説明

ゲル網状組織を含有する口腔用組成物

本発明は、(i)1以上の脂肪族両親媒性物質と、(ii)1以上の界面活性剤と、(iii)1以上の溶媒とを含むゲル網状組織相と、口腔キャリア相とを含有する口腔用組成物を対象とする。特定の実施形態において、ゲル網状組織は、口腔用組成物を構造化するために使用される。本発明はまた、ゲル網状組織を含有する口腔用組成物を形成する方法を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル網状組織を含有する口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔ケア組成物、特に歯磨剤のレオロジーは処方が非常に難しい。組成物は、チューブから容易に分配できるように粘度が高過ぎてはならないが、歯ブラシ上に留まってブラシの中にまで沈んでしまわないように十分粘度が高くなければならない。口腔用組成物の粘度は、口腔用組成物を貯蔵寿命の間ずっと容易に分配できるように、時間の経過とともに粘度が高くならずに安定でなければならない。容器から分配された後は、口腔用組成物は消費者が扱い易いように糸を引いたり、べとついてはいけない。口腔用組成物はまた、口の中に入ると容易に広がり、フォームを形成しなければならない。口腔用組成物はまた、シンクに貼りついたり、取り除くのが大変な硬い乾燥物を残さないのが望ましい。許容可能なレオロジーを処方するために粘度とずり減粘とのバランスをとることに加えて、口腔用組成物はまた安定でなければならず、活性成分、例えばフッ化物を利用可能に維持できなければならない。
【0003】
消費者が所望する口腔用組成物に関する上記の要件に加えて、口腔用組成物は相対的に処理が容易であることも所望される。口腔用組成物は、上述のような所望のレオロジー及び貯蔵安定性を有するだけでなく、口腔用組成物を容器に素早く満たすのに十分粘稠でなければならない。また、その処理が特別な装置を必要とせず、処理時間も短いのが望ましい。通常、口腔用組成物は高分子増粘剤を用いて増粘される。高分子増粘剤は水和工程を必要とする場合があるが、それが処理の柔軟性を制限し、空気混入問題を起こし得る。また、口腔用組成物の増粘化システムは低コストで、一般に利用可能な成分を含むのが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記を鑑みて、口腔用組成物に関して、継続的に改善された増粘化又は構造化システムが必要とされている。既存の技術分野には、本発明の利点及び効果の全てを提供するものはない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(i)1以上の脂肪族両親媒性物質と、(ii)1以上の二次界面活性剤と、(iii)1以上の溶媒と、を含むゲル網状組織相と、口腔キャリア相と、を含む口腔用組成物を対象とする。ゲル網状組織相は、口腔用組成物を構造化するために使用できる。一部の実施形態において、口腔用組成物は歯磨剤又は濃縮歯磨剤である。脂肪族両親媒性物質は、単一の脂肪族アルコール又は脂肪族アルコールの組み合わせ、例えばセチルアルコール及びステアリルアルコールであることができる。所望により、ゲル網状組織相にある二次界面活性剤に加えて、ラウリル硫酸ナトリウムのような界面活性剤を口腔キャリア相に添加できる。ゲル網状組織相は、増粘剤を使用することなく所望のレオロジーを提供できるが、それでも所望により増粘剤を使用してもよい。増粘剤は増粘化用の量で使用してもよく、又は口腔用組成物は増粘剤を本質的に含んでいなくてもよい。口腔用組成物は、1を超えるゲル網状組織、例えば非相溶性物質を送達又は封鎖するためのゲル網状組織を含有してもよい。本発明は更に、口腔内にて有効量の口腔用組成物を使用する方法を対象とする。
【0006】
また本発明は、上記の口腔用組成物の製造方法を対象とする。口腔用組成物の製造方法の1つでは、脂肪族両親媒性物質と、二次界面活性剤と、溶媒とを、二次界面活性剤及び溶媒を脂肪族両親媒性物質に分割させるのに十分な温度にて組み合わせる。この混合物を次いで脂肪族両親媒性物質の鎖融解温度未満に冷却してゲル網状組織を形成する。ゲル網状組織が形成されたら、そのゲル網状組織に口腔キャリア物質を添加して口腔用組成物を形成する。所望により、一部の口腔キャリア物質をゲル網状組織用物質と共に添加してもよく、又はゲル網状組織物質を冷却するときに添加してもよい。追加の界面活性剤を後添加してもよい、すなわちゲル網状組織を形成した後に添加してもよいことを意味する。
【0007】
本開示を読むことで、本発明のこれら及び他の特徴、態様、及び利点が、当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を特に指摘し、そして明確に特許請求している特許請求の範囲をもって本明細書は終了するが、本発明は以下の説明からより良く理解されると考えられる。
【0009】
百分率、部分及び比率は全て、特に指定されない限り本発明の組成物の総重量に基づいている。このような全ての重量は、列記した成分に関する限り、活性レベルに基づくため、特に規定のない限り、市販物質に包含される可能性のある溶媒又は副産物を包含しない。用語「重量百分率」は、本明細書では「重量%」として表示される場合がある。
【0010】
本明細書で使用するとき、特に規定のない限り、分子量は全てグラム/モルとして表される重量平均分子量である。
【0011】
本明細書では、「含む」とは、最終結果に影響を及ぼさない他の工程及び他の成分を加えることができることを意味する。この用語は、「からなる」及び「から本質的になる」という用語を包含する。本発明の組成物及び方法/プロセスは、本明細書に記載される本発明の必須要素及び限定、並びに本明細書に記載されるいかなる追加若しくは任意の成分、構成要素、工程、又は限定をも含む、それらからなる、及びそれらから本質的になることができる。
【0012】
本明細書において、「有効量」とは、当業者の適切な判断内で明白な利益、好ましくは口腔の健康の利益を顕著に誘導するために十分であるが、重篤な副作用を回避するために十分に低い、すなわち合理的な利益対危険性比を提供する化合物又は組成物の量を意味する。
【0013】
「口腔用組成物」とは、通常の使用過程では、特定の治療剤の全身投与の目的で意図的に嚥下されるものではなく、むしろ、口腔の活性を目的として実質的に全ての歯の表面及び/又は口腔組織と接触させるのに十分な時間、口腔内に保持される製品を意味する。本発明の口腔用組成物は、練り歯磨き、歯磨剤、歯用ゲル、液体ゲル、歯肉縁下用ゲル、フォーム、ムース、又は義歯用製品を含む様々な形態であってもよい。口腔用組成物はまた、ゲル網状組織によって増粘化されたリンスであってもよい。口腔用組成物はまた、口腔表面に直接適用する、又は貼付するストリップ又はフィルム上に組み込まれてもよい。
【0014】
本明細書において使用される「歯磨剤」という用語は、特に指定しない限り、口腔の表面を洗浄するために使用するペースト、ゲル、粉末、又は液剤を意味する。歯磨剤組成物は、単一相組成物であってよく、又は2種以上の別個の歯磨剤組成物の組み合わせであってもよい。歯磨剤組成物は、深い縞状、表面的な縞状、ペーストを囲むゲルを有する多層状、又はこれらの任意の組み合わせのような、任意の所望の形態であってよい。2種以上の別個の歯磨剤組成物を含む歯磨剤中の各歯磨剤組成物は、ディスペンサーの物理的に分離された区画内に収容され、同時に分配され得る。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「ディスペンサー」とは、口腔用組成物を分配するのに好適ないかなるポンプ、チューブ、パッケージ又は容器をも意味する。
【0016】
本明細書で使用するとき、用語「歯」とは、天然歯、並びに人工歯又は歯科補綴物を指す。
【0017】
本明細書で使用するとき、用語「ポリマー」は、1種類のモノマーの重合によって製造される物質、又は2種類以上の種類のモノマーよって製造される物質(すなわち、コポリマー)を含むものとする。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「水溶性」は、物質が本組成物中で水に可溶であることを意味する。一般に、物質は25℃にて、水溶媒の0.1重量%、好ましくは1重量%、より好ましくは5重量%、より好ましくは15重量%の濃度で可溶であるべきである。
【0019】
本明細書で使用するとき、「二次界面活性剤」という用語は、脂肪族両親媒性物質以外の界面活性剤を意味する。好適な界面活性剤の様々な種類を以下に列挙する。1を超える二次界面活性剤が存在してもよい。ゲル網状組織相には少なくとも1つの二次界面活性剤が存在する。口腔キャリア相には別の界面活性剤が存在してもよい。
【0020】
本発明の口腔用組成物は、分散ゲル網状組織相及び口腔キャリア相を含む。裸眼で、分散ゲル網状組織相と口腔キャリア相とは区別できない。これらの相は互いに不混和性である。しかし、各相の構成成分、特に水溶性成分は他方の相に移動できる。例えば、二次界面活性剤はゲル網状組織相に必要であるが、二次界面活性剤の一部は口腔キャリア相に移動してもよい。同様に、口腔キャリア相に添加される風味剤はゲル網状組織相に移動してもよい。この必須成分のそれぞれ、並びに好ましい又は任意の構成成分は、本明細書において以下で詳細に説明する。
【0021】
A.ゲル網状組織(Gel Network)
本発明の口腔用組成物は、脂肪族両親媒性物質を含む分散ゲル網状組織相を含む。本明細書で使用するとき、用語「ゲル網状組織」とは、以下に特定する少なくとも1つの脂肪族両親媒性物質、以下に特定する少なくとも1つの二次界面活性剤、及び以下に特定する溶媒を含む層状の又は小胞性の固体結晶性相を指す。層状相又は小胞性相は、脂肪族両親媒性物質及び二次界面活性剤を含む第一層と、交互の、溶媒を含む第二層とから構成される2層を含む。層状結晶相を形成するためには、脂肪族両親媒性物質及び二次界面活性剤は溶媒内で分散しなければならない。本明細書で使用するとき、用語「固体結晶性」とは、1以上の脂肪族両親媒性物質を含むゲル網状組織の層の鎖融解温度未満の温度において形成される層状相又は小胞性相の構造を指す。鎖融解温度は、示差走査熱量計により測定されることができ、その方法は下記の実施例に記載される。
【0022】
口腔用組成物中のゲル網状組織は、口腔用組成物の構造化のために使用される。ゲル網状組織によって提供される構造化は、口腔用組成物を増粘化させることによって所望のレオロジー又は粘度を提供する。構造化は、高分子増粘剤を必要とすることなく行うことができるが、高分子増粘剤又はその他の試薬を口腔用組成物の構造化のためにゲル網状組織に加えて使用できる。
【0023】
一般にゲル網状組織は、G.M.エクレストン(Eccleston)による、「外皮用ローション及びクリームにおける混合乳化剤及び乳化ワックスの機能(Functions of Mixed Emulsifiers and Emulsifying Waxes in Dermatological Lotions and Creams)」、コロイド及び表面(Colloids and Surfaces)A:生化学及び技術者態様(Physiochem. and Eng. Aspects)123〜124(1997)169〜182、並びにG.M.エクレストン(Eccleston)による、「半固体クリームのミクロ構造(The Microstructure of Semisolid Creams)」、国際薬局(Pharmacy International)、7巻、63〜70(1986)に、更に記載されている。
【0024】
本発明のこの実施形態によれば、本発明のゲル網状組織構成成分は、脂肪族両親媒性物質、二次界面活性剤及び溶媒を約50℃〜約90℃の範囲のレベルに加熱し、混合することによって調製してもよい。この混合物を、例えば、混合物を熱交換器に通過させることにより、約20℃〜約35℃の範囲のレベルまで冷却する。この冷却工程の結果として、脂肪族両親媒性物質及び二次界面活性剤は結晶化して、固体結晶性ゲル網状組織を形成する。口腔キャリアはこの処理中いつでも添加できる。
【0025】
ゲル網状組織構成成分を調製する代替方法としては、脂肪族両親媒性物質、二次界面活性剤、及び溶媒を加熱しながら、音波処理及び/又は粉砕加工して、融解した脂肪族両親媒性物質相の粒径を低減する方法が挙げられる。これにより、脂肪族両親媒性物質相の表面積が増大し、二次界面活性剤及び溶媒が脂肪族両親媒性物質相を膨潤させる。ゲル網状組織の調製における別の好適な変化形としては、初めに脂肪族両親媒性物質及び二次界面活性剤を加熱して混合し、その後、この混合物を溶媒に添加する方法が挙げられる。
【0026】
平衡化層状分散体(「ELD」)は、最終的な口腔用組成物にて形成される。ELDは、口腔キャリア及びその他の任意成分と実質的に平衡化したゲル網状組織構成成分から得られる分散した層状又は小胞性相である。
【0027】
口腔用組成物内の、ELDの形態のゲル網状組織の存在は、X線分析、光学顕微鏡法、電子顕微鏡法、及び示差走査熱量計のような当業者に既知の手段により、確認することができる。X線分析方法及び示差走査熱量計は、以下の実施例に記載される。
【0028】
本発明の実施形態では、ゲル網状組織構成成分中の脂肪族両親媒性物質と界面活性剤との重量比は、約1:5超、好ましくは約1:3〜約100:1、より好ましくは約1:1超〜約20:1、更により好ましくは約2:1超〜約10:1である。
【0029】
1.脂肪族両親媒性物質
本発明のゲル網状組織構成成分は、少なくとも1つの脂肪族両親媒性物質を含む。本明細書にて使用するとき、「脂肪族両親媒性物質」とは、以下に定義される疎水性末端基R及び化合物を水溶性にしない(不混和性)親水性先端基を有する化合物を指し、化合物はまた、口腔用組成物のpHにおいて、正味の中性電荷を有する。本明細書にて使用するとき、用語「水溶性」とは、物質が本組成物中の水に可溶性であることを意味する。一般に、そうした物質は25℃にて、水溶媒の0.1重量%、好ましくは1重量%、より好ましくは5重量%、より好ましくは15重量%の濃度で可溶性であるべきである。
【0030】
本発明の脂肪族両親媒性物質は、6以下の親水性−親油性バランス(「HLB」)を有する化合物として特徴付けることができる。本明細書で使用するとき、HLBは、グリフィン(Griffin)、J.Soc.Cosm.Chem.、第5巻、249(1954)に従う標準HLBである。
【0031】
本発明の口腔用組成物は、口腔用組成物の0.05重量%〜約30重量%、好ましくは約0.1重量%〜約20重量%、及びより好ましくは約0.5重量%〜約10重量%の量で脂肪族両親媒性物質を含む。脂肪族両親媒性物質の量は、ゲル網状組織の形成及び口腔用処方の組成に基づいて選択される。例えば、少量の水を含有する口腔用組成物は、約1%の脂肪族両親媒性物質を必要とし得るが、多量の水を含む口腔用組成物は、6%以上の脂肪族両親媒性物質を必要とし得る。
【0032】
本発明に従うと、好適な脂肪族両親媒性物質、又は2つ以上の脂肪族両親媒性物質の好適な混合物は、好ましくは少なくとも約45℃の融点を有する。一部の実施形態において、融点は少なくとも約50℃、約55℃超、又は約60℃超であるのが好ましい。本明細書にて使用するとき、融点は、米国薬局方、USP−NF一般章(General Chapter)<741>「融解範囲又は温度」に記載されるような標準融点法により、測定することができる。2つ以上の物質の混合物の融点は、それぞれの融点を超える温度で2つ以上の物質を混合した後、混合物を冷却させることにより測定される。得られた複合物が、約45℃未満で均質固体であるとき、混合物は本発明において使用するために好適な融点を有する。混合物が、個々の融点が約45℃未満である少なくとも1つの脂肪族両親媒性物質を含む、2つ以上の脂肪族両親媒性物質の混合物であっても、混合物の複合融点が、少なくとも約45℃であるなら、本発明において使用するのに好適である。
【0033】
本発明に従うと、好適な脂肪族両親媒性物質は、疎水性末端基Rを有する。本明細書にて使用するとき、Rは、アルキル、アルケニル(3個までの二重結合を含有する)、アルキル芳香族、又はC12〜C70の長さの分枝状アルキル基である。本発明の脂肪族両親媒性物質に好適なアルキル、アルケニル、又は分枝状アルキル基の非限定例としては、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、セチル、ヘプタデシル、ステアリル、アラキジル、ベヘニル、ウンデシレニル、パルミトレイル、オレイル、パルモレイル、リノレイル、リノレニル、アラキドニル、エライジル、エレオステアリル、エルカイル、イソラウリル、イソトリデシル、イソミリスタル、イソペンタデシル、ペトロセリニル、イソセチル、イソヘプタデシル、イソステアリル、イソアラキジル、イソベヘニル、ガドレイル、ブラシジル、及びこれらの工業銘柄混合物が挙げられる。
【0034】
本明細書にて使用するとき、Rはまた、より高い分子量の分枝状イソアルコールを生じさせるために、アルコールのアルカリ縮合により調製される分枝状アルキル基であってもよい。当該技術分野において、これらの分枝状イソアルコールは、ゲルベアルコールと呼ばれる。
【0035】
は、小麦胚、ヒマワリ、ブドウ種子、ゴマ、トウモロコシ、アンズ、ヒマシ、アボカド、オリーブ、大豆、スイートアーモンド、パーム、菜種、綿実、へーゼルナッツ、マカデミア、カリテ(karite)、ホホバ、アルファルファ、ケシ、カボチャ種子、ゴマ、キュウリ、クロスグリ、マツヨイグサ、キビ、大麦、キヌア、ライ麦、ベニバナ、キャンドルナッツ、トケイソウ又はムスクローズ油、及びカリテ(karite)バターのような野菜由来のアルキル、アルケニル又は分枝状炭素鎖であってよい。
【0036】
また本発明の好適な脂肪族両親媒性物質は、例えば6以下のHLBを有する化合物中に、化合物を水溶性にしない親水性の先端基を有する。こうした親水性先端基を有する化合物の部類の非限定例としては、脂肪族アルコール、アルコキシル化脂肪族アルコール、脂肪族フェノール、アルコキシル化脂肪族フェノール、脂肪酸アミド、アルコキシル化脂肪酸アミド、脂肪族アミン、脂肪族アルキルアミドアルキルアミン、脂肪族アルコキシル化アミン、脂肪族カルバメート、脂肪族アミンオキシド、脂肪酸、アルコキシル化脂肪酸、脂肪族ジエステル、脂肪族ソルビタンエステル、脂肪族糖エステル、メチルグルコシドエステル、脂肪族グリコールエステル、モノ、ジ、及びトリグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、コレステロール、セラミド、脂肪族シリコーンワックス、脂肪族グルコースアミド、並びにリン脂質が挙げられる。
【0037】
本発明のゲル網状組織構成成分を形成するために、個々の脂肪族両親媒性化合物、又は2つ以上の異なる脂肪族両親媒性化合物の組み合わせを選択することが可能である。以下に、本発明において使用するのに好適な1以上の脂肪族両親媒性物質を選択することが可能な化合物の部類の非限定例を提供する。
【0038】
a.脂肪族アルコール/アルコキシル化脂肪族アルコールエーテル
本発明の脂肪族両親媒性物質は、次式に従う脂肪族アルコール化合物又はアルコキシル化脂肪族アルコールエーテル化合物から選択することが可能である:
【化1】

