説明

ケモカインレセプターアンタゴニストの固体形態およびその使用方法

【課題】ケモカイン受容体アンタゴニストとしての活性、及び特定の医薬製剤において使用するのに非常に好ましい特性を有する薬理活性化合物の諸形態を提供すること。
【解決手段】薬学的用途において使用される場合がある(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩が開示される。又、特定の単結晶形態及び単結晶形態の組み合わせを含む結晶性クエン酸塩についても考察される。結晶性塩を形成するための混合物についても考察される。更に、クエン酸塩及びその結晶形態を生成し、異常な白血球増加、活性化、又は増加及び活性化と関連する疾患の治療においてこのようなクエン酸塩及びその結晶形態を使用する方法についても考察される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権情報)
本特許出願は、米国仮特許出願第60/637,213号(2004年12月17日出願、発明の名称「Solid Forms of Chemokine Receptor Antagonist and Methods of Use Thereof」、その全体の内容は、本明細書中で参考として援用される)に対する米国特許法第119条(e)の下の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
医薬組成物の大規模な製造は、化学者や化学技師に多くの課題をもたらしている。これらの課題の多くは、大量の試薬の取扱いや大規模反応の制御に関するものであるが、最終生成物の取扱いは、最終的な活性生成物の性質に関連した特別な課題をもたらす。生成物は高い収率で調製され、安定している上、すぐに単離が行えることが必要なだけでなく、生成物は、最終的に使用されるようなタイプの医薬組成物に適した性質を有することが必要である。合成、単離、大量貯蔵、製剤及び長期間の製剤を含む、製造プロセスの各手順の間、医薬調剤の活性成分の安定性を考慮しなければならない。これら各手順は、温度及び湿度の種々の環境条件によって影響される場合がある。
【0003】
医薬組成物の調製に使用される医薬活性物質は、可能な限り純粋でなければならず、長期間の貯蔵におけるその安定性が種々の環境条件下で保証されなければならない。このことは、医薬組成物における意図されない分解産物の出現を防止する上で絶対的に不可欠である。これらの分解産物は潜在的な毒性を有するか、又は単に組成物の効力を減ずる場合がある。
【0004】
大量の医薬化合物の製造における一番の関心事は、活性物質が、一貫した加工特性と製剤品質を保証するために安定した結晶形態を有さなければならないことである。不安定な結晶形態を使用すると、製造及び/又は貯蔵の間に結晶形態が変化し、品質管理の問題や製剤の異常をもたらす場合がある。このような変化は、製造プロセスの再現性に影響を及ぼし、ひいては医薬組成物の製剤に課される高い品質と厳しい要件を満足しない最終製剤をもたらす可能性がある。この点については、物理的及び化学的安定性を向上させることができる固体状態の医薬組成物の変化によって、同じ薬物のより不安定な形態を上回る有意な利点がもたらされることに留意しなければならない。
【0005】
本発明は、ケモカイン受容体アンタゴニストとしての活性、及び特定の医薬製剤において使用するのに非常に好ましい特性を有する薬理活性化合物の諸形態に関する。
【背景技術】
【0006】
(発明の背景)
化学誘因物質サイトカイン、化学誘因物質サイトカイン又はケモカインは、多種多様の細胞によって遊離され、T及びBリンパ球、好酸球、好塩基球、及び好中球等の細胞の補充及び活性化を促進する前炎症性メディエーターのファミリーである(非特許文献1)。ケモカインは、一次構造において関連性があり、ジスルフィド結合を形成する4個の保存されたシステインを含む。ケモカインファミリーには、最初の2個の保存されたシステインが間にある残基によって分離されているか、又は隣接している、C−X−Cケモカイン(α−ケモカイン)及びC−Cケモカイン(β−ケモカイン)が含まれる(非特許文献2)。
【0007】
ケモカインは、G−タンパク質結合7回膜貫通ドメインタンパク質のファミリーに属する(非特許文献3)、「ケモカイン受容体」と呼ばれる特異的細胞表面受容体に結合することで、生物学的活性を発揮する。それらの同族のリガンドを結合すると、ケモカイン受容体は、特異的な白血球サブセットの発生及び輸送に重要なシグナルを形質導入する(非特許文献4)。ケモカイン及びそれらの同族の受容体は、炎症、アレルギー疾患、障害、及び病態、並びにリウマチ様関節炎及びアテローム性動脈硬化症等の自己免疫病理の重要なメディエーターとして関係している(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;及び非特許文献8を参照)。ケモカイン及びそれらの同族の受容体は又、癌及び溶骨性障害の発生と関連している(Leukemia 2003, 17, 203;J. Bone Miner. Res. 2002, 19, 2065;J. Cell. Biochem. 2002,87,386;J. Cell. Physiol. 2000, 183, 196;Exp. Hematol. 2005, 33, 272,
J. Clin. Invest. 2001, 108, 1833;Cancer
2003, 97, 813;Blood 2003, 102, 311を参照)。
【0008】
従って、ケモカインとそれらの同族の受容体との相互作用を遮断する薬剤は、炎症、アレルギー及び自己免疫疾患、障害又は病態の治療に有用であり、白血球又はリンパ球の異常な活性によって引き起こされる癌及び溶骨性傷害の治療にも有用である。
【0009】
何れも「ケモカイン受容体アンタゴニスト及びそれらの使用方法」という題名が付いた、特許文献1及び特許文献2は、ケモカイン受容体CCR1に対する阻害効果を示す化合物を開示している。これらの出願は更に、これらの化合物、及びこれらの化合物を含む医薬組成物、並びにリウマチ様関節炎及び多発性硬化症を含むがこれらに限定されない、異常な白血球増加及び/又は活性化に関連する疾患、障害又は病態の予防方法及び治療方法も開示している。
【0010】
又、以下の(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オール(II)も詳細に開示されている:
【0011】
【化2】

この化合物の遊離塩基の非晶質形態の構造及び合成は、特許文献3及び特許文献4の実施例に規定されており、多種多様の塩の概要のみが開示されている。これらの出願は、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オール(II)の特異的な塩又は結晶形態を開示していない。
化合物を溶液又はスラリーから結晶化すると、「多形性」と呼ばれる特性である種々の空間格子配列を有して結晶化される場合がある。この結晶形態のそれぞれは「多形性」である。所定の物質の多形は同じ化学組成を有するものの、これらは、溶解性及び分離、真密度、融点、結晶形、圧密挙動、流れ特性、及び/又は固体安定性等の一つ以上の物性に関して、互いに異なる場合がある。
前記に概説する通り、薬剤の多形性挙動は、薬学及び薬理学において極めて重要である可能性がある。多形によって示される物性の相違は、(製剤及び製品の製造において重要となる)貯蔵安定性、圧縮率及び密度の他、(バイオアベイラビリティーの測定において重要な因子である)溶解速度等の実用的なパラメータに影響を及ぼす。安定性の相違は、化学的反応性(例えば、剤形が同じように多形であっても、変色の速度が異なるような、酸化の差)、又は機械的変化(例えば、貯蔵時に錠剤が砕け、動力学的に有利な多形が熱力学的に更に安定した多形に変化する)、又はその両方(例えば、任意の多形の錠剤が高湿度でより分解しやすくなる)の変化に起因する可能性がある。加えて、結晶の物性は加工に重要であり、例えば、任意の多形が、固体形態を凝集して、固体の取扱いにくさを増大させる溶媒和物を形成する可能性が高くなったり、不純物をろ過及び洗浄しにくくなる可能性が高くなる(即ち、粒子形状及びサイズ分布が多形の間で異なる場合がある)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/01691555号明細書
【特許文献2】国際公開第03/04592号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/01691555号明細書
【特許文献4】国際公開第03/04592号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Luster,ら,New Eng. J. Med,1998年,第338巻,p.436
【非特許文献2】Baggiolini,M.およびDahinden,C. A.,Immunology Today,1994年,第15巻,p.127
【非特許文献3】Horuk,Trends Pharm. Sci.,1994年,第15巻,p.159
【非特許文献4】Baggiolini,ら,Nature,1994年,第15巻,p.365
【非特許文献5】Carter,Current Opinion in Chemical Biology,2002年,第6巻,p.510
【非特許文献6】Trivedi,ら,Ann. Reports Med. Chem.,2000年,第35巻,p.191
【非特許文献7】Saunders,ら,Drug Disc. Today,1999年,第4巻,p.80
【非特許文献8】Premack,ら,Nature Medicine,1996年,第2巻,p.1174
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
薬物製剤は、高い化学的及び物理的制特性を有することが望まれるが、このような製剤の既存の分子の新しい薬物形態(例えば、多形)を調製する予測可能な手段は存在しない。これらの新しい形態は、製造及び組成物の使用に共通した幅広い環境において物理的特性の一貫性をもたらすと思われる。本件において、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩、及びその結晶形態について記載する先行技術は存在しない。更に具体的には、大規模な製造、薬学製剤及び貯蔵に有用である予想外の特性を有する、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩、及びその結晶形態について記載する先行技術も存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(発明の要旨)
本発明は、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩、及びその結晶形態に関する。これらの形態は又、大規模な製造、医薬製剤及び貯蔵に有用である予想外の特性を有する。本発明は又、前記塩及びその結晶形態からなる医薬組成物;前記クエン酸塩及びその結晶形態の調製方法;並びに本明細書に記載される通りに、種々の疾患、障害又は病態を治療するためにこれらの塩及びそれらの結晶形態を使用する方法に関する。
本発明は、以下の図面及び詳細な説明を使用してより詳細に考察される。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩。
(項目2)
以下の構造式(III):
【化1】


