説明

ケーブル

【課題】 ケーブルの一対の電線同士とシールドとのケーブルの長手方向に対する相互の位置関係のズレを防止することができるケーブルを提供する。
【解決手段】 導体線64に絶縁被覆65を施して形成された一対の電線61a、61bと、それら一対の電線61a、61bを包囲するシールド62とを有するケーブル本体60を備えると共に、そのケーブル本体60の端末部に取り付けられる端末コネクタを備えたケーブルにおいて、上記端末コネクタが、絶縁体から形成され櫛歯状の櫛歯16を有する櫛歯状治具15を備え、その櫛歯状治具15の上記櫛歯16間で上記ケーブル本体60を挟み込んで、上記ケーブル本体60の一対の電線61a、61bとシールド62とを固定したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電線をシールドで包囲して主に構成されたケーブルに関するものであり、特に、一対の電線により差動信号を伝送する場合のインピーダンスの整合やクロストークの発生の低減などを容易に実現できるケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、信号を高速伝送するためのケーブルとして、一対の電線をシールドで包囲したケーブルが用いられている。図10に示すように、そのケーブル60は、導体線64に絶縁被覆65を施して主に構成された一対の電線61a、61bと、アース線であるドレイン線66とに、シールド62であるシールドテープ68を巻きつけて一つに束ねた構造を有する(特許文献1参照)。
【0003】
また、一般的にそのようなケーブル60を使用する場合には、ケーブル60の端末部に端末コネクタが取り付けられる。図11(a)および図11(b)に示すように、端末コネクタ71は、一端にケーブル60が挿入され他端にプラグ72が設けられたハウジング73と、そのハウジング73内に設けられケーブル60とプラグ72とを電気的に接続する内蔵基板74とを備える。
【0004】
その内蔵基板74に、シールドテープ68を剥いて露出させた一対の電線61a、61bの各々とドレイン線66とがハンダ付けなどで接合される(図11(a)参照)。その際、電線61a、61bとアースとの間でショートが生じないように、また一対の電線61a、61bにより差動信号を伝送する場合には差動信号のアンバランスが生じないように、シールドテープ68と露出させた一対の電線61a、61bの各々との位置関係を適切に調整するようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−283649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ケーブル60は電線61a、61bにシールドテープ68を巻きつけただけの構造であるため、ケーブルを屈曲または捻回させた場合に、電線61a、61b同士とシールド62との長手方向(軸方向)に対する相互の位置関係がズレてしまう。
【0007】
そのようなケーブル60の各構成物(シールドテープ68、電線61aおよび電線61b、ドレイン線66など)の位置関係のズレは、ケーブル60と端末コネクタ71との接合部(アッセンブリ部)の形状を変形させ、その結果、ケーブル60の電気的性能が劣化してしまう。
【0008】
以下、図12(a)から図12(d)に基づき、一対の電線61a、61bの各々とシールドテープ68との位置関係がズレた場合に起こり得る電気的性能の劣化の具体例を説明する。なお、図12(a)は、一対の電線61a、61bの各々とシールドテープ68とが適切な位置関係にある初期状態を示す。
【0009】
図12(b)に示すように、シールドテープ68が電線61a、61bの露出長さを減少させる方向(図12(b)において左上から右下へ向かう方向)に移動した場合には、電線61a、61bのショートや、インピーダンスの低下や、クロストークの発生の増加などが生じるおそれがある。また、図12(c)に示すように、各電線61a、61bがケーブルの長手方向に各々相対移動した場合には、電線61bがショートするおそれがある。また、図12(d)に示すようにシールドテープ68が電線61a、61bの露出長さを増大させる方向(図12(d)において右下から左上に向かう方向)に移動した場合には、インピーダンスの増大や、クロストークの発生の増加が生じるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、ケーブルの一対の電線同士とシールドとの長手方向に対する相互の位置関係のズレを防止することができるケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、導体線に絶縁被覆を施して形成された一対の電線と、それら一対の電線を包囲するシールドとを有するケーブル本体を備えると共に、そのケーブル本体の端末部に取り付けられる端末コネクタを備えたケーブルにおいて、上記端末コネクタが、絶縁体から形成され櫛歯状の櫛歯を有する櫛歯状治具を備え、その櫛歯状治具の上記櫛歯間で上記ケーブル本体を挟み込んで、上記ケーブル本体の一対の電線とシールドとを固定したものである。
