ケーブルプロテクタ
【課題】 円錐状のケーブル保護部の形状設定の自由度を高めて、低温時であってもケーブルが固定部あるいはケーブルプロテクタから受ける応力を効果的に抑えて、屈曲するケーブルの応力緩和効果を十分に得る。
【解決手段】 ケーブル固定用のクランプ60の一端部に外嵌して保持される円筒状の保持部30と、この保持部30に連続して形成される円錐状のケーブル保護部40とを備えており、EPDMで成形される。ケーブル保護部40は、保持部30との境界部分から、ケーブル50が出る部分である先端縁にわたって、まず段部43が形成され、次いでこの段部43から、外径がしだいに縮径して縮径端部45に至る縮径部44を有する。段部43の形成によって、縮径部44の長さやテーパ角の設定の自由度を高め、先端部からケーブル50にかかる応力を最適に制御する。
【解決手段】 ケーブル固定用のクランプ60の一端部に外嵌して保持される円筒状の保持部30と、この保持部30に連続して形成される円錐状のケーブル保護部40とを備えており、EPDMで成形される。ケーブル保護部40は、保持部30との境界部分から、ケーブル50が出る部分である先端縁にわたって、まず段部43が形成され、次いでこの段部43から、外径がしだいに縮径して縮径端部45に至る縮径部44を有する。段部43の形成によって、縮径部44の長さやテーパ角の設定の自由度を高め、先端部からケーブル50にかかる応力を最適に制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機械や、自動車等に具備される遠隔操作用のケーブルを、固定具により所定の部材に固定して配索するにあたり、固定具に装着されて、特に、振動するケーブルの固定具部分での屈曲の度合いを緩和してケーブルの折損を防止するケーブルプロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなケーブルは、例えば自動車のパーキングブレーキ装置に具備されている。該装置は、図10に示すように、車室内に設けられた手動式のブレーキレバー1の操作力を、パーキングブレーキケーブル2によって、車輪3内に設けられたパーキングブレーキユニットに伝える構成が多い。すなわち、ブレーキレバー1とパーキングブレーキユニットとが、ケーブル2によって連結されているわけであるが、そのケーブル2は、適度に余裕を持たせられた状態で、クランプ4を介して、車体の所定箇所と、パーキングブレーキユニットに固定されている。
【0003】
ところで、自動車の走行時は、車体に対して車輪が常に相対的に上下動しており、このため、図10に示したケーブル2においては、車輪3側のパーキングブレーキユニットに対する固定部と、そこから車体側へのはじめての固定部(クランプ4の部分)との間の部分が上下に振動し、繰り返し屈曲することになる。このように屈曲を強いられるケーブルは、長期間の使用により、その屈曲部両端の固定部で折損するおそれがあった。
【0004】
ケーブルが固定部で折損しやすい理由は、固定部から応力を受け、その際に生じる曲げモーメントが最も大きくなって屈曲の度合いが強くなるからである。また、固定部は、ケーブルをクランプでかしめて固定しているため、かしめた際の変形がケーブルに生じていることに起因する場合もある。
【0005】
そこで、固定部でのケーブルの折損を防ぐために、固定部から受ける応力を緩和させるケーブルプロテクタを、クランプに装着することが行われている。図11は、そのようなケーブルプロテクタの従来品の代表例を、寸法とともに示しており、これは、円筒状の保持部11の端部から円錐状のケーブル保護部12が連続して延びている構成で、保持部11にクランプが圧入されることによってクランプに保持され、ケーブル保護部12にケーブルが挿入される。
【0006】
ケーブルプロテクタの材質は、主にEPDM(エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体)等の弾性を有するゴムが用いられ、ケーブルの、クランプから出て屈曲が生じる部分が、ケーブル保護部12によって覆われ、かつ弾性的に支持されることにより、応力を受けにくくして、折損の防止を図っている。また、クランプから強い応力を受ける部分をゴム製の円錐状部材で支持するものとしては、例えば、特許文献1等でも知られている。
【0007】
【特許文献1】実開昭58−70953号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記EPDMを用いたケーブルプロテクタでは、常温時においては、ケーブルの湾曲に応じて比較的円滑に湾曲するが、低温時には、弾性係数が増大することによって曲がりにくくなる傾向を示す。このため、曲がりにくいケーブルプロテクタの先端部からケーブルが応力を受け、その部分でケーブルが折れ曲がることが起き、ひいては折損を招くおそれがあった。このような低温時における不具合を解消するには、ケーブルプロテクタの材料に、シリコンゴム等の、弾性係数が温度変化の影響をあまり受けないゴムを採用することが考えられたが、例えば、シリコンゴムでは、耐疲労特性がEPDMよりも劣るので、常温時においても、ケーブルからの応力を繰り返し受けることにより破損してしまうおそれがあった。
【0009】
一方、上記のようにケーブルプロテクタの先端部からケーブルが応力を受けるということは、ケーブルプロテクタの先端部には、ケーブルに対する反力として応力が生じていると言える。図11に示したような従来品や、上記特許文献1で示されるような、ケーブル保護部が円錐状に形成された円錐型ケーブルプロテクタでは、その円錐状部分の長さや、窄まり具合すなわちテーパ角を適切に設計すれば、たとえ低温状況下であっても、先端部に生じる応力を軽減させることができる。
【0010】
ちなみに、円錐状部分が長いほど、また、テーパ角が大きいほど、応力は大きくなることが判っている。そして、この応力は、大きすぎると、ケーブルプロテクタの先端部でケーブルが折れ曲がることになり、小さすぎると、ケーブルプロテクタがケーブルを保護する作用をなさず、固定部でケーブルが折れ曲がることになる。よって、この応力は適切な範囲に設定されなければならない。
【0011】
しかしながら従来のケーブルプロテクタのケーブル保護部は、クランプ側の保持部による最大外径から先端部の最小外径を直線的に結んだ単純な円錐であり、この形状では、その部分の長さや、縮径の度合いであるテーパ角とを、ケーブルを折損させない最適な寸法とする自由度が低く、そのため、十分な応力緩和効果を得にくいものであった。
【0012】
よって本発明は、ケーブル保護部が円錐状のケーブルプロテクタにおいて、その円錐状部分の形状設定の自由度が高まり、これによって、低温時であっても、ケーブルが固定部あるいはケーブルプロテクタから受ける応力を効果的に抑えることができ、屈曲するケーブルの応力緩和効果を十分に得ることができるケーブルプロテクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、所定の部材に固定される筒状の固定具の端部に固定され、該固定具とともにケーブルが挿通される弾性材からなる筒状のケーブルプロテクタであって、固定具の端部に外嵌状態で保持される保持部と、この保持部に連設される円錐状のケーブル保護部とを備え、ケーブル保護部は、保持部との境界部分から段部が形成され、この段部から、外径がしだいに縮径して縮径端部に至る縮径部を有する形状を呈していることを特徴としている。
【0014】
本発明のケーブルプロテクタによれば、屈曲するケーブルの、固定具から出る部分である固定端が、円錐状のケーブル保護部で弾性的に支持され、これによってケーブルが固定具から受ける応力が緩和され、折れ曲がりが起こりにくくなり、折損の防止が図られる。
