説明

ケーブル類用工具装置

【課題】 ケーブルを損傷することがないように正確かつスムーズに支持線部とケーブル部とを分離することができるケーブル類用工具装置を提供する。
【解決手段】 支持線部109とケーブル部106とが外被を介して一体的に形成されたケーブル類用の工具装置であって、操作部12と、操作部12の開閉操作で開閉する開閉作用部14と、を含み、開閉作用部14は、閉操作でケーブル類(100)を支持しつつケーブル類の長手方向に沿って移動させることにより支持線部109とケーブル部106とを分離させる分離部16を有することを特徴とするケーブル類用工具装置10から構成される。開閉作用部にケーブル類100を配置して開閉作用部を閉じ、操作部を握持しながらケーブル類100に沿って引き動作するだけで、正確かつスムーズに支持線部109とケーブル部106とを分離することができる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、架空敷設されるケーブル類の敷設作業等の際に用いられるケーブル類用工具装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、通信用の光ファイバケーブル等を電柱間に架空敷設する際には、敷設作業の簡便化のために、図8に示すような、ケーブルにケーブルを支持するための支持線が一体的に形成された、いわゆる自己支持型の架空光ファイバケーブル100が用いられる場合がある。図8に示すように、架空光ファイバケーブル100は、光ファイバ心線102とテンションメンバ103が外被104で被覆されたケーブル部106と、支持線107を外被108で被覆して形成された支持線部109と、が平行に配置された状態で、それぞれの外被104、108を肉厚の薄いノッチ部110を介して一体的に形成されている。架空光ファイバケーブル100は、ノッチ部110からケーブル部106と支持線部109とに切断分離されるようになっている。図9に示すように、架空光ファイバケーブル100を電柱200に支持させる際には、まず、架空光ファイバケーブル100の電柱に支持させる中間部分の支持線部109とケーブル部106とがノッチ部110から分離される。ケーブル部と分離した支持線部109の中間部を切断し、その切断端部に電柱200に支持線を支持させるための引留め金具120が取り付けられる。支持線部109の切断端部に引留め金具120を取り付ける際には、支持線部と引留め金具との連結部分の滑りを防止するために支持線部109の外被108を剥ぎ取って支持線を露出した状態で接続されている。
【0003】
従来では、上記のような支持線部109とケーブル部106とを分離させる作業や支持線部109の外被108を剥ぎ取る作業では、例えば、カッターナイフが用いられていた。支持線部109とケーブル部106とをノッチ部110から分離させる際には、カッターナイフの刃をノッチ部110に当てながらノッチ部の長手方向に沿って引いて切断分離していた。また、支持線部109の外被108を剥ぎ取る作業は、カッターナイフで支持線107周りの外被108を削ぎとるようにして支持線を露出させるものであった。
【0004】
一方、特開平11−7841号公報には、ケーブルとケーブル支持線との切り裂きを容易にすることを目的とした自己支持型ケーブルが提案されている。特開平11−7841号公報の自己支持型ケーブルでは、ケーブル1と、ケーブル支持線2との間に形成された合成樹脂製の首部3の内部に2本の切り裂き紐4、4’が予め埋設されて設けられている。ケーブル1とケーブル支持線2とを分離する際には、首部3の側面3aから少し切り裂いて、その部分に埋設された切り裂き紐を切断して切り裂き紐の端部を取り出し、該端部を把持して切り裂き紐を引くことにより、切り裂き紐4が首部の側面3aを切り裂くようになっている。この切り裂き紐による首部側面の切り裂きを首部3の左右両側面側3a、3bからそれぞれ行ってケーブルとケーブル支持線とを分離するものであった。
【特許文献1】特開平11−7841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のように、カッターナイフを用いて支持線部とケーブル部とを分離させる場合には、架空光ファイバケーブルの敷設作業は高い位置での作業で不安定なバケット等の上での作業であるとともに、架空光ファイバケーブル自体も不安定な状態であり、作業性が悪いものであった。しかも、人の手でカッターナイフを引く作業であるから、安定かつ正確にノッチ部に沿ってカッターナイフを引くことが困難で、カッターナイフの刃がノッチ部からずれてケーブルを損傷する危険性が高かった。カッターナイフを用いて支持線部の外被を剥ぎ取る際にも同様に、作業性が悪く、安定かつ正確にカッターナイフの刃を当てることが困難で、カッターナイフで外被を削ぎ落とす際に誤ってケーブル部を損傷する恐れが高かった。光ファイバケーブルは一部でも損傷されると利用できなくなってしまうので、新たなケーブルが必要となり、ケーブルの敷設にかかる費用、労力、時間等に多大な損失が発生しやすいという問題があった。
