説明

コアシェルタイプのフィラー粒子を含む複合シート用組成物、これを含む複合シート、および複合シートの製造方法

【課題】本発明は、熱伝導性セラミック化合物が表面に形成された磁性粒子を含むコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子および硬化可能な有機結合剤を含む複合シート用組成物、前記コアシェルタイプのフィラー粒子を含む複合シート、および前記複合シートの製造方法に関する。
【解決手段】このような複合シート用組成物によれば、耐電圧強度が低下することなく、優れた熱伝導特性および電磁波吸収性能を実現することができ、同じフィラー含有量でも最終複合シートの硬度を低く実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合シート用組成物、複合シート、および前記複合シートの製造方法に関し、より詳細には、コアシェルタイプのフィラーを用いることによって磁気的特性および熱伝導特性を維持すると同時に電気的絶縁性までも付与し、耐電圧強度が低下することなく優れた熱伝導特性および電磁波吸収性能を実現することができる、複合シート用組成物、複合シート、および複合シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子機器および電子部品が軽薄短小化している傾向に伴って電気素子の集積度が高まっており、電気エネルギーで作動する電気素子の発熱量も大きく増加している。これにより、電子機器の内部で発生した熱を効果的に分散して発散させる放熱特性の向上に対する要求が高まっている。さらに、電気素子の集積度が高まることによって電磁波の発生量も増加するが、このような電磁波が電子機器の接合部や連結部などを経て漏出することにより、他の電気素子または電子部品の誤作動を誘発したり、人体免疫機能が弱化するなどの有害作用を誘発するという問題点があった。
【0003】
これにより、電気素子から発生する熱を効果的に分散して発散させる放熱特性と、電気素子の誤作動を引き起こして人体に悪影響を及ぼす電磁波を効果的に遮断および吸収することができる特性とを同時に実現することができる方案に対する多様な研究が行われてきた。
【0004】
多様な電気素子の放熱特性を向上させるために、熱を伝導して外部に放出させる放熱板を備えたり、熱伝導性に優れたシリコンゴムシートなどを備えた方法などが提案されたが、このような放熱板やシリコンゴムシートなどは、電気素子に堅固に密着させることが困難であり、放熱特性を十分に発揮することができず、電磁波を遮断および吸収する能力が殆どないという問題点を有していた。
【0005】
これにより、放熱特性を有する材料と電磁波を遮断および吸収するための材料を共に適用する方法が提案された。特に、熱伝導特性を有するシートと電磁波遮断/吸収性能を有するシートを積層させた製品が多く用いられたが、このような製品は、多層材料の特性上、厚さが厚く、電気短絡現象が容易に発生するという問題点があり、最近の電子機器に求められる程度の熱伝導性および電磁波吸収特性を実現することが困難であった。さらに、熱伝導性または電磁波吸収特性を向上させるために、前記多層材料に添加するフィラーの充填量を増加させる方法が提案されたが、相溶性などの理由によって一定量以上のフィラーを充填させることが難しく、フィラーの充填量を増加させれば多層材料の硬度が上昇し、製品の熱伝導特性を低下させるという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コアシェルタイプのフィラーを用いることにより、磁気的特性および熱伝導特性を維持すると同時に電気的絶縁性までも付与し、耐電圧強度が低下することなく優れた熱伝導特性および電磁波吸収性能を実現することができる複合シート用組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記複合シート用組成物を利用して得られる複合シートを提供することを他の目的とする。
さらに、本発明は、前記複合シートの製造方法を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、熱伝導性セラミック化合物が表面に形成された磁性粒子を含むコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子と、硬化可能な有機結合剤とを含む複合シート用組成物を提供する。
また、本発明は、シート(sheet)状に硬化した有機結合剤と、前記有機結合剤シート内に分散したコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子とを含み、前記コアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子は、熱伝導性セラミック化合物が表面に形成された磁性粒子を含む複合シートを提供する。