【0015】
ここで、本発明のケーブルプロテクタのケーブル保護部は、従来のように保持部との境界部分から先端部を直線的に結んだ単純な円錐ではなく、境界部分から、まず先端部側に段部が形成されており、この段部から先端部に向かって、外径がしだいに縮径する縮径部が形成された円錐状を呈している。
【0016】
上述したように、ケーブル保護部の円錐状部分の長さ(テーパ部長さ)や、そのテーパ角は、ケーブルを折損させることのない最適な寸法に設定できればよいのであるが、従来形状では、それが難しかったわけである。しかしながら本発明では、段部を設けることにより、保持部による最大外径および先端部の最小外径にとらわれることなく、ケーブル保護部の長さとテーパ角とを、任意に設定できる。すなわち、ケーブル保護部の円錐状部分の形状を、高い自由度をもって設定することができる。
【0017】
本発明では、ケーブル保護部のテーパ部長さを、保持部とケーブル保護部との境界部分から、縮径の終端である縮径端部までとし、テーパ角は、段部の終端と縮径端部との間のおける軸方向に対する傾斜角度と定義する。
【0018】
本発明のケーブルプロテクタを適用するケーブルの外径や物性に応じて、最適なテーパ部長さとテーパ角との組み合わせが存在し、その組み合わせの範囲を、本発明では、段部を設けたことによって大きくすることができる。例えば、テーパ部長さを比較的長くとる場合には、テーパ角を小さくすることによりケーブルプロテクタの先端部に発生する応力を小さくすることができ、そのためには、段部を深くする、つまり段部の幅(径方向長さ)を長くする。また、この逆にテーパ部長さを比較的短くする場合には、それに応じてテーパ角を比較的大きくすれば、ケーブルプロテクタの先端部に適切な応力を発生させることができ、この場合の段部は、比較的浅いものとなる。
【0019】
ケーブルプロテクタの先端部に発生する応力は、テーパ部長さやテーパ角によるケーブル保護部の円錐形状のみならず、ケーブル保護部の、最小外径、最大外径、内径、ケーブルプロテクタの弾性係数など、様々な因子が影響する。本発明は、一定条件の元においてある特定範囲の応力が先端部に発生するケーブルプロテクタを、好ましい形態としており、それは次の通りである。
【0020】
ケーブルプロテクタを装着した固定具を介して、ケーブルを片持ちはりの状態に張った解析モデルにおいて、
L:ケーブルの長さ
P:ケーブルをδ(mm)たわませるのに必要な荷重(N)
δ:ケーブルのたわみ(mm)
L1:ケーブル保護部の円錐部分の長さ(mm)
E1:ケーブルプロテクタの弾性係数(N/mm2)
I1:縮径部の断面二次モーメント
(I1を求める際の縮径部の外径は、縮径部の平均外径とする)
E2:ケーブルの弾性係数(N/mm2)
I2:ケーブルの断面二次モーメント(mm4)
d:ケーブルの外径=ケーブル保護部の内径(mm)
x:ケーブル固定端からの位置
とした場合、
ケーブルをδ(mm)たわませるのに必要な荷重P(N)が、下記(1)式で表され、この(1)式で算出された荷重Pを解析モデルに付加した場合に、ケーブルの、ケーブルプロテクタ未装着部分に生じる応力が、下記(3)式で表され、
δ:52.5(mm)
L:212(mm)
E2:885(N/mm2)
I2:191.3(mm4)
を代入した場合に、下記(1)式および下記(3)式から算出されるケーブルプロテクタの先端部に生じる応力が、15.3(N/mm2)以下を満足することを特徴とする。
【0021】
【数1】
【0022】
【数2】
【0023】
また、本発明のケーブルプロテクタでは、保持部とケーブル保護部との境界部分と、保持部における固定具の挿入孔の奥端面との間の軸方向距離が、ダンパ部として所定の長さ確保されていることを好ましい形態としている。これは、固定具の端部と、大きな曲げモーメントを受けやすい段部との間に所定距離が介在することになり、この距離がない場合に比べてケーブルプロテクタの剛性を高くすることができる。
【0024】
ケーブルが固定具にかしめによって固定されている場合、ケーブルには、かしめの応力を受けて変形が生じている場合があり、この変形がケーブルを折れ曲がりやすくする弱点となる。また、屈曲するケーブルにより、ケーブルプロテクタは大きな曲げモーメントを受ける。そこが、上記ダンパ部による剛性の向上により、ケーブル保護の機能が十分になされる。
【0025】
また、本発明のケーブルプロテクタでは、挿通されたケーブルが出る部分である先端縁の外径が、ケーブルの外径の125%以下に設定されていることを好ましい形態としている。ケーブルの、ケーブルプロテクタで保護されている部分は、ケーブルプロテクタによって弾性的に支持され、剛性が補充されている状態になる。この部分と、ケーブルプロテクタの未装着部分との剛性の差があまり大きく一体感に欠けると、ケーブルはケーブルプロテクタ先端部から受ける応力により、折れ曲がりやすくなってしまう。
【0026】
この不具合を防ぐためには、ケーブルプロテクタの先端縁の外径を限りなくケーブルの外径に近いものとすればよいが、本発明では、生産性、組み立て性あるいは取り扱い性といった実用面を考慮して、上記のようにケーブルの外径の125%以下に設定することとする。
【発明の効果】
【0027】
本発明のケーブルプロテクタによれば、円錐状を呈し実質的にケーブルを保護するケーブル保護部に段部を設けたことにより、そのケーブル保護部の形状設定の自由度を高めることができ、これによって、低温時であっても、屈曲するケーブルの応力緩和効果を十分に得ることができる、その結果、ケーブルおよび当該ケーブルプロテクタ自身の耐久性を大幅に向上させることができる。
【0028】
また、段部を形成することにより肉厚を低減してケーブルプロテクタの容量を小さくすることができ、このため、材料の使用量の削減と、これに伴う低コストでの製造が可能になり、しかも軽量化も図られる。
【0029】
さらに、容量の低減により、特に低温時にはケーブルプロテクタによるケーブル全体の剛性が抑えられるので、固定具に加わる応力も低減し、このため、固定具を強化させるためのリブの付加などの手段を不要とすることができる。その結果、固定具を薄肉化することによるコスト低減や、軽量化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、図10で示したようなパーキングブレーキケーブルに適用される一実施形態のケーブルプロテクタ(以下、プロテクタと略称)20を示し、図2は、プロテクタ20の使用状態を示している。図2の符号50はケーブルで、このケーブル50は、車体等の所定箇所やパーキングブレーキユニットといった固定部に、クランプ(固定具)60を介して固定され、このクランプ60にプロテクタ10が装着される。
【0031】
クランプ60は、例えば、薄板鋼板等の金属板を円筒状に成形したもので、平板状のブラケット部61が一体に設けられている。ケーブル50は、クランプ60に挿通され、かつ、かしめによってクランプ60に固定され、ブラケット部61を固定部に固定することにより、クランプ60を介して所定箇所に配索され、かつ固定される。
【0032】
プロテクタ20は、所定範囲の弾性を有するゴムを成形したもので、クランプ60の端部に着脱可能に保持される保持部30と、保持部30の端部に連設されてケーブル50のみが挿通され、そのケーブル50の固定端を実質的に保護するケーブル保護部40とを備えている。ゴムの材質としては、EPDM等の合成ゴムが好適に選択される。
【0033】
