説明

ケイ素含有化合物を含む組成物

本発明は、建設基材、例えば建築構成材のような基材の撥水性を向上させる組成物を提供する。この組成物は、水と、シリコーン樹脂、アルコキシシランまたはポリシロキサンである少なくとも1つの撥水性ケイ素含有化合物と、アルキル基が1〜6個の炭素原子を含有するアルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基およびアルキルシロキサン基を含有するシロキサン界面活性剤とを混合することにより形成した混合物を含有する。組成物は前処理した基材、より一般的には湿潤または浸透しにくい基材に対して用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の撥水性を向上させるためのケイ素含有化合物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
基材の撥水性を付与または向上させるのは、有機または無機建築構成材、例えばコンクリート、メーソンリー、スタッコ、天然もしくは人工石、セラミック、テラコッタレンガ、石膏板、繊維セメント板または他のセメント含有製品、木材粒子板、木材プラスチック複合体、配向ストランド板(OSB)もしくは木材を含む多くの基材にとって望ましい。
【0003】
所望の撥水特性は通常、撥水剤組成物を基材の外表面に塗布して、基材を風化および他の劣化から保護する撥水コーティングを基材上に形成することにより得られる。防水にするため、少なくとも建物用材料の最外表面を処理する。
【0004】
シリコーン化合物を、その耐久性、良好な疎水性および塗付しやすさのため、撥水剤として何年も用いられている。まず、溶剤中のシリコーン樹脂およびメチルシリコネートがシリコーン撥水性化合物として用いられた。次に、溶剤中のシロキサンおよびシラン系製品が用いられた。次世代の撥水剤は環境上の理由および使いやすさのため一般に水性である。活性成分はシロキサン、シリコーン樹脂およびシラン(ならびにこれらの組み合わせ)を含有する。例えば、米国特許第6323268号は、水または溶剤、メチル水素シロキサンポリマーまたはコポリマー、式RSi(OR’)4−aで、式中のRが1〜10個の炭素原子を含有するアルキル基、2〜8個の炭素原子を含有するアルケニル基、アリール基またはハロアルキル基を表し、aが1または2の値を有し、R’が1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基を表すアルコキシシラン、およびシリコーン樹脂を混合することにより形成された表面に撥水性を与えるための組成物を開示する。
【0005】
溶剤系製品は、一般に未処理の(新しい)基材並びに予め処理した基材に対し良好な湿潤性および浸透性を示す。他方、水性製品は、以前処理した表面の基材浸透性および湿潤性に関して必ずしも奏功するわけではない。これは水性撥水剤製品の効率性を制限する。
【0006】
例えば、建築基材をしばしば撥水剤で処理して水の進入を防止する。現在は10年以上の保護をもたらすことができる製品が存在するが、過去の製品は耐久性が低く、またはコスト上の理由で性能の低い製品が用いられた。また、基材を審美的理由で、例えばサンドブラストまたは高圧水洗浄により洗浄すると、処理が部分的に除去されることもある。この種の表面は今まで、均質な処理および耐久性能を保証する唯一の確実な液剤である溶剤系製品で処理しなければならなかった。
【0007】
驚くべきことに、撥水性ケイ素含有化合物を水および所定のタイプのシロキサン界面活性剤とともに含有する混合物が、撥水性表面を提供および維持する能力を保持しながら、以前処理した基材の基材浸透性および湿潤性の両方を大幅に向上させることができることが見出された。
【発明の概要】
【0008】
従って、本発明の一態様は、基材の撥水性を向上させることができる組成物を提供するもので、該組成物は
I 水と、
II シリコーン樹脂、アルコキシシランまたはポリシロキサンである基材の撥水性を向上し得る少なくとも1つのケイ素含有化合物と、
III アルキル部分が1〜6個の炭素原子を含有する(i)アルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基および(ii)アルキルシロキサン基を含むシロキサン界面活性剤と、
IV 任意で乳化剤と
を混合することにより形成した混合物を含有する。
【0009】
この組成物は、予め処理した基材またはより一般的には湿潤または浸透しにくい基材に用いることができる水性の耐久性シリコーン撥水剤を提供することができる。後者の基材は、表面が摩耗および腐食を受けやすいので、所望の耐久性をもたらすことが必要である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述したように、混合物は成分I、II、IIIおよびIVを組合せることにより形成(得る)され、すなわち得ることができる。撥水性ケイ素含有化合物(II)。該組成物の成分(II)は、基材の撥水性を向上させ得る少なくとも1つのケイ素含有化合物を含む。この撥水性ケイ素含有化合物は、シリコーン樹脂(成分A)、アルコキシシラン(成分B)、およびポリシロキサン(成分C)から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態において、成分(II)はシリコーン樹脂(成分A)、アルコキシシラン(成分B)およびポリシロキサン(成分C)の少なくとも2つの混合物である。
【0012】
(A)シリコーン樹脂
シリコーン樹脂は、米国特許第5,695,551号(1999年12月9日)に詳述されたさまざまなタイプの樹脂状コポリマーのいずれか1つとすることができる。しかし、ここで用いる最も好適なものは以下に記載する樹脂状コポリマーである。
1.(i)R”SiO1/2単位およびSiO4/2単位を有するシラノール含有樹脂状コポリマーシロキサンと;bおよびcが合計4未満、好適には1.9〜2.1の正の整数である式R”SiO(4−b−c)/2を有するオルガノ水素ポリシロキサン;および有機溶剤の酸性均質混合物を形成し、(ii)該混合物を加熱してほぼすべての有機溶剤を除去することを備える方法により調製した樹脂状コポリマーシロキサン。R”は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基;フェニル、トリルおよびキシリルのようなアリール基;ビニルおよびアリルのようなアルケニル基;またはトリフルオロプロピル基とすることができる。R”はまた、β−フェニルエチルおよびβ−フェニルプロピルのようなアリールアルキル基;またはシクロペンチル、シクロへキシルおよびシクロへキセニルのような脂環式基とすることができる。