を有する、項目1に記載のクエン酸塩。
(項目3)
前記クエン酸塩が実質的に結晶である、項目1に記載のクエン酸塩。
(項目4)
前記クエン酸塩が結晶形態Aである、項目3に記載のクエン酸塩。
(項目5)
前記クエン酸塩が結晶形態Bである、項目3に記載のクエン酸塩。
(項目6)
前記単結晶形態が、9.8、11.7、12.6、15.5、15.7、15.9、17.3、17.5、18.2、19.0及び19.7の2θ角度における少なくとも1個のX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、項目4に記載のクエン酸塩。
(項目7)
前記単結晶形態が、図1と実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、項目4に記載のクエン酸塩。
(項目8)
前記単結晶形態が、10.6、11.6、12.3、14.8、15.8、16.1、16.7、18.8、20.6、21.7及び24.5の2θ角度における少なくとも1個のX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、項目5に記載のクエン酸塩。
(項目9)
前記単結晶形態が、図6と実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、項目5に記載のクエン酸塩。
(項目10)
薬学的に許容される担体又は希釈剤;及び
(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を含む医薬組成物。
(項目11)
前記クエン酸塩が実質的に結晶である、項目10に記載の医薬組成物。
(項目12)
前記クエン酸塩が結晶形態Aである、項目11に記載の医薬組成物。
(項目13)
前記クエン酸塩が結晶形態Bである、項目11に記載の医薬組成物。
(項目14)
前記単結晶形態が、9.8、11.7、12.6、15.5、15.7、15.9、17.3、17.5、18.2、19.0及び19.7の2θ角度における少なくとも1個のX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、項目12に記載の医薬組成物。
(項目15)
前記単結晶形態が、図1と実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、項目12に記載の医薬組成物。
(項目16)
前記単結晶形態が、10.6、11.6、12.3、14.8、15.8、16.1、16.7、18.8、20.6、21.7及び24.5の2θ角度における少なくとも1個のX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、項目13に記載の医薬組成物。
(項目17)
前記単結晶形態が、図6と実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、項目13に記載の医薬組成物。
(項目18)
治療を必要とする対象に有効量の(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を投与することを含む、炎症性疾患、病態又は障害の治療方法。
(項目19)
前記クエン酸塩が実質的に結晶である、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記クエン酸塩が結晶形態Aである、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記クエン酸塩が結晶形態Bである、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記単結晶形態が、9.8、11.7、12.6、15.5、15.7、15.9、17.3、17.5、18.2、19.0及び19.7の2θ角度における少なくとも1個のX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記単結晶形態が、図1と実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記単結晶形態が、10.6、11.6、12.3、14.8、15.8、16.1、16.7、18.8、20.6、21.7及び24.5の2θ角度における少なくとも1個のX線粉末回折ピークによって特徴付けられる、項目21に記載の方法。
(項目25)
前記単結晶形態が、図6と実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、項目21に記載の方法。
(項目26)
前記疾患、病態又は障害がリウマチ様関接炎である、項目20又は21に記載の方法。
(項目27)
前記疾患、病態又は障害が多発性硬化症である、項目20又は21に記載の方法。
(項目28)
前記疾患、病態又は障害が慢性閉塞性肺疾患(COPD)である、項目20又は21に記載の方法。
(項目29)
(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールの結晶性クエン酸塩を調製するプロセスであって、
a)クエン酸を(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのアセトン溶液と混合して、該結晶性クエン酸塩を沈殿させる工程;及び
b)該結晶性クエン酸塩を単離する工程、
を含むプロセス。
(項目30)
混合する工程に、クエン酸と(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのアセトン溶液との混合物を30℃〜40℃の間の温度に維持することが含まれる、項目29に記載のプロセス。
(項目31)
30℃〜40℃の間の前記温度が少なくとも10分間維持される、項目30に記載のプロセス。
(項目32)
(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールの1等量につき、少なくとも1等量のクエン酸が使用される、項目29に記載のプロセス。
(項目33)
(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールの結晶性クエン酸塩を調製するプロセスであって、
a)クエン酸を(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのエタノール溶液と混合して、該結晶性クエン酸塩を沈殿させる工程;及び
b)該結晶性クエン酸塩を単離する工程、
を含むプロセス。
(項目34)
混合する工程に、形態Bのクエン酸塩結晶を使用した播種が含まれる、項目33に記載のプロセス。
(項目35)
混合する工程に、クエン酸と(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのエタノール溶液との混合物を18℃〜22℃の間の温度に維持することが含まれる、項目33に記載のプロセス。
(項目36)
18℃〜22℃の間の前記温度が少なくとも2時間維持される、項目35に記載のプロセス。
(項目37)
(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールの1等量につき、少なくとも1等量のクエン酸が使用される、項目33に記載のプロセス。
(項目38)
クエン酸;
(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オール;及び
結晶化媒体を含む、
(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を結晶化させるための混合物。
(項目39)
前記結晶化媒体が、エタノール;アセトン;メタノール;メチルエチルケトン;n−プロパノール;イソプロパノール;テトラヒドロフラン;トルエン;アセトニトリル;水;ヘプタン;メタノール及びヘプタンの混合物;メチルエチルケトン及び水の混合物;アセトニトリル及び水の混合物;イソプロパノール及び水の混合物;又はテトラヒドロフラン及び水の混合物である、項目38に記載の混合物。
(項目40)
前記結晶化媒体がアセトンである、項目38に記載の混合物。
(項目41)
前記結晶化媒体がエタノールである、項目38に記載の混合物。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態と矛盾することなく、CuKα放射線を使用して行った形態Aの試料の測定から得た、X線粉末回折パターンを示す。
【図2】本発明の実施形態と矛盾することなく、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して、−80℃から190℃まで10℃間隔の温度にて行った形態Aの試料の測定から得た、等温性X線粉末回折パターンを示す。
【図3】本発明の実施形態と矛盾することなく、5℃/分の加熱速度にて行った形態Aの試料の測定から得た、熱重量分析結果を示す。
【図4】本発明の実施形態と矛盾することなく、5℃/分の加熱速度にて行った形態Aの試料の測定から得た、示差走査熱量測定の結果を示す。
【図5】本発明の実施形態と矛盾することなく、25℃にて行った形態Aの試料の測定から得た、水吸着/脱離等温線の結果を示す。
【図6】本発明の実施形態と矛盾することなく、CuKα放射線を使用して行った、形態Bの試料の測定から得た、X線粉末回折パターンを示す。
【図7】本発明の実施形態と矛盾することなく、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して、−80℃から190℃まで10℃間隔にて行った形態Bの試料の測定から得た、X線粉末回折パターンを示す。
【図8】本発明の実施形態と矛盾することなく、5℃/分の加熱速度にて行った形態Bの試料の測定から得た、熱重量分析結果を示す。
【図9】本発明の実施形態と矛盾することなく、5℃/分の加熱速度にて行った形態Aの試料の測定から得た、示差走査熱量測定の結果を示す。
【図10】本発明の実施形態と矛盾することなく、25℃にて行った形態Bの試料の測定から得た、水吸着/脱離等温線の結果を示す。
【図11】本発明の実施形態と矛盾することなく、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して行った、形態Aの試料、及び形態A及びCを含む二つの試料の測定から得た、X線粉末回折パターンを示す。
【図12】本発明の実施形態と矛盾することなく、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して、室温から210℃まで10℃間隔の温度にて行った形態A及びCを含む試料の測定から得た、等温X線粉末回折パターンを示す。
【図13】本発明の実施形態と矛盾することなく、5℃/分の加熱速度にて行った形態A及びCを含む試料の測定から得た、熱重量分析結果を示す。
【図14】本発明の実施形態と矛盾することなく、5℃/分の加熱速度にて行った形態A及びCを含む試料の測定から得た、示差走査熱量測定結果を示す。
【図15】本発明の実施形態と矛盾することなく、25℃にて行った形態A及びCを含む試料の測定から得た、水吸着/脱離等温線の結果を示す。
【図16】本発明の実施形態と矛盾することなく、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して行った、形態Aの試料、並びに形態A及びCを含む試料、並びに形態A及びDを含む試料の測定から得た、X線粉末回折パターンを示す。
【図17】本発明の実施形態と矛盾することなく、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して、室温から210℃まで10℃間隔の温度にて行った形態A及びDを含む試料の測定から得た、等温X線粉末回折パターンを示す。
【図18】本発明の実施形態と矛盾することなく、5℃/分の加熱速度にて行った形態A及びDを含む試料の測定から得た、熱重量分析結果を示す。
【図19】本発明の実施形態と矛盾することなく、0.3℃/分の加熱速度にて行った形態A及びDを含む試料の測定から得た、示差走査熱量測定結果を示す。
【図20】本発明の実施形態と矛盾することなく、25℃にて行った形態A及びDを含む試料の測定から得た、水吸着/脱離等温線の結果を示す。
【図21】本発明の実施形態と矛盾することなく、CuKα放射線を使用して行った形態Eの試料の測定から得た、等温X線粉末回折パターンを示す。
【図22】本発明の実施形態と矛盾することなく、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して、室温から210℃まで10℃間隔の温度にて行った形態Eの試料の測定から得た、等温X線粉末回折パターンを示す。
【図23】本発明の実施形態と矛盾することなく、5℃/分の加熱速度にて行った形態Eの試料の測定から得た、熱重量分析結果を示す。
【図24】本発明の実施形態と矛盾することなく、5℃/分の加熱速度にて行った形態Eの試料の測定から得た、示差走査熱量測定結果を示す。
【図25】本発明の実施形態と矛盾することなく、25℃にて行った形態Eの試料の測定から得た、水吸着/脱離等温線の結果を示す。
【図26】本発明の実施形態と矛盾することなく、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して行った形態Eの試料の測定から得た、等温X線粉末回折パターンを示す。
【図27】本発明の実施形態と矛盾することなく、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して、室温から210℃まで10℃間隔の温度にて行った形態E、F及びGを含む試料の測定から得た、等温X線粉末回折パターンを示す。
【図28】本発明の実施形態と矛盾することなく、5℃/分の加熱速度にて行った形態E、F及びGを含む試料の測定から得た、熱重量分析結果を示す。
【図29】本発明の実施形態と矛盾することなく、5℃/分の加熱速度にて行った形態E、F及びGを含む試料の測定から得た、示差走査熱量測定結果を示す。
【図30】本発明の実施形態と矛盾することなく、25℃にて行った形態E、F及びGを含む試料の測定から得た、水吸着/脱離等温線の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
前述の通り、本発明の説明全体を通して、特に指示がない限り、以下の用語は以下の意味を有するものとして理解されるものとする。
【0018】
「クエン酸塩」とは、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を表わすものとして意図され、化学式IIIの構造を有する。
【0019】
本明細書で使用される「結晶」とは、極めて規則的な化学構造を有する固体を指す。特に、結晶性クエン酸塩は、クエン酸塩の一つ以上の単結晶形態として生成される場合がある。本出願において「単結晶形態」及び「多形」という用語は同意語であり、該用語は異なる特性(例えば、異なるXRPDパターン、異なるDSCスキャン結果)を有する結晶を区別するものである。疑似多形は通常、物質の異なる溶媒和物であるため、それらの特性は互いに異なる。従って、クエン酸塩のそれぞれ別個の多形及び疑似多形は、本明細書において別個の単結晶形態であると考えられている。
【0020】
「実質的に結晶」とは、少なくとも特定の重量%が結晶であるクエン酸塩を指す。特定の重量%は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、又は10%〜100%の間の任意の割合である。一部の実施形態において、「実質的に結晶」とは、少なくとも70%が結晶であるクエン酸塩を指す。他の実施形態において、「実質的に結晶」とは、少なくとも90%結晶であるクエン酸塩を指す。
【0021】
「形態A」とは、特徴的なデータを使用して特徴付けられる場合がある、化学式IIIの化合物の結晶形態を表わすものとして意図される。代表的なデータは、図1、2、3、4及び5、並びに表1及び2に示されている。
【0022】
「形態B」とは、特徴的なデータを使用して特徴付けられる場合がある、化学化学式IIIの化合物の結晶形態を表わすものとして意図される。代表的なデータは、図6、7、8、12及び13、並びに表3及び4に示されている。
【0023】
「溶媒和物又は溶媒和」という用語は、本発明の化合物を一つ以上の溶媒分子と物理的に結合することを意味する。この物理的結合には水素結合が含まれる。特定の実施形態において、溶媒和物は、例えば、一つ以上の溶媒分子が結晶性固体の結晶格子中に組み込まれる時に、単離することができる。「溶媒和物又は溶媒和」という用語は、溶液相の溶媒和物及び単離可能な溶媒和物の両方を包含する。代表的な溶媒和物には、例えば、水和物、エタノレート又はメタノレートが含まれる。
【0024】
「水和物」という用語は、溶媒分子が所定の化学両論的量で存在するHOである溶媒和物であり、これには、例えば、半水和物、一水和物、二水和物又は三水和物が含まれる場合がある。
【0025】
「混合物」という用語は、組み合わせ(例えば、液体又は液体/結晶)の相状態にかかわらず、混合物の組み合わされた要素を指すものとして使用される。
【0026】
「播種」という用語は、再結晶を開始するために結晶性物質を添加することを指すものとして使用される。
【0027】
「対象」とは、好ましくは鳥類又はヒト等のほ乳類であるが、獣医の治療を必要とする動物、例えば、家庭用動物(例えば、犬、猫等)、家畜(例えば、牛、羊、鶏、豚、馬等)及び実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモット等)であってもよい。
【0028】
クエン酸塩の「有効量」とは、異常な白血球増加及び/又は活性化に関連する疾患を有する対象においてケモカインが受容体に結合することによって媒介される、一つ以上のプロセスの阻害をもたらす量である。このようなプロセスの例には、白血球移動、インテグリン活性化、細胞内遊離カルシウム[Ca2+濃度の一時的上昇、炎症誘発性メディエーターの顆粒脱離が含まれる。或いは、クエン酸塩の「有効量」とは、異常な白血球増加及び/又は活性化に関連する疾患に関連する症状の予防又は軽減をもたらす等の、所望の治療的及び/又は予防的効果を達成するのに十分な量である。
【0029】
ケモカイン受容体は、ニューロン及び上皮細胞等のその他の細胞種類で発現できるため、本明細書で使用される「炎症誘発性細胞」には白血球が含まれるが、これに限定されない。
【0030】
一態様において、本発明は、化合物(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩に関する。従って、本発明は、以下の構造式(III)を有する化合物を提供する。
【0031】
【化3】

