説明

グローブボックスおよびその開閉構造

【課題】低コストでロック手段の位置矯正をなし得るグローブボックスおよびその開閉構造を提供する。
【解決手段】インストルメントパネルに開設した開口部を閉成する閉成位置および該開口部を開放する開放位置に変位可能な物品収納本体22および前面パネル24に、インストルメントパネルに形成した係合孔16との係合により物品収納本体22および前面パネル24を閉成位置で保持するロック手段42を設ける。そして、ロック手段42は、物品収納本体22および前面パネル24の間に配設され、該物品収納本体22の側壁30に開設した挿通孔36に挿通されて側方に突出し、係合孔16に対して係脱可能に係合するスライドロッド56と、物品収納本体22における挿通孔36の開口縁部に形成され、該挿通孔36に挿通されたスライドロッド56の側面に弾性的に接触する弾性片38とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用インストルメントパネルに開設した開口部を開閉可能なグローブボックスおよびその開閉構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、乗用車における乗員室内の前方には、所要形状に成形されて車幅方向の略全幅に亘って延在する大型のインストルメントパネルが設けられている。このインストルメントパネルは、車種毎に専用にデザインされた固有の形状とされて、運転席側に計器ユニットが配設されると共に、センターコンソール部にオーディオユニットや空調操作パネル等が配設されている。またインストルメントパネルの助手席側には、内部に格納したエアバッグ装置(図示せず)に対応したエアバッグドアや、車検証または身の回りの小間物を収納可能なグローブボックスが配設されている。
【0003】
このグローブボックスは、(a)インストルメントパネルに画成された物品収納空間を、該インストルメントパネルに枢支された蓋体で開閉するタイプ、(b)物品を収容可能なボックス本体と、このボックス本体の前側に取り付けられた前面パネルとから構成されて、インストルメントパネルに画成した設置部にボックス本体を回動可能に枢支したタイプ、等が実施されている。そして、何れのタイプのグローブボックスにあっても、インストルメントパネルの開口部を閉成する位置に蓋体やボックス本体を保持するロック手段、および該ロック手段を解除するロック解除手段が設けられており、ロック解除手段を乗員が操作することにより、グローブボックスを必要に応じて開閉し得るようになっている(特許文献1または2参照)。
【0004】
ここで、インストルメントパネルに画成した収容部内にボックス本体を回動可能に枢支するタイプを例にすると、ボックス本体と前面パネルとの間に、ロック手段としての左右一対のスライドロッドを左右方向にスライド可能に配設したサイドロック機構が知られている。このサイドロック機構は、ボックス本体の側面に形成した挿通孔を介してスライドロッドが外部に突出するよう構成される。一方で、インストルメントパネルには、各スライドロッドと係合可能な係合孔が対応的に開設されており、各スライドロッドと係合孔とを係合することで、インストルメントパネルの開口部を閉成する位置にグローブボックスが保持される。そして、スライドロッドに連繋接続する操作ノブが前面パネルに設けられており、該操作ノブを乗員等が操作することでスライド部材と係合孔との係合が解除され、グローブボックスの開放操作をなし得るようになっている。
【特許文献1】特開2004−3227号公報
【特許文献2】特開2004−156331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ボックス本体や前面パネル等の製造過程で発生する誤差や、ボックス本体と前面パネルとを振動溶着により接合する際に発生する誤差等に起因して、ボックス本体の挿通孔に対してスライドロッドが斜め方向から挿通されたり、挿通孔の中心からズレた位置にスライドロッドが挿通されることがある。このように挿通孔とスライドロッドとの位置関係にズレが生ずると、走行時の振動等によりスライドロッドがボックスに接触して異音が発生する要因となっていた。また、スライドロッドと係合孔との位置関係にもズレが生じ、スライドロッドの引っ掛かり等に起因してグローブボックスの開閉時に異音が発生することもある。特に、前述したサイドロック機構では、グローブボックスの左側に位置するスライドロッドと対応の係合孔との位置関係と、グローブボックスの右側に位置するスライドロッドと対応の係合孔との位置関係とが異なると、グローブボックスの開閉時に異音が発生し易くなり、車両内装部材としてのグローブボックスの質感や操作性が損なわれると共に、走行時にグローブボックスのガタツキの要因となっていた。
