説明

ケーブルの移動解析装置

【課題】ケーブルの移動力を簡易かつ短時間に求めることができるケーブルの移動解析装置を提供すること。
【解決手段】車両が上部を通過する地盤内の管路に敷設されたケーブルの水平方向の移動を解析する装置であって、車両が通過する際の地盤の振動解析を行って車両の移動に伴うケーブル近傍部分の土壌粒子の水平速度を求め、該水平速度と車両の水平方向位置との関係をもとに、車両の進行方向に向かって、車両の進行方向に速度成分を有する第1前進区間と車両の進行方向とは逆方向に速度成分を有する後進区間と再び車両の進行方向に速度成分を有する第2前進区間との各移動距離を少なくとも算出する振動解析部21と、各区間毎に、ケーブルの単位長さあたりの重量と管路に対するケーブルの摩擦係数と各区間の移動距離とを乗算した区間移動力を求め、各区間移動力をベクトル演算した値をケーブルにかかる移動力として算出する移動力解析部22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両が上部を通過する地盤内の管路に敷設されたケーブルの水平方向の移動を解析するケーブルの移動解析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路下に埋設された管路内のケーブルが車両進行方向に移動する、いわゆる波乗り移動現象は、都市部において重要な問題となっており、このケーブルが接続される部分において大きな応力を発生させ、接続不良や中継機器の損壊などを生起する。
【0003】
その概要は、図11に示すように、地盤1内部に管路2が埋設され、この管路2内にケーブル3が敷設され、この地盤1上を車両4が移動することによって、地盤1に地盤撓み5が生じ、この地盤撓み5の波に地盤粒子が乗ることによって、車両4の進行方向にケーブル3を移動させる移動力Fが発生するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nakagawa 「Creepage Phenomenon of HPOF Cable」 IEEE Summer Meeting (1983) 311-8 (p7)
【非特許文献2】上林他 「電力ケーブルの波乗り移動の研究(第1報)」平成19年5月 電気学会エネルギー部門大会予稿集
【非特許文献3】土木学会舗装工学委員会舗装構造小委員会 著「多層弾性理論による舗装構造解析入門―GAMES(General Analysis of Multi‐layered Elastic Systems)を利用して (舗装工学ライブラリー (3))」2005年6月(土木学会)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したケーブルの本質的な波乗り移動現象は未解明のままであり、従来の移動量の理論値と実測値とに大きな乖離があるという問題点があった。
【0006】
一方、簡易質点モデルを用いた地盤の振動解析を行って、直接、ケーブルの移動力を求めようとすると多大な時間がかかるという問題点があった。
【0007】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ケーブルの移動力を簡易かつ短時間に求めることができるケーブルの移動解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかるケーブルの移動解析装置は、車両が上部を通過する地盤内の管路に敷設されたケーブルの水平方向の移動を解析するケーブルの移動解析装置であって、前記車両が通過する際の前記地盤の振動解析を行って前記車両の移動に伴う前記ケーブル近傍部分の土壌粒子の水平速度を求め、該水平速度と前記車両の水平方向位置との関係をもとに、前記車両の進行方向に向かって、前記車両の進行方向に速度成分を有する第1前進区間と前記車両の進行方向とは逆方向に速度成分を有する後進区間と再び前記車両の進行方向に速度成分を有する第2前進区間との各移動距離を少なくとも算出する振動解析手段と、各区間毎に、前記ケーブルの単位長さあたりの重量と前記管路に対するケーブルの摩擦係数と各区間の移動距離とを乗算した区間移動力を求め、各区間移動力をベクトル演算した値を前記ケーブルにかかる移動力として算出する移動力算出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかるケーブルの移動解析装置は、上記の発明において、前記ケーブルを含む地盤の水平方向の1つの質点バネモデルに対応する平衡解析式に、前記移動