説明

ケイ化物がコーティングされた金属表面を有する反応器

1実施形態で、部分であって、この部分の少なくとも一部が、ベース層であって、このベース層がケイ化物形成性金属元素を含有する第1の組成を有している、前記ベース層;及びケイ化物コーティング層であって、このケイ化物コーティング層が600℃以上の第1の温度及び十分に低い圧力で、十分な量の前記ケイ化物形成性金属元素を有している前記ベース層を十分な量のシリコン元素を有している十分な量のシリコン源ガスに曝す工程であって、このシリコン源ガスが1000℃以下の第2の温度で分解して十分な量のシリコン元素を生成することができる、前記曝す工程;前記十分な量のケイ化物形成性金属元素とこの十分な量のシリコン元素を反応させて、ケイ化物コーティング層を形成させる工程;によって形成されたものである、前記ケイ化物コーティング層;を包含している部分を包含する反応器が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ化物がコーティングされた金属表面を有する反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ケイ化物保護コーティングを形成し得る、ある種の表面の形成及びその使用に関するものであって、そのような保護コーティングを有しない表面が、ややもすると、その用途に伴う条件、環境、及び/又は反応に対しては弱いものであり得るそのような用途にこのコートされた表面が用いられることを可能にするものである。
【0003】
例えば、ある種の化学反応は、200℃以上の温度、大気圧よりかなり上の圧力、及び各種の腐食作用物質が存在し得る環境で起こる。そのような環境は、化学反応が起こっている格納容器構造物の表面を効率よく浸食し得るものである。例えば、そのような環境は、そのような格納容器構造物の寿命を著しく短くし得るものである。加えて、これらの環境は、化学反応自体の条件及び効率にも負に影響し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さらに、本発明は、ケイ化物コーティングを形成し得る材料からできている反応器の少なくとも一部を有しているマルチ部分型(multi-sectional)反応器に関する。さらに、本発明は、異なる組成を有する各材料からできている反応器の少なくとも2つの部分を有しているマルチ部分型反応器に関する。さらに、本発明は、内部不活性フィラー及び/又は構造物を包含しているマルチ部分型反応器に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態では、本発明に従って作られた、反応器は、以下:第1の部分であって、この第1の部分の少なくとも一部がi)少なくとも1つのベース層であって、この少なくとも1つのベース層が少なくとも1種のケイ化物形成性金属元素を含有する第1の組成を有している、前記少なくとも1つのベース層;及びii)少なくとも1つのケイ化物コーティング層であって、この少なくとも1つのケイ化物コーティング層が1)600℃以上の第1の温度及び十分に低い圧力で、十分な量の前記少なくとも1種のケイ化物形成性金属元素を有している前記少なくとも1つのベース層を十分な量のシリコン(ケイ素)元素を有している十分な量の少なくとも1種のシリコン源ガスに曝す工程であって、この少なくとも1種のシリコン源ガスが1000℃以下の第2の温度で分解して十分な量のシリコン元素を生成することができる、前記曝す工程;2)十分な量の前記少なくとも1種のケイ化物形成性金属元素と十分な量のシリコン元素を反応させる工程;及び3)少なくとも1つのケイ化物コーティング層を形成させる工程;によって形成されたものである、前記少なくとも1つのケイ化物コーティング層;を包含する、前記第1の部分;を包含している。
【0006】
1つの実施形態では、この反応器は、さらに、第2の部分であって、この第2の部分が第2の組成で構成されていて、第1の組成及び第2の組成が異なったものである、前記第2の部分;及び不活性材料であって、この不活性材料が反応器の第2の部分を占めている、前記不活性材料;を包含している。
【0007】
1つの実施形態では、第2の部分は、さらに、i)第1の端部及び第2の端部を有している頂部であって、この頂部の第2の端部が第1のリップを有しており、第1の端部が反応器の第1の部分の一部に取り付けられている、前記第1の端部及び第2の端部を有している頂部;ii)第1の端部及び第2の端部を有している底部であって、この底部の第2の端部が反応器の底部を形成しており、この底部の第1の端部が第2のリップを有している、前記第1の端部及び第2の端部を有している底部;を包含していて;第1のリップ及び第2のリップが、互いに確実に結合するように十分に設計されている。
【0008】
1実施形態では、この反応器は、さらに、ライナーであって、このライナーが不活性材料から第1の部分に延びている、前記ライナーを包含している。
【0009】
1実施形態では、不活性材料と反応器の間にはガスの導入を可能にするための空間が存在している。1実施形態では、ライナーと反応器の間にはガスの導入を可能にするための空間が存在している。1実施形態では、このガスは、水素である。
【0010】
1実施形態では、不活性材料は、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化ケイ素、及び酸化アルミニウムからなる群から選択される。
【0011】
1実施形態では、前記少なくとも1つのベース層の少なくとも1つの第1の部分は前記少なくとも1つのケイ化物コーティングの少なくとも1つの第1の部分を形成するように十分に設計されており、前記少なくとも1つのベース層の少なくとも1つの第2の部分は前記少なくとも1つのケイ化物コーティングの少なくとも1つの第2の部分を形成するように十分に設計されている。
【0012】
1実施形態では、前記少なくとも1つのケイ化物コーティングは、300℃以上の温度での相当量の化学腐食に耐えられるように十分に設計されている。
【0013】
1実施形態では、前記少なくとも1つのベース層は、セラミック材料を含んでいる。
【0014】
1実施形態では、前記少なくとも1つのベース層は、ガラスセラミック材料を含んでいる。
【0015】
1実施形態では、前記少なくとも1つのベース層は、アルミニウム(Al)、炭素(C)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、銅(Cu)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、ケイ素(Si)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、チタン(Ti)、及びタングステン(W)からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含んでいる。
【0016】
1実施形態では、前記少なくとも1つのケイ化物コーティングの組成は、前記少なくとも1つのベース層が前記少なくとも1種のシリコン源ガスに曝される温度に依存する。
【0017】
1実施形態では、前記少なくとも1種のシリコン源ガスは、各HSiCl(式中、x、y、及びzは、0〜6である)のうちの少なくとも1つを包含している。
【0018】
1実施形態では、本発明に従って作られる、反応器は、a)第1の部分であって、この第1の部分の少なくとも一部が以下:i)少なくとも1つのベース層であって、この少なくとも1つのベース層が少なくとも1種のケイ化物形成性金属元素を含有している、前記少なくとも1つのベース層;ii)少なくとも1つのケイ化物コーティング層であって、この少なくとも1つのケイ化物コーティング層が1)600℃以上の第1の温度及び十分に低い圧力で、十分な量の前記少なくとも1種のケイ化物形成性金属元素を有している前記少なくとも1つのベース層を十分な量のシリコン元素を有している十分な量の少なくとも1種のシリコン源ガスに曝す第1の工程であって、この少なくとも1種のシリコン源ガスが1000℃以下の第2の温度で分解して十分な量のシリコン元素を生成することができる、前記曝す第1の工程;十分な量の前記少なくとも1種のケイ化物形成性金属元素と十分な量のシリコン元素を反応させる工程;及び前記少なくとも1つのケイ化物コーティング層を形成させる工程;によって形成されたものである、前記少なくとも1つのケイ化物コーティング層;及びiii)少なくとも1つのブロッキング層;を含んでいる、前記第1の部分;を含んでいる。
【0019】
1実施形態では、前記少なくとも1つのブロッキング層は、i)前記少なくとも1つのケイ化物コーティング層を十分な量の少なくとも1つの富酸素ガスに曝し、ii)十分な量の酸素と十分な量のそのケイ化物コーティング層中の少なくとも1種の金属元素を反応させ、及びiii)前記少なくとも1つのブロッキング層を形成させる、第2の工程によって形成されたものである。
【0020】
1実施形態では、前記少なくとも1つのブロッキング層は、Al、SiO、Si、及びSiCからなる群から選択される材料を含んでいる。
【0021】
本発明を添付の図面を言及しながらさらに説明するが、その数個ある図面全体を通して、同じような構造物は、同じような数字で言及される。これらの図面は必ずしも縮尺どおりに示されていないが、それよりむしろ、力点は、全体的には、本発明の原理を説明することに置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明で用いられ、また説明もされているポリシリコンプラントの例を模式的に説明している図である。
【図2】本発明の実施形態を示している図である。