本明細書には、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩形態を説明する幅広い特徴情報が示される。しかし、このような特定の形態が所定の組成物中に存在することを当業者が判定するに当たって、このような全ての情報が必要であるとは限らないが、特定の形態の存在を確かめる上で十分であるとして当業者が認識する特徴情報の何れか一部を使用して(例えば、単一の特徴的なピークでさえ、このような特定の形態が存在することを当業者が認める上で十分な場合もある)、特定の形態の判定を達成できることを理解すべきである。
【0032】
一部の実施形態において、クエン酸塩は実質的に結晶である。結晶性クエン酸塩の非限定的な例には、クエン酸の単結晶形態(例えば、形態A);異なる単結晶形態の混合物(例えば、形態A及びBの混合物、形態A、C、及びDの任意の組み合わせの混合物、形態B、E、F、G及びHの任意の組み合わせの混合物);一つ以上の指定の単結晶形態を除いた一つ以上の単結晶形態の組み合わせ(例えば、形態Aを除いたクエン酸塩の結晶形態の混合物)が含まれる。本発明の一実施形態は又、クエン酸塩の特定の重量%から一つ以上の指定の単結晶形態を除いたクエン酸塩に関する(例えば、クエン酸塩は、形態A以外は少なくとも90重量%である)。特定の重量%は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%又は10%〜100%の間の任意の割合となる場合がある。
【0033】
或いは、本発明の実施形態は、結晶性クエン酸塩の少なくとも特定の重量%が、特定の単結晶形態、特定の単結晶形態の組み合わせであるか、又は一つ以上の結晶形態を除いたものである、結晶性クエン酸塩に関する。特定の重量%は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、又は10%〜100%の間の割合となる場合がある。
【0034】
本発明の他の実施形態は、単結晶形態、又は実質的に指定の単結晶形態であるクエン酸塩に関する。単結晶形態は、クエン酸塩の特定の重量%となる場合がある。特定の重量%は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、又は10%〜100%の間の割合である。クエン酸塩の特定の重量%が単結晶形態である場合、クエン酸塩の残りの部分は、クエン酸塩の非晶質形態と、単結晶形態を除いたクエン酸塩の一つ以上の結晶形態の任意の組み合わせとなる。
【0035】
単結晶形態の例には、クエン酸塩の形態A、B、C、D、E、F、G及びH、及び本明細書で考察される通り、一つ以上の特性によって特徴付けられる単結晶形態の記述が含まれる。単結晶形態を特徴付ける記述は又、結晶性クエン酸塩に存在する場合がある異なる形態の混合物を記載するために使用される場合もある。
【0036】
(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩の特定の多形についての以下の記述において、本発明の実施形態は、クエン酸塩の特定の結晶「形態」(例えば、形態B)に関して記述される場合がある。しかし、クエン酸塩の特定の結晶形態は、特定の「形態」に関連しているかにかかわらず、本明細書に記載されるような一つ以上の多形の特性によっても特徴付けられる場合がある。
【0037】
(形態A)
本発明の特定の実施形態は、形態Aを有する(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩の単結晶形態に関する。本発明の特定の一実施形態において、クエン酸塩の単結晶形態は、CuKα1放射線を使用して生成される、図1と実質的に同じX線粉末回折(XRPD)パターンによって特徴付けられる。クエン酸塩の単結晶形態は又、表1に記載されるような図1のパターンに一致するプロフィールに由来する線によっても特徴付けられる場合がある。
【0038】
【表1−1】

【0039】
【表1−2】

【0040】
【表1−3】

【0041】
【表1−4】

(表1:図1のXRPDパターンの指標)
クエン酸塩の単結晶形態は又、XRPDパターンの一つ以上のピークによって特徴付けられる場合がある。例えば、本発明の一実施形態は、図1のXRPDパターンの主要なピークに対応する少なくとも一本の線を使用した、クエン酸塩の単結晶形態の特性を示す。主要なピークは、図1においてA〜Mで示される。表1の対応する2θ位置によって確認される主要なピークは、5.8、9.8、11.7、12.6、15.5、15.7、15.9、17.3、17.5、17.8、18.2、19.0及び19.7である。2θ位置の誤差は通常±0.1以内である。単結晶形態を特徴付けるその他の例では、記載された主要なピークの任意の数値(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13)を利用するか、又は一つ以上の他の多形(例えば、前記の主要なピークの1、2、3、4、5、6、7又はそれ以上を使用するが、形態Bのピークと重複するピークを除外する)に関連するピークと重複しない、主要なピークのサブセットを利用する。本発明の他の特定の実施形態において、クエン酸の単結晶形態は、表2に示される一つ以上の算出された格子パラメータによって特徴付けられる。算出された格子パラメータは、対応するXRPD測定の解析に基づく。解析の結果から、結晶形態は又、三斜晶系のP1(Z=1及びZ’=2)になるようにも特徴付けられる。
【0042】
【表2】

(表2:形態AのXRPDスキャンから得た格子パラメータ)
本発明の別の特定の実施形態において、クエン酸塩の単結晶形態は、温度されたX線粉末回折により観察される通り、150℃から160℃の範囲の安定性変化を有することによって特徴付けられる。図2には、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して、−80℃〜190℃まで10℃間隔の温度で行った形態Aの試料の一連のXRPDスキャンの結果を示す。−80℃〜150℃のXRPDのグラフは、一般的な熱膨張を除き、温度変化に伴う明らかな変化を示していないことに気付く。150℃の測定値はスキャン210によって図2に示されている。しかし、150℃以上になると、徐々に高くなる温度におけるスキャンは、150℃から160℃の間で安定した結晶形態から変化するのに対応して、連続した進化を示す。
【0043】
本発明の別の実施形態において、形態Aは、温度制御されたX線粉末回折で観察される通り、170℃以上での分解/融解によって特徴付けられる。図2において、180℃及び190℃(それぞれスキャン220、230によって示される)における測定値は、実質的に構造上の特徴を有しておらず、分解/融解された結晶性クエン酸塩に対応する。
【0044】
本発明の他の実施形態において、形態Aは又、TGA測定によっても特徴付けられる。図3に示す通り、グラフ310は、温度の関数となる試料315の重量に対応するのに対して、グラフ320は、温度の関数となる重量損失325の誘導速度に対応し、測定は5℃/分の温度変化の一定速度で実施された。この多形は無水であり、図3に示す通り、室温〜約100℃で約0.23重量%と重量損失311が極めて少ない。該多形は又、重量損失曲線320の誘導速度から補間される326のように、約164℃から開始する約27.5重量%の重量損失に対応する、重量損失変化312によっても特徴付けられる。最大重量損失327に対応する、この重量損失変化312の183℃における変曲点は又、この重量損失変化も特徴付ける。本明細書の全TGAスキャンにおける全温度の正確性は、指定の温度の±3℃以内である。
【0045】
形態Aの試料のDSC測定は、本発明の実施形態において、クエン酸塩の単結晶形態を特徴付けるために使用される場合がある。図4には、5℃/分の加熱速度で行われた形態Aの試料のDSC測定から得た結果を示す。曲線410は、温度関数として試料への熱流量を示す。本発明の特定の実施形態は、図4において、曲線410の吸熱変化411、169℃から開始するように補間された変化412により、形態Aを特徴付ける。変化の間の熱損失413の最高速度は176℃で生じ、該温度はTmaxと命名され、又この変化を特徴付ける。吸熱変化は、結晶試料の融解/分解に対応する。本明細書のこのDSCスキャンにおける全温度の正確性は、指定の温度の±3℃以内である。
【0046】
1℃/分の加熱速度で行った形態Aの試料のDSC測定は又、本発明の実施形態に従って、クエン酸塩の単結晶形態を特徴付けるために使用される場合もある。このような測定において、DSCスキャンは、164℃から開始するように補間された吸熱変化により特徴付けられ、167℃であるTmaxも又、吸熱変化を特徴付ける役割を果たす。
【0047】
本発明の特定の実施形態は、水吸着/脱離サイクリングの結果を表す形態Aの特徴付けを使用する。図5には、25℃で行った形態Aの試料の二つの連続した水吸着/脱離サイクリングの結果を示す。曲線は、相対湿度の関数となる、乾燥結晶基準に基づく試料の質量変化率を示す。
【0048】
重複した曲線は、吸着現象の可逆性を示す。それに応じて、形態Aは又、サイクリングの前後に行ったXPRD測定が試料の構造的変化を示さないという観察からも特徴付けられる。
【0049】
本発明の一実施形態において、形態Aは、図5に示す通り、相対湿度が0%〜90%の相対湿度の間で変化するにつれて、質量が約1.9%変化するとして特徴付けられる。この質量変化率は、±0.1%以内であることが知られている。或いは、この実施形態は、0%〜90%の範囲の相対湿度にわたり、無水結晶の1分子当たり約0.8モルの水の変化によって特徴付けられる場合がある。
【0050】
本発明の実施形態は又、室温で97.5%の相対湿度に1週間さらした時に結晶が変化しないことを示すXRPD測定から形態Aを特徴付ける。
【0051】
(形態B)
形態Bは、本発明の特定の実施形態に一致した組成物におけるクエン酸塩の単結晶形態である。本発明の特定の一実施形態は、図6に示されるのと実質的に同じXRPDパターンを有する形態Bに関する。CuKα放射線は、図6のパターンを生成するために使用される。形態Bは又、表3に記載する通り、図6のXRPDパターンに一致するプロフィールに由来する線によっても特徴付けられる。
【0052】
【表3−1】

【0053】
【表3−2】

【0054】
【表3−3】

(表3:図6のXRPDパターンの指標)
形態Bは又、XRPDパターンにおける一つ以上のピークによっても特徴付けられる。例えば、本発明の一実施形態は、図6のXRPDパターンの主要なピークに対応する少なくとも1本の線を使用して、クエン酸塩の単結晶形態を特徴付ける。主要なピークは、図6においてA〜Mで示される。表3の対応する2θ位置によって確認される主要なピークは、5.8、10.6、11.6、12.3、14.8、15.8、16.1、16.7、17.8、18.8、20.6、21.7及び24.5である。2θ位置の誤差は通常±0.1以内である。他の例は、記載された主要なピークの任意の数値(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13)を利用するか、又は一つ以上の他の多形(例えば、前記の主要なピークの1、2、3、4、5、6、7又はそれ以上を使用するが、形態Aのピークと重複するピークを除外する)に関連するピークと重複しない、主要なピークのサブセットを利用する。本発明の他の実施形態において、形態Bは、XRPD測定で実施された解析から得られた、表4の算出された一つ以上の格子パラメータによって特徴付けられる。結晶形態は又、斜方晶のP2(Z=4及びZ’=2)になるように特徴付けられる。
【0055】
【表4】

