説明

ケンペロールの調製方法

本発明は、ケンペロール配糖体から酸、塩基、酵素または前記酵素を生み出す微生物を用いてケンペロールを分離することを特徴とするケンペロールの調製方法に関し、さらに詳しくは、植物から水または有機溶媒を用いてケンペロール配糖体を含有する植物抽出物を得る第一の段階と、前記植物抽出物を酸、塩基、酵素または前記酵素を生み出す微生物を用いて加水分解してケンペロールを分離する第二の段階とを含むことを特徴とするケンペロールの調製方法に関する。上記ケンペロール配糖体は、カメリアシドAまたはカメリアシドBを含むものであることを特徴とし、上記植物抽出物は、緑茶種または緑茶葉に由来するものであることを特徴とする。本発明によるケンペロールの調製方法によれば、植物、特に、緑茶種または緑茶葉から主な生理活性物質としてのケンペロールを大量に生産することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケンペロール配糖体から酸、塩基、酵素または前記酵素を生み出す微生物を用いてケンペロールを分離することを特徴とするケンペロールの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケンペロール(Kaempferol)は下記化学式1で表されるものであり、フラボノイド(flavonoid)の一種であるフラボノール(flavonol)の代表的な成分の一つとして植物の花または葉に広く分布している。
【0003】
【化1】

【0004】
フラボノールとしては100以上のものが既に知られており、ケンペロール、ケルセチン(quercetin) およびミリセチン(myricetin)の3種類が最も多く存在していることが知られている。
【0005】
特に、ケンペロールは、抗酸化、抗炎症などの生理活性に優れた物質であって、その種々の効能に関する研究がなされており、種々の分野への適用がなされている。しかしながら、現在使用中のケンペロールの大半は植物抽出物の形であり、その含量が僅か数ppmから数十ppmに過ぎないことから、ケンペロールの実質的な効能が発現されているとは言い難い面がある。このような問題点は、ケンペロールを多量に含有する植物があまり見つけられないこと、しかも、高含量のケンペロールを調製するための分離精製には経済性からみてこれといったメリットがないことに起因し、これらの理由から、ケンペロールの大量生産に関する研究はほとんどなされていないのが現状である。
【0006】
緑茶は世界最古の歴史を有している飲料であって、近年、緑茶に対する関心が高まるに伴い、茶の成分とその薬理効果に関する研究が盛んに行われている。緑茶には、他の食品に比べてスレアミン(threamine)とポリフェノール(polyphenol)類が多量に含有されている。緑茶の効能成分は、多葉中のポリフェノール類に属するフラバン−3−オール(flavan-3-ol)を主体とするカテキン(catechin)であって、(+)−カテキン、(−)−エピカテキン(epicatechin)、(−)−エピガロカテキン−3−ガラート(epigallocatechin-3-gallate)、(−)−ガロカテキン (gallocatechin)などが主成分であることが知られている。特に、緑茶中に含まれているポリフェノール類は、血中コレステロールを低下させるとともに、抗酸化作用、抗ガン作用、解毒作用、抗菌作用、虫歯予防作用、老化抑制作用、美白効果および香り成分などがあることが報告されている。また、緑茶中に含まれているポリフェノール類は、痛風予防はもとより、過酸化脂質を抑制し、老化を遅延させるとともに、中世脂質の生成を抑制することから、肥満を防止し、毛細血管の抵抗力を増進させることが報告されている。
【0007】
しかしながら、かかる種々の効能を有している緑茶の大半は、その葉を使用しており、これとほぼ同じ効能物質を含有している緑茶種については、栽培目的以外にはあまり使用されていないのが現状である。