン 1〜10mg
デキサメタゾン 0.1〜2mg
フルドロコルチゾン 0.05〜5mg
プレドニゾン 10〜50mg
メチルプレドニゾロン 2〜20mg
【0077】
前述の1日1回投与の用量を含有する本発明に従った医薬組成物は、次の表6に記載する血清濃度を提供するように設計される(狭範囲が好ましいが、個体変動に起因し、より広範囲でも良好である)。以下に示す血清濃度はヒドロコルチゾン当量に関して示す。ヒドロコルチゾンとは別のグルココルチコイドを用いる場合、当業者には妥当な血清濃度を定量する術は既知である(本明細書に示した指針を参照されたい)。
【0078】
【表6】
したがって、グルココルチコイドが単回用量として2つの異なる部分にて投与されると同時に、グルココルチコイドの生体日内リズムとほぼ同期した血漿濃度−時間プロファイルが得られる。グルココルチコイドは以下の表7に示す血清濃度を提供するように放出されることが好ましい。
【0079】
【表7】
医薬製剤は1日1回の投薬として覚醒時、典型的には午前中の6時〜8時に投与されると考えられる。したがって、この医薬製剤は夕方以降および夜間に6〜9時間のグルココルチコイド非含有間隔の血清濃度<50nmol/lを提供するようにも設計され、この間、患者に外来性グルココルチコイドを投与する必要はない。
【0080】
(医薬剤形)
前述から示されるように、本発明に従った組成物は経口投与用に設計される。本発明に基づくキットの場合、徐放成分は経口投与用に好適に設計され、速放部分は任意の好適な投与経路用に、好ましくは粘膜を通じた投与経路用に設計され得る。好ましい態様において、本発明に従った組成物またはキットは経口投与、即ち、経口摂取による投与または口腔への投与用に設計される。
【0081】
最も好適には、本発明に基づくキットの医薬組成物および少なくとも徐放成分は、固体剤形、例えば、顆粒、ビーズ、ペレットおよび粉末のような剤形である。
【0082】
通常、本発明によるキットの組成物および個々の成分は、錠剤、カプセルまたはサシェットを含む単位剤形として提示される。本発明によるキットの速放部分または成分に関しては異なる単位剤形として提示され、例えば、口腔粘膜に適用する薄膜フィルム、好適なデバイス、例えば、口腔粘膜または鼻粘膜に対する噴霧器、肺、気管支または呼吸器の粘膜および上皮を通じて適用する吸入器または粉末吸入器を通じて適用する溶剤、坐剤または直腸粘膜への投与に適した他の組成物を含み、あるいは咀嚼錠、吸飲錠、発泡錠、溶融錠、トローチ剤、芳香錠を含む速放錠として提示され、あるいはよりキャンディ様の剤形として提示され得る。
【0083】
原則的に、経口制御放出組成物を調製する如何なる関連製剤技術もこの組成物の徐放部分に適用され得る。このような組成物は、例えば、拡散制御薬剤送達システム、浸透圧制御薬剤送達システム、腐食性薬剤送達システムなどを含む。したがって、この組成物は単一ユニットまたは複数ユニットの剤形としての用途を意図する形態であり得る。同様に、本発明による組成物またはキットの速放部分を製剤化する際、医薬組成物を調製する如何なる関連製剤技術も適用され得る。医薬製剤分野の当業者は手引書であるRemington's Pharmaceutical Sciencesおよび本明細書における実施例に指針を見出すことができる。
【0084】
本明細書に記載の徐放部分の溶出プロファイルのタイプを得ることを目的に、全般的な速放および徐放製剤技術に関し、以下に手短に述べる。以下に述べる組成物において、1種以上のグルココルチコイドの速放を生じさせる部分の組込み方は当業者には既知であろう。
【0085】
(本発明による組成物の速放部分またはキットの速放成分)
速放部分は、通常は1種以上の医薬上許容な賦形剤または担体(本明細書において「速放担体」とも示す)を併用する活性物質としてのグルココルチコイドを含み、インビトロでのグルココルチコイドの迅速な放出/溶出、医薬組成物の患者への投与後、インビボでの口腔または消化管のような投与部位におけるグルココルチコイドの迅速な溶出およびグルココルチコイドの迅速な吸収を提供する。速放部分に用いる1種以上の医薬上許容な賦形剤は固有であるか、あるいは速放に寄与し得るが、決して放出を遅延または抑制するものではない。
【0086】
速放担体は好適な医薬賦形剤を含み、グルココルチコイドの迅速な溶出を付与するようにインビトロおよびインビボにてグルココルチコイドを溶出溶媒に呈示する。速放部分はそれ自体既知の技術により製剤化され、例えば、以下のような技法がある。
【0087】
微粉砕/超微粉砕されたグルココルチコイド粒子は水溶性の医薬上許容な賦形剤、例えば、ラクトース、マンニトールまたは他の任意の好適な賦形剤と完全に混合され、任意で好適な顆粒化液による顆粒化後、任意で好適な結合剤、崩壊剤、潤滑剤、着香料、着色剤または他の好適な作用剤と混合され、組成物の好適な速放部分を形成する。速放部分は層状錠剤の独立層への圧縮により、あるいは有核錠の外層として形成することができる。
【0088】
速放部分を製剤化する他の方法は、まず、好適な医薬賦形剤、例えば、ラクトース、マンニトールまたは他の好適な賦形剤上にグルココルチコイド液剤を配置し、前述のように継続するか、あるいはまず、好適な賦形剤、例えば、ポリエチレングリコール、好適なポロキサマーまたは他の任意の好適な賦形剤中にグルココルチコイド固溶体を作製し、前述のように継続することである。
【0089】
速放部分は粉末混合物または粉末顆粒の剤形にし、徐放部分と混合しカプセルまたはサシェットに配合することもできる。また、速放部分は小ペレットに製剤化し、徐放ペレットと混合しカプセルに配合することもできる。速放部分と徐放部分の混合物は、好適な医薬賦形剤と混合して均質な混合物にした後、錠剤に圧縮することができる。
【0090】
本発明の別の実施形態において、速放部分はグルココルチコイドの徐放錠または徐放ペレットにグルココルチコイドを含有する迅速溶出コーティングを施すことにより製剤化し得る。
【0091】
本明細書において前述したように、速放部分または成分は、例えば、口腔用途または例えば、他の口腔粘膜用の薄膜フィルムの剤形にて、例えば、粘膜付着性組成物のような別個の用量単位でもあり得る。
【0092】
また、速放部分は、例えば、鼻内噴霧組成物のような鼻腔への投与を目的とした剤形でもよく、あるいは例えば、坐剤としての直腸用固形組成物またはレクチオルとしての直腸用半固形組成物または直腸用液剤としての直腸用流体組成物のような直腸投与用に設計され得る。
【0093】
肺、気管支または呼吸器の粘膜および上皮への投与では、組成物は吸入器または粉末吸入器の形式をとり得る。
【0094】
(本発明による組成物の徐放部分またはキットの徐放成分)
徐放部分は、医薬上許容な賦形剤または担体(本明細書において「徐放担体」とも示す)における活性物質としてのグルココルチコイドを含み、インビトロでのグルココルチコイドの長時間の放出/溶出、医薬組成物の患者への投与後、インビボでの消化管におけるグルココルチコイドの長時間の溶出およびグルココルチコイドの長時間の吸収を提供する。
【0095】
徐放担体は好適な医薬賦形剤を含み、長時間妥当な速度にてグルココルチコイドの溶出を付与するようにインビトロおよびインビボにてグルココルチコイドを溶出溶媒に呈示する。放出動態はゼロ次、一次または一次とゼロ次の混合動態に従い得る。様々な徐放技術の例に、例えば、単一ユニット(例えば、マトリックス錠、被覆マトリックス錠、層状錠剤、多層被覆ユニットなど)および複数ユニット(例えば、徐放コーティングを有するユニット、徐放圧縮コーティングを有するユニット、多層コーティングを有するユニットなど)がある。全般的に適用可能な徐放製剤技術について以下に説明する。以下に記載の組成物において、当業者には1種以上のグルココルチコイドの比較的速やかな放出を生じさせる速放部分の組込み方は既知であろう。一例として、このような部分は速放用のグルココルチコイドを含むコーティング最外層に組み込まれ、2層または多層状錠剤における独立層に組み込まれ、あるいは放出遅延剤を用いずに製剤化されるペレットの剤形にて組み込まれ得る。徐放部分はそれ自体既知の技法により製剤化され、例えば、以下のような技法がある。
