説明

ゲル組成物及び保冷剤

【課題】低温条件下においても、柔軟性および保形性に優れ、人体や対象物に対する使用感および適合性(フィット感)にも優れた保冷剤を構成するのに有用なゲル組成物を提供する。
【解決手段】ゲル組成物を、カルボキシアルキルセルロース類(カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩など)と、チタン化合物(チタンラクテート類など)と、多価アルコール類(C2−6アルカンジオール、ジC2−4アルカンジオール、C3−6アルカントリオールなど)とで構成し、前記多価アルコール類の割合が、ゲル組成物全体に対して10重量%以上となるように調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟性および保形性に優れ、保冷剤などに有用なゲル組成物(又はゲル又はゲル状物)および前記ゲル組成物で構成された保冷剤(又は冷却剤又は冷却媒体)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゲル状の保冷剤が種々の分野で使用されている。このような保冷剤は、ゲル状物が密封袋やプラスチック容器などに充填されて使用されている。そして、このようなゲル状物のゲルの形成には、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、デンプン、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩などの水溶性高分子が使用される。
【0003】
このような保冷剤は、冷却、凍結して使用されているが、凍結により硬く固形化し、接触面積が小さくなるため、局部保冷効果が十分でないなどの欠点があった。また、近年では、人体や対象物への使用感、適合性(フィット感)も保冷剤の重要な要素となってきている。このため、保冷剤に低温柔軟性を付与する試みがなされている。
【0004】
例えば、特公平1−43795号公報(特許文献1)には、油性媒体40〜70重量%と水性媒体60〜30重量%からなる油中水滴型エマルションに、水に不溶の吸水性高分子(デンプン、セルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン等に架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、エピクロロヒドリン、ナトリウムトリメタホスフェート等で架橋したもの、また、デンプン−ポリアクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−(メタ)アクリル酸共重合体の塩類、ポリビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体等)を適量配合した保冷用熱媒体が開示されている。この文献には、油中水滴型エマルションに水に不溶の吸水性高分子を適量混合した場合には柔軟安定性が著しく向上すると記載されている。しかし、この文献の熱媒体では、冷凍により一部が固化してザラメ状となるため、依然として低温柔軟性が不十分である。また、前記熱媒体では、流動パラフィンなどの油性媒体が必要である。
【0005】
さらに、特許第2934045号公報(特許文献2)には、特定の平均置換度および粘度を有するカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液に、3価以上の金属の塩の水溶液を特定の割合で混合してゲル状物を作り、これに食添油を特定量添加してゲルをザラメ雪状にし、次いで界面活性剤および凝固点降下剤(食塩、塩化カルシウム等の塩類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等)を特定量添加して攪拌混合してゲル状組成物を得る柔軟性保冷用組成物の製造方法が開示されている。しかし、この文献のゲル状組成物でも、一部がザラメ状となるため低温柔軟性が不十分であり、しかも、食添油が必要である。
【0006】
また、特開2003−96238号公報(特許文献3)には、多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセリンなど)、多価アルコールエーテル、多価アルコールエステル、エタノールアミン類から選ばれる1種又は2種以上の溶媒と、水溶性セルロースエーテル(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースなど)とを含むゲルが開示されている。この文献には、多価アルコール、多価アルコールエーテル、多価アルコールエステル、エタノールアミン類から選ばれる1種又は2種以上の溶媒と、水溶性セルロースエーテルとを室温で分散混合した後、これらの溶媒の沸点から10〜30℃程度低い温度に加熱することで、水溶性セルロースエーテルが溶媒に溶解した状態となり、更にこの溶液を常温付近まで冷却することにより、流動性のない、又は極めて少ない上記溶媒を含浸したゲルが得られると記載されている。しかし、この文献のゲルでは、十分にゲル化できず、ゲルの形成には加熱が必要である。
【0007】