さらに、関心と研究のほとんどが緑茶葉のカテキン類、特に、エピガロカテキン ガラート(EGCG:epigallocatechin gallate)に集中している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、緑茶のうち特に、特別な用途に用いられていない緑茶種とEGCGに焦点が合わせられている緑茶葉には、カテキン類の他にケンペロール母核を有するケンペロール配糖体、特に、ケンペロールに3つの糖が付いているカメリアシドA(camelliaside A) 、カメリアシドBなどの配糖体が多量に含有されていることを見出し、これより生理活性に優れたアグリコン(aglycone)型のケンペロールを大量に調製可能な方法を鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする技術的な課題は、ケンペロール配糖体から酸、塩基、酵素または前記酵素を生み出す微生物を用いてケンペロールを分離し調製する方法を提供することにあり、植物、特に、緑茶種または緑茶葉に多量に含有されているケンペロール配糖体、特に、カメリアシドA、カメリアシドBなどの配糖体からケンペロールを分離し調製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるケンペロールの調製方法は、ケンペロール配糖体から酸、塩基、酵素または前記酵素を生み出す微生物を用いてケンペロールを分離することを特徴とする。
【0011】
さらに詳しくは、上記ケンペロールの調製方法は、植物から水または有機溶媒を用いてケンペロール配糖体を含有する植物抽出物を得る第一の段階と、前記植物抽出物を酸、塩基、酵素または前記酵素を生み出す微生物を用いて加水分解してケンペロールを分離する第二の段階とを含むことを特徴とする。
【0012】
上記において、ケンペロール配糖体は、カメリアシドAまたはカメリアシドBを含むものであることを特徴とする。
【0013】
上記第一の段階において、植物抽出物は、緑茶種または緑茶葉に由来のものであることを特徴とする。
【0014】
また、上記有機溶媒としては、エタノール、メタノール、ブタノール、エーテル、エチルアセテートおよびクロロホルムよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の有機溶媒、または、これらの有機溶媒と水との混合溶媒、好ましくは80%のエタノールを用いることができる。
【0015】
上記酸としては、塩酸、硫酸および硝酸よりなる群から選ばれるいずれか一種以上の酸、または、これらの酸とエタノール、メタノールおよびブタノールよりなる群から選ばれるいずれか一種以上のアルコールとの混合溶媒を用いることができる。このとき、使用可能な酸の濃度は0.1N〜2Nであり、混合溶媒のアルコール含量は10〜50%であり、反応温度は50〜100℃であり、そして反応時間は0.5〜8時間である。
【0016】
上記塩基としては、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の塩基、または、これらの塩基とエタノール、メタノールおよびブタノールよりなる群から選ばれるいずれか一種以上のアルコールとの混合溶媒を用いることができる。このとき、使用可能な塩基の濃度は0.1N〜2Nであり、混合溶媒のアルコール含量は10〜50%であり、反応温度は50〜100℃であり、そして反応時間は0.5〜24時間である。
【0017】
上記酵素または酵素を生み出す微生物としては、糖結合を分解する酵素または糖結合を分解する酵素を生み出す微生物を用い、上記酵素は、ケンペロール配糖体から糖部分を除去してケンペロールを分離するものであることを特徴とし、上記ケンペロール配糖体は、好ましくは、カメリアシドAまたはカメリアシドBを含むものであることを特徴とする。
【0018】
さらに、上記酵素は、より好ましくは、グルコシダーゼ(glucosidase)、アラビノシダーゼ(arabinosidase) 、ラムノシダーゼ(rhamnosidase) 、キシロシダーゼ(xylosidase) 、セルラーゼ(cellulase)、ヘスペリジナーゼ(hesperidinase) 、ナリギナーゼ(naringinase)、グルクロニダーゼ(glucuronidase) 、ペクチナーゼ(pectinase) 、ガラクトシダーゼ(galactosidase) およびアミログルコシダーゼ(amyloglucosidase) よりなる群から選ばれるいずれか一種以上を用いることを特徴とする。
【0019】