保持部30は、内径および外径がともにほぼ一定の円筒状に形成されており、内径はクランプ60の外径よりもやや小さく、内部の挿入孔31にクランプ60の一端部が着脱可能に圧入され、図2に示すように、外嵌状態で、そのクランプ60の一端部に、かしめリング72によってかしめ固定される。
【0034】
ケーブル保護部40は、保持部30との境界部分である環状のエッジ41から、ケーブル50が出る部分である先端縁にわたって先細りとなる概ね円錐状を呈しており、保持部30と一体に、かつ、保持部30と同軸的に形成されている。ケーブル保護部40内の、ケーブル50が挿通され、保持部30の挿入孔31に連通するケーブル挿通孔42の内径は、ケーブル50の外径とほぼ同等か、もしくは若干小さい。
【0035】
ケーブル保護部40は、単純な円錐状ではなく、上記エッジ41から先端縁にわたって、まず短い段部43が形成され、次いでこの段部43から、外径がしだいに縮径する円錐状の縮径部44が形成され、この縮径部44の終端である縮径端部45から先端縁にわたって、一定外径の短い先端円筒部46が形成された形状となっている。
【0036】
段部43の断面形状は限定されず、例えば、図3の、(a)に示すようにエッジ41から縮径部44に直角に切れ落ちる階段状、(b)に示すようにエッジ41から縮径部44に真っ直ぐに傾斜するテーパ状、(c)に示すようにエッジ41と段部43から縮径部44への移行部分が、ともにRに形成されている形状等が挙げられる。
【0037】
上記保持部30内には、挿入孔31の奥端面31aからケーブル保護部40間の肉部がダンパ部32として形成されている。すなわち、エッジ41と、保持部30における挿入孔31の奥端面31aとの軸方向距離が、ダンパ部32として所定の肉厚によって確保されている。また、ケーブル保護部40の最小外径である先端円筒部46の外径は、ケーブル50の外径の125%以下に設定されている。
【0038】
本実施形態のプロテクタ20においては、ケーブル保護部40におけるテーパ部長さ(L1)、テーパ部の最小外径(d1)および最大外径(d2)、プロテクタ20の内径=テーパ部の内径(d3)および保持部30の外径(d4)、テーパ角(θ)が、ケーブル50の外径や物性に応じて、最適な寸法に設定される。
【0039】
ここで本実施形態では、図1に示すように、テーパ部長さ(L1)は、ケーブル保護部40の円錐部分の長さであってエッジ41から縮径端部45までの長さ、テーパ部の最小外径(d1)はケーブル挿通孔42の内径、テーパ部の最大外径(d2)は段部43と縮径部44との境界部分(段部43の終端)における外径、テーパ角(θ)は、段部43の終端と縮径端部45との間のおける軸方向に対する傾斜角度と定義する。
【0040】
なお、図示例でのテーパ部は、段部43の終端から縮径端部45まで直線状に縮径しながら傾斜する円錐状であるが、本発明では直線的な傾斜に限定されず、湾曲しながら縮径する形状も含む。
【0041】
プロテクタ20の寸法の好例としては、以下の寸法が挙げられる。
・テーパ部の最小外径(d1):11.8mm
・テーパ部の最大外径(d2):16mm
・プロテクタ20の内径(d3):9.8mm
・保持部30の外径(d4):20mm
・テーパ角:(θ):約4.4°
【0042】
次に、プロテクタの、上記寸法によるケーブル保護部の形状を変更した際に、ケーブル50に発生する応力を、次の手順で解析する。
【0043】
図4に示すように、両端を固定したケーブル50を両端固定はりとしてモデル化し、ケーブル50の長さを2L、ケーブル50のたわみ(振幅)を2δとする。さらにこのモデルは、左右対称な片持ちはりの連続とみなせるので、ケーブル50の長さをLとした図5に示す解析モデルにより、解析を行う。
【0044】
図5に示すケーブル50をたわませるのに必要な荷重(応力)Pは、下記(1)式で表される。
【0045】
【数3】
【0046】
ここで、
L:ケーブルの長さ
P:ケーブルをδ(mm)たわませるのに必要な応力(N)
δ:ケーブルのたわみ(mm)
L1:ケーブル保護部の円錐部分の長さ=テーパ部長さ(mm)
E1:ケーブルプロテクタの弾性係数(N/mm2)
I1:縮径部の断面二次モーメント
E2:ケーブルの弾性係数(N/mm2)
I2:ケーブルの断面二次モーメント(mm4)
である。
【0047】
また、上記(1)式で算出された荷重Pを図5に示した解析モデルに付加した場合に生じる応力を、ケーブルのプロテクタの装着部と未装着部とに分けて計算する。ケーブルの装着部は下記(2)式で表され、未装着部は下記(3)式で表される。
【0048】
プロテクタ装着部(0≦x<L1)の応力
【0049】
【数4】
【0050】
プロテクタ未装着部(L1≦x≦L)の応力
【0051】
【数5】
【0052】
上記(2),(3)式のdおよびxは、
d:ケーブルの外径=ケーブル保護部の内径(mm)
x:ケーブル固定端からの位置
である。
【0053】
ケーブルがクランプに装着された状態でケーブルがたわむと、ケーブルが折れ曲がって折損のおそれがある部分は、プロテクタのケーブル保護部から出る部分、すなわちプロテクタの先端部に対応する部分である。そこで、上記(1)式、(2)式および(3)式に対し、次のように設定した各変数を代入して、プロテクタ先端部に発生する応力(ケーブルから受ける応力の反力に相当する)を求めた。下記(1)’式、(2)’式および(3)’式は、その計算式である。
【0054】
δ:52.5(mm)
L:212(mm)
E1:−40℃で79.3(N/mm2)〈なお常温時には9(N/mm2)〉
E2:−40℃で885(N/mm2) 〈なお常温時には441(N/mm2)〉
I2:191.3(mm4)
【0055】
ケーブルをδたわませるのに必要な荷重P
【0056】
【数6】
【0057】
プロテクタ装着部(0≦x<L1)の応力
【0058】
【数7】
【0059】
プロテクタ未装着部(L1≦x≦212)の応力
【0060】
【数8】
【0061】
さらに、プロテクタ先端部はx=L1より、
【0062】
【数9】
【0063】
上記(1)’式および(3)’式から算出されるプロテクタの先端部に生じる応力が、15.3(N/mm2)以下を示すものを、本発明のプロテクタとする。プロテクタの先端部に発生する応力は、テーパ部長さやテーパ角によるケーブル保護部の円錐形状のみならず、ケーブル保護部の、最小外径、最大外径、内径、プロテクタの弾性係数など、様々な変動する因子が影響する。本発明は、これら変動因子が変動しても、上記(1)’式および(3)’を一定条件として、プロテクタの先端部に生じる応力が15.3(N/mm2)以下を示すプロテクタである。
【0064】
さて、表1は、上記のようにして求められるプロテクタ先端部の応力を、テーパ部長さ(L1)、テーパ部の最小外径(d1)、テーパ部の最大外径(d2)、プロテクタの内径(d3)、弾性係数(E1)を変えたプロテクタを示している。この表では、図11に示した従来品の他に、本発明を逸脱する比較例1〜3と、本発明品となる実施例1〜3を、上記計算式にあてはめて、プロテクタの先端部応力を求めた結果を示している。
【0065】
上記(1)’式および(3)’式によってプロテクタの先端部応力を求めるにあたっては、上記変動因子として、テーパ部長さ(L1)、テーパ部の最小外径(d1)、テーパ部の最大外径(d2)、プロテクタの内径(d3)、弾性係数(E1)の値が決まれば、その応力が求められるわけであり、表1で示される応力は、それに基づいて計算されている。そこで、本実施形態での計算に用いたこれら因子の数値について説明する。
【0066】
【表1】
【0067】
・材質の弾性係数
