説明

ケーブル固定金具

【課題】特殊なワッシャーやボルトを用いずとも容易にボルトの脱落を防止できる耐候性の高いケーブル固定金具を提供する。
【解決手段】ケーブルを保持するための開閉可能な金属製のバンド2と、バンド2を固定系3に固定するための固定ボルト4と、バンド2の自由端に形成され自由端同士をボルト5で固定するための複数の鍔部6a、6bとを備えたケーブル固定金具1において、一方の鍔部6aが、ボルト5を挿通するボルト孔17と、ボルト孔17よりも先端側に形成され、折り曲げられることでボルト5の頭部18を覆うカバー部19とを備え、カバー部19は、カバー部19の折り曲げ位置を規定するための折り曲げガイド22と、カバー部19が折り曲げガイド22に沿って折り曲げられたときボルト5と同軸上に位置するように形成され、ドライバーの挿通を許容し、かつ、ボルト5の挿通を規制する孔径のドライバー通し孔25とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルを固定するためのケーブル固定金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波同軸ケーブル等のケーブルを固定するケーブル固定金具としては、図7及び図8に示すものが知られている。このケーブル固定金具30は、弧状のバンド31と、このバンド31を梁等の固定系に固定するための固定ボルト32とを備え、バンド31の内周側にケーブル33を収容したのち、バンド31の自由端同士をボルト(ナベ小ネジ)34で締結することでケーブル33を支持するようになっている。
【0003】
また、ボルト34はバンド31の一方の自由端に形成された鍔部35に挿通されており、ボルト34のネジ部36には、ボルト34が鍔部35から脱落するのを防止するためのポリエステル製の樹脂ワッシャー37が装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−12733号公報
【特許文献2】特開2010−48289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このケーブル固定金具30では、ボルト34を必要以上に緩み方向へ回転させるとボルト34が樹脂ワッシャー37から脱落落下するという課題があった。また、ケーブル固定金具30を屋外で使用する場合、樹脂ワッシャー37が紫外線劣化により破損し、ケーブル固定金具30にケーブル33を着脱するときにボルト34がバンド31から脱落するなど、長年の使用に耐えることができないという課題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、脱落防止用の特殊なワッシャーやボルトを用いずとも容易にボルトの脱落を防止できるケーブル固定金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、ケーブルを保持するための開閉可能な金属製のバンドと、該バンドを固定系に固定するための固定ボルトと、上記バンドの自由端に形成され、自由端同士をボルトで固定するための複数の鍔部とを備えたケーブル固定金具において、一方の上記鍔部は、上記ボルトを挿通するボルト孔と、該ボルト孔よりも先端側に形成され、折り曲げられることで上記ボルトの頭部を覆うカバー部とを備え、上記カバー部は、該カバー部の折り曲げ位置を規定するための折り曲げガイドと、上記カバー部が上記折り曲げガイドに沿って折り曲げられたとき上記ボルトと同軸上に位置するように形成され、ドライバーの挿通を許容し、かつ、上記ボルトの挿通を規制する孔径のドライバー通し孔とを備えたものである。
【0008】
上記ボルトは、ボルト本体と該ボルト本体に組み込まれたワッシャーとを備え、上記ドライバー通し孔は、上記ワッシャーより小径に形成されているとよい。
【0009】
上記カバー部は、少なくとも2つの折り曲げ位置を有し、上記折り曲げガイドは、2つの折り曲げ位置に亘って形成された矩形状の貫通孔部と、該貫通孔部から上記カバー部の幅方向に延びて形成され、折り曲げ位置を決めるための位置決め用切欠部とを備えるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、脱落防止用の特殊なワッシャーやボルトを用いずとも容易にボルトの脱落を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るケーブル固定金具の斜視図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の要部展開平面図である。