【0006】
一方、特開平11−7841号公報の自己支持型ケーブルにおいては、首部に埋設された切り裂き紐を切断して切り裂き紐の端部を取り出すために、カッターナイフを用いて首部の側面からある程度切り裂く必要があった。特に、首部の切り裂き紐を切断する際には切り裂き紐に交差するようにカッターナイフの刃を当てる必要もあった。したがって、上記従来の場合と同様に、高い位置での不安定なバケット等上での作業で、作業性が悪く、安定かつ正確なカッターナイフの操作が困難であるから、カッターナイフの刃が首部からずれてケーブル部を損傷する恐れが高かった。さらに、自己支持型ケーブルの左右両側面それぞれから引き裂き紐による引き裂き操作を行うので、2回同じ工程を繰り返す必要があり、作業が煩雑なものであった。また、支持線部の外被を剥ぎ取る際には上記従来と同様にカッターナイフを用いた作業となり、外被を削ぎ落とす際に誤ってケーブル部を損傷する恐れが高く、費用等に多大な損失が生じやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケーブルを損傷することがないように正確かつスムーズに支持線部とケーブル部とを分離することができるケーブル類用工具装置を提供することである。さらに、他の目的は、ケーブル類の外被を簡単かつスムーズに剥ぎ取ることができるケーブル類用工具装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、支持線部109とケーブル部106とが外被を介して一体的に形成されたケーブル類用の工具装置であって、操作部12と、操作部12の開閉操作で開閉する開閉作用部14と、を含み、開閉作用部14は、閉操作でケーブル類(100)を支持しつつケーブル類の長手方向に沿って移動させることにより支持線部109とケーブル部106とを分離させる分離部16を有することを特徴とするケーブル類用工具装置10から構成される。操作部及び開閉作用部の開閉構成は任意でよく、例えば、対になったハンドルを近接離隔するようにスライド移動させて開閉作用部を開閉させる構成や、枢軸を介して開閉作用部を開閉させる構成等その他任意のものでよい。開閉作用部をケーブル類の長手方向に沿って移動させる動作は、例えば、工具装置の押し動作、引き動作、横すべり状の動作等、作業者に対して任意の方向に移動させるように構成されてもよい。
【0009】
また、分離部16は、ケーブル類(100)の長手方向に沿って開閉作用部14を移動させるにあたり、ケーブル類の幅方向へのズレ移動を規制しつつケーブル類を収容するガイド部22と、ガイド部22内に収容されるケーブル類の支持線部109とケーブル部106との境界線(110)に対向するように刃先が向けられて配置された切刃部24と、を含むこととしてもよい。ガイド部は、例えば、板状片、杆状片、ブロック片等を組み付けて構成されていてもよい。
【0010】
また、開閉作用部14を閉じてケーブル類の長手方向に沿って開閉作用部14を移動させるにあたり、ガイド部22は、ケーブル類の断面周囲を取り囲むように形成されることとしてもよい。ガイド部は、ケーブル類のある程度の長さにわたって全周面側に当接または近接するように取り囲むと好適である。
【0011】
また、開閉作用部14は、中間にケーブル類(100)を挟むように開閉する一対の作用片体20a、20bを有し、下側の作用片体20bにはガイド部22の一部を成す受部30が、上側の作用片体20aには切刃部24が設けられたこととしてもよい。
【0012】
また、受部30は端面視コ字枠を形成することとしてもよい。受部のコ字枠構成は、コ字対向する枠片が、互いに対面していてもよく、収容させるケーブル類の長手方向に沿って前後にずれた位置関係に配置されていてもよい。
【0013】
また、一対の作用片体20a、20bの閉鎖時にそれぞれの作用片体20a、20bの要素(26、28)が咬み合い状に組み合わされてコ字長枠状の受部32を形成することとしてもよい。
【0014】
また、上側作用片体20aは、ケーブル類(100)の支持線部109とケーブル部106との境界線(110)に対応して配置された切刃部24と、該切刃部24と平行に配置されて一対の作用片体20a、20bの閉鎖時にケーブル類(100)の外側面に当接又は近接してガイド部22の一部を成す組み合わせ側片28が突設されていることとしてもよい。