【0096】
グルココルチコイドは不水溶性の多孔性マトリックスに埋め込まれ、このマトリックスから細孔を通じた拡散によりグルココルチコイドが放出される。このような多孔性マトリックスは不溶性可塑材、例えば、PVC、ステアリン酸、パラフィンまたは他の好適な不溶性材料から作製することができ、細孔を形成するため任意で好適な賦形剤も用いる。
【0097】
また、グルココルチコイドは不水溶性の多孔性マトリックスに埋め込まれ、このマトリックスの漸進的腐食によりこのマトリックスからグルココルチコイドの溶出が得られる。このような腐食マトリックスは好適な脂質または難溶性もしくは不溶性の医薬賦形剤から作製することができ、任意で他の好適な医薬賦形剤と混合され得る。
【0098】
また、グルココルチコイドは親水性膨潤ゲルマトリックスに埋め込まれ、このマトリックスの腐食を通じた拡散によりこのマトリックスからグルココルチコイドが放出される。通常、このようなマトリックスは修飾セルロース材料、例えば、好適な医薬賦形剤と混合され、錠剤に製剤化されたヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。親水性ゲルマトリックスに好適な他の賦形剤として種々のメタクリル酸共重合体、高分子量ポリオキシエチレンおよびポロキサマーを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
また、グルココルチコイドは、例えば、好適な溶出特性を有する錠剤またはペレットのような個体形状に製剤化され、次に、例えば、膜または膜の細孔を通じた活性物質の拡散の速度を制御する膜のような放出速度制御膜を被覆され得る。このような膜は、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、糖、塩化ナトリウムまたは他の任意の好適な水溶性物質および任意で可塑剤のような水溶性細孔形成物質を任意で含有する、例えば、エチルセルロースまたは他の任意の好適な膜形成賦形剤から作製することができる。
【0100】
特定の実施形態において、本発明による医薬組成物は錠剤の剤形であり、第一部分の1種以上のグルココルチコイドはコーティングとして設けられる。別の特定の実施形態において、第一および第二部分の1種以上のグルココルチコイドはペレット、顆粒、ビーズまたは粉末として提供される。
【0101】
したがって、投与手段は速放部分と徐放部分の両方の経口投与用の製剤であり得る。例えば、経口投与用の組成物は第二部分(徐放部分)の外側にコーティングされた第一部分(速放部分)を含む錠剤であり得る。また、経口投与用の組成物は本発明による組成物の第一部分またはキットの成分を含むカプセルでもよい。
(医薬上許容な賦形剤)
本発明の内容において、用語「医薬上許容な賦形剤」は、それ自体が治療および/または予防効果を実質的に全く有さないという意味において不活性な任意の物質を示すものとする。このような賦形剤は、許容な技術的性質を有する医薬、化粧および/または食品組成物を得ることを可能にすることを目的に添加し得る。
【0102】
本発明による組成物またはキットに用いる好適な賦形剤の例には、充填剤、希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤などまたはこれらの混合物が含まれる。本発明による組成物またはキットの個々の部分は異なる目的で使用されるため(例えば、速放および徐放)、通常、賦形剤はこのような異なる使用を考慮して選択される。当該の特定の剤形に依存し、どのような医薬上許容な賦形剤が妥当な選択であるかは当業者には既知であろう。好適な用途用の他の医薬上許容な賦形剤は、例えば、酸性化剤、アルカリ化剤、保存剤、抗酸化剤、緩衝剤、キレート化剤、着色剤、錯化剤、乳化剤および/または可溶化剤、着香料・芳香剤、保湿剤、甘味剤、湿潤剤などである。
【0103】
好適な充填剤、希釈剤および/または結合剤の例には、ラクトース(例えば、噴霧乾燥ラクトース、α−ラクトース、β−ラクトース、タブレトース(Tabletose)(登録商標)、種々のグレードのファルマトース(Pharmatose)(登録商標)、ミクロトース(Microtose)(登録商標)またはファースト-フロック(Fast−Floc)(登録商標))、微結晶セルロース(種々のグレードのアビセル(Avicel)(登録商標)、エルセマ(Elcema)(登録商標)、ビバセル(Vivacel)(登録商標)、ミン タイ(Ming Tai)(登録商標)またはソルカ-フロック(Solka−Floc)(登録商標))、ヒドロキシプロピルセルロース、L−ヒドロキシプロピルセルロース(低置換)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(例えば、信越化学工業(株)のメトセルE,FおよびK、メトローズSH、例えば、4,000cpsグレードのメトセルEおよびメトローズ60SH、4,000cpsグレードのメトセルFおよびメトローズ65SH、4,000、15,000および100,000cpsグレードのメトセルK;並びに4,000、15,000、39,000および100,000グレードのメトローズ90SH)、メチルセルロースポリマー(例えば、メトセルA、メトセルA4C、メトセルA15C、メトセルA4M)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチレン、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、ショ糖、アガロース、ソルビトール、マンニトール、デキストリン、マルトデキストリン、デンプンまたは改質デンプン(ポテトデンプン、トウモロコシデンプンおよび米デンプンを含む)、リン酸カルシウム(例えば、塩基性リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二カルシウム水和物)、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、コラーゲンなどが含まれる。
【0104】
希釈剤の具体例は、例えば、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶セルロース、粉末セルロース、デキストラン、デキストリン、デキストロース、フルクトース、カオリン、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、ショ糖、糖などである。
【0105】
崩壊剤の具体例は、例えば、アルギニン酸またはアルギン酸、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよび他のセルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、グリコール酸ナトリウムデンプン、デンプン、アルファ化デンプン、カルボキシメチルデンプン(例えば、プリモゲル(Primogel)(登録商標)およびエクスプロッタ(Explota)(登録商標)などである。
【0106】
結合剤の具体例は、例えば、アカシア、アルギニン酸、寒天、カラギーナンカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、液状グルコース、グアールガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ペクチン、PEG(ポリエチレングリコール)、ポビドン、アルファ化デンプンなどである。
【0107】
滑沢剤および潤滑剤も組成物中に含まれ得る。この例にはステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは他のステアリン酸金属塩、タルク、ワックスおよびグリセリド、軽油、PEG、ベヘン酸グリセリル、コロイド状シリカ、水素添加植物油、トウモロコシデンプン、ステアリルフマル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、アルキル硫酸塩、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどが含まれる。
