説明

ケース型熱管理素子およびその製造方法

熱管理素子は、封入材料で封入された異方性カーボンを含む温度管理構造(10,26,28)に包囲された電子素子(20)を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、たとえば電子装置における熱の分散を管理する熱管理素子およびその製造方法に関する。特に、本発明は、電子素子の熱管理素子に関する。
【0002】
電子素子または電気素子は、電力および熱の両方の源である。周知のように、このような素子の信頼できる動作を提供するために、安定した動作条件および温度を維持する必要がある。したがって、熱管理および分散のための有効な方法が不可欠である。典型的には、これは、電子素子または回路基板に隣接し、かつ接触して配置される熱管理素子を提供することによってなされる。回路に生じた熱は、熱管理素子に伝達され、分散される。最適な効率のために、熱管理構造は最大限に高い熱伝導率、有効な外部接続性および適切な機械的強さを有することが望ましい。
【0003】
熱的な条件が厳しい用途において、これらの目的を達成するために、いくつかの周知の素子は、熱伝導率の高い材料を複合構造中に封入する。しかしながら、これらの素子は、かなりの熱伝導性の損失、典型的には40%、ならびに質量およびかさの増加を伴って、限られた性能しか達成しないことがしばしばである。
【0004】
さらなる問題は、周知の熱管理システムの質量および体積が相対的に大きいことである。このことは、このような素子が組込まれる電子システムの全体の大きさに影響を与える。電子産業の一般的な素子が小形化に向かう今日では、このことは大いに欠点となる。
【0005】
熱管理システムは、ハイブリッド電子回路の支持構造としてしばしば用いられる。1つの周知の構成では、ベリリアがヒートシンクとして用いられる。これは、室温で約280W/mKの熱伝導率を有する。この上部には、金接点が順次的に形成される誘電体から成る層があり、これによって他の電気回路に接続することができる。この構成の欠点は、ベリリアが有害な材料であり、実際には発癌性があり、通常加工することが困難であることである。また誘電体は厚くなる傾向があり、これによって全体の構造が分厚くなる。さらに部分的に接点材料として金が用いられるために、全体の構造の製造コストが高くなる。
【0006】
公知の解決手段の1つは、国際公開第00/03567号パンフレットに記載されている。この内容は、参照によって本明細書に組込まれる。この明細書に記載される方法によれば、熱分解黒鉛または熱化熱分解黒鉛などの異方性カーボンプレートが封入材料で封入される。封入材料は、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル、ポリウレタン、ポリエステルまたは他の適切なポリマである。封入材料は、異方性カーボンに直接塗布され、カーボンの剛性を向上させる。この結果得られる素子は、典型的には室温で1,700W/mKの面内熱伝導率を有する。この場合、平坦性が備えられるが、この平坦性は、100mm×100mmのプレートにわたり、典型的には±5μmは許容される。さらに、この素子によって、封入されていない最初のカーボンプレートよりも著しく高い引張り強さを有する回路が提供される。このときの体積増加および熱伝導損失はわずかである。
【0007】
たとえば電力半導体の場合、電流および電力定格は熱環境に直接関連し、接合部の温度がそれらの定格限度よりも低くになるように制御するために、熱を交換する界面が必要である。業界において、このような電力素子の欠陥率は、100℃〜130℃の領域における動作条件に対して、接合部の温度が約20℃低下すれば、約50%低下し、また平均故障時間の統計においても、さらなる向上が見られることが判っている。信頼性に影響を及ぼすものとして、半導体とヒートシンクとの不完全な実装、高電圧動作による弧絡、半導体チップ基台とそのヒートシンクとの絶縁または接地界面の条件、およびパッケージ化されたプラスチック製の半導体の機械的損傷など、様々な要因が挙げられる。
【0008】
これらの要因によって様々な問題が生じる。不完全な実装は、接合部が過剰な温度になることによって生じる初期不良の主な原因である。従来技術においては、これらの問題に対処するために、各部品に対して、高品質で高価な表面仕上げが必要である。弧絡を回避するために、現状の解決手段においては、熱源とシンクとの間に界面分離仕様が必要とされるが、これを設けると熱伝達効率がさらに低下するので、熱グリースの使用が必要である。機械的損傷は、内部のボンドワイヤの損傷、耐水性についてはパッケージ全体の破壊を招き、ダイ割れも招き得るので、現状の解決手段においては、高価で複雑な動作を組合わせる必要がある。この結果、熱管理素子のさらなる改良が求められている。
【0009】