式中、Rは上述のとおりであり、Rは分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖であり、kは約0〜約5の範囲の数である。
【0039】
本明細書で有用な脂肪族アルコールは、約12〜約60個の炭素原子、好ましくは約16〜約60個の炭素原子を有するものである。これらの脂肪族アルコールは、直鎖又は分枝鎖アルコールであってよく、また飽和又は不飽和であってよい。好適な脂肪族アルコールの非限定例としては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、エイコシルアルコール、C20〜40アルコール、C30〜50アルコール、C40〜60アルコール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
好適なアルコキシル化脂肪族アルコールエーテルとしては、約12〜約60個の炭素原子を有する直鎖状脂肪族アルコールとエチレンオキシド1〜5モルとの付加生成物が挙げられ、これらは全て、既知の工業オキシエチル化プロセスにより入手できる付加物である。同様に、好適なのは、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、例えば、直鎖又は分枝鎖構成のいずれかの約12〜約60個の炭素原子を含有するアルキル基を有するアルキルフェノールとエチレンオキシドとの縮合生成物であり、ここで、エチレンオキシドは、アルキルフェノール1モル当たりエチレンオキシド約1〜約5モル当量で存在する。更に好適なアルコキシル化脂肪族アルコールエーテルとしては、エチレンオキシドと、プロピレンオキシド及びエチレンジアミン生成物の反応から得られる生成物との縮合に由来するものが挙げられる。
【0041】
好適なアルコキシル化脂肪族アルコールエーテルの非限定例としては、ステアレス−2、ベヘネス−2、ベヘネス−5、ベヘネス−10、C20〜40パレス−3、C20〜40パレス−10、C30〜50パレス−3、及びC30〜50パレス−10が挙げられる。
【0042】
1つの実施形態において、脂肪族アルコールの組み合わせ、例えばセチル及びステアリルアルコールが好ましい。セチルアルコールとステアリルアルコールとの比は、約4:1〜約1:4、好ましくは約2:1〜約1:2、及び一部の実施形態では1:1であることができる。
【0043】
b.ジ脂肪族エーテル
本発明の脂肪族両親媒性物質は、次式に従うジ脂肪族エーテル化合物から選択されてよい:
【化2】

式中、Rは、上述のとおりであり、Rは、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖であり、k及びlはそれぞれ、独立して、合計(k+l)が1〜30の範囲の値を有するような数であり、Zは、エーテル(すなわち、−O−)又はアミン(すなわち、−NR−、Rは直前に記載のとおり)である。
【0044】
Zがエーテルである上式の化合物(すなわち、ジアルキルオキシエチルエーテル)は、当該技術分野において既知である、脂肪族アルコール及び脂肪族アルキルオキシエタノールのエステル化プロセスにより調製することが可能である。Zがアミン基である上式の化合物は、例えば、DE 35 04 242に記載されるエーテルアミンの調製方法に従って、C12〜C60脂肪族アルコールの硫酸半エステル塩2モルとのO−アルキル化により、トリエタノールアミンから得ることが可能である。
【0045】
好適なジ脂肪族エーテル化合物の非限定例としては、ジセチルステアリルエーテル、ジセチルステアリルジオキシエチルエーテル、及びN,N−ビス(2−セチルステアリルオキシエチル)アミノエタノールが挙げられる。
【0046】
c.脂肪酸アミド/脂肪族アルカノールアミド/脂肪族アルコキシル化アミド
本発明の脂肪族両親媒性物質はまた、次式に従う脂肪酸アミド化合物から選択することが可能である:
【化3】

式中、Rは、上述のとおりであり、R及びRはそれぞれ独立して、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖であり、k及びlはそれぞれ独立して、合計(k+l)が0〜10の範囲の値を有するような数であり、X及びYはそれぞれ独立して、水素、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖、モルホリン、あるいはアミド、エステル、又はエーテル結合により結合するC〜C50炭素鎖から選択される。
【0047】
好適な脂肪酸アミド、脂肪族アルカノールアミド、又は脂肪族アルコキシル化アミドの非限定例としては、コカミド、コカミドメチルMEA、ココイルグルタミン酸、エルカミド、ラウラミド、オレアミド、パルミトアミド、ステアルアミド、ステアリルエルカミド、ベヘンアミドDEA、ベヘンアミドMEA、コカミドDEA、コカミドMEA、コカミドMIPA、ヒドロキシエチルステアルアミド−MIPA、ヒドロキシプロピルビスイソステアラミドMEA、ヒドロキシプロピルビスラウラミドMEA、ヒドロキシステアラアミドMEA、イソステアラミドDEA、イソステアラミドMEA、イソステアラミドMIPA、ラウラミドDEA、ラウラミドMEA、ラウラミドMIPA、ミリスタミドDEA、ミリスタミドMEA、ミリスタミドMIPA、パルムアミドDEA、パルムアミドMEA、パルムアミドMIPA、パルミトアミドDEA、パルミトアミドMEA、PEG−20コカミドMEA、ステアルアミドAMP、ステアルアミドDEA、ステアルアミドDEA−ジステアレート、ステアルアミドDIBA−ステアレート、ステアルアミドMEA、ステアルアミドMEA−ステアレート、ステアルアミドMIPA、PEG−2コカミド、PEG−3コカミド、PEG−4コカミド、PEG−5コカミド、PEG−6コカミド、PEG−7コカミド、PEG−3ラウラミド、PEG−5ラウラミド、PEG−3オレアミド、PEG−9オレアミド、PEG−4ステアルアミド、PEG−10ステアルアミド、PPG−2コカミド、PPG−2ヒドロキシエチルコカミド、PPG−2ヒドロキシエチルココ/イソステアラミド、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、及びセラミド5が挙げられる。
【0048】
d.脂肪族カルバメート
本発明の脂肪族両親媒性物質は、次式に従う脂肪族カルバメート化合物から選択することが可能である:
【化4】