【0108】
本発明の組成物または固体剤形に含まれ得る他の賦形剤は、例えば、着香料、着色剤、風味マスキング剤、pH調節剤、緩衝剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、湿潤剤、湿度調節剤、界面活性剤、懸濁剤、吸収促進剤、懸濁剤、放出制御剤などである。
【0109】
本発明による組成物またはキット成分にフィルムコーティング、腸容コーティング、放出制御コーティング、保護コーティング、抗粘着コーティングなども施し得る。
【0110】
また、例えば、1種以上のグルココルチコイドの徐放に関する妥当な特性を得るためにも、本発明による組成物(またはその一部)に被覆し得る。コーティングは速放用の1種以上のグルココルチコイドを含有する易溶性フィルムとしても施し得る。また、コーティングは1種以上のグルココルチコイドの不快な風味をマスキングするためにも施し得る。コーティングは単一ユニット剤形(例えば、錠剤、カプセル)上に施し、あるいはポリデポット(polydepot)剤形またはその個々のユニットに施し得る。
【0111】
好適なコーティング材料は、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリルポリマー、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、ゼラチン、メタクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、セラック、ショ糖、二酸化チタン、カルナウバワックス、微結晶性ワックス、グリセリルモノステアレート、ゼインである。
【0112】
可塑剤および他の成分をコーティング材料に加え得る。同種または異種の活性物質もコーティング材料に加え得る。
【0113】
(風味のマスキング)
一般的に、大部分の場合、刺激性の性質または分子凝集体形成能を有する薬物から口腔粘膜または経鼻投与用の十分な安全性および安定性を有する製剤を調製することは困難であるが、これは使用する薬物の種類に依存する。ヒドロコルチゾンの場合、主成分が明らかな苦味を有し、反復使用できるように製剤には風味のマスキングを施す必要がある。
【0114】
風味マスキング剤はメントール、ペパーミント、バニリンまたはテルペンベースの化合物でよい。加えて、風味マスキング剤は人工甘味剤、例えば、ソルビトール、キシリトールまたはアスパルテームでよい。風味マスキングは粒子としてグルココルチコイドをマイクロカプセル化することによっても可能である。例えば、これはレシチンベースの化合物により実施可能である。風味マスキング剤は投与製剤の表面および内部に存在するように活性薬物と慎重に混合される。風味マスキングはシクロデキストリンとの包接複合物の形成によっても可能である。
【0115】
シクロデキストリン化合物の典型例はα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、ジメチルβ-シクロデキストリン、マルトシルβ-シクロデキストリンおよび硫酸化β-シクロデキストリンである。α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンが特に好ましい。これらのシクロデキストリン化合物は単独で、あるいは組み合わせて用い得る。
【0116】
使用するシクロデキストリン化合物の量はその可溶度およびヒドロコルチゾン濃度により変動し得る。しかし、シクロデキストリン化合物の量は0.5〜4.0mol、好ましくは2.0〜4.0mol、ヒドロコルチゾンと同程度のモルである。
【0117】
(方法の態様)
本発明による医薬組成物またはキットは、グルココルチコイド欠乏障害に罹患したヒトを含む哺乳動物のような対象の治療における使用に好適である。
【0118】
本発明により治療されるグルココルチコイド欠乏障害は、一次性、二次性または三次性副腎機能不全であり得る。グルココルチコイド慢性投与が適応となる他の病態、例えば、炎症性腸疾患としての全身性炎症性疾患、リウマチ関節炎および他の全身性リウマチ様疾患も本発明により治療することができる。
【0119】
本発明は別の態様において、グルココルチコイド欠乏障害に罹患した患者を治療する方法であって、血清グルココルチコイド濃度の急激な上昇を生じさせる第一有効量の1種以上のグルココルチコイドと、少なくとも約8時間という長時間、1種以上のグルココルチコイドの有効血清濃度を生じさせる第二有効量の1種以上のグルココルチコイドとを患者に投与するステップを含む方法に関する。
【0120】
第一と第二有効量の1種以上のグルココルチコイドは、実質的に同時(長くて10分以内、好ましくは5分以内)に、あるいは連続的(約10分〜約1時間の間隔)に投与され得る。
【0121】
第一および第二有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与により、次の血清濃度が得られる(ヒドロコルチゾンとして表す)。
【0122】
第一有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与後45分以内、好ましくは30分以内または20分以内に、血清濃度は少なくとも約200nmol/lである。
【0123】
第一有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与後約2時間、血清濃度は約200〜約1000nmol/lの範囲、好ましくは約400〜約700nmol/lの範囲である。
【0124】
第一有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与後約6時間、血清濃度は約200〜約600nmol/lの範囲、好ましくは約200〜約400nmol/lの範囲である。
【0125】
第一有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与後約10時間、血清濃度は約50〜約400nmol/lの範囲、好ましくは約100〜約300nmol/lの範囲である。
【0126】
第一有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与後約14時間、血清濃度は最大で約300nmol/l、好ましくは最大で200nmol/l、例えば、約50〜約200nmol/lの範囲である。
【0127】
第一有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与後約18時間、血清濃度は約100nmol/l未満、好ましくは約50nmol/l未満である。
【0128】
少なくとも特定の時間、例えば午前中にヒトのような健常被験者の血清プロファイルを模倣する血清プロファイルを得るため、早朝覚醒時の午前4時〜正午の間、例えば、午前5時〜正午の間、午前6時〜10時の間、午前6時〜9時の間、午前6時〜8時の間に、第一および第二有効量の1種以上のグルココルチコイド投与される。
【0129】
第一および第二の量の1種以上のグルココルチコイド投与後の血清濃度は、第一有効量の1種以上のグルココルチコイドの投与後約0.5〜1時間から約6.5〜7時間に対応する時間にて、午前6時〜正午における健常被験者のコルチゾールの血清濃度を模倣し、通常、実質的に3時間のグルココルチコイド非含有の血清濃度が毎日午後10時頃〜午前6時頃の時間に得られる。
【0130】
第一および第二有効量は本明細書に定義する医薬組成物またはキットの形態にて投与される。通常、第一および第二の量は絶食状態にて(即ち、投与前少なくとも4時間および投与後少なくとも0.5〜1時間は食物摂取なしで)午前中に患者に投与する必要があり、キットの成分の組成物が錠剤の剤形である場合、組成物を水、例えば、50〜300mlまたは約200mlの水と共に摂取することが推奨される。
(本発明による組成物またはキットの使用)