【図3】本発明の実施形態を形成するのに利用されるスキーマを示している図である。
【図4】本発明の実施形態を示している図である。
【図5】本発明の実施形態を示している図である。
【図6】さまざまに変わる実験条件下で試験されるアロイサンプルの相対的な腐食を評価するための実施例1に説明されている試験装置の実施形態を示している図である。
【図7】さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。
【図8】さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。
【図9】酸素の存在下及び/又は不存在下に、さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。
【図10A】酸素の存在下及び/又は不存在下に、さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。
【図10B】酸素の存在下及び/又は不存在下に、さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。
【図11A】(洗浄前)酸素の存在下及び/又は不存在下に、さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。特には、図7の、600℃の反応器温度でTCSに曝し、その後850℃の反応器温度で14.5時間STCに曝した後のアロイの物理的外観を示している図である。
【図11B】(洗浄前)酸素の存在下及び/又は不存在下に、さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。特には、図7の、600℃の反応器温度でTCSに曝し、その後850℃の反応器温度で14.5時間STCに曝した後のアロイの物理的外観を示している図である。
【図11C】(洗浄前)酸素の存在下及び/又は不存在下に、さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。特には、図7の、600℃の反応器温度でTCSに曝し、その後850℃の反応器温度で14.5時間STCに曝した後のアロイの物理的外観を示している図である。
【図11D】(洗浄前)酸素の存在下及び/又は不存在下に、さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。特には、図7の、600℃の反応器温度でTCSに曝し、その後850℃の反応器温度で14.5時間STCに曝した後のアロイの物理的外観を示している図である。
【図11E】(洗浄前)酸素の存在下及び/又は不存在下に、さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。特には、図7の、600℃の反応器温度でTCSに曝し、その後850℃の反応器温度で14.5時間STCに曝した後のアロイの物理的外観を示している図である。
【図11F】(洗浄前)酸素の存在下及び/又は不存在下に、さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。特には、図7の、600℃の反応器温度でTCSに曝し、その後850℃の反応器温度で14.5時間STCに曝した後のアロイの物理的外観を示している図である。
【図12A】(洗浄後)酸素の存在下及び/又は不存在下に、さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。特には、図7の、600℃の反応器温度でTCSに曝し、その後850℃の反応器温度で14.5時間STCに曝した後のアロイの物理的外観を示している図である。
【図12B】(洗浄後)酸素の存在下及び/又は不存在下に、さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。特には、図7の、600℃の反応器温度でTCSに曝し、その後850℃の反応器温度で14.5時間STCに曝した後のアロイの物理的外観を示している図である。
【図12C】(洗浄後)酸素の存在下及び/又は不存在下に、さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。特には、図7の、600℃の反応器温度でTCSに曝し、その後850℃の反応器温度で14.5時間STCに曝した後のアロイの物理的外観を示している図である。
【図12D】(洗浄後)酸素の存在下及び/又は不存在下に、さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。特には、図7の、600℃の反応器温度でTCSに曝し、その後850℃の反応器温度で14.5時間STCに曝した後のアロイの物理的外観を示している図である。
【図12E】(洗浄後)酸素の存在下及び/又は不存在下に、さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。特には、図7の、600℃の反応器温度でTCSに曝し、その後850℃の反応器温度で14.5時間STCに曝した後のアロイの物理的外観を示している図である。
【図12F】(洗浄後)酸素の存在下及び/又は不存在下に、さまざまに変わる金属アロイ、STC、及びTCSガスを(シリコン源ガスとして)利用する耐腐食性プロトコルランの実施形態の結果を示している図である。特には、図7の、600℃の反応器温度でTCSに曝し、その後850℃の反応器温度で14.5時間STCに曝した後のアロイの物理的外観を示している図である。
【図13】反応器内でさまざまに変わる温度でTCS及び/又はSTCの存在及び不存在にさまざまなアロイを曝した後のそのアロイのSEM解析の実施形態をまとめたものである。
【図14】本発明の実施形態に従った表面の一片を示している。
【図15】本発明の実施形態に従って構成された反応器の一部を示している。
【図16】本発明の実施形態に従って構成された反応器の一部を示している。
【図17】本発明の実施形態に従って構成された反応器の一部を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
上記で明らかにされた図面は本発明で開示された実施形態を開示するものであるが、考察のところに注記されているように、他の実施形態も想到される。この開示は、代表的なものにより、説明のための実施形態を提供するものであるが、それらに限定されるものではない。当業者なら、開示された本発明の原理の範囲及び思想の内に入る多くの他の改変及び実施形態を考案し得る。
【0024】
(発明の詳細な説明)
本明細書でさらに考察される、ポリシリコンの製造プロセスへの本発明の適用の例は、単に説明の目的のために提供されるものであるので、本明細書で考察される同じ又は似たような原理及び/又は条件をベースにして本発明が容易に適用され得る、ポリシリコンの製造に関係していない他の適用に関しての限界を設けているものと取るべきでない。
【0025】
さらに、シリコン精製プロセスに適用される本発明のさまざまな実施形態に関連して提供される実施例のそれぞれは、説明に役立つものであることが意図されており、同時に、限定に役立つことが意図されているものではない。さらに、図は必ずしも縮尺どおりではなく、一部のものは特定の要素の詳細を示すために誇張されたものであり得る。加えて、測定値、仕様及び図に示されている同類のものはいずれも説明に役立つことが意図されているものであって、限定に役立つことが意図されているものではない。したがって、本明細書に開示されている具体的な構造及び機能の詳細は、限定しているものと取るべきでなく、単に本発明をさまざまに用いることを当業者に教示するための代表的な基本原理として取るべきである。
【0026】
きわめて純粋な多結晶シリコン(ポリシリコン)は、電子部品や太陽電池を製作するための出発原料である。ポリシリコンは、シリコン源ガスの熱分解つまりシリコン源ガスの(水素による)還元により得られる。
【0027】
粒状ポリシリコンを製造/濃縮/蒸留するためのプロセスに本発明を適用する例を説明する目的のために、以下の用語を定義する。
【0028】
「シラン」は、シリコン−水素結合を有する任意のガスを意味する。例としては、限定するものではないが、SiH;SiHCl;SiHClが挙げられる。
【0029】
「ケイ化物」は、より電気陽性元素と連結したシリコンを有している化合物を意味し;1実施例では、少なくともシリコン原子及び金属原子を含んでいる化合物であり;限定するものではないが、NiSi;NiSi;CrSi;FeSiが挙げられる。
【0030】
「シリコン源ガス」は、ポリシリコンを製造するためのプロセスで利用される任意のシリコン含有ガスを意味し;1つの実施形態では、電気的陽性材料及び/又は金属と反応してケイ化物を生成することができる任意のシリコン源ガスである。1実施形態では、適するシリコン源ガスとしては、限定するものではないが、少なくとも1つのHSiCl(式中、x、y、及びzは、0〜6である)が挙げられる。
【0031】
「STC」は、四塩化シリコン(SiCl)を意味する。
【0032】
「TCS」は、トリクロロシラン(SiHCl)を意味する。
【0033】
化学蒸着(CVD)は、高純度固体材料を製造するのに用いられる化学プロセスである。典型的なCVD法では、基材が1つ又はそれ以上の揮発性前駆体に曝され、これがその基材表面で反応及び/又は分解して所望の蒸着物を生成する。多くの場合、揮発性副生成物も生成されるが、これはその反応チャンバーの中を通るガス流れによって除去される。トリクロロシラン(SiHCl)を水素で還元するプロセスは、シーメンス法として知られるCVD法である。このシーメンス法の化学反応は、以下:
SiHCl(g)+H→Si(s)+3HCl(g)(「g」は気体を表し;「s」は固体を表す)
のとおりである。
【0034】
シーメンス法では、元素状シリコンの化学蒸着は、シリコンロッド(いわゆる細ロッド)に行われる。このロッドは電流により金属ベルジャー下で1000℃超に加熱され、そのあと水素及びシリコン源ガス(例えばトリクロロシラン(TCS))からなるガス混合物に曝される。細ロッドが一定の径に成長するや否や、プロセスは中断されなければならない、すなわち連続操作ではなくバッチ操作のみが可能である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態は、シリコン源ガスを熱分解する連続CVDプロセスの工程中にある流動床反応器で高純度多結晶シリコンを粒体として(本明細書以下では「シリコン粒体」と呼ぶ)得るのに利用される。流動床反応器は、多くの場合、ガス状又は蒸気状化合物に固体表面が広範囲に及んで曝されなければならない場合に利用される。粒体の流動床は、他のCVDプロセスの方法で可能であるよりもずっと大きいシリコン表面の面積をその反応ガスに曝す。ポリシリコン粒子を含んでいる流動床を一面に覆うのには、HSiCl、あるいはSiClのようなシリコン源ガスが利用される。この粒子は結果として、サイズが成長して粒状ポリシリコンを生成する。
【0036】
本明細書では本発明の実施形態の詳細が開示されるが、開示される実施形態は、さまざまな形態に具現化され得る本発明を単に説明するためのものであることは理解されるべきである。例えば、シリコン蒸着のプロセスに適用されるための本発明のさまざまな実施形態の開示は本発明の原理ならびにいくつかの具体的な適用の単なる説明として役立つものであるが、本発明は、ポリシリコンプロセスの少なくとも1つの特性に似ている特性(例えば、熱安定性、反応不活性、耐腐食性、他)の少なくともいくつかを呈し得る他の条件(例えばシーメンス法)、環境、及び/又は反応にも適用され得る。
【0037】
シリコン源ガスの熱分解の1実施形態を図1に示す。1実施形態で、冶金グレードシリコンがTCSを発生させるのに十分な比率のTCS、STC及びHと共に水素化反応器110にフィードされる。TCSはこのあと粉末除去工程130、脱ガス器工程140、及び蒸留工程150で精製される。精製されたTCSは分解反応器120にフィードされ、ここでTCSは分解して流動床反応器のビーズ(シリコン粒体)にシリコンを付着させる。生成したSTC及びHは水素化反応器110にリサイクルされる。
【0038】
本発明の1つの実施形態では、ある種の特異的な運転の条件下で、ある種の金属アロイ(例えば、限定するものではないが、ニッケル−クロム−モリブデンアロイ及びニッケル−クロム−コバルトアロイ)は、ある種のクロロシランガスの存在下で保護金属ケイ化物コーティングを形成する傾向がある。一部の実施形態では、この金属ケイ化物コーティングは、一旦形成されると、流動床反応器の通常運転の間中その完全状態を維持するだろう。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態はメリットを提供し得るものであって、これには、例えば、シリコン生成反応を比較的に高温で運転して効率的な反応速度を達成するという能力が包含され得る。本発明のいくつかの他の実施形態はメリットを提供し得るものであって、これには、例えば、シリコン付着反応を比較的に高温で運転して効率的な付着速度を達成するという能力のみならず反応をきわめて腐食性の条件下で(例えば、シリコン源ガスの一構成成分である、塩素の存在下で)行わせるという能力も包含され得る。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態は、さまざまな化学反応を200℃以上の適する温度で運転することを可能にさせ得る。本発明のいくつかの実施形態は、さまざまな化学反応を300℃以上の適する温度で運転することを可能にさせ得る。本発明のいくつかの実施形態は、さまざまな化学反応を400℃以上の適する温度で運転することを可能にさせ得る。本発明のいくつかの実施形態は、さまざまな化学反応を500℃以上の適する温度で運転することを可能にさせ得る。本発明のいくつかの実施形態は、さまざまな化学反応を600℃以上の適する温度で運転することを可能にさせ得る。本発明のいくつかの実施形態は、さまざまな化学反応を700℃以上の適する温度で運転することを可能にさせ得る。本発明のいくつかの実施形態は、さまざまな化学反応を800℃以上の適する温度で運転することを可能にさせ得る。本発明のいくつかの実施形態は、さまざまな化学反応を900℃以上の適する温度で運転することを可能にさせ得る。本発明のいくつかの実施形態は、さまざまな化学反応を1000℃以上の適する温度で運転することを可能にさせ得る。本発明のいくつかの実施形態は、さまざまな化学反応を1100℃以上の適する温度で運転することを可能にさせ得る。本発明のいくつかの実施形態は、さまざまな化学反応を1200℃以上の適する温度で運転することを可能にさせ得る。本発明のいくつかの実施形態は、さまざまな化学反応を200℃から1200〜2000℃までの温度で運転することを可能にさせ得る。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態は、本発明の表面を形成させるのにさまざまなタイプの材料を用い得る。例えば、いくつかの実施形態は、もっぱら金属をベースとした材料を包含し得る。金属とは元素の周期律表にそのように特定されている化学元素である。金属は周期律表の大半を占めているが、非金属元素は元素の周期律表の右側サイドのみに見出され得る。ホウ素(B)からポロニウム(Po)に引かれる対角線が金属と非金属を分ける。この線上にある多くの元素はメタロイドであり、場合により半導体と呼ばれる。これは、典型的には、これらの元素が導体と絶縁体の双方に共通の電気特性を呈するという事実から来ている。この分割線の左にある元素は金属と典型的に呼ばれ、この分割線の右にある元素は非金属と呼ばれる。大半の金属は大半の非金属よりも高い密度(物質の密度は単位体積あたりのその質量と定義される)を有している。金属をベースとする材料としては、限定するものではないが、元素からできている材料、化合物、及び/又はアロイが挙げられる。アロイとは、固溶体にあって少なくとも1つの主成分が金属である2つ又はそれ以上の元素の混合物である。
【0042】
例えば、いくつかの実施形態は、金属ベースの材料で含浸した、セラミック又はガラスセラミック材料、及び/又は、セラミック又はガラスセラミック材料と金属ベースの材料を組み合わせた層状体が包含され得る。セラミックスは、典型的には、無機化合物(通常、化学元素の酸化物)から構成されている。セラミックスは、窒化物、ホウ化物及び炭化物(例えば炭化ケイ素や炭化タングステン)のような、非酸化物無機材料を包含し得る。セラミック材料は典型的には化学的に不活性であって、多くの場合、酸性又は苛性環境で起こる化学腐食に耐えることができる。セラミックスは、一般的には、少なくとも1600℃までの範囲の高温に耐えることができる。ガラス−セラミック材料は、典型的には、非結晶質ガラス及びセラミックスの双方と、多くの特性を共有している。ガラス−セラミック材料はガラスとして通常生成され、そのあと適する熱処理によって部分的に結晶化される。例えば、白物陶磁器のミクロ構造は多くの場合非晶質相と結晶質相の双方を含有しており、結果としては、結晶質粒が、粒界の非結晶質粒間相内に包埋されている。
【0043】
白物陶磁器としてのそのようなガラスセラミックスは、例えば、液体に対してはきわめて低い透過性を有しているので、反応器に使われている。一部の実施形態では、リチウムとアルミノケイ酸塩の混合物は、熱機械特性を有するさまざまなガラス−セラミック材料をもたらし得る。ガラス−セラミック系の材料から作られたいくつかの実施形態は、熱衝撃に対して不浸透性である特性を呈し得る。ガラス−セラミックを組み込んだ一部の実施形態では結晶質セラミック相の負の熱膨張係数(TEC)は、ガラス相(例えばいくつかの例では約70%の結晶質セラミック相)の正のTECとバランスされ得、本発明のいくつかの実施形態で用いられ得る、そのようなガラス−セラミック材料は、改善された機械特性を呈し、800〜1500℃までの繰り返しの及び急速な温度変化に耐えられ得る。
【0044】
本発明の一部の実施形態では、発明表面は、同じタイプの材料又は異なるタイプの材料から作られたものであり得る、少なくとも2つの層からサンドイッチの形態に形成されたものであり得る。例えば、一部の実施形態では、発明表面は、金属材料のみの層から形成されたものであり得;あるいはセラミック/ガラス−セラミック材料と金属材料の任意の望ましい層配列での組み合わせであり得、これはなお最終発明表面の望ましい特性を達成するものと考えられ;あるいは金属含浸セラミック材料、又は金属含浸セラミック材料と金属ベースの材料の組み合わせであり得る。
【0045】
本発明の1つの実施形態では、いくつかのニッケル−クロム−コバルトアロイ(例えば、アロイ617やHR−160)は、必要とされる設計温度における圧力−反応器−コード−合格であって、同時に、最初に適切に前処理してケイ化物コーティングを形成させた場合、それ自体で、それ自体の構成−の−材料の要求事項を満たすことができ、その結果、ハロゲン及び/又はハロゲン誘導体さらには他のきわめて腐食性の物質の存在下で利用可能な実質的に耐腐食性の反応器を形成し得る。
【0046】