力算出手段が算出した移動力を代入して、前記ケーブルの移動量を算出する移動量算出手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、振動解析手段が、前記車両が通過する際の前記地盤の振動解析を行って前記車両の移動に伴う前記ケーブル近傍部分の土壌粒子の水平速度を求め、該水平速度と前記車両の水平方向位置との関係をもとに、前記車両の進行方向に向かって、前記車両の進行方向に速度成分を有する第1前進区間と前記車両の進行方向とは逆方向に速度成分を有する後進区間と再び前記車両の進行方向に速度成分を有する第2前進区間との各移動距離を少なくとも算出し、移動力算出手段が、各区間毎に、前記ケーブルの単位長さあたりの重量と前記管路に対するケーブルの摩擦係数と各区間の移動距離とを乗算した区間移動力を求め、各区間移動力をベクトル演算した値を前記ケーブルにかかる移動力として算出するようにしているので、前記ケーブルの移動力を簡易かつ短時間に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、車両の移動に伴う地盤内の土壌粒子の鉛直変位および水平変位を示す図である。
【図2】図2は、車両の移動に伴う土壌粒子の2次元変位を示す図である。
【図3】図3は、車両の移動に伴う水平変位分布特性、および水平速度と車両の水平方向位置との関係を示す図である。
【図4】図4は、車両の移動に伴う水平速度の変化を算出した一例を示す図である。
【図5】図5は、車両の移動に伴う水平速度と車両の水平方向位置との関係と各区間の移動力変化とを示す図である。
【図6】図6は、この発明の実施の形態であるケーブルの振動解析装置の概要構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、図6に示したケーブルの振動解析装置による振動解析処理手順を示すフロー図である。
【図8】図8は、移動力解析部によって求めた移動力の具体例を示す図である。
【図9】図9は、各種パラメータを変化させた場合の移動力の変化を示す図である。
【図10】図10は、移動量を求める場合に用いる質点バネモデルの構成を示す図である。
【図11】図11は、波乗り現象の概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、この発明を実施するための形態であるケーブルの移動解析装置について説明する。
【0013】
(波乗り現象の概要)
まず、図1〜図5を参照して、ケーブルの波乗り現象について説明する。図1に示すように、図11に示した地盤窪み5は、車両4の移動(図1(a))とともに、進行方向にシフトする。図1(b)では、微小時間ΔT毎の進行方向位置における土壌粒子の鉛直変位を順次L11〜L15として示している。また、図1(c)では、土壌粒子の進行方向位置における水平変位を示している。ここで、車両4の移動に伴う土壌粒子の縦断面(xy平面)上における変位を考えると、図2に示すように、土壌粒子P0〜P5は、+y方向からみて右回りの運動を行う。
【0014】
すなわち、初期位置にある土壌粒子P0は、地盤窪み曲線L10の進行方向先端部分にあり、地盤窪み曲線L10が次の地盤窪み曲線L11まで移動すると、この地盤窪み曲線L11の進行方向の裾野部分の波に乗り、土壌粒子P1として進行方向(+x方向)に移動し、さらにΔT時間後の次の地盤窪み曲線L12の進行方向の裾野部分の波にさらに乗って進行方向に進むとともに、やや深さ方向(−z方向)に進む。その後、さらにΔT時間後、次の地盤窪み曲線L13になると、土壌粒子P2は、進行方向の波に乗り、地盤窪み曲線L13の山まで到達した土壌粒子P3の位置まで達する。このとき、土壌粒子P2→P3の移動では、深さ方向に大きく進むとともに、逆行方向(−x方向)に大きく移動する。さらにΔT時間後、地盤窪み曲線L13が地盤窪み曲線L14に移動すると、土壌粒子P3は、進行方向に対して後方の山を下り、浅い方向(+z方向)に移動するとともに、逆行方向にさらに移動して土壌粒子P4の位置に到達する。その後、ΔT時間後、地盤窪み曲線L13から地盤窪み曲線L14に移動すると、土壌粒子P4は、後方の裾野部分の波に乗ったまま、進行方向に移動し、さらにΔT時間後、地盤窪み曲線L14から地盤窪み曲線L15に移動すると、土壌粒子P5は、後方の裾野部分の波に乗って進行方向に移動し、土壌粒子の初期位置である土壌粒子P0の位置に復する。土壌粒子の移動サイクルが繰り返される。
【0015】