なお、特開2006−169505号公報(特許文献4)には、1種以上のグルカン誘導体からなる水溶性高分子(例えば、カルボキシメチルセルロースおよび/またはそのアルカリ金属塩など)と、チタン化合物(チタンラクテートなど)からなる水性ゲル組成物が開示されている。この文献には、前記水性ゲル組成物は、(1)媒体としての水を60〜99重量%含むこと、(2)前記水溶性高分子を、グリセリン、プロピレングリコールなどに一旦、分散させてから、分散液を水に添加すると容易に前記水溶性高分子を分散、溶解させることができること、(3)凍結防止、低温安定剤として必要に応じてエタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、へキシレングルコール、グリセリンなどのアルコール、グリコール類が配合されてもよいことが記載されている。そして、この文献の実施例では、実際に、大量の水とカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩と少量のプロピレングリコールとを使用して水性ゲル組成物を得ている。また、この文献には、水性ゲル組成物は、鮮度保持並びに保冷の目的に供される保冷剤、芳香剤、パップ剤、冷却シート、ヘアーシャンプー、ヘアージェル、スキンクリーム、スキンケアローション、顔面処理剤、スキンケアジェル、軟膏、歯みがき、ジェル状石鹸などとして使用することができることが記載されている。しかし、この文献では、ゲル強度、離水性、透明性及び均一性に優れたゲル組成物が得られるものの、低温において固化してしまうため、低温柔軟性が十分ではない。
【特許文献1】特公平1−43795号公報(特許請求の範囲、第1頁右欄第22〜24行、第2頁左欄第8〜17行、第2頁左欄第39〜42行)
【特許文献2】特許第2934045号公報(特許請求の範囲、段落番号[0012])
【特許文献3】特開2003−96238号公報(特許請求の範囲、段落番号[0010])
【特許文献4】特開2006−169505号公報(特許請求の範囲、段落番号[0029]、[0073]、[0087]、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、低温条件下においても、柔軟性および保形性に優れているゲル組成物(特に、水性ゲル組成物)および前記ゲル組成物で構成された保冷剤を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、人体や対象物に対する使用感および適合性(フィット感)に優れた保冷剤を構成するのに有用なゲル組成物および前記ゲル組成物で構成された保冷剤を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、冷却部位の形状にかかわらず、保冷(又は冷却)に対する即効性を発揮できる保冷剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、カルボキシアルキルセルロース類と、チタン化合物と、多価アルコール類とを組み合わせるとともに、前記多価アルコール類をゲル組成物全体に対して特定の割合としたゲル組成物(特に、水性ゲル組成物)では、低温(例えば、−30℃程度)から常温(例えば、15〜30℃)において、優れた柔軟性や保形性を付与できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明のゲル組成物は、カルボキシアルキルセルロース類と、チタン化合物と、多価アルコール類とで構成されたゲル組成物であって、多価アルコール類の割合がゲル組成物全体に対して10重量%以上である。
【0013】
前記ゲル組成物において、前記カルボキシアルキルセルロース類は、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩であってもよく、前記チタン化合物はチタンキレート化合物であってもよく、前記多価アルコール類は、C2−6アルカンジオール、ジC2−4アルカンジオール、およびC3−6アルカントリオールから選択された少なくとも1種であってもよい。
【0014】
特に、前記ゲル組成物において、多価アルコール類の割合は、ゲル組成物全体に対して20重量%以上であってもよい。また、前記ゲル組成物において、多価アルコール類の割合が、ゲル組成物全体に対して13重量%以上であり、かつカルボキシアルキルセルロース類1重量部に対して6重量部以上であってもよい。さらに、前記ゲル組成物において、多価アルコール類の割合は、チタン化合物1重量部に対して、10〜300重量部程度であってもよい。
【0015】
本発明のゲル組成物は、通常、さらに水性媒体としての水を含んでいてもよい。このような水性媒体を含むゲル組成物(水性ゲル組成物)において、多価アルコール類と水性媒体(特に水)との割合は、前者/後者(重量比)=8/92〜95/5であってもよい。このような水性ゲル組成物において、水の割合は、ゲル組成物全体に対して60重量%未満であってもよい。
【0016】
代表的な前記ゲル組成物には、さらに水を含み、(1)多価アルコール類の割合がゲル組成物全体に対して25〜85重量%であり、(2)多価アルコール類の割合が、カルボキシアルキルセルロース類1重量部に対して15〜100重量部、およびチタン化合物1重量部に対して20〜250重量部であり、(3)多価アルコール類と水との割合が、前者/後者(重量比)=25/75〜80/20であるゲル組成物(水性ゲル組成物)が含まれる。
【0017】
なお、前記ゲル組成物は、カルボキシアルキルセルロース類と、チタン化合物と、多価アルコール類とを混合(すなわち、前記多価アルコール類の割合がゲル組成物全体に対して10重量%以上となるように混合)して製造できる。このような方法では、代表的には、まず、前記カルボキシアルキルセルロース類と水との混合液(通常、カルボキシアルキルセルロース類の水溶液)を調製し、この混合液と多価アルコール類とを混合してカルボキシアルキルセルロース類と水と多価アルコール類との混合液を得た後、この混合液にチタン化合物を混合してもよい。なお、前記カルボキシアルキルセルロース類と水との混合液の調製において、多価アルコール類の一部を水にカルボキシアルキルセルロース類を分散させるための分散剤として用いてもよい。