本発明の1つの実施形態では、そのような十分に不活性なコートされた金属アロイの使用は、圧力反応器のASMEコード要求事項を満たす金属で構成されている流動床反応器でのハロゲン化シリコン源ガスからのポリシリコンの製造を可能にするだろう。加えて、本発明の1つの実施形態では、本発明のこの不活性コーティングプロセス及び材料の使用は、塩素化されていないシラン以外の材料を主原料として利用した不活性コーティングの製造を可能にするだろう。本発明の1つの実施形態では、塩素化されていないシランは値段が高くまた使用するのが危険(例えば、自然発火性)であるので、本発明のアロイ及びプロセスの使用は、ASME(The American Society of Mechanical Engineers)コード要求事項を満たしていて一般化学品製造方法に適している、また、より安全なまたよりコスト効率がよい材料及び方法を用いて製造される不活性に−コートされた−金属反応器をもたらすだろう。
【0047】
1つの実施形態で、本発明は、反応器の保護(例えば十分に不活性な)コーティングを提供するものであって、ここでは(1)金属アロイからできているベース層を有している反応器にシリコン源ガスが導入されて、(2)適する温度に保持され、そして(3)そのシリコン源ガスの分解によりその金属アロイ反応器のベース層の露出している表面に保護コーティングが付着/生成される。1つの実施形態では、そのシリコン源ガスがTCSである場合、その保護ケイ化物コーティングの生成をもたらす分解は、一般的には、以下の化学式(Mはポリ−Siビーズを表す):
4HSiCl+(M)→Si(M)+3SiCl+2H
に従って起こる。
【0048】
1つの実施形態では、この分解性シリコン源ガスはSiCl中間体を生成する。
【0049】
もう1つの実施形態では、金属アロイ反応器のベース層をシリコンでコートしてその金属アロイ反応器の表面にケイ化物コーティングを形成させることは、その反応器に腐食性及び/又は求核性の物質(例えば、ハロゲン化合物)がそのあと導入されたときの金属塩化物の生成及び関連の腐食に対して実質的に不浸透性の反応器をもたらす。
【0050】
1つの実施形態では、本発明は反応器のベース層のin−situ保護(例えば十分に不活性な)コーティングの形成を提供するものであり、ここではシリコン源ガスと反応する元素がそのベース層からその形成されたin−situ保護層に十分なまで移動し、そのベース層の厚みを減少させる。
【0051】
1つの実施形態では、ケイ化物を生成することができる任意のアロイが利用される。もう1つの実施形態では、適切なアロイが金属被覆あり又はなしで利用され得る。
【0052】
もう1つの実施形態では、アロイは、カルシウム;クロム;コバルト;銅;鉄;ニッケル;チタン;マンガン;モリブデン;及び/又は白金からなる群から選択される。
【0053】
1つの実施形態では、シリコン源ガス(例えばTCS)は、十分に低い圧力でケイ化物形成性ベース層に供給される。1つの実施形態では、シリコン源ガス(例えばTCS)は、大気圧でケイ化物形成性ベース層に供給される。1つの実施形態では、シリコン源ガス(例えばTCS)は、ケイ化物形成性ベース層に、1〜10psiaの範囲の圧力で供給される。1つの実施形態では、シリコン源ガス(例えばTCS)は、ケイ化物形成性ベース層に、1〜5psiaの範囲の圧力で供給される。1つの実施形態では、シリコン源ガス(例えばTCS)は、ケイ化物形成性ベース層に、1〜20psiaの範囲の圧力で供給される。1つの実施形態では、シリコン源ガス(例えばTCS)は、ケイ化物形成性ベース層に、10〜25psiaの範囲の圧力で供給される。
【0054】
もう1つの実施形態では、利用されるアロイは、以下の各組成:
a)HAYNES HR−160アロイはASME Reactor Code case No. 2162 for Section VIII Division 1の構成により816℃までカバーされており、少なくとも、Ni37%(実際に使用された処方に応じて、バランスさせる)、Co29%、Cr28%、Mo1%(最大)、W1%(最大)、Fe2%(最大)、Si2.75%、及びC0.05%から成っている;
b)HAYNES230アロイは構成についてのASME Reactor Code case No. 2063-2により900℃までカバーされており、少なくとも、Ni57%(実際に使用された処方に応じて、バランスさせる)、Co5%(最大)、Cr22%、Mo2%、W14%(最大)、Fe3%(最大)、Si0.4%、Mn0.5%、及びC0.1%から成っている;
c)HAYNES617アロイは、少なくとも、Ni54%(実際に使用された処方に応じて、バランスさせる)、Co12.5%(最大)、Cr22%、Mo9%、Al1.2%、Fe1%、Ti0.3%、及びC0.07%から成っている;
のうちのいずれかを有している。
【0055】
もう1つの実施形態では、アロイは、十分な強度が維持されたままの少なくとも800℃用途にASME認可されたものである。
【0056】
一部の実施形態では、本発明は、約3%以下の鉄を有しているアロイを用いる。一部の実施形態では、本発明は、約2%以下の鉄を有しているアロイを用いる。一部の実施形態では、本発明は、約1%以下の鉄を有しているアロイを用いる。
【0057】
もう1つの実施形態では、利用される金属アロイは、クロロシラン反応の触媒として作用し得る。
【0058】
もう1つの実施形態では、アロイとシリコン源ガスの反応によって生成されるケイ化物の化学組成は、それ自体、温度−依存性であり得る。
【0059】
もう1つの実施形態では、アロイとシリコン源ガスの反応によって生成されるケイ化物の化学組成は、それ自体、以下にあるように、温度−依存性であり得る。
【0060】
「ケイ化ニッケル」を含有する保護コーティングを有している発明表面のいくつかの実施形態の形成は、以下:
a)約250℃で−形成なし;
b)約350℃で−NiSi、及び/又はNiSi
c)約450〜650℃で−NiSi(+他);及び
d)約900℃で−NiSi;
のとおり温度依存性であり得る。
【0061】
1つの実施形態では、TCSは、単独で又はSTCとの組み合わせで利用される。
【0062】
1つの実施形態では、シリコンTCSは、単独で又は組成物HSiCl(ジクロロシラン)のシリコンガスとの組み合わせで利用される。
【0063】
もう1つの実施形態では、TCSは、単独で又は金属アロイの表面に接触するとケイ化物の層を形成することができるシリコンガスとの組み合わせで利用される。
【0064】
一部の実施形態では、保護ケイ化物層を形成させるためにTCSが反応器に導入される(又は反応器が保持されている)適する温度としては、限定するものではないが、約600℃〜1200℃が挙げられる。
【0065】
1つの実施形態では、TCSは、約700℃の温度に保持された反応器に、反応器壁を構成している金属アロイと反応することによってその反応器壁にケイ化物コーティングを形成するのに十分な時間導入される。もう1つの実施形態では、TCSは、約850℃の温度に保持された反応器に、反応器壁を構成している金属アロイと反応することによってその反応器壁にケイ化物コーティングを形成するのに十分な時間導入される。
【0066】
もう1つの実施形態では、約600℃の温度に保持された反応器へのシリコンテトラクロリドの導入は、アロイ腐食もシリコン付着効果ももたらさないだろう。
【0067】
もう1つの実施形態では、約850℃の温度に保持された反応器へのシリコンテトラクロリドの導入は、かなりのアロイ腐食及び/又はシリコン付着効果をもたらすだろう。
【0068】
もう1つの実施形態では、反応器へのTCSの導入は、反応器の温度に応じて、反応器アロイ壁へのケイ化物層の形成;反応器アロイ壁の腐食;反応器アロイ及び/又はケイ化物層へのケイ化物層の付着;及び/又は効果がないこと;をもたらすだろう。
【0069】
もう1つの実施形態では、TCSとSTCのガス混合物は、TCSのみの組成の物理及び温度−依存性特性をとることになるだろう。
【0070】
もう1つの実施形態では、TCS、又は、TCS及びSTCは、約600〜850℃の温度に保持された反応器に導入される。
【0071】
もう1つの実施形態では、TCS、又は、TCS及びSTCは、約650〜800℃の温度に保持された反応器に導入される。
【0072】
もう1つの実施形態では、TCS、又は、TCS及びSTCは、約550〜982℃の温度に保持された反応器に導入される。
【0073】
もう1つの実施形態では、TCS、又は、TCS及びSTCは、約750〜1000℃の温度に保持された反応器に導入される。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ケイ化物−含有保護層の厚み及び/又は組成は、反応器表面がシリコン源ガスに曝される時間の長さに依存する。
【0075】
1つの実施形態では、TCSは、反応器壁を構成している金属アロイと反応することによってその反応器壁にケイ化物コーティングを形成するのに十分な時間反応器に導入される。
【0076】
もう1つの実施形態では、TCSは、反応器にシリコンテトラクロリドが導入される前に、反応器壁を構成している金属アロイと反応することによってその反応器壁にケイ化物コーティングを形成するのに十分な時間反応器に導入される。
【0077】
もう1つの実施形態では、TCSは、反応器にシリコンテトラクロリドが導入されるのと同時に、反応器壁を構成している金属アロイと反応することによってその反応器壁にケイ化物コーティングを形成するのに十分な時間反応器に導入される。
【0078】
もう1つの実施形態では、TCSは、反応器壁を構成している金属アロイと反応することによってその反応器壁にケイ化物コーティングを形成するのに十分な時間反応器に導入される。このあとTCSとSTCは同時に反応器に導入される。
【0079】