2. R”SiO1/2単位およびSiO4/2単位を数平均分子量が1,200〜10,000g/モルであるようなモル比で含むシロキサン樹脂コポリマー。好適には、モル比が0.7:1.0であり、数平均分子量が5,000g/モルである。R”は直上に定義されている。この樹脂は2.5質量パーセントのケイ素結合OH基を含有する。樹脂はR”SiO2/2単位およびR”SiO3/2単位を含有することもできる。
【0013】
本発明に用いるのに特に好適な樹脂状コポリマーの一つの代表的なシリコーン樹脂は、約0.75:1のモル比の(CHSiO1/2単位およびSiO単位から主としてなり、米国材料試験協会(ASTM)の試験手順E−168に従ってFTIRにより決定されるように、固体に対し2.4〜2.9質量パーセントのヒドロキシを含有するシロキサン樹脂コポリマーである。
【0014】
成分(A)は、フェニルシルセスキオキサン樹脂、またはフェニルシルセスキオキサンの混合物とすることができる。本明細書で用いるフェニルシルセスキオキサン樹脂は、式(CSiO3/2)のシロキシ単位を少なくとも1つ有するオルガノポリシロキサンである。オルガノポリシロキサンは、(RSiO1/2)、(RSiO2/2)、(RSiO3/2)または(SiO4/2)シロキシ単位(ここではそれぞれM、D、T、またはQ単位とも称する)から独立して選択したシロキシ単位を含有するポリマーであり、Rは任意の一価有機基とすることができる。これらシロキシ単位をさまざまな方法で組み合わせて、環状、線状または分岐構造を形成することができる。生成したポリマー構造の化学的および物理的特性は変化し得る。例えば、オルガノポリシロキサン中の各シロキシ単位の選択および量によって、オルガノポリシロキサンは揮発性または低粘度液、高粘度液/ゴム、エラストマーまたはゴム、および樹脂とすることができる。シルセスキオキサンは、通常少なくとも一つまたはいくつかの(RSiO3/2)またはTシロキシ単位を有するものとして特徴付ける。すなわち、本発明における成分(A)として適したオルガノポリシロキサンは、Cがフェニル基を表す式(CSiO3/2)のシロキシ単位を少なくとも1つ有するという条件で、(RSiO1/2)、(RSiO2/2)、(RSiO3/2)または(SiO4/2)シロキシ単位の任意の組み合わせを有することができる。
【0015】
フェニルシルセスキオキサン樹脂は、式(R’SiO2/2(CSiO3/2を有する少なくとも40モル%のシロキシ単位を含む平均式を有することができ、ここでxおよびyが0.05〜0.95の値を有し、R’が1〜8個の炭素原子を有する一価炭化水素基である。ここで用いるxおよびyは、フェニルシルセスキオキサン樹脂中に存在する(R’SiO2/2)および(CSiO3/2)シロキシ単位(すなわちDおよびTフェニルシロキシ単位)相互のモル分率を表す。
【0016】
従って、(R’SiO2/2)および(CSiO3/2)シロキシ単位のモル分率は、それぞれ独立して0.05から0.95まで変化することができる。しかしながら、存在する(R’SiO2/2)および(CSiO3/2)シロキシ単位の組み合わせは、合計でフェニルシルセスキオキサン樹脂中に存在するすべてのシロキシ単位の少なくとも40モル%、あるいは80モル%、またはあるいは95モル%でなければならない。R’は、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチルまたはオクチル基のような直鎖または分岐鎖アルキルとすることができる。一般に、R’はメチルである。
【0017】
フェニルシルセスキオキサン樹脂は、当業界で周知で、本明細書でそれぞれM、D、T、およびQ単位として用いる(i)(RSiO1/2、(ii)(RSiO2/2、(iii)(RSiO3/2または(iv)(SiO4/2単位のような追加のシロキシ単位を含有することができる。フェニルシルセスキオキサン樹脂中に存在する各単位の量は、フェニルシルセスキオキサン樹脂中に存在するすべてのシロキシ単位の総モル数のモル分率で表すことができる。よって、本発明のフェニルシルセスキオキサン樹脂は、
(i) (RSiO1/2
(ii) (RSiO2/2
(iii) (RSiO3/2
(iv) (SiO4/2
(v) (R’SiO2/2および
(vi) (CSiO3/2
の単位を含むことができ、式中のR、R、およびRはそれぞれ独立して1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基またはカルビノール基であり、R’は1〜8個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、x+yの値が0.40以上であり、a+b+c+d+x+y=1であるという条件で、a、b、c、およびdは0〜0.6の値を有し、xおよびyはそれぞれ0.05〜0.95の値を有する。
【0018】
フェニルシルセスキオキサン樹脂の単位中のR、R、およびRは、独立して1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、カルビノール基またはアミノ基である。アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシルおよびオクチルで示される。アリール基は、フェニル、ナフチル、ベンジル、トリル、キシリル、キセニル、メチルフェニル、2−フェニルエチル、2−フェニル−2−メチルエチル、クロロフェニル、ブロモフェニルおよびフルオロフェニルで示されるが、アリール基は一般にフェニルである。本発明の目的のため、「カルビノール基」を、少なくとも1つの炭素結合ヒドロキシ(C−OH)基を含有する任意の基と定義する。よって、カルビノール基は、例えば
【化1】

のような一つ以上のC−OH基を含有することができる。
【0019】
アリール基を含まないカルビノール基は、少なくとも3個の炭素原子を有するか、またはアリール含有カルビノール基は少なくとも6個の炭素原子を有する。少なくとも3個の炭素原子を有するアリール基を含まないカルビノール基は、式ROHを有する基で示され、式中のRは少なくとも3個の炭素原子を有する二価炭化水素基または少なくとも3個の炭素原子を有する二価ヒドロカルボノキシ基である。基Rは、xが3〜10の値を有する−(CH−、−CHCH(CH)−、−CHCH(CH)CH−、−CHCHCH(CHCH)CHCHCH−、およびxが1〜10の値を有する−OCH(CH)(CH−のようなアルキレン基で示される。
【0020】