【0012】
好ましくは、上記櫛歯状治具の櫛歯の縁端部が鋭利に形成され、その櫛歯を上記ケーブル本体の一対の電線の絶縁被覆の各々とシールドとに食い込ませて、上記櫛歯状治具が上記ケーブル本体を挟み込み固定したものである。
【0013】
好ましくは、上記櫛歯状治具と上記ケーブル本体とが、熱可塑性樹脂又は接着剤により一体的に固定されたものである。
【0014】
好ましくは、上記櫛歯状治具と上記ケーブル本体とが、熱可塑性樹脂又は接着剤により上記端末コネクタのハウジング内に一括して固定されたものである。
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、導体線に絶縁被覆を施して形成された一対の電線と、それら一対の電線を包囲するシールドとを備えたケーブルにおいて、上記一対の電線のズレを防止すべく上記シールド内に上記シールドと上記電線とを固定するための粘着層を設けたものである。
【0016】
好ましくは、上記シールドに包囲され上記一対の電線の各々に近接して配置されたドレイン線を備え、上記粘着層が、上記シールドの内壁面と、上記一対の電線の内の少なくとも一つの表面と、上記ドレイン線の表面との内の何れか又は何れかの任意の組合せに設けられたものである。
【0017】
好ましくは、上記粘着層が加熱により粘着性を発生する熱粘着性材料から形成されたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ケーブルの一対の電線同士とシールドとの長手方向に対する相互の位置関係のズレを防止することができるという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な一実施形態(以下、第一の実施形態とする)を添付図面に基づいて詳述する。
【0020】
図1(a)は、第一の実施形態のケーブルの概略構造の側面断面図を示し、図1(b)は、第一の実施形態のケーブルの概略構造の平面図を示す。図2(a)は、第一の実施形態の櫛歯状治具の正面図を示し、図2(b)は、第一の実施形態のケーブル本体の正面断面図を示し、図2(c)は、櫛歯状治具をケーブル本体に取り付けた状態を示す。なお、図1(a)、図1(b)および図2(a)から図2(c)において、図10および図11に示したものと同一要素には、同一符号を付す。
【0021】
まず、図1(a)および図1(b)に基づき第一の実施形態のケーブルの概略構造を説明する。
【0022】
図1(a)および図1(b)に示すように、第一の実施形態のケーブル1は、ケーブル本体60と、そのケーブル本体60の端末部に取り付けられる端末コネクタ71とを備える。第一の実施形態では、ケーブル1が、複数本のケーブル本体60と、それらケーブル本体60の端末部に取り付けられる共通の1つの端末コネクタ71とを備える(図1(b)参照)。
【0023】
図1(a)、図2(b)および図10に基づき第一の実施形態のケーブル本体60を説明する。なお、第一の実施形態のケーブル本体60は、図10に示した従来のケーブル60と同じ概略構造を有する。
【0024】
図10に示すように、ケーブル本体60は、導体線64に絶縁被覆65を施して形成された一対の電線61a、61bと、それら一対の電線61a、61bを包囲するシールド62とを備える。さらに、第一の実施形態のケーブル本体60は、シールド62に包囲され一対の電線61a、61bに近接して配置されたドレイン線66を備える。
【0025】
一対の電線61a、61bは、シールド62内に互いに隣接して配置される。一対の電線61a、61bは、互いに同形状を有し、例えば、銅などの金属から形成される導体線64の外周に銀メッキ層4を形成し、さらに、その銀メッキ層4の外周を絶縁体(誘電体)で被覆して(すなわち、絶縁被覆65を施して)形成される。
【0026】
シールド62は、電線61a、61bとドレイン線66とに巻きつけられ、電線61a、61bとドレイン線66とを一体的に束ねて遮蔽するシールドテープ68である。そのシールドテープ68は、例えば、銅などの金属からなる金属シールドテープであり、電線61a、61bとドレイン線66とに重ね巻きされる。
【0027】