また、本発明は、熱伝導性セラミック化合物が表面に形成された磁性粒子を含むコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子を形成する段階と、前記コアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子および有機結合剤を混合する段階と、前記混合物をシート形態に成形する段階とを含む複合シートの製造方法を提供する。
【0008】
以下、発明の具体的な実施形態に係る複合シート用組成物、複合シート、および複合シートの製造方法について、より詳細に説明する。
【0009】
発明の一実施形態によれば、熱伝導性セラミック化合物が表面に形成された磁性粒子を含むコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子と、硬化可能な有機結合剤とを含む複合シート用組成物が提供される。
本発明の明細書において、「フィラー」とは、複合シートに熱伝導特性または電磁波吸収性能などの特定性質を付与するために充填される物質を意味し、「コアシェルタイプ」とは、シェル(または殻)を形成する物質がコア(または中心)をなしている物質を囲んでいる形態を意味する。
【0010】
本発明者は、熱伝導性セラミック化合物が表面に形成された磁性粒子を含むコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子を適用すれば、フィラーの電気的な絶縁性を確保することにより、耐電圧強度が低下することなく、高い熱伝導特性および電磁波吸収性能を有する複合シートを提供できることを実験によって確認し、発明を完成した。
【0011】
前記複合シート用組成物の特有な作用または効果は、前記コアシェルタイプのフィラー粒子固有の特性から起因したものであると思われる。このようなコアシェルタイプのフィラー粒子は、コアをなしている物質とシェルをなしている物質それぞれからの特性を実現できるだけではなく、2種類以上の物質が単純に混合している場合や合金として存在する場合とは異なり、前記2種類以上の物質の複合効果を実現することができる。これにより、前記熱伝導性セラミック化合物が表面に形成された磁性粒子を含むコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子を適用すれば、耐電圧強度が低下することなく、フィラーの高い熱伝導特性および電磁波吸収性能を充足させられるだけではなく、最終製品である複合シートの硬度を低め、電子部品に適用する際に生じる熱抵抗を減少させ、熱伝導特性を極大化させることができる。
【0012】
さらに、前記コアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子を適用すれば、複合シートに充填されるフィラーの量を大きく増加させても、複合シートの硬度がそれ程までに高くならないだけではなく、相対的に厚さの薄い単一層の複合シートでも優れた熱伝導特性、電磁波吸収性能、および耐電圧強度を実現することができる。
【0013】
前記コアシェルタイプのフィラー粒子は、熱伝導性セラミック化合物が表面に形成された磁性粒子を含んでもよいが、前記コアシェルタイプのフィラー粒子は、磁性粒子のコアを熱伝導性セラミック化合物のシェルが囲んでいる形態であってもよく、前記熱伝導性化合物は、磁性粒子表面に物理的または化学的結合などによって結合されてもよい。
【0014】
前記磁性粒子は、軟磁性金属合金粒子またはフェライト系磁性粒子を含んでもよい。前記軟磁性金属合金粒子とは、外部から磁場が印加されたときに迅速に磁化することができる金属合金を含んでもよく、複合シート上で特定周波数の電磁波ノイズを吸収して除去する作用または効果を実現することができる。このような磁性粒子の具体的な例として、鉄−シリコン−アルミニウム合金、鉄−シリコン合金、鉄−クロム−シリコン合金、鉄−クロム合金、ニッケル−鉄合金、カルボニル鉄、これらの混合物、またはこれらの合金などを挙げることができる。前記フェライト系磁性粒子はセラミック系物質であって、外部磁場に容易に磁化がなされるスピネル構造の物質を含んでもよく、その具体的な例として、ニッケル−亜鉛フェライト、マンガン−亜鉛フェライト、これらの混合物、またはこれらの合金などを挙げることができる。
【0015】
前記磁性粒子の形状には特に制限がなく、例えば、球形、円形、板状形、多面体、回転体などの形状であってもよい。また、前記磁性粒子の大きさにも特に制限はないが、1〜100μmの平均粒度(D50)を有する磁性粒子を用いることが、複合シートを容易に製造するために、または前記コアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子を高い含有量で均一に分散させるために好ましい。
【0016】
これにより、前記磁性粒子として、鉄−シリコン−アルミニウム合金、鉄−シリコン合金、鉄−クロム−シリコン合金、鉄−クロム合金、ニッケル−鉄合金、カルボニル鉄、ニッケル−亜鉛フェライト、マンガン−亜鉛フェライト、またはこれらの混合物などを用いてもよい。
