説明

ゲル状手指消毒剤

【課題】手指に擦り込むに際しての延びがよく、手指全体に容易に広がり、しかもヨレを生ずることなく乾燥前後のベタツキ感のない、速乾性を有するゲル状手指消毒剤を提供すること。
【解決手段】本発明のゲル状手指消毒剤は、合計量が100質量%となるように、無水マレイン酸系高分子0.01〜2.0質量%、多糖類0.01〜5.0質量%、低級アルコール40〜95質量%及び水を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品業界や医療現場など衛生管理面で手指の殺菌消毒が必要であるときに用いる手指消毒剤に関し、更に詳細には、手指に塗布、擦り込むだけで容易に目的を達成し得る、取り扱い簡便な速乾性を有するゲル状手指消毒剤に関する。
【背景技術】
【0002】
速乾性擦式アルコール性殺菌消毒剤は、用時手指に塗布又は噴霧するだけで殺菌消毒でき、タオルで拭き取る必要が無い等の利点を有し、ベースン法(浸漬法)の欠点を補う消毒剤として広く普及している。しかし、上記消毒剤は、アルコール性液剤であるために実際に使用する場合、しばしば、手のひらから溶液がこぼれたり、また手指に塗布、擦り込む際にもこぼれや流れ落ちが生じる。更に、そのようにあふれたり、こぼれたアルコール性薬液が、建物や器具に接触した場合、それらを変質させる恐れもある。
【0003】
そこで、近年、特許文献1において、カルボキシビニルポリマー等の水溶性高分子にて粘稠化又はゲル化し、上述の様な欠点を解消した速乾性擦式アルコール性殺菌消毒剤が提案されている。
しかし、粘稠化剤としてカルボキシビニルポリマーを使用する消毒剤は、使用後、手の上に前記ポリマー析出物によるヨレができ使用感を悪く感じさせる欠点がある。
この様なヨレによる使用感を改善するために、特許文献2には、アルコール性殺菌消毒剤に、更に殺菌消毒薬と、カルボキシビニルポリマーと、セルロース系水溶性高分子化合物とを配合した速乾性ゲルタイプ手指消毒剤が報告されている。
しかし、この速乾性ゲルタイプ手指消毒剤の場合にも、依然としてヨレが生じる場合があったり、水分等によるベタツキを感じたりし、その効果が十分であるとは言えない。特に、気密性を有する手術用手袋の着用前に前記消毒剤を使用し、乾燥してから着用しても汗により手袋の中でベタツキやヌメリを感じる欠点が生じる。
【特許文献1】特開平4−305504号公報
【特許文献2】特開平6−199700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、手指に擦り込むに際しての延びがよく、手指全体に容易に広がり、しかもヨレを生ずることなく乾燥前後のベタツキ感のない、速乾性を有するゲル状手指消毒剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、合計量が100質量%となるように、無水マレイン酸系高分子0.01〜2.0質量%、多糖類0.01〜5.0質量%、低級アルコール40〜95質量%及び水を含むゲル状手指消毒剤が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記構成、特に、高濃度の低級アルコールを含む水溶液に、特定量の無水マレイン酸系高分子及び多糖類を配合するので、使用に際してヨレ等の問題がなく、手指からこぼれることのない適度な粘性を有しており、使用感に優れ、且つ十分な殺菌力及び速乾性を有する。従って、食品業界や医療現場で有効に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のゲル状手指消毒剤は、無水マレイン酸系高分子、多糖類、低級アルコール及び水を必須成分として特定割合で含有することを特徴とする。本発明の消毒剤は、後述するようにこれら必須成分以外の成分が含まれていても良いが、従来、ゲル状手指消毒剤に多用されるカルボキシビニルポリマーを含有させると、本発明におけるヨレ防止作用が低減する恐れがある。
前記無水マレイン酸系高分子は、無水マレイン酸のホモポリマーであってもコポリマーであっても良い。コポリマーとしては、例えば、エチレン−無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体等が挙げられ、中でも、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体が入手性等の点で特に好ましい。また、無水マレイン酸系高分子の無水マレイン酸基を水やアルコールで開環した遊離酸型やモノアルキルエステルとした共重合体を用いても良い。
このようなコポリマーとしては、例えば、ISP社から市販されている、商品名GANTREZ ANシリーズのほぼ1:1の共重合体が挙げられる。
無水マレイン酸系高分子は、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても差し支えない。
【0008】
前記無水マレイン酸系高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、通常、10000〜3000000、特に100000〜2000000の範囲が好ましい。