この土壌粒子P0〜P5のサイクルが繰り返されるとき、車両4の通過に伴って、図1(c)に示すように、進行方向x(水平方向)位置では、土壌粒子が、その中央(位置5m:3ΔT時点)を通過するまでの各水平方向位置では水平方向の変位(水平変位)がマイナスとなり、その中央(位置5m:3ΔT時点)を通過した後の各水平方向位置では水平変位がプラスとなる水平分布特性HLを呈する。この水平分布特性HLを水平方向位置xで微分した水平速度Vxと車両4の水平方向位置xとの関係HVの例を模式的に示せば、図3(b)のようになる。
【0016】
ここで、水平分布特性HLは、水平位置xを関数として、車両4の移動する際、現在の車両4の位置x前後に生じる水平変位u(x)を示している。なお、水平変位u(x)のx=0の位置は、車両4の後方で水平変位が実質的になくなった最初の位置であり、車両4の進行方向が+xとなる。そして、水平速度Vxは、水平変位u(x)に対し、任意の第i地点xの位置でのu(x)をuと定義すると、その位置での水平速度Vx(x)は、u(x)が車両4の移動とともに進行波的に移動してくるので、時間tとして、
Vx(x)=∂u(x−Vcar・t)/∂t
=−Vcar・∂u(x)/∂x
≒−Vcar・(ui+1−u)/(xi+1−x
と近似的に表すことができる。
【0017】
ここで、上述した近似式を用い、車速Vcar=50km/hのときの水平速度Vxを求めると、図4に示したような値となる。なお、図4における水平速度Vxは、xを0.5m刻みで算出しているため、図3(b)の水平速度と車両の水平方向位置との関係HVが、やや右側にシフトした値となっているが、xの刻みを小さくすることによって、図3(b)に示した関係HVが得られる。
【0018】
この関係HVは、図5に示すように、車両4の進行方向に向かって順次、水平速度Vxがプラスとなる第1前進区間H1、水平速度Vxがマイナスとなる後進区間H2、および再び水平速度Vxがプラスとなる第2前進区間H3を有する特性曲線となる。
【0019】
ここで、ケーブル3と管路2との間で水平方向(進行方向:±X方向)の摩擦力が生じる。そして、図5に示すように、第1前進区間H1および第2前進区間H3では、ケーブル3を進行方向(+X方向)に移動させる前進摩擦力が発生し、後進区間H2では、ケーブル3を逆行方向(−X方向)に移動させる後退摩擦力が発生する。第1前進区間H1と第2前進区間H3との合成した前進摩擦力は、後進区間H2の後退摩擦力に比して大きいため、ケーブル3は、進行方向(+X方向)に移動することになる。
【0020】
(概要構成)
つぎに、このケーブルの移動解析装置の概要構成について説明する。ケーブルの移動解析装置は、図6に示すように解析部10を有し、この解析部10に入力部11、出力部12、および記憶部13が接続される。解析部10は、振動解析部21、移動力解析部22、移動量解析部23、および予測処理部24を有する。振動解析部21は、多層構造の地盤1上を車両4が走行した場合における地盤の振動解析を行う。この振動解析は、記憶部13内に記憶されている、ケーブル3および管路2を含む地盤1の構造を示す地盤条件31および車両4の車速や重量などの車両走行条件32をもとに、地盤1全体の簡易質点モデルを形成し、この簡易質点モデルをもとに有限要素法等によって振動解析を行う。ここで、振動解析部21は、少なくとも、車両4の移動に伴う上述した土壌粒子の挙動を動的に解析し、各水平位置にほぼ共通である代表的な1つの、水平速度と車両の水平方向位置との関係HVを求め、この関係HVから、水平変位が生じる第1前進区間H1の移動距離L1、後進区間H2の移動距離L2、および第2前進区間H3の移動距離L3を求める。
【0021】
この振動解析部21による振動解析は、たとえば、汎用構造解析ソフトウェアである「MSC.Marc」(MSCソフトウェア(株)製)などの非線形汎用有限要素法プログラムを用いることができ、この振動解析によって、車両4の移動に伴って各水平位置に動的に生じる水平速度と車両の水平方向位置との関係が得られ、この動的な関係から代表的な1つの関係HVが求められる。その後、振動解析部21は、さらにこの代表的な1つの関係HVが示す水平速度分布をもとに、上述した移動距離L1〜L3を求める。なお、構造解析部21による振動解析は、非特許文献3に記載された多層弾性構造を解析するシステムであるGAMESを用いて行うこともできる。
【0022】
移動力解析部22は、ケーブル条件33内のケーブルの単位長さ当たりの重量W(kg/m)と、管路2に対するケーブル3の摩擦係数μと、上述した各移動距離L1〜L3とをそれぞれ乗算し、各区間H1〜H3における区間移動力を求め、この各区間移動力をベクトル合成した進行方向における移動力Fを算出する。
