説明

ケーブル保持構造

【課題】ケーブルの保持力が高く、ケーブルの外皮が裂け難いケーブル保持構造を提供する。
【解決手段】ケーブル保持構造は、第1保持部10と第2保持部20とからなり、第1保持部10及び第2保持部20に、ケーブル1の長手方向に交差する方向で頂辺16,26がケーブル1に食い込むように、ケーブル1の長手方向に少なくとも2つ以上並んで第1突起部15及び第2突起部25がそれぞれ設けられている。そして、第1突起部15及び第2突起部25は、それぞれケーブル1の軸を中心に回転方向にずれて配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケーブル保持構造に関し、特に、ケーブルの抜けを防止するためのケース及びカバーを有するケーブル保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブル同士を繋ぐ中継器やアンプ回路等を収容するためのケース及びカバーからなる筺体からケーブルを導き出す場合、ケーブルが抜けないように種々の試みがなされている。例えば、ネジによりケースにケーブルを固定するものや、ケース及びカバーの開口部でケーブルを挟持させて抜け防止を行うもの等があった。
【0003】
このようなケーブルの引き抜きに対する強度を向上させるものとして、例えば特許文献1に開示のものがある。特許文献1に開示の複合アンテナ装置は、複数のリブが相対向する開口面からケーブルに対して上下に突出するように設けられたものである。一方側の開口面に設けられるリブと他方側の開口面に設けられるリブは、引き抜き方向の強度を向上させるために、位相差を持って配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−258793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、同軸ケーブルの小径化も進んでおり、例えば2mm程度の直径の非常に細いケーブルを保持しようと思っても、従来の挟持手法では同軸ケーブルの外皮への食い込みが浅く、十分な抜け防止機能を実現できなかった。また、ケーブルに深くリブを食い込ませようとすると、ケーブルの外皮が裂けてしまうリスク等もあった。さらに、リブの数を増やして保持力を高めようとしても、リブを配置するスペースは限られているため、リブ間の距離が狭くなってくると、リブが設けられているエリア全体でケーブルがかしめられた状態となる。このようになると、個々のリブがケーブル外皮に食い込まなくなり、却って保持力が弱くなる場合もあった。また、ケーブルを上下又は左右からのみで保持すると、ケーブルに対してバランス良く保持できず、特定方向にのみ強く潰されて破断してしまうこともあった。さらに、上下又は左右からのみでケーブルを保持すると、ケーブルが引っ張られる方向によって保持力にばらつきが生じ得る。
【0006】
さらに、ケーブルを強くかしめ止め等した場合には、その押圧力によりケーブルの芯線の周りの絶縁体が変形し、インピーダンスに影響を与え得るという問題もあった。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ケーブルの保持力が高く、ケーブルの外皮が裂け難いケーブル保持構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明によるケーブル保持構造は、ケーブルの少なくとも一部を覆って保持する第1保持部であって、ケーブルの長手方向に交差する方向で頂辺がケーブルに食い込むようにケーブルの長手方向に少なくとも2つ以上並んで設けられる第1突起部を有し、それぞれの第1突起部がケーブルの軸を中心に回転方向にずれて配置される、第1保持部と、第1保持部と相対向してケーブルの少なくとも一部を覆って保持する第2保持部であって、ケーブルの長手方向に交差する方向で頂辺がケーブルに食い込むようにケーブルの長手方向に少なくとも2つ以上並んで設けられる第2突起部を有し、それぞれの第2突起部がケーブルの軸を中心に回転方向にずれて配置される、第2保持部と、を具備するものである。
【0009】
ここで、第1保持部及び/又は第2保持部のケーブルの長手方向に垂直な方向の最大幅がケーブルの直径と略同じであり、第1突起部及び/又は第2突起部は、第1保持部及び/又は第2保持部の最大幅を確保したまま突起するものであれば良い。
【0010】
また、第1突起部及び/又は第2突起部は、ケーブルの長手方向の断面形状がクサビ形状でも良い。
【0011】
また、第1突起部及び第2突起部は、ケーブルを挟んで対向する位置にそれぞれ配置されても良い。
【0012】
また、第1突起部及び第2突起部は、各頂辺がそれぞれ直線状でも良い。
【0013】
また、第1突起部及び第2突起部は、各頂辺が平行且つ同方向にそれぞれ配置されても良い。
【0014】