式中、Rは上述のとおりであり、R及びRはそれぞれ独立して、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖であり、K及びlはそれぞれ独立して、合計(k+l)が0〜10の範囲の数を有するような数であり、X及びYはそれぞれ独立して、水素、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖、モルホリン、あるいはアミド、エステル、又はエーテル結合により結合するC〜C50炭素鎖から選択される。
【0049】
好適な脂肪族カルバメートの非限定例としては、セチルカルバメート、ステアリルカルバメート、PEG−2ステアリルカルバメート、PEG−4ステアリルカルバメート、及びベヘニルカルバメートが挙げられる。
【0050】
e.脂肪族アルキルアミドアルキルアミン
本発明の脂肪族両親媒性物質はまた、次式に従う脂肪族アルキルアミドアルキルアミン化合物から選択することが可能である:
【化5】

式中、Rは、上述のとおりであり、R及びRはそれぞれ独立して、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖であり、K及びlはそれぞれ独立して、合計(k+l)が0〜10の範囲の値を有するような数であり、X及びYはそれぞれ独立して、水素、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖、モルホリン、あるいはアミド、エステル、又はエーテル結合により結合するC〜C50炭素鎖から選択され、nは約1〜約4の範囲の数である。
【0051】
好適な脂肪族アルキルアミドアルキルアミン化合物の非限定例としては、ステアラミドエチルジエタノールアミン、ステアルアミドプロピルモルホリン、ステアルアミドプロピルジメチルアミンステアレート、ステアルアミドプロピルジメチルアミン、ステアラミドエチルジエチルアミン、ステアラミドエチルジエタノールアミン、イソステアラミドモルホリンステアレートベヘンアミドプロピルジメチルアミン、ベヘンアミドプロピルジエチルアミン、ベヘンアミドエチルジエチルアミン、コカミドプロピルジメチルアミンベヘンアミドエチルジメチルアミン、アラキドアミドプロピルジメチルアミン、アラキドアミドプロピルジエチルアミン(arachidamido-propyidiethylamine)、アラキドアミドエチルジエチルアミン(et arachidamidoethyidiethylamine)、アラキドアミドエチルジメチルアミン(arachidamidoethyidimethylamine)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
f.脂肪族アミン/脂肪族アルカノールアミン/脂肪族アルコキシル化アミン
更に本発明の脂肪族両親媒性物質は、次式に従う脂肪族アミン化合物から選択することが可能である:
【化6】

式中、Rは上述のとおりであり、R’及びR’’は独立して、水素、又は分枝状若しくはヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖である。
【0053】
更に、本発明の脂肪族両親媒性物質は、次式のいずれか1つに従う脂肪族アルコキシル化アミン化合物から選択することが可能である:
【化7】

式中、Rは上述のとおりであり、R及びRはそれぞれ独立して、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖であり、k及びlはそれぞれ独立して、合計(k+l)が0〜10の範囲の値を有するような数であり、X及びYはそれぞれ独立して、水素、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖、モルホリン、あるいはアミド、エステル、又はエーテル結合により結合するC〜C50炭素鎖であり、nは約1〜約4の範囲の数であり、Zはエーテル(すなわち、−O−)又はアミン(すなわち、−NH−)である。
【0054】
第一級、第二級及び第三級脂肪族アミンが有用である。好適な脂肪族アルコキシル化アミン化合物としては、エチレンオキシドと12〜60個の炭素原子を有する直鎖状脂肪族アルキルアミンとの付加生成物が挙げられ、これらの全ては、既知の工業プロセスによって得られる付加物であり、市販されている。
【0055】
好適な脂肪族アミン及び脂肪族アルコキシル化アミン化合物の非限定例としては、ジエチルラウラミン、ジコカミン、ジメチルコカミンアミンセタミン、ステアラミン、オレアミン、ベヘナミン、ジメチルベヘナミンアミン、ジエチルベヘナミン、ジベヘニルアミンN−ラウリルジエタノールアミン、TEA−ジリシノレエート(diricinoleate)、TEA−ラウリルエーテル、ジエチルアミノエチルPEG−5ココエート、ジエチルアミノエチルPEG−5ラウレート、ヒドロキシエチルイソステアリルオキシイソプロパノールアミン、PEG−2コカミン、PEG−5コカミン、PEG−10コカミン、PEG−5イソデシルオキシプロピルアミン、PEG−2ラウラミン、PEG−2オレアミン、PEG−5オレアミン、PEG−10オレアミン、PEG−2ステアラミン、PEG−5ステアラミン、PEG−10ステアラミン、PPG−2コカミン、PPG−2水素添加タローアミン、PPG−2タローアミン、及びPPG3タローアミノプロピルアミンが挙げられる。
【0056】
g.脂肪族アミンオキシド
本発明の脂肪族両親媒性物質はまた、次式に従う脂肪族アミンオキシド化合物から選択することが可能である:
【化8】

式中、Rは上述のとおりであり、R及びRはそれぞれ独立して、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖であり、K及びlはそれぞれ独立して、合計(k+l)が0〜10の範囲の値を有するような数であり、X及びYはそれぞれ独立して、水素、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖、モルホリン、あるいはアミド、エステル、又はエーテル結合により結合するC〜C50炭素鎖であり、Zは、エーテル(すなわち、−O−)又はアミド(すなわち、−C(O)−NH−)結合であり、nは約1〜約4の範囲の数である。既知の慣例を踏まえて、上式の矢印は、半極性結合を表す。
【0057】
好適なアミンオキシド化合物の非限定例としては、ジメチル−ドデシルアミンオキシド、オレイルジ(2−ヒドロキシエチル)アミンオキシド、ジメチルテトラデシルアミンオキシド、ジ(2−ヒドロキシエチル)−テトラデシルアミンオキシド、ジメチルヘキサデシルアミンオキシド、ベヘンアミンオキシド、コカミンオキシド、デシルテトラデシルアミンオキシド、ジヒドロキシエチルC12〜15アルコキシプロピルアミンオキシド、ジヒドロキシエチルコカミンオキシド、ジヒドロキシエチルラウラミンオキシド、ジヒドロキシエチルステアラミンオキシド、ジヒドロキシエチルタローアミンオキシド、水素添加パーム核アミンオキシド、水素添加タローアミンオキシド、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルC12〜15アルコキシプロピルアミンオキシド、ラウラミンオキシド、ミリスタミンオキシド、ミリスチル/セチルアミンオキシド、オレアミドプロピルアミンオキシド、オレアミンオキシド、パルミタミンオキシド、PEG−3ラウラミンオキシド、カリウムトリスホスホノメチルアミンオキシド、ステアラミンオキシド、及びタローアミンオキシドが挙げられる。
【0058】
h.脂肪酸/アルコキシル化脂肪酸
本発明の脂肪族両親媒性物質はまた、次式に従う脂肪酸又はアルコキシル化脂肪酸化合物から選択することが可能である:
【化9】

式中、Rは上述のとおりであり、Rは分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖であり、kは、約0〜約5の範囲の数である。
【0059】
好適な脂肪酸及びアルコキシル化脂肪酸の非限定例としては、ベヘン酸、C10〜40ヒドロキシアルキル酸、C32〜36イソアルキル酸ココヤシ酸、エルカ酸、ヒドロキシステアリン酸、ラウリン酸、リノール酸、ミリスチン酸、オレイン酸、パルミチン酸、PEG−8ベヘネート、PEG−5ココエート、PEG−10ココエート、PEG−2ラウレート、PEG−4ラウレート、PEG−6ラウレート、PEG−8ラウレート、PEG−9ラウレート、PEG−10ラウレート、PEG−7オレエート、PEG−2ステアレート、PEG−3ステアレート、PEG−4ステアレート、PEG−5ステアレート、PEG−6ステアレート、PEG−7ステアレート、PEG−8ステアレート、PEG−9ステアレート、PEG−10ステアレート、ポリグリセリル−2−PEG−4ステアレート、PPG−2イソステアレート、及びPPG−9ラウレートが挙げられる。
【0060】
i.脂肪酸エステル
本発明の脂肪族両親媒性物質は、次式に従う脂肪酸エステル化合物から選択することが可能である:
【化10】

式中、Rは上述のとおりであり、Rは、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖であり、kは、約1〜約5の範囲の数であり、Rは、C〜C40炭素鎖又はアルキルカルボニル(すなわち、
【化11】

式中、RはC〜C40炭素鎖)である。
【0061】
これらの好適な脂肪酸エステルとしては、脂肪酸又はアルコールに由来するヒドロカルビル鎖とのエステル(例えばモノエステル、多価アルコールエステル、並びにジ−及びトリ−カルボン酸エステル)が挙げられる。この脂肪酸エステルのヒドロカルビルラジカルは、アミド及びアルコキシ部分(例えば、エトキシ又はエーテル結合等)のような他の相溶性のある官能基を含有するか、又はこのヒドロカルビルラジカルをこうした官能基へ共有結合させてよい。
【0062】
好適な脂肪酸エステル化合物の非限定例としては、イソステアリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、オレイン酸イソデシル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸デシル、イソステアリン酸イソプロピル、アジピン酸ジヘキシルデシル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ステアリン酸オレイル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オレイル、酢酸ラウリル、プロピオン酸セチル、及びアジピン酸オレイルが挙げられる。
【0063】
また本発明の脂肪族両親媒性物質は、次式に従う他の脂肪酸エステル化合物から選択することが可能である:
【化12】

式中、R’、R’’、及びR’’’はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、あるいは分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖から選択され、k’、k’’、及びk’’’はそれぞれ独立して、合計(k’+k’’+k’’’)が0〜15の範囲の値を有するような数であり、R’、R’’、及びR’’’はそれぞれ独立して、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖から選択され、R’10、R’’10、R’’’10はそれぞれ独立して、水素又はRから選択され、ここでRは、R’10、R’’10、及びR’’’10の少なくとも1つがR1基であるという条件で、上述のとおりである。
【0064】
更に他の好適な脂肪酸エステルは、C〜Cジカルボン酸のエステル(例えば、コハク酸、グルタル酸、及びアジピン酸のC〜C22、好ましくはC〜Cエステル)のような、カルボン酸のジ及びトリアルキル並びにアルケニルエステルである。カルボン酸のジ−及びトリ−アルキル並びにアルケニルエステルの具体的な非限定例としては、ステアリン酸イソセチルステアリル(stearyol)、クエン酸ステアリル、クエン酸ジステアリル、及びクエン酸トリステアリルが挙げられる。
【0065】
更に本発明の脂肪族両親媒性物質は、次式に従う他の脂肪酸エステル化合物から選択することが可能である:
【化13】

式中、R’、R’’、及びR’’’はそれぞれ独立して、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖から選択され、R’、R’’、及びR’’’はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ、あるいは分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖から選択され、k’、k’’、及びk’’’はそれぞれ独立して、合計(k’+k’’+k’’’)が0〜15の範囲の値を有するような数であり、R’、R’’、及びR’’’はそれぞれ独立して、R’、R’’、及びR’’’の少なくとも1つが
【化14】