【0015】
また、操作部12及び開閉作用部14は、枢軸18を介して接続され、操作部12の握持離開操作により開閉作用部14を開閉動作させるように設けられたこととしてもよい。操作部の操作ハンドルと開閉作用部との枢軸構成は、例えば、X字状に組み付けて交点部分を枢軸接続する構成、V字状に組み付けてV字隅部を枢軸で接続する構成、あるいは、複数の枢軸を介して接続する構成等その他任意の構成でもよい。
【0016】
また、ケーブル部を分離させた支持線部109の端部を遊挿状に挿通させ該支持線部109の外径よりやや大きな内径を有する挿通孔38と、挿通孔38のいずれかの孔口に形成され挿通させた支持線部109の長手方向に移動させることにより支持線部109の外被108を削ぎ取りさせる刃状縁部40と、を含む外被剥離部34が設けられたこととしてもよい。外被剥離部の配置位置は任意でよいが、開閉作用部の分離部の近傍であって、互いに邪魔しない位置に配置されると、装置全体がコンパクトに設計でき、操作性がよい。
【0017】
また、ケーブル類の切断部44を有することとしてもよい。切断部は、操作部の開閉操作に伴って切断できるようにすると簡単に構成できる。切断部の配置位置は任意でよいが、開閉作用部の分離部または外被剥離部の近傍であって、互いに邪魔しない位置に配置されると、装置全体がコンパクトに設計でき、操作性がよく、持ち手を変えることなく分離、切断、外被の剥離等の作業を続けて作業できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のケーブル類用工具装置によれば、支持線部とケーブル部とが外被を介して一体的に形成されたケーブル類用の工具装置であって、操作部と、操作部の開閉操作で開閉する開閉作用部と、を含み、開閉作用部は、閉操作でケーブル類を支持しつつケーブル類の長手方向に沿って移動させることにより支持線部とケーブル部とを分離させる分離部を有する構成であるから、操作部を介して開閉作用部を閉操作してケーブル類に沿って移動させるだけの簡単な操作だけでよく、操作性が良好である。したがって、例えば、ケーブル類を架空敷設する際などに、バケット上等の不安定な場所でケーブル類自体が不安定な状態であっても、一人の作業者だけで安定した分離操作を行うことができ、正確かつスムーズに支持線部とケーブル部とを分離させることができる。
【0019】
また、分離部は、ケーブル類の長手方向に沿って開閉作用部を移動させるにあたり、ケーブル類の幅方向へのズレ移動を規制しつつケーブル類を収容するガイド部と、ガイド部内に収容されるケーブル類の支持線部とケーブル部との境界線に対向するように刃先が向けられて配置された切刃部と、を含む構成とすることにより、ケーブル類を支持しながらケーブル類の長手方向に沿って移動させることにより支持線部とケーブル部とを分離させる分離部の構成を具体的に実現できる。同時に、ガイド部によりケーブル類の幅方向へのズレ移動を規制できるので、切刃部が正確にケーブル類の境界線に沿って当たりながら移動でき、ケーブル部を損傷させることなく正確に境界線から分離させることができる。
【0020】
また、開閉作用部を閉じてケーブル類の長手方向に沿って開閉作用部を移動させるにあたり、ガイド部は、ケーブル類の断面周囲を取り囲むように形成される構成とすることにより、簡単な構成で、ケーブル類の幅方向を含むケーブル類の長手方向に交差するいずれの方向へのズレ移動を確実に規制することができ、切刃部を正確に支持線部とケーブル部との境界線に当てることができる。
【0021】
また、開閉作用部は、中間にケーブル類を挟むように開閉する一対の作用片体を有し、下側の作用片体にはガイド部の一部を成す受部が、上側の作用片体には切刃部が設けられた構成とすることにより、下側の作用体に設けられた受部にケーブル類を下側から支持させた状態で作用片体を閉鎖することにより、ケーブル類をガイド部へ収容を簡単な操作で確実に行えるとともに、作用片体の閉操作に伴って受部に支持させたケーブル類に上側から切刃部を当てることができるので、操作性が良好である。
【0022】
また、受部は端面視コ字枠を形成する構成とすることにより、受部にケーブル類を収容操作が行いやすいとともに、受部に支持させたケーブル類が脱落することなく安定した支持状態を保持でき、ガイド部内へのケーブルの収容及びケーブル類の境界線へ切刃部を当てる操作を作用片体の閉操作を良好に行える。特に、受部のコ字枠がケーブル類の外側面に当接または近接するように形成されると受部内に収容させたケーブル類が作用片体を開いた状態のままでも横ずれせず、開閉作用部を閉操作して切刃部を支持線部とケーブル部の境界線に当てさせる際に、正確な操作が行える。