もう1つの実施形態では、反応器のアロイ壁へのシリコン/ケイ化物コーティング堆積は、表面漸減により及び/又は定期的熱及び/又は化学処理によりコントロールされ得る。
【0080】
もう1つの実施形態では、シリコン源ガスの導入の前に、反応器の壁のベース層は、ベース層の表面をシリコン源ガスでの曝露に備えるために富酸素ガス(例えば空気)に十分な温度で十分な時間曝される。一部の実施形態では、そのようなベース層の酸素プライミングは、反応器の運転の間中のベース層に対するその形成された保護ケイ化物層の親和性の増大をもたらし得る。一部の実施形態では、そのような酸素プライミングは、約900℃で約24時間行われる。
【0081】
1つの実施形態では、ケイ化物層が形成されるがここではそのケイ化物層はその下にあるアロイ及び/又は金属の腐食を実質的に阻止している。
【0082】
もう1つの実施形態では、ケイ化物層が形成されるがここではそのケイ化物層はその下にあるアロイ及び/又は金属から反応器の内部へのコンタミネーションの浸出を実質的に阻止している。
【0083】
もう1つの実施形態では、図2は、ベース層210の表面内及び/又は上に含有されているケイ化物−反応性元素(例えばNi)とシリコン源ガスを反応させて保護コーティング220を形成させると本発明に従って発明表面200が形成されることを示している(限定はしていない)。図2は、一部の実施形態では、保護コーティング220は、1つのケイ化物層及びそれぞれのケイ化物層(221〜224)より多くの層から成っているものであり得ることを示している。一部の実施形態では、それぞれのケイ化物層(221〜224)は、いくつかのケイ化物化合物(同じ又は異なるケイ化物−形成性元素)から成っているものであり得る。
【0084】
さらには、一部の実施形態では、ベース層210は、シリコン源ガスと反応して保護コーティング220を生成するであろう少なくとも1つの元素を含有しているベース層210の少なくとも一部を有している金属ベースの材料又はセラミック/ガラス−セラミック系の材料の単一層から成っているものであり得る。
【0085】
さらに、一部の実施形態では、ベース層210は、異なる各タイプの材料の各層のサンドイッチであるが、シリコン源ガスと反応して保護コーティング220を生成するであろう少なくとも1つの元素を含有する、シリコン源ガスに曝されるであろう、各層の少なくとも1つの少なくとも一部を有している各層のサンドイッチであり得る。
【0086】
一部の実施形態では、ベース層中のNi(すなわちケイ化物形成性元素)の量及び配位が、保護コーティング220内のケイ化物層の特性を画定している。
【0087】
一部の実施形態では、保護コーティング220が(in−situ)形成されるとともに、ベース層210の厚みは、ケイ化物形成性元素のそのベース層から保護コーティング220への移動により低下する。1つの例では、約半インチの原厚みを有していてケイ化物形成性元素を適する濃度で含有しているベース層210は、シリコン源ガスに曝されると、そのベース層210がシリコン源ガスに24〜48時間曝された後には約200〜400nmの保護層を生成する。
【0088】
いくつかの他の実施形態では、保護コーティング220は、約50ミクロンから少なくとも400ミクロン(10−6m)までさまざまに変わる厚みを有している。もう1つの実施形態では、発明表面の全体厚みは増大し、ベース層210の原厚みは本発明プロセスで低下する。
【0089】
一部の実施形態では、保護コーティング220の厚みは、ケイ化物形成性元素の適する濃度、及び、ベース層210がシリコン源ガスに曝されるのに適した時間に依存する。
【0090】
一部の実施形態では、ベース層210の原厚みがケイ化物の生成により、その反応器がもはやその意図された目的に適していないとみなされる厚みまで低下した後、その反応器は退役させられる。1実施形態では、半インチベース層が約16分の1インチより多く低下すると反応器は退役させられる。
【0091】
もう1つの実施形態では、ケイ化物層の相対厚み、安定性、及び/又は原子組成は、走査型電子顕微鏡(SEM)、及び/又は、EDAX(エネルギー分散型X線分析)等の、他の適切な分析方法を利用して評価可能である。
【0092】
もう1つの実施形態では、図3及び図4に示すように、本発明の表面の保護コーティングは、少なくとも1つのブロッキング層330、430(限定するものではないが、Al;SiO;SiN;及び/又はSiCが挙げられる)も包含し得る。いくつかの他の実施形態では、本発明の表面の保護コーティングは、また、少なくとも1つのブロッキング層330、430及びシリコン層340、440を包含し得る。この少なくとも1つのブロッキング層330、430は、ケイ化物層420及び/又はベース層310、410が富酸素ガス(例えば空気)に十分な温度で十分な時間曝されると形成される。
【0093】
一部の実施形態では、ブロッキング層は、任意の適する機械的、化学的、又は電気的手段(例えば、CVD(例えばアルミメッキ)、めっき、他)により付着又はコートされる。
【0094】
一部の実施形態では、本発明の発明表面は、ケイ化物層420とシリコン層440との間に配置される異なる組成及び/又は化学/機械特性の代替ブロッキング層を包含している。
【0095】
一部の実施形態では、生成したブロッキング層430はケイ化物層420を養生/密封するものであり、その結果、ベース層410に対する保護コーティングの全体親和性が増大される。一部の実施形態では、ブロッキング層430の存在は、保護コーティングのフレーキング(剥離)及びフレーキングによる反応器中で起こっている化学反応のコンタミネーションを阻止し得る。一部の実施形態では、ブロッキング層430は、反応器の冷却期間の間中の保護コーティングがフレーキングするの(フレーキング)を阻止している。一部の実施形態では、ケイ化物層320は、反応器が設計されている主反応が完了した後反応器が冷却される前にのみ富酸素ガス(例えば空気)に曝される。
【0096】
一部の実施形態では、本発明に従って作られた反応器が保全又は他の目的のために冷却されると、再度作動させる前に、保護ケイ化物コーティングを有している反応器の内部表面は、ブロッキング層を作り出すために富酸素ガス(例えば空気)に適する温度で十分な時間曝される。一部の実施形態では、ブロッキング層を有しているということは、ケイ化物コーティングに対する「フレーキング」作用なしにより高い温度で反応器が機能することを可能にする、つまり、保護コーティングの耐腐食品質が保持される。一部の実施形態では、本発明の表面は、それが曝される温度(例えば、室温〜約1200℃、100℃〜約900℃、他)の連続したかなりの変動に、その望ましい耐腐食及び他の特性を有意に喪失することなく耐えられるように設計される。
【0097】
一部の実施形態では、図3及び図4に示すように、シリコン層340、440は、反応器(図1)の実際の運転の間中にシリコンがそのシリコン生成反応(例えば還元反応又は熱分解反応)によって発生されると生成/付着されるものであって、保護ケイ化物層の生成の間中に副生成物として生成され、及び/又は、なんらかの他の適する手段によって反応器中で作出される/反応器に送達されるものである。一部の実施形態では、シリコン層340、440は、例えば、図1に示されている反応のような分解反応の間中に発生するシリコンで形成される。
【0098】
図4の言及では、反応器の内部表面の部分550を示している。本発明の一部の実施形態では、図5で示すように、以下の各条件:
1)ベース層中のケイ化物形成性元素の組成及び配位;
2)シリコン源ガスにベース層が曝される温度;
3)曝される時間長さ;
4)供給されるシリコン源ガスの速度;及び
5)ブロッキング層の存在;
のうちの少なくとも1つの操作は、同じ及び/又は異なる特性(タイプA〜E)を有している保護コーティングの部分(520〜524)を有するであろう発明表面550を生成し得る。
【0099】
例えば、一部の実施形態では、上記で言及した各条件のうちの少なくとも1つの操作は、反応器の反応区域により多くの保護コーティングがあること、及び、より厳しくない環境(例えば、より低い温度、より少ない腐食試薬、他)に曝される他の区域にはより少ない保護コーティングがあることをもたらし得る。
【0100】
一部の実施形態では、TCS等の、シリコン源ガスは、Siを効率的に付着させてその保護層を形成させるのに十分な速度で供給される。一部の実施形態では、シリコン源ガスは、0.1〜150lb/hrの速度で供給される。一部の実施形態では、シリコン源ガスは、10〜100lb/hrの速度で供給される。一部の実施形態では、シリコン源ガスは、0.1〜20lb/hrの速度で供給される。一部の実施形態では、シリコン源ガスは、1〜50lb/hrの速度で供給される。一部の実施形態では、シリコン源ガスは、5〜75lb/hrの速度で供給される。
【実施例】
【0101】
以下の考察は、本発明のいくつかの例としての実施形態に関するものである。
【0102】
(実施例1:ハロゲン化シリコン源ガスに曝されたアロイの相対腐食を評価するためのプロトコル)
腐食に耐えることについてのアロイ/不活性層組み合わせの相対的な有効性を測定するのに利用した腐食試験の1つの例を以下に開示する。
【0103】
図6に図示されているような装置を利用する。1つの実施形態では、炉650は、3インチIDのThermcraftシングルゾーンモデルXST−3−0−36−1C(230ボルト6780ワット)である。管656は、端部栓651、657が付いた約5Lの体積を有する36インチ×3インチである。サンプルは石英ボート655に配置する。空のバブラー660の風袋重量を計算する又はその風袋重量をバブラー660上のタグに記入する。バブラー660を150〜200mlのシリコンテトラクロリドで満たす。バブラー660を、60mlシリンジ及び1/8インチテフロン(登録商標)チューブを用いて60mlのクロロシランを数回加えることにより満たす。