基であるという条件で、水素又はアルキルカルボニル(すなわち、
【化15】

式中、Rは上述のとおりである)から選択される。
【0066】
他の好適な脂肪酸エステルは、多価アルコールエステルとして既知のものである。こうした多価アルコールエステルとしては、エチレングリコールモノ及びジ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノ及びジ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールモノ及びジ脂肪酸エステル、プロピレングリコールモノ及びジ脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコールモノオレエート、ポリプロピレングリコール2000モノステアレート、エトキシル化プロピレングリコールモノステアレート、グリセリルモノ及びジ脂肪酸エステル、ポリグリセロールポリ脂肪酸エステル、エトキシル化モノステアリン酸グリセリル、1,3−ブチレングリコールモノステアレート、1,3−ブチレングリコールジステアレート、ポリオキシエチレンポリオール脂肪酸エステルのようなアルキレングリコールエステルが挙げられる。
【0067】
本発明の組成物に用いるのに好適な更に他の脂肪酸エステルは、グリセリドであり、モノ−、ジ−、及びトリ−グリセリド、好ましくはモノ−及びジグリセリド、より好ましくはモノグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の組成物に使用される場合、グリセリドは、グリセロール及びC12〜C22のカルボン酸のような長鎖カルボン酸のモノ−、ジ−及びトリ−エステルであることが好ましい。これらのタイプの種類の物質は、ヒマシ油、ベニバナ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、タラ肝油、アーモンド油、アボカド油、パーム油、胡麻油、ラノリン及び大豆油のような植物及び動物の油脂から得ることができる。合成油としては、トリオレイン及びトリステアリングリセリルジラウレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
j.脂肪族リン化合物
本発明の脂肪族両親媒性物質は、次式に従う脂肪族リン化合物から選択することが可能である:
【化16】

式中、Rは上述のとおりであり、Rは、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖であり、kは、約0〜約5の範囲の数であり、Rは、水素、あるいは分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖である。既知の慣例を踏まえて、上式の矢印は、半極性結合を表す。
【0069】
好適な脂肪族リン化合物の非限定例としては、ドデシルジメチルホスフィンオキシド、テトラデシルジメチルホスフィンオキシド、テトラデシルメチルエチルホスフィンオキシド、3,6,9,−トリオキサオクタデシルジメチルホスフィンオキシド、セチルジメチルホスフィンオキシド、3−ドデコキシ−2−ヒドロキシプロピルジ(2−ヒドロキシエチル)ホスフィンオキシド、ステアリルジメチルホスフィンオキシド、セチルエチルプロピルホスフィンオキシド、オレイルジエチルホスフィンオキシド、ドデシルジエチルホスフィンオキシド、テトラデシルジエチルホスフィンオキシド、ドデシルジプロピルホスフィンオキシド、ドデシルジ(ヒドロキシメチル)ホスフィンオキシド、ドデシルジ(2−ヒドロキシエチル)ホスフィンオキシド、テトラデシルメチル−2−ヒドロキシプロピルホスフィンオキシド、オレイルジメチルホスフィンオキシド、及び2−ヒドロキシドデシルジメチルホスフィンオキシドが挙げられる。
【0070】
k.脂肪族ソルビタン誘導体
本発明の脂肪族両親媒性物質はまた、次式に従う脂肪族ソルビタン誘導体化合物から選択することが可能である:
【化17】

式中、R’、R’’、R’’’2、及びR’’’’はそれぞれ独立して、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖であり、R’、R’’、R’’’、及びR’’’’はそれぞれ独立して、R’、R’’、R’’’、及びR’’’’の少なくとも1つが
【化18】

基であるという条件で、水素、又はアルキルカルボニル(すなわち、
【化19】

式中、Rは上述のとおりである)であり、k’、k’’、k’’’、及びk’’’’はそれぞれ独立して、合計(k’+k’’+k’’’+k’’’’)の値が0〜20の範囲であるような数である。
【0071】
好適な脂肪族ソルビタン誘導体の非限定例としては、PEG−20ソルビタンココエート、PEG−2ソルビタンイソステアレート、PEG−5ソルビタンイソステアレート、PEG−20ソルビタンイソステアレート、PEG−10ソルビタンラウレート、PEG−3ソルビタンオレエート、PEG−6ソルビタンオレエート、PEG−20ソルビタンオレエート、PEG−3ソルビタンステアレート、PEG−4ソルビタンステアレート、PEG−6ソルビタンステアレート、PEG−4ソルビタントリイソステアレート、PEG−20ソルビタントリイソステアレート、PEG−2ソルビタントリオレエート、PEG−3ソルビタントリステアレート、ポリグリセリル−2ソルビタンテトラエチルヘキサノエート、ソルビタンカプリレート、ソルビタンココエート、ソルビタンジイソステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンイソステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンオレエート、ソルビタンオリベート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンセスキイソステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタンステアレート、ソルビタントリイソステアレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート、及びソルビタンウンデシレネートが挙げられる。
【0072】
l.スクロースポリエステル
本発明の脂肪族両親媒性物質は、次式に従うスクロースポリエステル化合物から選択することが可能である:
【化20】

式中、R’、R’’9、R’’’、R’’’’、R’’’’’、R’’’’’’、R’’’’’’’、及びR’’’’’’’’はそれぞれ、R’、R’’9、R’’’、R’’’’、R’’’’’、R’’’’’’、R’’’’’’’、及びR’’’’’’’’の少なくとも1つが
【化21】

基であるという条件で、水素又はアルキルカルボニル(すなわち、
【化22】

式中、Rは上述のとおりである)である。
【0073】
好適なスクロースポリエステル化合物の非限定例としては、スクロースココエート、スクロースジラウレート、スクロースジステアレート、スクロースヘキサエルケート、スクロースヘキサオレエート/ヘキサパルミテート/ヘキサステアレート、スクロースヘキサパルミテート、スクロースラウレート、スクロースモルティエレート(Mortierellate)、スクロースミリステート、スクロースオクタアセテート、スクロースオレエート、スクロースパルミテート、スクロースペンタエルケート、スクロースポリベヘネート、ポリ綿実脂肪酸スクロース、スクロースポリラウレート、スクロースポリリノレート、スクロースポリオレエート、スクロースポリパルメート、ポリ大豆油脂肪酸スクロース、スクロースポリステアレート、スクロースリシノレエート、スクロースステアレート、スクローステトライソステアレート、スクローステトラステアレートトリアセテート、スクローストリベヘネート、及びスクローストリステアレートが挙げられる。
【0074】
m.アルキルスルホキシド
更に本発明の脂肪族両親媒性物質は、次式に従うアルキルスルホキシド化合物から選択することが可能である:
【化23】