プロテクタの材質は、従来よりEPDMが用いられており、その弾性係数(100%モジュラス)は30℃の時に1〜10N/mm2、−40℃の時に70〜110N/mm2程度である。本実施形態では、−40℃の時に弾性係数が約79.3N/mm2のEPDMであったため、計算においてもこの数値を適用した。
【0068】
・プロテクタの内径
ケーブルとプロテクタとの間には隙間がない状態が、両者の一体感を得ることができるので好ましい。そこで、本実施形態では、外径が9.8mmのケーブルを用いたため、計算においてテーパ部の内径すなわちプロテクタの内径が9.8mmを最適値とされる。
【0069】
・テーパ部の最小外径
ケーブルの、プロテクタ装着部と未装着部との剛性の差が大きくならないように、テーパ部の最小外径はケーブルの外径と等しいことが望ましい。しかしながら、生産性、組み立て性あるいは取り扱い性といった実用面を考慮して、先端部の肉厚を1mmとし、したがってテーパ部の最小外径は11.8mmが最適値とされる。
【0070】
・テーパ部長さおよびテーパ角
図6および図7は、テーパ部長さとプロテクタの先端部応力を、テーパ角および弾性係数の組み合わせを変えた場合についての計算結果を示している。これら図に示すように、−40℃の時、テーパ部が長くなると応力は大きくなり、これは、ケーブルを保持するクランプに加わるケーブルからの反力が大きくなることを示す。その反力が大きくなると、リブの付加などによる形状の複雑化や、材料の厚肉化といった補強策が、クランプに求まれられる。また、−40℃の時には、テーパ角が大きくなると、ケーブルに発生する応力は大きくなる。これらを考慮して、テーパ部長さおよびテーパ角が適宜に定められる。
【0071】
以上に挙げた因子は、本発明を満足する一例であるが、この場合のプロテクタにおいては、ケーブルから受ける曲げモーメントの低減を図る上で、例えば、図1に示すように、保持部の外径d4が20mm程度、上記ダンパ部32の軸方向長さL3が3mm程度に設定される。
【0072】
以上のようにして、プロテクタの先端部応力が15.3N/mm2以下になるように各変動因子を定めて本発明のプロテクタの形状が設計されるが、特に、テーパ部長さとテーパ部の最大外径は、設定の自由度が高く、図8は、これらの関係を示している。同図で斜線部分はプロテクタの先端部応力が15.3N/mm2以下になり、また、段部を設ける必要性のある範囲を表している。
【0073】
表1に示すように、従来品や比較例1〜3のようにテーパ部の最大外径が20mmよりも大きい場合、言い換えれば20mmよりも小さくできない場合では、応力を図8の斜線部の範囲内にするには、テーパ部長さを2.2mm以下にする必要がある。ところが、テーパ部長さを短くすると、ケーブルがプロテクタの内径(ケーブル挿通孔の内周面)に接触する面積が小さくなり、プロテクタとケーブルとの一体感が損なわれ、剛性が低くなる。また、ケーブルの外径、プロテクタの内径、テーパ部長さの寸法公差を厳密に設定する必要が生じ、現実的ではない。したがって、15.3N/mm2以下の応力で、誤差によるバラツキが小さい寸法設定を行うには、段部を設けることが有効となるわけである。
【実施例】
【0074】
次に、本発明の効果を実証する実施例を説明する。
・振動試験
表1で示した従来品、比較例1〜3および実施例1〜3の数値を示すプロテクタを、それぞれ10個ずつ作成した。これらプロテクタを、図9に示すように(図9では本発明のプロテクタ20を例示している)、ケーブル50の両端部に固定したクランプ60に装着し、一方の端部のクランプ60を固定する一方、他方の端部を振動させた。図9に示すA点〜H点における3次元方向:X,Y,Z方向の座標は、表2に示す通りである。また、ケーブル50の長さは424mm、振動周波数は3Hzに設定した。
【0075】
【表2】
【0076】
振動数を数えながらケーブルを振動させ、ケーブルが折損した時の振動数を耐久回数として測定した。その結果を、表3に示す。この結果によれば、プロテクタの先端部応力が15.3N/mm2以下を示す実施例1〜3は、230万回を超えてもケーブルの折損は認められず、優れた耐久性を発揮した。一方、プロテクタの先端部応力が15.3N/mm2以上を示すものは、実施例に比べて極端に耐久性に劣り、よって本発明の効果が実証された。
【0077】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係るケーブルプロテクタの一部断面側面図である。
【図2】一実施形態のケーブルプロテクタの取り付け状態を示す一部断面側面図である。
【図3】ケーブルプロテクタに形成される段部の形態例を示す断面図である。
【図4】ケーブルプロテクタの先端部に発生する応力を解析するための両持ちはり型の解析モデルである。
【図5】ケーブルプロテクタの先端部に発生する応力を解析するための片持ちはり型の解析モデルである。
【図6】テーパ部長さとプロテクタの先端部応力の関係を、テーパ角および弾性係数の組み合わせを変えた場合の計算結果を示す線図である。
【図7】図6の−40℃のデータを拡大した線図である。
【図8】テーパ部長さとテーパ部の最大外径の関係を示す線図である。
【図9】実施例の振動試験の方法を示す図である。
【図10】自動車のパーキングブレーキ装置の一例を示す斜視図である。
【図11】ケーブルプロテクタの一従来品を示す側面図である。
【符号の説明】
【0079】
20…ケーブルプロテクタ、30…保持部、31…保持部の挿入孔、31a…奥端面、
32…ダンパ部、40…ケーブル保護部、41…エッジ(境界部分)、43…段部、
44…縮径部、45…縮径端部、50…ケーブル、60…クランプ(固定具)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種機械や、自動車等に具備される遠隔操作用のケーブルを、固定具により所定の部材に固定して配索するにあたり、固定具に装着されて、特に、振動するケーブルの固定具部分での屈曲の度合いを緩和してケーブルの折損を防止するケーブルプロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなケーブルは、例えば自動車のパーキングブレーキ装置に具備されている。該装置は、図10に示すように、車室内に設けられた手動式のブレーキレバー1の操作力を、パーキングブレーキケーブル2によって、車輪3内に設けられたパーキングブレーキユニットに伝える構成が多い。すなわち、ブレーキレバー1とパーキングブレーキユニットとが、ケーブル2によって連結されているわけであるが、そのケーブル2は、適度に余裕を持たせられた状態で、クランプ4を介して、車体の所定箇所と、パーキングブレーキユニットに固定されている。
【0003】
ところで、自動車の走行時は、車体に対して車輪が常に相対的に上下動しており、このため、図10に示したケーブル2においては、車輪3側のパーキングブレーキユニットに対する固定部と、そこから車体側へのはじめての固定部(クランプ4の部分)との間の部分が上下に振動し、繰り返し屈曲することになる。このように屈曲を強いられるケーブルは、長期間の使用により、その屈曲部両端の固定部で折損するおそれがあった。
【0004】
ケーブルが固定部で折損しやすい理由は、固定部から応力を受け、その際に生じる曲げモーメントが最も大きくなって屈曲の度合いが強くなるからである。また、固定部は、ケーブルをクランプでかしめて固定しているため、かしめた際の変形がケーブルに生じていることに起因する場合もある。
【0005】