ドレイン線66は、電線61a、61bとシールドテープ68とにより区画される隙間に、一対の電線61a、61bの各々とシールドテープ68とに当接して配置される。ドレイン線66は、電線61a、61bよりも小さな径を有するアース線である。
【0028】
このように対称な構造に構成されたケーブル本体60が、図2(b)に示すように整線される。具体的には、一対の電線61a、61bが上下に並ぶように指向された各ケーブル本体60が横一列に(ケーブル本体60の一対の電線61a、61bが、上下二列に並ぶように)並べられて、複数のケーブル本体60が整線される。
【0029】
以下の説明において、ケーブル本体60が整列する方向を幅方向(図2(b)において左右方向)とし、その幅方向と直交し、一対の電線61a、61bが並ぶ上下方向を高さ方向(図2(b)において上下方向)とする。なお、各ケーブル本体60のドレイン線66は、幅方向のどちらか一方(図2(b)において左側)の位置するように、ケーブル本体60は整線される。
【0030】
さらに、第一の実施形態では、図1(a)に示すように、ケーブル本体60の端末コネクタ71が取り付けられる端末部において、シールドテープ68が剥かれ電線61a、61bとドレイン線66とが露出する。さらに電線61a、61bの絶縁被覆65も剥かれ導体線64が露出する。
【0031】
図1(a)および図1(b)に基づき第一の実施形態の端末コネクタ71を説明する。
【0032】
図1(a)および図1(b)に示すように、端末コネクタ71は、一端にケーブル本体60の端末部が挿入され他端にプラグ72が設けられるハウジング73(図1(a)参照)と、そのハウジング73内に設けられケーブル本体60とプラグ72とを電気的に接続する内蔵基板74(図1(b)参照)とを備える。
【0033】
内蔵基板74は、ケーブル本体60の一対の電線61a、61bが各々接続される基板本体6と、ケーブル本体60のドレイン線66が接続される基板アース面部材8と、それら基板本体6と基板アース面部材8とを接続するアース接続線9とを備える。
【0034】
基板本体6は、端末コネクタ71の長手方向(図1(a)において左右方向)に沿って、ケーブル本体60の端末部からプラグ72まで延びる。基板本体6の上面にはランド部10が設けられる。そのランド部10は、端末コネクタ71の長手方向に沿って基板本体6の全長に亘り設けられる。ランド部10のケーブル本体60側(図1(b)において左側)の端部には、一対の電線61a、61bの内の上方に位置する一方(例えば、プラス信号線)がハンダ付けされ、プラグ側(図1(b)において右側)の端部には、プラグ72の上側導体11がハンダ付けされる。同様に、基板本体6の下面にも、端末コネクタ71の長手方向に沿って基板の全長に亘りランド部12が設けられ、そのランド部12の両端部に、他方の電線61b(例えば、マイナス信号線)とプラグ72の下側導体13とが各々ハンダ付けされる。以上のハンダ部10とハンダ部12とが、各ケーブル本体60ごとに幅方向に複数設けられる。なお、図1(a)において、電線61a、61bは他の部材との区別がつき易いように立体的に示したが、実際には電線61a、61bは長手方向に真っ直ぐに延出する。
【0035】
さらに、基板本体6の高さ方向の中央部には、端末コネクタ71の長手方向に沿って基板本体6の全長に亘り基板アース14が設けられる。その基板アース14のケーブル本体60側の端部にアース接続線9が接続され、プラグ72側の端部にプラグ72のアース導体(図示せず)が接続される。また、基板アース14は、その端末コネクタ71長手方向の中央部において分断して形成される。
【0036】
基板アース面部材8は、ケーブル本体60のシールドテープ68の端末部よりも端末コネクタ71の長手方向後方(図1(a)において左側)に設けられ、整線した複数のケーブル本体60を幅方向に沿って跨ぐコ字状の形状を有する。基板アース面部材8の上面にはケーブル本体60のドレイン線66が接続され、基板アース面部材8の幅方向の外側面の一方(図1(b)において右側)にはアース接続線9が接続される。つまり、ドレイン線66は、基板アース面部材8とアース接続線9と基板アース14とを介してプラグ72に電気的に接続される。また、第一の実施形態の基板アース面部材8は、ケーブル本体60の整線状態を保つための整線治具を兼ねる。
【0037】
特に、第一の実施形態では、端末コネクタ71が、図2(a)に示すように、絶縁体から形成され櫛歯状の櫛歯16を有する櫛歯状治具15を備え、その櫛歯状治具15の櫛歯16間でケーブル本体60を挟み込んで、ケーブル本体60の一対の電線61a、61bとシールド62とを固定することを特徴とする。
【0038】