【0017】
前記熱伝導性セラミック化合物は、複合シートに用いられ、電気素子などで発生する熱を急速にヒートシンクに伝達する作用または効果を発揮する。このような熱伝導性セラミック化合物の具体的な例として、アルミナ(Al23)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、またはこれらの混合物などを挙げることができる。このような熱伝導性セラミック化合物は、後述する製造方法によって0.1〜10μmの厚さで磁性粒子の表面に形成されてもよい。
【0018】
前記硬化可能な有機結合剤は、複合シートの基材の役割を行うようになるが、優れた放熱特性および衝撃吸収特性を有する物質を用いることが好ましい。このような有機結合剤に用いられる物質の具体的な例としては、熱硬化性シリコンゴム化合物、一液型熱硬化性シリコンバインダ、二液型熱硬化性シリコンバインダ、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、またはこれらの混合物などを用いることができる。このような物質は、自体の優れた粘着力によって別途の粘着層などを備える必要がなく、作業工程を単純化することができ、最終製品の生産単価を節減することができる。
【0019】
前記複合シート用組成物は、熱伝導性セラミック化合物が表面に形成された磁性粒子を含むコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子1〜99重量%と、硬化可能な有機結合剤1〜99重量%とを含んでもよい。前記コアシェルタイプのフィラー粒子が適用されることによって有機結合剤との相溶性が向上され、同じ熱伝導度を実現するために必要なセラミックフィラーの体積含有量(volume%)を低めることができるので、フィラーの充填量を大きく増加させることができる。これにより、前記複合シート用組成物は、前記コアシェルタイプのフィラー粒子50〜99重量%と、硬化可能な有機結合剤1〜50重量%とを含んでもよく、より好ましくは、前記コアシェルタイプのフィラー粒子70〜95重量%と、硬化可能な有機結合剤5〜30重量%とを含んでもよい。
【0020】
一方、前記複合シート用組成物は、磁性粒子、熱伝導性セラミック化合物粒子、またはこれらの混合物をさらに含んでもよい。このような磁性粒子または熱伝導性セラミック化合物粒子は、前記コアシェルタイプのフィラー粒子に含まれている熱伝導性セラミック化合物および磁性粒子とは区分されるものであって、複合シートの熱伝導特性または電磁波吸収性能を向上させるための付随的なフィラーとして添加されてもよい。付随的なフィラーとして添加される磁性粒子または熱伝導性セラミック化合物粒子は、熱伝導特性および電磁波吸収特性を追加的に向上させる効果を発揮することができる。
【0021】
これにより、前記複合シート用組成物は、前記コアシェルタイプのフィラー粒子1〜97重量%と、前記硬化可能な有機結合剤1〜70重量%と、前記磁性粒子または熱伝導性セラミック化合物粒子1〜90重量%とを含んでもよい。上述したように、前記コアシェルタイプのフィラー粒子を適用すれば、フィラーの充填量を大きく増加させることができるので、前記複合シート用組成物は、前記コアシェルタイプのフィラー粒子45〜97重量%と、前記硬化可能な有機結合剤1〜50重量%と、前記磁性粒子または熱伝導性セラミック化合物粒子1〜50重量%とを含んでもよい。より好ましくは、前記複合シート用組成物は、前記コアシェルタイプのフィラー粒子70〜95重量%と、前記硬化可能な有機結合剤1〜25重量%と、前記磁性粒子または熱伝導性セラミック化合物粒子1〜25重量%とを含んでもよい。
【0022】
前記複合シート用組成物は、熱安定化剤、紫外線安定化剤、架橋剤、または顔料などの添加剤をさらに含んでもよい。このような添加剤の使用量は、最終製品の特性を考慮して適切に加減されてもよい。
【0023】
一方、本発明の他の実施形態によれば、シート(sheet)状に硬化した有機結合剤と、前記有機結合剤シート内に分散したコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子とを含み、前記コアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子が熱伝導性セラミック化合物が表面に形成された磁性粒子を含む複合シートが提供されてもよい。
【0024】
上述したように、前記有機結合剤シート内に分散したコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子を含む複合シートは、充填されるフィラーの量を大きく増加させても、硬度がそれ程までに高くならないだけではなく、相対的に厚さの薄い単一層の構成でも優れた熱伝導特性、電磁波吸収性能、および耐電圧強度を実現することができる。
【0025】