【0006】
そこで、ボックス本体に開設された挿通孔に樹脂製キャップを取り付けて、挿通孔に対するスライドロッドの位置ズレを矯正することが行なわれている。しかしながら、キャップを別途取り付ける構成では、部品点数の増加によりコストアップに繋がる欠点がある。また、スライドロッドの側面に弾性片を形成し、該弾性片をボックス本体や前面パネルに押付けることで、挿通孔に対するスライドロッドの位置ズレを矯正する構成も採用されている。しかし、スライドロッドに弾性片を形成して位置矯正する構成では、弾性片の形成位置(すなわちスライドロッドを矯正する位置)が挿通孔から離れるため、挿通孔との関係でスライドロッドを完全に矯正するのは困難であった。また、成形加工上の制約等によりスライドロッドの側面に弾性片を等間隔に形成するのは困難な場合も多く、スライドロッドの位置ズレを矯正できないこともある。
【0007】
そこで、本発明は、低コストでロック手段の位置矯正をなし得るグローブボックスおよびその開閉構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を好適に達成するため、請求項1に係るグローブボックスは、
車両用インストルメントパネルに開設した開口部を閉成する閉成位置および該開口部を開放する開放位置に変位可能な開閉部材と、前記開閉部材に配設され、前記インストルメントパネルに形成した係合孔との係合により開閉部材を前記閉成位置で保持するロック手段と、前記ロック手段と係合孔との係合を解除して前記開閉部材の開放位置への変位を許容するロック解除手段とを備えたグローブボックスであって、
前記ロック手段は、
前記開閉部材に内部画成された空間部に配設されて該開閉部材の側壁に開設した挿通孔を介して外部に突出し、前記係合孔に対して係脱可能に係合する係合部と、
前記挿通孔の開口縁部に形成されて該挿通孔に挿通された前記係合部の側面に弾性的に接触する弾性片とを備えることを要旨とする。
【0009】
すなわち、挿通孔における適正位置からズレた位置に第2の係合部が挿通された場合や、挿通孔に対して第2の係合部が斜め方向から挿通された場合には、第2の係合部の側面に接触する弾性片の弾性力が作用することで、第2の係合部をガタツキなく保持し、当該第2の係合部が挿通孔の適正位置へ矯正される。このように、挿通孔の開口縁部に弾性片を形成することで、矯正部材を別途設けることなく低コストで係合部を挿通孔の適正位置に矯正して異音発生を防止できる。また、挿通孔の開口縁部に弾性片を形成し、該挿通孔の開口縁部で第2の係合部を弾性挟持することにより、当該挿通孔から外方に突出した第1の係合部と第2の係合部との間のズレを最小限に抑制でき、第1の係合部と第2の係合部とが係脱する際の異音をより確実に防止できる。なお、「挿通孔の適正位置」とは、設計等において第2の係合部の挿通が予定された挿通孔の位置をいう。
【0010】
請求項2に係るグローブボックスは、前記弾性片は、前記挿通孔の開口縁部に沿って等間隔に3箇所以上形成されることを要旨とする。
【0011】
すなわち、挿通孔の開口縁部に沿って弾性片を等間隔に3箇所以上形成することで、挿通孔の挿通予定位置に対して係合部がズレて挿通されたとしても、該第2の係合部に対して挿通予定位置に矯正する力が作用する。すなわち、第2の係合部が挿通孔に対して何れの方向に位置ズレしても、何れかの弾性片で第2の係合部を矯正できる。また、3箇所以上の弾性片が係合部の側面に等間隔に接触することで、係合部を正確に支持できる。
【0012】
前記課題を克服し、所期の目的を好適に達成するため、請求項3に係るグローブボックスの開閉構造は、
前記請求項1または2記載のグローブボックスの開閉構造であって、
前記開閉部材の左右側壁に前記挿通孔が夫々開設されて、各挿通孔に対応して前記第2の係合部が設けられると共に、
前記車両用インストルメントパネルに形成される前記第1の係合部は、前記第2の係合部に対応するよう形成されて該第2の係合部を挿脱可能に挿入可能な係合孔であり、該車両用インストルメントパネルにおける各係合孔の開口縁部に、対応する第2の係合部の側面に弾性的に接触する第2の弾性片を形成したことを要旨とする。
【0013】