無水マレイン酸系高分子の含有割合は、本発明の消毒剤全量当り、0.01〜2.0質量%である。該含有割合が0.01質量%未満では、使用後にヨレを生じ易くなり、2.0質量%を超えると手指に擦り込む際にべとつきやぬめりが増大する恐れがある。
【0009】
本発明に用いる多糖類は、天然多糖類、もしくはその誘導体を含み、例えば、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン、プルラン、マンナン、アミロペクチン、アミロース、デキストラン、ヒドロキシエチルデキストラン、レバン、イヌリン、キチン、キトサン、キシログルカン、アルギン酸、アラビアゴム、グアーガム、トラガントガム、ヒアルロン酸、ヘパリン、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられ、使用に際しては単独若しくは2種以上の混合物として用いることができる。中でもメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系水溶性化合物の使用が好ましく、特に、ヒドロキシプロピルセルロースの使用が、媒体であるアルコール溶液への分散性に優れる点で好ましい。
【0010】
多糖類の分子量は、重量平均分子量で5000〜5000000の範囲が好ましく、特に、使用感及び取り扱いの観点から10000〜1000000の範囲が望ましい。
多糖類の含有割合は、本発明の消毒剤全量当り、0.01〜5.0質量%である。該含有割合が0.01質量%未満では、消毒剤の粘度が充分でなく、5.0質量%を超えると使用中のぬめり感や乾燥後のべとつきが強くなる恐れがある。
【0011】
本発明に用いる低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールが挙げられ、使用に際しては1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
低級アルコールの含有割合は、本発明の消毒剤全量当り、40〜95質量%、好ましくは50〜85質量%の範囲である。該含有割合が40質量%未満の場合、十分な殺菌性が発現されず、また95質量%を超えるとゲル化させることが困難になる。
【0012】
本発明に用いる水は、特に限定されないが、精製水であることが望ましい。またその含有割合は、本発明の消毒剤全量当り、通常、4〜55質量%、特に、10〜30質量%の範囲が特に好ましい。
【0013】
本発明の消毒剤は、実際の使用に際して手指からこぼれ落ちず、且つ伸びの良い適度な粘度を有するように、前記各成分組成を決定することができる。その粘度は、20℃において、100〜50000mPa・sが好ましい。粘度が100mPa・s未満では、消毒剤を手のひらに受ける際、また手指に擦り込む際にこぼれや流れ落ちが生じる恐れがあり、一方、50000mPa・sを超えると伸びが悪く、使用感を損なう恐れがある。
【0014】
本発明のゲル状手指消毒剤は、前記必須成分の他に、本発明の所望の効果を損なうことなく、他の効果等を向上させるために、各種添加剤を必須成分との合計量が100質量%となるように含有させることができる。
前記添加剤としては、例えば、本発明の消毒剤の殺菌効果をより持続させるために、殺菌消毒薬が挙げられる。該殺菌消毒薬としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等の逆性石鹸系化合物;グルコン酸クロルヘキシジンに代表されるクロルヘキシジン塩等のビグアナイド化合物;クレゾール等のフェノール系化合物;ヨウ素イオン、ヨウドホルム、ヨードホア等のヨウ素化合物;アクリノール等の色素系化合物等が挙げられ、これらは使用に際して1種又は2種以上の混合物として用いることができる。
殺菌消毒薬を含有させる場合の割合は、前記所望の効果を得るために、本発明の消毒剤全量当り、通常0.005〜10質量%の範囲が好ましい。
【0015】
前記添加剤としては、例えば、本発明の消毒剤の繰り返し使用による手荒れ等の発生を防止・抑制するために、保湿剤も挙げられる。該保湿剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポロキサマー、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ペンチレングリコール、へキシレングリコール、イソプレングリコール、エチルヘキサンジオール、イソペンチルジオール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、リノール酸グリセリル、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール、エリスリトール等のポリオール系化合物類、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、ムチン、セラミド、尿素、トレハロース及びその誘導体、等が挙げられ、使用に際しては、単独若しくは2種以上の混合物として用いることができる。
保湿剤を含有させる場合の割合は、前記所望の効果を得るために、本発明の消毒剤全量当り、通常0.01〜10質量%が好ましい。
【0016】