本発明は別の態様において、グルココルチコイド欠乏障害を治療し、本明細書に定義する血清濃度を提供すべく、本明細書に定義する医薬組成物またはキットを調製するための第一および第二の量の1種以上のグルココルチコイドの使用に関する。
図面の簡単な説明
【0131】
図1は、実施例6の結果を示す図である。インビボ血漿プロファイルである。徐放錠、直径7mm、中等度の圧縮力、ヒドロコルチゾン20mg、経口投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
図2は、実施例6の結果を示す図である。IR−ER錠の溶出プロファイル。
図3は、実施例11の結果を示す図である。インビボ血漿プロファイル。徐放錠、直径7mm、中等度の圧縮力、ヒドロコルチゾン20mg、経口投与および粘膜粘着性薄膜層フィルムのヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
図4は、実施例12の結果を示す図である。インビボ血漿プロファイル。徐放錠、直径7mm、中等度の圧縮力、ヒドロコルチゾン20mg、経口投与および水200ml中ヒドロコルチゾン10mgの液剤、経口投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
図5は、実施例18の結果を示す図である。組成物Aの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。
【0132】
図6は、実施例18の結果を示す図である。組成物Bの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。
図7は、実施例18の結果を示す図である。組成物Cの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。
図8は、実施例19の結果を示す図である。フィルムAの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。非粘膜粘着性薄膜層フィルム、6cm2、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
図9は、実施例19の結果を示す図である。フィルムBの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。非粘膜粘着性薄膜層フィルム、6cm2、酢酸ヒドロコルチゾン11.2mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
図10は、実施例20の結果を示す図である。組成物Aの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。粘膜粘着性薄膜層フィルム、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
【0133】
図11は、実施例20の結果を示す図である。組成物Aの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。粘膜粘着性薄膜層フィルム、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
図12は、実施例21の結果を示す図である。組成物Cの単回投与後におけるコルチゾールの血漿濃度−時間プロファイル。粘膜粘着性速放錠、ヒドロコルチゾン10mg、口腔投与。被験者は合成グルココルチコイドにより抑制された内生グルココルチコイド分泌を有する。
図13は、実施例22の結果を示す図である。実施例21の組成物Cの溶出曲線。
図14は、実施例22の結果を示す図である。実施例20の組成物Aの溶出曲線。
図15は、IR/ER組合せ製品からのヒドロコルチゾン(HC)の目標インビトロ放出を示す図である。IR部分:総用量の30%;ER部分:総用量の70%;IR部分:20分以内にて>90%放出、目標:できる限り速やかに100%(15分以内);ER部分:14〜16時間一定速度にて90%(本実施例において15時間)。残余の10%はより遅い速度にて放出される。累積的放出を示す。
【0134】
図16は、図15と同じ放出を示す図である。しかし、本図では放出率として示す(1時間あたりの放出%)。
図17は、IR15%とER85%のIR/ER組合せ製品からのヒドロコルチゾン(HC)の目標インビトロ放出を示す図である。IR部分:総用量の15%であり、50%が40分にて放出。残余は75分以内に放出される;ER急速部分:総用量の85%であり、このうち90%が10時間にて放出される(残余はより遅く放出);ER緩徐部分:総用量の85%であり、このうち90%が24時間にて放出される(残余はより遅く放出)。
図18は、IR/ER組合せ製品からのヒドロコルチゾン(HC)の目標インビトロ放出を示す図である。IR部分:総用量の50%;ER部分:総用量の50%;IR部分:総用量の50%であり、50%が40分にて放出。残余は75分以内に放出される;ER急速部分:総用量の50%であり、このうち90%が10時間にて放出される(残余はより遅く放出);ER緩徐部分:総用量の50%であり、このうち90%が24時間にて放出される(残余はより遅く放出)。
図19は、口腔内の様々な投与部位を示す図である。
図20は、口腔内の様々な投与部位を示す図である。
以下の実施例において本発明を更に例示する。
【0135】
(材料)
以下の実施例に用いた材料を表8に示す。
【0136】
【表8−1】
【表8−2】
【0137】
(方法)
本明細書にて報告するインビボ試験は健常ボランティアを対象に行った。試験組成物の投与前日の午後6時および午後11時に、ベタメタゾン2mgの経口投与により内生コルチゾール分泌を抑制した。試験組成物を健常ボランティアに投与した。ボランティアらを絶食状態にし、正午まで食物摂取を許可しなかった。錠剤投与の場合、水200mlと共に摂取させた。内生コルチゾール分泌の抑制翌日の午前8時〜午前10時に試験組成物を投与した。
【実施例】
【0138】
実施例1
(拡散によりグルココルチコイドを放出する多孔性マトリックス)
次の実施例は拡散によりグルココルチコイドが放出される多孔性マトリックスに関する。このマトリックスに速放用の易水溶性グルココルチコイドを含有するフィルムをコーティングする。
ヒドロコルチゾン 20g
ラクトース 30g
パラフィン粉末 20g
珪酸アルミニウムナトリウム 20g
を乾式混合し、エチルセルロースの5%エタノール溶液により造粒する。
【0139】
この湿潤塊を篩過、乾燥、混練し、
リン酸カルシウム 40g
と混合し、最後に
ステアリン酸マグネシウム 3g
と混合する。
【0140】
この混合物を、7mm凹型丸パンチを用いてヒドロコルチゾン20mgを含有する錠剤に打錠する。錠剤重量は約140mgである。
【0141】
この錠剤に
ヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム 10%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 3%
タルク 10%
を含有する水懸濁液をコーティングし、各錠剤のコーティングがヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム6.7mgを含有するようにする。
【0142】
実施例2
(細孔形成物質を含有する不水溶性フィルムをコーティングした錠剤)
次の実施例は細孔形成物質を含有する不水溶性フィルムをコーティングした錠剤に関する。この錠剤に速放用のグルココルチコイド部分を含有する水溶性フィルムを更にコーティングする。
ヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム 20g
リン酸カルシウム 75g
タルク 5g
ステアリン酸マグネシウム 2g
を乾式混合し、はす縁を有する6mm凹型丸パンチを用いてヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム20.1mgを含有する錠剤に打錠する。錠剤重量は約103mgである。