【0018】
本発明のゲル組成物は、低温における柔軟性や保形性に優れているため、保冷剤に好適である。そのため、本発明には、前記ゲル組成物で構成された保冷剤も含まれる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のゲル組成物(特に水性ゲル組成物)は、カルボキシアルキルセルロース類と、チタン化合物と、多価アルコール類とを組み合わせるとともに、前記多価アルコール類が特定の割合となるように調整されているため、低温条件下においても、柔軟性および保形性において優れている。そのため、本発明のゲル組成物は、保冷剤に好適に適用できる。特に、本発明のゲル組成物は、前記のような特定の構成により、人体や対象物に対する使用感および適合性(フィット感)においても優れた保冷剤を構成するのに有用である。さらに、本発明の保冷剤は、前記のように低温における柔軟性(低温柔軟性)や保形性に優れており、冷却部位の形状にかかわらず、保冷(又は冷却)に対する即効性を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[ゲル組成物]
本発明のゲル組成物(ゲル、ゲル状物)は、カルボキシアルキルセルロース類と、チタン化合物と、多価アルコール類とで構成されている。
【0021】
(カルボキシアルキルセルロース類)
カルボキシアルキルセルロース類(A)としては、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース塩などが挙げられる。カルボキシアルキルセルロース類において、カルボキシアルキルセルロースとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースなどのカルボキシC1−2アルキルセルロース、メチルカルボキシメチルセルロースなどのC1−4アルキルカルボキシC1−2アルキルセルロース、ヒドロキシエチルカルボキシメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルカルボキシC1−2アルキルセルロース(ヒドロキシC2−4アルキルカルボキシC1−2アルキルセルロースなど)などが挙げられる。また、カルボキシアルキルセルロース塩において、塩としては、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩など)、これらの複塩などが挙げられる。
【0022】
これらのうち、好ましいカルボキシルアルキルセルロース類には、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩(特にナトリウム塩)などのカルボキシメチルセルロース類が挙げられ、特にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩が好ましい。なお、本発明では、水溶性セルロースエーテルの中でも、特に、カルボキシアルキルセルロース類を使用する。このようなカルボキシアルキルセルロース類を使用することにより、他の水溶性セルロースエーテル(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースなど)に比べて、低温柔軟性や保形性において十分なゲルを得ることができる。
【0023】
カルボキシアルキルセルロース類は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0024】
カルボキシアルキルセルロース類(特に、カルボキシメチルセルロース類)において、カルボキシアルキル基(特にカルボキシメチル基)の平均置換度(又は平均エーテル化度、DS)は、例えば、0.35〜3、好ましくは0.5〜2.9、さらに好ましくは0.6〜2.8(例えば、0.65〜2.7)程度であってもよい。
【0025】
なお、「平均置換度」とは、セルロースを構成するグルコース単位の2,3および6位のヒドロキシル基に対する置換度(置換割合)の平均であり、最大値は3である。ただし、平均エーテル化度が3の完全エーテル化物は製造することが容易ではなく、その入手が困難であるため、入手可能な範囲でエーテル化度を選択してもよい。また、平均エーテル化度が小さすぎると(例えば、0.35未満となると)水に対して溶解しなくなる虞がある。
【0026】
(チタン化合物)
チタン化合物は、通常、カルボキシアルキルセルロース類を架橋可能な成分であってもよい。このようなチタン化合物としては、例えば、無機チタン化合物[例えば、チタン酸類(例えば、チタン酸、ペルオクソチタン酸、これらの塩など)など]、有機チタン化合物{例えば、チタンアルコキシド類[ジ乃至テトラC1−4アルコキシチタン(例えば、ジ乃至テトラメトキシチタンなど)、C6−10アリールオキシチタン(例えば、テトラフェノキシチタンなど)、これらのオリゴマー(ダイマーなど)など]、チタン錯体など}などが挙げられる。
【0027】
チタン錯体は、単座配位子を有するチタン化合物(例えば、チタンアシレート類(チタンステアレート類又はその部分縮合物など)であってもよく、特に、キレート錯体であってもよい。チタンキレート錯体(チタンキレート化合物又はチタンキレート)は、キレート配位子を有するチタン化合物(チタン錯体)である。
【0028】