さらに、上記酵素を生み出す微生物としては、アスペルギルス(aspergillus)属 、バチルス(bacillus) 属、ペニシリウム(penicillium) 属、クモノカスビ(rhizopus) 属、リゾムコール(rhizomucor)属、タラロマイセス(talaromyces) 属、ビフィドバクテリウム(bifidobacterium) 属、モルティエラ(mortierella)属、クリプトコッカス(cryptococcus) 属およびミクロバクテリウム(microbacterium) 属よりなる群から選ばれるいずれか一種以上を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るケンペロール配糖体から酸、塩基、酵素または前記酵素を生み出す微生物を用いてケンペロールを分離することを特徴とするケンペロールの調製方法によれば、植物、特に、緑茶種または緑茶葉からケンペロール配糖体、特に、カメリアシドAまたはカメリアシドBを含む植物抽出物を得た後、酸、塩基、酵素または前記酵素を生み出す微生物を用いて加水分解することにより、主な生理活性物質の一種であるケンペロールを大量に生産することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
ケンペロールの調製方法は、植物から水または有機溶媒を用いてケンペロール配糖体を含有する植物抽出物を得る第一の段階と、前記植物抽出物を酸、塩基、酵素または前記酵素を生み出す微生物を用いて加水分解してケンペロールを分離する第二の段階とを含むことを特徴とする。
【0022】
上記第一の段階において、植物から水または有機溶媒を用いてケンペロール配糖体であるカメリアシドAまたはカメリアシドBを含有する植物抽出物を得るために、植物に約1〜6倍、好ましくは、約3倍の水またはエタノール、メタノール、ブタノール、エーテル、エチルアセテートおよびクロロホルムを含む群から選ばれるいずれか一種以上の有機溶媒、または、これらの有機溶媒と水との混合溶媒を注ぎ、常温下で1〜5回撹拌しながら抽出して脱脂する。次いで、脱脂された植物に約1〜8倍、好ましくは、約4倍の水または有機溶媒を注ぎ、1〜5回にわたって還流抽出した後、10〜20℃の温度下で1〜3日間沈積し、次いで、ろ過と遠心分離により残渣とろ液を分離する。この後、分離されたろ液を減圧濃縮して得たエキスを水に懸濁させた後、エーテルなどを用いて色素を除去し、次いで、水層をブタノールなどを用いて1〜5回にわたって抽出する。次いで、得られた有機溶媒を減圧濃縮してブタノールなどのエキスを得た後、これを少量のメタノールなどに溶かし、次いで、大量のエチルアセテートなどを加えて生成された沈澱物を乾燥させることにより、本発明による植物抽出物が得られる。
【0023】
上記第二の段階において、植物抽出物を酸、塩基、酵素または前記酵素を生み出す微生物を用いて加水分解してケンペロールを調製する。
【0024】
このとき、酸を用いる場合、植物抽出物に0.1N〜2N濃度、好ましくは、1N濃度の酸、または酸およびアルコールの混合溶媒(好ましくは、50%のエタノール混合溶媒)を加えた後、50〜100℃、好ましくは80℃の水浴中で1〜48時間、好ましくは、8時間加熱還流させて加水分解することにより反応液が得られる。
【0025】
塩基を用いる場合、植物抽出物を溶かした後、0.1N〜2N濃度、好ましくは、1N濃度の塩基、または塩基およびアルコールの混合溶媒(好ましくは、50%のブタノール混合溶媒)を加えて50〜100℃、好ましくは100℃の水浴中で1〜48時間、好ましくは、8時間加熱還流させて加水分解することにより反応液が得られる。
【0026】
酵素を用いる場合、植物抽出物を5〜20倍、好ましくは、約10倍の酸性緩衝溶液に溶解させた後、酵素を加えて約37℃の水浴中で約40〜55時間、好ましくは、約48時間撹拌しながら、薄層クロマトグラフィにより基質の消失率を確かめ、基質が完全に消失した時点で熱水(80〜100℃)中で5〜15分間加熱して加水分解反応を終了することにより反応液が得られる。
【0027】
上記酵素を生み出す微生物を用いる場合、植物抽出物を5〜10倍、好ましくは、約10倍のイオン水に溶解させた後、約121℃の温度下で30分間滅菌して約30℃まで冷却し、次いで、予め培養した微生物を液体量に対して5〜10%接種して30℃の温度下で2〜5日、好ましくは、5日間培養する。この後、薄層クロマトグラフィにより基質の消失率を確かめ、基質が完全に消失した時点で加水分解反応を終了し、培養液を5000〜10000rpmにて遠心分離して回収した沈澱物を蒸留水により3回洗浄した後、遠心分離して沈澱物として反応液が得られる。
【0028】
上記のように、酸、塩基、酵素または前記酵素を生み出す微生物を用いて加水分解した後、得られた反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、残渣にアルコールを加えて1〜5回撹拌し、次いで、沈澱させた塩をろ過により除去し、ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得、その後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム対メタノール=8対1ないし4対1)で分離することによりケンペロールが得られる。