図1(a)、図1(b)、図2(a)および図2(c)に基づき櫛歯状治具15を説明する。
【0039】
図1(a)および図1(b)に示すように、櫛歯状治具15は、端末コネクタ71のハウジング73内に設けられる。また、櫛歯状治具15は基板アース面部材8よりも端末コネクタ71の長手方向後方(図1(a)において左側)に配置される。図2(c)に示すように、櫛歯状治具15は、ケーブル本体60の高さ方向上方に設けられ幅方向に延びる基部18と、その基部18の下面から高さ方向下向きに延び幅方向に一列に並ぶ複数の櫛歯16とを備える。
【0040】
第一の実施形態の基部18は、整線したケーブル本体60の頂部に当接して設けられ、整線した複数のケーブル本体60の全幅と略同じ幅を有する。また、基部18はハウジング73内に切り欠かれた固定溝(図示せず)に固定される。
【0041】
第一の実施形態の櫛歯16は、各ケーブル本体60の幅方向両側に各々配置される。各櫛歯16は、高さ方向にケーブル本体60の上端から下端まで延びる。
【0042】
特に、第一の実施形態では、櫛歯状治具15の櫛歯16の縁端部19が鋭利に形成され、その櫛歯16をケーブル本体60の一対の電線61a、61bの絶縁被覆65の各々とシールド62とに食い込ませて、櫛歯状治具15がケーブル本体60を挟み込み固定することを特徴とする。
【0043】
具体的には、櫛歯16の高さ方向と垂直な断面が菱形に形成されると共に、その菱形の鋭角(幅方向の縁端部19)が鋭利に尖らせて形成される。さらに、櫛歯16は、幅方向の縁端部19が隣り合うケーブル本体60の電線61a、61bの絶縁被覆65内に達するまで幅方向に延びる。つまり、各ケーブル本体60に対して、櫛歯16の縁端部19が幅方向(即ち、ケーブル本体60の長手方向(図2(c)において紙面表裏方向)と直交する方向)両側からシールドテープ68を通り一対の電線61a、61bの絶縁被覆65まで食い込む。また、櫛歯16の下部には、下方につれて幅が狭まるようなテーパが設けられ、さらに櫛歯16の下端が尖らせて形成される。第一の実施形態では、櫛歯16の下部が下向きの四角錐状に形成される。
【0044】
次に第一の実施形態のケーブル1の作用を説明する。
【0045】
各ケーブル本体60のシールドテープ68と、そのシールドテープ68から露出した電線61a、61bとが所望の条件(例えば、インピーダンスの整合など)を満たす位置に整えられる。その各ケーブル本体60を複数並べて整線する。その整線されたケーブル本体60に、ケーブル本体60の上方から櫛歯状治具15を挿入し、櫛歯状治具15をケーブル本体60に取り付ける。櫛歯16の下部が、その下端を中心に幅方向両側に傾斜しているため、櫛歯16は幅方向に片寄ることなく所定の位置に垂直に挿入される。したがって、櫛歯状治具15が挿入された状態で、櫛歯16と導体線64との接触はない。また、万一櫛歯16が導体線64に接触したとしても、櫛歯16は絶縁体から形成されるため、導体線64には何ら影響が及ばない。
【0046】
その取り付けられた櫛歯状治具15を端末コネクタ71のハウジング73に固定する。さらに、各ケーブル本体60の電線61a、61bとドレイン線66とを各々、端末コネクタ71の内蔵基板74にハンダ付けする。
【0047】
ここでケーブル1に屈曲や捻回が加えられると、シールドテープ68と電線61a、61bとの伸び率の違いなどから、電線61a、61bの各々とシールドテープ68とが長手方向に相対移動しようとする。
【0048】
しかし、第一の実施形態では、櫛歯16により、シールドテープ68と一対の電線61a、61bの各々とが一体的に固定されているので、一対の電線61a、61b同士とシールドテープ68との相対的なズレが生じない。したがって、ケーブル1組立時のシールドテープ68と電線61a、61bとの所望の条件が常に保たれる。
【0049】
さらに、複数のケーブル本体60が一括して櫛歯状治具15により固定されるため、各ケーブル本体60の一対の電線61a、61b同士のみならず、複数のケーブル本体60の電線61a、61b同士(例えば、隣り合うケーブル本体60の電線61a同士)の相対的なズレも生じない。
【0050】
このように第一の実施形態のケーブル1は、櫛歯状治具15の櫛歯16の間にケーブル本体60を挟み込み、さらに、縁端部19を鋭利に形成した櫛歯16をシールドテープ68と電線61a、61bの絶縁被覆65とに食い込ませることで、ケーブル1に屈曲や捻回が加えられた場合などにも、一対の電線61a、61b同士とシールドテープ68との長手方向に対する相互の位置関係のズレとを防止することができる。
【0051】