【0023】
移動量解析部23は、ケーブル3と地盤1との間を質点バネモデル(図10参照)で示した軸方向の力の平衡解析式を用い、この平衡解析式に、移動力解析部22が算出した移動力Fを代入してケーブル3の移動量を求める。
【0024】
予測処理部24は、車両の予測移動回数や予測車種重量などをもとに、上述した移動力解析部22が求めた移動力Fおよび移動量解析部23が求めた移動量Uを用いて、累積移動力および累積移動量を予測する。この予測結果は、ケーブルの波乗り現象に対する保護処置を講じるべきか否かを判断に用いることができる。たとえば、ケーブル3と管路2との間の摩擦力を軽減させる処置や管路2の配管深さを変更する処置などを施した場合についても短時間にシミュレーションでき、処置の効果を予測することも可能である。
【0025】
図7は、上述した解析部10の解析処理手順の概要を示すフロー図である。図7において、まず、振動解析部21は、上述したように、地盤条件31および車両走行条件32をもとに、地盤1全体の簡易質点モデルを形成し、この簡易質点モデルをもとに有限要素法等によって振動解析を行う。ここで、振動解析部21は、少なくとも、上述した土壌粒子の水平変位が生じる各区間H1〜H3の移動距離L1〜L3を求める(ステップS101)。
【0026】
その後、移動力解析部22は、上述したように、ケーブル条件33内のケーブルの単位長さ当たりの重量W(kg/m)と、管路2に対するケーブル3の摩擦係数μと、各移動距離L1〜L3とをそれぞれ乗算し、各区間H1〜H3における区間移動力を求め、この各区間移動力をベクトル合成した進行方向における移動力Fを算出する(ステップS102)。
【0027】
その後、移動量解析部23は、ケーブル3と地盤1との間を図10に示した質点バネモデルで示した軸方向の力の平衡解析式を用い、この平衡解析式に、移動力解析部22が算出した移動力Fを代入してケーブル3の移動量Uを求める(ステップS103)。
【0028】
その後、予測処理部24は、車両の予測移動回数や予測車種重量などをもとに、上述した移動力解析部22が求めた移動力および移動量解析部23が求めた移動量を用いて、累積移動力および累積移動量を予測し(ステップS104)、一連の処理を終了する。
【0029】
(解析例)
ここで、移動力Fの具体的な算出例について説明する。図8に示すように、車両4の車速Vcarが13888.889(mm/s)(=50km/h)、ケーブルの単位長さ当たりの重量Wが0.00167(kg/mm)(=16.7kg/m)、ケーブル3と管路2との間の摩擦係数μが0.16である場合であって、振動解析部21が、車両4の移動に伴う上述した土壌粒子の挙動を動的に解析することによって求めた、水平速度と車両の水平方向位置との関係HVをもとに、第1前進区間H1の移動距離L1=2050mm、後進区間H2の移動距離L1=1600mm、第2前進区間H3の移動距離L3=2050mmとして算出した場合、各区間H1〜H3の区間移動力f1〜f3は、車両の車速とは無関係に、摩擦係数μと重量Wと各区間H1〜H3の移動距離L1〜L3とをそれぞれ乗算して求められ、それぞれ区間移動力f1=5.478(kgf)、区間移動力f2=−4.275(kgf)、区間移動力f3=5.478(kgf)となる。移動力Fは、これら区間移動力f1〜f3をベクトル合成した値であり、移動力F=5.478−4.275+5.478=6.68(kgf)となる。単位変換すると移動力F=65(N)となる。すなわち、65Nの移動力が進行方向(+X方向)に働くことになる。
【0030】
上述した区間H1〜H3の各移動距離L1〜L3は、振動解析によって車両4が土壌粒子を水平方向に変位させるときの車両4の各移動距離を示したものである。この移動距離L1〜L3は、車両4の速度に無関係で、各区間移動力f1〜f3と各区間H1〜H3を移動する時間tとの力積f・tによるものと考えられる。たとえば、車両4の車速Vcarが遅い場合には、移動する時間tが大きくなり、車両4の車速Vcarは、移動力Fには無関係となる。
【0031】
たとえば、図9に示すCase「1」と「2」とでは、車速Vcarのみが異なるが、厳密計算した場合であっても、この発明による簡易計算を行った場合であっても、ほとんど同じ値の移動力Fを示している。また、Case「4」は、Case「1」に比して、ケーブルの重量Wを半分にしているが、この場合、移動力Fも、半分になっており、力積f・tによって移動力Fが決定されることがわかる。また、Case「3」は、Case「1」に比して、摩擦係数μを2倍にしており、この場合、移動力Fも2倍になっている。