【図4】バンドの鍔部にボルトを装着する状態の説明図である。
【図5】鍔部同士をボルトで締結する状態の説明図である。
【図6】他の実施の形態を示すバンドの要部展開平面図である。
【図7】従来のケーブル固定金具の斜視図である。
【図8】(a)は図7の正面図であり、(b)は図7の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図2に示すように、ケーブル固定金具1は、ケーブルを保持するための開閉可能な金属製のバンド2と、バンド2を固定系3に固定するための固定ボルト4と、バンド2の自由端に形成され自由端同士をボルト5で固定するための鍔部6a、6bとを備える。
【0013】
バンド2は、正面視略円形の弧状に形成されると共に上下二つ割りに形成されており、下側の下バンド部7と上側の上バンド部8とが蝶番9を介して回動自在に連結されることで開閉自在に形成されている。上バンド部8と下バンド部7は、それぞれステンレス材からなり、帯状のステンレス板をプレス加工して形成されている。
【0014】
下バンド部7は、バンド2が固定系3に固定されるとき固定系3に着座する着座部10を有する。着座部10は、下バンド部7の下端部を屈曲して形成されており、下方に矩形状に突出すると共に下端を平坦に形成されている。また、着座部10の内周側には、固定ボルト4の頭部11を収容すると共に頭部11の側面に当接して頭部11の回り止めをする頭部収容部12が形成されている。
【0015】
上バンド部8は、下バンド部7より薄く軽量に形成されている。蝶番9は、下バンド部7の端部に幅方向の中央を外周側に突出して形成されると共に略筒状に屈曲して形成された受部13と、上バンド部8の端部に形成され受部13内に回転可能に挿通される軸部14とからなる。軸部14は、上バンド部8の端部に臨む位置に矩形状の孔15を形成することで上バンド部8の端部に形成されている。
【0016】
鍔部6a、6bは、上バンド部8と下バンド部7のもう一方の端部に略径方向に延びて形成されており、ボルト5で締結されたときそれぞれ略水平に延びるようになっている。下バンド部7の鍔部6bには、ボルト5に螺合されるバーリングタップ16が形成されている。
【0017】
図1及び図3に示すように、上バンド部8の鍔部6aには、ボルト5を挿通するためのボルト孔17が形成されると共に、ボルト5の頭部18を覆うカバー部19がボルト孔17よりも先端側に位置して形成されている。カバー部19は、鍔部6aにこれを延長して形成されており、基端を上方に折り曲げられると共に基端と先端の間を鍔部6a側に折り曲げられることでボルト5の頭部18を覆うようになっている。カバー部19は、上方に折り曲げられると共に鍔部6aに対して直角に起立する起立部20と、起立部20の上端から鍔部6a側に直角に折り曲げられボルト5の上方を覆う天井部21とを備える。
【0018】
カバー部19には、カバー部19の折り曲げ位置を規定するための折り曲げガイド22が形成されている。折り曲げガイド22は、カバー部19の基端側に、延長方向に延びると共に幅方向に延びる矩形状に形成された貫通孔部23と、貫通孔部23から幅方向に延びて形成され折り曲げ位置を決めるための位置決め用切欠部24とからなる。貫通孔部23は、2つの折り曲げ位置に亘って形成されている。位置決め用切欠部24は、2つの折り曲げ位置にそれぞれ形成されると共に、貫通孔部23の両側から幅方向に延びるように形成されており、カバー部19に折り曲げ方向の力が加わったとき、カバー部19が自然と折り曲げ位置で屈曲するようになっている。位置決め用切欠部24の端部は、それぞれ角を丸めて形成されており、クラックの発生を防止するようになっている。
【0019】
また、カバー部19の天井部21には、ドライバー26(図5参照)の挿通を許容し、かつ、ボルト5の挿通を規制する孔径のドライバー通し孔25が形成されている。ドライバー通し孔25は、カバー部19が折り曲げガイド22に沿って折り曲げられたときボルト5と同軸上に位置するように形成されており、ドライバー通し孔25にドライバー26を通すことでドライバー26でボルト5を締め、又は緩められるようになっている。ボルト5は、ボルト本体5aにワッシャー5bを組み込んで形成された組込ネジ(M4)からなる。ドライバー通し孔25は、ワッシャー5bより小径に形成されている。
【0020】
起立部20は、ボルト孔17に挿通されたボルト5の頭部18が天井部21から離間できるような長さに形成されており、ボルト5の傾動を許容するようになっている。
