説明

ケーブルクランプ

【課題】 クランプの信頼性を高める一方で、クランプの作業性を改善したケーブルクランプを提供する。
【解決手段】 電子機器のシャーシ等に固定されるベース1と、ベース1の一部に立設され長さ方向に沿って複数の係止窓23を有する可撓性のあるベルト2と、ベース1の他の一部に設けられてベルト2が挿通される係止穴33及び係止窓23に係合するフック34を有する係止部3と、係止穴33に臨む位置にベルト2を仮係止する仮係止部4を備える。クランプ作業を複数回にわたって行うような場合にベルト2を仮係止することで、その都度ベルト2を本係止状態にする必要がない。ベルト2の弾性力を大きくしてクランプの信頼性を高めた場合でも、ベルト2の仮係止と係止解除を容易に行うことができ、クランプ作業を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器のシャーシや基板(以下、シャーシ等と称する)にケーブルを固定するためのケーブルクランプに関し、特にクランプの信頼性を高める一方でクランプ時の作業性を改善したケーブルクランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器のシャーシ等の表面に沿ってケーブルを固定するために従来からケーブルクランプが用いられており、例えば、特許文献1にはタイラップ式クランプと称して、樹脂製のベルトの基端部にベースを一体に設けておき、当該ベルトの先端部をベースに設けた係止穴に挿通させて係止させてケーブルを抱持し、その上でベース部をシャーシ等に開口した嵌合穴に嵌合させることでケーブルクランプをシャーシ等に固定し、抱持したケーブルをシャーシ等に固定する構成である。
【0003】
この種のケーブルクランプとして、先に本出願人が提案しているものに、図7に示すケーブルクランプがある。このケーブルクランプは矩形板状をしたベース1の上面の一端部に多数の係止窓23を長さ方向に配設した梯子状をしたバンド2が立設されている。また、ベース1の上面の他部には前記バンド2の挿通が可能な係止穴33を有し、かつ上方に向けて突出した円弧状のフック34を有する係止部3が一体に形成されている。このケーブルクランプでは、ベース1を両面テープ5により図には表れないシャーシ等の表面に貼り付けた上でバンド2を先端部から係止穴33に挿通させ、挿通したバンド2の先端側部分を内側に曲げ変形させて係止窓23にフック34に係止させることで特許文献1と同様にバンドでケーブルを抱持してクランプすることができる。
【0004】
特許文献1のケーブルクランプでは、ベルトを係止させるための構造については明記されていないが、図7のケーブルクランプでは、ベース1上にクランプするケーブルCを延在させた上で係止穴33を挿通させたベルト2の先端側の部分を上方に弾性変形させ、さらに内側に変形させることでベルト2の任意の係止窓23をフック34に係合させることができ、これでベルト2を係止部3に係止する。係止されたベルト2は、ベルト2自身の長さ方向の弾性復元力によって係止窓23とフック34との係止状態が保持される。ベルト2の係止を解除するにはベルト2の先端部を上方に引っ張り上げて係止窓23とフック34との係合を解除し、ベルト2の先端部を係止穴33から引き抜けばよい。
【特許文献1】特開平6−291473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図7のケーブルクランプでは、ベルト2によりケーブルCをクランプする際の信頼性は係止窓23とフック34との係止強度にかかっており、この係止強度は係止窓23とフック34とにおける両者の当接力に関連し、これはベルト2自身の弾性力に依存している。係止強度を高めるためにはベルト2の弾性力を大きくすることが好ましいが、弾性力を大きくするとケーブルをクランプする際にベルト2の先端部を係止穴33に挿通させようとしたときにベルト2の弾性力によって先端部が係止穴33から抜け出てしまう。複数本のケーブルを順序的にクランプするような場合には、その都度ベルト2を押さえておく必要があり、あるいはその都度ベルト2の係止窓23をフック34に係合させておく必要がある。また、更に別のケーブルをクランプするためには係止窓23とフック34との係合を一旦解除する必要がある。