本発明は、添付の請求項に規定されている。電気素子は、封入材料に封入された異方性カーボンを含む熱管理素子に包囲されるので、堅牢で熱効率の良いシステムが提供される。
【0010】
図面を参照して、本発明の実施形態を一例として説明する。
概観すると、半導体部品または他の電気素子が、封入材料に封入された異方性カーボンプレートを含む熱管理素子に包囲されたケース型熱管理構造が提供される。熱管理素子は、半導体部品の各面に当接し、効率の良い熱伝達を可能にしながら、機械的堅牢性を与える。半導体部品は予め作製可能であり、その場合、電気接続リードを収容可能な適切な孔を含む構造である。これに代えて、半導体部品は、処理工程前でも処理工程中でも、ケース形成工程の一環として構築されてもよい。
【0011】
ケース型熱管理構造は、国際公開第00/03567号パンフレットに記載された熱管理素子の特性をすべて有するものの、3次元構造に電気接続性を与える可能性を高めている。この構造は、完全に包囲されてカスタマイズされた電子半導体チップ素子を各パッケージ内に提供して、堅牢性、安全性、および交換性を改良することが可能である。半導体部品への直接接続がケース形成工程中に行われる場合、ワイヤボンド相互接続が完全に除去できるので、多用途のより信頼できる素子を提供しながらも、製造時間および費用が減少する。このことは、特に、直接薄膜電子−ハイブリッド処理または界面処理をケース形成の順序に組入れることによって達成される。したがって、新しい熱管理構造技術は、ASIC界面処理に用いられる。
【0012】
素子を包囲する熱管理素子の作製に関する性質および方法は、国際公開第00/03567号パンフレットに完全に記載されており、当業者には明らかであるので、ここでは参照を簡単にするために要約だけを提供する。1つの実施形態において、モザイク配列または完全配列の熱化熱分解黒鉛のプレートは、たとえば、はけを使用して、カーボン表面に直接塗布することによって、ポリイミドで被覆される。被覆は、必要ならば、硬化される。たとえば、電気接点に必要な孔が被覆工程の前に孔あけによって形成される場合、孔のあいたプレートを封入し、その後、カーボンの封入状態が維持されるように、再度、より小さな直径の孔をあける。
【0013】
素子は基板に接着されてもよく、また、たとえば、適切に配置可能な薄膜回路の基板として、素子自体が使用されてもよい。素子は、その両面を使用でき、多層回路の基台または基板を形成できる。
【0014】
熱管理素子は、カーボンプレートが分子レベルで直接封入されることによって構成される。この封入によって、ミクロンレベルの溶融による他の伝熱材料との界面処理が可能になり、片面接続および両面接続の両方が可能な電子ハイブリッド技術が提供される。内部のカーボン基板は、その固有の伝熱能力が保たれ、関連パラメータK/ρ(熱伝導率/密度)で表される伝熱特性は、銅に対して18〜20、アルミニウムに対してほぼ90向上する。氷点下の温度では、この改良因子は、さらに急激に増大する。封入層は、典型的には20ミクロンであるので、数百ミクロンの分厚い基板においては、全体の体積に対してわずかな増大であることから、熱伝導率の減少はわずかであり、純粋な強度および表面の完全性などの機械的な性質を高めながら、カーボンプレートの基本的な熱的性質が保たれる。素子は、機械的な安定性を備えた堅牢な構成をしており、低い密度、高い面内熱伝導率、および直接電気処理の範囲を維持しつつ、高い熱伝導率ハイブリッドの新しい分野を提供する。
【0015】
上述の種類の熱管理構造は、ケースに包囲された電子素子を構成する様々な方法を図示する添付の図面により詳細に示されているように、本明細書に記載されるケース型熱管理構造の基本の一部を成す。
【0016】
第1の実施形態において、ケース型熱管理構造は、予め作製された、または予めパッケージ化された電子素子を含み、図1〜図7を参照して以下に示すように構成される。
【0017】
まず、図1に関して、一様に符号10で示される熱管理素子は、異方性カーボンプレート12とポリイミド封入被膜とを含む。結果として得られるユニットは、表面に順次接着されるいかなる素子からも絶縁される、効果的な誘電体基板である。
【0018】
図2に関して、熱管理素子10は、第1外側規定テンプレート16内に受容されて、たとえば、取外し可能にテープで接着される。このテンプレート16は、素子10を囲み、その厚みによって、対応する層の最終的な層厚が規定される。位置決めドエル凹部18は、以下でより詳細に述べるように、テンプレート16上に設けられる。
【0019】
図3に関して、予めパッケージ化された半導体素子20などの電子部品は、第2テンプレート22に設けられる。第2テンプレート22は、テンプレート16に対応しており、ドエル受容凹部21を有し、熱管理素子10に対して素子20の位置を規定する。
【0020】