すなわち、車両用インストルメントパネルと開閉部材との組付け誤差等に起因して、係合孔の適正位置からズレた位置に第2の係合部が挿入された場合は、対応する第2の係合部の側面に接触する第2の弾性片の弾性力が作用することで、各第2の係合部が係合孔に弾性挟持される。このように、各係合孔の開口縁部に第2の弾性片を形成することで、係合孔と対応の第2の係合部との間に生ずる隙間に第2の弾性片が介在して第2の係合部を保持することで、効果的に異音発生を防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るグローブボックスによれば、ロック手段の第2の係合部を挿通孔に対して低コストで位置矯正でき、開閉部材の開閉時に発生する異音を防止し得る。また、本発明に係るグローブボックスの開閉構造によれば、ロック手段の第2の係合部を係合孔に対して低コストで弾性挟持でき、開閉部材の開閉時に発生する異音をより確実に防止し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係るグローブボックスおよびその開閉構造につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【実施例】
【0016】
図1に示すように、乗用車における乗員室内には、所要形状に成形されて車幅方向の略全幅に亘って延在する大型のインストルメントパネル10に配設されており、該インストルメントパネル10の助手席側に、実施例に係るグローブボックス20が設置されている。インストルメントパネル10は、所要の意匠形状に成形されたパネル基材12を主体とし、このパネル基材12は上部半体12Aおよび下部半体12Bとの上下組付タイプとされ、該上部半体12Aの外面に表皮材13を被着して質感向上が図られている。そして、下部半体12Bにおける助手席側に、室内側に開口する凹状の設置部14が形成されており(図3参照)、設置部14に各種物品を収納可能なグローブボックス20が開閉可能に配設されている。なお、以下の説明において、「前」・「後」とはグローブボックスを基準として指称するものとし、グローブボックスの乗員室側を前側とし、グローブボックスの裏側を後側とする。
【0017】
図2または図3に示すように、実施例に係るグローブボックス20は、インストルメントパネル10の設置部14に回動可能に枢支される物品収納本体22と、該物品収納本体22の前側に取り付けられて設置部14の開口部14aを閉成する前面パネル24と、設置部14の開口部14aを閉成する位置で前面パネル24を保持するロック手段42と、該ロック手段42を解除する開閉操作レバー(ロック解除手段)44とを備えている。実施例では、グローブボックス20が全体として設置部14に収容可能なサイズに形成され、設置部14の開口部14aを前面パネル24で閉成する閉成位置と、該開口部14aを開放した開放位置にグローブボックス20が変位し得るよう構成される。すなわち、実施例に係るグローブボックス20では、物品収納本体22と前面パネル24とにより、インストルメントパネル10に設けられた設置部14の開口部14aを開閉する開閉部材を構成している。
【0018】
前面パネル24は、ポリプロピレン等の合成樹脂を材質とする一体成形部材であり、設置部14の開口部14aに合致するサイズ・形状とされて、グローブボックス20の閉成時にはインストルメントパネル10の前面形状に整合するようになっている(図1参照)。また、前面パネル24には、右側上部位置(運転席側の上部位置)に凹部24aが形成されており、該凹部24aに開閉操作レバー44が回動可能に設けられている。この開閉操作レバー44は、凹部24aに臨ませた指先を掛けて回動操作する操作部46と、この操作部46の裏側に設けられ、凹部24aに形成された開口(図示せず)を介して前面パネル24の裏側へ延出する押圧片48とから形成されており、操作部46を回動操作することで押圧片48が下方へ変位するよう構成される。なお、開閉操作レバー44は、図示しないバネ等の付勢手段により常には押圧片48が上方へ変位した姿勢に保持される。
【0019】
物品収納本体22は、ポリプロピレン等の合成樹脂を材質とする一体成形部材であり、内部に所要容積の物品収納空間28(図3参照)を画成した箱状に形成されている。物品収納本体22には、上方へ開口する出入口26が開設されており、該出入口26を介して物品収納空間28へ各種物品を出し入れし得るようになっている(図3参照)。また、物品収納本体22を構成する左右の側壁30には、下端部近傍に水平方向外側へ突出する枢支軸32が形成されており(図2に左側の側壁30に形成された枢支軸32のみ図示)、インストルメントパネル10の設置部14を画成する内壁部15に形成した軸孔(図示せず)に各枢支軸32を挿通することで、物品収納本体22(グローブボックス20)がインストルメントパネル10に対して開閉可能に枢支される。更に、物品収納本体22の側壁30における枢支軸32より上方位置には、水平方向外側へ突出するガイド軸34が形成され、設置部14の内壁部15に形成したガイド溝17に各ガイド軸34が挿通される(図2、図3参照)。ここで、ガイド溝17は、グローブボックス20の開閉に伴うガイド軸34の移動軌跡に沿った円弧状に形成されており、該ガイド溝17とガイド軸34とによりグローブボックス20の開閉範囲を規定するよう構成されている。