(表4:形態BのXRPDスキャンから得た格子パラメータ)
本発明の特定の実施形態において、形態Bは、温度制御されたXRPD測定から検出される170℃から180℃の間の安定性変化によって特徴付けられる。図7には、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して行った試料の形態BのXRPD測定を示す。各スキャンは試料の等温測定を表わし、温度は−80℃〜190℃までの10℃間隔の範囲となる。170℃までは、各温度のXRPDスキャンが、一般的な熱誘導性膨脹による相互のわずかな変化しかを示さない(例えば、スキャン710が170℃の測定値に対応)。170℃を超えるスキャンは、安定した結晶形態からの変化に対応するスペクトルの特徴の変化を示す。
【0056】
本発明の別の実施形態において、形態Bは、等温XRPD測定から観察される180℃から190℃の分解/融解によって特徴付けられる。これは、実質的に特徴がなく、分解/融解された形態Bに対応する190℃(720により示す)の測定値によって示される。
【0057】
本発明の特定の実施形態において、形態Bは、図8におけるTGA測定の一つ以上の特性によって特徴付けられる。曲線810は、温度の関数として測定される形態Bの試料815の重量をグラフ化したものであり、対応する曲線820は、温度の関数となる重量損失825の誘導速度をグラフ化したものである。測定の加熱速度は5℃/分である。この多形は無水である。図8に示す通り、室温〜100℃まで重量の損失は検出されていない。単結晶は又、重量損失曲線820の誘導速度から補間される826のように、約180℃から開始する約27.5重量%の重量損失に対応する、重量損失変化811によっても特徴付けられる。重量損失827の最高速度に対応する、この重量損失変化811の192℃における変曲点は又、この重量損失変化も特徴付ける。
【0058】
本発明の別の特定の実施形態において、形態Bは、図12に示すDSC測定の一つ以上の特性によって特徴付けられる。5℃/分の加熱速度を使用して、曲線210は温度の関数として熱流量をグラフ化する。曲線1210の吸熱変化(又は熱流量変化)1211は、結晶形態を特徴付けるために使用される場合がある。この変化は、184℃から開始するように補間された1212と、Tmax=189℃における変化時の熱損失の最高速度によって特徴付けられる。この変化は、形態Bの試料の融解/分解に対応する。
【0059】
本発明の関連する実施形態において、形態Bは1℃/分の加熱速度で行ったDSC測定によって特徴付けられる。このような測定において、DSCスキャンは、174℃から開始するように補間された吸熱変化により特徴付けられ、179℃であるTmaxも又、吸熱変化を特徴付ける役割を果たす。
【0060】
形態Bを使用する、本発明の他の特定の実施形態は、図13のグラフに対応する、水吸着/脱離サイクリング実験からの多形を特徴付ける。図13には、25℃で行った形態Bの試料の二つの連続した水吸着/脱離サイクルの結果を示し、相対湿度の関数となる、乾燥結晶基準に基づく試料の質量変化率を示す。
【0061】
重複した曲線は、吸着現象の可逆性を示す。それに応じて、形態Bは又、サイクリング実験の前後に行ったXRPD測定が試料の構造変化を示さないという観察からも特徴付けられる。
【0062】
本発明の一実施形態において、形態Bは、図13に示す通り、相対湿度が0%〜90%相対湿度の間で変化するにつれて、質量が約0.9%変化として特徴付けられる。この質量変化率は、±0.1%以内であることが知られている。或いは、この実施形態は、0%〜90%の範囲の相対湿度にわたり、無水結晶1分子当たり約0.4モルの水の変化によって特徴付けられる場合がある。
【0063】
本発明の実施形態は又、室温で97.5%の相対湿度に1ヶ月間さらした時に結晶が構造を変化させないことを示すXRPD測定から形態Bを特徴付ける。加えて、形態Bは、洗浄の前後に行うXRPDによって観察されるような、水で洗浄した場合の安定性によっても特徴付けられる。このことは又、単結晶形態が、室温で100%の相対湿度に対しても安定であるとして特徴付けられることを示す。
【0064】
(形態C)
本発明の一実施形態において、クエン酸塩の単結晶形態は形態Cを有するとして特徴付けられる。特に、単結晶形態は、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して行った、図11に示すXRPD測定から得る特定の特徴によって特徴付けられる場合がある。図11は、スキャン1110、1120、1130の2θの関数となる相対的強度を比較したものである。スキャン1110及び1130は、形態A及び形態Cの結晶の混合物を含む試料の測定値に対応する。純粋な形態Aの試料に対応するスキャン1120は、クエン酸塩の形態Cに独特である、XRPDスキャン1110、1130中の特徴を区別するためのものである。クエン酸塩の形態Cに独特であると思われる少なくとも4個のピークは、図11のスキャン1110に*で示される。従って、クエン酸塩の単結晶形態は、これらの4個のピークの任意の数値によって特徴付けられる。
【0065】
本発明の別の実施形態において、形態Cは、温度に依存するXRPD測定で観察される通り、150℃から160℃の間の安定性の損失によって特徴付けられる。図12には、図11のスキャン1110の生成に使用したのと同じ試料に関して、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して行ったXRPD測定を示す。各曲線は、乾燥窒素環境下における試料の等温スキャンを表し、温度は室温〜210℃までの10℃間隔の範囲となる。温度が上昇するにつれて、2θから6.35のピークは強度を失い始め、連続スキャンは次第に形態Aに似てくる。T=160℃に対応するスキャン1220については、形態Cの特徴的なピークが実質的に存在せず、この時の試料は結晶形態Aに対応する。温度が更に上昇すると、最終的には結晶形態Aの分解/融解がもたらされる(例えば、T=180℃に対応するスキャン1230)。従って、XRPD測定は、150℃から160℃の間における形態Cから形態Aへの変換を示す。
【0066】
形態Cは又、図13に示すTGA測定の特定の特徴によっても特徴付けられる。曲線1310は、温度の関数となる、形態A及びCを含む試験試料1315の重量をグラフ化したものであり、対応する曲線1320は、温度の関数となる重量損失1325の誘導速度をグラフ化したものである。
【0067】
特に、形態Cは、157℃から開始するように補間され、162℃において重量損失1322の最高速度を有する重量損失1312によって特徴付けられる。この約8.22重量%という重量損失は、形態Cからの変換に関する。従って、形態Cは、TGAに従い、162℃の重量損失の最高速度を有し、約157℃から開始する形態Aに変換する、クエン酸塩の結晶として特徴付けられる。DSCと同時にTGAを使用して実施される対応する測定、並びに質量分析と連動するTGA測定により、これらの結果を確認する。
【0068】
重量損失1313は、それに続く形態Aの結晶の分解/融解に対応しており、21.9重量%という第三の重量損失は、183℃で最大の重量損失を有し、168℃から開始する。
【0069】
図14のDSC測定も又、形態Cを特徴付ける。5℃/分の加熱速度で行った形態A及びCを含む試料の試験から生成される曲線1410は、二つの強い吸熱変化を示す。特に、形態Cは、約161℃から開始するように補間され、Tmax=166℃を有する第一の吸熱変化1411によって特徴付けられる。これは、結晶形態Cから形態Aへの変換と関連する。約173℃から開始するように補間され、Tmax=178℃を有する第二の吸熱変化1412は、形態Aの融解/分解と関連する。
【0070】
或いは、形態Cは、20℃/分の加熱速度で行った試料のDSC測定によって特徴付けられる。特に、形態Cと形態Aの間の変化に対応する吸熱変化は、165℃の補間された開始温度及び171℃のTmaxによって特徴付けられる。
【0071】
クエン酸塩の単結晶形態は又、本発明の実施形態と矛盾することなく、25℃で行った形態A及びCを含む試料の二つの連続した水吸着/脱離に対応する、図15の曲線によっても特徴付けられる。グラフは、相対湿度の関数となる、乾燥結晶基準に基づく結晶の質量変化率を示す。形態Cは、曲線の重複によって示される通り、0%〜90%の幅広い相対湿度にわたって安定していることによって特徴付けられる(即ち、吸着現象は試料に対して可逆的)。吸着/脱離サイクルの前後に行った試料のXRPDスキャンでは、構造変化が示されていない(即ち、形態C結晶に対する形態Aの割合が一定していると判断される)。従って、XRPDスキャンは更に、試験した相対湿度にわたる形態Cの安定性を特徴付ける。
【0072】
(形態D)
本発明の一部の実施形態は、形態Dを含む結晶性クエン酸塩に関する。特に、形態Dは、図16に示す通り、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して行ったXRPD測定の特徴によって特徴付けられる。スキャン1610、1620、1630は、3個の試料の2θの関数となる相対的強度をグラフ化したものである。スキャン1610は、形態A及びDの試料に対応する。形態A及びCの組み合わせ、及び純粋な形態Aのそれぞれ対応する、スキャン1620、1630は、形態Dに対応するスキャン1610の独特な特徴を導き出すために使用される。一実施形態において、形態Dは、図16のスキャンに*で示されるピークの任意の数値によって特徴付けられる。
【0073】
形態Dは、温度制御されたXRPD測定によって観察される通り、40℃から50℃の間の安定性の損失によって特徴付けられる。図17には、乾燥窒素環境下において室温〜210℃まで10℃間隔の温度で行った形態A及びDを含む試料の等温XRPD測定を示す。40℃以下の温度を表すスキャンについては(T=40℃に対応する図17のスキャン1705)、形態Dの存在を示す、少なくとも1本の特徴的な線1770が存在する。T=50℃の代表的なスキャン1710は、線1770の減少を示す。T=60℃まで、スキャン1720は、形態Dの特徴的な線1770を示すことはない。この時点において、試料は、形態Aに類似するXRPDスキャンを有する。従って、形態Dは又、60℃以下の形態Aへの変化、及び50℃以下の形態Dの安定性の損失によって特徴付けられる。残りのスキャンは、形態Aを示す種々の温度における特徴を示す。
【0074】
形態Dは又、図18に示すTGA測定結果によって特徴付けられる。この測定は、形態A及びDを含む試料について5℃/分の加熱速度で実施される。特に、第一の重量損失変化1811は、温度制御されたXRPD測定に基づき形態Dの結晶が形態Aに相互変換する温度以上で開始するため、形態Dは無水であるとして特徴付けられる。むしろ、第一の重量損失は、試料の結晶からのTHFの損失に対応しており、この結果は、質量スペクトル分析と組み合わせた同時のDSC及びTGAによって確認される。第二の重量損失1812は、164℃の補間された開始温度で観察され、180℃において最大重量損失を有する。これは、形態AのTGAで観察される変化と同じである。従って、高温における結晶性形態Dの画分の形態Aへの変化の温度に依存したXRPR結果が確認された。
【0075】
DSC測定は又、図19に示す形態Dを特徴付けるためにも使用される。DSC測定は、クエン酸塩の形態A及びDの混合物について0.3℃/分の加熱速度で実施される。曲線1910は、約47℃で開始するように補間される吸熱変化1911を示し、Tmax=52℃を有しており、この変化は、結晶性形態Dの形態Aへの変換に対応し、従って、結晶形態を特徴付ける。この変化は又、統合された3.7J/gのエンタルピーによって特徴付けられる。約60℃で開始し、Tmax=77℃を有する吸熱変化1912は、TGA分析で考察されるようなTHFの損失の遊離に対応する。変化のエンタルピーは、18.1J/gとして統合される。約160℃で開始するように補間され、Tmax=166℃を有する吸熱変化1913は、形態Aの融解/分解に対応する。
【0076】
形態Dは、相対湿度の変化にさらした後の、安定性の損失、及び形態Aへの相互変換によって特徴付けられる。図20は、25℃で行った形態A及びDを含む試料の四つの水吸着/脱離サイクルに対応する曲線を示す。曲線は、相対湿度の関数となる、乾燥結晶基準に基づく結晶の質量変化率を示す。吸着は40%相対湿度から開始し、100%の相対湿度から0%の相対湿度の間を連続して循環する。ヒステリシス効果は各加湿サイクルで観察され、全4サイクル後の約14.3重量%の全体的な重量損失に対応する。
【0077】
サイクリングの前に行った後XRPD測定では、形態Dの存在がサイクリング後に消失するという構造変化が示され、形態Aの痕跡のみが残る。
【0078】
(形態E及びH)
形態Eは、本発明の実施形態と一致するクエン酸塩の単結晶形態である。本発明の特定の実施形態は、図21に示すのと実質的に同じXRPDパターンを有する単結晶形態に関する。XRPDパターンの生成には、CuKα放射線が使用される。表5に記載する通り、単結晶形態は又、XRPDパターンの最初の30本の線によっても特徴付けられる(d間隔値はオングストロームで示される)。
【0079】
【表5】

(表5:図21のXRPDパターンの指標)
形態Eは又、表5の一つ以上のピークによっても特徴付けられる。本発明の実施形態は、それらの全てを使用するオプションを含め、表5に記載される任意の数値を利用する。本発明の別の実施形態において、形態Eは、表6の算出された、一つ以上の格子パラメータによって特徴付けられる。結晶構造は又、斜方晶のP2(Z=2及びZ’=1)になるように特徴付けられる。
【0080】
【表6】

(表6:形態EのXRPDスキャンから得た格子パラメータ)
図22には、乾燥窒素環境下でCoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して行った形態Eの試料の等熱XRPD測定を示す。温度は室温〜190℃まで10℃間隔の範囲である。
【0081】
本発明の一実施形態において、形態Eは、50℃から60℃の間の安定性の損失によって特徴付けられる。40℃におけるXRPDに対応するスキャン2210では、特定の線(例えば、線2270)が消失を開始する一方で、他の線(例えば、線2280)は成長を開始することが示される。60℃になると(スキャン2220)、形態Eの構造的特徴は消失する。この時、形態Hと指定される、クエン酸塩の新しい結晶形態が存在する。120℃におけるスキャン2230では、結晶形態Hの不安定化が開始することが示される。140℃におけるスキャン2240では、試料が融解することが示される。
【0082】
従って、本発明の別の実施形態において、形態Hは、60℃から130℃の間の温度に対応する図22の各スキャン2290、及び/又は130℃から140℃の間の温度における安定性の損失によって特徴付けられる。これは又、形態Eと形態Hの間の変化によっても特徴付けられる。
【0083】
図23には、結晶形態Eの試料のTGA測定の結果を示す。曲線2310は、温度の関数となる試料の重量をグラフ化したものであり、対応する曲線2320は、温度の関数となる重量損失の誘導速度をグラフしたものである。
【0084】
形態Eは、52℃の補間された開始温度、64℃における重量変化の最高速度、及び/又はこの変化に伴う6.14重量%の重量損失の点から、重量損失変化2311によって特徴付けられる。形態Eは又、クエン酸塩の水和形態としても特徴付けられる。
【0085】
クエン酸塩の形態Hは、127℃の補間された開始温度、142℃における重量変化の最高速度、及び/又はこの変化に伴う20.10重量%の重量損失の点から、重量損失変化2312によって特徴付けられる。前述の通り、変化2311は又、形態Hも特徴付ける。
【0086】
図24には、5℃/分の加熱速度で行ったクエン酸塩の形態EのDSC測定の結果を示す。曲線2410は、温度の関数となる試料内への熱流量をグラフ化したものである。
【0087】
形態Eは、曲線2410の吸熱変化2411によって特徴付けられる。この変化2411は、45℃の補間された開始温度、Tmax=67℃における熱損失の最高速度によって特徴付けられ、統合されたエンタルピー変化は178.3J/gであると算出される。変化2411は、試料中の水の損失、及び形態Eから形態Hへの変換(即ち、形態Eにおける安定性の損失)に対応する。
【0088】
形態Hは、曲線2410の別の吸熱変化2412によって特徴付けられる。この変化2412は、Tmax=141℃における熱損失の最高速度と共に、131℃の補間された開始温度によって特徴付けられる。変化2412は、形態Hからの水の損失、及び結晶の分解/融解に対応する。変化2411は又、形態Hも特徴付ける。
【0089】
図25には、25℃で行った形態Eの試料の二つの連続した水吸着/脱離サイクルに対応する曲線を示す。相対湿度の関数となる乾燥結晶基準に基づく結晶の質量変化率を示す曲線は、互いに重複する。これは、吸着現象が可逆的であることを示す。これらの曲線は、相対湿度が0%〜10%に上昇するにつれて、試料が約5.13重量%得ることを示す。10%から20%の相対湿度の間に、試料の質量は約2.28重量%変化する。XRPD測定では、結晶は吸着/脱離サイクル前に形態Eに対応する構造を有し、サイクリング後に形態Hに対応する構造を有することが示されている。
【0090】
室温において、形態Eは10%〜90%相対湿度で安定している。10%相対湿度以下では、0%相対湿度下の実験で観察された通り、形態Eは完全に形態Hに変換する。吸着/脱離曲線によって示される通り、10%の相対湿度又はより高い相対湿度にさらすと、形態Hは可逆的に形態Eに変換する。
【0091】
(形態F及びG)
本発明の実施形態において、形態F及びGの混合物を含む結晶は、図26のXRPDパターンに*で示される線の任意の数値によって特徴付けられる。図26は、乾燥窒素雰囲気下、室温で、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用した、スキャン3110、3120の2θの関数となる相対的強度を表す。スキャン2610は、形態E、F及びGを含む試料に対応する。純粋な形態Eに対応するスキャン2620は、形態F及びGに独特であるスキャン2610のピークを区別するために使用される。
【0092】
図27は、10℃間隔での室温から210℃までの温度において、形態E、F及びGを含む試料について、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(λ=1.7929Å)放射線を使用して行った等温XRPD測定を記録する。各曲線は、乾燥窒素環境下での試料の等温スキャンを表す。
【0093】
形態Eは、50℃以上の温度における安定性の損失によって特徴付けられる。50℃における測定を表すスキャン2710は、形態Eに独特な線2711が50℃以上の温度で消失することを示す。110℃以上の温度のスキャンは、形態Fに独特な線(例えば、線2721)のが消失することを示す。従って、形態Fは、110℃以上の温度における、この形態の安定性の損失によって特徴付けられる(スキャン2720は、110℃における測定を示す)。形態Gは、130℃以上の温度における安定性の損失によって特徴付けられ、130℃以上の温度におけるスキャン2730、及び形態Gに対応する線が消失する(例えば、線2731)。
【0094】
温度が室温から130℃に上昇しながらの測定を通じて、形態Bに対応する線は、種々のスキャンにおいて成長を続ける。130℃以上の温度において、スキャンは、形態Bについての線と実質的に対応する。従って、これらのスキャンからのデータは、温度の上昇につれ、E、F及びGの各形態から形態Bへ変換することを示す。
【0095】
形態E、F及びGを含む試料におけるTGA測定を図28に示す。曲線2810は、温度の関数となる試料の重量を記録する。曲線2820は、5℃/分で加熱された試料の温度の関数となる重量損失の対応する誘導速度を記録する。四つの重量損失が図28で観察されており、関連するデータを表7に要約する。
【0096】
【表7】