そこで、固定部でのケーブルの折損を防ぐために、固定部から受ける応力を緩和させるケーブルプロテクタを、クランプに装着することが行われている。図11は、そのようなケーブルプロテクタの従来品の代表例を、寸法とともに示しており、これは、円筒状の保持部11の端部から円錐状のケーブル保護部12が連続して延びている構成で、保持部11にクランプが圧入されることによってクランプに保持され、ケーブル保護部12にケーブルが挿入される。
【0006】
ケーブルプロテクタの材質は、主にEPDM(エチレン・プロピレン・ジエン3元共重合体)等の弾性を有するゴムが用いられ、ケーブルの、クランプから出て屈曲が生じる部分が、ケーブル保護部12によって覆われ、かつ弾性的に支持されることにより、応力を受けにくくして、折損の防止を図っている。また、クランプから強い応力を受ける部分をゴム製の円錐状部材で支持するものとしては、例えば、特許文献1等でも知られている。
【0007】
【特許文献1】実開昭58−70953号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記EPDMを用いたケーブルプロテクタでは、常温時においては、ケーブルの湾曲に応じて比較的円滑に湾曲するが、低温時には、弾性係数が増大することによって曲がりにくくなる傾向を示す。このため、曲がりにくいケーブルプロテクタの先端部からケーブルが応力を受け、その部分でケーブルが折れ曲がることが起き、ひいては折損を招くおそれがあった。このような低温時における不具合を解消するには、ケーブルプロテクタの材料に、シリコンゴム等の、弾性係数が温度変化の影響をあまり受けないゴムを採用することが考えられたが、例えば、シリコンゴムでは、耐疲労特性がEPDMよりも劣るので、常温時においても、ケーブルからの応力を繰り返し受けることにより破損してしまうおそれがあった。
【0009】
一方、上記のようにケーブルプロテクタの先端部からケーブルが応力を受けるということは、ケーブルプロテクタの先端部には、ケーブルに対する反力として応力が生じていると言える。図11に示したような従来品や、上記特許文献1で示されるような、ケーブル保護部が円錐状に形成された円錐型ケーブルプロテクタでは、その円錐状部分の長さや、窄まり具合すなわちテーパ角を適切に設計すれば、たとえ低温状況下であっても、先端部に生じる応力を軽減させることができる。
【0010】
ちなみに、円錐状部分が長いほど、また、テーパ角が大きいほど、応力は大きくなることが判っている。そして、この応力は、大きすぎると、ケーブルプロテクタの先端部でケーブルが折れ曲がることになり、小さすぎると、ケーブルプロテクタがケーブルを保護する作用をなさず、固定部でケーブルが折れ曲がることになる。よって、この応力は適切な範囲に設定されなければならない。
【0011】
しかしながら従来のケーブルプロテクタのケーブル保護部は、クランプ側の保持部による最大外径から先端部の最小外径を直線的に結んだ単純な円錐であり、この形状では、その部分の長さや、縮径の度合いであるテーパ角とを、ケーブルを折損させない最適な寸法とする自由度が低く、そのため、十分な応力緩和効果を得にくいものであった。
【0012】
よって本発明は、ケーブル保護部が円錐状のケーブルプロテクタにおいて、その円錐状部分の形状設定の自由度が高まり、これによって、低温時であっても、ケーブルが固定部あるいはケーブルプロテクタから受ける応力を効果的に抑えることができ、屈曲するケーブルの応力緩和効果を十分に得ることができるケーブルプロテクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、所定の部材に固定される筒状の固定具の端部に固定され、該固定具とともにケーブルが挿通される弾性材からなる筒状のケーブルプロテクタであって、固定具の端部に外嵌状態で保持される保持部と、この保持部に連設される円錐状のケーブル保護部とを備え、ケーブル保護部は、保持部との境界部分から段部が形成され、この段部から、外径がしだいに縮径して縮径端部に至る縮径部を有する形状を呈していることを特徴としている。
【0014】
本発明のケーブルプロテクタによれば、屈曲するケーブルの、固定具から出る部分である固定端が、円錐状のケーブル保護部で弾性的に支持され、これによってケーブルが固定具から受ける応力が緩和され、折れ曲がりが起こりにくくなり、折損の防止が図られる。
【0015】
ここで、本発明のケーブルプロテクタのケーブル保護部は、従来のように保持部との境界部分から先端部を直線的に結んだ単純な円錐ではなく、境界部分から、まず先端部側に段部が形成されており、この段部から先端部に向かって、外径がしだいに縮径する縮径部が形成された円錐状を呈している。
【0016】
上述したように、ケーブル保護部の円錐状部分の長さ(テーパ部長さ)や、そのテーパ角は、ケーブルを折損させることのない最適な寸法に設定できればよいのであるが、従来形状では、それが難しかったわけである。しかしながら本発明では、段部を設けることにより、保持部による最大外径および先端部の最小外径にとらわれることなく、ケーブル保護部の長さとテーパ角とを、任意に設定できる。すなわち、ケーブル保護部の円錐状部分の形状を、高い自由度をもって設定することができる。
【0017】
本発明では、ケーブル保護部のテーパ部長さを、保持部とケーブル保護部との境界部分から、縮径の終端である縮径端部までとし、テーパ角は、段部の終端と縮径端部との間のおける軸方向に対する傾斜角度と定義する。
【0018】
本発明のケーブルプロテクタを適用するケーブルの外径や物性に応じて、最適なテーパ部長さとテーパ角との組み合わせが存在し、その組み合わせの範囲を、本発明では、段部を設けたことによって大きくすることができる。例えば、テーパ部長さを比較的長くとる場合には、テーパ角を小さくすることによりケーブルプロテクタの先端部に発生する応力を小さくすることができ、そのためには、段部を深くする、つまり段部の幅(径方向長さ)を長くする。また、この逆にテーパ部長さを比較的短くする場合には、それに応じてテーパ角を比較的大きくすれば、ケーブルプロテクタの先端部に適切な応力を発生させることができ、この場合の段部は、比較的浅いものとなる。
【0019】
ケーブルプロテクタの先端部に発生する応力は、テーパ部長さやテーパ角によるケーブル保護部の円錐形状のみならず、ケーブル保護部の、最小外径、最大外径、内径、ケーブルプロテクタの弾性係数など、様々な因子が影響する。本発明は、一定条件の元においてある特定範囲の応力が先端部に発生するケーブルプロテクタを、好ましい形態としており、それは次の通りである。
【0020】
ケーブルプロテクタを装着した固定具を介して、ケーブルを片持ちはりの状態に張った解析モデルにおいて、
L:ケーブルの長さ
P:ケーブルをδ(mm)たわませるのに必要な荷重(N)
δ:ケーブルのたわみ(mm)
L1:ケーブル保護部の円錐部分の長さ(mm)
E1:ケーブルプロテクタの弾性係数(N/mm2)
I1:縮径部の断面二次モーメント
(I1を求める際の縮径部の外径は、縮径部の平均外径とする)
E2:ケーブルの弾性係数(N/mm2)
I2:ケーブルの断面二次モーメント(mm4)
d:ケーブルの外径=ケーブル保護部の内径(mm)
x:ケーブル固定端からの位置
とした場合、
ケーブルをδ(mm)たわませるのに必要な荷重P(N)が、下記(1)式で表され、この(1)式で算出された荷重Pを解析モデルに付加した場合に、ケーブルの、ケーブルプロテクタ未装着部分に生じる応力が、下記(3)式で表され、
δ:52.5(mm)
L:212(mm)
E2:885(N/mm2)
I2:191.3(mm4)
を代入した場合に、下記(1)式および下記(3)式から算出されるケーブルプロテクタの先端部に生じる応力が、15.3(N/mm2)以下を満足することを特徴とする。