これにより、前記複合シートは、0.1〜10.0mmの厚さを有してもよい。前記複合シートの厚さが薄過ぎれば、適切な熱伝導特性および電磁波吸収性能を実現することが困難であり、厚さが厚過ぎれば、熱抵抗が増加して複合シート固有の性能が半減し、シートの重量が増加して製品の軽量化の側面においても好ましくない。
【0026】
前記複合シートは、前記厚さの範囲において、Asker C10〜40硬度、好ましくはAsker C15〜30硬度を有してもよい。また、前記複合シートは、前記厚さの範囲において、1.5〜6.0W/mK、好ましくは2.0〜6.0W/mK、より好ましくは4.0〜6.0W/mKの熱伝導度を有してもよい。さらに、前記複合シートは、前記厚さの範囲において、5.0×1011〜5.0×1013Ω・cmの体積抵抗を有してもよく、0.2〜5.0kV/mm、好ましくは2.0〜4.0kV/mmの耐電圧強度を有してもよい。
【0027】
前記複合シートは、0.1〜10.0mmの厚さを有する単一層のシートであってもよい。また、前記複合シートは、前記厚さの範囲内において、フィラーの含有量を高めながらも相対的に低い硬度、例えばAsker C10〜40硬度、好ましくはAsker C15〜30硬度を有してもよく、相対的に高い熱伝導度、体積抵抗、および耐電圧強度を示すことができる。後述する実験例に示すように、前記複合シートは、低い硬度を有しながらも優れた熱伝導度、電磁波吸収能力、および耐電圧強度を実現できることが確認された。
【0028】
一般的に、放熱シートの硬度が高い場合、ヒートシンク(heat sink)と発熱部品の界面の間に空気が存在することがあり、これによって接触熱抵抗が増加して放熱特性が低下する。しかし、前記複合シートは、高い含有量でフィラーを含みながらも、硬度がそれ程までに高くないため、優れた放熱特性を実現することができる。
【0029】
また、前記複合シートは、D3−D10の低分子量シロキサン化合物を200ppm以下で含んでもよい。低分子量シロキサン化合物は「Me2Si−O−」単位が環をなした環状シロキサン化合物であって、高い揮発性を有し、「Me2Si−O−」単位が3つの3量体をD3と、4量体をD4と、10量体をD10として表示する。前記複合シートは、このような低分子量シロキサン化合物、特にD3−D10の低分子量シロキサン化合物を200ppm以下で含み、揮発した低分子量シロキサン化合物が電池接点部でスパークによって絶縁物に変わる現象を最小化することができ、電子製品または素子の電気的特性が低下する現象を防ぐことができる。前記D3−D10の低分子量シロキサン化合物の含有量は、GasChromatography Mass Spectroscopy(GC−MS)によって測定されてもよい。
【0030】
一方、前記複合シートは、前記有機結合剤シート内に分散した磁性粒子、熱伝導性セラミック化合物、またはこれらの混合物をさらに含んでもよい。上述したように、追加的に含まれる磁性粒子、熱伝導性セラミック化合物粒子、またはこれらの混合物は、前記コアシェルタイプのフィラー粒子に含まれる熱伝導性セラミック化合物および磁性粒子とは区分されるものであって、複合シートの熱伝導特性または電磁波吸収性能を向上させるための付随的なフィラーとして添加されてもよい。前記磁性粒子、熱伝導性セラミック化合物、またはこれらの混合物は、前記有機結合剤シート内に分散した状態であってもよい。
【0031】
これにより、前記複合シートは、前記有機結合剤シート内に分散したコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子1〜97重量%と、シート(sheet)状に硬化した有機結合剤1〜70重量%と、前記磁性粒子、熱伝導性セラミック化合物粒子、またはこれらの混合物1〜90重量%とを含んでもよい。上述したように、前記コアシェルタイプのフィラー粒子を適用すれば、フィラーの充填量を大きく増加させることができるため、前記複合シートは、前記コアシェルタイプのフィラー粒子45〜97重量%と、有機結合剤1〜50重量%と、前記磁性粒子、熱伝導性セラミック化合物粒子、またはこれらの混合物1〜50重量%とを含んでもよい。より好ましくは、前記複合シートは、前記コアシェルタイプのフィラー粒子70〜95重量%と、有機結合剤1〜25重量%と、前記磁性粒子、熱伝導性セラミック化合物粒子、またはこれらの混合物1〜25重量%とを含んでもよい。
【0032】
前記複合シートに含まれる構成要素に関しては、前記複合シート用組成物と関連して既に説明されたため、具体的な内容に関する記載は省略する。
【0033】
一方、発明のさらに他の実施形態によれば、熱伝導性セラミック化合物が表面に形成された磁性粒子を含むコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子を形成する段階と、前記コアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子および有機結合剤を混合する段階と、前記混合物をシート形態に成形する段階とを含む複合シートの製造方法が提供される。