【0143】
この錠剤に
エチルセルロース 5%
粒子サイズ<10μmに超微粉砕した糖 10%
のアセトン懸濁液をコーティングし、各錠剤が約40mgのコーティングを担持するようにする。
【0144】
この錠剤に
ヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム 10%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、6cps 3%
タルク 10%
を含有する水懸濁液を更にコーティングし、各錠剤の外側コーティングがヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム6.7mgを含有するようにする。
【0145】
実施例3
(親水性マトリックス錠)
本実施例は、速放用のグルココルチコイド部分を含有するコーティングを乾式被覆した親水性ゲル状マトリックス錠に関する。
ヒドロコルチゾン 20g
珪酸アルミニウムナトリウム 15g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、60cps 80g
を混合し、エタノールにより造粒する。この湿潤塊を篩過、乾燥、混練する。この乾燥混合物に
タルク 5g
ステアリン酸マグネシウム 2g
を加える。
【0146】
約2分間混合した後、この混合物を、7mm平坦型丸パンチを用いて徐放錠に打錠する。各錠剤はヒドロコルチゾン20mgを含有し、約117mgの錠剤重量を有する。
ヒドロコルチゾン 10g
ラクトース 40g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、6cps 5g
を乾式混合し、次に、水により造粒する。この湿潤塊を篩過、乾燥、混練する。この乾燥塊に
ポリビニルピロリドン(架橋結合) 5g
を加え、混合後、
ステアリン酸マグネシウム 1g
を加え、更に2分間混合し続ける。
【0147】
9mm凹型丸パンチを具備したManesty DryCota(商標)錠剤製造機を用いて、各徐放錠の周囲上の約61mgの錠塊を打錠することにより有核錠を製造する。有核層はヒドロコルチゾン10mgを含有する。
【0148】
実施例4
(速放用ペレット(IRペレット)と徐放用ペレット(ERペレット)の混合物を含有するカプセル)
(ERペレット)
糖/デンプン種子、直径0.25〜0.35mm 1kg
に
エチルセルロース、10cps 5%
クエン酸トリエチル 0.4%
のエタノール/アセトン40/60溶液を、Wursterカラムを備えた流動床にてまずコーティングし、厚さ約3μmのコーティングとし、次に、
ヒドロコルチゾン 5%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、6cps 1%
のエタノール/アセトン40/60溶液を更にコーティングし、約25%の重量増加とする。
【0149】
同じ装置を用いてこのペレットに
エチルセルロース、10cps 5%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、6cps 1.5%
クエン酸トリエチル 0.3%
のエタノール/アセトン40/60溶液を更にコーティングし、厚さ約20μmのコーティングとする。
【0150】
(IRペレット)
糖/デンプン種子、直径0.25〜0.35mm 1kg
に
ヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム 10%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、6cps 3%
タルク 10%
を含有する水懸濁液を、Wursterカラムを備えた流動床にてコーティングし、約75%の重量増加とする。
【0151】
ヒドロコルチゾン20mgを含有するERペレット量(約140mg)とヒドロコルチゾン21−ヘミスクシネートナトリウム13.4mgを含有するIRペレット量(約70mg)を、2充填ステーション型カプセル充填機にてサイズ番号2の硬質ゼラチンカプセルに充填する。
【0152】
実施例5
(2層錠)
本実施例は、速放用のグルココルチコイド部分を含有する更なる層が打錠される、徐放用の親水性ゲル状マトリックス錠を含む2層錠に関する。
ヒドロコルチゾン 20g
珪酸アルミニウムナトリウム 15g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、60cps 80g
をエタノールにより造粒する。この湿潤塊を篩過、乾燥、混練する。
【0153】
この乾燥混合物に
タルク 5g
ステアリン酸マグネシウム 2g
を加える。
【0154】
約2分間混合した後、この混合物を、2ステーション型錠剤製造機の第一ステーションにて8mm平坦型丸パンチを用い、低圧縮力にて約117mg錠に打錠する。各錠剤はヒドロコルチゾン20mgを含有する。
ヒドロコルチゾン 10g
ラクトース 40g
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、6cps 5g
を乾式混合し、次に、水により造粒する。この湿潤塊を篩過、乾燥、混練する。
【0155】
この乾燥塊に
ポリビニルピロリドン(架橋結合) 5g
を加え、混合後、
ステアリン酸マグネシウム 1g
を加え、更に2分間混合し続ける。
【0156】
約61mgの錠塊(ヒドロコルチゾン10mgを含有)を、錠剤製造機の第二ステーション上にて緩やかに打錠した錠剤の上部に充填することにより、2層錠を製造する。
【0157】
実施例6
(ER錠)
1錠あたりのMg
ヒドロコルチゾン 20
メトセル(登録商標)KV 100LV 64
微結晶セルロース、Avicel(登録商標)PH−102 98
スターチ1500(登録商標)、英国Colorcon社 16
コロイド状二酸化ケイ素 1
ステアリン酸マグネシウム 1
ステアリン酸マグネシウムを除き、すべての材料を均質化するまで乾式混合した。ステアリン酸マグネシウムを加え、更に2分間混合し続けた。8mm凹型丸パンチを用いてこの粉末混合物を200mg錠に打錠した。この錠剤は厚さが平均4.25mmであり、その平均破壊強度は10.8kpであった。ヒドロコルチゾンの平均含量は1錠あたり19.3mgであった。
【0158】
酵素を含有しない擬似腸液500mlおよび撹拌速度50rpmにてUSP溶出試験第2法(パドル法)に準拠した溶出試験器を用いて、溶出に関してこの錠剤を分析した。試料を様々な時間にて採取し、HPLCによりヒドロコルチゾンを分析した。個別に分析した3つの錠剤の中央値を表9に示す。
【0159】
【表9】
徐放剤はヒトボランティアにおいて試験を行った。図1は得られた結果を示す。
【0160】
Wursterカラムを備えた流動床にて、ER錠に
ヒドロコルチゾン 2%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.7%
タルク 2%
を含有する水懸濁液をコーティングし、各錠剤上のコーティングがヒドロコルチゾン7mgを含有するまで続ける。
【0161】
コーティングは迅速に溶出し、15分以内に溶出は完了する。コーティング錠のヒドロコルチゾンの累積的溶出を図2に示す。
【0162】
実施例7
(速放(IR)錠および徐放(ER)錠を含有するキット)
経口または舌下用途用のIR錠:
1錠あたりのMg
ベタメタゾン 0.4
Xylitab(登録商標)300a 40
無水ラクトース USP/NF 5
微結晶セルロース USP/NF 10
クロスポビドン USP/NF 4
ステアリルフマル酸ナトリウム 1
水 適量。
a英国Danisco Sweeteners社から市販されている直接打錠キシリトール
ラクトースおよび微結晶セルロースを乾式混合する。ベタメタゾンを少量の水に溶解し、この溶液を粉末混合物上に散布する。混合して乾燥させる。Xylitabおよびクロスポビドンを加え、この混合物が均質化するまで乾式混合する。ステアリルフマル酸ナトリウムを加え、更に2分間混合し続ける。6mm凹型丸パンチを用いて打錠機においてこの混合物を錠剤に打錠する。