【0021】
【数1】
【0022】
【数2】
【0023】
また、本発明のケーブルプロテクタでは、保持部とケーブル保護部との境界部分と、保持部における固定具の挿入孔の奥端面との間の軸方向距離が、ダンパ部として所定の長さ確保されていることを好ましい形態としている。これは、固定具の端部と、大きな曲げモーメントを受けやすい段部との間に所定距離が介在することになり、この距離がない場合に比べてケーブルプロテクタの剛性を高くすることができる。
【0024】
ケーブルが固定具にかしめによって固定されている場合、ケーブルには、かしめの応力を受けて変形が生じている場合があり、この変形がケーブルを折れ曲がりやすくする弱点となる。また、屈曲するケーブルにより、ケーブルプロテクタは大きな曲げモーメントを受ける。そこが、上記ダンパ部による剛性の向上により、ケーブル保護の機能が十分になされる。
【0025】
また、本発明のケーブルプロテクタでは、挿通されたケーブルが出る部分である先端縁の外径が、ケーブルの外径の125%以下に設定されていることを好ましい形態としている。ケーブルの、ケーブルプロテクタで保護されている部分は、ケーブルプロテクタによって弾性的に支持され、剛性が補充されている状態になる。この部分と、ケーブルプロテクタの未装着部分との剛性の差があまり大きく一体感に欠けると、ケーブルはケーブルプロテクタ先端部から受ける応力により、折れ曲がりやすくなってしまう。
【0026】
この不具合を防ぐためには、ケーブルプロテクタの先端縁の外径を限りなくケーブルの外径に近いものとすればよいが、本発明では、生産性、組み立て性あるいは取り扱い性といった実用面を考慮して、上記のようにケーブルの外径の125%以下に設定することとする。
【発明の効果】
【0027】
本発明のケーブルプロテクタによれば、円錐状を呈し実質的にケーブルを保護するケーブル保護部に段部を設けたことにより、そのケーブル保護部の形状設定の自由度を高めることができ、これによって、低温時であっても、屈曲するケーブルの応力緩和効果を十分に得ることができる、その結果、ケーブルおよび当該ケーブルプロテクタ自身の耐久性を大幅に向上させることができる。
【0028】
また、段部を形成することにより肉厚を低減してケーブルプロテクタの容量を小さくすることができ、このため、材料の使用量の削減と、これに伴う低コストでの製造が可能になり、しかも軽量化も図られる。
【0029】
さらに、容量の低減により、特に低温時にはケーブルプロテクタによるケーブル全体の剛性が抑えられるので、固定具に加わる応力も低減し、このため、固定具を強化させるためのリブの付加などの手段を不要とすることができる。その結果、固定具を薄肉化することによるコスト低減や、軽量化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、図10で示したようなパーキングブレーキケーブルに適用される一実施形態のケーブルプロテクタ(以下、プロテクタと略称)20を示し、図2は、プロテクタ20の使用状態を示している。図2の符号50はケーブルで、このケーブル50は、車体等の所定箇所やパーキングブレーキユニットといった固定部に、クランプ(固定具)60を介して固定され、このクランプ60にプロテクタ10が装着される。
【0031】
クランプ60は、例えば、薄板鋼板等の金属板を円筒状に成形したもので、平板状のブラケット部61が一体に設けられている。ケーブル50は、クランプ60に挿通され、かつ、かしめによってクランプ60に固定され、ブラケット部61を固定部に固定することにより、クランプ60を介して所定箇所に配索され、かつ固定される。
【0032】
プロテクタ20は、所定範囲の弾性を有するゴムを成形したもので、クランプ60の端部に着脱可能に保持される保持部30と、保持部30の端部に連設されてケーブル50のみが挿通され、そのケーブル50の固定端を実質的に保護するケーブル保護部40とを備えている。ゴムの材質としては、EPDM等の合成ゴムが好適に選択される。
【0033】
保持部30は、内径および外径がともにほぼ一定の円筒状に形成されており、内径はクランプ60の外径よりもやや小さく、内部の挿入孔31にクランプ60の一端部が着脱可能に圧入され、図2に示すように、外嵌状態で、そのクランプ60の一端部に、かしめリング72によってかしめ固定される。
【0034】
ケーブル保護部40は、保持部30との境界部分である環状のエッジ41から、ケーブル50が出る部分である先端縁にわたって先細りとなる概ね円錐状を呈しており、保持部30と一体に、かつ、保持部30と同軸的に形成されている。ケーブル保護部40内の、ケーブル50が挿通され、保持部30の挿入孔31に連通するケーブル挿通孔42の内径は、ケーブル50の外径とほぼ同等か、もしくは若干小さい。
【0035】
ケーブル保護部40は、単純な円錐状ではなく、上記エッジ41から先端縁にわたって、まず短い段部43が形成され、次いでこの段部43から、外径がしだいに縮径する円錐状の縮径部44が形成され、この縮径部44の終端である縮径端部45から先端縁にわたって、一定外径の短い先端円筒部46が形成された形状となっている。
【0036】
段部43の断面形状は限定されず、例えば、図3の、(a)に示すようにエッジ41から縮径部44に直角に切れ落ちる階段状、(b)に示すようにエッジ41から縮径部44に真っ直ぐに傾斜するテーパ状、(c)に示すようにエッジ41と段部43から縮径部44への移行部分が、ともにRに形成されている形状等が挙げられる。
【0037】
上記保持部30内には、挿入孔31の奥端面31aからケーブル保護部40間の肉部がダンパ部32として形成されている。すなわち、エッジ41と、保持部30における挿入孔31の奥端面31aとの軸方向距離が、ダンパ部32として所定の肉厚によって確保されている。また、ケーブル保護部40の最小外径である先端円筒部46の外径は、ケーブル50の外径の125%以下に設定されている。
【0038】
本実施形態のプロテクタ20においては、ケーブル保護部40におけるテーパ部長さ(L1)、テーパ部の最小外径(d1)および最大外径(d2)、プロテクタ20の内径=テーパ部の内径(d3)および保持部30の外径(d4)、テーパ角(θ)が、ケーブル50の外径や物性に応じて、最適な寸法に設定される。
【0039】
ここで本実施形態では、図1に示すように、テーパ部長さ(L1)は、ケーブル保護部40の円錐部分の長さであってエッジ41から縮径端部45までの長さ、テーパ部の最小外径(d1)はケーブル挿通孔42の内径、テーパ部の最大外径(d2)は段部43と縮径部44との境界部分(段部43の終端)における外径、テーパ角(θ)は、段部43の終端と縮径端部45との間のおける軸方向に対する傾斜角度と定義する。
【0040】
なお、図示例でのテーパ部は、段部43の終端から縮径端部45まで直線状に縮径しながら傾斜する円錐状であるが、本発明では直線的な傾斜に限定されず、湾曲しながら縮径する形状も含む。
【0041】
プロテクタ20の寸法の好例としては、以下の寸法が挙げられる。
・テーパ部の最小外径(d1):11.8mm
・テーパ部の最大外径(d2):16mm
・プロテクタ20の内径(d3):9.8mm
・保持部30の外径(d4):20mm
・テーパ角:(θ):約4.4°
【0042】
次に、プロテクタの、上記寸法によるケーブル保護部の形状を変更した際に、ケーブル50に発生する応力を、次の手順で解析する。
【0043】