【0023】
また、一対の作用片体の閉鎖時にそれぞれの作用片体の要素が咬み合い状に組み合わされてコ字長枠状の受部を形成する構成とすることにより、作用片体を開いた状態でケーブル類を配置させやすく操作性が良好であるとともに、作用片体の閉鎖時にはコ字状長枠を形成してある程度の長さにわたってケーブル類の横ズレを規制し、切刃部を正確にケーブル類の境界線に当てながら開閉作用部を移動させることができる。よって、ケーブル部を損傷させることなく正確かつスムーズに支持線部とケーブル部の分離作業を行える。
【0024】
また、上側作用片体は、ケーブル類の支持線部とケーブル部との境界線に対応して配置された切刃部と、該切刃部と平行に配置されて一対の作用片体の閉鎖時にケーブル類の外側面に当接又は近接してガイド部の一部を成す組み合わせ側片が突設されている構成であるから、例えば、切刃部と組み合わせ側片との平行離隔間に支持線部等を収容しつつ、ケーブル類の外側面に沿って移動しながら切刃部を当てることにより、切刃部に対するケーブル類の横ズレを規制して切刃部を正確にケーブル類の境界線に当てながら移動させることができる。
【0025】
また、操作部及び開閉作用部は、枢軸を介して接続され、操作部の握持離開操作により開閉作用部を開閉動作させるように設けられた構成とすることにより、簡単な構造で、操作性がよく、操作部からの操作を確実に開閉作用部側に伝達できる操作部及び開閉作用部の構成を具体的に実現できる。
【0026】
また、ケーブル部を分離させた支持線部の端部を遊挿状に挿通させ該支持線部の外径よりやや大きな内径を有する挿通孔と、挿通孔のいずれかの孔口に形成され挿通させた支持線部の長手方向に移動させることにより支持線部の外被を削ぎ取りさせる刃状縁部と、を含む外被剥離部が設けられた構成とすることにより、支持線部を挿通孔に一旦挿通させて逆方向に支持線部に沿って移動させるだけでよく、操作性が良好であるとともに、外被剥離部が挿通孔で支持線部に案内されながら刃状縁部が外被に当たるので安定した操作が行える。よって、ケーブル部を損傷させることがなく、支持線部の外被を簡単かつスムーズに剥ぎ取ることができる。
【0027】
また、ケーブル類の切断部を有する構成とすることにより、例えば、支持線部を切断することができ、ケーブル類の架空敷設作業における支持線部とケーブル部の分離、ケーブル部と分離させた支持線部の切断といった一連の作業を工具を交換することなくスムーズに行え、実用性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しつつ本発明のケーブル類用工具装置の実施の形態について説明する。本発明のケーブル類用工具装置は、例えば、支持線部とケーブル部とが一体的に形成されたケーブル類を敷設する際の、ケーブル類の分離、切断、外被の剥ぎ取り作業等で適用される。図1ないし図9は本発明のケーブル類用工具装置の実施の形態を示している。本実施形態において、ケーブル類用工具装置(以下、単に「工具装置」ともいう)10は、図1、図2に示すように、操作部12と、操作部12の開閉操作で開閉する開閉作用部14と、を含み、開閉作用部14は閉操作でケーブル類を支持しつつケーブル類の長手方向に沿って移動させることにより支持線部とケーブル部とを分離させる分離部16を有している。本実施形態では、工具装置10が適用されるケーブル類としては、例えば、図9に示すような、ケーブル部106と支持線部109とがそれぞれの外被をノッチ部110を介して一体的に接続されている架空光ファイバケーブル100に適用される場合について説明する。
【0029】
本実施形態において、操作部12は、図1、図3に示すように、開閉作用部14を開閉操作する操作手段であり、工具装置10全体の持ち手部分となる。本実施形態では、操作部12は、枢軸18を介して開閉作用部14と接続されており、枢軸18回りに開閉する一対の操作ハンドル13a、13bを含む。操作部12は、操作ハンドルの握持離開操作により開閉作用部14を開閉動作させるように設けられている。
【0030】
本実施形態では、開閉作用部14は、中間に架空光ファイバケーブル100を挟むように開閉する一対の作用片体20a、20bを有している。すなわち、開閉作用部14は、作用片体20a、20bの開閉動作により架空光ファイバケーブル100を挟持状に支持する。本実施形態では、一の作用片体20aが一の操作ハンドル13bと一体的に設けられ、他の作用片体20bが他の操作ハンドル13aと一体的に設けられ、それらを枢軸18を介して接続して構成されている。これにより、操作部からの力が開閉作用操作側に確実に伝達される構成を簡単な構造で実現できる。図1において、左側を前方、右側を後方とすると、枢軸18より前方側に開閉作用部14が設けられ、枢軸18より後方側に操作部12が長く延設されて、全体として前後に長い形状となっている。