図4に関して、熱管理素子10および電子部品20を含む2層が、たとえば標準的な界面のエポキシ溶融によって接着されて、図示する構造が提供される。この構造において、電子部品20は、熱管理素子10上のエポキシ層24または他の界面処理剤の上に位置付けられる。配置は、以下でより詳細に述べるように、ドエル凹部20,21を使用して、テンプレートを位置付けることによって行われる。
【0021】
ここで図5に関して、電子部品20と同じ厚みを有する他の熱管理素子26は、部品20の形状と一致する孔27が形成されるように、適切な方法で切除される。第2熱管理素子26は、適切であればいかなる方法で形成されてもよく、たとえば、はじめに切削されてから全体が封入されてもよい。第2熱管理素子26は、第3テンプレート28に受容される。この第3テンプレート28は、各層の厚みを規定し、ドエル凹部29を介して第1テンプレートに対して位置付け可能である。次に、第2熱管理素子26は、図6aに示すように、再度エポキシ溶融によって、電子部品20および第1熱管理素子10に接着される。下方の熱管理素子層10と、素子26によって側面が封入された素子20とがエポキシ層24によって接着される構造になる。
【0022】
第3熱管理素子28(図6bに示す)は、第4テンプレートに設置されるが、上述の工程と類似した方法によるので、図示しない。第3熱管理素子28は、第1熱管理素子10の鏡像であり、図6aに示した構造の上にエポキシ溶融されて、図6bに示した構造が得られる。この構造において、電子部品20は、エポキシ層24によって接着された熱管理素子10,26,28に包囲される。
【0023】
この作製方法は、当業者に周知であり、ここでは要約して説明するだけとする。標準的な熱管理素子界面処理技術の使用が可能である。各要素の関連する面は、界面に必要とされる側にエポキシが塗布されており、部品は、適切にエポキシ溶融されて加工される。この工程の順序は適宜変更でき、当然のことながら、他の方法を採用してもよい。
【0024】
図7を参照して、新たな作製技術の1つを説明する。図7は、明確に示すために実物大では示してない。図に示すように、基台プレート70は、たとえばアルミニウム製でよいが、そこから上方に突起する細長いドエル72を有する。第1熱管理素子10を担持する第1テンプレート16と、電子部品20を担持する第2テンプレート22とは、ドエル72が各ドエル凹部18,21に受容されて、基台プレート70に実装される。テンプレート16,22はドエルに正確に位置付けられるので、各部品を相互に正確に位置付けることが可能である。テンプレート16,22が一旦実装されると、ドエル凹部76を有する最上層プレート74がさらに設けられ、ドエル72に実装される。組立体は加圧治具に置かれる。そして、基台プレート方向に加圧される最上層プレート74と、各部品とは、従来のエポキシ溶融技術を用いて、加圧真空下でエポキシ溶融されて加工される。
【0025】
したがって、各テンプレートの厚みによって、エポキシ界面層を含む各層の厚みが規定されることが判る。図7に示された特定の配置においては、図4に示したような、温度管理素子10に実装された半導体部品20が提供される。そして、残余の温度管理素子26,28は、上述のような各テンプレートの正確な位置付けおよび加工を経て、別の工程または単独の工程のいずれかにおいて、組立体上に実装され得ることが判る。さらに、共通のドエル72は、テンプレートにも、最上層プレート74にも使用可能であることが判る。つまり、ドエルの1セットはテンプレートに、別のセットは最上層プレートに、適宜、使用可能である。部分的に組立てられた素子を各テンプレートに保持させて次の作製を行う代わりに、各部分を組立てた単一の素子テンプレートを使用してもよい。さらに最適化させると、基台プレート70および最上層プレート74は、基台プレートに埋込まれたばねによって、相互に離反するように付勢され、相互に近接するように、これらのプレートに圧力が加えられると、ばねは完全に基台70内に受容される。
【0026】
この配置の結果、各部品は、ドエル72によって、対応する凹部76において、加圧プレート74の直線軸受けに関して、正確で厳密に位置付けられる。
【0027】
予めパッケージ化された電子部品20などの部品が電気接点を必要とする場合、必要に応じて、熱管理素子10(またはいずれかの熱管理素子)の封入被覆14は、黒鉛のコアに到達するまでの範囲を切取ることによって、適当な部分を除去してもよい。同様に、第3熱管理素子26は、外部の電力や制御が半導体パッケージ20から導線に到達できるように、孔あけされてもよい。
【0028】
この結果、予め完全に包囲されてパッケージ化された半導体素子が提供される。ヒートシンクの取付けは、適宜、可能であり、当業者にはよく知られているように、たとえば放射による熱除去および外部の対流に適している。