【0020】
ここで、物品収納本体22および前面パネル24は、該物品収納本体22を構成する前面壁(図示せず)と前面パネル24とを離間させた状態で、物品収納本体22の外周縁部と前面パネル24の外周縁部とを振動溶着により接合される。すなわち、実施例のグローブボックス20には、物品収納本体22と前面パネル24との間に空間部40(図5等参照)が内部画成されて、該空間部40内にロック手段42が配設されている。また、物品収納本体22を構成する左右の側壁30には、空間部40に連通する挿通孔36が形成されており、該挿通孔36に対してロック手段42の後述するスライドロッド(第2の係合部)56が挿通される。
【0021】
図4に示すように、物品収納本体22に形成される各挿通孔36は、略正方形状を呈するよう開設されて、挿通孔36を画成する物品収納本体22の開口縁部には、各辺の略中央位置に弾性片38が形成されている。ここで、挿通孔36の開口縁部における対向する辺に形成された弾性片38,38の離間距離は、スライドロッド56の幅寸法以下に設定されて、挿通孔36の中心から偏倚した位置や、挿通孔36に対して斜めに挿通されたスライドロッド56の側面に対して弾性片38が弾性的に接触するよう構成されている(図6参照)。また、図5に示すように、各弾性片38の突出端部は、物品収納本体22の外方へ向けて指向すると共に、該突出端部が物品収納本体22の対応する側壁30より内側に位置するよう形成される。
【0022】
次に、ロック手段42の構成につき説明する。図7に示すように、ロック手段42は、開閉操作レバー44の操作により連動する左右一対のロック機構50と、両ロック機構50に架渡されるバネ部材52とから構成されている。実施例に係る左右のロック機構50では、基本的に左右対称に構成されており、以下の説明においては一方(左側)のロック機構50について説明し、他方(右側)のロック機構50に関しては同一の符号を付して詳細な説明は省略する。なお、左側に位置するロック機構50のスライドロッド56は、右側に位置するロック機構50のスライドロッド56より長尺に形成される。
【0023】
ロック機構50は、図7に示すように、前面パネル24の裏側に回動可能に枢支されて開閉操作レバー44に連繋接続する作動部材54と、該作動部材54に対して回動可能に枢支されて挿通孔36に挿通されるスライドロッド(係合部)56とから構成されている。この作動部材54は、上下方向に延在する連結アーム58と、該連結アーム58における上下方向の中心から他方のロック機構50側へ延出する作動アーム60とから略T字状に形成されて、該連結アーム58および作動アーム60の連設部位に形成された軸部62を介して前面パネル24に枢支されている。また、連結アーム58の上端部には、スライドロッド56の端部が枢支されると共に、左右のロック機構50における作動部材54の連結アーム58の下端部にバネ部材52が架渡されている。そして、作動アーム60の上縁部には、開閉操作レバー44の押圧片48が接触するよう構成される。
【0024】
すなわち、左右のロック機構50における作動部材54は、バネ部材52の付勢力により常には左右の連結アーム58の上端部が相互に離間する方向に付勢されて、各対応のスライドロッド56が挿通孔36から突出する係合位置に保持される。この係合位置では、設置部14の内壁部15に形成された係合孔(第1の係合部)16に対してスライドロッド56の先端部が挿脱可能に挿入されて係合し、グローブボックス20を閉成位置で保持し得るようになっている(図5参照)。そして、開閉操作レバー44の操作により押圧片48が下方に変位して作動アーム60を押下げることで、バネ部材52の付勢力に抗して各作動部材54における連結アーム58の上端部が相互に近接する方向に回動し、各スライドロッド56が係合解除位置に変位するよう構成されている。この係合解除位置では、スライドロッド56が対応の挿通孔36に挿通された状態で、対応の係合孔16から抜き出されて係合解除されるようになっている。
【0025】