(表7:形態E、F及びGを含む試料のTGA測定に関する重量変化データ)
形態Eは、形態Eから離れた変換に対応する、重量損失2811によって特徴付けられる。形態Fは、形態Fから離れた変換に対応する、重量損失2812によって特徴付けられる。形態Gは、形態Gから離れた変換に対応する重量損失2813によって特徴付けられる。四つの重量損失2814は、結晶形態Bの分解/融解、及び対応するクエン酸の損失である。
【0097】
図29には、5℃/分の加熱速度で行った形態E、F及びGを含む試料のDSC測定の結果を示す。曲線2910は四つの吸熱変化を示し、定量的データを表9に要約する。
【0098】
【表8】

(表8:形態E、F及びGを含む試料のDSC測定に関する熱流変化データ)
第一の吸熱変化2911は、形態Eの形態Bへの結晶の変換を特徴付ける。第二の吸熱変化2912は、形態Fの形態Bへの結晶の変換を特徴付ける。第三の吸熱変化2913は、形態Gの形態Bへの結晶の変換を特徴付ける。第四の吸熱変化2914は、結晶形態Bの分解/融解を特徴付ける。
【0099】
図30は、25℃で行った形態E、F及びGを含む試料の四つの連続した水吸着/脱離サイクルに対応する曲線を示す。グラフは、相対湿度の関数となる、乾燥結晶基準に基づく結晶の質量変化率を示す。第一の吸着は40%相対湿度で開始し、100%相対湿度及び0%相対湿度の間で連続的に循環する。ヒステリシス効果は、第一の吸着/脱離サイクルについて観察され、残りの3サイクルは可逆的であり、ヒステリシスを示さない。水を使用した、吸着/脱離サイクリング後の試料における最終的な重量損失は、より低い温度での図28のTGA解析から観察される、3つの重量変化の合計と同じであり、約7.5重量%である。従って、循環した試料を約131℃以上の温度へ加熱することは、試料を無水の形態Bに変換させるだろう。
【0100】
試料を、CoAレダクターゼ阻害剤0%から10%の相対湿度についての変化にさらすことは、水の取り込みを3.76重量%にする。0%から90%への相対湿度の変化は、水の取り込みを2.10重量%にする。90%から100%への相対湿度変化は、水の取り込みを約0.82重量〜約0.93重量%にする。これらの変化は全て可逆的である。
【0101】
吸着/脱離サイクリングの前後に行った40%相対湿度における試料のXRPD測定は、形態Fが消失し、形態Gの線が消失するが、循環が実施された後、形態Eの線は成長する。10%及び90%の相対湿度の間の吸着/脱離重量変化は、形態Eについて証明されるものと同じである(図25参照)。従って、加湿サイクリングは、形態F及びGの形態Eへの変換を引き起こす。
【0102】
形態Eの線は成長するが、試料を、97.5%の相対湿度に1ヶ月間さらした前後、又は試料を水で洗浄した前後のバッチF1のXRPDを比較した時に、形態Fの線の損失の同じ変化及び形態Gの線の減少が証明される。
【0103】
0%の相対湿度に約1ヶ月間さらしたバッチF1の試料について実施したXRPD測定は、形態E及びBの混合物を示し、形態Bへの全体の変換は観察されない。
【0104】
本発明の他の実施形態は、本明細書で考察される何れかの単結晶形態の前述の特性の組み合わせによって特徴付けられるクエン酸塩の単結晶形態に関する。特徴付けは、特定の多形について開示された、XRPD、TGA、DSC、及び水吸着/脱離測定の何れか一つ以上の組み合わせであってもよい。例えば、クエン酸塩の単結晶形態は、XRPDスキャンにおける主要なピークの2θ位置に関連するXRPDの結果の任意の組み合わせ(XRPDスキャンから誘導される格子パラメータの一つ以上の格子パラメータ、及び異なる温度で生成された結晶形態の試料のXRPDスキャンから測定されたような、結晶が結晶化を開始する温度、又は分解物/溶解物の任意の組み合わせ)によって特徴付けすることができる。クエン酸塩の単結晶形態は又、試料が重量損失変化を開始する温度、及び/又は重量損失変化の間の最大重量変化の速度に関連する温度のTGA測定によって特徴付けられる。Tmax及び/又は試料が熱流変化を開始する温度のDSC測定は又、結晶形態を特徴付ける。試料における重量変化、及び/又は相対湿度の範囲の全体での(例えば、0%〜90%)、水吸着/脱離測定によって測定されるような、無水クエン酸塩の分子当たりの水吸着/脱離の変化は又、クエン酸塩の単結晶形態を特徴付ける。
【0105】
複数の解析技術を使用した、単結晶形態の特徴付けの組み合わせの例には、XRPDスキャンの少なくとも1個の主要なピークの2θ位置、及び対応するDSC測定によって観察される、熱流変化/吸熱変化におけるTmax;XRPDスキャンの少なくとも1個の主要なピークの2θ位置、及び対応するTGA測定における重量損失変化について認められる重量変化の最高速度における温度;XRPDスキャンの少なくとも1個の主要なピークの2θ位置、対応するDSC測定によって観察される熱流変化/吸熱変化におけるTmax、及び対応するTGA測定における重量損失変化について認められる重量変化の最高速度における温度;XRPDスキャンの少なくとも1個の主要なピークの2θ位置、対応するDSC測定によって観察される、熱流変化/吸熱変化におけるTmax、対応するTGA測定における重量損失変化について認められる重量変化の最高速度における温度、及び相対湿度の範囲の全体での水吸着/脱離測定によって決定されるような、無水塩の1分子当たりの水吸着/脱離の変化が含まれる。尚、前述の各例は、XRPDスキャンの少なくとも1個の主要なピークの2θ位置の使用を、本発明の実施形態と矛盾することなく、XRPDスキャンから測定されるような、単結晶形態の一つ以上の格子パラメータと置換することができる。
【0106】
上で考察した特徴付けの組み合わせは、本明細書で考察するクエン酸塩(例えば、形態A、B、C、D、E、F、G又はH)の任意の多形を考察するために使用される。本発明の代替の実施形態において、結晶性クエン酸塩、又はクエン酸の単結晶形態は、特定の多形に関連する一つ以上の特性の欠失によって特徴付けられる(例えば、形態Aでないと、1℃/分の加熱速度でDSCにより測定した場合、Tmax=167℃を有さず、XRPD測定の時に形態Aの少なくとも1個の主要なピークを有しない)。本発明の別の代替の実施形態において、結晶性クエン酸塩は、異なる多形の単結晶形態の特徴付けの組み合わせを使用して特徴付けられる(例えば、形態A及び形態Bを含む結晶形態、XRPD測定からの形態A及び形態Bについて記載された、少なくとも1個の主要なピークを有することによって特徴付けられ、結晶形態は無水である)。本発明の他の代替の実施形態は、異なる多形の単晶形態の特徴付けの組み合わせを有しないことによって特徴付けられる(例えば、形態A、C及びDに関連するXRPDパターンの主要なピーク有しないクエン酸塩)。
【0107】
他の特定の具体的な実施形態を下記に直接記載する。
【0108】
一部の実施形態において、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩(クエン酸塩)の少なくとも10重量%が結晶である。他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%が結晶である。更なる他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも90重量%が結晶である。
【0109】
他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも10重量%が単結晶形態である。更に他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%が単結晶形態である。更なる他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも90重量%が単結晶形態である。
【0110】
他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも10重量%が形態A以外の形態である。更なる他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%が形態A以外の形態である。更に他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも90重量%が形態A以外の形態である。
【0111】
他の実施形態において、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩が提供され、該クエン酸塩は実質的に形態Aである。更なる実施形態において、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩が提供され、該クエン酸塩は少なくとも10重量%が形態Aである。更に他の実施形態において、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩が提供され、該クエン酸塩は少なくとも70重量%が形態Aである。
【0112】
更なる他の実施形態において、クエン酸塩は、少なくとも70重量%が単結晶形態であり、該結晶形態は、CuKα放射線で測定した時の、9.8、11.7、12.6、15.5、15.7、15.9、17.3、17.5、18.2、19.0及び19.7の2θ角度における、少なくとも1個のX線粉末回折ピークによって特徴付けられる。他の実施形態において、クエン酸塩は、少なくとも70重量%が単結晶形態であり、該単結晶形態は、CuKα放射線で測定した時の、9.8、11.7、12.6、15.5、15.7、15.9、17.3、17.5、18.2、19.0及び19.7の2θ角度における、X線粉末回折ピークによって特徴付けられる。更なる実施形態において、単結晶形態は、CuKα放射線で測定した時の、図1と実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。更に他の実施形態において、単結晶形態は、温度制御されたX線粉末回折を使用して観察される通り、150℃から160℃の範囲で安定性変化を有することによって特徴付けられる。
【0113】
他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%が単結晶形態であり、該単結晶形態は、1℃/分のスキャンニング速度を使用した示差走査熱量測定によって観察された、吸熱変化の間の167℃±3℃のTmaxによって特徴付けられる。更なる他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%が単結晶形態であり、該単結晶形態は、164℃±3℃で開始するクエン酸塩の分解に対応する熱重量分析によって観察される重量損失によって特徴付けられる。更なる他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%は単結晶形態であり、該単結晶形態は、25℃における、0%〜90%の相対湿度の変化の間、クエン酸塩の1モル当たり約0.8モルの水を得る。
【0114】
更なる他の実施形態において、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩が提供され、該クエン酸塩は実質的に形態Bである。更なる実施形態において、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩が提供され、該クエン酸塩は少なくとも10重量%が形態Bである。更に他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%が単結晶形態であり、該単結晶形態が形態Bである。更なる他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%は単結晶形態であり、該単結晶形態は、CuKα放射線で測定した時の、10.6、11.6、12.3、14.8、15.8、16.1、16.7、18.8、20.6、21.7及び24.5の2θ角度における、少なくとも1個のX線粉末回折ピークによって特徴付けられる。更なる実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%が単結晶形態であり、該単結晶形態は、CuKα放射線で測定した時の、10.6、11.6、12.3、14.8、15.8、16.1、16.7、18.8、20.6、21.7及び24.5の2θ角度における、X線粉末回折ピークによって特徴付けられる。更なる実施形態において、単結晶形態は、CuKα放射線で測定した時の、図6と実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。更なる実施形態において、単結晶形態は、温度制御されたX線粉末回折を使用して観察される通り、170℃から180℃の範囲で安定性変化を有することによって特徴付けられる。
【0115】
更なる他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%が単結晶形態であり、該単結晶形態は、1℃/分のスキャンニング速度を使用した示差走査熱量測定によって観察された、吸熱変化の間の179℃±3℃のTmaxによって特徴付けられる。更なる他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%が単結晶形態であり、該単結晶形態は、180℃±3℃で開始するクエン酸塩の分解に対応する熱重量分析によって観察される重量損失によって特徴付けられる。更なる他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%は単結晶形態であり、該単結晶形態は、25℃における、0%〜90%の相対湿度の変化の間、クエン酸塩の1モル当たり約0.4モルの水を得る。
【0116】
(医薬組成物)
別の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体又は希釈剤;及び本明細書で考察する(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩からなる医薬組成物を提供する。
【0117】
本発明は又、薬学的に許容される担体又は希釈剤:及び(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩からなる医薬組成物であって、前記クエン酸塩の少なくとも10重量%が結晶性である医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも10重量%が単結晶形態である。更なる他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも10重量%が形態A以外の形態である。
【0118】