少なくとも6個の炭素原子を有するアリール含有カルビノール基は、式ROHを有する基で示され、式中のRは、xが0〜10の値を有する−(CH−、xが0〜10の値を有する−CHCH(CH)(CH−、xが1〜10の値を有する−(CH(CH−のようなアリーレン基である。アリール含有カルビノール基は、通常6〜14個の原子を有する。
【0021】
一般に、Rはメチル基、Rはメチルまたはフェニル基、Rはメチル基である。
【0022】
フェニルシルセスキオキサン樹脂の任意の個別のD、TまたはQシロキサン単位はまた、ヒドロキシ基および/またはアルコキシ基を含有することができる。かかるヒドロキシおよび/またはアルコキシ基を含有するシロキサン単位は、一般式RSiO(4−n)/2を有するシロキサン樹脂中によく見られる。これらシロキサン樹脂中のヒドロキシ基は、一般にシロキサン単位上の加水分解性基の水との反応でもたらされる。アルコキシ基は、アルコキシシラン前駆体を用いる場合の不完全加水分解、またはアルコールの加水分解性基との交換でもたらされる。一般に、フェニルシルセスキオキサン樹脂中に存在する総ヒドロキシ基の質量パーセントは最大40質量%である。
【0023】
フェニルシルセスキオキサン樹脂の分子量は限定されないが、通常数平均分子量(M)(ASTM D5296−05に従って決定され、ポリスチレン分子当量として計算されるように)は500〜10,000、あるいはまた500〜2,000g/モルの範囲内である。
【0024】
フェニルシルセスキオキサンの25℃での粘度は限定されないが、通常粘度は100mPa・s(cP)未満、あるいは10mPa・s(cP)〜50mPa・s(cP)の範囲内でなければならない。水性シリコーンエマルジョン中のより高い粘度を有するフェニルシルセスキオキサンは、基材上に容易にコーティングすることができない。しかしながら、25℃で高い粘度を有する樹脂は、それらの調製のための溶剤として以下に記載するような溶剤中に溶解すれば用いることができる。
【0025】
本発明のフェニルシルセスキオキサン樹脂は、Rがアルキルまたはアリール基であり、nが通常1.8未満である一般式RSiO(4−n)/2を有するシロキサン樹脂を調製するための当業界で既知のあらゆる方法により調製することができる。従って、フェニルシルセスキオキサン樹脂は、シラン分子中に存在するハロゲンまたはアルコキシ基のような3個の加水分解基を有する少なくとも1つのフェニルシランをシラン分子中に存在するハロゲンまたはアルコキシ基のような2個または3個の加水分解性基を有する他の選択したアルキルシランで共加水分解することにより調製することができる。例えば、フェニルシルセスキオキサン樹脂は、ジメチルジエトキシシランのようなアルコキシシランをフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランまたはフェニルトリプロポキシシランで共加水分解することにより得ることができる。あるいはまた、アルキルクロロシランをフェニルトリクロロシランで共加水分解して、本発明のフェニルシルセスキオキサン樹脂を生成することができる。一般に、共加水分解をアルコールまたは炭化水素溶剤中で行う。これら目的に適したアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノールまたは類似のアルコールを挙げることができる。同時に使用し得る炭化水素タイプ溶剤の例としては、トルエン、キシレンまたは類似の芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタンまたは類似の直鎖もしくは部分分岐鎖飽和炭化水素;およびシクロヘキサンまたは類似の脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0026】
上記のような追加のM、D、T、およびQ単位は、アルキルシランおよびフェニルシランの共加水分解中に生成する樹脂に所望のシロキシ単位を生成するように選択された追加のオルガノシランを反応させることによりフェニルシルセスキオキサン樹脂中に導入することができる。例えば、メトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、テトラメトキシシラン(あるいはまた、それぞれの対応するエトキシもしくはクロロシラン)を反応させると、それぞれM、D、TまたはQ単位をアルキルフェニルシルセスキオキサン樹脂中に導入する。共加水分解反応中に存在するこれら追加シランの量は、上述したようなモル分率の定義を満たすように選択される。
【0027】
あるいはまた、フェニルシルセスキオキサン樹脂を、当業界でM、D、TおよびQシロキサン単位の反応をもたらすのに既知なあらゆる方法を用いてオルガノポリシロキサンおよびフェニルシルセスキオキサン樹脂を反応させることにより調製することができる。例えば、ジオルガノポリシロキサンよびフェニルシルセスキオキサン樹脂を触媒存在下縮合反応により反応させることができる。一般に、出発樹脂が芳香族炭化水素またはシロキサン溶剤中に含有される。適当な縮合反応触媒は塩基性触媒で、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムのような金属水酸化物;シラノール酸塩、カルボン酸塩および炭酸塩のような金属塩;アンモニア;アミン;およびチタン酸テトラブチルのようなチタン酸塩;ならびにこれらの組み合わせを含む。通常、シロキサン樹脂の反応は、反応混合物を50〜140℃、あるいは100〜140℃の範囲の温度まで加熱することにより行われる。反応は、バッチ、半連続または連続プロセスで行うことができる。
【0028】
本発明のフェニルシルセスキオキサン樹脂は、
((CHSiO3/2(CSiO3/2
の単位を含むフェニルシルセスキオキサン樹脂で示され、式中のxおよびyは、x+yの値が0.40以上であるという条件でそれぞれ0.05〜0.95の値を有する。
【0029】