図4に示すように、両端を固定したケーブル50を両端固定はりとしてモデル化し、ケーブル50の長さを2L、ケーブル50のたわみ(振幅)を2δとする。さらにこのモデルは、左右対称な片持ちはりの連続とみなせるので、ケーブル50の長さをLとした図5に示す解析モデルにより、解析を行う。
【0044】
図5に示すケーブル50をたわませるのに必要な荷重(応力)Pは、下記(1)式で表される。
【0045】
【数3】
【0046】
ここで、
L:ケーブルの長さ
P:ケーブルをδ(mm)たわませるのに必要な応力(N)
δ:ケーブルのたわみ(mm)
L1:ケーブル保護部の円錐部分の長さ=テーパ部長さ(mm)
E1:ケーブルプロテクタの弾性係数(N/mm2)
I1:縮径部の断面二次モーメント
E2:ケーブルの弾性係数(N/mm2)
I2:ケーブルの断面二次モーメント(mm4)
である。
【0047】
また、上記(1)式で算出された荷重Pを図5に示した解析モデルに付加した場合に生じる応力を、ケーブルのプロテクタの装着部と未装着部とに分けて計算する。ケーブルの装着部は下記(2)式で表され、未装着部は下記(3)式で表される。
【0048】
プロテクタ装着部(0≦x<L1)の応力
【0049】
【数4】
【0050】
プロテクタ未装着部(L1≦x≦L)の応力
【0051】
【数5】
【0052】
上記(2),(3)式のdおよびxは、
d:ケーブルの外径=ケーブル保護部の内径(mm)
x:ケーブル固定端からの位置
である。
【0053】
ケーブルがクランプに装着された状態でケーブルがたわむと、ケーブルが折れ曲がって折損のおそれがある部分は、プロテクタのケーブル保護部から出る部分、すなわちプロテクタの先端部に対応する部分である。そこで、上記(1)式、(2)式および(3)式に対し、次のように設定した各変数を代入して、プロテクタ先端部に発生する応力(ケーブルから受ける応力の反力に相当する)を求めた。下記(1)’式、(2)’式および(3)’式は、その計算式である。
【0054】
δ:52.5(mm)
L:212(mm)
E1:−40℃で79.3(N/mm2)〈なお常温時には9(N/mm2)〉
E2:−40℃で885(N/mm2) 〈なお常温時には441(N/mm2)〉
I2:191.3(mm4)
【0055】
ケーブルをδたわませるのに必要な荷重P
【0056】
【数6】
【0057】
プロテクタ装着部(0≦x<L1)の応力
【0058】
【数7】
【0059】
プロテクタ未装着部(L1≦x≦212)の応力
【0060】
【数8】
【0061】
さらに、プロテクタ先端部はx=L1より、
【0062】
【数9】
【0063】
上記(1)’式および(3)’式から算出されるプロテクタの先端部に生じる応力が、15.3(N/mm2)以下を示すものを、本発明のプロテクタとする。プロテクタの先端部に発生する応力は、テーパ部長さやテーパ角によるケーブル保護部の円錐形状のみならず、ケーブル保護部の、最小外径、最大外径、内径、プロテクタの弾性係数など、様々な変動する因子が影響する。本発明は、これら変動因子が変動しても、上記(1)’式および(3)’を一定条件として、プロテクタの先端部に生じる応力が15.3(N/mm2)以下を示すプロテクタである。
【0064】
さて、表1は、上記のようにして求められるプロテクタ先端部の応力を、テーパ部長さ(L1)、テーパ部の最小外径(d1)、テーパ部の最大外径(d2)、プロテクタの内径(d3)、弾性係数(E1)を変えたプロテクタを示している。この表では、図11に示した従来品の他に、本発明を逸脱する比較例1〜3と、本発明品となる実施例1〜3を、上記計算式にあてはめて、プロテクタの先端部応力を求めた結果を示している。
【0065】
上記(1)’式および(3)’式によってプロテクタの先端部応力を求めるにあたっては、上記変動因子として、テーパ部長さ(L1)、テーパ部の最小外径(d1)、テーパ部の最大外径(d2)、プロテクタの内径(d3)、弾性係数(E1)の値が決まれば、その応力が求められるわけであり、表1で示される応力は、それに基づいて計算されている。そこで、本実施形態での計算に用いたこれら因子の数値について説明する。
【0066】
【表1】
【0067】
・材質の弾性係数
プロテクタの材質は、従来よりEPDMが用いられており、その弾性係数(100%モジュラス)は30℃の時に1〜10N/mm2、−40℃の時に70〜110N/mm2程度である。本実施形態では、−40℃の時に弾性係数が約79.3N/mm2のEPDMであったため、計算においてもこの数値を適用した。
【0068】
・プロテクタの内径
ケーブルとプロテクタとの間には隙間がない状態が、両者の一体感を得ることができるので好ましい。そこで、本実施形態では、外径が9.8mmのケーブルを用いたため、計算においてテーパ部の内径すなわちプロテクタの内径が9.8mmを最適値とされる。
【0069】
・テーパ部の最小外径
ケーブルの、プロテクタ装着部と未装着部との剛性の差が大きくならないように、テーパ部の最小外径はケーブルの外径と等しいことが望ましい。しかしながら、生産性、組み立て性あるいは取り扱い性といった実用面を考慮して、先端部の肉厚を1mmとし、したがってテーパ部の最小外径は11.8mmが最適値とされる。
【0070】
・テーパ部長さおよびテーパ角
図6および図7は、テーパ部長さとプロテクタの先端部応力を、テーパ角および弾性係数の組み合わせを変えた場合についての計算結果を示している。これら図に示すように、−40℃の時、テーパ部が長くなると応力は大きくなり、これは、ケーブルを保持するクランプに加わるケーブルからの反力が大きくなることを示す。その反力が大きくなると、リブの付加などによる形状の複雑化や、材料の厚肉化といった補強策が、クランプに求まれられる。また、−40℃の時には、テーパ角が大きくなると、ケーブルに発生する応力は大きくなる。これらを考慮して、テーパ部長さおよびテーパ角が適宜に定められる。
【0071】
以上に挙げた因子は、本発明を満足する一例であるが、この場合のプロテクタにおいては、ケーブルから受ける曲げモーメントの低減を図る上で、例えば、図1に示すように、保持部の外径d4が20mm程度、上記ダンパ部32の軸方向長さL3が3mm程度に設定される。
【0072】
以上のようにして、プロテクタの先端部応力が15.3N/mm2以下になるように各変動因子を定めて本発明のプロテクタの形状が設計されるが、特に、テーパ部長さとテーパ部の最大外径は、設定の自由度が高く、図8は、これらの関係を示している。同図で斜線部分はプロテクタの先端部応力が15.3N/mm2以下になり、また、段部を設ける必要性のある範囲を表している。
【0073】
表1に示すように、従来品や比較例1〜3のようにテーパ部の最大外径が20mmよりも大きい場合、言い換えれば20mmよりも小さくできない場合では、応力を図8の斜線部の範囲内にするには、テーパ部長さを2.2mm以下にする必要がある。ところが、テーパ部長さを短くすると、ケーブルがプロテクタの内径(ケーブル挿通孔の内周面)に接触する面積が小さくなり、プロテクタとケーブルとの一体感が損なわれ、剛性が低くなる。また、ケーブルの外径、プロテクタの内径、テーパ部長さの寸法公差を厳密に設定する必要が生じ、現実的ではない。したがって、15.3N/mm2以下の応力で、誤差によるバラツキが小さい寸法設定を行うには、段部を設けることが有効となるわけである。
【実施例】
【0074】
次に、本発明の効果を実証する実施例を説明する。
・振動試験