【0034】
上述したように、前記熱伝導性セラミック化合物が表面に形成された磁性粒子、すなわちコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子を形成する段階を含む複合シートの製造方法によれば、耐電圧強度が低下することなく、高い熱伝導特性および電磁波吸収性能を実現することができる低硬度の複合シートを得ることができる。
【0035】
具体的に、前記コアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子を形成する段階は、熱伝導性セラミック化合物および磁性粒子を混合する段階と、前記混合物にせん断応力および衝撃力を加える段階とを含んでもよい。このように、熱伝導性セラミック化合物および磁性粒子の混合物にせん断応力および衝撃力を加える段階によれば、短時間にコアシェルタイプのフィラー粒子を製造することができ、関連する工程変数がインペラの回転速度、工程温度、または工程時間などに過ぎず、工程過程を容易に調節することができ、製造過程において有機溶媒を用いたり有害物質が発生したりしない親環境的な工程を構成することができる。
【0036】
前記熱伝導性セラミック化合物および磁性粒子の混合物にせん断応力および衝撃力を加える方法、時間、および加えられるせん断応力および衝撃力の大きさには特に制限がなく、例えば、前記磁性粒子上に前記熱伝導性セラミック化合物を均一に形成またはコーティングするためには、3,000rpm〜10,000rpmのせん断速度で5分内〜1時間せん断応力および衝撃力を加える方法を用いてもよい。さらに、せん断応力および衝撃力を加える方法および機器にも特に制限はなく、例えば、高速ミキサー、ヘンシェルセルミキサー、またはスーパーミキサーなどの機器を用いてもよい。
【0037】
前記混合物における磁性粒子と熱伝導性セラミック化合物の粒子の大きさの比率は、5:1〜250:1であってもよい。前記磁性粒子と熱伝導性セラミック化合物の粒子の大きさの比率が5:1以下である場合には、磁性粒子上に結合またはコーティングされない前記熱伝導性セラミック化合物の粒子の残余量が大きくなり、複合シートのフィラー充填量を低下させることがある。また、前記磁性粒子の大きさが熱伝導性セラミック化合物の粒子の大きさに比べて過度に大きくなれば、コアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子の形成過程において磁性粒子衝突する頻度が増加し、熱伝導性セラミック化合物が磁性粒子表面に容易にコーティングされることが困難になる。
【0038】
一方、前記コアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子および有機結合剤を混合する段階は、磁性粒子または熱伝導性セラミック化合物粒子を添加する段階をさらに含んでもよい。上述したように、追加的に添加される磁性粒子または熱伝導性セラミック化合物粒子は、前記コアシェルタイプのフィラー粒子に含まれる熱伝導性セラミック化合物および磁性粒子とは区分されるものであって、複合シートの熱伝導特性または電磁波吸収性能を向上させるための付随的なフィラーとして添加されてもよい。
【0039】
前記コアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子および有機結合剤を混合する段階は、熱安定化剤、紫外線安定化剤、架橋剤、または顔料などの添加剤を添加する段階をさらに含んでもよい。このような添加剤の使用量は、最終製品の特性を考慮して適切に加減されてもよい。
【0040】
前記コアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子および有機結合剤の混合物をシート形態に成形する段階では、多様な成形方法を特に制限されることなく用いることができるが、高温プレス法、テープキャスティング法、真空圧出法、真空モールディングキャスティング法、またはスプレーコーティング法を用いることが好ましい。そして、前記混合物をシート形態に成形する段階は、前記混合物から得られるシートを50〜250℃で10〜2時間硬化する段階を含んでもよい。
【0041】
一方、前記複合シートの製造方法においては、複合シートに含まれるD3−D10の低分子量シロキサン化合物の含有量を低めるために、前記混合物から得られたシートを100以上で3時間以上後硬化(post curing)させる段階をさらに含んでもよい。前記混合物から得られたシートを高温の真空オーブンにおいて長時間で後硬化させれば、D3−D10の低分子量シロキサン化合物の含有量を大きく低下させることができる。
【0042】