フェニルシルセスキオキサン樹脂を溶剤中に任意に溶解させることができる。揮発性シロキサンまたは有機溶剤を、フェニルシルセスキオキサン樹脂を水性エマルジョン組成物への添加前に溶解または分散させるための任意の成分として選択することができる。あらゆる揮発性シロキサンまたは有機溶剤を、成分(A)が選択溶剤と分散性および混和性であるという条件で選択することができる。揮発性シロキサン溶剤は、環状ポリシロキサン、線状ポリシロキサンまたはその混合物とすることができる。いくつかの代表的な揮発性線状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサンおよびヘキサデカメチルヘプタシロキサンがある。いくつかの代表的な揮発性環状ポリシロキサンとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンおよびドデカメチルシクロヘキサシロキサンがある。有機溶剤は、エステル;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールもしくはn−プロパノールのようなアルコール;アセトン、メチルエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトンのようなケトン;ベンゼン、トルエン、もしくはキシレンのような芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサンもしくはオクタンのような脂肪族炭化水素;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテルもしくはエチレングリコールn−ブチルエーテルのようなグリコールエーテル;酢酸エチルもしくは酢酸ブチルのような酢酸塩;ジクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタンもしくは塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素;クロロホルム;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;アセトニトリル;テトラヒドロフラン;またはホワイトスピリット、ミネラルスピリット、イソドデカン、ヘプタン、ヘキサンもしくはナフサのような脂肪族炭化水素とすることができる。
【0030】
ここに開示するようなシリコーンエマルジョン中の成分(A)として適した市販のフェニルシルセスキオキサン樹脂の代表的で非限定的な例としては、DOW CORNING(登録商標)3037 IntermediateおよびDOW CORNING(登録商標)3074(ミシガン州ミッドランドのダウコーニングコーポレーション)が挙げられる。
【0031】
撥水性ケイ素含有化合物は、MQまたはRが水素、アリールもしくは1〜12個の炭素原子を有するアルキルであるRSiO3/2樹脂であるシリコーン樹脂化合物を含有するのが好ましい。
【0032】
(B)アルコキシシラン
アルコキシシランは単一のアルコキシシランを構成することができ、またはアルコキシシランの混合物を用いることができる。アルコキシシランは、式RSi(OR(4−a)を有することができる。式中、Rは1〜30個の炭素原子、あるいは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、フェニルのようなアリール基、またはクロロプロピルおよびトリフルオロプロピルのようなハロアルキルを表す。aの値は1または2であり、Rは1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を表す。通常、Rはn−オクチルであり、Rはメチルまたはエチルである。
【0033】
アルコキシシラン化合物(B)は、アルキル鎖中に1〜12個の炭素原子およびアルコキシ鎖中に1〜6個の炭素を有するアルキルトリアルコキシシランであるのが好ましい。いくつかの好適なアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリブトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、へキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジブチルジエトキシシランおよびジヘキシルジメトキシシランがある。
【0034】
かかるアルコキシシランは、ミシガン州ミッドランドのダウコーニングコーポレーションから市販されており、また例えば米国特許第5,300,327号(1994年4月5日)、同第5,695,551号(1997年12月9日)および同第5,919,296号(1999年7月6日)に記載されている。アルコキシシランを部分的に加水分解することができ、従ってシロキサンおよび/またはシラノール基を含有する。
【0035】
(C)ポリシロキサン
化合物(C)は、一般式
[RSi(OR1/2][RSiO2/2[SiR(OR)O1/2
を有するポリジアルキルシロキサンであるのが好ましく、式中のRは上述したようなもので、zは重合度を表し、1より大きい。Rはヒドロキシ末端ポリマーの場合Hであり、またはSi(CHである。
【0036】
一般に、ポリジアルキルシロキサンは、1より大きい、あるいは1〜500、あるいは5〜200、あるいはまた10〜100の重合度(z)を有するヒドロキシルまたはトリメチルシリル末端ポリジメチルシロキサンである。
【0037】
より好適には、ポリシロキサン化合物が有機基1個当たり1〜12個の炭素原子を有するジオルガノシロキサンである。
【0038】
シロキサン界面活性剤(III)
シロキサン界面活性剤(III)は、アルキル基が1〜6個の炭素原子を含有するアルキルシロキサン基を伴うアルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基を含有するシロキサン化合物である。かかる化合物はさまざまな表面、とくに水性液体組成物により湿潤しにくい表面の湿潤化を促進することができる。
【0039】
シロキサン化合物IIIは、低分子量の化合物であるのが好ましい。好適には、2〜8個のケイ素原子を含有する。かかるシロキサン化合物IIIは湿潤剤として既知である。これらは、例えば農業用途において組成物の拡散を向上させることができ、R. M. Hill (Marcel Dekker 1999)による本「Silicone surfactants」の19〜23ページに記載されている。例えば、米国特許第4933002号は、除草剤、アセトキシ末端シリコーングリコールおよび一般的にはエトキシル化トリシロキサンであるシリコーン分散剤を含有する除草剤組成物を開示する。
【0040】
シロキサン化合物(III)は1〜3個のアルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基(i)および1〜4個のアルキルシロキサン基(ii)を含有するのが好ましい。より好適には、シロキサン化合物(III)は、1個のアルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基(i)ならびに2個のメチルおよび/またはエチルシロキサン基(ii)を含有するトリシロキサンである。アルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基(ii)における平均エチレンオキシ(EO)単位数は5〜12であるのが好ましい。好適には、アルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基(ii)の末端単位は、アセトキシ、ヒドロキシルまたはメトキシ単位である。