【0031】
図2、図3、図4に示すように、開閉作用部14の分離部16は、架空光ファイバケーブルを収容するガイド部22と、ガイド部22内に収容された架空光ファイバケーブル100の境界線に対向するように刃先が向けられて配置された切刃部24と、を含む。本実施形態において、ガイド部22は、開閉作用部14の閉操作で架空光ファイバケーブル100を収容して支持するとともに、架空光ファイバケーブル100の長手方向に沿って開閉作用部14を移動させるにあたり、架空光ファイバケーブル100の幅方向へのズレ移動を規制するようになっている。すなわち、ガイド部22は、開閉作用部14において、その閉状態で架空光ファイバケーブル100を支持する支持手段であるとともに、架空光ファイバケーブルの長手方向に沿って安定して移動させる案内手段である。本実施形態では、ガイド部22は、架空光ファイバケーブル100が開閉作用部14の横位置で前後方向に沿うように設置されるように設けられている。
【0032】
図4−1、図4−2、図5に示すように、本実施形態において、ガイド部22は、開閉作用部14を閉じた際に、架空光ファイバケーブル100の長手方向のある程度の部分にわたって、その断面周囲を取り囲むように形成されている。これにより、開閉作用部の閉操作で架空光ファイバケーブル100の長手方向に沿ってスムーズに移動させるとともに、その移動させる際に架空光ファイバケーブル100の幅方向へのズレ移動を規制する構成を具体的に実現している。本実施形態では、ガイド部22は、作用片体20a、20bに形成されている複数の突設片(26、27、28、29)を含む。本実施形態において、突設片の構成としては、例えば、下側の作用片体20bから外側に向けて突設されたL字受け片26と、同下側の作用片体に設けられた受け側片27と、さらに、上側の作用片体20aに設けられた組み合わせ側片28と、同上側の作用片体に設けられた押さえ片29と、を含む。そして、開閉作用部14を閉じた際に、それらの突設片(26、27、28、29)の組み合わせ構成で、架空光ファイバケーブル100の断面周囲を取り囲むようにケーブルの外側面に当接または近接配置される一方で、開閉作用部14が架空光ファイバケーブル100の長手方向に沿っては移動できるようになっている。これらの突設片のうち、下側の作用片体20bに設けられたL字受け片26と受け側片27とは、上面側を開口した端面視コ字枠を形成するようになっており、架空光ファイバケーブル100を載置できる受部30を構成している。受部30は、作用片体20a、20bを開いた状態でも架空光ファイバケーブル100を下側から支持でき、その支持状態を維持したまま作用片体20a、20bを閉鎖させて該ケーブルをガイド部22内へ確実に収容させる。受部30のL字受け片26の立ち上がり壁部26aと受け側片27との離隔幅は、支持線部とケーブル部とを含む縦幅と略同じ離隔幅で設定されている。受部30は、長尺の架空光ファイバケーブル100の中間部分を設置させて該架空光ファイバケーブルが横ズレするのを規制しながら支持し、開閉作用体14を閉操作する際に実際の分離手段となる切刃部24が支持線部109とケーブル部106の境界線であるノッチ部110(図8参照)に確実に当たるようになっている。なお、本実施形態では、図6にも示すように受け側片27は、平面視で、他の突設片(26、28、29)及び切刃部24の位置から前方にずれた位置に配置されており、架空光ファイバケーブル100を受部30に設置する際の設置位置の視認性を良くし、作業者が架空光ファイバケーブル100を受部30に確実に設置できるようになっている。押さえ片29は、開閉作用部14を閉じた際に受部30に設置された架空光ファイバケーブルに上方側からあてがわれるように配置される。さらに、図5に示すように、下側の作用片体20bに設けられたL字受け片26と上側の作用片体20aに設けられた組み合わせ側片28とは、作用片体20a、20bの閉鎖時に咬み合い状に組み合わされて、架空光ファイバケーブルをある程度の長さ部分を収容できるようなコ字長枠状の受枠32が形成される。作用片体20a、20bの閉鎖時にそのコ字長枠状の受枠32内に切刃部24が進出して、ガイド部22に収容された架空光ファイバケーブルの支持線部109とケーブル部106との境界線に当たるようになっている。
【0033】