式中、Rは上述のとおりであり、Rは、分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖であり、kは、約0〜約10の範囲の数であり、X及びYはそれぞれ独立して、水素、あるいは分枝状又はヒドロキシ置換であり得るC〜C炭素鎖から選択される。
【0075】
好適なアルキルスルホキシド化合物の非限定例としては、オクタデシルメチルスルホキシド、2−ケトトリデシルメチルスルホキシド、3,6,9−トリオキサオクタデシル2−ヒドロキシエチルスルホキシド、ドデシルメチルスルホキシド、オレイル3−ヒドロキシプロピルスルホキシド、テトラデシルメチルスルホキシド、3−メトキシトリデシルメチルスルホキシド、3−ヒドロキシトリデシルメチルスルホキシド、及び3−ヒドロキシ−4−ドデコシキブチルメチルスルホキシドが挙げられる。
【0076】
2.界面活性剤
本発明のゲル網状組織構成成分はまた、二次界面活性剤も含む。本明細書で使用するとき、「界面活性剤」とは、脂肪族両親媒性物質及び口腔キャリアと組み合わせて本発明のゲル網状組織を形成する1つ以上の界面活性剤を指す。二次界面活性剤は、通常、水溶性又は溶媒若しくは口腔キャリアに混和性である。二次界面活性剤は、親水性−親油性バランス(「HLB」)が6以上、通常は約8〜約30である化合物として特徴付けることができる。本明細書で使用するとき、HLBは、グリフィン(Griffin)、J.Soc.Cosm.Chem.、第5巻、249(1954)に従う標準HLBである。好ましくは、界面活性剤は広いpH域全体にわたって適度に安定であり、フォームを形成する。
【0077】
本発明の口腔用組成物は、ゲル網状組織相の一部として、口腔用組成物の約0.01重量%〜約15重量%、好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.3重量%〜約5重量%の量で二次界面活性剤を含む。一部の実施形態において、界面活性剤の希釈水溶液を利用する。1つの実施形態において、界面活性剤の量は、口腔用組成物に所望されるフォーム形成レベル及び界面活性剤によって生じる刺激に基づいて選択される。界面活性剤の濃度が一旦選択されたら、次いでゲル網状組織を形成する脂肪族両親媒性物質の濃度が選択される。例えば、低濃度の溶媒を有する口腔用組成物において、多量の脂肪族両親媒性物質が必要となる場合もあるが、多量の溶媒又は水を有する口腔用組成物においては低濃度の脂肪族両親媒性物質が選択されてもよい。
【0078】
好適な二次界面活性剤としては、アニオン性、双極性、両性、カチオン性、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。1つの実施形態において、アニオン性界面活性剤が好ましい。二次界面活性剤は、1を超える種類の界面活性剤、例えばアニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤の組み合わせであってもよい。
【0079】
本明細書で有用なアニオン性界面活性剤としては、アルキルラジカルに8個〜20個の炭素原子を有するアルキルサルフェートの水溶性塩(例えば、アルキル硫酸ナトリウム)、及び8個〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩が挙げられる。本発明の二次界面活性剤として使用するのに好ましいアニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ココイルメチルタウリン酸ナトリウム、モノグリセリド硫酸ナトリウム、セテアリル(cetaryl)硫酸ナトリウム、ココイルグリシン酸カリウム、ラウリルリン酸ナトリウム(socium)、ラウリル乳酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、 ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウリルイセチオン酸ナトリウム、ラウレスカルボン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。1つの実施形態において、ラウリル硫酸ナトリウムが好ましい二次界面活性剤である。多数の好適なアニオン性界面活性剤が、米国特許第3,959,458号(アグリコーラ(Agricola)ら、1976年5月25日発行)に開示されている。
【0080】
本明細書において有用な非イオン性界面活性剤は、(性質上親水性の)アルキレンオキシド基と、本質的に脂肪族又はアルキル芳香族であることが可能な有機疎水性化合物との縮合によって製造される化合物として広く定義され得る。適した非イオン性界面活性剤の非限定例には、低分子量ポロキサマー(商標名プルロニック(Pluronic)として販売)、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(商標名トゥイーンズ(Tweens)として販売)、ポリオキシル40硬化ヒマシ油、脂肪族アルコールエトキシレート、アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合物、プロピレンオキシドとエチレンジアミンとの反応生成物とエチレンオキシドの縮合から得られる生成物、脂肪族アルコールのエチレンオキシド縮合物、長鎖三級アミンオキシド、長鎖三級ホスフィンオキシド(long chair tertiary phosphaine oxides)、ラウリルグルコシド(商標名プランタレン(Plantaren)1200UPとして販売)、及び長鎖ジアルキルスルホキシドが挙げられる。7以上のHLBを有する好適な非イオン性界面活性剤としては、スクロースラウレート、スクロースココエート、スクロースステアレート;ステアレス20、21、又は100、及びPEG20モノステアリン酸ソルビタン(トゥイーン(Tween)60として市販)が挙げられる。
【0081】
本発明において二次界面活性剤として好適な両性界面活性剤は、脂肪族第二級及び第三級アミンの誘導体として広く記載されることができ、その際、脂肪族ラジカルは直鎖又は分枝状であることができ、また脂肪族置換基の1つは約8〜約18個の炭素原子を含有し、1つはアニオン性水溶性基、例えばカルボキシレート、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、又はホスホネートを含有する。他の好適な両性界面活性剤は、ベタイン、例えばコカミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルベタイン(商標名マカット(Macat)LBとして販売)、セチルジメチルベタイン、及びココアンホジアセテートである。追加の両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤は、米国特許第4,051,234号(ギースキー(Gieske)ら、1977年9月27日発行)に見出すことができる。好適なカチオン性界面活性剤の例としては、塩化セチルピリジニウム、コアミドプロピルPG塩化ジモニウムホスフェート(リン脂質CDM)、ミリスチルアミドプロピルPG塩化ジモニウムホスフェート(リン脂質PTM)、ステアルアミドプロピルPG塩化ジモニウムホスフェート(リン脂質SV)、塩化ステアピリウム(steapyrium)(カテモール(Catemol)WPC)、及び他の好適なカチオン性物質が挙げられる。
【0082】
上で指定した種類の1を超える界面活性剤を、本発明の二次界面活性剤として使用してよい。
【0083】
別の二次界面活性剤も口腔用組成物の口腔キャリア相に添加されてもよい。この二次界面活性剤は、ゲル網状組織構造の形成に関与しないので、通常、ゲル網状組織の一部ではない。口腔キャリア相における界面活性剤は、向上したフォーム形成特性又は異なるフォーム形成特性を提供し得る。口腔キャリア相に添加される界面活性剤はまた、粘度を変更し、現れる風味を変化させることができる。口腔キャリア相に添加される1以上の界面活性剤は、後添加界面活性剤と呼ぶことができる。界面活性剤がゲル網状組織の相転移温度を超えて添加される場合、界面活性剤は、通常ゲル網状組織相中にある。組成物の温度が相転移温度未満のときに界面活性剤が添加される場合、界面活性剤は、通常口腔キャリア相にあり、後添加界面活性剤であると考えられる。
【0084】
3.溶媒
本発明のゲル網状組織構成成分はまた、溶媒、例えば水又はその他の好適な溶媒を含む。溶媒及び二次界面活性剤は、共に脂肪族両親媒性物質の膨潤に寄与する。言い換えると、これは、ゲル網状組織の形成及び安定性を導く。ゲル網状組織の形成に加えて、溶媒は、空気に曝される際に歯磨剤組成物が硬化するのを防ぎ、口内に湿った感触を与える。本明細書にて使用するとき、溶媒とは、本発明のゲル網状組織の形成において、水の代わりに又は水と組み合わせて使用することができる好適な溶媒を指す。
【0085】
本発明に好適な溶媒としては、水、食用多価アルコール、例えばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、エリスリトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、これらの組み合わせが挙げられる。ソルビトール、グリセリン、水、及びこれらの組み合わせが好ましい溶媒である。
【0086】
本発明の口腔用組成物は、本発明に従って脂肪族両親媒性物質及び二次界面活性剤と組み合わせるときに、ゲル網状組織を得るのに好適な量で、ゲル網状組織相の一部として、溶媒を含む。好ましい実施形態では、本発明の口腔用組成物は、ゲル網状組織相の一部として、口腔用組成物の少なくとも約0.05重量%の溶媒を含む。溶媒は、口腔用組成物中に、約0.1%〜約99%、約0.5%〜約95%、及び約1%〜約90%の量で存在してよい。溶媒は、ゲル網状組織相中に存在し、また口腔キャリア相に添加されてもよく、又は存在してもよい。
【0087】
B.口腔キャリア相
本発明の口腔用組成物は、口腔キャリア相を含む。組成物は、組成物の約5重量%〜約99重量%、好ましくは約10重量%〜約90重量%の濃度で口腔キャリアを含む。この相に含有される口腔キャリアは、ゲル網状組織にはない口腔用組成物におけるあらゆる物質として広く記載される。口腔キャリア相はまた、バルク相又は溶媒相とも呼ばれることがある。口腔キャリアは、研磨剤又は固体であるその他の不溶性物質のような物質を含むように広く定義される(特定の分析によって、特定相にないものとして記載されてもよい)。口腔キャリアとしては、美容用又は治療用活性物質及び非活性物質を含む。
【0088】
口腔用組成物の調製に好適な口腔キャリアは周知である。それらの選択は、味、コスト、安定性、所望の効果等のような二次的考察によって決定される。
【0089】
1.美容用及び治療用活性物質
歯磨剤組成物はまた、適切な美容用及び/又は治療用活性物質を含むことができる。こうした活性物質としては、口腔に使用するのに一般に安全であるとみなされ、口腔の全体的な外観及び/又は健康に変化を与える任意の物質が含まれ、それらとしては、抗結石剤、フッ化物イオン源、スズイオン源、ホワイトニング剤、抗菌剤、抗歯垢剤、抗炎症剤、栄養素、酸化防止剤、抗ウイルス薬、鎮痛剤及び麻酔剤、H−2拮抗物質、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。存在する場合、口腔用組成物における美容用及び/又は治療用活性物質の濃度は、1つの実施形態では口腔用組成物の約0.001重量%〜約90重量%、他の実施形態では約0.01重量%〜約50重量%、及び他の実施形態では約0.1重量%〜約30重量%である。
【0090】
以下は、本発明で使用されてもよい活性物質の非限定的な列挙である。
【0091】
a)フッ化物イオン
本発明は、安全かつ有効な量のフッ化物化合物(例えば水溶性のもの)を含む。フッ化物イオンは、25℃で組成物内にフッ化物イオン濃度を付与するのに十分な量で存在し、及び/又は、抗カリエス性の効果性を提供するために、1つの実施形態においては約0.0025重量%〜約5.0重量%の濃度で使用され得、他の実施形態においては、約0.005重量%〜約2.0重量%の濃度で使用され得る。広範なフッ化物イオン生成物質を、本組成物中の可溶性フッ化物の供給源として使用することができる。好適なフッ化物イオン生成物質の例は、米国特許第3,535,421号及び第3,678,154号に開示されている。代表的なフッ化物イオン源としては、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、及び他の多くのものが挙げられる。1つの実施形態において、歯磨剤組成物は、フッ化第一スズ又はフッ化ナトリウム、並びにこれらの混合物を含む。
【0092】
b)抗結石剤
本発明の歯磨剤組成物はまた、抗結石剤を含んでもよく、これは、1つの実施形態では、歯磨剤組成物の約0.05重量%〜約50重量%で存在してもよく、別の実施形態では約0.05重量%〜約25重量%であり、別の実施形態では、約0.1重量%〜約15重量%である。抗結石剤は、ポリホスフェート(ピロホスフェートを含む)及びそれらの塩、ポリアミノプロパンスルホン酸(AMPS)及びその塩、ポリオレフィンスルホネート及びそれらの塩、ポリビニルホスフェート及びそれらの塩、ポリオレフィンホスフェート及びそれらの塩、ジホスホネート及びそれらの塩、ホスホノアルカンカルボン酸及びその塩、ポリホスホネート及びそれらの塩、ポリビニルホスホネート及びそれらの塩、ポリオレフィンホスホネート及びそれらの塩、ポリペプチド、並びにこれらの混合物からなる群から選択されてよい。1つの実施形態において、塩はアルカリ金属塩である。ポリホスフェートは、一般に、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩及びこれらの混合物のような、全体的に又は部分的に中和された水溶性アルカリ金属塩として使用される。無機ポリホスフェート塩には、アルカリ金属(例えば、ナトリウム)トリポリホスフェート、テトラポリホスフェート、二酸ジアルキル金属(例えば、二ナトリウム)、一酸トリアルキル金属(例えば、三ナトリウム)、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウム、及びアルカリ金属(例えば、ナトリウム)ヘキサメタホスフェート、並びにこれらの混合物が挙げられる。テトラポリホスフェートよりも大きいポリホスフェートは、通常は非昌質のガラス状物質として生じる。1つの実施形態において、ポリホスフェートは、ソダフォス(Sodaphos)(n≒6)、ヘキサフォス(Hexaphos)(n≒13)、及びグラスH(Glass H)(n≒21、ヘキサメタリン酸ナトリウム)として商業的に既知の、FMC社(FMC Corporation)製のもの、並びにこれらの混合物である。本発明に有用なピロホスフェート塩には、アルカリ金属ピロホスフェート、ジ−、トリ−及びモノ−カリウム又はナトリウムピロホスフェート、ジアルカリ金属ピロホスフェート塩、テトラアルカリ金属ピロホスフェート塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ピロホスフェート塩は、ピロリン酸三ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム(Na)、ピロリン酸二カリウム、ピロリン酸四ナトリウム(Na)、ピロリン酸四カリウム(K)、及びこれらの混合物からなる群より選択される。ポリオレフィンスルホネートには、オレフィン基が2個以上の炭素原子を含有するもの及びそれらの塩が挙げられる。ポリオレフィンホスホネートには、オレフィン基が2個以上の炭素原子を含有するものが挙げられる。ポリビニルホスホネートには、ポリビニルホスホン酸が挙げられる。ジホスホネート及びそれらの塩には、アゾシクロアルカン−2,2−ジホスホン酸及びこれらの塩、アゾシクロアルカン−2,2−ジホスホン酸のイオン及びこれらの塩、アザシクロヘキサン−2,2−ジホスホン酸、アザシクロペンタン−2,2−ジホスホン酸、N−メチル−アザシクロペンタン−2,3−ジホスホン酸、EHDP(エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸)、AHP(アザシクロヘプタン−2,2−ジホスホン酸)、エタン−1−アミノ−1,1−ジホスホネート、ジクロロメタン−ジホスホネートなどが挙げられる。ホスホノアルカンカルボン酸又はそのアルカリ金属塩には、それぞれ酸又はアルカリ金属塩として、PPTA(ホスホノプロパントリカルボン酸)、PBTA(ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸)が挙げられる。ポリオレフィンホスフェートには、オレフィン基が2個以上の炭素原子を含有するものが挙げられる。ポリペプチドには、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸が挙げられる。
【0093】
c)スズイオン
