説明

ケーソン用型枠の内型枠装置

【課題】内型枠装置の型抜き及び型枠堰板表面の清掃や剥離剤の塗布作業を容易且つ迅速に成し得て、ケーソン構築作業の労力及び製作時数を削減することができ、しかも高い安全性を以てケーソンの施工を行うことが出来るケーソン用型枠の内型枠装置を提供する。
【解決手段】外側面に側壁堰板2が架設された少なくとも二対の側壁型枠パネル4を互いに向き合わせて箱状に形成し、ケーソン10の空洞11の内壁5に取付けられる受金具6と、内型枠装置1の側壁型枠パネル4の下端に取付けられると共に、受金具6に回動可能に支承される係止金具14とから成る係合治具を設け、側壁型枠パネル4を内方に傾動可能に設けたケーソン用型枠の内型枠装置1において、側壁型枠4を受金具6よりも下方で保持し、且つ足場となる支持ブラケット9を井桁状に配する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、港湾工事、例えば岸壁・防波堤の施工に使用されるケーソン(鉄筋コンクリート製の潜函)を構築するために使用される型枠であって、特にその内型枠装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先に、図1及び図2に基づいて従来の工法を説明し、本発明の目的を明らかにする。港湾工事で使用されるケーソン10は、縦5〜30m・横7〜30m・高さ7〜30m位で、その内部縦方向に複数の空洞11を形成した大規模な鉄筋コンクリート製の構造体である。その製作工事は内型枠と外型枠との内部に鉄筋を配してコンクリートを打設する所謂型枠工法により、一定高さの型枠装置を反復使用して1単位のセグメント(分節)10A、10B、10C及び10Dを順次上方へ多数段積み上げ所望の高さに構築して行く方法により行われる。このため、1単位のセグメントのコンクリート打設が終了した後、次段のセグメントを構築するに際し、型抜きした後の型枠装置の堰板表面を清掃したり脱型を容易にするために剥離剤を塗布する必要があり、従来これらの作業は、型抜きした型枠装置12をクレーン13により構造体(ケーソン)の外に一旦撤去して行われていた(図2参照)。
【0003】
しかしながら、以上述べたように従来工法は、1単位のコンクリートセグメントの打設を完了した都度、型枠を構造体の外に移動して清掃及び剥離剤の塗布作業を行っているため、全体的に作業者数や工程数が多くなり、かなりの労力や製作時数を要するものであった。また、特に、内型枠装置の撤去によってできる空洞に作業者が墜落する危険性や内型枠装置を懸吊して移動するクレーン作業が多くなるため安全性の面で好ましくないという欠点があった。そこで、外側面に側壁堰板が架設された少なくとも二対の側壁型枠パネルを互いに向き合わせて箱状に形成されたケーソン用型枠の内型枠装置において、ケーソンの空洞の内壁に取付けられる受金具と、ケーソン用型枠の内型枠装置の側壁型枠パネルの下端に取付けられると共に、前記受金具に回動可能に支承される係止金具とからなる係合治具を設け、側壁型枠パネルを内方に傾動可能にした内型枠装置により型枠装置を構造体(ケーソン)外に撤去することなく構造体(ケーソン)上でパネル堰板表面の清掃及び剥離剤の塗布作業を行うことができるものが提案されている(特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特許第2814363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明もまた、上記問題点に鑑み、特に、内型枠装置の型抜き及び型枠堰板表面の清掃や剥離剤の塗布作業を容易且つ迅速に成し得て、ケーソン構築作業の労力及び製作時数を削減することができ、しかも更に高い安全性を以てケーソンの施工を行うことが出来るケーソン用型枠の内型枠装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明では、外側面に側壁堰板が架設された少なくとも二対の側壁型枠パネルを互いに向き合わせて箱状に形成され、ケーソンの空洞の内壁に取付けられる受金具と、ケーソン用型枠の内型枠装置の側壁型枠パネルの下端に取付けられると共に、前記受金具に回動可能に支承される係止金具とから成る係合治具を設け、前記側壁型枠パネルを内方に傾動可能に設けたケーソン用型枠の内型枠装置において、前記側壁型枠を前記受金具よりも下方で保持し、且つ足場となる支持ブラケットを井桁状に配したことを第1の特徴とする。また、支持ブラケットが縦横伸縮自在に設けられていることを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は以下の優れた効果がある。
(1)内型枠装置を構造体(ケーソン)の外に移動させることなく、内型枠装置の型抜き及び型枠表面の清掃や剥離剤の塗布作業を行うことができる。
(2)内型枠装置の撤去によってできる空洞へ作業者が墜落する危険がない。
(3)内型枠装置を懸吊して移動するクレーン作業を減らすことができるので、ケーソン構築作業全般の労力及び製作時数を削減することができ、しかも安全性が向上する。
(4)支持ブラケットが縦横伸縮自在に設けられているので、構築すべき空洞の大きさに自由に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。図1は構築されたケーソンの斜視図、図2は従来工法を示す説明図、図3は本発明に係る内型枠装置を示す斜視図、図4は本発明工法を示す縦断面図、図5は係合治具を示す拡大正面図、図6は係合治具を示す拡大側面図である。