【0041】
トリシロキサン界面活性剤が米国特許第3299112号に開示されている。トリシロキサン界面活性剤の代表的で非限定的な式は、
【化2】

であり、式中のn=3〜20、R=H、CH、CHCH、CHCOである。
【0042】
他のR基を用いることができ、Si原子とEO鎖との間のアルキル鎖の長さは炭素1〜12個と変化し得るが、例えば炭素原子3個がSi原子とEO鎖との間にプロピル鎖を形成する。
【0043】
実施例では、nが7で、RがHである上記式に対応するトリシロキサンを用いる。従って、シロキサン化合物(III)は、アルキル部分がメチルである2つの基(ii)および平均エチレンオキシ(EO)単位数が7であり、ヒドロキシル末端単位を有する1つの基(i)を含有するトリシロキサンであるのが好ましい。
【0044】
好適には、組成物を乳化する。通常、本発明の水性シリコーンエマルジョンは、例えば20マイクロメーター未満である平均粒径分布の分散相を有する水連続エマルジョンである。
【0045】
任意の乳化剤(IV)
成分IVは乳化剤である。本明細書で用いる「乳化剤」とは、水性エマルジョンを安定化させる能力を有するあらゆる界面活性剤または界面活性剤の混合物を意味する。界面活性剤は、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤または界面活性剤の混合物とすることができる。非イオン性界面活性剤およびアニオン界面活性剤を通常用い、また2つの非イオン性界面活性剤を含有する混合物を代表的に用いる。非イオン性界面活性剤を含有する混合物を用いる場合、一方の非イオン性界面活性剤は低親水性・親油性バランス(HLB)を有することができ、他方の非イオン性界面活性剤は高HLBを有することができ、2つの非イオン性界面活性剤は11〜15の組合せHLB、好適には12.5〜14.5の組合せHLB(標準的なHLB法を用いて測定)を有するようなものである。
【0046】
適当なアニオン界面活性剤の代表例としては、高級脂肪酸のアルカリ金属石鹸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアルキルアリールスルホン酸塩、長鎖脂肪アルコール硫酸塩、オレフィン硫酸塩およびオレフィンスルホン酸塩、硫酸化モノグリセリド、硫酸化エステル、スルホン酸化エトキシル化アルコール、スルホコハク酸塩、スルホン酸アルカン、リン酸エステル、イセチオン酸アルキル、タウリン酸アルキルおよびサルコシン酸アルキルが挙げられる。好適なアニオン界面活性剤の一例は、Bio−Soft N−300の商品名で市販されている。それはイリノイ州ノースフィールドのStephan社より販売されるトリエタノールアミン直鎖スルホン酸アルキレート組成物である。
【0047】
適当なカチオン界面活性剤の代表例としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、スルホニウム塩およびホスホニウム塩が挙げられる。適当な非イオン性界面活性剤の代表例としては、エチレンオキシドのC12〜16アルコールのような長鎖脂肪アルコールまたは脂肪酸との縮合物、エチレンオキシドのアミンまたはアミドとの縮合物、エチレンおよびプロピレンオキシドの縮合生成物、グリセロールのエステル、スクロース、ソルビトール、脂肪酸アルキロールアミド、スクロースエステル、フルオロ界面活性剤ならびに脂肪アミンオキシドが挙げられる。適当な両性界面活性剤の代表例としては、イミダゾリンが挙げられる。適当な市販の非イオン性界面活性剤の代表例としては、デラウェア州ウィルミントンのUniqema(ICI Surfactants)よりBRIJの商品名で販売されるポリオキシエチレン脂肪アルコールが挙げられる。いくつかの例としては、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテルとして知られるエトキシル化アルコール、BRIJ35液、およびポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルとして知られる別のエトキシル化アルコール、BRIJ30がある。いくつかの追加の非イオン性界面活性剤としては、ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical CompanyよりTERGITOL(登録商標)の商標で販売されるエトキシル化アルコールが挙げられる。いくつかの例としては、エトキシル化トリメチルノナノールとして知られるエトキシル化アルコール、TERGITOL(登録商標)TMN−6;ならびにTERGITOL(登録商標)15−S−5、TERGITOL(登録商標)15−S−12、TERGITOL(登録商標)15−S−15、およびTERGITOL(登録商標)15−S−40の商標で販売される、さまざまなエトキシル化アルコール、すなわちC12〜C14第2級アルコールエトキシレートがある。ケイ素原子を含有する界面活性剤を用いることもできる。
【0048】
他の任意の成分を本発明の水性シリコーンエマルジョンに添加して、これら任意成分の性質および/または量が水性シリコーンエマルジョンを実質的に不安定化しないという条件で、所望に応じて特定の性能特性をもたらすことができる。これら任意成分としては、充填剤、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのような凍結融解添加剤、抗菌製剤、紫外線フィルター、抗酸化剤、増粘剤、腐食防止剤、pH緩衝剤、顔料、染料および香料が挙げられる。
【0049】
少なくとも1部のシロキサン界面活性剤(III)を100質量部の撥水性化合物(II)の組成物に混入するのが好ましい。より好適には、撥水性成分(II)に対し少なくとも2質量%のシロキサン(III)を用いる。驚くべきことに、実施例に示すように、かかる少量が組成物で処理した基材の撥水特性を大幅に向上させることを可能にする。撥水性化合物(III)に対し10%より多いシロキサン界面活性剤(III)を添加する必要はない。
【0050】
本発明の別の態様は、
I 水と、
II シリコーン樹脂、アルコキシシランまたはポリシロキサンである基材の撥水性を向上させることができる少なくとも1つのケイ素含有化合物(以下撥水性ケイ素含有化合物と呼ぶ)と、
III 少なくとも次の基、すなわちアルキル部分が1〜6個の炭素原子を含有する(i)アルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基および(ii)アルキルシロキサン基を含有するシロキサン化合物と、