本発明の歯磨剤組成物は、スズイオン源を含むことができる。スズイオンは、フッ化第一スズ及び/又は他のスズ塩から提供されてもよい。フッ化第一スズは、歯肉炎、歯垢、敏感度の低減、及び改善された息の利益に役立つことが見出されている。歯磨剤組成物において提供されるスズイオンは、歯磨剤組成物を使用した対象物に効能を提供する。効能は、歯肉炎の低減以外の利益を含むことができるが、効能は、その場の歯垢代謝における顕著な低減量として定義される。このような効能を提供する製剤は一般に、全歯磨剤組成物の約3,000ppm〜約15,000ppmスズイオン範囲のフッ化第一スズ及び/又は他のスズ塩によって提供されるスズ濃度を含む。スズイオンは、約4,000ppm〜約12,000ppm、1つの実施形態では、約5,000ppm〜約10,000ppmの量で存在する。他のスズ塩には、酢酸第一スズ、グルコン酸第一スズ、シュウ酸第一スズ、マロン酸第一スズ、クエン酸第一スズ、第一スズエチレングリコキシド、ギ酸第一スズ、硫酸第一スズ、乳酸第一スズ、酒石酸第一スズなどのような有機カルボン酸第一スズが挙げられる。他のスズイオン供給源には、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、及び塩化第一スズ二水和物のようなスズハロゲン化物が挙げられる。1つの実施形態において、スズイオン供給源はフッ化第一スズであり、別の実施形態では、塩化第一スズ二水和物(stannous chloride dihydrate)である。合わせたスズ塩は、歯磨剤組成物の約0.001重量%〜約11重量%の量で存在してよい。スズ塩は、1つの実施形態では、歯磨剤組成物の約0.01重量%〜約7重量%の量、他の実施形態では、約0.1重量%〜約5重量%、他の実施形態では、約1.5重量%〜約3重量%で存在してよい。
【0094】
d)ホワイトニング剤
ホワイトニング剤は、本歯磨剤組成物の活性物質として含まれ得る。ホワイトニングに適した活性物質は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属過酸化物、亜塩素酸金属、単水和物及び四水和物を含む過ホウ酸塩、過リン酸塩、過炭酸塩、ペルオキシ酸及び過硫酸塩、例えばアンモニウム、カリウム、ナトリウム及びリチウム過硫酸塩、並びにそれらの組合わせからなる群から選択される。好適な過酸化物化合物には、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化カルシウム、過酸化カルバミド、過酸化マグネシウム、過酸化亜鉛、過酸化ストロンチウム、及びこれらの混合物が挙げられる。1つの実施形態において、過酸化物化合物は過酸化カルバミドである。好適な亜塩素酸金属塩としては、亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸バリウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸リチウム、亜塩素酸ナトリウム、及び亜塩素酸カリウムが挙げられる。付加的なホワイトニング活性物質は、次亜塩素酸塩及び二酸化塩素であってもよい。1つの実施形態において、亜塩素酸塩は亜塩素酸ナトリウムである。別の実施形態において、過炭酸塩は過炭酸ナトリウムである。1つの実施形態では、過硫酸塩はオキソンである。これらの物質の濃度は、分子が、染みを漂白するために提供できる、利用可能な酸素又は塩素それぞれによって左右される。1つの実施形態において、ホワイトニング剤は、歯磨剤組成物の約0.01重量%〜約40重量%の濃度で、他の実施形態では約0.1重量%〜約20重量%、他の実施形態では約0.5重量%〜約10重量%、更に他の実施形態では約4重量%〜約7重量%で存在してもよい。ゲル網状組織組成物は、ホワイトニング剤又は過酸化物を含有してもよく、又は口腔キャリア相に含有されてもよい。ゲル網状組織は、過酸化物の安定化に役立ち得る。
【0095】
e)抗菌剤
本発明の歯磨剤組成物は、抗菌剤を含んでもよい。そのような試薬には、慣用的にトリクロサンと呼ばれる、5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)−フェノール;8−ヒドロキシキノリン及びその塩;塩化銅(II)、硫酸銅(II)、酢酸銅(II)、フッ化銅(II)及び水酸化銅(II)が挙げられるが、これらに限定されない銅II化合物;フタル酸一カリウムマグネシウムを含む米国特許第4,994,262号で開示されているものが挙げられるが、これらに限定されないフタル酸及びその塩;クロルヘキシジン;アレキシジン;ヘキセチジン;サンギナリン;塩化ベンザルコニウム;サリチルアニリド;臭化ドミフェン;塩化セチルピリジニウム(CPC);塩化テトラデシルピリジニウム(TPC);N−テトラデシル−4−エチルピリジニウムクロリド(TDEPC);オクテニジン;ヨウ素;スルホンアミド;ビスビグアニド;フェノール;デルモピノール、オクタピノール、及びその他のピペリジノ誘導体;ナイアシン調剤;亜鉛又はスズイオン剤;ナイスタチン;グレープフルーツ抽出物;リンゴ抽出物;タイム油;チモール;オーグメンチン、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、メトロニダゾール、ネオマイシン、カナマイシン、塩化セチルピリジニウム、及びクリンダマイシンなどの抗生物質;上記の類似体及び塩;サリチル酸メチル;過酸化水素;亜塩素酸塩の金属塩;並びに上記の全ての混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。抗菌剤構成成分は、歯磨剤組成物の約0.001重量%〜約20重量%存在してよい。他の実施形態において、本発明の歯磨剤組成物は一般に約0.1重量%〜約5重量%の抗菌剤を含む。
【0096】
f)抗歯垢剤
本発明の歯磨剤組成物は、抗歯垢剤、例えばスズ塩、銅塩、ストロンチウム塩、マグネシウム塩又はジメチコンコポリオールを含むことができる。ジメチコンコポリオールは、C12〜C20アルキルジメチコンコポリオール及びこれらの混合物から選択される。1つの実施形態において、ジメチコンコポリオールは、商標名アビル(Abil)EM90で市販されているセチルジメチコンコポリオールである。ジメチコンコポリオールは、1つの実施形態において、歯磨剤組成物の約0.001重量%〜約25重量%、別の実施形態では、約0.01重量%〜約5重量%、別の実施形態では約0.1重量%〜約1.5重量%の濃度で存在することができる。
【0097】
g)抗炎症剤
抗炎症剤が本発明の歯磨剤組成物に存在してもよい。このような試薬は、非限定的に非ステロイド性抗炎症(NSAID)剤、オキシカム、サリチラート、プロピオン酸、酢酸及びフェナム酸を含んでもよい。このようなNSAIDには、ケトロラク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、ジクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、ピロキシカム、ナブメトン、アスピリン、ジフルニサル、メクロフェナム酸、メフェナム酸、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、及びアセトアミノフェンが挙げられるが、これらに限定されない。ケトロラクのようなNSAIDの使用は、米国特許第5,626,838号で特許請求されている。そこで開示されているものは、NSAIDの有効量の口腔又は中咽頭への局所投与によって、口腔又は中咽頭の原発性及び再発性の扁平上皮細胞癌を予防及び/又は治療する方法である。好適なステロイド性抗炎症剤には、フルオシノロン(fluccinolone)及びヒドロコルチゾンのような副腎皮質ホルモンが挙げられる。
【0098】
h)栄養素
栄養素は、口腔の状態を改善することができ、本発明の歯磨剤組成物に含まれることができる。栄養素としては、ミネラル、ビタミン、経口栄養補給剤、経腸栄養補給剤、及びこれらの混合物が挙げられる。有用なミネラルには、カルシウム、リン、亜鉛、マンガン、カリウム、及びこれらの混合物が挙げられる。ビタミンは、ミネラルと共に含まれることができるか、又は別個に使用されることもできる。好適なビタミンには、ビタミンC及びD、チアミン、リボフラビン、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、ニコチンアミド、ピリドキシン、シアノコバラミン、パラ−アミノ安息香酸、バイオフラボノイド、並びにこれらの混合物が挙げられる。経口栄養補給剤には、アミノ酸、脂肪親和物質、魚油、及びこれらの混合物が挙げられる。アミノ酸には、L−トリプトファン、L−リジン、メチオニン、スレオニン、レボカルニチン又はL−カルニチン及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。脂肪親和物質には、コリン、イノシトール、ベタイン、リノール酸、リノレン酸、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。魚油は、大量のオメガ3(N−3)多不飽和脂肪酸、エイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸を含有する。経腸栄養補給剤には、タンパク質製品、グルコースポリマー、コーン油、ベニバナ油、中鎖トリグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。ミネラル、ビタミン、経口栄養補給剤及び経腸栄養補給剤が、「薬物の事実と比較(Drug Facts and Comparisons)」(ルーズリーフ薬物インフォメーションサービス(loose leaf drug information service))ミズーリ州セントルイス(St. Louis)、ウォルターズ・クルワー社(Wolters Kluer Company)(版権)、1997年、3〜17頁及び54〜57頁により詳細に記載されている。
【0099】
i)酸化防止剤
酸化防止剤は一般に歯磨剤組成物において有用と認識されている。酸化防止剤は、カデナス・アンド・パッカー(Cadenas and Packer)(版権)の「酸化防止剤便覧(The Handbook of Antioxidants)」(1996年、マーセル・デッカー社(Marcel Dekker, Inc.))などのテキストに開示されている。本発明に有用な酸化防止剤には、ビタミンE、アスコルビン酸、尿酸、カロチノイド、ビタミンA、フラボノイド及びポリフェノール、薬草酸化防止剤、メラトニン、アミノインドール、リポ酸及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
j)鎮痛剤及び麻酔剤
耐痛み剤又は減感剤も本発明の歯磨剤組成物に存在することができる。鎮痛剤は、意識を撹乱させることなく、又はその他の感覚様相を変えることなく、痛みの閾値を上げるように中枢的に作用することによって痛みを緩和する試薬である。そのような試薬には、塩化ストロンチウム;硝酸カリウム;フッ化ナトリウム;硝酸ナトリウム;アセトアニリド;フェナセチン;アセルトファン(acertophan);チオルファン;スピラドリン(spiradoline);アスピリン;コデイン;テバイン;レボルフェノール(levorphenol);ヒドロモルフォン;オキシモルフォン;フェナゾシン;フェンタニール;ブプレノルフィン;ブタファノール(butaphanol);ナルブフィン;ペンタゾシン;没食子のような自然の薬草;アサルム;クベビン;ガランガ;スクテラリア;両面針;及び白止を挙げることができるが、これらに限定されない。アセトアミノフェン、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸トロラミン、リドカイン及びベンゾカインのような麻酔剤又は局所鎮痛剤もまた存在してよい。これらの鎮痛活性剤は、カーク・オスマー(Kirk-Othmer)、「工業化学百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)」、第4版、2巻、ワイリー−インターサイエンス・パブリッシャーズ(Wiley-Interscience Publishers)(1992)、729〜737頁に、詳細に記載されている。
【0101】
k)H−1及びH−2拮抗物質
本発明は、また、米国特許第5,294,433号に開示されている化合物を含む、選択的なH−1及びH−2拮抗物質を任意に含んでもよい。
【0102】
l)抗ウイルス活性物質
本組成物において有用な抗ウイルス性活性物質は、ウイルス感染を治療するために通常使用される任意の既知の活性物質を含む。このような抗ウイルス性の活性物質は、ウォルターズ・クルワー社(Wolters Kluer Company)(版権)の「薬物の事実と比較」(1997年、402(a)頁〜407(z)頁)に開示される。具体例には、米国特許第5,747,070号(1998年5月5日発行)に開示される抗ウイルス性の活性物質が挙げられる。前記特許は、ウイルスの制御にスズ塩を使用することを開示する。スズ塩及び他の抗ウイルス性活性物質は、カーク及びオスマー(Kirk & Othmer)の「工業化学百科事典(Encyclopedia of Chemical Technology)」(1982年、ワイリー・インターサイエンス・パブリッシャーズ(Wiley-lnterscience Publishers)、第3版、第23巻、42〜71頁)に詳述される。本発明で使用され得るスズ塩は、有機スズカルボン酸塩及び無機スズハライドを含む。フッ化第一スズが使用され得るが、それは典型的に、別のスズハライド、又は1つ以上のスズカルボン酸塩、あるいは他の治療薬との組み合わせでのみ使用される。
【0103】
m)キレート剤
キレート剤は、細菌の細胞壁に見られるカルシウムを錯化でき、このバイオマスを完全なまま保持するのを助けるカルシウム架橋からカルシウムを除去することによって歯垢を崩壊するのを助けることができる。好適なキレート剤としては、酒石酸及びその塩、クエン酸及びアルカリ金属シトレート、可溶性ピロリン酸塩、アニオン性高分子ポリカルボキシレート、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0104】
n)抗侵食剤
本発明の組成物は、任意に、同一出願人に譲渡された米国特許第6,685,920号に記載されるような抗侵食剤を含有する。歯牙侵食とは、細菌作用により引き起こされる表面下の脱鉱質化又は虫歯に対し、過酷な研磨及び酸のような化学作用による、表面からの歯質の永久的な損失を意味する。ここに記載される抗侵食剤は、歯表面に対して親和性を有する。これらの試薬は、歯表面に結合するか、又は歯表面上に不溶性化合物又は錯体を形成するかのいずれかにより、歯表面上に保護膜又はコーティングを形成する。これらの保護コーティングの結果として、歯には、これらの試薬を含有する組成物の使用後長期間にわたって歯牙侵食問題に対する顕著な抵抗性及び保護がもたらされる。有用な抗侵食剤としては、縮合リン酸化ポリマーのような高分子鉱物界面活性剤;ポリホスホネート;ポリカルボキシレート及びカルボキシ置換ポリマー;ホスフェート若しくはホスホネート含有モノマー若しくはポリマーと、エチレン性不飽和モノマー、アミノ酸、あるいはタンパク質、ポリペプチド、多糖類、ポリ(アクリレート)、ポリ(アクリルアミド)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(エタクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(無水マレイン酸)、ポリ(マレエート)、ポリ(アミド)、ポリ(エチレンアミン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(ビニルアセテート)、又はポリ(ビニルベンジルクロライド)から選択される他のポリマーとのコポリマー;並びにこれらの混合物が挙げられる。抗侵食剤としてまた有用なものは、スズ、亜鉛及び銅から選択される金属イオンであり、それらは、口腔用組成物の他の成分及び/又は象牙表面の構成成分と金属イオンとの反応から形成される化合物又は錯体の極めて不溶性の膜又は沈澱物を歯に堆積させる。
【0105】
o)追加の活性物質
本発明での使用に好適な追加の活性物質には、インスリン、ステロイド、天然物質、薬草及び他の植物由来治療薬を挙げることができるが、これらに限定されない。加えて、当該技術分野において既知の抗歯肉炎剤又は歯肉ケア剤も含まれてよい。歯に清涼感を付与する構成成分が任意に含まれていてもよい。これらの構成成分には、例えば、重曹又はガラスH(Glass-H)を挙げることができる。また、治療の特定の形態において、これら上記名称の試剤の組み合わせが、最適の効果を得るために有用である可能性があることが認められる。したがって、例えば、抗菌剤及び抗炎症剤は、組み合わされた有効性を提供するために単一の歯磨剤組成物に組み合わせてもよい。他の成分、例えば抗敏感性効果をもたらす物質も使用できる。
【0106】