チタンキレート化合物において、キレート配位子(又はキレート配位子に対応する化合物)としては、有機酸{例えば、ヒドロキシカルボン酸[例えば、ヒドロキシアルカン酸(例えば、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸などのα−ヒドロキシC2−6アルカン酸、好ましくはα−ヒドロキシC2−4アルカン酸)、サリチル酸など]、アミノカルボン酸(例えば、グリシンなどのα−アミノ酸)、ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、エチレンジアミン四酢酸など)、これらのエステル(乳酸メチル、乳酸エチル、リンゴ酸エチル、サリチル酸エチルなど)など]、ジケトン(例えば、アセチルアセトン、2,4−ヘプタンジオンなどのβ−ジケトン)、ケトエステル(例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピルなどのβ−ケトカルボン酸エステル)、ケトアルコール(例えば、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのβ−ヒドロキシケトン)、ポリオール[例えば、脂肪族ジオール(ヘキサンジオール、オクタンジオールなどのグリコールなど)などのポリオール]、ポリアミン(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどの脂肪族ポリアミン、ビピリジンなど)、アミノアルコール[例えば、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン(例えば、C2−6アルカノールアミン、好ましくはC2−4アルカノールアミン)]などが挙げられる。
【0029】
チタンキレート化合物は、キレート配位子を1又は2以上有していてもよい。また、チタンキレート化合物は、これらキレート配位子を単独又は2種以上組み合わせて有していてもよい。
【0030】
なお、チタンキレート化合物は、少なくともキレート配位子を有する化合物であればよく、キレート配位子と単座配位子[例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば、C1−10アルコキシ基、好ましくはC1−6アルコキシ基、さらに好ましくはC1−4アルコキシ基)など]とを組み合わせて有していてもよい。また、チタン錯体は塩(例えば、アンモニウム塩など)を形成していてもよい。
【0031】
代表的なチタンキレート化合物には、例えば、チタン有機酸キレート化合物(又は有機酸をキレート配位子とするチタン化合物)、チタンβ−ジケトンキレート化合物(又はβ−ジケトンをキレート配位子とするチタン化合物)、チタンβ−ケトエステルキレート化合物(又はβ−ケトエステルをキレート配位子とするチタン化合物)、チタングリコールキレート化合物(又はグリコールをキレート配位子とするチタン化合物)、チタンアミノアルコールキレート化合物(又はアミノアルコールをキレート配位子とするチタン化合物)などが含まれる。
【0032】
チタン有機酸キレート化合物としては、例えば、チタンラクテート類{又は乳酸をキレート配位子とするチタン化合物、例えば、ジヒドロキシチタンビスラクテート、アルコキシチタンラクテート[例えば、ジイソプロポキシチタンビスラクテートなどのC1−10アルコキシチタンラクテート(好ましくはC1−4アルコキシチタンビスラクテート)など]、チタンラクテートエステル(例えば、チタンエチルラクテートなどのアルキルエステル)、チタンラクテート塩(ジヒドロキシチタンビス(アンモニウムラクテート)など)など]など}などのチタンヒドロキシアルカンカルボキシレート類(又はヒドロキシアルカンカルボン酸をキレート配位子とするチタン化合物、例えば、チタンヒドロキシC2−6アルカンカルボキシレート類、好ましくはチタンα−ヒドロキシC2−4アルカンカルボキシレート類)など}などが挙げられる。なお、チタンラクテート類とは、配位子として少なくとも乳酸(又はラクテート)を有するチタン化合物を意味し、ラクテート以外の配位子を有するチタン化合物や塩を形成したチタン化合物なども含む意味に用いる。以下、「類」の記載において同じ。
【0033】
チタンβ−ジケトンキレート化合物としては、例えば、チタンアセチルアセトナト類[又はアセチルアセトンをキレート配位子とするチタン化合物、例えば、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナト)などのC1−10アルコキシチタンアセチルアセトナト(好ましくはC1−4アルコキシチタンアセチルアセトナト)、チタンテトラアセチルアセトナトなど)など]などが挙げられる。
【0034】
チタンβ−ケトエステルキレート化合物としては、例えば、チタンアセト酢酸エステル類[又はアセト酢酸エステルをキレート配位子とするチタン化合物、例えば、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)などのC1−10アルコキシチタンC1−10アルキルアセトアセテート(好ましくはC1−4アルコキシチタンC1−4アルキルアセトアセテート)など]などが挙げられる。
【0035】
チタングリコールキレート化合物としては、例えば、チタンアルキレングリコレート類(又はアルキレングリコールをキレート配位子とするチタン化合物、例えば、ジブトキシチタンビス(オクチレン)グリコレートなどのC1−10アルコキシチタンC2−12アルキレングリコレート(好ましくはC1−4アルコキシチタンC4−10アルキレングリコレート)など)など]などが挙げられる。
【0036】