また、第1突起部及び第2突起部は、各頂辺が平行且つ交差する方向にそれぞれ配置されても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明のケーブル保持構造には、ケーブルの保持力が高く、ケーブルの外皮が裂け難いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明のケーブル保持構造を説明するための図である。
【図2】図2は、本発明のケーブル保持構造の他の例を説明するためのケーブル長手方向に垂直な断面図である。
【図3】図3は、本発明のケーブル保持構造の突起部の頂辺がU字形状の場合の例を説明するための断面図である。
【図4】図4は、本発明のケーブル保持構造の突起部の他の例を説明するためのケーブル長手方向の開口部の断面図である。
【図5】図5は、本発明のケーブル保持構造の突起部のさらに他の例を説明するためのケーブル長手方向の断面図である。
【図6】図6は、本発明のケーブル保持構造の突起部を説明するためのケーブル長手方向の上から見た開口部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明のケーブル保持構造を説明するための図であり、図1(a)がケーブルの長手方向の断面図であり、図1(b)がそのb−b断面図、図1(c)がそのc−c断面図、図1(d)がそのd−d断面図である。さらに、図1(e)は、保持部の斜視図である。図示の通り、本発明のケーブル保持構造は、ケーブル1を保持するものであり、第1保持部10と第2保持部20とから主に構成されている。ケーブル1は、例えば同軸ケーブルであり、芯線2と外皮3から構成されている。
【0018】
第1保持部10及び第2保持部20は、ケーブル1の少なくとも一部を覆って保持するものであり、これらを組み合わせて筺体内部からケーブル1を導出するための導出口となるものである。具体的には、図示例では、第1保持部10がケーブル1の下半分を覆っており、第2保持部20がケーブル1の上半分を覆っている。なお、図示例では第1保持部10及び第2保持部20によりケーブル1の全周が覆われているが、本発明はこれに限定されず、後述の第1突起部や第2突起部が配置可能な範囲であれば、ケーブル1の全周が覆われなくても良い。ここで、筺体は、例えば図示例では、ケース11及びカバー21が組み合わさって構成されている。また、筺体内部には、例えば回路基板4等が収容されており、ケーブル1の芯線2が回路基板4にはんだ等により電気的に接続されている。なお、図1(a)では、このケース11とカバー21から一体的に第1保持部10及び第2保持部20が成形された例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば筺体側は共通であり、第1保持部及び第2保持部をケーブルの径等に応じて交換可能なように、第1保持部及び第2保持部を別体として構成しても良い。
【0019】
そして、第1保持部10には、第1突起部15が設けられている。図示例では、3つの第1突起部15b,15c,15dがケーブル1の長手方向に並んで設けられている。第1突起部15は、ケーブル1の長手方向に交差する方向で頂辺がケーブル1に食い込むように、第1保持部10からケーブル1の方向に突出している。図1(b),(c),(d)に示されるように、第1突起部15の頂辺16が直線状に構成され、これがケーブル1に食い込んでいる。また、第1突起部15は、図示例ではケーブル1の長手方向の断面形状がクサビ形状になっており、ケーブル1の抜け方向への保持力をより高めている。
【0020】
また、第2保持部20にも、第1保持部10と同様に、第2突起部25が設けられている。図示例では、3つの第2突起部25b,25c,25dがケーブル1の長手方向に並んで設けられている。第2突起部25は、ケーブル1の長手方向に交差する方向で頂辺がケーブル1に食い込むように、第2保持部20からケーブル1の方向に突出している。図示例では、第2突起部25の頂辺26が直線状に構成され、これがケーブル1に食い込んでいる。また、第2突起部25も、ケーブル1の長手方向の断面形状がクサビ形状になっており、ケーブル1の抜け方向への保持力をより高めている。
【0021】
そして、本発明のケーブル保持構造で特に特徴的なのは、図1(b),(c),(d)を参照して分かる通り、それぞれの第1突起部15は、それぞれケーブル1の軸を中心に回転方向にずれて配置されている。即ち、図1(b)に示されるように、第1突起部15bは、頂辺が水平方向になるように配置されている。次に並ぶ第1突起部15cは、頂辺がケーブル1の軸を中心に回転方向にずれて配置されている。例えば、図示例では、20度傾いて配置されている。そして、第1突起部15dは、図示例では逆方向に回転方向にずれ、−20度傾いて配置されている。
【0022】