更に、本発明は、薬学的に許容される担体又は希釈剤;及び(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を含む医薬組成物であって、クエン酸塩の少なくとも70重量%が結晶である医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%が単結晶形態である。他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%が形態A以外の形態である。更に他の実施形態において、単結晶形態は形態Aである。更なる他の実施形態において、該単結晶形態は、CuKα放射線で測定した時の、9.8、11.7、12.6、15.5、15.7、15.9、17.3、17.5、18.2、19.0及び19.7の2θ角度における、少なくとも1個のX線粉末回折ピークによって特徴付けられる。更に他の実施形態において、該単結晶形態は、CuKα放射線で測定した時の、9.8、11.7、12.6、15.5、15.7、15.9、17.3、17.5、18.2、19.0及び19.7の2θ角度における、X線粉末回折ピークによって特徴付けられる。更なる他の実施形態において、該単結晶形態は、CuKα放射線で測定した時の、図1と実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。更に他の実施形態において、該単結晶形態は、温度制御されたX線粉末回折を使用して観察される通り、150℃から160℃の範囲で安定性変化を有することによって特徴付けられる。更なる他の実施形態において、該単結晶形態は、1℃/分のスキャンニング速度を使用した示差走査熱量測定によって観察された、吸熱変化の間の167℃±3℃のTmaxによって特徴付けられる。更に他の実施形態において、該単結晶形態は、164℃±3℃で開始するクエン酸塩の分解に対応する熱重量分析によって観察される重量損失によって特徴付けられる。更なる実施形態において、該単結晶形態は、25℃における、0%〜90%の相対湿度の変化の間、クエン酸塩の1モル当たり約0.8モルの水を得る。更なる他の実施形態において、単結晶形態は形態Bである。更に他の実施形態において、該単結晶形態は、CuKα放射線で測定した時の、10.6、11.6、12.3、14.8、15.8、16.1、16.7、18.8、20.6、21.7及び24.5の2θ角度における、少なくとも1個のX線粉末回折ピークによって特徴付けられる。更なる他の実施形態において、該単結晶形態は、CuKα放射線で測定した時の、10.6、11.6、12.3、14.8、15.8、16.1、16.7、18.8、20.6、21.7及び24.5の2θ角度における、X線粉末回折ピークによって特徴付けられる。更なる他の実施形態において、該単結晶形態は、CuKα放射線で測定した時の、図6と実質的に同じX線粉末回折パターンによって特徴付けられる。更に他の実施形態において、該単結晶形態は、温度制御されたX線粉末回折を使用して観察される通り、170℃から180℃の範囲で安定性変化を有することによって特徴付けられる。更なる他の実施形態において、該単結晶形態は、1℃/分のスキャンニング速度を使用した示差走査熱量測定によって観察された、吸熱変化の間の179℃±3℃のTmaxによって特徴付けられる。更に他の実施形態において、該単結晶形態は、180℃±3℃で開始するクエン酸塩の分解に対応する熱重量分析によって観察される重量損失によって特徴付けられる。更なる他の実施形態において、該単結晶形態は、25℃における、0%〜90%の相対湿度の変化の間、クエン酸塩の1モル当たり約0.4モルの水を得る。
【0119】
本発明は又、薬学的に許容される担体又は希釈剤;及び(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を含む医薬組成物であって、クエン酸塩の少なくとも90重量%が結晶である医薬組成物を提供する。一部の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも90重量%が単結晶形態である。更なる他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも90重量%が形態A以外の形態である。
【0120】
更に、本発明は、薬学的に許容される担体又は希釈剤;及び(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を含む医薬組成物であって、クエン酸塩が実質的に形態Aである医薬組成物を提供する。
【0121】
更に他の実施形態において、本発明は又、薬学的に許容される担体又は希釈剤;及び(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を含む医薬組成物であって、クエン酸塩の少なくとも10重量%が形態Aである医薬組成物を提供する。
【0122】
更なる実施形態において、本発明は、薬学的に許容される担体又は希釈剤;及び(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を含む医薬組成物であって、クエン酸塩が実質的に形態Bである医薬組成物を提供する。更に他の実施形態において、薬学的に許容される担体又は希釈剤;及び(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を含む医薬組成物であって、クエン酸塩の少なくとも10重量%が形態Bである医薬組成物を提供する。
【0123】
前述の通り、本発明の医薬組成物は更に薬学的に許容される担体からなるが、これらには、本明細書で使用される通り、所望の特定の剤形に適した、ありとあらゆる溶媒、希釈剤、又は他の液体溶媒、分散剤又は懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、保存剤、固体バインダー、滑沢剤等が含まれる。この分野の標準的な参考書であるRemington’s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Co.)は、医薬組成物の製剤に使用される種々の担体、及びそれらの調製のための公知の技法を開示している。何れかの慣習的な担体媒体がクエン酸塩と不適合である場合、例えば、望ましくない生物学的効果をもたらすか、医薬組成物の他の成分と有害な方法で相互作用するを除き、その使用は本発明の範囲内に含まれるものとして意図される。
【0124】
本発明の医薬組成物は、数ある中でも、通常の顆粒化、混合、溶解、カプセル化、凍結乾燥又は乳化手段等の、当業界で周知の方法によって製造することができる。組成物は、顆粒剤、沈殿物又は粒子、凍結乾燥、回転乾燥又は噴霧乾燥粉末を含む粉末、非晶質粉末、錠剤、カプセル剤、シロップ、座薬、注射剤、エマルジョン、エリキシル剤、懸濁剤又は溶液を含む、種々の形態で生成される場合がある。製剤には場合により、安定剤、pH修飾剤、界面活性剤、バイオアベイラビリティー修飾剤及びそれらの組み合わせが含まれる場合がある。
【0125】
組成物中の活性成分の含量は、約0.1重量%〜約99.9重量%の範囲、又は約20重量%〜約±80重量%の範囲である。単位投与製剤は、1mg〜約1000mgの活性成分、好ましくは約10mg〜約100mgの活性成分を含むことができる。所望であれば、組成物は又、テオフィリン、β−アドレナリン作動薬、気管支拡張剤、コルチコステロイド、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー薬、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA、FK−506、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン)、ホルモン(例えば、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、サイトカイン(例えば、インターフェロン(例えば、INFβ−1a、INFβ−1b))等が含まれるが、これらに限定されない、他の適合性の治療薬を含む。
【0126】
(クエン酸塩及びその結晶形態を使用した治療)
本発明の別の態様は、関節炎(例えば、リウマチ様関節炎)、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、再狭窄、虚血/再灌流外傷、糖尿病(例えば、I型糖尿病)、乾癬、多発性硬化症、潰瘍性結腸炎、及びクローン病等の炎症性腸疾患、移植された器官及び組織の拒絶(即ち、急性同種移植拒絶、慢性同種移植拒絶)、移植片対宿主疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及びアレルギー及び喘息を含む、RANTES、MIP−1α、MCP−2、MCP−3及び/又はMCP−4応答性T細胞、単球及び/又は好酸球によって特徴付けられる慢性炎症性傷害を含む、異常な白血球増加及び/又は活性化に関連するか、又はケモカイン又はケモカイン受容体機能によって媒介される疾患の予防又は治療的処置を含む治療方法に関する。本明細書に開示された方法を使用して治療(予防的処置を含む)することができる、異常な白血球増加及び/又は活性化に関連する他の疾患は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に関連する炎症性疾患である。本明細書に開示された方法を使用して治療(予防的処置を含む)することができる、異常な白血球増加及び/又は活性化に関連する更なる他の疾患は、溶骨性傷害である。前記方法は、本明細書で考察する通り、治療を必要とする対象に有効量の(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を投与することからなる。一部の実施形態において、クエン酸塩は実質的に結晶である。他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも10重量%が結晶である。更に他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%が結晶である。更なる他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%が単結晶形態である。他の実施形態において、該単結晶形態は形態Aである。更なる他の実施形態において、前記単結晶形態は形態Bである。更なる他の実施形態において、クエン酸塩の少なくとも70重量%は形態A以外の形態である。
【0127】
他の実施形態において、前記方法は、リウマチ様関節炎、多発性硬化症、アテローム性硬化症、炎症性腸疾患又は乾癬の治療に有用である。更なる他の実施形態において、前記方法は、動脈硬化症、再狭窄、糖尿病、大腸炎、又はクローン病の治療に有用である。更に他の実施形態において、前記方法は、移植器官の拒絶、移植片対宿主疾患、アレルギー、喘息又はヒト免疫不全ウイルス感染に関連する炎症性疾患の治療に有用である。更なる他の実施形態において、前記方法は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に有用である。
【0128】
他の実施形態において、本発明は、治療を必要とする対象に有効量の(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を投与することからなる、リウマチ様関節炎の治療方法を提供する。一部の実施形態において、リウマチ様関節炎の治療に使用されるクエン酸塩は、クエン酸塩に関して上に及び本明細書に説明する何れか一つ以上の特性を有する。他の実施形態において、リウマチ様関節炎の治療に使用されるクエン酸塩は、以下の特性の一つ以上を有する。
1.前記クエン酸は実質的に結晶である;
2.前記クエン酸塩の少なくとも70重量%が単結晶形態である;
3.前記クエン酸塩の少なくとも70重量%が単結晶形態であり、該単結晶形態が形態A又は形態Bである;
4.前記クエン酸塩の少なくとも70重量%が形態A以外の形態である。
【0129】
本発明の他の実施形態において、治療を必要とする対象に有効量の(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を投与することからなる、多発性硬化症の治療方法が提供される。一部の実施形態において、多発性硬化症の治療に使用されるクエン酸塩は、クエン酸塩に関して上に及び本明細書に説明する何れか一つ以上の特性を有する。他の実施形態において、多発性硬化症の治療に使用されるクエン酸塩は、以下の特性の一つ以上を有する。
1.前記クエン酸は実質的に結晶である;
2.前記クエン酸塩の少なくとも70重量%が単結晶形態である;
3.前記クエン酸塩の少なくとも70重量%が単結晶形態であり、該単結晶形態が形態A又は形態Bである;
4.前記クエン酸塩の少なくとも70重量%が形態A以外の形態である。
【0130】
本発明の更に他の実施形態において、治療を必要とする対象に有効量の(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を投与することからなる、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療方法が提供される。一部の実施形態において、慢性閉塞性肺疾患の治療に使用されるクエン酸塩は、クエン酸塩に関して上に及び本明細書に説明する何れか一つ以上の特性を有する。他の実施形態において、多発性硬化症の治療に使用されるクエン酸塩は、以下の特性の一つ以上を有する。
1.前記クエン酸は実質的に結晶である;
2.前記クエン酸塩の少なくとも70重量%が単結晶形態である;
3.前記クエン酸塩の少なくとも70重量%が単結晶形態であり、該単結晶形態が形態A又は形態Bである;
4.前記クエン酸塩の少なくとも70重量%が形態A以外の形態である。
【0131】
本発明の他の実施形態は、本明細書に開示されたクエン酸塩をほ乳類に投与することからなる、対象内においてCCR1等のケモカイン受容体に拮抗する方法に関する。
【0132】
前記方法によれば、ケモカイン介在性化学走性、及び/又はケモカインに対する受容体を有するプロ炎症細胞の活性化を阻害することができる。個体に投与されるクエン酸塩の量は、疾患のタイプ及び重症度、及び全体的な健康状態、年齢、性、体重及び薬物に対する耐性等の個体の特徴に依存するだろう。それは、疾患の程度、重症度及びタイプにも依存するだろう。当業者は、これら及び他の因子に依存する適切な投与量を決定することができるだろう。通常、前記化合物の有効量は、成人について、1日当たり、約0.1mg〜1日当たり約100mgの範囲であり得る。好ましくは、この投与量は、1日当たり約1mg〜1日当たり約100mgの範囲である。ケモカイン受容体機能のアンタゴニストは、テオフィリン、β−アドレナリン作動性気管支拡張剤、コルチコステロイド、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA、FK−506、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン)、ホルモン(例えば、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH))サイトカイン(例えば、インターフェロン(例えば、IFNβ−1a、IFNβ−1b))等の一つ以上の追加の治療薬と組み合わせて投与することができる。
【0133】
クエン酸塩は任意の適切な経路で、例えば、カプセル剤、懸濁液又は錠剤中で経口的に、又は非経口的に投与することができる。非経口的投与には、例えば、筋肉内注射、静脈注射、皮下注射、又は腹腔内投与等による全身投与が含まれる。又、クエン酸塩は、治療される疾患又は病態に依存し、経口的(例えば、食事により)に、経皮的に、局所的に、吸入により(例えば、気管支内、鼻腔内、経口吸入又は鼻腔内ドロップ)、又は直腸投与によって投与することができる。経口的又は非経口的は、投与の好ましい形態である。
【0134】
クエン酸塩は、上で考察した疾患治療のための医薬組成物の一部として、医薬的又は生理的に許容される担体と共に個体に投与することができる。化合物の剤形は、選択される投与経路に従って変化する(例えば、溶液、エマルジョン、カプセル剤)。
【0135】
(クエン酸塩の結晶形態の調製)
本発明の一部の実施形態は、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を調製するプロセスに関する。一実施形態において、クエン酸を(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールの溶媒溶液と混合して、結晶性クエン酸塩を沈殿させる。次いで、当業者に公知の技法(例えば、ろ過、蒸発、デカンテーション、上流(減圧下又は大気圧下)を使用して、結晶性クエン酸塩を混合物から単離する。
【0136】
クエン酸塩を結晶化させるために使用することのできる溶媒には、エタノール、アセトン、メタノール、ヘプタン、メチルエチルケトン(MEK)、水、トルエン、イソプロパノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジクロロメタン、及び前記溶媒の一つ以上の組み合わせが含まれる。得られた結晶性クエン酸塩には、一つ以上の単結晶形態が含まれる場合がある。
【0137】