チタンアミノアルコールキレート化合物としては、例えば、チタントリエタノールアミネート類[又はトリエタノールアミンを配位子とするチタン化合物、例えば、アルコキシチタントリエタノールアミネート(例えば、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジブトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)などのC1−10アルコキシチタントリエタノールアミネート(好ましくはC1−4アルコキシチタンビス(トリエタノールアミネート))など)など]などのチタンアルカノールアミネート類(又はアルカノールアミンをキレート配位子とするチタン化合物、例えば、チタンC2−6アルカノールアミネート類、好ましくはトリC2−4アルカノールアミネート類)などが挙げられる。
【0037】
チタン化合物は、水溶性化合物であってもよい。このような水溶性チタン化合物には、チタンヒドロキシアルカンカルボキシレート類、チタントリエタノールアミネート類などが含まれる。
【0038】
これらのチタン化合物のうち、チタンヒドロキシアルカンカルボキシレート類(特に、チタンラクテート類などのチタンα−ヒドロキシC2−4アルカンカルボキシレート類など)、チタンアミノアルコールキレート化合物などのチタンキレート化合物が好ましく、特にチタンラクテート類が好ましい。
【0039】
これらのチタン化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0040】
なお、原料として用いるチタン化合物には、液状成分(例えば、水、アルコール類など)が含まれていてもよい。
【0041】
[多価アルコール類]
多価アルコール類としては、多価アルコール、多価アルコール誘導体(例えば、多価アルコールエーテル、多価アルコールエステル、アミノアルコールなど)などが含まれる。
【0042】
多価アルコール(又はポリオール)としては、ジオール[例えば、アルカンジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルカンジオール、好ましくはC2−8アルカンジオール、さらに好ましくはC2−6アルカンジオール、特にC2−4アルカンジオールなど)、ポリアルキレングリコール(ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールなどのジ乃至テトラC2−4アルキレングリコールなど)など]、トリオール[アルカントリオール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどのC3−10アルカントリオール、好ましくはC3−6アルカントリオール、さらに好ましくはC3−4アルカントリオールなど)など]、4以上のヒドロキシル基を有するポリオール[例えば、4以上のヒドロキシル基を有するアルカンポリオール(エリスリトール、グルシトールなど)、3以上のヒドロキシル基を有するポリオール(前記アルカントリオールなど)の多量体(例えば、ジグリセリン、トリグリセリンなどのポリグリセリン)など]など}などが挙げられる。
【0043】
多価アルコールエーテルとしては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのC2−4アルキレングリコールアルキルエーテル、好ましくはC2−3アルキレングリコールC1−4アルキルエーテルなど)、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのジC2−3アルキレングリコールC1−4アルキルエーテル)などの前記例示の多価アルコールのエーテルが挙げられる。
【0044】
多価アルコールエステルとしては、例えば、アルキレングリコールモノ脂肪酸エステル[例えば、エチレングリコールモノ低級脂肪酸エステル(例えば、エチレングリコールモノアセテートなどのエチレングリコールC1−4脂肪酸エステルなど)などのC2−4アルキレングリコール低級脂肪酸エステル(C1−4脂肪酸エステルなど)など]、グリセリン低級脂肪酸エステル(例えば、グリセリルモノアセテート、グリセリルジアセテートなどのC1−4脂肪酸エステルなど)などの前記例示の多価アルコールのエステルが挙げられる。また、アミノアルコールとしては、例えば、アルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのC2−6アルカノールアミンなど)などが挙げられる。
【0045】
これらの多価アルコール類は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0046】
好ましい多価アルコール類には、C2−6アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオールなど)、ジC2−4アルカンジオール(ジエチレングリコールなど)、C3−6アルカントリオール(グリセリンなど)などが含まれる。
【0047】
(水性媒体)
本発明のゲル組成物は、通常、水性媒体を含むゲル組成物(水性ゲル組成物)である。このような水性ゲル組成物を構成する水性媒体としては、非水溶媒[例えば、アルコール類(前記多価アルコール類ではないアルコール類、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのC1−4アルカノール)、ケトン類(アセトンなど)などの水性有機溶媒]で構成してもよいが、通常、少なくとも水(特に水単独)で構成してもよい。
【0048】
なお、水と非水溶媒とを組み合わせる場合、非水溶媒の割合は、水100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは0.2〜30重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部程度であってもよい。
【0049】
(各成分の割合)