【0163】
ER錠:
1錠あたりのMg
ベタメタゾン 0.8
メトセルK100プレミアムLV CRb 65
微結晶セルロース USP/NF 70
コロイド状二酸化ケイ素 1
ステアリルフマル酸ナトリウム 1
bDow Chemical社
ステアリン酸マグネシウムを除き、すべての材料を均質化するまで好適な混合機にて混合する。次に、ステアリン酸マグネシウムを加え、更に2分間混合する。7.5mm凹型丸パンチを具備した打錠機にて錠剤に打錠する。
【0164】
好適に設計したパッケージにIR錠1錠とER錠1錠をパッケージし、キットを得る。
【0165】
実施例8
(速放(IR)フィルムおよび徐放(ER)錠を含有するキット)
口腔投与用フィルム:
重量%
プレドニゾロン 0.75
PEG400 USP/NF 2
メトセルE5、Dow Chemical社 4
キシリトール、フランスRoquette社 1
水 100となるまで
【0166】
メトセルを総量の約90%の蒸留水に加え、メトセルが完全に溶解するまで磁気撹拌機により撹拌した。撹拌継続下にてPEG400を加え、次に、キシリトールおよびプレドニゾロンを加えた。最終重量に水を加え、4時間撹拌し続けた。
【0167】
この溶液330μlをピペットにより直径16mmの平底PVCブリスターに加えた。この溶液を一晩室温にて乾燥させ、ブリスターパックを熱シールラッカー仕上アルミニウムホイルにより密封した。
【0168】
ER錠:
1錠あたりのMg
プレドニゾロン 1.5
メトセルK100プレミアムLV CRb 65
微結晶セルロース USP/NF 70
コロイド状二酸化ケイ素 1
ステアリン酸マグネシウム 1
bDow Chemical社
ステアリン酸マグネシウムを除き、すべての材料を均質化するまで好適な混合機にて混合する。次に、ステアリン酸マグネシウムを加え、更に2分間混合する。7.5mm凹型丸パンチを具備した打錠機にて錠剤に打錠する。
【0169】
IRフィルムブリスター1枚とER錠1錠をパッケージし、好適に設計したキットを得る。
【0170】
実施例9
(速放(IR)経口用溶液および徐放(ER)錠を含有するキット)
経口用溶液:
酢酸プレドニゾロン 0.9mg
ソルビトール 60mg
メントール 1.2mg
滅菌水 5ml
溶液を作製し、湿密性のアルミニウム製葉状分包包装に充填する。
【0171】
1つの分包包装とER錠1錠をパッケージし、好適に設計したキットを得る。
【0172】
実施例10
(速放(IR)舌下噴霧剤および徐放(ER)錠を含有するキット)
ヒドロコルチゾンの舌下噴霧:
mg/ml
酢酸ヒドロコルチゾン 10
カルボキシメチルセルロース 0.8(0.08%)
2−OH−プロピル−β−シクロデキストリン 40
PEG300 5
メントール 0.3
ソルビトール 12
レボメントール 2.0
NaH2PO4・2H2O 2
水 適量
【0173】
酢酸ヒドロコルチゾンを少量の水に溶解する。これを2−OH−プロピル−β−シクロデキストリンと混合し、1時間放置する。カルボキシメチルセルロースを加え、混合する。PEG300、メントール、ソルビトール、レボメントールおよびNaH2PO4・2H2Oを加える。水を加えて最終容量となるようにする。1用量あたり0.58ml(ヒドロコルチゾン5mg)を送達する噴霧パッケージにこれを分配する。
【0174】
ヒドロコルチゾンER錠:
1錠あたりのMg
ヒドロコルチゾン 10
メトセル(登録商標)KV 100LV 64
微結晶セルロース、Avicel(登録商標)PH−102 98
スターチ1500(登録商標)、英国Colorcon社 16
コロイド状二酸化ケイ素 1
ステアリン酸マグネシウム 1
【0175】
ステアリン酸マグネシウムを除き、すべての材料を均質化するまで乾式混合する。ステアリン酸マグネシウムを加え、更に2分間混合し続ける。8mm凹型丸パンチを用いてこの粉末混合物を200mg錠に打錠する。
舌下噴霧剤およびER錠を好適に設計したキットに分配する。
【0176】
実施例11
(速放用フィルムおよび徐放錠を含有するキット)
i)ヒドロコルチゾン10mgを含有し、実施例20の組成物Aに記載するように調製される速放用フィルムおよびii)ヒドロコルチゾン20mgを含有し、実施例6に従って調製される徐放錠を含有するキットを提供する。成分i)は口腔投与され、ii)、即ち、錠剤は水200mlと共に摂取される。2成分は同時に摂取される。この結果を図3に示す。
【0177】
実施例12
(速放用のヒドロコルチゾン経口用溶液および徐放錠を含有するキット)
経口用溶液はヒドロコルチゾン10mgを水200ml中に溶解することにより調製し、徐放錠は実施例6に対応する。この2成分をヒトボランティアに同時に投与し、その結果を図4に示す。
【0178】
以下に速放組成物の実施例を述べる。各例示組成物は本発明によるキット中の速放成分として使用することができる。徐放成分は本明細書に記載するように長時間的にグルココルチコイドを放出する、任意の好適なグルココルチコイド含有組成物でよい。
【0179】
実施例13
(経口または口腔投与用のベタメダゾンIR錠)
1錠あたりのMg
ベタメタゾン 0.4
Xylitab(登録商標)300a 45
微結晶セルロース NF 10
クロスポビドン NF 4
水 適量
ステアリルフマル酸ナトリウム NF 1
a英国Danisco Sweeteners社から市販されている直接打錠キシリトール
【0180】
ベタメタゾンを少量の水に溶解する。この溶液を微結晶セルロース上に散布する。これを混合して乾燥させる。Xylitabおよびクロスポビドンを加え、均質な混合物が得られるまで好適な混合機にて乾式混合する。次に、ステアリルフマル酸ナトリウムを加え、更に2分間混合し続ける。6mm凹型丸パンチを用いて好適な打錠機にてこの粉末混合物を打錠する。
【0181】
実施例14
(ベタメダゾンの舌下噴霧)
mg/ml
ベタメタゾン 0.4
カルボキシメチルセルロース 0.8(0.08%)
PEG300 5
メントール 0.3
ソルビトール 12
レボメントール 2.0
NaH2PO4・2H2O 2
水 適量
ベタメタゾンを少量の水に溶解する。カルボキシメチルセルロースを加え、混合する。PEG300、メントール、ソルビトール、レボメントールおよびNaH2PO4・2H2Oを加える。水を加えて最終容量となるようにする。
【0182】
実施例15
(ベタメダゾンの舌下噴霧)
mg/ml
ベタメタゾン 0.4
グルタミン酸キトサン 10
メントール 0.1
レボメントール 1.5
NaH2PO4・2H2O 2
水 適量
ベタメタゾンを少量の水に溶解する。グルタミン酸キトサンを加え、混合する。0.2μm膜フィルタを通して濾過する。メントール、レボメントールおよびNaH2PO4・2H2Oを加える。水を加えて最終容量となるようにする。
【0183】
実施例16
(ヒドロコルチゾンの舌下噴霧)
mg/ml
酢酸ヒドロコルチゾン 10
カルボキシメチルセルロース 0.8(0.08%)
2−OH−プロピル−β−シクロデキストリン 40
PEG300 5
メントール 0.3
ソルビトール 12
レボメントール 2.0
NaH2PO4・2H2O 2
水 適量
ヒドロコルチゾンを少量の水に溶解する。2−OH−プロピル−β−シクロデキストリンと混合し、1時間放置する。カルボキシメチルセルロースを加え、混合する。PEG300、メントール、ソルビトール、レボメントールおよびNaH2PO4・2H2Oを加える。水を加えて最終容量となるようにする。
【0184】
実施例17
(ヒドロコルチゾンの舌下噴霧)
mg/ml
酢酸ヒドロコルチゾン 10
グルタミン酸キトサン 10
2−OH−プロピル−β−シクロデキストリン 40
メントール 0.1
レボメントール 1.5
NaH2PO4・2H2O 2
水 適量
ヒドロコルチゾンを少量の水に溶解する。2−OH−プロピル−β−シクロデキストリンと混合し、1時間放置する。グルタミン酸キトサンを加え、混合する。0.2μm膜フィルタを通して濾過する。メントール、レボメントールおよびNaH2PO4・2H2Oを加える。水を加えて最終容量となるようにする。