また、スライドロッド56は、挿通孔36に挿通される部位の断面形状が略正方形状を呈するよう形成されている。すなわち、スライドロッド56を対応の挿通孔36に挿通した際に、スライドロッド56の各側面に、弾性片38が対応的に弾性接触するようになっている。また、挿通孔36から突出するスライドロッド56の先端部には、前端から後端に向けてスライドロッド56の内側へ傾斜するテーパ面56aが形成されている。従って、グローブボックス20を開放位置から閉成位置に回動した際に、各スライドロッド56のテーパ面56aが、設置部14における内壁部15の前端縁に接触することにより、該スライドロッド56が係合解除位置に自動的に変位され、スライドロッド56が係合孔16に臨んだ際には、バネ部材52の付勢力により係合位置に自動的に復帰するようになっている。
【0026】
〔実施例の作用〕
次に、前述のように構成されたグローブボックス20の作用につき説明する。
【0027】
実施例に係るグローブボックス20は、物品収納本体22と前面パネル24とを組付けるに先立って、前面パネル24の裏側にロック手段42を構成する左右一対の作動部材54が枢支され、各作動部材54の連結アーム58の上端部に枢支したスライドロッド56が、物品収納本体22の左右側壁30に形成した対応の挿通孔36に挿通される。更に、左右の作動部材54における連結アーム58の下端部にバネ部材52が架渡された状態で、物品収納本体22の外周縁部と前面パネル24の外周縁部とを振動溶着により接合することで、物品収納本体22と前面パネル24との間に画成される空間部40内にロック手段42が配設される。
【0028】
ここで、実施例の物品収納本体22では、スライドロッド56を挿通する挿通孔36の開口縁部に弾性片38が形成されている。従って、図6に示すように、挿通孔36の中心からズレた位置にスライドロッド56が挿入されたり、挿通孔に対してスライドロッド56が斜めに挿入された場合には、スライドロッド56の側面に弾性的に接触する弾性片38によりスライドロッド56が挿通孔36の中心(適正位置)へ強制的に変位される。すなわち、弾性片38の弾性力により、対応する挿通孔36の中心を通る適正位置に各スライドロッド56を矯正できる。
【0029】
更に、挿通孔36の開口縁部に沿った等間隔に弾性片38を4箇所形成し、該挿通孔36に挿通したスライドロッド56の各側面に弾性片38が接触するよう構成したことで、挿通孔36の中心に対してスライドロッド56が何れの方向にズレた状態で挿入されたとしても、該スライドロッド56に対して適正位置に矯正する力を作用させ得る。すなわち、スライドロッド56の位置ズレを広範囲に亘って矯正し得る。また、4箇所の弾性片38がスライドロッド56の側面に接触することで、スライドロッド56を支持するから、走行時等の振動によりスライドロッドが挿通孔36の開口縁部に接触することはなく、異音発生を防止できる。
【0030】
実施例のグローブボックス20では、インストルメントパネル10の設置部14に枢支される物品収納本体22側に挿通孔36を形成してある。このため、物品収納本体22と前面パネル24との振動溶着により、物品収納本体22と前面パネル24とが位置ズレした場合であっても、挿通孔36および係合孔16の位置関係は変化しない。すなわち、左右のスライドロッド56を対応する挿通孔36の適正位置(挿通孔36の中心)に挿通することで、グローブボックス20の左右に位置する各スライドロッド56を、対応する係合孔16に対して同じタイミングで係脱することができ、グローブボックス20の開閉や車両走行時の振動等により異音が発生するのを防止できる。このように、実施例のグローブボックス20では、挿通孔36の開口縁部に形成した弾性片38の弾性力により対応するスライドロッド56を矯正することで異音発生が防止できるから、挿通孔36にキャップ等の別部材を取り付けたり、挿通孔36とスライドロッド56との位置関係を矯正する後加工等が必要なく、低コストで異音防止を図り得る。
【0031】
また、スライドロッド56の矯正する位置から挿通孔36が離間していると、スライドロッド56を一旦矯正したとしても係合孔16に至るまでに位置ズレすることも考えられる。そこで、実施例では、物品収納本体22において係合孔16に最も近接する挿通孔36の開口縁部に弾性片38を形成してスライドロッド56を適正位置に矯正するよう構成してある。すなわち、弾性片38の弾性力により一旦適正位置に矯正したスライドロッド56が対応する係合孔16に到達するまでに生ずる位置ズレを最小限に抑制でき、異音防止を効果的に図り得る。
【0032】
〔別の実施例〕
次に、本発明のグローブボックス20につき、別の実施例を挙げて説明する。但し、前述した、実施例と同一の部材・構成には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。但し、以下の説明においては、前述したグローブボックス20(物品収納本体22)に形成される弾性片を第1の弾性片38と指称する。