【実施例1】
【0029】
以下、実施例および実験例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれら実施例および実験例に限定されるものではない。
【0030】
緑茶種抽出物の調製
緑茶種2kgにヘキサン6リットルを入れ、常温下で3回撹拌抽出して脱脂した後、脱脂された緑茶種1kgに80%のメタノール4リットルを注ぎ、3回還流抽出し、次いで、15℃の温度下で1日間沈積させた。この後、ろ過布によるろ過と遠心分離により残渣とろ液を分離し、分離されたろ液を減圧濃縮して得たエキスを水に懸濁した後、エーテル1リットルにより5回抽出して色素を除去し、水層を1−ブタノール500ミリリットルを用いて3回抽出した。これにより得られた1−ブタノール層の全体を減圧濃縮して1−ブタノールエキスを得、得られたエキスを少量のメタノールに溶かした後、大量のエチルアセテートに加えて沈澱物を得、生成された沈澱物を乾燥することにより、緑茶種抽出物250gを得た。
【実施例2】
【0031】
緑茶葉抽出物の調製
緑茶葉2kgにヘキサン6リットルを入れ、常温下で3回撹拌抽出して脱脂した後、脱脂された緑茶葉1kgに80%のメタノール4リットルを注ぎ、3回還流抽出し、次いで、15℃の温度下で1日間沈積させた。この後、ろ過布によるろ過と遠心分離により残渣とろ液を分離し、分離されたろ液を減圧濃縮して得たエキスを水に懸濁した後、エーテル1リットルにより5回抽出して色素を除去し、水層を1−ブタノール500ミリリットルを用いて3回抽出した。これにより得られた1−ブタノール層の全体を減圧濃縮して1−ブタノールエキスを得、得られたエキスを少量のメタノールに溶かした後、大量のエチルアセテートに加えて沈澱物を得、生成された沈澱物を乾燥することにより、緑茶葉抽出物150gを得た。
【実施例3】
【0032】
酸加水分解方法によるケンペロールの調製
上記実施例1に従って得られた緑茶種抽出物10gに20倍(v/w)の1N濃度の塩酸50%のメタノール溶液(v/v)を加え、80℃の水浴中で8時間加熱還流させて、カメリアシドAとカメリアシドBに結合された糖を加水分解した。次いで、反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、残渣にエタノール(200ミリリットル)を加えて撹拌(3回)した後、沈澱した塩をろ過により除去した。この後、ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム対メタノール=8対1ないし4対1)で分離することによりケンペロール0.95gを得た。
【実施例4】
【0033】
塩基加水分解方法によるケンペロールの調製
上記実施例1に従って得られた緑茶種抽出物10gを乾燥ピリジン(500ミリリットル)に溶かし、これにナトリウムメトキシド(粉末、10g)を加えて水浴中で8時間加熱還流させて、カメリアシドAとカメリアシドBに結合された糖を加水分解した。次いで、反応液を減圧濃縮して溶媒を除去し、残渣にエタノール(200ミリリットル)を加えて撹拌(3回した後、沈澱した塩をろ過により除去した。この後、ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム対メタノール=8対1ないし4対1)で分離することによりケンペロール0.25gを得た。
【実施例5】
【0034】
酵素分解方法によるケンペロールの調製
上記実施例1に従って得られた緑茶種抽出物10gを100ミリリットルの0.1モルの酢酸緩衝溶液(pH4.5)に溶解し、これに酵素2.5g(ヘスペリジナーゼ0.5g、ナリギナーゼ0.5g、セルラーゼ0.5g、β−グルクロニダーゼ0.2g、β−ガラクトシダーゼ0.5g、アミログルコシダーゼ0.3g;シグマ社製)を加えて37℃の水浴中で48時間撹拌しながら、薄層クロマトグラフィにより周期的に調べて、基質(カメリアシドAとカメリアシドB)が完全に消失した時点で熱水(80〜100℃)中で10分間加熱して反応を終了した後、反応液を減圧濃縮して溶媒を除去した。次いで、残渣にエタノール(200ミリリットル)を加えて撹拌し(3回)、沈澱物をろ過により除去した後、ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム対メタノール=8対1ないし4対1)で分離することによりケンペロール1.02gを得た。