前記複合シートの製造方法に用いられる物質などは、前記複合シート用組成物と関連して既に説明されたため、具体的な内容に関する記載は省略する。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、フィラーの電気的な絶縁性を付与することにより、耐電圧強度が低下することなく優れた熱伝導特性および電磁波吸収性能を実現することができる、複合シート用組成物、これを含む複合シート、および複合シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合シートを概略的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る複合シートを示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明について、下記の実施例を参照しながら詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0046】
<製造例:コアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子の製造>
磁性粒子のFe−Cr粉末および熱伝導性セラミック素材のアルミナ粉末をチャンバ内に投入した後、8,000rpmの速度で250℃で15分間せん断力および衝撃力を加え、アルミナが表面にコーティングされたFe−Cr粒子粉末を得た。このとき、前記磁性粒子のFe−Cr粉末および熱伝導性セラミック化合物アルミナの粒子の大きさの比は、160:1であった。
【0047】
<実施例および比較例:複合シートの製造>
実施例1〜7
前記製造例1で得られたコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子、磁性粉末、セラミック粉末、および有機結合剤を下記の表1の組成比で10℃で120分間プラネタリーミクシング方法によって混合した。そして、テープキャスティング法を利用して前記混合物を2.0mmの厚さのシートに製造し、製造されたシートを150℃で30分間硬化した。
【0048】
【表1】

【0049】
<比較例:複合シートの製造>
比較例1
Ni−Znferrite75重量%、アルミナ10重量%、およびシリコン15重量%を10℃で120分間プラネタリーミクシング方法によって混合した。そして、テープキャスティング法を利用し、このような混合物から2.0mmのシートを得た。
【0050】
比較例2
軟磁性金属合金であるFe−Al−Si88重量%、アルミナ2重量%、およびシリコン10重量%を10℃で120分間プラネタリーミクシング方法によって混合した。そして、テープキャスティング法を利用し、このような混合物から2.0mmのシートを得た。
【0051】
<実験例>
前記実施例および比較例で製造された複合シートの熱伝導度(W/mK)、電力損失量(%)、体積抵抗(Ω・cm)、硬度(Asker C)、耐電圧強度(kV/mm)を測定した。
(1)前記熱伝導度は、ASTM E55法の改良熱線法(modified hot−wire method)により、C−Therm社のTCi装置を利用して測定した。
(2)電力損失量は、Agilent社のE8357Aネットワークアナライザを用いて測定した。
(3)体積抵抗は、高抵抗測定器(Agilent社4339B)を利用して測定した。
(4)硬度測定
実施例および比較例の複合シートから得られた5cm×5cmのサイズの試片に1Kgの荷重をかけ、Asker Cタイプの硬度計を用いて硬度を測定した。
(5)耐電圧強度
複合シートの耐電圧強度は、Zentech社の9027A withstand voltage testerを用いて測定した。
前記測定結果を下記の表2に示した。
【0052】
【表2】

【0053】
前記表2に示すように、実施例の複合シートは、30以下のAsker C硬度を有しながらも、優れた熱伝導度および電磁波吸収能力が実現されることを示した。また、実施例の複合シートは、1012Ω・cm以上の体積抵抗と0.3kV/mm以上、好ましくは1.5kV/mm以上の耐電圧強度を示し、放熱素材として優れた特性を実現することができると確認された。
【0054】
特に、実施例6および7の複合シートでは、コア/シェルタイプのフィラー粒子を80、85重量%で含んでも、硬度がそれ程までに高くならないと同時に(30Asker C程度の硬度)、4.5W/mK以上の高い熱伝導度、1012Ω・cm程度の高い体積抵抗、および2.0kV/mm以上の高い耐電圧強度が実現されることが確認された。
【0055】
これに反し、比較例の複合シートは、体積抵抗が1011Ω・cm以下と放熱素材として機能を発揮するのに十分ではなく、同じシリコン有機結合剤を用いた実施例に比べて低い熱伝導度を示し、相対的に高いAsker C硬度を示すという点が確認された。
【0056】
さらに、実施例の複合シートに対する実験結果に示すように、複合シート内でコアシェルタイプのフィラー粒子の含有量を増加させても、硬度がそれ程までに大きく増加しないが、耐電圧強度は極めて高くなると確認された。特に、前記コアシェルタイプのフィラー粒子を一定の含有量以上で含む実施例3〜7の複合シートは、2.0kV/mm以上の高い耐電圧強度を実現した。
【符号の説明】