【0185】
実施例18
(ヒドロコルチゾンの薄膜層フィルム)
組成物A:
重量%
ヒドロコルチゾン 3%
アルギン酸ナトリウムPH157 2%
水 95%
組成物B:
酢酸ヒドロコルチゾン 3.4%
アルギン酸ナトリウムPH157 2%
水 94.6%
組成物C:
ヒドロコルチゾン 3%
メトローズ60SH−50 2%
水 95%
【0186】
フィルムは以下に述べるように作製した。
1.ポリマー、グルココルチコイドおよびH2Oを計量した。
2.撹拌中にグルココルチコイドを水に加えた。
3.懸濁液が得られるまでこの配合物を撹拌し続けた。
4.この懸濁液にポリマーを加えた。
5.均一なゲルが得られるまでこの配合物を撹拌し続けた(最低2時間)。
6.ゲル0.5gを空ブリスターに計量し、加熱乾燥器に配置した(乾燥:25℃で22時間)。
【0187】
表10はヒドロコルチゾン10mgのパーセントとして1,3,5,10および15分後のインビトロ溶出を示す(回転バスケット 100rpm、リン酸緩衝液 pH=7.0、溶剤500mlあたり1ユニット)。アルギン酸ナトリウム(Na−alg)、ヒプロメロース(HPMC)のポリマーにヒドロコルチゾン10mgを有するユニットであり、約7mg/ユニットである。2ユニットをNa−algおよびHPMCにより試験した。平均値を一覧表にした。次の表に示す結果は粘度に関する順位を示し、即ち、HPMCが最も低い粘度を有し、Na−algが最も高い粘度を有する。
【0188】
【表10】
ヒトにおけるインビボの血漿プロファイル、1組成物あたりN=1。
デキサメタゾン抑制試験、絶食状態、他は「方法」と示す段落に記載の通り。
【0189】
これらの結果(図5〜7)により、酢酸ヒドロコルチゾンの使用は速放組成物には適さないように思われることが示される。このことは次の実施例において更に検討した。
【0190】
実施例19
(非粘膜粘着性速放用フィルム)
実施例20−組成物Aにほぼ類似した2種類のフィルムを調製した。フィルムAはヒドロコルチゾン10mgを含有し、フィルムBは酢酸ヒドロコルチゾン11.2mgを含有する。口腔投与後のインビボ試験の結果を図8および9に示す。これらの結果により、フィルムが生体粘着性でない場合であっても、フィルムAの単回投与後の全身循環系への吸収の速やかな開始が得られることが示される。対照的に、酢酸ヒドロコルチゾンを含有するフィルムに関して得られる結果では、全身循環系へのグルココルチコイドの吸収の速やかな開始が必要とされる場合、この化合物は妥当ではないように思われることが示される。
【0191】
実施例20
(速放または徐放用薄膜層フィルム)
次の組成物AおよびBからグルココルチコイドフィルムのバッチを調製した:
迅速放出組成物A:成分 重量%
PEG400 2.0
ヒドロコルチゾン 3.0
メトセルE5 4.0
キシリトール 1.0
水 90
【0192】
緩徐放出組成物B:成分 重量%
PEG400 1.3
ヒドロコルチゾン 3.0
メトセルE5 5.7
水 90
磁気撹拌器を備えた50ml丸底ガラス製フラスコ中の蒸留水(18ml)にメトセルE5を加えた。メトセルが完全に溶解した後、撹拌継続下でPEG400を加え、続いてキシリトール(組成物Aのみ)およびヒドロコルチゾンを加えた。撹拌は4時間続けた。
【0193】
直径16mmの平底PVCブリスター(スウェーデン、Lund、Inpack社)中に溶液AまたはB 330μlをピペット(フィンピペット;自動式)により加え、各ブリスター容器へと加えた。この溶液を一晩室温にて乾燥させた。翌日、用量分析のためにフィルム10枚を取り外した。各フィルムを水/エタノール(95%)9:1(w/w)100ml中に溶解した。この溶液を242nmでのUV分光法により分析した。組成物A、Bに1ブリスターあたりそれぞれヒドロコルチゾン10.19mg、9.83mgの平均含量が見出された(それぞれSD 0.29、0.14)。
【0194】
口唇投与後にヒト被験者2人においてヒドロコルチゾン組成物を試験した。被験者は合成グルココルチコイドにより内生グルココルチコイド分泌が抑制された。口唇投与後360分間、コルチゾールの血漿濃度をモニタリングした。これらの異なる被験者2人由来の血清濃度時間プロファイルを図10および11に示す。
【0195】
ヒドロコルチゾンの粘膜吸収の速度および程度が高く、また、最初に測定した血漿濃度が既に10〜15分にて得られたため、血清中のコルチゾールの発現が迅速であることが明確に認められる。
【0196】
これらの薬物動態データにより、この薬剤送達経路では投与および吸収部位にて溶出可能な液体の量は少ないが、経口粘膜投与用の本発明の製剤により活性薬物の粘膜吸収の速度および程度が亢進することが示される。
【0197】
実施例21
(速放または徐放グルココルチコイド錠)
乾式混合した粉末状成分を次の組成物CおよびDに直接打錠することにより、グルココルチコイド錠を製造した:
迅速放出組成物C:成分 1バッチあたり
PEG6000 8.7g
ヒドロコルチゾン 2.5g
Xylitab300 8.7g
ステアリン酸マグネシウム 0.16g
【0198】
緩徐放出組成物D:成分 1バッチあたり
PEG6000 6.94g
ヒドロコルチゾン 2.5g
Xylisorb 6.94g
ポリオックスWSR301 3.46g
ステアリン酸マグネシウム 0.16g
(バッチサイズ100の錠剤)
粉末状成分を篩過し(メッシュサイズ0.7mm)、5分間小型ブリキ缶にて手で振とうすることにより乾式混合した。この混合物の均一性は錠剤の分析に用いた方法と同じ方法により分析した。錠剤成形は直径7mmの平坦な円形パンチを用いてDIAF製錠機により行った(分割スコアを記録)。錠剤10個中のヒドロコルチゾン用量をフィルムで用いたのと同じ方法で評価した。組成物CとDに対し、1錠あたりそれぞれヒドロコルチゾン9.53mg、9.72mgの平均含量が見出された(それぞれSD 0.15、0.14)。
【0199】
錠剤の厚さ(10錠):1.72〜1.76mm(C);1.79〜1・84mm(D)、
脆砕性(20錠):0.6%(C);0.4%(D)、
錠剤の硬度(10錠):23.7N(C);22.9N(D)
【0200】
ヒト被験者2人への口腔投与後、組成物の試験を行った(図12)。
【0201】
実施例21の固体剤形から全身循環系への活性物質の吸収速度は、実施例20の組成物より多少緩やかであり、これは口唇用医薬製剤の組成および機能に変化をもたらすことにより、ヒドロコルチゾンの全身循環系への吸収速度を調整することが可能であるということである。
【0202】
実施例22
(インビトロ溶出プロファイル)
実施例20および21による製剤からのヒドロコルチゾンのインビトロ溶出プロファイルを、標準化制御インビトロ環境にて経時的に追跡した。自動試料採取装置およびソフトウェアに結合した、米国薬局方溶出試験第2法(パドル法)に準拠した溶出試験器を用いて、中性pH環境における製剤の放出プロファイルを得ようとした。溶出プロファイルは総水量300ml中、37℃でパドル50rpmにて得られた。実施例の医薬組成物を溶出溶媒に挿入してから0,1,3,5,7,10および15分後、試料採取を行った。
【0203】
各製剤からの溶出プロファイルを投与後最大360分、2つの試験にてモニタリングし、対応する溶出時間プロファイルをそれぞれ図13、14に示す。放出速度は経時的な用量パーセントとして示す。
【0204】
実施例21の固体剤形からの放出速度は多少緩徐であった(図14)。これは口鼻咽頭部用の医薬製剤の組成および機能に変化をもたらすことにより、ヒドロコルチゾンの放出速度を調整することが可能であるということである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルココルチコイド代償療法のコーティングされた錠剤であって、
(a)徐放性の錠剤コアおよび該錠剤コアを包む速放性のコーティングを含み、