そのため、クランプを行う際でのベルトの係合作業や係合解除作業が面倒なものになり、ケーブルのクランプ作業性の点で改善の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、クランプの信頼性を高める一方で、クランプの作業性を改善したケーブルクランプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電子機器のシャーシ等に固定されるベースと、ベースの一部に立設され長さ方向に沿って複数の係止窓を有する可撓性のあるベルトと、ベースの他の一部に設けられてベルトが挿通される係止穴及び係止窓に係合するフックを有する係止部とを備えるケーブルクランプにおいて、係止穴に臨む位置にベルトを仮係止する仮係止部を備えることを特徴とする。例えば、ベルトの先端部の一面には爪体が設けられ、仮係止部にはベルトを係止部に向けて変位させるテーパ面および係止窓に係合する係止突部が設けられ、係止部には爪体に係合する係止角部を備える構成とする。また、ベルトは長さ方向の弾性復元力を行うための屈曲部を基端部に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のケーブルクランプによれば、クランプする作業の途中でベルトを仮係止状態とすることで、クランプ作業を複数回にわたって行うような場合にその都度ベルトを本係止状態にする必要はない。また、ベルトの弾性力を大きくし、ベルトの係止力を大きくしてクランプの信頼性を高めた場合でも、仮係止とその解除は容易であるので、ベルトの係止作業及び係止解除作業を容易にし、結果としてクランプ作業を容易に行うことができる。
【実施例1】
【0009】
次に、本発明の実施例1を図面を参照して説明する。図1は本発明のケーブルクランプの外観斜視図であり、図2(a)〜(c)は当該ケーブルクランプの平面図、正面図及び左側面図、図3は図2(a)のA−A線拡大断面図である。実施例1のケーブルクランプは矩形の平板状をしたベース1と、このベース1の一端部に立設されたベルト2と、前記ベルト2と対向するようにベース1の反対側に立設された係止部3とを備えている。これらベース1、ベルト2、係止部3は弾性を有する樹脂の樹脂成型により一体に形成されている。また、前記ベース1を図には表れないシャーシや基板(以下、シャーシ等と称する)に固定するために、当該ベース1の下面に両面テープ5が貼り付けられており、この両面テープ5によってシャーシ等の表面に貼り付けて固定するようになっている。また、前記ベース1の中央には板厚方向に小径穴11が開口されており、この小径穴11に挿通させた図には表れないビスをシャーシ等に螺合させて固定することも可能である。なお、この小径穴11は前記ベース1の上面と下面とにそれぞれ反対方向から樹脂成型時の金型の抜き方向に凹溝12,13を形成し、これらの凹溝12,13が重なって板厚方向に貫通することにより小径穴11を形成したものであり、小径穴11を形成するために金型にスライダを設ける必要がない。
【0010】
前記ベルト2は所要の長さをした可撓性のある帯状に形成されており、先端部2Aと基端部2Cを除く中間部2Bは梯子状に形成されている。すなわち、基端部2Cと中間部2Bは所要の間隔をもって長さ方向に延びる一対の縦条21を有しており、中間部にはこれら両縦条21間において長さ方向に所要の寸法で配設された断面形状が円形をした複数の横桟22を有しており、これらの縦条21と横桟22とで長さ方向に並んだ複数の係止窓23が形成されることになる。また、前記両側の縦条21は基端部2Cにおいて両者の間隔が部分的に狭くなるように幅方向内側に曲げられた屈曲部24が設けられ、この屈曲部24によりベルト1の長さ方向の弾性力が高められている。前記先端部2Aは先端に向けて徐々に幅寸法が低減された舌片状に形成されており、真直に形成されている中間部2Bに対して外側方向に向けて反るように湾曲されている。また、この外側に反った外面には断面が鋸歯状をした複数の爪体25が長さ方向に微小間隔で形成されている。
【0011】
前記係止部3は前記ベルト2が挿通可能な係止穴33を構成するように両側の縦枠31とこれら縦枠31の上端を連結する横枠32とで門型に形成されており、横枠32の上縁には上方に向けて断面が円弧状をしたフック34が突出形成されている。このフック34の円弧状の内側面は前記ベルト2の横桟22の径寸法に等しい曲率とされている。なお、このフック2自体は図7に示した従来のケーブルクランプのフックと同様に形成されている。また、前記横枠32の下縁は下方に向けて鋭角に突出した係止角部35として形成されている。
【0012】