IV 任意で乳化剤と
を混合することにより形成した混合物を含有する組成物を基材の表面に塗布することにより基材の撥水性を向上させる方法を提供する。
【0051】
基材はコンクリート、メーソンリー、スタッコ、天然もしくは人工石、セラミック、テラコッタレンガ、石膏板、繊維セメント板、または他のセメント含有製品、木材粒子板、木材プラスチック複合体、配向ストランド板(OSB)もしくは木材であるのが好ましい。或いはまた、基材は織物、繊維、不織布材料、充填材および/または本発明に係る組成物のようなシリコーン系撥水コーティング剤での処理に適したあらゆる他の物質を含むことができる。
【0052】
本発明に係る組成物は、すでに疎水化剤で予め処理した基材の表面を処理するのにとくに効率的である。後者の場合、疎水化剤で予め処理した基材の表面に塗布することができる。
【0053】
他の実施形態では、組成物を(新しい)未処理の基材、とくに低い湿潤性を有するか、または浸透しにくいものに塗布することができる。これは、例えば天然で高含量の油を有するいくつかのタイプの木材の場合である。
【0054】
さらに別の実施形態では、組成物を、基材を形成するのに用いる出発成分、例えばセメントスラリーまたは板構成材の水性混合物に添加する。
【0055】
本発明の他の態様は、
1 I 水と、
II シリコーン樹脂、アルコキシシランまたはポリシロキサンである基材の撥水性を向上し得る少なくとも1つのケイ素含有化合物(以下撥水性ケイ素含有化合物と呼ぶ)と、
III 少なくとも次の基、すなわちアルキル部分が1〜6個の炭素原子を含有する(i)アルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基および(ii)アルキルシロキサン基を含有するシロキサン化合物と、
IV 任意で乳化剤とを混合するステップと、
2 分散物をせん断してエマルジョンを形成するステップと、
3 追加の水および任意で追加の成分を混合するステップと
によるエマルジョンを製造する方法を提供する。
【0056】
本発明はまた、上述したような組成物を仕上基材に塗布するか、または組成物を基材の製造中に含めることにより基材の撥水性を向上させるため組成物の使用にも及ぶ。
【0057】
上述したような水性シリコーンエマルジョンは、水連続エマルジョンの調製について当業界で既知の任意の技術(例えば、反転、コロイドミルのような高せん断装置、ツインスクリュー押出機)により調製することができる。
【0058】
水性シリコーンエマルジョンは、
I A シリコーン樹脂と、
B アルコキシシランと、
C ポリジアルキルシロキサンと、
D トリシロキサン界面活性剤、および任意で
E 追加の界面活性剤
ならびに水を混合して分散物を形成するステップと、
II 該分散物をせん断してエマルジョンを形成するステップと、
III 追加の水および代替成分を混合するステップと
を備える方法により随意的に調製することができる。あるいはまた、トリシロキサン界面活性剤をシリコーンエマルジョンにいずれかの時点、例えばステップIII中に添加することができる。これは、すでに調製したエマルジョンを用いる場合に便利である。
【0059】
ステップ(I)における分散物の形成は、成分A)、B)、C)およびD)を水と混合することを含む。これら成分の添加順は重要ではないが、通常成分A)、B)、C)およびD)を混合した後、水を混合物に添加して分散物を形成する。あるいはまた、乳化剤D)のいくらかまたはすべてを、他の成分と混合する前にいくらかの水と混合することができる。各成分および水の使用量は、一般に最終エマルジョン組成物中に必要な総量である。通常、分散物は、粘着性材料の混合を行うのに当業界で既知の任意の方法により種々の成分を混合することにより形成される。混合は、バッチ、半連続または連続プロセスのいずれかとして行うことができる。従って、混合はチェンジカン(change-can)ミキサー、二重惑星型ミキサー、円錐スクリューミキサー、リボンブレンダー、ダブルアームまたはシグマブレードミキサーを含むバッチ混合装置により中/低せん断で行なうことができる。連続ミキサー/コンパウンダーの具体例としては、Krupp Werner & Pfleiderer Corp(ニュージャージー州ラムゼイ)、およびLeistritz(ニュージャージー州)より製造されるもののようなシングルスクリュー、ツインスクリュー、およびマルチスクリュー押出機、共回転押出機;ツインスクリュー逆回転押出機、二段階押出機、ツインローター連続ミキサー、動的もしくは静的ミキサーまたはこれら装置の組み合わせが挙げられる。さらに、混合はローターステーター、コロイドミル、ホモジナイザーおよびソノレーターのような乳化装置を用いて行うことができる。
【0060】
分散物の形成をもたらす混合を行う温度および圧力は重要ではないが、通常大気温度および圧力で行う。一般に、混合物の温度が粘着性物質のせん断に伴う機械的エネルギーのため混合処理中に上昇する。従って、低せん断速度が温度上昇をもたらしにくい。通常、温度を60℃未満に制御して、不所望な副反応を最小化する。
【0061】
本発明の方法におけるステップIIは、ステップIから得た分散物をせん断してエマルジョンを形成することを含む。せん断は、既知の技術ならびにローターステーター、コロイドミル、ホモジナイザーおよびソノレーターのような装置により行うことができる。エマルジョンの形成は、あらゆる既知の粒径測定技術により確認することができる。一般に、ステップIIで形成したエマルジョンの平均粒径は、5マイクロメーター未満、あるいは2マイクロメーター未満である。
【0062】
ステップ(II)でエマルジョンを形成すると、次に必要に応じて成分(E)をエマルジョンに混合する。ステップ(III)で用いる混合技術は重要ではない。一般に、単純な撹拌技術が成分(E)およびステップ(II)のエマルジョンを混合するのに十分である。あるいはまた、混合がエマルジョンの安定性に悪影響を及ぼさないという条件で、上述したような混合技術のいずれかを用いることができる。
【実施例】
【0063】
これらの実施例は本発明を当業者に説明することを意図しており、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。すべての測定および実験は、とくに指示のない限り、23℃で行った。すべての部はとくに指示のない限り質量部である。
【0064】
(実施例1)
A.水性シリコーンエマルジョンの調製
ビーカー内で、40部のn−オクチルトリエトキシシランと、2部の平均7個のエチレンオキシ(EO)単位を有するトリシロキサン界面活性剤と、58部の脱イオン水とをIKA攪拌機(プロペラ400rpm、300秒)を用いて予混合し、次いでUltraturax(登録商標)ミキサー(T25ベーシックIKA Labortechnick−Janke & Kunkel Speed 13 500 RPM)で120秒間乳化した。