同様に、それぞれの第2突起部25は、第1突起部15に対してケーブル1を挟んで対向する位置にそれぞれ配置されている。第2突起部25bは、頂辺が水平方向になるように配置されている。次に並ぶ第2突起部25cは、頂辺がケーブル1の軸を中心に回転方向にずれて配置されている。例えば、図示例では、20度傾いて配置されている。そして、第2突起部25dは、図示例では逆方向に回転方向にずれ、−20度傾いて配置されている。
【0023】
このように、本発明のケーブル保持構造では、各突起部が、ケーブルの軸を中心に回転方向にずれて配置されているため、図1(e)等からも分かるように、ケーブルを複数の方向から保持することが可能となる。したがって、上下或いは左右からのみの保持に比べてケーブルをバランス良く複数方向から保持可能となるため、ケーブルの特定方向への潰れ等を防止可能となる。また、特定の方向からのみ強い押圧力で保持するものではなく、複数方向からバランス良く保持するため、ケーブルに対する押圧力が分散される。したがって、ケーブルの芯線の周りの絶縁体が大きく変形することを防止できるため、インピーダンスに影響を与え難いという効果も得られる。
【0024】
ここで、本発明のケーブル保持構造において、第1突起部及び第2突起部の回転方向への配置についてより詳細に説明する。ケース11やカバー21を組み立てる際に、ケーブル1を第1保持部10や第2保持部20に位置合わせして挟み込むが、この際、第1保持部10や第2保持部20の最大幅Wとケーブル1の直径は略同じであることが好ましい。これは、ケーブル1の直径が大きいと、一旦、第1保持部10や第2保持部20に押し込んで圧入した後に、ケース11にカバー21を嵌合させることになると、この工程が増えることになるためである。したがって、第1保持部10や第2保持部20のケーブル1の長手方向に垂直な方向の最大幅Wがケーブル1の直径と略同じであることが好ましい。
【0025】
そして、第1突起部15や第2突起部25については、この最大幅Wを確保したまま突起するように配置されることが好ましい。即ち、第1突起部15や第2突起部25は、その頂辺の長さは確保したまま、開口部の最大幅Wをその頂辺により狭めないように配置されれば良い。
【0026】
図2は、本発明のケーブル保持構造の他の例のケーブル長手方向に垂直な断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。図2に示されるように、第1突起部15や第2突起部25を、ケーブル1の軸を中心に回転方向にずらし過ぎると、最大幅Wが頂辺により狭められる。さらに、頂辺の長さも短くなる。勿論この場合でも、上述の圧入工程が許容される場合には、上述の例と同様に、ケーブル保持力を向上させることは可能である。
【0027】
このように、本発明のケーブル保持構造では、例えば開口部が短く、狭い範囲に突起部を並べなければいけない場合等であっても、複数の突起部が特定の方向のみに食い込むのではなく、ケーブルの周辺の種々の方向から突起部を食い込ませることが可能となるため、ケーブル保持力をより高めることが可能である。このとき、食い込み量を多くしなくとも保持力を高められるため、無理なケーブル圧縮により外皮が裂けてしまうリスク等も回避できる。また、本発明のケーブル保持構造では、複数の突起部を狭い範囲に並べたとしても、ケーブルの周辺の種々の方向から突起部を食い込ませることが可能であるため、従来技術で説明したような、特定方向からのみ複数設けたエリア全体でケーブルがかしめられるような状態とはならない。
【0028】
また、本発明のケーブル保持構造においては、第1突起部15及び第2突起部25は、上述の図示例には限定されず、例えばその頂辺がU字形状(曲線状)であっても良い。図3は、本発明のケーブル保持構造の突起部の頂辺がU字形状の場合の例を説明するための断面図であり、図3(a),(b),(c)はそれぞれ図1(a)のb−b断面、c−c断面、d−d断面に対応するものである。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。図示の通り、頂辺16,26がU字形状であっても、ケーブル1に食い込むように開口部11,21に設けられていれば、上述の例と同様の作用効果が得られる。円形に合わせて頂辺をU字形状にすることで、ケーブルへの食い込みが均一になる。
【0029】
図1等に示される例では、突起部のケーブルの長手方向の断面形状がクサビ形状である例を示したが、ケーブルに食い込むように構成されていれば、形状についてはこれに限定されない。図4は、本発明のケーブル保持構造の突起部の他の例を説明するためのケーブル長手方向の開口部の断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。例えば、図4に示されるように、第1突起部15及び第2突起部25は、3角形状であっても良い。さらに、クサビ形状と3角形状を組み合わせても良い。また、第1突起部及び第2突起部は、その個数についてはそれぞれ2つ以上であれば良い。2つ以上であれば、ケーブルの軸を中心に回転方向にそれぞれずらして配置することが可能となる。
【0030】