【0033】
図8または図9に示すように、別の実施例に係るインストルメントパネル10では、設置部14の内壁部15に係合孔16が略正方形状を呈するよう開設されると共に、該内壁部15における係合孔16の開口縁部には、4辺の略中央位置に第2の弾性片70が形成されている。ここで、係合孔16の開口縁部において対向する辺に形成された第2の弾性片70の離間距離は、スライドロッド56の幅寸法以下に設定されて、係合孔16の中心から偏倚した位置や、係合孔16に対して斜めに挿通されたスライドロッド56の側面に対して第2の弾性片70が弾性的に接触するよう構成されている。また、各第2の弾性片70の突出端部は、係合孔16の奥側(グローブボックス20から離間する側)へ指向するよう形成され、該係合孔16に対してスライドロッド56が容易に係合し得るようになっている。
【0034】
ここで、インストルメントパネル10(設置部14)やグローブボックス20(物品収納本体22)等の製造過程で誤差や、グローブボックス20を回動可能に支持する枢支軸32と軸孔との寸法等に起因して、グローブボックス20の挿通孔36と、設置部14の係合孔16との位置がズレる場合がある。グローブボックス20の挿通孔36と、インストルメントパネル10の係合孔16とが位置ズレした場合には、第1の弾性片38の弾性力により挿通孔36に対してスライドロッド56を適正位置に矯正したとしても、該挿通孔36から突出したスライドロッド56と、対応する係合孔16との位置関係にズレが生ずる。例えば左側のスライドロッド56に対する左側の係合孔16の位置関係と、右側のスライドロッド56に対する右側の係合孔16の位置関係とが異なると、一方のスライドロッド56のみが対応の係合孔16に係合し、他方のスライドロッド56と係合孔16との間に隙間が生ずることにも繋がり、グローブボックス20の開閉や車両走行時の振動等により異音が発生する原因ともなる。
【0035】
そこで別実施例では、インストルメントパネル10(設置部14)における係合孔16の開口縁部に第2の弾性片70を形成し、グローブボックス20を閉成した際に、係合孔16の中心からズレた位置にスライドロッド56が挿入された場合には、スライドロッド56の側面に第2の弾性片70が接触してスライドロッド56が弾性挟持される。このように、グローブボックス20の左右に設けられたスライドロッド56と、対応するインストルメントパネル10の係合孔16との間に生ずる隙間に第2の弾性片70を介在させて、スライドロッド56を弾性的に保持することで、左右のスライドロッド56を対応する係合孔16に対して同じタイミングで係脱できるから、グローブボックス20の開閉や車両走行時の振動等により異音が発生するのを防止できる。すなわち、物品収納本体22に形成された第1の弾性片38により挿通孔36とスライドロッド56とを適正位置に矯正し、更に第2の弾性片70によりスライドロッド56を弾性挟持することで、異音発生をより確実に防止でき、車両内装部材としてのグローブボックス20の質感や操作性を向上し得る利点がある。
【0036】
〔変更例〕
なお、本発明に係るグローブボックスおよびその開閉構造としては、前述した各実施例のものに限られるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、各実施例では、挿通孔を略正方形状を呈するよう開設したが、これに限られるものではなく、第2の係合部(スライドロッド)を挿通し得る形状であれば、三角形状や円形状、その他形状を呈するよう開設してもよい。同様に、挿通孔に挿通する第2の係合部(スライドロッド)に関しても断面正方形状に限られるものではなく、挿通孔の開口形状に対応する断面形状に形成すれば、第2の係合部(スライドロッド)を挿通孔に挿通した際に、第2の弾性片を第2の係合部の側面に弾性的に接触させ得る。また、第2の係合部を断面円形状に形成してもよい。
【0037】
実施例では、挿通孔の開口縁部に弾性片(第1の弾性片)を4箇所形成するようにしたが、これに限られるものではなく、該開口縁部の3箇所または5箇所以上に弾性片(第1の弾性片)を形成するようにしてもよい。また係合孔の開口縁部に第2の弾性片を形成する場合も同様に、該開口縁部の3箇所または5箇所以上に第2の弾性片を形成することができる。
【0038】
実施例では、内部に所要容積の物品収納空間を画成した箱状の物品収納本体と、板状の前面パネルとを振動溶着により接合して開閉部材を構成するタイプのグローブボックスを示したが、空間部を内部画成するよう2枚の板状部材を振動溶着により接合した蓋体を開閉部材とするタイプのグローブボックスに対しても、本発明を好適に実施可能である。