【0065】
生成したエマルジョンは、40%の活性分を含有し、Mastersizer(Malvern Instruments Ltd)により体積モードで測定して50パーセンタイルで2.7マイクロメーター、90パーセンタイルで5.0マイクロメーターの粒径を有する乳白色だった。
【0066】
B.水性シリコーンエマルジョンの調製
ビーカー内で、20部のn−オクチルトリエトキシシランおよび40mPa・sの粘度を有する20部のシラノール末端ポリジメチルシロキサンの混合物に、2部の平均7個のエチレンオキシ(EO)単位を有するトリシロキサン界面活性剤および58部の脱イオン水を添加し、IKA攪拌機(プロペラ400rpm、300秒)で予混合し、次いでUltraturax(登録商標)ミキサーで120秒間乳化した。
【0067】
生成したエマルジョンは、40%の活性分(活性分はエマルジョン中の撥水性成分(II)の質量%である)を含有し、Mastersizer(Malvern Instruments Ltd)により体積モードで測定して50パーセンタイルで2.3マイクロメーター、90パーセンタイルで5.1マイクロメーターの粒径を有する乳白色だった。
【0068】
C.撥水剤エマルジョンのモルタルおよびコンクリートに対する性能試験
実施例1aおよびbのエマルジョンを脱イオン水での希釈により10%活性分まで希釈し、ブラッシング(単飽和コート)により乾燥レンガおよびコンクリートブロックに塗布した。
【0069】
接触角(I.T.concepts Trackerを用いる)およびRilem管(Rilem試験第II.4号に従う水平型目盛り付きガラス管)での吸水量を室温で7日保存後に試験した。得られた結果を以下の表1に示す。
【0070】
【表1】

未処理基材の24時間での吸水量の値は、レンガおよびコンクリートに対し>4mlだった。
【0071】
かかる結果は、単一界面活性剤として平均7個のEO単位を有するトリシロキサンで調製したシリコーン撥水剤が中性(レンガ)およびアルカリ性(コンクリート)基材に対し効率的な撥水剤であることを示した。
【0072】
(実施例2)
シリコーンまたは有機油での表面の疎水化(前処理基材の調製)
以下の表面処理をレンガおよびコンクリートに対し行った。
a) ホワイトスピリット中で希釈した5%オリーブ油の溶液での処理(ブラッシングによる、単飽和コート)
b) ホワイトスピリット中で希釈した3%の市販のシリコーン撥水剤(Dow Corning(登録商標)Z−6689)の溶液での処理(ブラッシングによる、単飽和コート)
c) 水中で希釈した0.5%カリウムメチルシリコネートの溶液での処理(ブラッシングによる、単飽和コート)
【0073】
(実施例3)
トリシロキサン界面活性剤含有撥水剤での表面の疎水化に対する接触角
アルコキシシラン、非イオン性乳化剤およびメチル水素ポリシロキサンを含有する市販の水性シリコーン撥水剤(Dow Corning(登録商標)520撥水剤)に、平均7個のEO単位を有するトリシロキサン界面活性剤を種々の量で添加し、添加剤を含有しない製品と比較した。10%活性成分をすべての測定に用いた。接触角は、実施例2に記載した基材に対し30、60および180秒後に測定した。
【0074】
【表2】

【0075】
実施例3による組成物により得た低接触角は、トリシロキサン界面活性剤の添加が疎水化剤で前処理した基材に対し水性製品の湿潤性を大幅に向上させることができることを示した。
【0076】
(実施例4)
水性シリコーン撥水剤の浸透深さ
浸透深さは、基材を破壊し、水性染料を新しい表面に塗布することにより測定した。撥水剤組成物で予め処理していない基材の部分を着色し、次いで撥水剤処理の浸透深さ(DOP)を定規(mmで読む)で測定した。
【0077】
2つの市販の水性シリコーン撥水剤:製品1(Dow Corning(登録商標)520撥水剤)およびシリコーン樹脂、アルコキシシラン、非イオン性乳化剤およびジメチルシロキサンを含有する製品2(Dow Corning(登録商標)IE−6683)を用いた。平均7個のEO単位を有するトリシロキサン界面活性剤を種々の量で添加し、添加剤を含有しない製品と比較した。基材をブラッシング(単飽和コート)により処理し、10%活性成分をすべての測定に用いた。
【0078】
【表3】

【0079】
表3は、トリシロキサン界面活性剤の添加が浸透深さを増加させたことを示す。増加値は、通常処理がより耐久性であることを意味する。
【0080】
【表4】

【0081】
結果は、過去にすでに処理した基材を処理する場合に浸透深さが大幅に向上されたことを示す。
【0082】
比較として、新しいコンクリート基材を製品1および製品2で処理した。DOPは0.5mmだった。
【0083】
従って、表4は、本発明に係る組成物で達したDOPが新しい基材、すなわち撥水剤組成物で前に処理していない基材に対するものより非常に高かったことを示す。
【0084】
(実施例5)
水性シリコーン撥水剤の吸水量
吸水量を上記のRILEM管で測定した。2つの市販の水性シリコーン撥水剤を表面処理(ブラッシング、単飽和コート)に用いた。製品1(Dow Corning(登録商標)520)はアルコキシシラン、非イオン性乳化剤およびメチル水素ポリシロキサンを含有し、製品2(Dow Corning(登録商標)6683)はシリコーン樹脂、アルコキシシラン、非イオン性乳化剤およびジメチルシロキサンを含有する。平均7個のEO単位を有するトリシロキサン界面活性剤(表5および6では添加剤と呼ぶ)を種々の量で添加し、添加剤を含有しない製品と比較した。10%活性成分をすべての測定に用いた。
【0085】
【表5】

【0086】
【表6】

【0087】
結果は、過去にすでに処理したコンクリートを処理する場合、吸水量を大幅に向上することができることを示す。製品2について、いくつかの結果は前に処理していない基材(製品2でのみ処理したコンクリートについて24時間で1.4mlの吸水量)についてよりさらに良好である。
【0088】
(実施例6)
水性シリコーン撥水剤の吸水量
実施例1のエマルジョンを用いて、実施例2に記載したような基材を処理し、吸水量をRILEM管で測定した。処理はブラシ(単飽和コート)により行い、10%活性成分をすべての測定に用いた。
【0089】
【表7】

【0090】
【表8】

【0091】
結果は、平均7個のEO単位を有し、追加の乳化剤を含有しないトリシロキサン界面活性剤で形成される実施例1のシリコーン撥水剤が、疎水化剤で前処理したコンクリートに対し非常に効率的だったことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