使用される任意の試剤には、例えば米国特許第4,627,977号に記載されているような、ポリアクリレート及び無水マレイン酸又はマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー(例えば、ガントレッツ(Gantrez))を含む合成アニオン性ポリマーとして既知の物質などが挙げられ、並びに、例えばポリアミノプロパンスルホン酸(polyamino propoane sulfonic acid)(AMPS)、クエン酸亜鉛三水和物、ポリホスフェート(例えば、トリポリホスフェート、ヘキサメタホスフェート)、ジホスホネート(例えば、EHDP、AHP)、ポリペプチド(例えば、ポリアスパラギン酸及びポリグルタミン酸)、並びにこれらの混合物が挙げられる。更に、歯磨剤組成物は、例えば米国特許第6,682,722号及び米国特許第6,589,512号及び米国特許出願第10/424,640号及び米国特許出願第10/430,617号に記載のポリマーキャリアを含むことができる。
【0107】
2.追加の口腔キャリア
a)緩衝剤
口腔用組成物は緩衝剤を含有してもよい。本明細書で使用するとき、緩衝剤とは、口腔用組成物のpHをpH約3.0〜pH約10の範囲に調整するために用いることができる試剤を指す。緩衝剤には、アルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、有機アンモニウム化合物、炭酸塩、セスキ炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、イミダゾール、及びこれらの混合物が挙げられる。具体的な緩衝剤には、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、炭酸ナトリウム、イミダゾール、ピロリン酸塩、クエン酸、及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。緩衝剤は、口腔用組成物の約0.1重量%〜約30重量%、好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、及びより好ましくは約0.3重量%〜約3重量%の濃度で用いられる。
【0108】
b)砥粒研磨物質
砥粒研磨物質も、口腔用組成物中に含まれてよい。本発明の組成物に用いることが考えられる砥粒研磨物質は、象牙質を過度に磨耗しない任意の物質であることができる。典型的な砥粒研磨物質には、ゲル及び沈澱物を含むシリカ;アルミナ;オルトリン酸塩、ポリメタリン酸塩、及びピロリン酸塩を含むリン酸塩;及びこれらの混合物が挙げられる。具体例には、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウム、不溶性ポリメタリン酸ナトリウム、もみ殻シリカ、水和アルミナ、βピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、並びに尿素及びホルムアルデヒドの粒子状縮合生成物のような樹脂性砥粒物質、並びに1962年12月25日に発行された米国特許第3,070,510号でクーリー(Cooley)らにより開示されたような他のものが挙げられる。研磨剤の混合物を使用してもよい。口腔用組成物又は特定の相が、約4以上の平均鎖長を有するポリホスフェートを含む場合には、カルシウム含有研磨剤及びアルミナは、好ましい研磨剤ではない。最も好ましい研磨剤はシリカである。
【0109】
様々な種類のシリカ歯科用研磨剤は、歯のエナメル質又は象牙質を過度に削らない、優れた歯の洗浄及び研磨性能という独特の効果があるため好ましい。他の研磨剤と同様に、本明細書のシリカ砥粒研磨物質は、一般に、約0.1ミクロン〜約30ミクロン、好ましくは約5ミクロン〜約15ミクロンの範囲の平均粒径を有する。研磨剤は、沈澱シリカ、又はシリカキセロゲルのようなシリカゲルであることができ、米国特許第3,538,230号(ペイダー(Pader)ら、1970年3月2日発行)及び同第3,862,307号(ディギュリオ(DiGiulio)、1975年1月21日発行)に記載されている。好ましいのは、W.R.グレース・アンド・カンパニー(W.R.Grace & Company)のダビソン化学部門(Davison Chemical Division)により商標名「サイロイド(Syloid)」で市販されているシリカキセロゲルである。また、J.M.ヒュ−バー社(J.M.Huber Corporation)によって「ゼオデント(Zeodent)」の商標名で市販されているもののような沈澱シリカ物質、特に「ゼオデント119」の表記を持つシリカも好ましい。本発明の練り歯磨きに有用なシリカ歯科用研磨剤の種類は、ウェイソン(Wason)の米国特許第4,340,583号(1982年7月29日発行)により詳細に記載される。シリカ研磨剤はまた、ライス(Rice)の米国特許第5,589,160号、米国特許第5,603,920号、米国特許第5,651,958号、米国特許第5,658,553号、及び米国特許第5,716,601号に記載される。本明細書に記載されている口腔用組成物中の研磨剤は、一般に、組成物の約6重量%〜約70重量%の濃度で存在する。好ましくは、口腔用組成物は、口腔用組成物の約10重量%〜約50重量%の研磨剤を含有する。
【0110】
c)二酸化チタン
二酸化チタンもまた本組成物に添加されてもよい。二酸化チタンは、組成物に不透明感を加える白色粉末である。二酸化チタンは一般に、組成物の約0.25重量%〜約5重量%を構成する。
【0111】
d)着色剤
着色剤もまた本組成物に添加されてよい。着色剤は水溶液、好ましくは1%の着色剤水溶液の形態であってよい。顔料、パール剤(pealing agent)、充填剤粉末、タルク、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、オキシ塩化ビスマス、酸化亜鉛、及び口腔用組成物に視覚的変化を生みだすことができるその他の物質も使用できる。着色溶液及びその他の試薬は、一般に組成物の約0.01重量%〜約5重量%を構成する。
【0112】
e)風味付け構成成分
好適な風味付け構成成分としては、冬緑油、クローブバッドオイル、メントール、アネトール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、カッシア、1−メンチルアセテート、セージ、オイゲノール、パセリオイル、オキサノン、α−イリソン、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグエトール、桂皮、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、4−シス−ヘプテナール、ジアセチル、メチル−パラ−tert−ブチルフェニルアセテート、クランベリー、チョコレート、緑茶、及びこれらの混合物が挙げられる。冷却剤も風味剤組成物の一部であってよい。本組成物に好適な冷却剤には、パラメンタンカルボキシアミド剤、例えばN−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド(WS−3、WS−23、WS−5として商業的に既知である)、MGA、TK−10、フィスクール(physcool)、及びこれらの混合物が挙げられる。唾液分泌促進剤、加温剤、局部麻酔剤、及びその他の任意物質は、口腔用組成物が使用されている間に信号を伝達するために使用できる。風味剤組成物は、口腔ケア組成物にて、口腔ケア組成物の約0.001重量%〜約5重量%の濃度で通常使用される。風味剤組成物は、好ましくは約0.01重量%〜約4重量%の量、より好ましくは約0.1重量%〜約3重量%の量、及びより好ましくは約0.5重量%〜約2重量%で存在する。
【0113】
f)甘味剤
甘味剤を組成物に添加できる。これらには、サッカリン、ブドウ糖、スクロース、ラクトース、キシリトール、マルトース、果糖、アスパルテーム、シクラミン酸ナトリウム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム、スクラロース、ネオテーム、及びこれらの混合物が挙げられる。種々の着色剤も本発明に組み込まれてよい。甘味剤は、一般に、組成物の約0.005重量%〜約5重量%の濃度で練り歯磨きに使用される。
【0114】
g)増粘剤
本発明の口腔用組成物は、ゲル網状組織によって構造化又は増粘されるが、追加の増粘剤、例えば高分子増粘剤を利用してもよい。一部の実施形態において、口腔用組成物の構造化の大部分はゲル網状組織によるものである。他の実施形態において、構造化の大部分は、ゲル網状組織を有する高分子増粘剤によるものであってもよく、それにより口腔用組成物を更に構造化する。
【0115】
適切な増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、ラポナイト、並びにカルボキシメチルセルロースナトリウム及びカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムのようなセルロースエーテルの水溶性塩である。カラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、及びトラガカントゴムのような天然ゴムも使用することができる。更に質感を改善するために、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウム又は超微粒子状シリカを増粘剤の一部として使用することもできる。増粘剤は、高分子ポリエーテル化合物、例えば、炭素原子1〜約18個を含有するアルキル又はアシル基で末端保護されたポリエチレン又はポリプロピレンオキシド(M.W.300〜1,000,000)を含むことができる。
【0116】
好適な部類の増粘剤又はゲル化剤には、ペンタエリスリトールのアルキルエーテル若しくはスクロースのアルキルエーテルで架橋されたアクリル酸のホモポリマー、又はカルボマーの部類が挙げられる。カルボマーは、カーボポール(Carbopol)シリーズとしてB.F.グッドリッチ(B.F.Goodrich)から市販されている。特に、カーボポールとして、カーボポール934、940、941、956、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0117】
約1,000〜約120,000(数平均)の範囲の分子量を有するコポリマーであるラクチドとグリコリドモノマーとのコポリマーは、歯周ポケット内又は歯周ポケット周辺に歯肉縁下ゲルキャリアとしての活性物質を送達するために有用である。これらのポリマーは、米国特許第5,198,220号、米国特許第5,242,910号及び米国特許第4,443,430号に記載されている。
【0118】
全口腔用組成物の約0重量%〜約15重量%又は約0.01重量%〜約6重量%の量、他の実施形態では、約0.1重量%〜約5重量%の増粘剤が使用され得る。口腔用組成物は、ゲル網状組織により構造化又は増粘化される場合、増粘剤を本質的に含んでいなくてもよい。他の実施形態では、少量の増粘剤、例えば約0.01%〜約1%又は約0.05%〜約0.5%を、ゲル網状組織と組み合わせて使用できる。増粘剤の具体的な量は、所望のレオロジー及びゲル網状組織の機能に基づいて選択される。
【0119】
h)保湿剤
保湿剤は、空気に曝される際に歯磨剤組成物が硬化するのを防ぎ、口に湿った感触を与えるのを助けることができる。溶媒が、ゲル網状組織相に必要とされる。保湿剤又は追加の溶媒が、口腔キャリア相に添加されてよい。本発明に好適な保湿剤としては、水、食用多価アルコール、例えば、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ソルビトール、グリセリン、水、及びこれらの組み合わせが、好ましい保湿剤である。保湿剤は、約0.1%〜約99%、約0.5%〜約95%、及び約1%〜約90%の量で存在してよい。口腔キャリア相はまた、保湿剤なしでも構成できる。典型的な高分子(polyermic)増粘剤の代わりに若しくは少量の高分子増粘剤と共にゲル網状組織で構造化された口腔用組成物は保湿剤を必要としない可能性があり、又は少量の保湿剤でよい可能性がある。ゲル網状組織を有する口腔用組成物は、通常、空気に曝されたときにも湿った口腔感触を与え、及び/又は乾燥しない。ゲル網状組織組成物は、義歯接着剤組成物として使用するために保湿剤又は無水物を含まなくてもよい。
【0120】
i)界面活性剤
追加の界面活性剤は、口腔用組成物の口腔キャリア相に添加されてよい。これは、ゲル網状組織相に添加されるのと同じ界面活性剤であっても異なる界面活性剤であってもよい。界面活性剤は、口腔用組成物の洗浄又はフォーム形成を助けることができる。好適な界面活性剤は、ゲル網状組織の項にて上述されている。
【0121】
C.口腔用組成物の製造方法
本発明の1つの態様は、本発明の口腔用組成物の製造方法に関する。口腔用組成物の製造方法は、(a)脂肪族両親媒性物質と、二次界面活性剤と、溶媒とを、二次界面活性剤及び溶媒を脂肪族両親媒性物質に分割させるのに十分な温度、通常は脂肪族両親媒性物質の融解温度を超えて少なくとも約5℃上に加熱する工程と、(b)脂肪族両親媒性物質の融解温度未満にプレミックスを冷却してゲル網状組織を形成する工程とを含む。口腔キャリア成分は、プロセスの間はいつでも、例えば加熱前、加熱中、冷却前又は冷却後に添加してよい。特定の口腔キャリア成分、例えば風味剤は、加熱後に添加するのが望ましい場合がある。
【0122】
本発明の1つの実施形態において、本発明のゲル網状組織相は、脂肪族両親媒性物質と、二次界面活性剤と、溶媒とを、脂肪族両親媒性物質の融解温度の少なくとも5℃上のレベルに加熱することによって調製され得る。加熱は、約50℃〜約90℃、通常は約70℃〜約90℃の範囲であってよい。好ましくは、物質は加熱前、加熱中、加熱後、冷却中、及び冷却後である。加熱された後、混合物は約20℃〜約35℃の範囲のレベルに冷却される。バッチの大きさ、装置、具体的な物質、及び時間によって、混合物は、混合によってのみ、氷浴によって、又は熱交換器に混合物を通すことによって冷却されてよい。この冷却工程の結果として、脂肪族両親媒性物質及び二次界面活性剤は結晶化して、結晶性ゲル網状組織を形成する。
【0123】
ゲル網状組織構成成分を調製する代替方法としては、脂肪族両親媒性物質、二次界面活性剤、及び溶媒を、加熱しながら、音波処理及び/又は粉砕加工して、融解した脂肪族両親媒性物質相の粒径を低減する方法が挙げられる。これにより、脂肪族両親媒性物質相の表面積が増大し、二次界面活性剤及び溶媒が脂肪族両親媒性物質相を膨潤させる。ゲル網状組織を調製する別の好適な変化形としては、初めに脂肪族両親媒性物質及び二次界面活性剤を加熱して混合し、その後、この混合物を溶媒に添加することが挙げられる。
【0124】
ゲル網状組織は、単独で使用して口腔用組成物を構造化又は増粘して、所望のレオロジーを提供できる。ゲル網状組織はまた、その他の増粘化物質と組み合わせて使用できる。ゲル網状組織は、固体及びその他の粒子を懸濁でき、容器から容易に分配でき、一旦歯磨剤が分配されたら歯ブラシヘッド上に留まり、分配時には糸ひきがないか又は少なく、口腔内では容易に分散するレオロジー、及び歯磨剤に所望のその他のレオロジー特性を有する歯磨剤を配合し得る。
【0125】
歯磨剤の粘度は、通常、約8〜約100BKU、約15〜約80BKU、及び一般に約15〜約50BKUである。本明細書で使用するとき、BKUは粘度の単位である。粘度計はブルックフィールド「ヘリパス(Helipath)」スタンドを有するブルックフィールド粘度計、モデル1/2RVT(1/2バネ強度)である。スピンドルは、従来の「Eシリーズ」T型スピンドルである。粘度計は、ヘリパス(Helipath)スタンドに設置され、水準器により水平化される。Eスピンドルが取り付けられ、粘度計は作動中2.5RPMに設定される。粘度は1分後に測定され、温度は25℃にて一定である。歯磨剤組成物は、許容可能なレオロジー、良好な質感、快い審美性を有し、約0.9〜約1.8の脱気後比重を有し、約1.1〜約1.6であることができる。
【0126】
D.使用方法
本発明の組成物は、歯を洗浄するための従来の様式にて使用される。一般に、歯を洗浄するための歯磨剤を用いる方法は、本発明の組成物を歯ブラシに適用する工程と、一定期間歯を磨く工程と、次いで口腔から歯磨剤をすすぐ工程とを含む。約0.01〜約3グラムの練り歯磨きが通常は使用される。
【0127】
非限定的な実施例
次の実施例で示される口腔用組成物は、本発明の口腔用組成物の特定の実施形態を示しているが、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者は、他の修正を実行することができる。
【0128】
口腔用組成物の実施例
次の実施例は、ゲル網状組織を利用する口腔用組成物の具体的な実施形態を示す。
【0129】
実施例1〜4において、ゲル網状組織は工程1において形成され、次いで他の口腔キャリアをそのゲル網状組織に添加する。実施例1〜4に関して、工程1の成分を混合容器内で合わせ、混合しながら約75℃〜約90℃の間に加熱する。混合物を更に混合し、次いで約25℃に冷却して、結晶性ゲル網状組織を形成する。一旦ゲル網状組織が形成されたら、工程2の成分を個々に又はプレミックスとして添加し、混合して口腔用組成物を形成する。通常のように、風味剤を最終成分として添加して揮発による損失を最小限にする。
【0130】
(実施例1〜4):
【表1】