【0021】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0022】
ケーブル固定金具1でケーブルを固定する場合、まず、固定系3にケーブル固定金具1を固定ボルト4で固定する。
【0023】
次に、図4に示すように、鍔部6aのボルト孔17に上方からボルト5を挿入する。このとき、カバー部19は、折り曲げガイド22の基端側の位置決め用切欠部24に沿って予め折り曲げられており、全体が起立されている。このため、カバー部19がボルト5の挿入を邪魔することはない。
【0024】
この後、カバー部19を折り曲げガイド22の先端側の位置決め用切欠部24に沿って折り曲げる。図3に示すように、位置決め用切欠部24の両側に臨むカバー部19の幅W1は、貫通孔部23の両側に臨むカバー部19の幅W2より狭く形成されているため、カバー部19は両側の2つの位置決め用切欠部24を結ぶ線に沿って自然と折れ曲がる。これにより、天井部21がボルト5の頭部18の上方を間隔を隔てて覆うと共に、ドライバー通し孔25がボルト5と同軸上に位置される。ドライバー通し孔25は、ボルト5より小径に形成されているため、ボルト5はボルト孔17からの脱落を阻止される。
【0025】
しかるのち、図5に示すように、バンド2の内周側にケーブルを収容し、鍔部6a、6b同士をボルト5で締結する。このとき、鍔部6a、6b同士は必ずしも平行になるとは限らず、一方の鍔部6aに対して他方の鍔部6bが傾斜することもある。しかし、ボルト5の頭部18と天井部21との間には間隙が形成されており、ボルト5には、想定される鍔部6a、6b同士の傾斜角度に応じた角度の傾動が許容されているため、ドライバー26をドライバー通し孔25に通すと共にボルト5に嵌合させることでドライバー26の操作でボルト5を傾動させることができ、ボルト5を容易にバーリングタップ16に螺合でき、鍔部6a、6b同士を容易に締結できる。
【0026】
また、メンテナンス等のためにケーブル固定金具1からケーブルを取り外す場合、ドライバー通し孔25にドライバー26を通し、ボルト5を緩める。このとき、ボルト5を必要以上に回転させてもボルト5はカバー部19によって上方への移動を規制されているためボルト孔17から抜け落ちることはない。また、ケーブル固定金具1を屋外で長年使用した場合であってもカバー部19はステンレス材からなるため樹脂のように紫外線劣化することはなく、ボルト5の脱落防止機能が損なわれることはない。
【0027】
このように、上バンド部8の鍔部6aが、ボルト5を挿通するボルト孔17と、ボルト孔17よりも先端側に形成され、折り曲げられることでボルト5の頭部18を覆うカバー部19とを備え、カバー部19は、カバー部19の折り曲げ位置を規定するための折り曲げガイド22と、カバー部19が折り曲げガイド22に沿って折り曲げられたときボルト5と同軸上に位置するように形成され、ドライバー26の挿通を許容し、かつ、ボルト5の挿通を規制する孔径のドライバー通し孔25とを備えるものとしたため、ケーブル固定金具1にケーブルを着脱するとき、従来のように樹脂ワッシャー5bの脱落を気にしながら緩み方向に回転する必要はなく、恒久的にボルト5の脱落を防止できる。また、ボルト5のネジサイズに合わせて樹脂ワッシャーを製作する必要がなく、脱落防止用の特殊なワッシャーやボルトを用いる必要もないため、ケーブル固定金具1を安価にできる。そして、樹脂を使わず、ステンレス材からなるカバー部19でボルト5の落下を防止できるため、屋外で長年使用してもボルト脱落防止機能が損なわれず、ケーブル固定金具1の耐久性を向上させることができる。
【0028】
また、ボルト5が、ボルト本体5aとボルト本体5aに組み込まれたワッシャー5bとを備え、ドライバー通し孔25は、ワッシャー5bより小径に形成されているものとしたため、ボルト5を市販の組込ネジにすることができ、安価にできる。また、ドライバー通し孔25より大きなワッシャー5bを有する組込ネジであればネジサイズに係わらず用いることができ、ボルト5を自由に選択することができる。
【0029】
カバー部19は、2つの折り曲げ位置を有し、折り曲げガイド22は、2つの折り曲げ位置に亘って形成された矩形状の貫通孔部23と、貫通孔部23からカバー部19の幅方向に延びて形成され、折り曲げ位置を決めるための位置決め用切欠部24とを備えるものとしたため、簡単な構造で折り曲げ位置を決めることができる。また、カバー部19の外周形状を凹凸のない滑らかな矩形状にでき、折り曲げガイド22が作業者の衣服や工具などに引っ掛かるのを防ぐことができる。またさらに、ケーブル固定金具1の軽量化ができる。
【0030】