切刃部24は、図3、図4、図6に示すように、本実施形態では、上側の作用片体20aに一体的に設けられている。切刃部24は、全体的に薄肉厚板の刃体からなり、刃体側面がガイド部に収容される架空光ファイバケーブル100の境界線であるノッチ部に沿うように前後方向に向けて配置固定されている。本実施形態では、切刃部24は、該境界線に対向するように刃先が向けられつつ、開閉作用部14が閉じた際に刃先先端が少なくともノッチ部を貫通するように設けられ、かつ後方側に向けて斜めに切上がり状に形成されている。すなわち、本実施形態では、開閉作用部14を架空光ファイバケーブル100の長手方向に沿って後方側に移動させることにより、切刃部24が架空光ファイバケーブルのノッチ部を切り裂き分離する。さらに、本実施形態では、切刃部24は、上記したコ字長枠状の受枠32を構成する組み合わせ側片28と平行に配置されて、上側の作用片体20aに一体的に組み付けられている。切刃部24と組み合わせ側片28との一定の離隔幅で設けられており、その離隔幅は、支持線部の外径と略同じに設定されている。
【0034】
上記のような分離部16のガイド部22及び切刃部24の構成により、受部30に架空光ファイバケーブルを配置させて開閉作用部を閉じるだけで正確に切刃部24がケーブルの境界線に当たり、さらに、該開閉作用部を架空光ファイバケーブルの長手方向に沿って移動させる際に、常に切刃部と対向状にコ字長枠状の受枠32が架空光ファイバケーブルの外側面に当接または近接しながら配置されて、切刃部24がノッチ部からケーブル部側に横ズレするのを防止する。これにより本実施形態に係る工具装置10では、受部30に架空光ファイバケーブルを配置して、操作部12を握持して開閉作用部14を閉じて、操作部を握ったまま引く動作するだけの簡単な操作で、安定した分離作業が行え、正確かつスムーズに支持線部とケーブル部とを分離することができる。
【0035】
さらに、図1、図3、図7に示すように、本実施形態では、工具装置10にはケーブル部106と分離された支持線部109の外被108を剥ぎ取る外被剥離部34が設けられている。外被剥離部34は、開閉作用部14に一体的に設けられており、上記の分離部16の構成と互いに邪魔しない位置に設けられている。本実施形態では、下側の作用片体20bの前方端側から、横方向に一体的に突設された板状基部36に設けられており、挿通孔38と、挿通孔の後方側の孔口に形成された刃状縁部40と、を含む。挿通孔38は、板状基部の中央を前後方向に貫通して形成されており、外被108を含む支持線部109の外径よりやや大きな内径を有しており、該支持線部を遊挿状に挿通させるようになっている。刃状縁部40は、挿通孔38に挿通させた支持線部109の長手方向に移動させることにより支持線部の外被を削ぎ取りさせる刃部である。本実施形態では、刃状縁部40は、外形が後方側に向かってテーパ状に形成された円錐台形状に突設されている。作業者が支持線部の切断端部から挿通孔38に挿通させた後、支持線部の長手方向に対して板状基部を少し傾けながら刃状縁部先端を外被108の一部に当てつつ、後方側に支持線部に沿って引き動作すると断面円形状の外被108の一部が円弧状に削ぎ取られる。この際、外被剥離部34は挿通孔38を介して支持線部に案内されながら支持線部に沿って移動し、刃状縁部が支持線部から外れることがなく外被が剥ぎ取りされる。したがって、簡単な操作で作業性が良く、しかもケーブル部を損傷させることなく支持線部の外被剥ぎ取りを行える。この操作を例えば、4、5回繰り返して支持線周りの外被を剥ぎ取る。なお、図6に示すように、外被剥離部34は、平面視で、ガイド部22とずれた位置に設けられており、外被剥ぎ取り作業の際に作業者が外被剥離部34を常に確実に視認することができ、正確な外被剥ぎ取り操作を行えるようになっている。
【0036】
本実施形態において、図1、図3に示すように、工具装置10には、ケーブル部と分離させた支持線部109を切断できる切断部42が設けられている。本実施形態では、切断部42は、図3に示すように、開閉作用部14に一体的に設けられており、一対の作用片体20a、20bの対向内側に一対の切断刃44を有し、該作用片体20a、20bの枢軸18回りの開閉動作により、支持線部109を挟み切るように設けられている。本実施形態では、上開閉作用部14に分離部16、外被剥離部34、切断部42を集約して設けられているので、例えば、図9に示すような、架空光ファイバケーブルを電柱200へ支持させる作業において、支持線部の分離、支持線部の切断、支持線部の外被剥ぎ取りといった一連の作業を作業者が工具装置10の操作部12を手に持ったまま、持ち換えることなくスムーズに行える。
【0037】