I 水と、
II シリコーン樹脂、アルコキシシランまたはポリシロキサンである少なくとも1つの撥水性ケイ素含有化合物と、
III アルキル部分が1〜6個の炭素原子を含有する(i)アルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基および(ii)アルキルシロキサン基を含有するシロキサン界面活性剤と、
IV 任意で乳化剤と
を混合することにより形成した混合物を含有することを特徴とする基材の撥水性を向上させる組成物。
【請求項2】
2つ以上の撥水性ケイ素含有化合物(II)が存在する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記撥水性ケイ素含有化合物(II)がMQまたはRが水素、アリールもしくは1〜12個の炭素原子を有するアルキルであるRSiO3/2樹脂であるシリコーン樹脂化合物を含有する請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記撥水性ケイ素含有化合物(II)がアルキル鎖中に1〜12個の炭素原子およびアルコキシ鎖中に1〜6個の炭素を有するアルキルトリアルコキシシランであるアルコキシシラン化合物を含有する請求項1、2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記撥水性ケイ素含有化合物(II)が有機基1個当たり1〜12個の炭素原子を有するジオルガノシロキサンであるポリシロキサン化合物を含有する前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記シロキサン界面活性剤(III)が2〜8個のケイ素原子を含有する前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記シロキサン界面活性剤(III)が1〜3個のアルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基(i)および1〜4個のアルキルシロキサン基(ii)を含有する前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記シロキサン界面活性剤(III)が1個のアルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基(i)および2個のメチルおよび/またはエチルシロキサン基(ii)を含有するトリシロキサンである前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記アルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基(ii)における平均エチレンオキシ(EO)単位数が5〜12である前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記アルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基(ii)の末端単位がアセトキシ、ヒドロキシルまたはメトキシ単位である前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記シロキサン界面活性剤(III)が、アルキル部がメチルである2つの基(ii)ならびに平均7個のエチレンオキシ(EO)単位およびヒドロキシル末端単位を有する1つの基(i)を含有するメチルトリシロキサンである前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が乳化されている前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記シロキサン界面活性剤(III)対撥水性化合物(II)の質量比が1:100〜10:100からなる前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
I 水と、
II シリコーン樹脂、アルコキシシランまたはポリシロキサンである少なくとも1つの撥水性ケイ素含有化合物と、
III アルキル部分が1〜6個の炭素原子を含有する(i)アルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基および(ii)アルキルシロキサン基を含有するシロキサン界面活性剤と、
IV 任意で乳化剤と
を混合することにより形成した混合物を含有する組成物で基材を処理することにより基材の撥水性を向上させる方法。
【請求項15】
前記基材がコンクリート、メーソンリー、スタッコ、天然もしくは人工石、セラミック、テラコッタレンガ、石膏板、繊維セメント板または他のセメント含有製品、木材粒子板、木材プラスチック複合体、配向ストランド板もしくは木材である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物を疎水化剤で前処理した基材の表面に塗布するか、または基材の製造前もしくは製造中に出発物質に含める請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
1 I 水と、
II シリコーン樹脂、アルコキシシランまたはポリシロキサンである少なくとも1つの撥水性ケイ素含有化合物と、
III アルキル部分が1〜6個の炭素原子を含有する(i)アルキルポリ(エチレンオキシ)シロキサン基および(ii)アルキルシロキサン基を含有するシロキサン界面活性剤と、
IV 任意で乳化剤とを混合するステップと、
2 分散物をせん断してエマルジョンを形成するステップと、
3 追加の水および任意で追加の成分を混合するステップとによる撥水剤エマルジョンの製造方法。
【請求項18】
組成物を仕上基材に塗布することによるか、または組成物を基材の製造中に含めることにより基材の撥水性を向上させる請求項1に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2012−506469(P2012−506469A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532613(P2011−532613)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063752
【国際公開番号】WO2010/046370
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】