前記添加剤としては、例えば、本発明の消毒剤に、上記保湿剤以上の手荒れ防止・改善効果を得るために、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体(以下、MPC重合体と略することもある)も挙げられる。
MPC重合体は、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下、MPCと略す)に由来する構成単位を有する重合体であって、MPCを含む単量体組成物をラジカル重合して得られる。
前記MPCは、例えば、特開昭54−63025号公報、特開昭58−154591号公報等に示された公知の方法等に準じて製造できる。具体的には、2−ヒドロキシエチルメタクリレートと環状リン化合物とをトリエチルアミン等の塩基性触媒共存下で反応させ、次いで生成した環状リン化合物をトリメチルアミンで開環反応を行い、再結晶により精製する方法等によって得ることができる。
【0017】
MPC重合体は、MPCと他の単量体との共重合体でも良い。他の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ドコサニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、スチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、デカン酸ビニル、ドデカン酸ビニル、ヘキサデカン酸ビニル、オクタデカン酸ビニル、ドコサン酸ビニル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロイルオキシホスホン酸、アミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、グリコ−2−ヒドロキシエチルモノメタクリレート(GEMA)、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、ビニルピリジン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、イソブチレン、アクリロニトリル等が挙げられ、中でもメタクリレート系モノマーが溶液重合のし易さの点から特に好ましい。これらの他の単量体は共重合製造にあたって単独でも2種以上の混合物としても用いることができる。
【0018】
前記MPC重合体の分子量は、通常、重量平均分子量で5000〜5000000の範囲が望まし。
MPC重合体を含有させる場合の割合は、前記所望の効果を得るために、本発明の消毒剤全量当り、通常0.001〜10質量%が好ましい。
【0019】
前記添加剤としては、例えば、消毒剤のpHや粘度を調整するために、塩基性物質からなるpH及び粘度調整剤も挙げられる。塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、トリエチルアミン、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン又はこれら2種以上の混合物が挙げられる。
pH及び粘度調整剤を含有させる場合の割合は、前記所望の効果を得るために適宜選択して決定することができる。
【0020】
前記添加剤としては、その他、例えば、界面活性剤、色材、有機酸、無機塩類、酸化防止剤、安定剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、香料、色素等の通常の外用剤に使用される添加剤を、本発明の性能を損なわない範囲で配合することができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
蒸留水15.1gに、水酸化ナトリウム水溶液(1mol/L)0.6g及びメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体(Gantrez AN-119、アイエスピー・ジャパン株式会社製、分子量Mw=216000)0.2gを加え、80℃で同共重合体が完全に溶解するまで攪拌した後、室温まで冷却した。一方、エタノール77.6gに、イソプロパノール5.0g及びヒドロキシプロピルセルロース1.5gを加え、均一になるまで攪拌した。得られたエタノール溶液に、上記で作製したメチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体水溶液を加え、ホモミキサーを用いて系全体が均質になるまで充分攪拌し、ゲル状手指消毒剤100gを調製した。得られた消毒剤の粘度を、B型粘度計を用い、20℃にて測定した。結果を表1に示す。
【0022】
実施例2〜11
配合成分の種類及び配合量を表1に示すように変更した以外は、実施例1に記載の方法に準じて、実施例2〜11のゲル状手指消毒剤を調製した。得られた消毒剤の粘度を、B型粘度計を用い、20℃にて測定した。結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
比較例1〜7
配合成分の種類及び配合量を表2に示すように変更した以外は、実施例1に記載の方法に準じて、比較例1〜7の手指消毒剤を調製した。得られた消毒剤の粘度を、B型粘度計を用い、20℃にて測定した。結果を表2に示す。
【0025】
比較例8