図1、図3に示すように、工具装置10には、例えば、アース線等の導線の心線に銅スリーブ等の筒型金具を圧着させる圧着部46が一体的に設けられている。圧着部46は、例えば、図9に示すような架空光ファイバケーブル100を引き留め金具120を介して電柱200に支持させた状態で、支持線の接地をとるアース線122を引き留め金具120部分で導通接続する際に用いられる銅スリーブを圧着接続するとき等に利用される。図3において、圧着部46は、操作部12側の枢軸18に近い根元側に一体的に形成されており、内側に対向した凹部48と、凸部50と、を含む。圧着部46は、筒内に接続させるアース線122の心線を配置させた銅スリーブ52を凹部48内に配置させて、操作ハンドル13の枢軸18回りの開閉動作により凸部50で上側から押圧して圧着する。
【0038】
次に、本実施形態にかかるケーブル類用工具装置の作用を説明する。例えば、図8、図9に示すように、支持線部109とケーブル部106とが一体となった架空光ファイバケーブル100を電柱200に支持させる際に用いられる。図9に示すように、架空光ファイバケーブル100を電柱200に支持させる際には、まず、架空光ファイバケーブル100を支持線部109とケーブル部106とに分離させる。この分離作業では、操作部12を操作して開閉作用部14を開き受部30に架空光ファイバケーブル100を配置させる。受部30は、端面視コ字枠を形成するように設けられており、長尺の架空光ファイバケーブル100の中間部分に配置させやすいとともに、受部30に配置させたケーブル100の横ズレを防止しつつ収容状態を維持する。操作部12を握持して開閉作用部14を閉操作すると、切刃部24が支持線部とケーブル部の境界線であるノッチ部に当たりつつ、架空光ファイバケーブル100が作用片体の突設片26〜29によってその断面周囲を取り囲まれながらガイド部22に収容される。この閉操作の際、受部30がケーブル100の横ズレを防止しているので切刃部24は確実にノッチ部に当てることとなる。そして、操作部12を握持しつつ開閉作用部14を閉じた状態で操作部側へ引き動作して開閉作用部を架空光ファイバケーブル100の長手方向に沿って移動させることにより、支持線部とケーブル部とが分離される。この引き動作の際には、ガイド部22により、架空光ファイバケーブルの幅方向へのズレ移動を規制して正確に切刃部が架空光ファイバケーブル100の境界線を切断分離する。特に、図に示すように、開閉作用部14を閉じた際に組み合わせ構成されるコ字長枠状の受枠32が架空光ファイバケーブルの外側面に当接し、引き動作する際の架空光ファイバケーブル100の横ズレを規制して切刃部24が当たる部分では常に架空光ファイバケーブルは切刃部の切断方向に沿って移動しながら切断分離される。これにより、例えば、高い位置でのバケット上等の不安定な場所でも、支持線部を支持しながら簡単な操作で分離作業が行えるとともに、正確かつスムーズに支持線部とケーブル部とを分離することができる。
【0039】
支持線部をケーブル部と分離した後に、工具装置の切断部42を利用して支持線部は中間位置で切断される。図7に示すように、支持線部109の外被を剥ぎ取る際には、外被剥離部34の挿通孔38に支持線部109の切断端部から挿通させる。刃状縁部40を支持線部の外被108に当たるように工具装置を傾けながら支持線部の長手方向に沿って引き動作させて、支持線部の外被の一部を削ぎ取る。この操作を例えば、4、5回繰り返して、支持線部の外被を剥離させる。これにより、簡単な操作で、ケーブル部を損傷させることなく、確実に支持線部の外被を剥ぎ取ることができる。また、架空光ファイバケーブル100を電柱に支持させた後に、接地するためのアース線122を引き留め金具120部分で接続する際には、図3に示すように、圧着部46を介して銅スリーブ52をアース線122に圧着接続させる。なお、本実施形態では、分離部16、切断部42、外被剥離部34等が、開閉作用部周りに集約して設けられているので、バケット等上での、支持線部とケーブル部との分離、支持線部の切断、支持線部の外被剥ぎ取り等を含む一連の作業を、工具を持ち換えることなくスムーズに行え、利便性が高い。
【0040】
以上説明した本発明のケーブル類用工具装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のケーブル類用工具装置は、例えば、支持線部とケーブル部とが一体的に形成されたケーブル類を敷設する際の、支持線部とケーブル部との分離、切断、外被の剥ぎ取り作業等で適用される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係るケーブル類用工具装置の正面説明図である。