したがって、常に所望の条件を満たすように一対の電線61a、61b同士とシールドテープ68との位置関係が保たれるため、電線61a、61bのショートを防止することができる。さらに一対の電線61a、61bにより差動信号を伝送する場合には、差動信号のアンバランスが生じず、インピーダンスの整合やクロストークの発生の低減などの良好な電気的性能を長期に亘り保証することができる。
【0052】
また、櫛歯状治具15により複数のケーブル本体60を一括して固定することで、複数のケーブル本体60の電線61a、61b同士の長手方向のズレも防止することができる。
【0053】
また、櫛歯状治具15を端末コネクタ71のハウジング73に固定することで、ケーブル本体60が引っ張られた時の引張力が櫛歯状治具15を介して端末コネクタ71に受け止められるため、一対の電線61a、61bと内蔵基板74との接合部(ハンダ付け部分)の剥離を防止することができる。
【0054】
なお、本発明は、上述の第一の実施形態に限定されず、様々な変形例や応用例が考えられるものである。
【0055】
第一の実施形態では、菱形の断面を有する櫛歯16を用いる形態を説明したが、櫛歯の形状はこれに限定されず様々な形状が可能である。
【0056】
例えば、図3(a)から図3(c)に示す実施形態では、櫛歯状治具21の櫛歯22が断面三角形に形成されており、その三角形の一角(縁端部24)を鋭く尖らせて形成される。その縁端部24により、櫛歯21がケーブル本体60のシールドテープ68と一対の電線61a、61bとに食い込む。
【0057】
また、櫛歯状治具とケーブル本体との固定強度をより高めるために、櫛歯状治具とケーブル本体とを、熱可塑性樹脂又は接着剤により一体的に固定するようにしてもよい。
【0058】
さらに、熱可塑性樹脂又は接着剤を用いた他の実施形態を図4(a)および図4(b)に基づき説明する。なお、図4(a)および図4(b)において、図1(a)および図1(b)と同一の要素には、同一の符号を付す。この図4の実施形態では、ケーブル25の櫛歯状治具15とケーブル本体60とが熱可塑性樹脂26により端末コネクタ71のハウジング73内に一括して固定される。つまり、櫛歯状治具15とケーブル本体60とを一体的に固定する熱可塑性樹脂26をハウジング73の内壁面にも接着する。なお、熱可塑性樹脂26の代わりに接着剤を用いてもよい。この図4の実施形態でも、第一の実施形態と同様の効果が得られ、さらに、櫛歯状治具15とケーブル本体60との固定強度と、ケーブル本体60と端末コネクタ71との接続強度とをより高めることができる。
【0059】
また、第一の実施形態では、櫛歯状治具15と端末コネクタ71のハウジング73とが別体である形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、櫛歯状治具を端末コネクタのハウジングと一体的に形成するようにしてもよい。
【0060】
また、第一の実施形態では、櫛歯状治具15の櫛歯16の縁端部19を鋭利に形成し、櫛歯16をケーブル本体60に食い込ませる形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、カッターなどの工具を用いて、ケーブル本体のシールドテープと一対の電線の各々とに溝を切り込み、その溝に櫛歯状治具を食い込ませるようにしてもよい。この場合、櫛歯状治具の縁端部を鋭利に形成する必要がないため、ケーブルの製造コストを低減させることができる。
【0061】
また、第一の実施形態では、櫛歯16の縁端部19によりシールドテープ68と電線61a、61bを切り込み、櫛歯16をケーブル本体60に食い込ませる形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、櫛歯により、シールドテープと電線とを切り込まずにシールドテープと電線とを挟み込むことで、一対の電線の各々とシールドテープとの相対移動を阻止するようにしてもよい。
【0062】
また、第一の実施形態では、一つの櫛歯状治具15を、整線したケーブル本体60の上方から挿入してケーブル本体60に取り付ける形態を説明したが、本発明は、櫛歯状治具の数や、挿入する方向などに限定されない。例えば、櫛歯状治具の櫛歯の長さをケーブル本体の略半分の高さに形成し、その櫛歯状治具をケーブル本体の上方および下方から挟み込むように挿入するようにしてもよい。この場合、各櫛歯状治具の櫛歯が短くなり櫛歯の根元に掛かる力が弱まるため、櫛歯が必要とする強度を低減させることができ、ケーブルの製造コストを低減させることができる。
【0063】
また、第一の実施形態では、各ケーブル本体60の幅方向両側に櫛歯16を配置する形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、図5に示すように、ケーブル本体60の幅方向片側にのみ櫛歯16を配置するようにしてもよい。この場合、櫛歯の数が減少するのでケーブルの製造コストを低減させることができる。