【0131】
実施例5〜14において、ゲル網状組織は、口腔用組成物が製造される際に形成される。実施例5〜14に列挙される物質は全て、ゲル網状組織を製造するために必要とされる脂肪族両親媒性物質、二次界面活性剤、及び溶媒が、加熱工程及び冷却工程の前に添加される限り、いつ添加してもよい。これらの実施形態において、風味剤も最終成分として添加される。
【0132】
(実施例5〜9):
【表2】

【0133】
(実施例10〜14):
【表3】

【0134】
実施例15〜18において、ゲル網状組織は工程1において形成され、他の成分は工程2で添加されるが、風味剤はバッチが冷却されたとき最後に添加される。
【0135】
(実施例15〜18):
【表4】

【0136】
他の実施例において、濃縮歯磨剤が形成されてもよい。濃縮歯磨剤はゲル網状組織によって構造化される。パッケージ化された後、溶媒、好ましくは水を濃縮歯磨剤に添加して、通常濃度の活性物質及び歯磨き用のレオロジーを有する歯磨剤を形成できる。ゲル網状組織によって構造化される口腔ケア組成物は、過剰量の水又はその他の溶媒で希釈される場合も均質な構造を維持する。これは、通常の高分子増粘化口腔用組成物とは対照的である。濃縮歯磨剤は、通常の歯磨剤組成物よりも2倍、3倍、4倍、5倍又はそれ以上の量の活性物質又は固形物質を含有するように配合できる。濃縮歯磨剤は使用前又は使用中に希釈できる。
【0137】
口腔用組成物には1を超えるゲル網状組織組成物が使用できる。2以上のゲル網状組織組成物が、口腔用組成物を構造化するために使用できる。あるいは、1つのゲル網状組織組成物を口腔用組成物の構造化のために使用でき、風味剤のような物質の送達を助けるために第2のゲル網状組織を使用できる。2以上のゲル網状組織組成物は、縞又はマルチカラー製品といった特定の外観を達成するために所望される場合もある。色安定性を与え、風味を送達し、又は非相溶性物質を組み込むために、口腔用ケア組成物に1以上のゲル網状組織組成物を有するのが望ましい場合がある。ゲル網状組織組成物はまた、風味剤又は冷却剤あるいは種々の風味を示すための他の大きな有機物質を封鎖するのに役立ち得る。ゲル網状組織組成物はまた、カチオン性、アニオン性、親水性、疎水性、不溶性、又は可溶性物質、あるいはこれらの組み合わせの送達を助けることもできる。これは、非相溶性物質を送達するのに有益な場合がある。ゲル網状組織組成物はまた、活性物質、風味剤のような物質、又は審美的理由若しくはその他の利益のための他の物質の送達、放出、又は長期送達という目的にも役立ち得る。
【0138】
分析方法及び実施例
次の方法はゲル網状組織を同定するために使用される。
【0139】
示差走査熱量計方法
1以上の脂肪族両親媒性物質を含むゲル網状組織中の層の鎖融解温度(すなわち、ゲル網状組織の融解転移温度)は、次の方法に従い、示差走査熱量計を使用して得ることができる。TA機器(TA Instruments)Q100DSCを利用して、およそ50mgのゲル網状組織プレミックス、又はゲル網状組織を含有する最終口腔用組成物を、ステンレス鋼高容量DSCパン内に入れる。空の参照パンと共に、試料を機器に入れる。以下の条件/温度プログラムを使用して、試料を分析する:窒素パージ、2.00分間等温になるまで、5.00℃で平衡化する。3.00℃/分の速度で、90.00℃まで温度に傾斜をつける。各試料を、二重に分析する。TA機器一般分析ソフトウェア(TA Instruments Universal Analysis Software)を使用して、得られたDSCデータを分析する。
【0140】
ゲル網状組織の融解転移温度を測定するためのDSCの使用は、T.デ・ブリンガー(T. de Vringer)らの、「コロイドとポリマーの科学(Colloid and Polymer Science)」、265巻、448〜457(1987)、及びH.M.リベイロ(Ribeiro)らの、「化粧品科学国際会誌(Intl. J. of Cosmetic Science)」、26巻、47〜59(2004)に、更に記載されている。
【0141】
X線分析方法
中間相における周期構造を決定するために使用される小角X線散乱(「SAXS」)は、本質的にX線回折技術である。これは、ミセル、ゲル網状組織、層状、六方及び立方液晶のような凝集構造を特徴付けるために、従来の広角X線回折(「WXRD」)と連動して使用される。周期構造を示す異なる中間相は、ブラッグ方程式(d=λ/2Sinθ)(式中、dは格子面間隔を表し、λは放射波長を表し、θは散乱(回折)角を表す)に由来する、それらの反射の相対位置(d−間隔)によって特徴付けることができる。
【0142】
1次元の層状ゲル網状組織相は、SAXS領域(長距離秩序)において値1:2:3:4:5等を有する格子面間隔の比d/d、d/d、d/d、d/d、d/d、及び広範のハロバックグラウンドにわたる3.5及び4.5Åを中心とするWXRD領域(短距離)における1又は2の不変反射(単数又は複数)により、特徴付けられる。他の中間相(例えば、六方又は立方)は、特徴的に異なるd−間隔比を有するであろう。
【0143】
WXRDデータは、イメージプレート位置敏感型検出器を備えるストエ(Stoe)STADI−P回折装置にて、透過モード(transmission mode)で収集される。被検査物をサンプルホルダー内の2つのマイラーフィルム(milar films)間に置き、X線ビームの通路に置く。IP検出器は、約120°2θの立体角を有し、同時に、回折X線ビームを記録する。データを収集し、XPOWソフトウェアを使用して分析する。
【0144】
SAXSデータは、ブルカー(Bruker)−AXSからのHI−STAR 2次元領域検出器を備える高精度焦点フィラメントを有する理学(Rigaku)回転アノード発生器上で収集される。設備は、被検査物を収容し、空気散乱を減らすために検出器に通じる真空管と結合する空のチャンバーを有する。被検査物試料ホルダーは、流体様物質を保持し、X線ビームを透過するために、小さな長方形の空洞を有する銅板からなる。空洞への開口部は、真空下で漏電フリーの環境を提供するために、カプトン(kapton)ウインドウで封止される。2−Dデータは、方位角的に集積され、イゴール(Igor)プラットホーム上でGADDSソフトウェア及び既知の技術を実行する内蔵ソフトウェアモジュールの組み合わせにより、強度−対−散乱ベクトル(q)又はそのd相当物に分析される。
【0145】
「発明を実施するための形態」で引用した全ての文献は、関連部分において本明細書に参照により組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを容認するものと解釈されるべきではない。この文書における用語のいずれかの意味又は定義が、参照により組み込まれる文献における用語のいずれかの意味又は定義と対立する範囲については、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義を適用するものとする。
【0146】
本発明の特定の実施形態を例示し述べたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には自明であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を添付の特許請求の範囲で扱うものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ゲル網状組織相であって、
i)1以上の脂肪族両親媒性物質と、
ii)1以上の二次界面活性剤と、
iii)1以上の溶媒と、
を含むゲル網状組織相と、
b)口腔キャリア相と、
を含む、口腔用組成物。
【請求項2】
前記口腔用組成物が、歯磨剤又は濃縮歯磨剤である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
前記口腔キャリア相が、界面活性剤を含む、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
前記1以上の脂肪族両親媒性物質が、セチルアルコール及びステアリルアルコールの組み合わせを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
前記二次界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
前記口腔用組成物が、高分子増粘化物質を本質的に含まない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
前記口腔用組成物が、1を超えるゲル網状組織を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の口腔用組成物。
【請求項8】
口腔用組成物を調製する方法であって、
a)鎖融解温度を有する脂肪族両親媒性物質と、二次界面活性剤と、溶媒とを、前記二次界面活性剤及び前記溶媒を前記脂肪族両親媒性物質に分割させるのに十分な温度にて組み合わせて混合物を形成する工程と、
b)前記脂肪族両親媒性物質の鎖融解温度未満に前記混合物を冷却してゲル網状組織を形成する工程と、
c)前記ゲル網状組織に口腔キャリア物質を添加して口腔用組成物を形成する工程と、を含む、方法。
【請求項9】
工程c)において、更なる界面活性剤を添加する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
i)脂肪族アルコール、アルコキシル化脂肪族アルコール、リン脂質、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の脂肪族両親媒性物質と、
ii)アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1以上の二次界面活性剤と、
iii)1以上の溶媒と、
を含む、口腔用組成物。

【公表番号】特表2010−504341(P2010−504341A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529279(P2009−529279)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/020979
【国際公開番号】WO2008/042279
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】