【図2】図1のケーブル類用工具装置の一部切欠斜視図である。
【図3】図1のケーブル類用工具装置の開閉作用部を開いた状態での一部拡大図及びその作用説明図、ならびに切断部、圧着部の作用説明図である。
【図4−1】図1のA−A線矢視図であって開閉作用部の要部を示した説明図である。
【図4−2】図4の開閉作用部を開いた状態での説明図である。
【図5】図1のB−B線断面の端面説明図である。
【図6】図1のケーブル類用工具装置の一部の平面図である。
【図7】外被剥離部周辺の一部破断説明図及び外被剥離部の作用説明図である。
【図8】支持線部とケーブル部とが一体となった架空光ファイバケーブルの説明図である。
【図9】架空光ファイバケーブルを電柱に引き止める説明図である。
【符号の説明】
【0043】
10 ケーブル類用工具装置
12 操作部
14 開閉作用部
16 分離部
18 枢軸
22 ガイド部
24 切刃部
30 受部
34 外被剥離部
38 挿通孔
40 刃状縁部
42 切断部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持線部とケーブル部とが外被を介して一体的に形成されたケーブル類用の工具装置であって、
操作部と、
操作部の開閉操作で開閉する開閉作用部と、を含み、
開閉作用部は、閉操作でケーブル類を支持しつつケーブル類の長手方向に沿って移動させることにより支持線部とケーブル部とを分離させる分離部を有することを特徴とするケーブル類用工具装置。
【請求項2】
分離部は、ケーブル類の長手方向に沿って開閉作用部を移動させるにあたり、ケーブル類の幅方向へのズレ移動を規制しつつケーブル類を収容するガイド部と、
ガイド部内に収容されるケーブル類の支持線部とケーブル部との境界線に対向するように刃先が向けられて配置された切刃部と、を含むことを特徴とする請求項1記載のケーブル類用工具装置。
【請求項3】
開閉作用部を閉じてケーブル類の長手方向に沿って開閉作用部を移動させるにあたり、
ガイド部は、ケーブル類の断面周囲を取り囲むように形成されることを特徴とする請求項2記載のケーブル類用工具装置。
【請求項4】
開閉作用部は、中間にケーブル類を挟むように開閉する一対の作用片体を有し、
下側の作用片体にはガイド部の一部を成す受部が、上側の作用片体には切刃部が設けられたことを特徴とする請求項2又は3記載のケーブル類用工具装置。
【請求項5】
受部は端面視コ字枠を形成することを特徴とする請求項4記載のケーブル類用工具装置。
【請求項6】
一対の作用片体の閉鎖時にそれぞれの作用片体の要素が咬み合い状に組み合わされてコ字長枠状の受部を形成することを特徴とする請求項4又は5記載のケーブル類用工具装置。
【請求項7】
上側作用片体は、ケーブル類の支持線部とケーブル部との境界線に対応して配置された切刃部と、
該切刃部と平行に配置されて一対の作用片体の閉鎖時にケーブル類の外側面に当接又は近接してガイド部の一部を成す組み合わせ側片が突設されていることを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載のケーブル類用工具装置。
【請求項8】
操作部及び開閉作用部は、枢軸を介して接続され、操作部の握持離開操作により開閉作用部を開閉動作させるように設けられたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載のケーブル類用工具装置。
【請求項9】
ケーブル部を分離させた支持線部の端部を遊挿状に挿通させ該支持線部の外径よりやや大きな内径を有する挿通孔と、挿通孔のいずれかの孔口に形成され挿通させた支持線部の長手方向に移動させることにより支持線部の外被を削ぎ取りさせる刃状縁部と、を含む外被剥離部が設けられたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載のケーブル類用工具装置。
【請求項10】
ケーブル類の切断部を有する請求項1ないし9のいずれかに記載のケーブル類用工具装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−141134(P2006−141134A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328385(P2004−328385)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000196716)西部電気工業株式会社 (6)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)
【Fターム(参考)】