【0039】
実施例では、第2の係合部として棒状のスライドロッドを採用したが、挿通孔を介して開閉部材の外部に突出し、インストルメントパネルの係合孔に対して係脱可能に係合する係合位置と、係合解除された係合解除位置との間に変位し得るよう形成すれば、任意の形状・構成とすることができる。また第2の係合部を作動するロック機構の構成に関しても、実施例のものに限らず、係合解除手段の操作により第2の係合部を係合位置と係合解除位置に移動し得る構成であれば、従来公知の各種構成を採用し得る。
【0040】
また、インストルメントパネルに形成する係合孔の開口形状に関しても、実施例のものに限られるものではなく、第2の係合部(スライドロッド)を挿入して係合可能な任意形状に形成することができる。また、実施例では、インストルメントパネルに第1の係合部として係合孔を形成したが、インストルメントパネルの内壁部から突出する突部を形成する構成であってもよい。この場合には、例えば、前述したスライドロッド(第2の係合部)の先端部に、突部と係脱可能に係合可能な凹部を第2係合部として形成すれば、該突部と凹部との係合により開閉部材を閉成位置で保持し得る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例に係るグローブボックスを、車両用インストルメントパネルに配設した状態を示す斜視図である。
【図2】実施例に係るグローブボックスの配設位置で車両用インストルメントパネルを縦断した状態を示す側面図である。
【図3】実施例に係るグローブボックスを、インストルメントパネルのパネル基材を一部破断した状態で示す斜視図である。
【図4】実施例に係るグローブボックスの側面を示し、側壁に形成した挿通孔および弾性片を概略で示す要部拡大図である。
【図5】実施例に係るロック手段のスライドロッドが係合孔に係合した状態を概略で示す平面図である。
【図6】実施例に係るロック手段のスライドロッドが挿通孔の中心からズレた位置に挿入される状態を概略で示す平面図である。
【図7】実施例に係るロック手段を概略で示す正面図である。
【図8】別の実施例に係るロック手段のスライドロッドと係合孔との関係を概略で示す平面図である。
【図9】実施例に係るロック手段のスライドロッドが挿通孔の中心からズレた位置に挿入される状態を概略で示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 車両用インストルメントパネル,14a 開口部,16 係合孔(第1の係合部)
22 物品収納本体(開閉部材),24 前面パネル(開閉部材),30 側壁
36 挿通孔,38 弾性片,42 ロック手段,40 空間部
44 開閉操作レバー(ロック解除手段),56 スライドロッド(第2の係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルに開設した開口部を閉成する閉成位置および該開口部を開放する開放位置に変位可能な開閉部材と、前記開閉部材に配設され、前記インストルメントパネルに形成した第1の係合部との係合により開閉部材を前記閉成位置で保持するロック手段と、前記ロック手段と第1の係合部との係合を解除して前記開閉部材の開放位置への変位を許容するロック解除手段とを備えたグローブボックスにおいて、
前記ロック手段は、
前記開閉部材に配設され、該開閉部材の側壁に開設した挿通孔に挿通されて側方に突出し、前記第1の係合部に対して係脱可能に係合する第2の係合部と、
前記開閉部材における前記挿通孔の開口縁部に形成され、該挿通孔に挿通された前記第2の係合部の側面に弾性的に接触する弾性片とを備える
ことを特徴とするグローブボックス。
【請求項2】
前記弾性片は、前記挿通孔の開口縁部に沿って等間隔に3箇所以上形成される請求項1記載のグローブボックス。
【請求項3】
前記請求項1または2記載のグローブボックスの開閉構造であって、
前記開閉部材の左右側壁に前記挿通孔が夫々開設されて、各挿通孔に対応して前記第2の係合部が設けられると共に、
前記車両用インストルメントパネルに形成される前記第1の係合部は、前記第2の係合部に対応するよう形成されて該第2の係合部を挿脱可能に挿入可能な係合孔であり、該車両用インストルメントパネルにおける各係合孔の開口縁部に、対応する第2の係合部の側面に弾性的に接触する第2の弾性片を形成した
ことを特徴とするグローブボックスの開閉構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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