さらに、上述の図示例では、第1突起部及び第2突起部は、ケーブルを挟んで対向する位置に並んで配置されている例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。図5は、本発明のケーブル保持構造の突起部のさらに他の例を説明するためのケーブル長手方向の開口部の断面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。図5に示されるように、第1突起部15及び第2突起部25は、ケーブルの長手方向に対してオフセットして配置されても良い。
【0031】
また、図6は、本発明のケーブル保持構造の突起部を説明するためのケーブル長手方向の上から見た開口部の上面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。図6(a)に示される例では、第1突起部15及び第2突起部25は、各頂辺が同方向にそれぞれ配置されている。このとき、図1(b)等に示されるように、各頂辺は対向して平行となっている。即ち、この図示例では、対向して配置される第1突起部15及び第2突起部25の各頂辺16,26が、平行且つ同方向にそれぞれ配置されるものである。本発明のケーブル保持構造では、このように対向する位置で平行且つ同方向に各突起部を配置することで、ケーブルをバランス良く保持することが可能となる。
【0032】
さらに、第1突起部15及び第2突起部25の各頂辺は平行であるが、図6(b)に示される例では、各頂辺が交差する方向に配置されている。このように構成されても、ケーブルの保持力が高く、ケーブルの外皮が裂けにくいという作用効果が得られる。図6(b)に示されるような構成の場合には、ケーブルの軸を中心に回転方向にずれて配置されるのと組み合わさって、螺旋状にケーブルを保持することになる。
【0033】
なお、本発明のケーブル保持構造は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0034】
1 ケーブル
2 芯線
3 外皮
4 回路基板
10 第1保持部
11 ケース
15 第1突起部
16,26 頂辺
20 第2保持部
21 カバー
25 第2突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを保持するケーブル保持構造であって、該ケーブル保持構造は、
ケーブルの少なくとも一部を覆って保持する第1保持部であって、ケーブルの長手方向に交差する方向で頂辺がケーブルに食い込むようにケーブルの長手方向に少なくとも2つ以上並んで設けられる第1突起部を有し、それぞれの第1突起部がケーブルの軸を中心に回転方向にずれて配置される、第1保持部と、
第1保持部と相対向してケーブルの少なくとも一部を覆って保持する第2保持部であって、ケーブルの長手方向に交差する方向で頂辺がケーブルに食い込むようにケーブルの長手方向に少なくとも2つ以上並んで設けられる第2突起部を有し、それぞれの第2突起部がケーブルの軸を中心に回転方向にずれて配置される、第2保持部と、
を具備することを特徴とするケーブル保持構造。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル保持構造において、前記第1保持部及び/又は第2保持部のケーブルの長手方向に垂直な方向の最大幅がケーブルの直径と略同じであり、第1突起部及び/又は第2突起部は、第1保持部及び/又は第2保持部の最大幅を確保したまま突起することを特徴とするケーブル保持構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のケーブル保持構造において、前記第1突起部及び/又は第2突起部は、ケーブルの長手方向の断面形状がクサビ形状であることを特徴とするケーブル保持構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のケーブル保持構造において、前記第1突起部及び第2突起部は、ケーブルを挟んで対向する位置にそれぞれ配置されることを特徴とするケーブル保持構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載のケーブル保持構造において、前記第1突起部及び第2突起部は、各頂辺がそれぞれ直線状であることを特徴とするケーブル保持構造。
【請求項6】
請求項5に記載のケーブル保持構造において、前記第1突起部及び第2突起部は、各頂辺が平行且つ同方向にそれぞれ配置されることを特徴とするケーブル保持構造。
【請求項7】
請求項5に記載のケーブル保持構造において、前記第1突起部及び第2突起部は、各頂辺が平行且つ交差する方向にそれぞれ配置されることを特徴とするケーブル保持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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