本発明のゲル組成物において、カルボキシアルキルセルロース類の割合は、例えば、ゲル組成物全体(例えば、カルボキシアルコール類、チタン化合物、多価アルコールおよび水の総量)に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜7重量%、さらに好ましくは0.3〜5重量%(例えば、0.5〜3重量%)程度であってもよく、通常0.1〜5重量%程度であってもよい。カルボキシアルキルセルロール類の割合が大きすぎると粘度が高くなり過ぎる虞があり、また、割合が小さすぎるとゲル化しなくなる虞がある。
【0050】
また、前記ゲル組成物において、チタン化合物(液状成分などを含んでいる場合は固形分、以下同じ)の割合は、例えば、ゲル組成物全体に対して、0.001〜10重量%(例えば、0.005〜5重量%)、好ましくは0.01〜3重量%、さらに好ましくは0.03〜2重量%程度であってもよく、通常0.05〜1.5重量%(例えば、0.1〜1重量%)程度であってもよい。
【0051】
なお、前記ゲル組成物において、カルボキシアルキルセルロース類とチタン化合物との割合は、前者/後者(重量比)=95/5〜20/80、好ましくは90/10〜40/60、さらに好ましくは85/15〜50/50(例えば、80/20〜60/40)程度であってもよい。
【0052】
前記ゲル組成物において、多価アルコール類の割合は、ゲル組成物全体に対して、10重量%以上(例えば、12〜90重量%程度)の範囲から選択でき、例えば、13重量%以上(例えば、14〜85重量%程度)、好ましくは20重量%以上(例えば、25〜80重量%程度)、さらに好ましくは30重量%以上(例えば、35〜75重量%程度)であってもよく、通常30〜70重量%程度であってもよい。
【0053】
また、前記ゲル組成物において、多価アルコール類の割合は、カルボキシアルキルセルロース類1重量部に対して、4重量部以上(例えば、5〜150重量部程度)の範囲から選択でき、例えば、6重量部以上(例えば、10〜120重量部程度)、好ましくは15〜100重量部(例えば、20〜80重量部)、さらに好ましくは25〜60重量部、特に30〜55重量部程度であってもよい。
【0054】
そして、本発明のゲル組成物において、多価アルコール類の割合は、通常、チタン化合物1重量部に対して、5重量部以上(例えば、8〜500重量部程度)の範囲から選択でき、例えば、10〜300重量部(例えば、12〜280重量部)、好ましくは20〜250重量部(例えば、30〜220重量部)、さらに好ましくは40〜200重量部(例えば、50〜180重量部)、特に55〜170重量部(例えば、60〜150重量部)程度であってもよい。
【0055】
なお、前記ゲル組成物において、チタン化合物の割合は、カルボキシアルキルセルロース類および多価アルコール類の総量100重量部に対して、例えば、0.01〜15重量部、好ましくは0.05〜10重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部、特に0.3〜3重量部(例えば、0.5〜2重量部)程度であってもよい。
【0056】
前記ゲル組成物が水を含む場合、水の割合は、例えば、ゲル組成物全体に対して、3〜90重量%、好ましくは5〜85重量%(例えば、10〜75重量%)、さらに好ましくは20〜70重量%(例えば、25〜75重量%)程度であってもよく、特に60重量%未満(例えば、15〜58重量%、好ましくは20〜55重量%程度)であってもよい。なお、水性ゲル組成物において、水の割合が大きすぎると冷却に伴って固化しやすくなり、また水の割合が小さすぎるとカルボキシアルキルセルロール類の溶解に時間がかかり過ぎる虞がある。
【0057】
また、前記ゲル組成物において、多価アルコール類と水との割合は、前者/後者(重量比)=8/92〜95/5(例えば、10/90〜90/10)の範囲から選択でき、例えば、12/88〜95/5(例えば、14/86〜90/10)、好ましくは20/80〜85/15(例えば、25/75〜80/20)、さらに好ましくは30/70〜75/25(例えば、35/65〜70/30)であってもよい。
【0058】
本発明のゲル組成物では、上記のように、多価アルコール類を全体に対する特定の高い割合で使用することにより、低温における柔軟性や保形性を向上できる。さらには、各成分の割合を上記のような割合(例えば、カルボキシアルキルセルロース類、チタン化合物や水に対する多価アルコール類の割合)で使用することにより、このような低温柔軟性や保形性をより一層効率よく高いレベルで向上できる。
【0059】
本発明のゲル組成物は、本発明の効果を損なわない程度であれば、用途などに応じて、さらに、添加剤[例えば、界面活性剤(例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤、アルキルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤)、pH調整剤(酸など)、香料、消臭剤、防臭剤、防黴剤、殺菌剤、忌避剤など]、前記カルボキシアルキルセルロース類でない水溶性高分子(例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースなどのセルロースエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなど)、セメント類、無機水酸化物(水酸化アルミナ、水酸化マグネシウムなど)、粘土材料(ベントナイト、タルク、カオリンなど)、非水性媒体(又は油性媒体、例えば、流動パラフィンなどの鉱油、植物油など)などの他の成分を含んでいてもよい。また、特に保冷剤などに用いる場合、本発明のゲル組成物は、柔軟性と保形性を維持できる範囲において、使用温度範囲で凍結と融解の相変化を繰り返す蓄熱成分を含んでいてもよい。これらの他の成分は単独で又は2種以上組み合わせてゲル組成物に含まれていてもよい。なお、本発明のゲル組成物は、界面活性剤を含まない(実質的に含まない)組成物であってもよい。