【0104】
バブラー660が満たされたら、クロロシランの重量をチェックする。少なくとも50グラムのクロロシラン(TCS又はSTC)があるべきである。
【0105】
バブラー660を秤量して、加えられた又はランの開始時にバブラー中にあったシリコンテトラクロリドの量を測定する。頂部端部668がアルゴンシリンダー666に行きエグジット端部669が3方バルブ659を通る管に行くようにバブラー660を元通りに接続する。
【0106】
トラップ652、653を900mlの25%水酸化ナトリウム(450gmの50%NaOHを450gmの水と混合)で満たす。管654の出口をスクラバー652、653中の液面より下にする。スクラバー652のエグゾースト670がフードエグゾーストまで出て行っていることを確認する。
【0107】
3〜5金属切り取り試験片の初期質量とその密度を記録する。管型炉650の中心部にあるボート655にそれらを置く。管656の両端部651、657をバイトンOリング及びクランプで密封する。
【0108】
アルゴンの流れを200ml/分で開始し、炉650を150℃まで加熱する。この条件下で1時間運転して管から酸素及び水を除去する。
【0109】
装置が密封されているかまたスクラバー652、653からバブルが出て来ているかをチェックして確認する。スクラバー653、652への出口ライン672が塞がっていないことを定期的にチェックする。塞がっている場合は、塞ぎを切除し、スクラバー652、653が動作していることを確認する。
【0110】
アルゴンの流れを8ml/分に低下させ、1時間かけて徐々に850℃までオーブン650を加熱する。ガスレギュレーター663の出口における圧力が8psigを超えて行かないことを確認する。管への出口を塞ぐと、これが、管が上昇するであろう圧力(8psig)である。
【0111】
三方バルブ659を使ってバブラー660の栓を開けてクロロシランを送達する。出口バルブを最初に開け、そのあと入口バルブを開ける。バブルによって示されるように流れがスクラバー652、653から出て来ていることを確認する。クロロシランが流れ始めた時間を記入する。
【0112】
ランの間中、スクラバー652、653への出口ラインが塞がっていないこと及び1分あたり8mlの正しい流れがスクラバー652、653を通ってエグゾーストまで行っていることを定期的にチェックする。
【0113】
ランが終わったら、炉650のスイッチを切る。また、バブラー660の三方バルブ662を開いてアルゴンを送達する。入口側を最初に開き、そのあと出口端部を開く。アルゴン流れを1分あたり200mlに30分間上げて管656をパージしてクロロシランを除去する。スクラバー652、653が塞がっていないことを確認する。
【0114】
ガスの流れを1分あたり8mlに低下させ、炉650を一晩冷却させる。次の朝、炉が冷却したら、スクラバー652、653が塞がっていないことを確認する。必要なら塞ぎを切除する。アルゴン流れを閉める。
【0115】
管656の出口端部を開き、サンプルを有するボート655を抜き出す。
【0116】
サンプルを水の入ったカップの中に入れ、撹拌して不溶物質(塩化鉄又は塩化ニッケル)を除去する。5分間撹拌する。そのあと、もう1つのカップに、サンプルからもはや色や物質が出て来なくなるまで移す(緑は塩化ニッケルの色であり、青は塩化コバルト(II)の色である)。
【0117】
サンプルを乾燥させて直近ミリグラムまでサンプルを秤量する。重量変化及びパーセント重量変化を測定する。
【0118】
管の両端部にあるあらゆる残留物をきれいに掃除する。管の端部上に集まる赤又は黄物質は酸化シリコン(II)であり、これは空気に曝されると素早く二酸化シリコン(IV)に酸化される。ランがスタートする前に管656が正しくパージされて酸素を含まない場合は、ほんの少しの酸化シリコン残留物しかないはずである。
【0119】
装置は、これで、先の工程1へ行くことによってもう1つのランをスタートさせる準備ができていることになる。
【0120】
もう1つの実施形態では、バブラー660中のSTCの蒸気圧は0.27気圧(atm)である。もう1つの実施形態では、バブラー660中のSTCの蒸気圧は0.66気圧(atm)である。もう1つの実施形態では、この試験装置は、さらに、遮断バルブ664、673、及び質量流れコントローラー665を具備し得る。もう1つの実施形態では、この試験装置のいくつかの構成要素は、テフロン(登録商標)チューブ654、671、及び672によって接続されている。
【0121】
(実施例2:ある種のアロイ及びハロゲン化シリコン源ガスの相対腐食評価における利用)
図7及び8は耐腐食データを例証するものでありここではいくつかのアロイを850℃でクロロシランに曝した。
【0122】
図7及び8に図示されているいくつかの腐食試験ランから、ある種のアロイを、そのようなアロイと反応してケイ化物コーティングを生成することができるある種のシリコン源ガスでの処理との併用で用いることは、TCS/ポリシリコン付着反応器中で遭遇されるであろう条件(850℃の温度及びクロロシランの存在)に耐え得るであろう反応器の製作を容易なものにすることが明らかである。
【0123】
(実施例3:酸素が存在/不存在の実験条件下での、ある種のアロイ及びハロゲン化シリコン源ガスの相対腐食評価における利用)
図9及び10は、実施例1に説明されているもののような耐腐食プロトコルでのさまざまなアロイの使用を例証するものであって、アロイ材料のさまざまな配位変形体;そのようなアロイとケイ化物を生成することができるシリコン源ガス;及び酸素の存在有り及び無しの内部反応器条件;を利用している。図9に例証されているように、シリコンテトラクロリドに曝されたケイ化物形成無しの含酸素環境中のアロイは、腐食を例証した。シリコンテトラクロリドに曝された無酸素環境中のアロイは、腐食を例証した(が、より少ない程度に)。シリコンテトラクロリドの導入の前にTCSシリコン源ガスと反応してアロイの表面にケイ化物を生成したアロイは、腐食の低下及びそのケイ化物層へのシリコンの付着を例証した。
【0124】
図10A及び10Bへの言及では、図10Aは、TCSで前処理してなくて保護ケイ化物コーティングを形成させていないC276アロイからできているプレートを850℃でSTCに14時間曝した後のそのプレートの腐食を示している。それにひきかえ、図10Bは、C276アロイからできているプレートをTCSで前処理して保護ケイ化物コーティングを形成させてあるのでそのプレートを850℃でSTCに14時間曝した後もそのプレートには腐食はない(又は著しくより少ない程度である)ことを示している。
【0125】
(実施例4:酸素が存在/不存在の実験条件下での、ある種のアロイ及びハロゲン化シリコン源ガスの相対腐食評価における利用)
図11A〜F(洗浄前)及び図12A〜F(洗浄後)は、実施例1に説明されているもののような耐腐食プロトコルでのさまざまなアロイの使用を例証するものであって、アロイ材料の各種配位変形体;そのようなアロイとケイ化物を生成することができるシリコン源ガス;及び酸素の存在有り及び無しの内部反応器条件;を利用している。
【0126】
図11A及び12Aは、アロイH160からできているベース層を有する実施形態に対応している。
【0127】
図11B及び12Bは、アロイ188からできているベース層を有する実施形態に対応している。
【0128】
図11C及び12Cは、アロイ230からできているベース層を有する実施形態に対応している。
【0129】
図11D及び12Dは、アロイC276からできているベース層を有する実施形態に対応している。
【0130】
図11E及び12Eは、アロイC22からできているベース層を有する実施形態に対応している。
【0131】
図11F及び12Fは、アロイXからできているベース層を有する実施形態に対応している。
【0132】
図11A〜F及び図12A〜Fに例証されているように、シリコンテトラクロリドに曝されたある種のアロイは腐食を例証した。シリコンテトラクロリドの導入の前に850℃で14時間TCSシリコン源ガスと反応してアロイの表面にケイ化物を生成するアロイは、ケイ化物層へのシリコンの付着及び腐食の低下を例証した。
【0133】
図13は、各種の金属アロイ、STC、及びTCSガス(シリコン源ガスとしての)を利用している実施形態についての耐腐食プロトコルランの結果を図示している。
【0134】
以下は、本発明のいくつかの実施形態でベース層として用いられるある種のアロイの、反応器内でさまざまに変わる温度にあるTCS及び/又はSTCの存在下及び不存在下における挙動をまとめたものである。
【0135】
a)アロイC276、625、188、及びHR160は、シリコンテトラクロリドの存在下でケイ化物−コーティング(テクスチャコーティング)を形成することができた:
HSiCl+M→Si(コーティング)+SiCl+H+M(Siコート)
つまり、600℃での実施形態の腐食を防止するだろう(「M」はベース層の金属を表す)。
【0136】
b)アロイ230、C22、X、及び556は、シリコンテトラクロリドの存在でケイ化物−コーティングを形成することができなかった:
HSiCl+M→H+MCl+Si(コーティングはフレーキングする)
そして600℃での実施形態の腐食を防止しないだろう。
【0137】
c)アロイC276、230、617、625、及びHR160は、シリコンテトラクロリドの存在で少なくともいくぶんかのケイ化物−コーティング(斑のある鏡面コーティング)を形成することができた:
HSiCl+SiCl+M→Si+SiCl+H+M(Siコート)
つまり、850℃での実施形態の腐食を防止するだろう。
【0138】
d)アロイ800H、C22、188、及びHR120は、シリコンテトラクロリドの存在でケイ化物−コーティングを形成することができなかったし、850℃での実施形態の腐食も防止しないだろう。
【0139】
(実施例5:STC、TCSの混合物及び反応器の温度に依存する腐食対コーティング)
図13は、本発明の1つの実施形態であって、反応器内でさまざまに変わる温度にあるTCS及び/又はSTCの存在下及び不存在下におけるある種のアロイの挙動を図示している。図13に例証されているように、(a)反応器壁に使われているアロイが特定の組成のものである600℃の反応器中でのTCSの使用は、実質的に腐食を防止するアロイ反応器壁ケイ化物コーティングをもたらし得る。(b)反応器壁に使われているアロイが異なる組成のものである600℃の反応器中でのTCSの使用は、より低い程度に腐食を防止する/耐久性のあるケイ化物不活性層を作り出すアロイ反応器壁のケイ化物コーティングをもたらし得る。(c)反応器壁に使われているアロイが先のa)と同じ組成のものである850℃の反応器中でのTCSの使用は、より低い程度に腐食を防止する/耐久性のあるケイ化物不活性層を作り出すアロイ反応器壁のケイ化物コーティングをもたらし得る。(d)反応器壁に使われているアロイが先の(a)及び(c)のものとは異なる組成のものである850℃の反応器中でのTCSの使用は、より低い程度に腐食を防止する/耐久性のあるケイ化物不活性層を作り出すアロイ反応器壁のケイ化物コーティングをもたらし得る。
【0140】
図14への言及では、本発明のいくつかの実施形態のデータを表示している。図14は、反応器の操作の間中に及び/又は反応器が冷却された後に反応器から剥離した材料片を示すものである。図14の「フレーキング」材料片の凹面側(ベース層から離れた(反対の)(すなわち反応環境に直接曝された)、内側)の組成物の研究のEdax結果は、Siのみの存在(100重量%)を示した。
【0141】
それにひきかえ、図14の「フレーキング」材料片の凸面側(反応器のケイ化物層に取り付いた、外側)の組成物の研究のEdax結果は、以下の組成:Si(86.6重量%)、Cr(0.9重量%)、Mn(0.5重量%)、及びNi(12.0重量%)を示した。結果として、図14の材料は、シリコン内側層が作り出されたこと、及び、ベース金属をコートしていたケイ化物層からそれが成長したことを例証した。一部の実施形態では、酸化物処理及びブロッキング層が、図14にあるような材料の反応器に対する親和性を十分に向上させた。
【0142】
1つの実施形態では、本発明に従って作られた、反応器は、第1の部分であって、この第1の部分の少なくとも一部がi)少なくとも1つのベース層であって、この少なくとも1つのベース層が少なくとも1種のケイ化物形成性金属元素を含有する第1の組成を有している、前記少なくとも1つのベース層;及びii)少なくとも1つのケイ化物コーティング層であって、この少なくとも1つのケイ化物コーティング層が1)600℃以上の第1の温度及び十分に低い圧力で、十分な量の前記少なくとも1種のケイ化物形成性金属元素を有している前記少なくとも1つのベース層を十分な量のシリコン元素を有している十分な量の少なくとも1種のシリコン源ガスに曝す工程であって、この少なくとも1種のシリコン源ガスが1000℃以下の第2の温度で分解して十分な量のシリコン元素を生成することができる、前記曝す工程;2)前記十分な量の少なくとも1種のケイ化物形成性金属元素とこの十分な量のシリコン元素を反応させる工程;及び3)少なくとも1つのケイ化物コーティング層を形成させる工程;によって形成されたものである、前記少なくとも1つのケイ化物コーティング層;を包含する第1の部分;を包含している。
【0143】
1つの実施形態では、また、図15に示すように、マルチ部分反応器1500は、少なくとも2つの部分から構成されている。反応器1500の第1の部分1501(反応区域)は、先に考察した本発明の実施形態のいずれかに従ったケイ化物形成性材料で構成されている。反応器1500の反応区域部分1501はこのあと先に考察した本発明の実施形態のいずれかに従った保護コーティングでコートされる。もう1つの実施形態では、第2の部分1502(反応器1500の底部)は、反応器1500への底部フランジ式アクセスを容易にするためにステンレススチールで構成されている。1つの実施形態では、反応器1500の反応区域1501の少なくとも一部の壁要素の構成にはアロイ材料1(例えば、限定するものではないが、HR−160のような本出願の他のところに説明されているニッケル−クロム−コバルトアロイ)が利用される。ステンレススチール材料2は、反応器1500の底部1502の構成で利用され得る。
【0144】
1つの実施形態では、反応区域1501の壁構造物は、境界面1504のところで、第1のフランジリップ1510を有している壁要素1505に溶接されていて、反応器1500の底部1502と同じ又は同類の材料で構成されている。1つの実施形態では、反応器1500の底部1502は、壁要素1505の第1のフランジリップ1510に取り付けられている第2のフランジリップ1511を有しており、底部1502が取り外されたときの反応器1500の内部への便利のよいアクセスを可能にしている。1つの実施形態では、第2のフランジリップ1511は、反応器運転の間中内部圧力に耐える、及び、反応器格納容器の完全状態を保つ任意の適する方式で第1のフランジリップ1510に取り付けられる。
【0145】
特には、反応器1500の底部1502へのフランジ式アクセスを可能にしているこのステンレススチール材料2(又は他の材料)の使用は、反応器1500の内部へのさまざまな目的のためのアクセスを容易なものにし得る。1つの実施形態では、例えば、シリコン源ガスの導入及び/又は除去のためのアクセス1506が提供される。もう1つの実施形態では、水ジャケット1503、1508からの冷却用流体の導入及び/又は除去のためのアクセスが提供される。もう1つの実施形態では、例えば、ポリシリコンコートビーズの導入及び/又は除去のためのアクセス1507が提供される。
【0146】
もう1つの実施形態では、不活性材料1509の使用が教示されるがここでは反応器壁のステンレススチール部分1502と導入されるシリコン源ガスとの間に少なくとも部分的な物理的障壁が形成されるように不活性材料1509が反応器1500の底部に配置される。1つの実施形態では、不活性材料1509は、そのTCS熱分解反応に参加しない、あるいはその反応の副生成物のいずれとも相互作用しない材料である。もう1つの実施形態では、不活性材料1509は、反応器1500の反応区域から熱を実質的な量で伝導しない(熱伝導係数が100BTU/(lb*°F)(6.3W/(m*K))未満である)材料である。もう1つの実施形態では、不活性材料1509は、反応器1500の反応区域中に存在し得る化学薬品(例えば、Cl、HCl、TCS、STC、他)と実質的な量で反応しない材料である。もう1つの実施形態では、不活性材料1509は、反応区域の環境に曝されると材料2がややもすると経験するであろう腐食から材料2を実質的に保護する(少なくとも90%の軽減効果をもたらす)、環境障壁として役立つ材料である。
【0147】
1つの実施形態では、利用される不活性材料1509は、セラミック材料である。もう1つの実施形態では、利用される不活性材料1509は、鋳造アルミナ材料である。もう1つの実施形態では、利用される不活性材料1509は、シリコン源ガス及び/又は他の求核性もしくは腐食性材料が反応器1500に導入されるときの、ステンレススチール(又は他の材料)が反応器へのフランジ式アクセスを可能にしている発生回数及び作業深刻度を低減することができる任意の材料である。1つの実施形態では、不活性材料1509は、酸化ジルコニウム;窒化シリコン;炭化シリコン;酸化シリコン;及び/又は酸化アルミニウム;を含めた、任意の材料又はそのような材料の組み合わせから選択される。
【0148】
もう1つの実施形態では、不活性材料1509は、形状が球形である。もう1つの実施形態では、不活性材料1509は、形状が管形である。
【0149】
もう1つの実施形態では、図16に示すように、不活性材料1609は、反応器1600のステンレススチール部分1602内に入れられた鋳造インサートである。もう1つの実施形態では、不活性材料1609は、セラミック材料又はもう1つの同じような材料からできている鋳造インサートである。
【0150】
もう1つの実施形態では、図17に示すように、不活性材料1709は、反応器1700のステンレススチール部分1702内に入れられた鋳造インサートであり、シラン及び他の腐食性材料の侵入を防止するために場合によりステンレススチール1702と鋳造1709部分との間に存在している空間1713に水素ガスを有する。もう1つの実施形態では、不活性材料1709は、反応器1700壁要素であるステンレススチール底部1702の物理的コーティングとして用いられる。もう1つの実施形態では、不活性材料1709は、反応器1700の反応区域1701の少なくとも一部を取り囲むライナー1712に遷移するインサート1709である。もう1つの実施形態では、ライナー1712、鋳造インサート1709と、反応器1700の壁(少なくとも反応区域170一部、底部部分1702部分)との間の空間1713に場合により適するガスが循環される。もう1つの実施形態では、ライナー1712、鋳造インサート1709と、反応器1700の壁(少なくとも反応区域170一部、底部部分1702部分)との間の空間1713に場合により水素ガスが循環される。
【0151】