一方、前記係止部3の係止穴33に臨む位置の前記ベース1には、外側に向けて徐々に高さが高くなるように隆起させたテーパ面41を有する楔状の仮係止部4が形成されている。この仮係止部4は前記ベルト2の係止窓23の幅方向の寸法よりも小さい幅寸法に形成されており、当該仮係止部4の外側の最も高い位置にある上縁には外側に向けて係止突部42が突出形成されている。この係止突部42は前記ベルト2の係止窓23の縁部、すなわち前記横桟22に係合可能とされている。
【0013】
以上の構成のケーブルクランプを用いたケーブルのクランプ作業について説明する。ケーブルクランプはベース1の下面の両面テープ5により図には表れないシャーシ等の表面に貼り付けられる。あるいは小径穴11を利用してビスにより固定される。そして、図4に示すように、クランプしようとするケーブルCの一部をベルト2と係止部3との間のベース1上に延在させる。しかる上で、ベルト2をケーブルC上を覆うように内側に向けて湾曲させながら先端部2Aを係止穴33の内側から挿通させる。このとき、外側に反っている先端部2Aは係止穴33を挿通させる際には上方に反った状態となるため係止穴33への挿通作業を容易に行うことができる。また、先端部2Aを係止穴33に挿通して行くと、先端部2Aは仮係止部4のテーパ面41に沿って上方に変位され、当該先端部2Aが係止部3の横枠32の下面に弾接される状態となる。そのため、先端部2Aの外面に設けられている複数の爪体25のいずれかが横枠32の下縁の係止角部35に係合し、この係合により先端部2Aが挿入方向と反対方向に係止穴33から抜け出ることが係止され、先端部2Aは第1の仮係止状態となる。この第1の仮係止状態は、爪体25と係止角部35との係合であるため、ベルト2の先端部2Aを下方に押下すれば両者の係合が外れて仮係止状態を解除することは容易である。
【0014】
また、この状態からベルト2をさらに係止穴に挿通させ、ベルト2の先端部2Aが仮係止部4のテーパ面41を乗り越えて中間部2Bの複数の係止窓23のうちのいずれかが仮係止部4上にまで移動した時点で、図5に示すように、ベルト2は仮係止部4のテーパ面41による上方への変位状態から自身の弾性力によって下方に移動し、係止窓23が仮係止部4に上方から嵌合する。同時にベルト2は基端部2Cの屈曲部24による長さ方向の弾性力よって基端方向へ移動し、ベルト2の係止窓23の縁部、すなわち横桟22が係止突部42に係合し、ベルト2は第2の仮係止状態となる。第2の仮係止状態は係止窓23と係止突部42との係合であるため、両者の係合を外すにはベルト2の先端部を上方に若干だけ引き上げて係止窓23と係止突部42との係合を外し、さらに係止窓23を仮係止部4との嵌合状態から外す必要がある。
【0015】
これら第1及び第2の仮係止は、例えば、先に複数本のケーブルのうちの一部のケーブルをクランプしておき、その後に別のケーブルを先のケーブルと一体的にクランプするような場合に、一時的にベルト2を仮止めしておくことで、先のケーブルがケーブルクランプから外れてしまうことを防止することが可能になる。別のケーブルをさらにクランプする際には、仮係止したベルト2を再び係止部3や仮検出部4から外すことになるが、第1の仮係止ではベルト2の先端部2Aを幾分押し戻すことで爪体25と係止角部35との係合を解除して先端部2Aを係止穴33から抜き出すことができる。第2の仮係止ではベルト2の先端部2Aを若干上方に引き上げて係止窓23と係止突部42との係合を解除した上でベルト2の先端部2Aを基端方向に向けて押し戻すことでベルト2の中間部2Bないし先端部2Aを係止穴33から抜き出すことができる。
【0016】
一方、ケーブルを最終的にクランプする際には、図6に示すように、第1の仮係止状態、あるいは第2の仮係止状態からベルト2の先端部2Aをさらに上方に引き上げて係止部3を十分に越える状態にまで引き上げた上で、係止部3よりも外側に位置している中間部2Bを内側に向けて屈曲させフック34に対応している係止窓23を当該フック34に嵌合させる。その上でベルト2の引き上げ力を解除するとベルト2の長さ方向の弾性復元力によって係止窓23の縁部、即ち横桟22がフック34に係合して本係止状態となり、以後はこの状態が保持される。この本係止状態は、先端部2Aをベルト2の弾性力に抗して若干上方に引き上げて係止窓23とフック34との係合を外さない限り解除されることがないので、安定に保持されることになり、ケーブルのクランプの信頼性が高められる。
【0017】