【0064】
また、第一の実施形態では、電線61a、61bと内蔵基板74、およびドレイン線66と基板アース面部材8とをハンダ付けにより各々接合する形態を説明したが、これに限らず、例えば、電線と内蔵基板、およびドレイン線と基板アース面部材とを圧着して接合するようにしてもよい。
【0065】
以上、櫛歯状治具を用いて一対の電線の各々とシールドとのズレを防止する実施形態を説明したが、以下では、粘着層を設けて一対の電線の各々とシールドとのズレを防止する本発明に係る第二の実施形態を説明する。
【0066】
図6および図7に基づき本発明に係る第二の実施形態のケーブルを説明する。なお、図6および図7において、図1(a)、図1(b)および図2(a)から図2(c)と同一の要素には、同一の符号を付す。
【0067】
第二の実施形態のケーブル31は、例えば、図6に示すように、一括シールド32とシース34とで被覆される一括シールドケーブル35などに用いられる。
【0068】
第二の実施形態のケーブル31は第一の実施形態のケーブル本体60と同じ概略構造を有する。
【0069】
すなわち、図7に示すように、第二の実施形態のケーブル31は、導体線64に絶縁被覆65を施して形成された一対の電線61a、61bと、一対の電線61a、61bを包囲するシールド62とを備える。
【0070】
特に、第二の実施形態では、一対の電線61a、61bとシールド62とのズレを防止すべくシールド62と電線61a、61bとを固定するための粘着層36がシールド62内に設けられたことを特徴とする。
【0071】
さらに、第二の実施形態のケーブル31はシールド62に包囲され一対の電線61a、61bの各々に近接して配置されたドレイン線66を備え、粘着層36が、シールド62の内壁面と、一対の電線61a、61bの内の少なくとも一つの表面と、上記ドレイン線66の表面との内の何れか又は、何れかの任意の組合せに設けられる。
【0072】
具体的には、第二の実施形態の粘着層36は、ドレイン線66の表面にケーブル31の全長に亘り設けられる。また、ケーブル31の長手方向と垂直な断面において、図7に示すように、ドレイン線66の外周上に設けられた粘着層36が、シールド62(シールドテープ68)の内壁面の一部分と当接すると共に、一対の電線61a、61bの絶縁被覆65の表面の一部分と各々当接する。さらに、第二の実施形態の粘着層36は、加熱されることで粘着性を発生する熱粘着性材料から形成される。
【0073】
次に第二の実施形態のケーブル31の作用を説明する。
【0074】
ケーブル31にシールドテープ68を巻きつける前に、予めドレイン線66の表面に(例えば、熱粘着性材料を塗布することで)粘着層36を形成する。この状態では、粘着層36は粘着性を発生しておらず、ドレイン線66の取扱は容易である。その後、粘着層36が形成されたドレイン線66と、一対の電線61a、61bとにシールドテープ68を巻きつける。その後、ケーブル31を所定温度まで加熱して粘着層36に粘着力を発生させて、ドレイン線66とシールドテープ68とを互いに粘着させると共に、ドレイン線66と一対の電線61a、61bの各々とを互いに粘着させる。
【0075】
このように組み立てられた第二の実施形態のケーブル31に、屈曲や捻回が加えられても、シールドテープ68と一対の電線61a、61bの各々とが粘着層36により相互に固定されているため、ケーブル31の一対の電線61a、61b同士とシールドテープ68との長手方向の相対的なズレが生じない。
【0076】
したがって、ケーブル31の端末部に端末コネクタが取り付けられる場合には、端末コネクタを取り付けた時のシールドテープ68と電線61a、61bとの位置関係が常に保たれる。
【0077】
さらに、第二の実施形態では、ドレイン線66とシールドテープ68および一対の電線61a、61bの各々との長手方向の相対的なズレも生じない。
【0078】
このように第二の実施形態のケーブル31は、一対の電線61a、61bの各々に隣接して配置されたドレイン線66の表面に粘着層36を設けることで、粘着層36とシールドテープ68および一対の電線61a、61bの各々とが粘着され、一対の電線61a、61b同士とシールドテープ68との長手方向に対する相互の位置関係のズレとを防止することができる。
【0079】
したがって、一対の電線61a、61b同士とシールドテープ68との位置関係を常に所望の条件に保つことができるので、電線61a、61bのショートを防止することができる。さらに一対の電線61a、61bにより差動信号を伝送する場合には、差動信号のアンバランスが生じず、インピーダンスの不整合性やクロストークの発生を低減させることができる。