もう1つの実施形態では、インサート材料はグリッド材料として利用され、これは、それ自体、場合により反応器の内側空間内に入れられる。もう1つの実施形態では、反応器壁は、適切な温度管理をもたらすためにさらにジャケット付きにされる。
【0152】
もう1つの実施形態では、フランジ式アクセスポイントは、反応器内に入っている不活性材料が、反応器の底部の構成で使われたステンレススチール(又はフランジ式アクセスポイントの使用を可能にする他の材料)と接触状態にあるところより上のポイントでの材料(例えば、シリコン源ガス及び/又は冷却用流体)の進入及び退出を可能にしている。
【0153】
本発明の多くの実施形態を説明してきたが、それらの実施形態は、説明のためだけのものであって、限定するためのものでないこと、及び、多くの改変及び/又は代替実施形態が当業者には明らかなものであり得ることは理解されるところである。例えば、どの工程も任意の所望順序で行われ得る(ならびに任意の所望工程が加えられ得る及び/又は任意の所望工程が削除され得る)。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の思想及び範囲内に入るそのような改変及び実施形態のすべてをカバーすることが意図されているものであることは理解されるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分であって、この第1の部分の少なくとも一部が、以下:
i)少なくとも1つのベース層であって、この少なくとも1つのベース層が少なくとも1種のケイ化物形成性金属元素を含有する第1の組成を有している、前記少なくとも1つのベース層;及び
ii)少なくとも1つのケイ化物コーティング層であって、この少なくとも1つのケイ化物コーティング層が、以下:
1)600℃以上の第1の温度及び十分に低い圧力で、十分な量の前記少なくとも1種のケイ化物形成性金属元素を有している前記少なくとも1つのベース層を、十分な量のシリコン元素を有している十分な量の少なくとも1種のシリコン源ガスに曝す工程であって、この少なくとも1種のシリコン源ガスが1000℃以下の第2の温度で分解して十分な量のシリコン元素を生成することができる、前記工程;
2)前記十分な量の少なくとも1種のケイ化物形成性金属元素とこの十分な量のシリコン元素とを反応させる工程;及び
3)少なくとも1つのケイ化物コーティング層を形成させる工程;
によって形成されるものである、前記少なくとも1つのケイ化物コーティング層;
を含んでいる、前記第1の部分;
を含んでいる、反応器。
【請求項2】
反応器が、さらに、以下:
第2の部分であって、この第2の部分が第2の組成で構成され、第1の組成及び第2の組成が異なるものである、前記第2の部分;及び
不活性材料であって、この不活性材料が反応器の第2の部分を占めている、前記不活性材料;
を含んでいる、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
第2の部分が、以下:
i)第1の端部及び第2の端部を有している頂部であって、この頂部の第2の端部が第1のリップを有し、第1の端部が反応器の第1の部分の一部に取り付けられている、前記頂部;
ii)第1の端部及び第2の端部を有している底部であって、この底部の第2の端部が反応器の底を形成しており、第2の部分の第1の端部が第2のリップを有している、前記底部;
を含んでおり;そして
第1のリップ及び第2のリップが、互いに確実に結合するように十分に設計されている;
請求項2に記載の反応器。
【請求項4】
反応器が、さらにライナーを含んでおり、このライナーが不活性材料から頂部部分に延びている、請求項3に記載の反応器。
【請求項5】
不活性材料と反応器との間に、ガスの導入を可能にするための空間がある、請求項2に記載の反応器。
【請求項6】
ガスが、水素である、請求項5に記載の反応器。
【請求項7】
ライナーと反応器との間に、ガスの導入を可能にするための空間がある、請求項4に記載の反応器。
【請求項8】
ガスが、水素である、請求項7に記載の反応器。
【請求項9】
不活性材料が、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化ケイ素、及び酸化アルミニウムからなる群から選択される、請求項2に記載の反応器。
【請求項10】
少なくとも1つのベース層の少なくとも1つの第1の部分が、少なくとも1つのケイ化物コーティングの少なくとも1つの部分を形成するように十分に設計されており、少なくとも1つのベース層の少なくとも1つの第2の部分が、少なくとも1つのケイ化物コーティングの少なくとも1つの第2の部分を形成するように十分に設計されている、請求項1に記載の反応器。
【請求項11】
少なくとも1つのケイ化物コーティングが、300℃以上の温度における相当量の化学腐食に耐えられるように十分に設計されている、請求項1に記載の反応器。
【請求項12】
少なくとも1つのベース層が、セラミック材料を含んでいる、請求項1に記載の反応器。
【請求項13】
少なくとも1つのベース層が、ガラスセラミック材料を含んでいる、請求項1に記載の反応器。
【請求項14】
少なくとも1つのベース層が、アルミニウム(Al)、炭素(C)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、銅(Cu)、鉄(Fe)、モリブデン(Mo)、ケイ素(Si)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、チタン(Ti)、及びタングステン(W)からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含んでいる、請求項1に記載の反応器。
【請求項15】
少なくとも1つのケイ化物コーティングの組成が、少なくとも1つのベース層が少なくとも1種のシリコン源ガスに曝される温度に依存する、請求項1に記載の反応器。
【請求項16】
少なくとも1種のシリコン源ガスが、HSiCl(式中、x、y及びzは、0〜6である)で表される少なくとも1種を含んでいる、請求項1に記載の反応器。
【請求項17】
少なくとも1種のシリコン源ガスが、少なくともTCSを含んでいる、請求項15に記載の反応器。
【請求項18】
以下:
a)頂部部分であって、この頂部部分の少なくとも一部が、以下:
i)少なくとも1つのベース層であって、この少なくとも1つのベース層が、少なくとも1種のケイ化物形成性金属元素を含有している、前記少なくとも1つのベース層;
ii)少なくとも1つのケイ化物コーティング層であって、この少なくとも1つのケイ化物コーティング層が、以下の第1の工程:
1)600℃以上の第1の温度及び十分に低い圧力で、十分な量の少なくとも1種のケイ化物形成性金属元素を有している少なくとも1つのベース層を、十分な量のシリコン元素を有している十分な量の少なくとも1種のシリコン源ガスに曝す工程であって、この少なくとも1種のシリコン源ガスが、1000℃以下の第2の温度で分解して十分な量のシリコン元素を生成することができる、前記工程;
2)十分な量の少なくとも1種のケイ化物形成性金属元素と十分な量のシリコン元素とを反応させる工程;及び
3)少なくとも1つのケイ化物コーティング層を形成させる工程;
によって形成されるものである、前記少なくとも1つのケイ化物コーティング層;
iii)少なくとも1つのブロッキング層;
を含んでいる、前記頂部部分;
b)底部部分であって、この底部部分が第2の組成で構成されている、前記底部部分;
を含んでおり;
c)第1の組成及び第2の組成が、異なっており;そして
d)不活性材料であって、この不活性材料が反応器の底部部分を占めている、前記不活性材料;
を含んでいる;
反応器。
【請求項19】
少なくとも1つのブロッキング層が、以下の第2の工程:
i)少なくとも1つのケイ化物コーティング層を、十分な量の少なくとも1つの富酸素ガスに曝す工程、
ii)十分な量の酸素とケイ化物コーティング層中の十分な量の少なくとも1種の金属元素とを反応させる工程、及び
iii)少なくとも1つのブロッキング層を形成させる工程、
によって形成される、請求項16に記載の表面。
【請求項20】
底部部分が、以下:
i)第1の端部及び第2の端部を有している頂部であって、この頂部の第2の端部が第1のリップを有し、第1の端部が反応器の頂部部分の一部に取り付けられている、前記頂部;
ii)第1の端部及び第2の端部を有している底部であって、この底部の第2の端部が反応器の底を形成しており、この底部の第1の端部が第2のリップを有している、前記底部;
を含んでおり;そして
第1のリップ及び第2のリップが、互いに確実に結合するように十分に設計されている;
請求項16に記載の反応器。
【請求項21】
少なくとも1つのブロッキング層が、Al、SiO、Si、及びSiCからなる群から選択される材料を含んでいる、請求項16に記載の表面。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2012−523963(P2012−523963A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507303(P2012−507303)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/031718
【国際公開番号】WO2010/123873
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511253025)エーイー ポリシリコン コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】