【0060】
また、本発明のゲル組成物は、油性媒体を含んでいてもよいが、通常、油性媒体を含まない(又は実質的に含まない)のが好ましい。本発明のゲル組成物全体に対する油性媒体の割合は、20重量%以下(例えば、0〜15重量%)、好ましくは10重量%以下(例えば、0〜5重量%)、さらに好ましくは1重量%以下(例えば、0〜0.5重量%)であってもよい。
【0061】
なお、本発明のゲル組成物の水溶液におけるpHは、例えば、1〜7、好ましくは2〜6.5、さらに好ましくは3〜6程度であってもよい。
【0062】
また、本発明のゲル組成物において、ゲル強度は、例えば、100Pa以上(例えば、110〜2000Pa)、好ましくは120〜1800Pa、さらに好ましくは150〜1500Pa程度であってもよい。
【0063】
(ゲル組成物の製造方法)
本発明のゲル組成物は、前記カルボキシアルキルセルロース類と、前記チタン化合物と、前記多価アルコール類と、通常水性媒体(特に水)と(さらに必要に応じて他の成分と)を、前記特定の割合となるように混合して調製することができる。
【0064】
このような方法において、各成分の添加順序は特に限定されず、例えば、(1)カルボキシアルキルセルロース類の水溶液に、多価アルコール類およびチタン化合物を混合する方法、(2)カルボキシアルキルセルロース類が多価アルコール類の一部又は全部に分散した分散液に、水およびチタン化合物(および多価アルコール類の残部)を混合する方法、(3)水および多価アルコール類の混合液に、カルボキシアルキルセルロース類を分散(溶解)させ、チタン化合物を混合する方法などによりゲル組成物を調製できる。
【0065】
なお、上記(1)〜(3)のいずれの方法においても、各成分の混合順序は特に限定されず、順次混合してもよく、同時に混合してもよい。例えば、上記(1)の方法において、多価アルコール類、チタン化合物の順に混合してもよく、チタン化合物、多価アルコール類の順に混合してもよい。なお、カルボキシアルキルセルロース類の水溶液の調製において、多価アルコール類の一部を水にカルボキシアルキルセルロース類を分散(溶解)させるための分散剤として用いてもよい。
【0066】
なお、各成分の混合は加温下で行ってもよく、通常、常温又は室温下(例えば、15〜30℃程度)で行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のゲル組成物(特に水性ゲル組成物)は、低温(例えば、−30℃)から常温(例えば、15〜30℃程度)における温度範囲で、柔軟性および保形性において優れている。また、人体などに対する使用感やフィット感においても優れている。そのため、本発明のゲル組成物は、種々の用途、例えば、パップ剤、冷却シート、保冷剤などを構成するのに有用であり、特に、保冷剤に好適である。
【0068】
このような保冷剤は、柔軟性を有する容器(例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂、ゴムなどで形成された容器)と、このような容器に充填された前記ゲル組成物とで構成できる。このような保冷剤は、前記のように柔軟性や保形性において優れているため、冷却部位の形状にかかわらず(例えば、冷却部位が複雑な形状をしていても)冷却に対する即効性に優れている。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0070】
なお、実施例および比較例では、以下の成分を用いた。
【0071】
(カルボキシアルキルセルロース類(A)):
CMC1:カルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセル化学工業(株)製、「CMCダイセル1150」、平均エーテル化度0.7、1重量%水溶液粘度293mPa・s)
CMC2:カルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセル化学工業(株)製、「CMCダイセル2260」、平均エーテル化度0.9、1重量%水溶液粘度5550mPa・s)
CMC3:カルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセル化学工業(株)製、「CMCダイセル1350」、平均エーテル化度1.3、1重量%水溶液粘度256mPa・s)
CMC4:カルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセル化学工業(株)製、「CMCダイセルアーネストガムFDM」、平均エーテル化度2.5、1重量%水溶液粘度165mPa・s)
(チタン化合物(B)):
チタンラクテート(松本製薬工業(株)製、「オルガチックスTC−310」)
なお、「オルガチックスTC−310」は、46重量%のチタンラクテート(固形分)と、45重量%の2−プロパノールと、残部(9重量%)の水とで構成されている。
【0072】
(多価アルコール類(C)):
エチレングリコール(和光純薬工業(株)製)
プロピレングリコール(和光純薬工業(株)製)
1,3−ブタンジオール(和光純薬工業(株)製)
グリセリン(和光純薬工業(株)製)
水性媒体(D):水。
【0073】
(実施例1)
エチレングリコール46.5重量部の一部に、1.4重量部のCMC1を分散させた。得られた分散液と、51重量部の水とを混合し、CMC1の溶液を調製した。調製したCMC1の溶液に、前記エチレングリコールの残部を添加、混合し、さらに、1.1重量部チタンラクテートを添加、混合して水性ゲル組成物を調製した。