このように実施例のケーブルクランプは、ベルト2でケーブルCをクランプする作業の途中で当該ベルト2を第1又は第2の仮係止状態としておくことができる。したがって、複数本のケーブルをクランプする際にベルト2の係止作業及び係止解除作業を複数回にわたって行うような場合に、第1又は第2の仮係止を利用することで、当該ベルトの係止作業を容易に行うことができる。特に、第1の仮係止状態は単にベルト2の先端部2Aを仮係止部4に達するまで係止穴33に挿通させるだけで可能であり、第2の仮係止状態はベルト2の中間部2Bが係止部3に達するまでさらに奥に向けて挿通させるだけで可能である。また、第1の仮係止状態を解除する際にはベルト2の先端部2Aを下方に弾性変形させるのみでよく、第2の仮係止状態を解除する際にはベルト2を僅かに外方に引っ張るだけでよいので、従来のようにベルトを係止する毎にベルトを本係止する場合に比較して作業性が改善できる。これら第1及び第2の仮係止は係止強度の点において若干の差があるので、当該係止強度と作業性とを勘案した上で作業者が適宜に選択して利用することができる。
【0018】
一方、第1及び第2の仮係止状態のいずれの場合でも、ベルト2を基端部2Cに設けた屈曲部24を真直方向に延ばしたときに、当該屈曲部24が復元する際に弾性復元力が得られるので、ベルト2の縦条21を真直に近い形状にして当該縦条21を構成する樹脂材料の弾性を利用して弾性復元力を得る場合に比較して大きな弾性復元力を得ることができ、仮係止状態でもケーブルを確実にクランプすることができる。また、このように屈曲部24により弾性復元力が高められることにより、本係止時における係止窓23とフック34との係合状態の安定性を高め、確実なクランプ状態を得ることができるのは言うまでもない。
【0019】
なお、前記ベースをシャーシ等に固定するための構造として、ベースの下面に特許文献1に記載のような矢尻型のクリップを一体に突出形成し、このクリップをシャーシ等に開口した穴に嵌合させるように構成することも可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1のケーブルクランプの外観斜視図である。
【図2】ケーブルクランプの平面図、正面図、左側面図である。
【図3】図2(c)のA−A線に沿う拡大断面図である。
【図4】第1の仮係止状態の断面図である。
【図5】第2の仮係止状態の断面図である。
【図6】本係止状態の断面図である。
【図7】従来のケーブルクランプの一例の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ベース
2 ベルト
3 係止部
4 仮係止部
5 両面テープ
2A 先端部
2B 中間部
2C 基端部
23 係止窓
24 屈曲部
25 爪体
33 係止穴
34 フック
35 係止角部
41 テーパ面
42 係止突部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器のシャーシや基板に固定されるベースと、前記ベースの一部に立設され長さ方向に沿って複数の係止窓を有する可撓性のあるベルトと、前記ベースの他の一部に設けられて前記ベルトが挿通される係止穴及び前記係止窓に係合するフックを有する係止部とを備えるケーブルクランプにおいて、前記係止穴に臨む位置に前記ベルトを仮係止する仮係止部を備えることを特徴とするケーブルクランプ。
【請求項2】
前記ベルトの先端部の一面には爪体が設けられ、前記仮係止部には前記ベルトを前記係止部に向けて変位させるテーパ面および前記係止窓に係合する係止突部が設けられ、前記係止部には前記爪体に係合する係止角部を備えることを特徴とする請求項1に記載のケーブルクランプ。
【請求項3】
前記ベルトは長さ方向の弾性復元力を行うための屈曲部を基端部に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のケーブルクランプ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−314158(P2006−314158A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135482(P2005−135482)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(592077121)竹内工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】