特定の実施形態において、クエン酸塩の結晶形態Aを結晶化させるために、アセトン又はトルエン等の溶媒を使用することができる。
【0138】
他の特定の実施形態において、結晶形態Bを結晶化させるために、エタノール、メタノール/ヘプタン、MEK/水、n−プロパノール、イソプロパノール、イソプロパノール/水、アセトニトリル/水、又はメタノール等の溶媒を使用することができる。特には、形態Bは、形態Aの試料を取得し、これを前述の溶媒系の1つに露出させることによって生成される場合がある。露出の特定の条件を表9に記載する。
【0139】
本発明の別の特定の実施形態において、形態Aの試料を、THF及び水の混合物に高温で溶解し、次いで形態の混合物を結晶化させることによって、形態A及びCの混合物が調製される。又、形態A及びBの試料を大気圧でTHFに露出させ、結晶を形態A及びCに成熟させることによって、形態A及びCの混合物が調製される。
【0140】
本発明の別の特定の実施形態において、形態Aの試料をTHFに溶解し、室温及び大気圧において、溶媒をゆっくりと蒸発させることによって、形態A及びDの混合物が調製される。
【0141】
本発明の特定の実施形態は、形態Aの試料を室温で水に露出させ、試料を形態Eに成熟させることにより形態Eを調製する方法に関する。
【0142】
本発明の代替の実施形態は、形態E、F及びGを含む結晶性クエン酸塩を形成することに関する。クエン酸塩の非晶質形態の試料を室温で水に露出させる。次いで、試料を、形態E、F及びGを含む混合物に成熟させる。
【0143】
本発明の好ましい実施形態は、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩の形態Aを調製するプロセスである。該プロセスは、クエン酸を(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのアセトン溶液と混合し、結晶性クエン酸塩を沈殿させることからなる。次いで、混合物から塩を単離する。通常、沈殿の間、混合物を30℃〜40℃の間の温度に維持するが、他の適当な温度も使用することができる。前記温度は少なくとも10分間維持する。通常、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールの1等量に対し、少なくとも1等量のクエン酸が使用され、好ましくは、1.0〜1.5等量のクエン酸が使用される。
【0144】
本発明の別の好ましい実施形態において、クエン酸塩の形態Bを調製するプロセスには、クエン酸を(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのエタノール溶液と混合して結晶性クエン酸塩を沈殿させ、次いで塩を単離することが含まれる。本発明の実施形態に従った方法は、更に、クエン酸塩の結晶を沈殿させるための混合物の播種を含んでもよい。好ましい、関連する実施形態において、結晶は、クエン酸塩の形態Bである。前記方法は、通常は、混合物成分を混合する間、18℃〜22度の間で実施されるが、他の適合な温度を使用してもよい。前記温度は、結晶を沈殿させる間、通常、少なくとも2時間維持される。通常、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールの1等量に対して、少なくとも1等量のクエン酸が使用される。
【0145】
本発明の一部の実施形態は、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を結晶化させるための混合物に関する。該混合物は、クエン酸、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オール、及び結晶化媒体を含む。
【0146】
結晶化媒体は、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールが溶解できるが、結晶性クエン酸塩が不溶性であるか、やや溶解しにくい、溶媒又は溶媒系(例えば、溶媒の併用)である。(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オール、及びクエン酸塩の溶解度は混合物の温度に依存する(即ち、溶解度は高温ではより高くなる)。
【0147】
結晶化媒体の例には、エタノール、アセトン、メタノール、ヘプタン、メチルエチルケトン(MEK)、水、トルエン、イソプロパノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジクロロメタン、及び前記溶媒の一つ以上の組み合わせが含まれる。本発明の特定の実施形態において、結晶化媒体は、エタノール、アセトン、メタノール、MEK、n−プロパノール、イソプロパノール、THF、トルエン、アセトニトリル、水、ヘプタン、メタノール及びヘプタンの混合物、MEK及び水の混合物、アセトニトリル及び水の混合物、イソプロパノール及び水の混合物、又はTHF及び水の混合物である。本発明の別の特定の実施形態において、結晶化媒体はアセトンである。本発明の更に別の実施形態において、結晶化媒体はエタノールである。本発明の更なる別の実施形態において、結晶化媒体は、本明細書の表9で使用される、何れかの溶媒/溶媒系である。
【0148】
クエン酸塩を結晶化させるための混合物には、媒体中でスラリー状になっていてもよい、一つ以上の結晶の播種、沈殿/結晶化補助剤が含まれ、及び/又はクエン酸塩の結晶を補助するための種々の温度における種々の時間に維持される。当業者に認識される通り、結晶化速度を向上させるために使用されるその他の添加剤も又、本発明の範囲内に含まれる。
【0149】
本発明の実施形態は、本明細書において、特に、4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールの(S)−鏡像異性体に言及するが、当業者にとって、本発明の関連する実施形態が(R)−鏡像異性体、化合物のラセミ混合物、及び(R)及び(S)鏡像異性体の部分的組み合わせの使用を含むことが理解されるだろう。
【0150】
(実験)
(クエン酸塩の結晶形態の試料の分析評価)
クエン酸塩の結晶形態は、結晶形態の試料について、操作される一つ以上の分析技術から得た結果を使用して特徴付けられる。このような技術には、種々のタイプのX線粉末回折(XRPD)、熱重量分析(TGA)、示差走査熱量測定(DSC)、動的蒸気収着測定(dynamic vapor sorption measurements,DVS)、及び光学顕微鏡が含まれる。クエン酸塩の各多形について、本発明の一実施形態に従い、多形を特徴付けるために、これらの分析技術の一つ以上が利用される。個々の技術は以下に記載される。
【0151】
クエン酸塩の種々の試料についてのX線粉末回折(XRPD)は、3種の機器を使用して実施される。機器1を使用したXRPD測定は、ブラッグ−ブレンターノ(垂直なθ−2θ配置)パラフォーカス配列を有する、Siemens−Bruker D5000 Matic粉末回折計を使用する。X線は、40kV及び30mAで流れる密閉型コバルト陽極から生成される。通常、2本の線、CoKα(λ=1.7890Å)及びCoKα(1.7929Å)が照射される。β鉄−フィルターは、検出器において、回折ビームの約1%までCoKβ(λ=1.6208Å)放射線を制限する。最初のビームは平衡板コリメータ(0.2mmソラースリット)を通過した後、発散スリット(0.2mm)を通過する。分散したX線は、角度2θ中の10−幅の検出窓を有する、Braun 50M 多チャンネル線検出器を使用して検出される。スキャンは、2θにおいて1.5°〜50.0°まで実施され、スキャン時間は2θにおいて角度当たり10〜40秒である。2θ位置の誤差は通常±0.10°である。
【0152】
機器2においては、X’Celerator検出器と連結した、ブラッグ−ブレンターノ(垂直なθ−2θ配置)パラフォーカス配列を使用するPhilips Analytical X’pert Pro MPD 粉末回折計により、高分解能のXRPDダイアグラムが得られる。45kV及び40mAで流れる、密閉型銅陽極X線管は、衝突X線を生成する。入射ビームモノクロメータ(Johansson型:対照的に切断された、曲がったゲルマニウム(111)結晶)は、純粋なCuKα放射線(λ=1.54060Å)を生成する。生成物の薄い層が、単結晶シリコンウェハー上に蒸着され、全てのブラッグ反射を妨害する体系的消光によって、Si(510)の結晶学的方向に従って切断する。回折位置内に更なる結晶をもたらし、それによって測定における粒子の統計値の影響を減少するため、試料スピナーが使用される。スピナーの回転速度を1回転/分にセットする。角度は2θにおいて、0.02°段階で3°〜40°又は50°までの範囲である。段階当たり1250〜3500秒の計測時間が使用される。2θ位置の誤差は通常±0.10°である。
【0153】
機器2で実施されたスキャンは、Bruker Corporationによって提供されたDiffrac−ATプログラムのプロフィールフィッティングモジュールを使用して解析することができ、観測される線のそれぞれの2θ各位置を決定する。前記モジュールによって提供された、線の最大の半分における全幅の比較は、ピークの重複を解決し、他の相の存在又は非存在を明らかにする。Accelrys CompanyのX−Cell指標付けプログラムによって与えられた、最良の溶液、最も高い性能係数は、次いでPawley精製によって最適化される。前記処置はダイアグラムの全てのプロフィールについて説明し、線の位置を簡略化する。前記処置は、変数として分散した強度を使用することによって、実験的ダイアグラムを可能な限り近付けて再生成するために求められる。
【0154】
機器3においては、XRPD測定は、温度による結晶形態の発生を説明するために、異なった温度で実施される。それらは、ブラッグブレンターノパラフォーカス(θ−θ)配列、及びAnton−Paar TTK温度チャンバーを備えた、Siemens−Bruker D5000回折計を使用して実施される。測定は、特定の湿度を有する乾燥窒素又は窒素流を使用する。機器の規格は、前述したSiemens−Bruker D5000 Matic機器(機器1)と実質的に同一である。温度は、0.05°/秒の速度で昇温される。スキャンは、以下の条件、即ち、角度2θにおける1.5〜50.0°スキャン、2θにおける角度当たり、10〜20秒計測時間で記録される。要求された温度に達した時、データを等温モードで取得する。
【0155】
熱重量分析(TGA)を使用した測定は、T.A.機器TGAQ500アナライザーで実施される。質量のキャリブレーションは、10及び100mgの保証された質量を使用して実施される。温度のキャリブレーションは、Alumel(登録商標)及びニッケル標準(それぞれ、154℃及び354℃のキュリー点)を使用して実施される。試料を、60mL/分の一定の窒素流にさらし、5℃/分の速度で室温から350℃の範囲とする。試験される生成物の量は、2〜13mgの間である。試料を、開放型アルミニウム試料皿に蒸着し、白金皿中に配置する。特定の試料のTGAスキャンから確認された温度は、正確に±3℃である。
【0156】
示差走査熱量(DSC)の分析は、T.A. Instruments Q1000熱分析計を使用して実施する。分析は、50mL/分の平均速度で流れる窒素パージガスを使用して実施される。機械的圧縮器はシステムを冷却し、分析の間、使用される機器を室温に平衡化させる。熱量計は、インジウム及び鉛(それぞれ、156.6℃及び327.5℃の融解発生温度)等の材料を使用して温度のキャリブレーションを行う。エネルギーキャリブレーションは、5℃/分の加熱速度を適用し、保証されたインジウムキャリブレータ(28.45J/gの融解エンタルピー)を使用して実施する。特定の試料のDSCスキャンから確認された温度は、正確に±3℃である。
【0157】
試料を以下の実験的温度プログラムにかける。即ち、10℃における試料の平衡化の後、試料を、1〜50℃/分の速度で10℃〜210℃(又は250℃又は260℃)に加熱する。
【0158】
又、全ての熱流の逆及び非逆熱流への脱重量積分は変化を容易に確認できるため、温度調節示差走査熱量(MTDSC)が使用される。試料を、同じ実験的熱プログラムにかける。即ち、−5℃における試料の平衡化の後、試料を、1℃/分の速度で−5℃〜210℃の調節されたプログラムを通じて加熱させた。古典的な提案に基づき、全ての試料を分析するために選択されたMTDSCパラメータのセットは、0.5℃及び80秒間の大きさであった。
【0159】
実験は、圧着アルミニウム試料皿又は場合により開放型皿を使用して実施される。分析する生成物の量は、通常2〜13mgである。
【0160】
TGA及びDSCの同時測定は、Setaram Corporationにより製造されたSETSYS熱分析システムを使用して実施される。液体窒素冷却システムは、20℃以下の温度で実施することを可能にする。試料の加熱による気体の放射は、Pfeiffer質量分光計に毛細管で移動することによって実施され、毛細管は150℃に加熱される。質量分析計は、分子の断片を、1〜200umaの比<m/e>で分析することができる。1〜27mgの質量を有する試料を、窒素流にさらされた、開放型凹面アルミニウム試料皿(75μL容量)に含ませる。試料を1〜5℃/分の速度で加熱する。
【0161】
水吸着測定は、DVS−1自動化重量蒸気吸着分析計(Surface Measurement System Ltd.[英国ロンドン])で実施する。DVS−1は、±0.1μgの質量分解能を有する、Cahn D2000を使用して、超マイクロバランス(ultra−microbalance)を記録することにより、蒸気の重量の取り込み及び損失を測定する。試料周辺の相対湿度は、流量コントローラを使用して、飽和及び乾燥キャリアガスを混合することによって制御される。温度は、温度制御インキュベーター中に全体のシステムを取り囲むことによって、±0.1℃内に維持される。試料サイズは15〜20mgを使用する。一般的に、試験試料内で確認される、重量%の誤差は±0.1重量%である。
【0162】
DVSを使用するために二つのプロトコールが利用される。一つのプロトコールにおいては、試料を0%相対湿度(RH)で乾燥させ、表面に存在する水を除去し、ベースライン質量の乾燥状態を確立する。次いで、試料を以下の相対湿度プロフィール、即ち0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、0%にさらす。ある例においては、このプロフィールを繰り返し、RHが上下することにおける4セットのデータを得る。他のプロトコールにおいては、試料を、最初に40%RHに平衡化した後、それを以下の相対湿度プロフィール、即ち、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、0%、10%、20%、30%、40%にさらす。各段階において、試料の質量は、相対湿度が上昇するか低下する前に平衡に達することが許容され、質量の変化の時間速度が、30又は60分間を超えて0.02%/分の値を超えない場合に、平衡が適合する。平衡状態に達しない場合、相対湿度の変化は360又は600分後に自動的に起こる。完全な湿気及び脱離プロフィールから、DVS Advanced Analysis Suite v3.6を使用して、等温性が算出される。全ての実験は25℃で実施される。
【0163】
本発明の一部の実施形態は、多少なりとも本発明の範囲を限定しない、以下の実施例によって更に具体的に開示される
【実施例】
【0164】
(実施例1:(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩の種々のクエン酸塩の調製)
種々の条件下で、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩を結晶化することによって、クエン酸塩の8種類の異なる結晶形態を調製する。各例において、クエン酸塩の形態Aは、表9に記載される特定の条件下で溶媒又は溶媒系にさらされ、特定の形態又は非晶質のクエン酸塩を生成する。
【0165】
【表9】