表2に示すような成分を用い、ゲル状の手指消毒剤を調製した。即ち、塩化ベンザルコニウム0.22gを日局エタノール78.5gに溶解し、グリセリン0.2gを加えて撹拌した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.5gを加えて均一に分散した。一方、精製水19.4gにカルボキシビニルポリマー0.8gを加えて充分に撹拌して均一な溶液とし、さらにジイソプロパノールアミン0.38gを加えてゲル化し均質になるまで充分に撹拌した。このゲルに、上記で得た塩化ベンザルコニウムの溶液を加えて全体が均質になるまで充分に撹拌し、無色透明の速乾性ゲル状手指消毒剤100gを得た。得られた消毒剤の粘度を、B型粘度計を用い、20℃にて測定した。結果を表2に示す。
【0026】
【表2】

【0027】
試験例1:使用感評価
男女20人をモニターとして、実施例1〜11及び比較例1〜8で得られた消毒剤の使用感を以下の項目に分けて評価した。尚、比較例4、5については、粘度が低く、ゲル状のサンプルが得られず、他のサンプルと同様に評価できなかったので、試験から除外した。尚(1)〜(4)の試験項目は、平均点を評価結果とし、平均点4.0点以上を合格、平均点4.0点未満を不合格と判定した。結果を表3に示す。
(1)使用中のぬめり感;5点:なし、4点:殆どなし、3点:やや有り、2点:有り、1点:多いにあり、
(2)乾燥後のべたつ;5点:なし、4点:殆どなし、3点:やや有り、2点:有り、1点:多いにありき、
(3)乾燥後のヨレ;5点:なし、4点:殆どなし、3点:やや有り、2点:有り、1点:多いにあり、
(4)消毒剤使用後、手術用手袋を着用し、着用30分後におけるべたつき;5点:なし、4点:殆どなし、3点:やや有り、2点:有り、1点:多いにあり、
(5)乾燥するまでの時間;○:適切(20〜30秒)、△:やや早い(10秒以上20秒未満)、やや遅い(30秒以上40秒未満)、×:早い(10秒未満)、遅い(40秒以上)
【0028】
【表3】

【0029】
試験例2:殺菌性評価
男女10人をモニターとして、実施例5、10及び比較例1〜8で得られた消毒剤の殺菌性並びにその持続性を評価した。
まず実験前の手指菌数測定のために、手指をパームスタンプ(日研生物医学研究所製)培地上にスタンプした。次いで、前記消毒剤1gを手指に採り、20秒間擦り込んだ。消毒直後及び2時間経過後に再度手指をパームスタンプ培地にスタンプした。実験終了後、スタンプした培地を37℃の孵卵器内で24時間培養し、培地上のコロニー数をカウントした。殺菌性は、菌の実験前コロニー数に対する消毒直後のコロニー数の百分率で表した。また殺菌性の持続性は、菌の実験前コロニー数に対する消毒2時間経過後のコロニー数の百分率で表した。効果判定は、菌の減少率により、減少率90%以上を著効、50〜89%を有効、1〜49%をやや有効、0%以下を無効とした。結果を表4に示す。
【0030】
試験例3:手荒れ防止評価
男女10人をモニターとして、実施例5、10及び比較例1〜8で得られた消毒剤の手荒れに対する影響を検証した。
前記消毒剤1gを手指に採り、20秒間擦り込む操作を約2時間間隔で1日5回、2週間連続して実施した後、ビデオマイクロスコープを用いて皮膚表面の状態を観察した。
手荒れ状態の評価は、変化なしを4点、やや悪化を3点、悪化を2点、明らかな悪化を1点とし、平均点3.0点以上を合格、平均点3.0点未満を不合格と判定した。
【0031】
【表4】

【0032】
表1〜3より、本発明の手指消毒剤は、使用に際して手指からこぼれることのない適度な粘性を有すること、また速乾性に優れ、使用中のぬめり感や乾燥後のべたつきがなく、乾燥後においてもヨレを生じないことが明らかになった。また表4より、本発明の手指消毒剤は、十分な殺菌力とともに、手荒れを防止する効果も兼備していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合計量が100質量%となるように、無水マレイン酸系高分子0.01〜2.0質量%、多糖類0.01〜5.0質量%、低級アルコール40〜95質量%及び水を含むゲル状手指消毒剤。
【請求項2】
無水マレイン酸系高分子が、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体である請求項1記載のゲル状手指消毒剤。
【請求項3】
多糖類が、セルロース系水溶性高分子である請求項1又は2記載のゲル状手指消毒剤。
【請求項4】
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン含有重合体0.001〜10質量%を更に含む請求項1〜3のいずれか1項記載のゲル状手指消毒剤。
【請求項5】
塩基性物質からなるpH及び粘度調整剤、殺菌消毒薬、保湿剤及びこれらの混合物からなる群より選択される1種又は2種以上の添加剤を更に含む請求項1〜4のいずれか1項記載のゲル状手指消毒薬。

【公開番号】特開2007−84479(P2007−84479A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274883(P2005−274883)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】