(b)前記の錠剤コアが、ヒドロコルチゾン、ならびに(i)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロースおよびアルファ化デンプンの組合せ、(ii)コロイド状二酸化ケイ素、および(iii)ステアリン酸マグネシウムで構成される賦形剤組成物を含み、前記錠剤コア中に存在するヒドロコルチゾンの量が、前記錠剤中に存在するヒドロコルチゾンの総量の60%〜80%であり、
(c)前記のコーティングが、ヒドロコルチゾンならびにメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリルポリマー、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースアセテート、ゼラチン、メタクリル酸コポリマー、ポリエチレングリコール、セラック、ショ糖、二酸化チタン、カルナウバワックス、微結晶性ワックス、グリセリルモノステアレート、タルクおよびゼインからなる群から選択される少なくとも1つのコーティング材料を含み、前記のコーティング中に存在するヒドロコルチゾンの量が、前記錠剤中に存在するヒドロコルチゾンの総量の20%〜40%であり、そして
(d)前記錠剤が、5〜40mgのヒドロコルチゾンの1日用量を送達するのに有効である、コーティングされた錠剤。
【請求項2】
健常者の日周期リズムを有する内生ヒドロコルチゾン放出プロファイルを実質的に模倣するヒドロコルチゾンの放出プロファイルをもたらす、請求項1に記載のコーティングされた錠剤。
【請求項3】
前記のコーティングが、ヒドロコルチゾンを含有する速放性のコーティングである、請求項1または2に記載のコーティングされた錠剤。
【請求項4】
前記速放性のコーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、ポリエチレングリコール、二酸化チタンおよびタルクからなる群から選択されるコーティング材料を含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載のコーティングされた錠剤。
【請求項5】
前記のコーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびタルクを含む、請求項1〜4のいずれか1つに記載のコーティングされた錠剤。
【請求項6】
錠剤が、ヒドロコルチゾンの1日用量5〜40mgを送達するのに有効である、請求項1〜5のいずれか1つに記載のコーティングされた錠剤。
【請求項7】
毎日朝1回投与するための請求項1〜6のいずれか1つに記載のコーティングされた錠剤。
【請求項8】
前記の錠剤コア中に存在するヒドロコルチゾンの量が、前記錠剤中に存在するヒドロコルチゾンの総量の74%であり、
前記のコーティング中に存在するヒドロコルチゾンの量が、前記錠剤中に存在するヒドロコルチゾンの総量の26%であり、そして
前記の賦形剤組成物中のヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、アルファ化デンプン、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムの相対量が、重量で、35.5:54.4:8.9:0.55:0.55である、請求項1〜7のいずれか1つに記載のコーティングされた錠剤。
【請求項1】
グルココルチコイド代償療法のコーティングされた錠剤であって、
(a)徐放性の錠剤コアおよび該錠剤コアを包む速放性のコーティングを含み、
(b)前記の錠剤コアが、ヒドロコルチゾン、ならびに(i)ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロースおよびアルファ化デンプンの組合せ、(ii)コロイド状二酸化ケイ素、および(iii)ステアリン酸マグネシウムで構成される賦形剤組成物を含み、前記錠剤コア中に存在するヒドロコルチゾンの量が、前記錠剤中に存在するヒドロコルチゾンの総量の60%〜80%であり、
(c)前記のコーティングが、ヒドロコルチゾンならびにメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリルポリマー、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、セルロースアセテート、ゼラチン、メタクリル酸コポリマー、ポリエチレングリコール、セラック、ショ糖、二酸化チタン、カルナウバワックス、微結晶性ワックス、グリセリルモノステアレート、タルクおよびゼインからなる群から選択される少なくとも1つのコーティング材料を含み、前記のコーティング中に存在するヒドロコルチゾンの量が、前記錠剤中に存在するヒドロコルチゾンの総量の20%〜40%であり、そして
(d)前記錠剤が、5〜40mgのヒドロコルチゾンの1日用量を送達するのに有効である、コーティングされた錠剤。
【請求項2】
健常者の日周期リズムを有する内生ヒドロコルチゾン放出プロファイルを実質的に模倣するヒドロコルチゾンの放出プロファイルをもたらす、請求項1に記載のコーティングされた錠剤。
【請求項3】
前記のコーティングが、ヒドロコルチゾンを含有する速放性のコーティングである、請求項1または2に記載のコーティングされた錠剤。
【請求項4】
前記速放性のコーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、ポリエチレングリコール、二酸化チタンおよびタルクからなる群から選択されるコーティング材料を含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載のコーティングされた錠剤。
【請求項5】
前記のコーティングが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびタルクを含む、請求項1〜4のいずれか1つに記載のコーティングされた錠剤。
【請求項6】
錠剤が、ヒドロコルチゾンの1日用量5〜40mgを送達するのに有効である、請求項1〜5のいずれか1つに記載のコーティングされた錠剤。
【請求項7】
毎日朝1回投与するための請求項1〜6のいずれか1つに記載のコーティングされた錠剤。
【請求項8】
前記の錠剤コア中に存在するヒドロコルチゾンの量が、前記錠剤中に存在するヒドロコルチゾンの総量の74%であり、
前記のコーティング中に存在するヒドロコルチゾンの量が、前記錠剤中に存在するヒドロコルチゾンの総量の26%であり、そして
前記の賦形剤組成物中のヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、アルファ化デンプン、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムの相対量が、重量で、35.5:54.4:8.9:0.55:0.55である、請求項1〜7のいずれか1つに記載のコーティングされた錠剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−236846(P2012−236846A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−173158(P2012−173158)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2007−508863(P2007−508863)の分割
【原出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(508078617)デュオコート ファーマ エービー (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【分割の表示】特願2007−508863(P2007−508863)の分割
【原出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(508078617)デュオコート ファーマ エービー (2)
【Fターム(参考)】
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