【0080】
また、粘着層36を加熱により粘着力が発生する熱粘着性材料により形成することで、ケーブル31の組立時などの取扱性を向上させることができる。
【0081】
なお、本発明は、上述の第二の実施形態に限定されず、様々な変形例や応用例が考えられるものである。
【0082】
例えば、第二の実施形態では、ドレイン線66の全長に亘り粘着層36を設ける形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、所定長さのケーブルを製造するなど端末コネクタの取付位置が予め決定されている場合には、その取付位置近傍にのみ粘着層を設けるようにしてもよい。
【0083】
また、第二の実施形態では、ドレイン線66の表面に粘着層36を設ける形態を説明したが、粘着層を設ける対象はドレイン線の表面に限定されない。
【0084】
以下に粘着層をドレイン線の表面以外に設けた実施形態を説明する。なお、図8(a)から図8(c)および図9(a)から図9(c)において、図7と同一の要素には同一符号を付す。
【0085】
図8(a)の実施形態のケーブル41は、一対の電線61a、61bの内の一方の表面に粘着層36を設けたものである。図8(b)の実施形態のケーブル42は、一対の電線61a、61bの両方の表面に粘着層36を設けたものである。図8(c)の実施形態のケーブル43は、シールドテープ68の内壁面に粘着層36を設けたものである。以上の図8(a)から図8(c)の実施形態でも、第二の実施形態と同様の効果が得られ、さらに、粘着層36の粘着面(シールドテープ68などの部材と当接し、粘着する面)の面積を広くすることで、粘着力を向上させることができる。
【0086】
また、ケーブルのドレイン線を複数本設け、それらのドレイン線の表面に粘着層を設けることにより、ケーブルの各構成物の接着性を高めてもよい。
【0087】
他の実施形態を図9(a)に基づき説明する。図9(a)の実施形態のケーブル44は、シールドテープ68に包囲され一対の電線61a、61bの各々に隣接して配置された二本のドレイン線66a、66bを備える。それらドレイン線66a、66bは、一対の電線61a、61bとシールドテープ68とにより区画される幅方向(図9(a)において上下方向)両側の隙間に各々配置される。それらドレイン線66a、66bの表面に粘着層36が設けられる。
【0088】
また、ドレイン線の他に、またはドレイン線の代わりに介在をケーブルに設け、その介在の表面に粘着層を設けることにより、ケーブルの各構成物を接着させてもよい。
【0089】
他の実施形態を図9(b)に基づき説明する。図9(b)の実施形態のケーブル45は、シールドテープ68に包囲され一対の電線61a、61bの各々に隣接して配置されたドレイン線66と介在45とを備える。それらドレイン線66と介在45とは、一対の電線61a、61bとシールドテープ68とにより区画される幅方向(図9(b)において上下方向)両側の隙間に各々配置される。それらドレイン線66と介在45との表面には粘着層36が各々設けられる。介在45はドレイン線66と同じ形状を有し、テフロン(登録商標)や、ポリエチレンなどの低誘電率材からなる。
【0090】
さらに、他の実施形態を図9(c)に基づき説明する。図9(c)の実施形態のケーブル46は、シールドテープ68に包囲され一対の電線61a、61bの各々に隣接して配置された二つの介在45a、45bを備える。それら介在45a、45bの表面に粘着層36が各々設けられる。それら介在45a、45bは、一対の電線61a、61bとシールドテープ68とにより区画される幅方向(図9(c)において上下方向)両側の隙間に、一対の電線61a、61bの各々とシールドテープ68とに当接して各々配置される。また、それら介在45a、45bは、互いに同じ形状を有し、電線61a、61bよりも小さな径を有する。さらに、それら介在45a、45bは、テフロン(登録商標)や、ポリエチレンなどの低誘電率材からなる。
【0091】
以上の図9(a)から図9(c)の実施形態でも、図8(a)から図8(c)の実施形態と同様の効果が得られ、さらに、図8(a)から図8(c)の実施形態と比較して、粘着層36においてシールドテープ68および一対の電線61a、61bの各々の何れとも当接しない面積(つまり、ズレの防止に寄与しない面積)が小さいため粘着層を効率よく設けることができ、ケーブル31の製造コストをより低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】(a)は本発明に係る第一の実施形態によるケーブルの側面断面図を示し、(b)は図1(a)のケーブルの平面図を示す。