【0032】
なお、ここでいう「厳密計算」とは、上述した区間H1〜H3のみならず、すべての土壌1領域に対する簡易質点モデルを用いて有限要素法等によって移動力Fを算出した場合である。この簡易質点モデルを用いた解析計算は、節点数分の多数の連立方程式を作り、ニュートン法などによる集束計算によって行われる。また、この実施の形態による「簡易計算」は、上述した代表的な1つの区間H1〜H3内の単純な乗算のみによって移動力Fを算出した場合である。
【0033】
ここで、移動力Fから移動量Uを求める場合に用いる上述した質点バネモデル(図10参照)の1ユニットの平衡式は、
F+Ff=[k]U+[m]α
である。なお、Fは、上述した移動力(N)、[k]は、ケーブル弾性係数マトリクス、Uは、移動量(m)、[m]は、ケーブル質量マトリクス、αは、ケーブル移動加速度(m/s)であり、移動量Uの2階時間微分、すなわちα=dU/dtである。また、Ffは、質点に対する摩擦移動力であり、次式によって与えられる。
Ff=((2/(1+e−a(u(t)−νΔt))−1)・μ・W
ここで、u(t)は、ケーブル変位増分の時間関数(m)であり、aは、形状定数であり、νは、地盤水平移動速度(m/s)であり、Δtは、時間増分(s)である。
【0034】
したがって、上述した平衡式は、移動量Uに関する2階微分方程式となり、この実施の形態では、移動力解析部22によって算出された移動力Fを上述した平衡式に代入し、これを解くことによって移動量Uを求めることができる。
【0035】
この実施の形態では、振動解析部21が求めた代表的な1つの区間H1〜H3をもとに、移動力解析部22が単純な乗算処理によって移動力Fを求めることができる。また、この移動力Fを上述した平衡式に代入することによって、容易に移動量Uを求めることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 地盤
2 管路
3 ケーブル
4 車両
5 地盤撓み
10 解析部
11 入力部
12 出力部
13 記憶部
21 振動解析部
22 移動力解析部
23 移動量解析部
24 予測処理部
31 地盤条件
32 車両走行条件
33 ケーブル条件

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が上部を通過する地盤内の管路に敷設されたケーブルの水平方向の移動を解析するケーブルの移動解析装置であって、
前記車両が通過する際の前記地盤の振動解析を行って前記車両の移動に伴う前記ケーブル近傍部分の土壌粒子の水平速度を求め、該水平速度と前記車両の水平方向位置との関係をもとに、前記車両の進行方向に向かって、前記車両の進行方向に速度成分を有する第1前進区間と前記車両の進行方向とは逆方向に速度成分を有する後進区間と再び前記車両の進行方向に速度成分を有する第2前進区間との各移動距離を少なくとも算出する振動解析手段と、
各区間毎に、前記ケーブルの単位長さあたりの重量と前記管路に対するケーブルの摩擦係数と各区間の移動距離とを乗算した区間移動力を求め、各区間移動力をベクトル演算した値を前記ケーブルにかかる移動力として算出する移動力算出手段と、
を備えたことを特徴とするケーブルの移動解析装置。
【請求項2】
前記ケーブルを含む地盤の水平方向の1つの質点バネモデルに対応する平衡解析式に、前記移動力算出手段が算出した移動力を代入して、前記ケーブルの移動量を算出する移動量算出手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のケーブルの移動解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−64510(P2011−64510A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213735(P2009−213735)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年電気学会全国大会講演論文集〔7〕エネルギー変換・輸送,発行日 平成21年3月17日 計算工学講演会論文集(Vol.14 2009年5月),発行日 平成21年5月12日
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【Fターム(参考)】