表1で示した従来品、比較例1〜3および実施例1〜3の数値を示すプロテクタを、それぞれ10個ずつ作成した。これらプロテクタを、図9に示すように(図9では本発明のプロテクタ20を例示している)、ケーブル50の両端部に固定したクランプ60に装着し、一方の端部のクランプ60を固定する一方、他方の端部を振動させた。図9に示すA点〜H点における3次元方向:X,Y,Z方向の座標は、表2に示す通りである。また、ケーブル50の長さは424mm、振動周波数は3Hzに設定した。
【0075】
【表2】
【0076】
振動数を数えながらケーブルを振動させ、ケーブルが折損した時の振動数を耐久回数として測定した。その結果を、表3に示す。この結果によれば、プロテクタの先端部応力が15.3N/mm2以下を示す実施例1〜3は、230万回を超えてもケーブルの折損は認められず、優れた耐久性を発揮した。一方、プロテクタの先端部応力が15.3N/mm2以上を示すものは、実施例に比べて極端に耐久性に劣り、よって本発明の効果が実証された。
【0077】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係るケーブルプロテクタの一部断面側面図である。
【図2】一実施形態のケーブルプロテクタの取り付け状態を示す一部断面側面図である。
【図3】ケーブルプロテクタに形成される段部の形態例を示す断面図である。
【図4】ケーブルプロテクタの先端部に発生する応力を解析するための両持ちはり型の解析モデルである。
【図5】ケーブルプロテクタの先端部に発生する応力を解析するための片持ちはり型の解析モデルである。
【図6】テーパ部長さとプロテクタの先端部応力の関係を、テーパ角および弾性係数の組み合わせを変えた場合の計算結果を示す線図である。
【図7】図6の−40℃のデータを拡大した線図である。
【図8】テーパ部長さとテーパ部の最大外径の関係を示す線図である。
【図9】実施例の振動試験の方法を示す図である。
【図10】自動車のパーキングブレーキ装置の一例を示す斜視図である。
【図11】ケーブルプロテクタの一従来品を示す側面図である。
【符号の説明】
【0079】
20…ケーブルプロテクタ、30…保持部、31…保持部の挿入孔、31a…奥端面、
32…ダンパ部、40…ケーブル保護部、41…エッジ(境界部分)、43…段部、
44…縮径部、45…縮径端部、50…ケーブル、60…クランプ(固定具)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の部材に固定される筒状の固定具の端部に固定され、該固定具とともにケーブルが挿通される弾性材からなる筒状のケーブルプロテクタであって、
前記固定具の端部に外嵌状態で保持される保持部と、
この保持部に連設される円錐状のケーブル保護部とを備え、
前記ケーブル保護部は、前記保持部との境界部分から段部が形成され、この段部から、外径がしだいに縮径して縮径端部に至る縮径部を有する形状を呈していることを特徴とするケーブルプロテクタ。
【請求項2】
前記ケーブルプロテクタを装着した前記固定具を介して、前記ケーブルを片持ちはりの状態に張った解析モデルにおいて、
L:ケーブルの長さ
P:ケーブルをδ(mm)たわませるのに必要な荷重(N)
δ:ケーブルのたわみ(mm)
L1:ケーブル保護部の円錐部分の長さ(mm)
E1:ケーブルプロテクタの弾性係数(N/mm2)
I1:縮径部の断面二次モーメント
(I1を求める際の縮径部の外径は、縮径部の平均外径とする)
E2:ケーブルの弾性係数(N/mm2)
I2:ケーブルの断面二次モーメント(mm4)
d:ケーブルの外径=ケーブル保護部の内径(mm)
x:ケーブル固定端からの位置
とした場合、
ケーブルをδ(mm)たわませるのに必要な荷重P(N)が、下記(1)式で表され、この(1)式で算出された荷重Pを前記解析モデルに付加した場合に、ケーブルの、ケーブルプロテクタ未装着部分に生じる応力が、下記(3)式で表され、
δ:52.5(mm)
L:212(mm)
E2:885(N/mm2)
I2:191.3(mm4)
を代入した場合に、下記(1)式および下記(3)式から算出されるケーブルプロテクタの先端部に生じる応力が、15.3(N/mm2)以下を満足することを特徴とする請求項1に記載のケーブルプロテクタ。
【数1】
【数2】
【請求項3】
前記保持部と前記ケーブル保護部との境界部分と、前記保持部における前記固定具の挿入孔の奥端面との間の軸方向距離が、ダンパ部として所定の長さ確保されていることを特徴とする請求項1または2に記載のケーブルプロテクタ。
【請求項4】
挿通された前記ケーブルが出る部分である前記先端縁の外径が、ケーブルの外径の125%以下に設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のケーブルプロテクタ。
【請求項1】
所定の部材に固定される筒状の固定具の端部に固定され、該固定具とともにケーブルが挿通される弾性材からなる筒状のケーブルプロテクタであって、
前記固定具の端部に外嵌状態で保持される保持部と、
この保持部に連設される円錐状のケーブル保護部とを備え、
前記ケーブル保護部は、前記保持部との境界部分から段部が形成され、この段部から、外径がしだいに縮径して縮径端部に至る縮径部を有する形状を呈していることを特徴とするケーブルプロテクタ。
【請求項2】
前記ケーブルプロテクタを装着した前記固定具を介して、前記ケーブルを片持ちはりの状態に張った解析モデルにおいて、
L:ケーブルの長さ
P:ケーブルをδ(mm)たわませるのに必要な荷重(N)
δ:ケーブルのたわみ(mm)
L1:ケーブル保護部の円錐部分の長さ(mm)
E1:ケーブルプロテクタの弾性係数(N/mm2)
I1:縮径部の断面二次モーメント
(I1を求める際の縮径部の外径は、縮径部の平均外径とする)
E2:ケーブルの弾性係数(N/mm2)
I2:ケーブルの断面二次モーメント(mm4)
d:ケーブルの外径=ケーブル保護部の内径(mm)
x:ケーブル固定端からの位置
とした場合、
ケーブルをδ(mm)たわませるのに必要な荷重P(N)が、下記(1)式で表され、この(1)式で算出された荷重Pを前記解析モデルに付加した場合に、ケーブルの、ケーブルプロテクタ未装着部分に生じる応力が、下記(3)式で表され、
δ:52.5(mm)
L:212(mm)
E2:885(N/mm2)
I2:191.3(mm4)
を代入した場合に、下記(1)式および下記(3)式から算出されるケーブルプロテクタの先端部に生じる応力が、15.3(N/mm2)以下を満足することを特徴とする請求項1に記載のケーブルプロテクタ。
【数1】
【数2】
【請求項3】
前記保持部と前記ケーブル保護部との境界部分と、前記保持部における前記固定具の挿入孔の奥端面との間の軸方向距離が、ダンパ部として所定の長さ確保されていることを特徴とする請求項1または2に記載のケーブルプロテクタ。
【請求項4】
挿通された前記ケーブルが出る部分である前記先端縁の外径が、ケーブルの外径の125%以下に設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のケーブルプロテクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−170368(P2006−170368A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−366386(P2004−366386)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000004640)日本発条株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
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