【0057】
1:コアシェルタイプのフィラー粒子
2:熱伝導性セラミック化合物
3:磁性粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性セラミック化合物が表面に形成された磁性粒子を含むコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子、および
硬化可能な有機結合剤、
を含む、複合シート用組成物。
【請求項2】
前記磁性粒子は、軟磁性金属合金粒子またはフェライト系磁性粒子を含む、請求項1に記載の複合シート用組成物。
【請求項3】
前記磁性粒子は、鉄−シリコン−アルミニウム合金、鉄−シリコン合金、鉄−クロム−シリコン合金、鉄−クロム合金、ニッケル−鉄合金、カルボニル鉄、ニッケル−亜鉛フェライト、およびマンガン−亜鉛フェライトからなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の複合シート用組成物。
【請求項4】
前記熱伝導性セラミック化合物は、アルミナ(Al23)、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、および水酸化アルミニウム(Al(OH)3)からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の複合シート用組成物。
【請求項5】
前記硬化可能な有機結合剤は、熱硬化性シリコンゴム化合物、一液型熱硬化性シリコンバインダ、二液型熱硬化性シリコンバインダ、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、およびウレタン系樹脂からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載の複合シート用組成物。
【請求項6】
磁性粒子および熱伝導性セラミック化合物粒子からなる群より選択された1種以上をさらに含む、請求項1に記載の複合シート用組成物。
【請求項7】
前記コアシェルタイプのフィラー粒子1〜97重量%、
前記有機結合剤1〜70重量%、および
前記磁性粒子または熱伝導性セラミック化合物粒子1〜90重量%を含む、請求項6に記載の複合シート用組成物。
【請求項8】
シート(sheet)状に硬化した有機結合剤、および
前記有機結合剤シート内に分散したコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子、
を含み、
前記コアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子は、熱伝導性セラミック化合物が表面に形成された磁性粒子を含む、複合シート。
【請求項9】
0.1〜10.0mmの厚さを有する、請求項8に記載の複合シート。
【請求項10】
前記有機結合剤シート内に分散した磁性粒子および熱伝導性セラミック化合物粒子からなる群より選択された1種以上の粒子をさらに含む、請求項8に記載の複合シート。
【請求項11】
熱伝導性セラミック化合物が表面に形成された磁性粒子を含むコアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子を形成する段階、
前記コアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子および有機結合剤を混合する段階、および
前記混合物をシート形態に成形する段階、
を含む、複合シートの製造方法。
【請求項12】
前記コアシェル(Core−Shell)タイプのフィラー粒子を形成する段階は、
熱伝導性セラミック化合物および磁性粒子を混合する段階、および
前記混合物にせん断応力および衝撃力を加える段階、
を含む、請求項11に記載の複合シートの製造方法。
【請求項13】
前記混合物における磁性粒子と熱伝導性セラミック化合物の粒子の大きさの比率は5:1〜100:1である、請求項12に記載の複合シートの製造方法。
【請求項14】
前記混合物をシート形態に成形する段階は、高温プレス法、テープキャスティング法、真空圧出法、真空モールディングキャスティング法、またはスプレーコーティング法を用いる、請求項11に記載の複合シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−522884(P2012−522884A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529697(P2012−529697)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【国際出願番号】PCT/KR2011/001764
【国際公開番号】WO2012/023685
【国際公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(511211243)東▲ひょん▼電子株式会社 (1)
【Fターム(参考)】