【0029】
図8〜図12を参照して以下に述べる第2の実施形態においては、素子作製工程を処理または前処理段階としてケース形成工程に含ませることによって、ワイヤ相互接続に必要な条件が取除かれている。
【0030】
図8を参照すると、2つの半導体部品30,32が設置され、下方の温度管理素子10と、適切に孔あけされた他の温度管理素子34とに接着されることが判る。この構成に至るまでの処理工程は、図1〜図4を参照して上述したとおりであるので、簡潔にするために、ここでは繰返さない。部品30,32は、第1の実施形態において説明した、予めパッケージ化された素子20において、そのままでは電気的に相互接続されない別個の部品であってもよい。
【0031】
図9を参照すると、単独の能動素子内にある要素間、素子間、または素子と受動相互接続との間において、直接かつ加工された相互接続がなされている多層電子ハイブリッドを製造する第1工程が示されている。
【0032】
各層は、標準的なマスキングおよびエッチング技術を使用して構成される。これらの技術は当業者には明らかであるので、ここでは要約して述べるだけとする。上方の表面層は、ポリイミドでマスキングされて加工され、続く薄膜処理のベースとなる層を形成する。そして、アルミニウム、または銅の層などの他の適切な材料を蒸着することによって、電気接続性が備えられる。これによって、図9に示した配置が得られる。この配置は、特に、ポリイミド層36が構造の上に重ねられるが、アルミニウム膜接続38を介して、素子30,32間の接続および外部との接続が可能である。
【0033】
素子30,32に対する電気接続は、アルミニウム、または銅の層などの他の適切な材料を、素子30および32に対向する熱管理素子10のポリイミド封入14の表面に蒸着することによって、熱管理素子10に対向する側に設けられると理解される。したがって、アルミニウム、銅、または他の適切な材料による電気接続は、素子30,32と熱管理素子10との間に位置するように設けられる。
【0034】
たとえば半導体素子下における電力供給制御に必要な、さらにカスタマイズされた電気接続は、さらに他の相互接続を設けることによって、図10に示すように、上述のエッチングおよびマスキング工程を繰返しながら、追加される。図10には、第2層が設けられている。図に示すように、さらに他のポリイミド層36およびさらに他の電気接続38が設けられている。
【0035】
素子30,32ならびに相互接続36,38を完全に包囲するには、図11に見られるように、図6および図7を参照して説明した方法で、構造と上方の熱管理素子を一緒に包囲することによって、達成される。図11では、さらに他の熱管理素子44が半導体部品30,32の上面を覆って、さらに他のエポキシ層37によって、接着されている。当然ながら、多層薄膜は、接続を可能にするために、ケース型構造を越えて延びる。
【0036】
第2の実施形態の構造を作製する他の方法は、図12を参照して述べる。この方法では、構造を全体として作製するとき、半導体素子および素子との相互接続に関する電気接続処理工程を別の工程または前処理工程として実施する。特に、半導体素子30,32は、図7に示した基台プレート70のドエルに対するドエル受容凹部48を備えるテンプレート46に裏返して設置される。テンプレート46は、平坦性、空間幾何学および適度に高精度なドエリングを有する一体化したアルミニウムテンプレートと背面基板を含む。したがって、この配置によって、多層薄膜処理に基板材料が供給されるとともに、能動素子の必要な位置付けがなされる。図9および図10に関連させて述べたとおり、連続するポリイミド層およびアルミニウム層の蒸着およびエッチングによって、テンプレート46上には多層薄膜50が構成される。また、ドエル凹部54は、薄膜50のポリイミド層に形成されて、以下で説明するように、エポキシ溶融処理において熱管理素子のケース形成構造に対して、ハイブリッド構造を正確な相対配列にする。
【0037】
素子30,32と薄膜50とを含む多層電子ハイブリッド構造が、テンプレート46上に作製されて加工されてから、エッチング(および相互接続の適切なマスキング)によって、アルミニウムテンプレート46が除去されると、半導体30,32に対して統合される、すべての必要な電気接続性を備えたフレックス−ハイブリッド組立体が得られる。そして、処理中、異方性カーボン基板に素子を封入する前に、作動ハイブリッド構造の電気接続性試験を実施することができる。この方法に従ってケースに入った素子を構成する組立工程は、フレックスハイブリッドをそのまま作製するのではなく、ドエル部品として提供することを除いては、効果的に上述のとおり行われる。特に、ハイブリッド構造は、上述の方法でドエル凹部54によって位置付けられ、第1工程で第2熱管理素子34に実装されて、必要なレベルの平坦性が提供される。そして、第2熱管理素子は、第1熱管理素子10および第3熱管理素子44とともに実装される。すべての部品は、上述したとおり、エポキシ溶融される。なお、素子30,32の側面と第2熱管理素子34との間の接着は、エポキシが自然に流れることよって成される。作製後、熱管理素子10,34,44を越えて延びるフレックス−ハイブリッド組立体の重複部分は、相互接続に必要な部分のみを残して切除される。