【0009】
まず、図3を参照してケーソン用型枠の内型枠装置1の主たる構成について述べる。内型枠装置1は、支柱3の下端部を残して外側面に複数の側壁堰板2が架設された二対の側壁型枠パネル4を互いに向き合わせて箱状に形成される。無論、これら側壁型枠パネル4に囲まれた型枠内部には打設したコンクリートの重さによって型枠が変形しないようにコンクリートが硬化するまで各側壁型枠パネル4を支持するための梁台(作業台)8が空洞11内に配置された井桁状の支持ブラケット9上に固定又は着脱自在に立設される。
【0010】
本発明に係るケーソンの施工においても、基本的には上記した内型枠装置1を用いるが、これに側壁型枠パネル4を内方に傾動させるための係合治具7(図5及び6参照)を付加することによって本発明の目的を達成する。通常、既に硬化したコンクリートセグメントWの空洞11の内壁5には、次のセグメントの施工に際し、支持ブラケット9を係止するための受金具6を取付ける必要があるが、本発明ではこの受金具6の上面平坦部に凹溝6aを設け、ブラケット9の端部9aにその下端14bを連結されたスイングアーム14の横杆14aを係合させて懸吊固定される。
【0011】
井桁状の支持ブラケット9は、その端部9aを根太9bを介して四方に伸縮自在に設けられ、空洞11の内径に応じて長さを調節した後、根太締付バンド9cにて固定される。また、支持ブラケット9上に立設される主柱8aと根太8bとから骨組みをなす梁台8もこれに対応して根太8bを伸縮させて根太締付バンド8cによって固定する。すなわち、支持ブラケット9、梁台8共に根太9b及び根太8bの長さを自由に変えることで縦横に伸縮自在に設けられ、構築するケーソンの空洞の大きさに自在に対応することができるようにされている。
【0012】
側壁型枠パネル4の下端には係止金具7を取付けておき、この係止金具7の横棒(嵌合ピン)7aをブラケット9の端部9aに設けられた受金具15の凹所に嵌合させ係止するようにした。したがって、係止金具7の横杆(嵌合ピン)7aは受金具15の凹所に、横杆(嵌合ピン)7aの軸線回りに回動可能となり、側壁型枠パネル4を傾動可能に支承することができる。
【0013】
コンクリートを打設し、このコンクリートが硬化したならば、この横棒(嵌合ピン)7aを支点に各側壁型枠パネル4を内方に傾動させる。これによって新たに打設したコンクリートNWの内壁面に密着していたパネル堰板2を剥離することができる。そして、型抜きされた内型枠装置1は、そのまま傾動させた状態でモップ等を使用してパネル堰板2表面の清掃を行った後、剥離剤を塗布し、次段のコンクリートセグメントを打設するために上方へ移動して据付け、側壁型枠パネル4を鉛直状態に復帰させて使用する。尚、本実施例においては、パネルの傾動具合を係止金具の取付け角度や位置関係を調節することによって行われているが、油圧シリンダーやターンバックル方式等の伸縮手段を講じて傾動させるようにしたものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は構築されたケーソンの斜視図である。
【図2】従来工法を示す説明図である。
【図3】本発明に係る内型枠装置を示す斜視図である。
【図4】本発明工法を示す縦断面図である。
【図5】係合治具を示す拡大正面図である。
【図6】係合治具を示す拡大側面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 内型枠装置
2 側壁堰板
3 支柱
4 側壁型枠パネル
5 空洞内壁
6 受金具
6a 凹溝
7 係合金具
7a 係止金具の横杆
8 梁台(作業台)
8a 主柱
8b 根太
8c 根太締付バンド
9 支持ブラケット
9a ブラケット端部
9b 根太
9c 根太締付バンド
10 ケーソン
11 空洞
12 型枠装置
13 クレーン
14 スイングアーム
14a スイングアームの横杆
14b スイングアームの下端
15 受金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側面に側壁堰板が架設された少なくとも二対の側壁型枠パネルを互いに向き合わせて箱状に形成され、ケーソンの空洞の内壁に取付けられる受金具と、ケーソン用型枠の内型枠装置の側壁型枠パネルの下端に取付けられると共に、前記受金具に回動可能に支承される係止金具とから成る係合治具を設け、前記側壁型枠パネルを内方に傾動可能に設けたケーソン用型枠の内型枠装置において、前記側壁型枠を前記受金具よりも下方で保持し、且つ足場となる支持ブラケットを井桁状に配したことを特徴とするケーソン用型枠の内型枠装置。
【請求項2】
支持ブラケットが縦横伸縮自在に設けられていることを特徴とする請求項1記載のケーソン用型枠の内型枠装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−241904(P2006−241904A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61180(P2005−61180)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(505082187)
【出願人】(505082198)
【Fターム(参考)】