【0074】
得られた水性ゲル組成物を、ポリエチレン製ポリ袋に充填して静置し、保冷剤を得た。
【0075】
(実施例2)
エチレングリコールを46.5重量部に代えて9.3重量部使用したこと以外は、実施例1と同様にして水性ゲル組成物を調製し、保冷剤を得た。
【0076】
(実施例3)
1.4重量部のCMC1に代えて1.1重量部のCMC2を使用し、チタンラクテートを1.1重量部に代えて0.9重量部使用し、エチレングリコール46.5重量部に代えてプロピレングリコール47.0重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして水性ゲル組成物を調製し、保冷剤を得た。
【0077】
(実施例4)
1.4重量部のCMC1に代えて1.4重量部のCMC3を使用し、チタンラクテートを1.1重量部に代えて1.0重量部使用し、エチレングリコール46.5重量部に代えて1,3−ブタンジオール46.6重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして水性ゲル組成物を調製し、保冷剤を得た。
【0078】
(実施例5)
1.4重量部のCMC1に代えて1.4重量部のCMC4を使用し、チタンラクテートを1.1重量部に代えて1.0重量部使用し、エチレングリコール46.5重量部に代えてグリセリン46.6重量部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして水性ゲル組成物を調製し、保冷剤を得た。
【0079】
(実施例6)
実施例4において、1,3−ブタンジオール46.6重量部に代えて、グリセリン6.0重量部を使用したこと以外は、実施例4と同様にして水性ゲル組成物を調製し、保冷剤を得た。
【0080】
(比較例1)
実施例3において、プロピレングリコールを使用しなかったこと以外は、実施例3と同様にして水性ゲル組成物を調製し、保冷剤を得た。
【0081】
(比較例2)
実施例3において、プロピレングリコールを47.0重量部に代えて3.5重量部使用したこと以外は、実施例3と同様にして水性ゲル組成物を調製し、保冷剤を得た。
【0082】
(比較例3)
実施例6において、グリセリンを使用しなかったこと以外は、実施例6と同様にして水性ゲル組成物を調製し、保冷剤を得た。
【0083】
そして、実施例および比較例で得られた各保冷剤の柔軟性および保形性を以下のようにして評価した。
【0084】
(柔軟性)
−15℃の家庭用冷凍庫内、および−24℃のストッカー内でそれぞれ24時間静置後、保冷剤を手で押して柔軟性を以下の基準で評価した。
【0085】
○…室温(25℃)の状態と柔軟性に変化がない
△…部分的に室温と同様の柔軟性を有しているが、凍結部分や硬い部分が認められる
×…硬く固化し変形しない。
【0086】
(保形性)
−15℃の家庭用冷凍庫内、および−24℃のストッカー内でそれぞれ24時間静置後、保冷剤を変形させ、変形の状態および変形後の形状の変化を以下の基準で評価した。
【0087】
○…変形が容易ですぐに変形前の状態に戻る
△…変形しにくい、又は変形しても元の形状に戻らない
×…硬くて変形できない。
【0088】
結果を表1に示す。なお、表中、「(D)水」の「重量部」は、添加した水の量であり、チタンラクテートに含まれる水を含まない。
【0089】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシアルキルセルロース類と、チタン化合物と、多価アルコール類とで構成されたゲル組成物であって、多価アルコール類の割合がゲル組成物全体に対して10重量%以上であるゲル組成物。
【請求項2】
カルボキシアルキルセルロース類が、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩であり、チタン化合物がチタンキレート化合物であり、多価アルコール類が、C2−6アルカンジオール、ジC2−4アルカンジオール、およびC3−6アルカントリオールから選択された少なくとも1種である請求項1記載のゲル組成物。
【請求項3】
多価アルコール類の割合が、ゲル組成物全体に対して13重量%以上であり、かつカルボキシアルキルセルロース類1重量部に対して6重量部以上である請求項1記載のゲル組成物。
【請求項4】
多価アルコール類の割合が、チタン化合物1重量部に対して、10〜300重量部である請求項1記載のゲル組成物。
【請求項5】
さらに水を含み、多価アルコール類と水との割合が、前者/後者(重量比)=8/92〜95/5である請求項1記載のゲル組成物。
【請求項6】
水の割合が、ゲル組成物全体に対して60重量%未満である請求項5記載のゲル組成物。
【請求項7】
さらに水を含み、(1)多価アルコール類の割合がゲル組成物全体に対して25〜85重量%であり、(2)多価アルコール類の割合が、カルボキシアルキルセルロース類1重量部に対して15〜100重量部、およびチタン化合物1重量部に対して20〜250重量部であり、(3)多価アルコール類と水との割合が、前者/後者(重量比)=25/75〜80/20である請求項1記載のゲル組成物。
【請求項8】
請求項1記載のゲル組成物で構成された保冷剤。

【公開番号】特開2008−231179(P2008−231179A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70091(P2007−70091)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】