【0038】
薄膜層を提供する方法は、上述したが、国際公開第00/03567号パンフレットにも見られ、その中で説明されている最適化は適宜採用可能である。アルミニウムは、熱管理素子のポリイミド(または他の材料)またはアルミニウム基板上に、5μmの厚みを有する層を蒸着可能であるように、典型的には薄膜アルミニウム技術を用いて、直接蒸着されてもよい。熱管理素子の被覆された表面は平坦であるので、アルミニウムを蒸着するために用いられるリソグラフィの解像度は良好である。このことは、微小な特徴を容易に限定可能であることを意味する。その後、ポリイミドを、ろくろ塗りまたはスクリーン印刷によってアルミニウム上一面に施すことが可能であり、8μmというわずかな厚みのポリイミドが提供される。標準的な作製方法を用いて、その後、孔がポリイミドを介して適切な位置に規定され、これらの孔を充填する金属から成る次の層がアルミニウムへの電気的接触部を与える。金属から成る連続する層の間には、典型的には、ポリイミドの層が存在する。
【0039】
図13〜図16に示した第3実施形態において、図1に示した熱管理素子は、その表面の一部分にあるカーボンプレートが金属または別の導電性材料に直接接触するように、製作可能である。この金属領域の区域および厚みは、カスタマイズ可能であり、必要であれば、このような区域は、素子が完成しても被覆されなくてよい。このことは、たとえば、金属表面が、ろう付けによって、または適切な接着剤を使用することによって、能動素子などの外部の素子の取付けに使用される場合に、利点となり得る。
【0040】
このような素子を製作するために、洗浄済みプレート12は、化学析出法、電気めっき、スパッタリング、またはこれに類似の方法を使用して、金属(たとえば銅)で、たとえば数ミクロンから数十ミクロンの厚みになるまで被覆される。この被覆は、金属の単層、同一または異なる金属を挟込んだ多層膜、異なる金属の組合せであってもよく、または合金からなるそれらでもよい。2以上の底層が含まれていてもよく、各底層は1以上の上述の技法によって製作される。
【0041】
被覆後、カーボン−金属構造の表面は、最終的な金属構成の所望のパターンに沿ってマスキングされてよく、不所望の区域または領域にある金属は、エッチングによって除去する。エッチング後も、金属11’の所望の表面積は、カーボンプレートに直接接触したままの状態である。
【0042】
その後、カーボンプレートの次の封入が、好ましくはポリイミドで行われる(パターン付けされた金属領域を除く)。ポリイミドで覆われた領域14’は、カーボンと外面とを電気的に絶縁させる一方、晒されたままの部分は、金属とカーボンプレートとを直接接続させる。必要に応じて、金属区域を含むプレート全体を被覆し、続けて金属領域からその被覆を除去してもよい。
【0043】
もう1つの方法として、金属領域は、被覆物で被覆されたままであってもよく、この場合は、カーボン12と導電接続しないが、それでもなお、この被覆は、カーボンプレート12の全体または一部分を遮蔽するために、電磁的に遮蔽する材料として用いられる。このことは、たとえば、上述したような技法を使用して、カーボンプレート12の表面に網目状に金属を塗布し、素子10全体を封入することによって、達成可能である。
【0044】
図13は、カーボンプレート12を金属11の薄い層で最初に被覆した後の素子を図示している。図14は、エッチング後に金属の所望の区域11’を示し、図15は、ポリイミド被覆14’と晒された金属区域11’とを有するプレートを示している。図16は、第3の実施形態に係る素子の平面図であり、図15は、破線に沿って切断した部分の断面図である。
【0045】
熱管理素子は、封入層に封入された異方性カーボンと、電気絶縁材料および導電性材料の個別素子とを含み、次のような方法によって製造可能である。導電層を形成する導電性材料で異方性カーボンプレートを被覆し、この導電層を部分的に除去して、結果的に得られた構造を電気絶縁材料で封入することによって、熱管理素子が作製される。
【0046】
図9に関連して、結果として、素子30,32が熱管理素子10のカーボンプレートに電気接続されないように、素子30,32に対して、これらの素子および熱管理素子10間に電気接続性を与えることが可能であることは上述した。これとは対照的に、第3の実施形態の熱管理素子は、アルミニウムまたは銅の軌道、または他の適切な電気接続を使用して、素子30,32を金属の晒された領域11’に接続させることによって、素子30,32とカーボンプレート12との間に電気接続性を与えるようにしてもよい。