また、バンド2がステンレス材からなるものとし、バンド2に一体に形成されるカバー部19もステンレス材からなるとしたため、ケーブル固定金具1の耐久性を更に向上させることができる。
【0031】
カバー部19が、頭部18から離間できるものとしたため、鍔部6a、6b同士を締結するときボルト5の傾動を許容でき、作業性が損なわれるのを防止できる。
【0032】
なお、折り曲げガイド22は、上述のものに限るものではない。折り曲げガイド22は、折り曲げ位置を曲げに弱い構造にすればよく、曲げ位置に丸孔を形成するものであってもよく、図6に示すように、カバー部27の両側に切れ込み28を形成してなるものであってもよい。この場合、切れ込み28は2つの折り曲げ位置間に形成されると共に折り曲げ位置で大きく切れ込むように形成されるとよい。また、折り曲げガイド22は、カバー部19の片面又は両面に幅方向に延びる溝を形成してなるものであってもよい。
【0033】
また、固定系3に1本の固定ボルト4で固定されるケーブル固定金具1について説明したが、バンド2の幅を広く形成し、複数本の固定ボルト4で固定されるものとしてもよい。
【0034】
カバー部19は、鍔部6aのボルト孔17にボルト5を挿入するときに、折り曲げガイド22の基端側の位置決め用切欠部24に沿って予め折り曲げられており、全体が起立されているものとしたが、これに限るものではない。図3に示すように、鍔部6aと同一平面上に位置するものとしてもよい。
【0035】
また、バンド2は、上下に二つ割りに形成されたものについて説明したが、左右に二つ割りに形成されたものであってもよく、略C字状に形成され蝶番9を有しないものであってもよい。
【0036】
上バンド部8、下バンド部7、鍔部6a、6b及びカバー部19はステンレス材からなるものとしたが、ケーブルの支持に必要な強度と耐食性を兼ね備えた金属であれば他の金属からなるものであってもよい。
【0037】
カバー部19は、上側の鍔部6aに設けられるものとしたが、下側の鍔部6bに設けられるものとしてもよい。この場合、ボルト孔17は下側の鍔部6bに形成し、バーリングタップ16は上側の鍔部6aに形成するとよい。
【0038】
また、鍔部6bにバーリングタップ16を形成するものとしたがこれに限るものではない。ナット等、ボルトに螺合する雌ねじ部を設けるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 ケーブル固定金具
2 バンド
3 固定系
4 固定ボルト
5 ボルト
5a ボルト本体
5b ワッシャー
6a 鍔部
6b 鍔部
18 頭部
19 カバー部
22 折り曲げガイド
23 貫通孔部
24 位置決め用切欠部
25 ドライバー通し孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを保持するための開閉可能な金属製のバンドと、
該バンドを固定系に固定するための固定ボルトと、
上記バンドの自由端に形成され、自由端同士をボルトで固定するための複数の鍔部とを備えたケーブル固定金具において、
一方の上記鍔部は、上記ボルトを挿通するボルト孔と、該ボルト孔よりも先端側に形成され、折り曲げられることで上記ボルトの頭部を覆うカバー部とを備え、
上記カバー部は、該カバー部の折り曲げ位置を規定するための折り曲げガイドと、上記カバー部が上記折り曲げガイドに沿って折り曲げられたとき上記ボルトと同軸上に位置するように形成され、ドライバーの挿通を許容し、かつ、上記ボルトの挿通を規制する孔径のドライバー通し孔とを備えたことを特徴とするケーブル固定金具。
【請求項2】
上記ボルトは、ボルト本体と該ボルト本体に組み込まれたワッシャーとを備え、上記ドライバー通し孔は、上記ワッシャーより小径に形成されている請求項1記載のケーブル固定金具。
【請求項3】
上記カバー部は、少なくとも2つの折り曲げ位置を有し、
上記折り曲げガイドは、2つの折り曲げ位置に亘って形成された矩形状の貫通孔部と、該貫通孔部から上記カバー部の幅方向に延びて形成され、折り曲げ位置を決めるための位置決め用切欠部とを備える請求項1又は2記載のケーブル固定金具。

【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−239258(P2012−239258A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105198(P2011−105198)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】