【実施例6】
【0035】
微生物を用いたケンペロールの調製
上記実施例2に従って得られた緑茶葉抽出物10gを100ミリリットルのイオン水に溶解し、121℃の温度下で30分間滅菌して30℃まで冷却した後、予め培養したアスペルギルスニガー(Aspergillus niger)KCCM 11885を液体量に対して5〜10%接種して30℃の温度下で5日間培養した。次いで、薄層クロマトグラフィにより基質の消失率を調べて、基質が完全に消失した時点で加水分解反応を終了し、培養液を5000〜10000rpmにて遠心分離して回収した沈澱物を蒸留水により3回洗浄した後、遠心分離して沈澱物として反応液を得た。この後、上記沈澱物にエタノール(200ミリリットル)を加えて撹拌し(3回)、沈澱物をろ過により除去した後、ろ過されたろ液を減圧濃縮して粗生成物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(クロロホルム対メタノール=8対1ないし4対1)で分離することによりケンペロール0.62gを得た。
【実験例1】
【0036】
カメリアシドAおよびカメリアシドBの同定
上記実施例1に従って得られた緑茶種抽出物10gをシリカゲルカラムクロマトグラフィ(シリカゲル100g充填)により精製した。このとき、展開溶媒としてはクロロホルムとメタノールを用い、クロロホルム対メタノールの比を10対1から2対1まで濃度勾配を高めて分別物質を得、この分別物質から,0.82gのカメリアシドAと1.24gのカメリアシドBを得た。こうして得られた両物質を同定した結果(Varian Gemini 2000, 300MHz;Varian社製の器具による)、下記表1のごとき特性を示したため、カメリアシドAおよびカメリアシドBであると同定した。
〈カメリアシドAの物理化学的な性状〉
性状:薄い緑黄色の微細結晶
陽性FAB−MS:756.9[M+H]
〈カメリアシドBの物理化学的な性状〉
性状:薄い緑黄色の微細結晶
陽性FAB−MS:726.9[M+H]
【0037】
【表1】

【実験例2】
【0038】
ケンペロールの同定
上記実施例3ないし6に従って調製された物質は下記のごとき特性を示したため、ケンペロールであると同定した(Varian Gemini 2000, 300MHz;Varian社製の器具による)。
〈ケンペロールの物理化学的な性状〉
性状:薄い緑黄色の微細結晶
陽性FAB−MS:287[M+H]+
1H−NMR:6.1(1H,d,1.8Hz),6.3(1H,d,1.8Hz),6.8(2H,dd,9Hz),8.0(2H,dd,9Hz)
13C−NMR :94,467,99.248,104.518,116.265,123.710,130.649,137.069,147.970,158.200,160.480, 162.446,165.519,177.285
【実験例3】
【0039】
加水分解(酵素分解)後におけるケンペロールの含量変化
緑茶種抽出物を上記実施例1の方法に従って調製した後、上記実施例3の方法によって酵素による加水分解を行い、その後、加水分解反応前と加水分解反応後における変化を高速液体クロマトグラフィを用いて測定した。なお、加水分解反応前における緑茶種抽出物中に含有されているカメリアシドAおよびカメリアシドBの含量を測定した結果を図1に示し、加水分解反応後におけるケンペロールの含量を測定した結果を図2に示す。
【0040】
図1および図2に示すように、加水分解反応後において、カメリアシドAおよびカメリアシドBのほとんどがケンペロールに変っていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係るケンペロール配糖体から酸、塩基、酵素または前記酵素を生み出す微生物を用いてケンペロールを分離することを特徴とするケンペロールの調製方法によれば、植物、特に、緑茶種または緑茶葉からケンペロール配糖体、特に、カメリアシドAまたはカメリアシドBを含む植物抽出物を得た後、酸、塩基、酵素または前記酵素を生み出す微生物を用いて加水分解することにより、主な生理活性物質の一種であるケンペロールを大量に生産することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、実施例1における緑茶種抽出物を実施例3の方法により酵素を用いて加水分解する前における緑茶種抽出物中のカメリアシドAおよびカメリアシドBの含量を高速液体クロマトグラフィを用いて測定した結果を示す図である。