【0047】
したがって、本発明は、非常に改良された、堅牢で熱効率のよい素子のパッケージ技術を提供する。この技術では、内部ボンドワイヤを要しない薄膜構造が使用され、より堅牢な改良型電気内部接続が可能である。フレックス−ハイブリッド組立体は内蔵型のため、シェルフから離して設置することが可能である。さらに、半導体で発生する熱の大部分は、通常、数ミクロンまたは数十ミクロン上部の構造から発生するものであることを考えれば、封入処理は、素子の最も関連する部分との最適な熱接触を提供していることになる。
【0048】
当然のことながら、異なる各実施形態の局面は、適宜置換えられても併用されてもよい。上述のように、熱管理素子は、半導体に使用しても、他の電気素子のパッケージに使用しても、適切な冷却/伝熱環境であれば、いかなる環境においても、国際公開第00/03567号パンフレットに記載された最適化と組合わせて、同様に良好な使用が可能である。同じように、上述の特定の材料および作製技術は、適宜変更可能であり、各工程は、適切な順序であれば、いかなる順序でも実施可能である。ケース形成技術は、ケース型熱管理素子の適切な再構成と類似または異なる形状の1または複数の部品に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る熱管理素子の側断面図である。
【図2】外側規定テンプレートに入れられた図1の熱管理素子の斜視図である。
【図3】外側規定テンプレートに入れられた半導体素子の斜視図である。
【図4】図1の熱管理素子上に実装された図3の半導体素子の断面図である。
【図5】外側規定テンプレートに入れられた、さらに他の熱管理素子の斜視図である。
【図6a】図1および図5の熱管理素子に実装された図3の半導体素子の断面図である。
【図6b】図1および図5の熱管理素子と、さらに他の熱管理素子とに挟まれた図3の半導体素子の断面図である。
【図7】作製方法を示す分解斜視図である。
【図8】第2の実施形態に係る、熱管理素子に部分的に包囲された複数の半導体素子の断面図である。
【図9】図8の実施形態に薄膜層を追加した断面図である。
【図10】図8の実施形態に薄膜層をさらに追加した断面図である。
【図11】完全に包囲された図8〜図10の実施形態を示す断面図である。
【図12】図8〜図11の実施形態を作製する別の方法による処理工程を示す側断面図である。
【図13】図15および図16に示す第3の実施形態を作製する処理工程を示す側断面図である。
【図14】図15および図16に示す第3の実施形態を作製する処理工程を示す側断面図である。
【図15】第3の実施形態の側断面図である。
【図16】第3の実施形態の平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱管理素子に包囲された電子素子を含み、熱管理素子は、封入材料に封入された異方性カーボンを含むことを特徴とする電気システム。
【請求項2】
熱管理素子は、電子素子の各表面に隣接し、ケースを構成する複数の要素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電気システム。
【請求項3】
封入材料は、切取られて、異方性カーボンとの電気接点が得られることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気システム。
【請求項4】
電子素子が予めパッケージ化されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気システム。
【請求項5】
熱管理素子は、電子素子との電気接点を収容することを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
電子素子は、単一または複数の薄膜層によって相互接続される個別部品を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
異方性カーボンは、熱分解黒鉛または熱化熱分解黒鉛であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
封入材料は、異方性カーボンに直接塗布されて、カーボンの剛性を向上させることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
封入材料は、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル、ポリウレタン、ポリエステル、または他の適切なポリマであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