(表9:クエン酸塩の種々の試料の結晶化条件)
(実施例2:(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩の形態Aの調製)
窒素ガスで不活性化したガラス内張反応器中で、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−3,3−ジメチルピペリジン−4−オールの酒石酸塩(7.5kg)を、2−[5−(3−ブロモ−プロピリデン)−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−7−イル]−プロパン−2−オール(7.5kg)及びアセトニトリル(90リットル)と混合する。4−(4−クロロ−フェニル)−3,3−ジメチルピペリジン−4−オールを過剰量の(R,S)−酒石酸と混合して(S)酒石酸塩を沈殿させることによって、(S)−異性体を得る。混合物を羽根車で撹拌し、0℃〜5℃の間に冷却する。
【0166】
容器に水(23リットル)を入れた後、炭酸カリウム(9.56)を入れる。この溶液を20±5℃に加温し、その温度を少なくとも3日間維持した。反応の経過を追うため、HPLCを利用した。
【0167】
反応器に水(45リットル)を加える。温度を40℃以下に維持するために選択した圧力における減圧蒸留を使用して、全体の内容物を濃縮する。全体の内容物容量が約60リットルになったら、蒸留を中止する。内容物を大気圧、温度を20℃〜30℃にする。
【0168】
次いで、ジクロロメタン62リットルを反応器に入れ、反応器を15分間撹拌する。次いで、全体の容量を15分間動かないようにしておく。次いで、水性相を捨て、有機相を反応器に戻す。有機相を水で2回洗浄し(それぞれ45リットル)、それぞれの洗浄は15分間の撹拌、15分間の静置を含み、次いで上相の水相を捨てる。
【0169】
ジクロロメタン(4リットル)中のジ−tert−ブチルジカルボネート(0.12kg)を反応器に加える。ガラス容器(doseur)を4リットルのジクロロメタンで洗浄する。溶液を20℃に10〜20分間維持する。該溶液を(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−3,3−ジメチルピペリジン−4−オールの存在について分析する。酒石酸塩がまだ存在する場合、残留する酒石酸塩に対して2:1のモル比でジ−tert−ブチルジカルボネートを加える。この特定の例においては、ジクロロメタン(4リットル)中の更なるジ−tert−ブチルジカルボネート(0.12kg)が必要である。
【0170】
反応器の内容物を減圧蒸留によって再び濃縮し、残りの容量が約40リットルになるまで温度を40℃以下に維持する。残りの内容物を20℃〜30℃の温度、及び大気圧にする。
【0171】
次いで、反応器にアセトン(31リットル)を入れる。温度を40℃以下に維持しながら、減圧蒸留によって、反応器の内容物を40リットルまで濃縮する。次いで、残りの容量を、20℃〜30℃の温度、及び大気圧にする。アセトンによる溶媒交換を3回繰り返す。
【0172】
次いで、アセトン(58リットル)及び脱色炭のアセトン性スラリー(L3S、0.38kgの炭素;2リットルのアセトン)を反応器に加える。混合物を20±5℃に1時間維持する。溶液を0.22μmのソルベックスタイプのフィルターでろ過し、ろ液を160リットルの反応器に送り込む。
【0173】
クエン酸(3.68kg)及びアセトン(24リットル)を250リットルの反応器に入れる。溶液が形成されるまで、混合物を20±5℃で撹拌する。内容物を35℃に加熱し、次いで160リットルの反応器に移す。移動の間、160リットルの反応器の温度を35±5℃に維持する。移動の間、生成物は結晶化する。移動が完了した後、35±5℃の温度を10〜20分間維持する。
【0174】
結晶及び溶液分散液をろ過する(フィルタードライヤー;ケーキ:d=55cm、h=13cm;ろ過時間:4時間)。フィルターケーキをアセトンで2回洗浄する(各洗浄に34リットルのアセトン;洗浄時間:合計10時間以内)。生成物をフィルタードライヤー中で乾燥させ(40±5℃/−0.99バール;撹拌なし;約100時間)、10.42kg(収率75%)の生成物(99重量%の含有率を示す(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩)を得る。
【0175】
(実施例3:(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩の形態Bの調製)
窒素ガスで不活性化した、600リットルのガラス内張反応器中で、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−3,3−ジメチルピペリジン−4−オール(20kg)を、2−[5−(3−ブロモ−プロピリデン)−5,11−ジヒドロ−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−7−イル]−プロパン−2−オール(20kg)及びアセトニトリル(240リットル)と混合する。混合物を、羽根車で撹拌し、0℃〜5℃に冷却する。
【0176】
容器に水(60リットル)を入れた後、25.5kgの炭酸カリウムを加える。溶液を20±5℃に加温し、温度を約4日間維持した。反応の経過を追うため、HPLCを利用した。
【0177】
水(120リットル)を反応器に加える。温度を40℃以下に維持するために選択された圧力における減圧蒸留を使用して、全体の内容物を濃縮する。全体の内容物容量が約90リットルになる時、蒸留を中止する。残りの内容物を、20〜30℃の温度、及び大気圧にする。
【0178】
次いで、ジクロロメタン(165リットル)を反応器に入れ、反応器を15分間撹拌する。次いで、全体の容量を15分間動かないようにしておく。次いで、水性相を捨て、有機相を反応器に戻す。有機相を水で2回洗浄し(それぞれ120リットル)、それぞれの洗浄は15分間の撹拌、15分間の静置を含み、次いで上相の水相を捨てる。
【0179】
前記有機相を、(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−3,3−ジメチルピペリジン−4−オールの存在について分析する。ジクロロメタン中のジ−tert−ジカルボネートを、残留する酒石酸1モルに対して、約2モルのジカルボネートの量、反応器に加える。この特定の例においては、約5リットルのジクロロメタンに対して、約0.3kgのジカルボネートが使用される。ガラス容器を5リットルのジカルボネートで洗浄する。溶液を20℃に、10〜20分間維持する。溶液を、酒石酸塩の存在について再度分析する。もし、酒石酸がまだ存在する場合、モル基準で、酒石酸に対して2:1の量の、更なるジクロロメタン中のジ−tert−ブチルジカルボネートを反応器に加える。
【0180】
反応器の内容物を減圧蒸留によって再び濃縮し、残りの容量が約90リットルになるまで温度を40℃以下に維持する。残りの内容物を20℃〜30℃の温度、及び大気圧にする。
【0181】
次いで、反応器にエタノール(71リットル)を入れる。温度を40℃以下に維持しながら、減圧蒸留によって90リットルまで濃縮する。次いで、残りの容量を、20〜30℃の温度、及び大気圧にする。無水エタノールによる溶媒交換を更に2回繰り返す。
【0182】
次いで、エタノール(71リットル)及び脱色炭のエタノール性スラリー(L3S、1.15kgの炭素;エタノール、qsp)を反応器に加える。混合物を20±5℃に1時間維持する。溶液を0.22μmのソルベックスタイプのフィルターでろ過し、ろ液を400リットルの反応器に送り込む。
【0183】
クエン酸(9.85kg)及びエタノール(37リットル)を100リットルのハステロイ反応器に入れる。溶液が形成されるまで、混合物を20±5℃で撹拌した後、クエン酸溶液をドラムに移す。反応器内の温度を20±2℃に維持しながら、クエン酸溶液(13kg)を、濾液を含む400リットルの反応器に加える。反応器を、400リットルの反応器内の溶液の一部から製造されたクエン酸塩の形態B結晶を使用して播種する。この結晶を、400リットルの反応器からの液体中でThurraxタイプのミキサーで30秒間粉砕する。播種された結晶混合物を30分間維持する。
【0184】
クエン酸溶液の残りを、2.5〜3時間かけて、反応器内の温度を20±2℃に維持しながら400リットルの反応器に移す。この移動の間に生成物が結晶化する。過剰のクエン酸溶液を5リットルのエタノールを使用して反応器内に洗浄する。
【0185】
反応器を0±2℃に30分以上冷却し、この温度を少なくとも1時間維持する。次いで、懸濁液をろ過し(Nutschフィルター;ろ過時間:1時間)、フィルターケーキを生成する。ケーキをエタノールで2回洗浄する(各洗浄につき55リットル;洗浄時間:合計36時間以内)。ケーキを棚型乾燥機内で乾燥させ(40±5℃/−0.99バール;撹拌なし;約48時間)、27.3kg(収率73%)の生成物(97重量%の含有率を示す(S)−4−(4−クロロ−フェニル)−1−{3−[7−(1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル)−11H−10−オキサ−1−アザ−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルイデン]−プロピル}−3,3−ジメチル−ピペリジン−4−オールのクエン酸塩)を得る。
【0186】
本発明を特に好ましい実施形態に関連して開示してきたが、添付の請求範囲によって包含される本発明の適用範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の種々の変更が行われる場合があることを当業者に理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図12】
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【図16】
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【図22】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−211197(P2012−211197A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−172003(P2012−172003)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【分割の表示】特願2007−547000(P2007−547000)の分割
【原出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(500287639)ミレニアム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】