【図2】図2は、実施例1における緑茶種抽出物を実施例3の方法により酵素を用いて加水分解した後における緑茶種抽出物中のケンペロールの含量を高速液体クロマトグラフィを用いて測定した結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケンペロール配糖体から酸、塩基、酵素または前記酵素を生み出す微生物を用いてケンペロールを分離することを特徴とするケンペロールの調製方法。
【請求項2】
植物から水または有機溶媒を用いてケンペロール配糖体を含有する植物抽出物を得る第一の段階と、
前記植物抽出物を酸、塩基、酵素または前記酵素を生み出す微生物を用いて加水分解してケンペロールを分離する第二の段階とを含むことを特徴とする請求項1に記載のケンペロールの調製方法。
【請求項3】
ケンペロール配糖体は、カメリアシドAまたはカメリアシドBを含むものであることを特徴とする請求項1または2に記載のケンペロールの調製方法。
【請求項4】
第一の段階における植物抽出物は、緑茶種または緑茶葉に由来のものであることを特徴とする請求項2に記載のケンペロールの調製方法。
【請求項5】
有機溶媒としては、エタノール、メタノール、ブタノール、エーテル、エチルアセテートおよびクロロホルムよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の有機溶媒、または、これらの有機溶媒と水との混合溶媒を用いることを特徴とする請求項2に記載のケンペロールの調製方法。
【請求項6】
酸としては、塩酸、硫酸および硝酸よりなる群から選ばれるいずれか一種以上の酸、または、これらの酸とエタノール、メタノールおよびブタノールよりなる群から選ばれるいずれか一種以上のアルコールとの混合溶媒を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のケンペロールの調製方法。
【請求項7】
塩基としては、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の塩基、または、これらの塩基とエタノール、メタノールおよびブタノールよりなる群から選ばれるいずれか一種以上のアルコールとの混合溶媒を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のケンペロールの調製方法。
【請求項8】
酵素は、ケンペロール配糖体から糖部分を除去してケンペロールを分離するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のケンペロールの調製方法。
【請求項9】
ケンペロール配糖体は、カメリアシドAまたはカメリアシドBを含むものであることを特徴とする請求項8に記載のケンペロールの調製方法。
【請求項10】
酵素としては、グルコシダーゼ、アラビノシダーゼ、ラムノシダーゼ、キシロシダーゼ、セルラーゼ、ヘスペリジナーゼ、ナリギナーゼ(naringinase)、グルクロニダーゼ、ペクチナーゼ、ガラクトシダーゼおよびアミログルコシダーゼよりなる群から選ばれるいずれか一種以上を用いることを特徴とする請求項8に記載のケンペロールの調製方法。
【請求項11】
酵素を生み出す微生物としては、アスペルギルス属、バチルス属、ペニシリウム属、クモノカスビ属(rhizopus sp.) 、リゾムコール属、タラロマイセス属、ビフィドバクテリウム属、モルティエラ属(mortierella sp.)、クリプトコッカス属およびミクロバクテリウム属よりなる群から選ばれるいずれか一種以上を用いることを特徴とする請求項1または2に記載のケンペロールの調製方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−526250(P2008−526250A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551180(P2007−551180)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【国際出願番号】PCT/KR2005/001597
【国際公開番号】WO2006/093368
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(505118718)アモーレパシフィック コーポレイション (21)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【Fターム(参考)】