封入材料に封入された異方性カーボンを含む熱管理素子で電子素子を包囲することを特徴とする電気システム作製方法。
【請求項11】
熱管理素子は、ケースを構成する複数の要素を含み、電子素子を、その表面がケースを構成する要素に隣接するように位置付けることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
電子素子は、個別の部品を含み、電子素子を包囲する前に、単一または複数の薄膜層によって部品間が相互接続されることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
第1および第2端部プレートと、端部プレートの相対的に位置付けられた動作を案内し、これらの間に電気システムを作製する電気システム部品を位置付けるガイド構造とを含むことを特徴とする電気システム作製装置。
【請求項14】
第1および第2端部プレートを相互に加圧する加圧部品をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
第1および第2端部プレートを相互に離反するように付勢するように構成された付勢手段をさらに含むことを特徴とする、請求項13または14に記載の装置。
【請求項16】
端部プレート上のガイド構造に熱管理素子を実装し、ガイド構造に電子素子を実装し、熱管理素子と電子素子とを合わせることを特徴とする電気システム作製方法。
【請求項17】
熱管理素子は、ケースを構成する複数の要素を含み、ケースを構成する要素に電子素子を結合させて、熱管理素子で電子素子を包囲することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
単一または複数層薄膜によって相互接続される個別部品を含み、該膜は、合わせられるべき部品に対して素子を位置付ける位置付け要素を含むことを特徴とする電子素子。
【請求項19】
テンプレートに個別部品を実装し、テンプレート上の個別部品間に単一または複数層薄膜による相互接続を作製することを特徴とする、個別部品を有する電子素子の作製方法。
【請求項20】
さらに、テンプレートを除去することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
さらに、前記膜に位置付け要素を形成することを特徴とする、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
図面を参照して明細書に記載されたシステムまたは方法。
【請求項23】
導電層を形成する導電性材料で異方性カーボンを被覆し、熱管理素子の表面に導電性領域が与えられる程度に導電層部分を除去し、得られた構造を、熱管理素子の表面に電気絶縁領域が与えられる程度に、電気絶縁材料で封入することを特徴とする方法。
【請求項24】
導電性領域を含む素子全体は、電気絶縁材料で封入されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
電気絶縁材料は、続いて導電性領域から除去されることを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
導電性領域は、封入されないままであることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
導電層は、金属、金属の組合せ、同一または異なる金属の層、または合金を含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
封入層に封入された異方性カーボンのプレートを含み、該層は、電気絶縁材料の個別の領域および導電性材料の個別の領域を含むことを特徴とする熱管理素子。
【請求項29】
導電性材料は、金属、金属の組合せ、同一または異なる金属の層、または合金を含むことを特徴とする、請求項28に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2006−525660(P2006−525660A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506209(P2006−506209)
【出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001886
【国際公開番号】WO2004/097934
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(501008923)クイーン メアリー アンド ウェストフィールド カレッジ (14)
【氏名又は名称原語表記】Queen Mary and Westfield College
【住所又は居所原語表記】Mile End Road,London,U.K.
【Fターム(参考)】