【図2】(a)は第一の実施形態の櫛歯状治具の正面図を示し、(b)は第一の実施形態のケーブル本体の正面断面図を示し、(c)は第一の実施形態の櫛歯状治具によりケーブル本体を挟み込んだ状態を示す。
【図3】(a)は本発明に係る他の実施形態による櫛歯状治具の正面図を示し、(b)は他の実施形態のケーブル本体の正面断面図を示し、(c)は他の実施形態の櫛歯状治具によりケーブル本体を挟み込んだ状態を示す。
【図4】(a)は本発明に係る他の実施形態によるケーブルの側面断面図を示し、(b)は図4(a)のケーブルの正面図を示す。
【図5】他の実施形態の櫛歯状治具によりケーブル本体を挟み込んだ状態の正面図を示す。
【図6】本発明に係る第二の実施形態によるケーブルを用いた一括シールドケーブルの正面断面図を示す。
【図7】本発明に係る第二の実施形態によるケーブルの正面断面図を示す。
【図8】(a)は他の実施形態のケーブルの正面断面図を示し、(b)はさらに他の実施形態のケーブルの正面断面図を示し、(c)はさらに他の実施形態のケーブルの正面断面図を示す。
【図9】(a)は他の実施形態のケーブルの正面断面図を示し、(b)はさらに他の実施形態のケーブルの正面断面図を示し、(c)はさらに他の実施形態のケーブルの正面断面図を示す。
【図10】従来のケーブルの正面断面図を示す。
【図11】(a)は従来の端末コネクタの側面断面図を示し、(b)は従来の端末コネクタの平面図を示す。
【図12】従来にケーブルの端末部におけるシールドテープと一対の電線との位置関係を示す斜視図であり、(a)は、適切な位置関係にある状態を示し、(b)は、シールドテープ内に電線が埋没した状態を示し、(c)は、一対の電線の一方がシールドテープから過度に露出し、他方がシールドテープ内に埋没した状態を示し、(d)は、シールドテープから電線が過度に露出した状態を示す。
【符号の説明】
【0093】
1、25、31、41、42、43、44、45、46 ケーブル
15 櫛歯状治具
16 櫛歯
19 縁端部
26 熱可塑性樹脂
36 粘着層
61a、61b 電線
62 シールド
64 導体線
65 絶縁被覆
60 ケーブル本体
66 ドレイン線
71 端末コネクタ
73 ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体線に絶縁被覆を施して形成された一対の電線と、それら一対の電線を包囲するシールドとを有するケーブル本体を備えると共に、そのケーブル本体の端末部に取り付けられる端末コネクタを備えたケーブルにおいて、上記端末コネクタが、絶縁体から形成され櫛歯状の櫛歯を有する櫛歯状治具を備え、その櫛歯状治具の上記櫛歯間で上記ケーブル本体を挟み込んで、上記ケーブル本体の一対の電線とシールドとを固定したことを特徴とするケーブル。
【請求項2】
上記櫛歯状治具の櫛歯の縁端部が鋭利に形成され、その櫛歯を上記ケーブル本体の一対の電線の絶縁被覆の各々とシールドとに食い込ませて、上記櫛歯状治具が上記ケーブル本体を挟み込み固定した請求項1記載のケーブル。
【請求項3】
上記櫛歯状治具と上記ケーブル本体とが、熱可塑性樹脂又は接着剤により一体的に固定された請求項1または2記載のケーブル。
【請求項4】
上記櫛歯状治具と上記ケーブル本体とが、熱可塑性樹脂又は接着剤により上記端末コネクタのハウジング内に一括して固定された請求項1から3いずれかに記載のケーブル。
【請求項5】
導体線に絶縁被覆を施して形成された一対の電線と、それら一対の電線を包囲するシールドとを備えたケーブルにおいて、上記一対の電線のズレを防止すべく上記シールド内に上記シールドと上記電線とを固定するための粘着層を設けたことを特徴とするケーブル。
【請求項6】
上記シールドに包囲され上記一対の電線の各々に近接して配置されたドレイン線を備え、上記粘着層が、上記シールドの内壁面と、上記一対の電線の内の少なくとも一つの表面と、上記ドレイン線の表面との内の何れか又は何れかの任意の組合せに設けられた請求項5記載のケーブル。
【請求項7】
上記粘着層が加熱により粘着性を発生する熱粘着性材料から形成された請求項5または6記載のケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−66203(P2006−66203A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−246838(P2004−246838)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】