説明

コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を用いた射出発泡成形方法

【課題】気泡の形状及びセル径が均一で、独立気泡性が高く、圧縮永久歪みが小さく、良好な外観を有する発泡成形品が得られる射出発泡成形方法を提供する。
【解決手段】本発明の射出発泡成形方法は、エチレン・α−オレフィン系共重合体と、結晶性ポリエチレン系樹脂と、を含み、該エチレン・α−オレフィン系共重合体からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマー、発泡剤、及び造核剤を含有し、上記熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上である組成物を金型内キャビティ空間に射出し、その後、0.05〜0.4mm/秒の型開速度をもって金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して発泡させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物及びそれを用いた射出発泡成形方法に関する。更に詳しくは、化学架橋によらない3次元網目構造を有し、加工性に優れ、独泡性が高く、気泡の形状及びセル径が均一であり、十分な弾性回復性及び柔軟性を有し、且つ外観に優れた発泡成形品とすることができる熱可塑性エラストマー組成物及びそれを用いた射出発泡成形方法に関する。この方法により得られる発泡成形品は、インスツルメントパネルやグローブボックス等の自動車内装部品、ウェザーストリップ等の自動車外装部品、弱電部品、電化製品用防振材、その他の工業部品、建材、スポーツ用品等として利用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の内装部品、外装部品、家電製品、或いは情報機器等の振動及び騒音に対する緩衝材やソフトな触感部品等として発泡成形品が多くの製品分野において使用されている。特に、成形し易く、且つ発泡も容易である原料として、熱可塑性エラストマー組成物が注目されている。このような熱可塑性エラストマー組成物として、動的架橋し得る熱可塑性エラストマー組成物が挙げられ、特開平6−73222号公報等に開示されている熱可塑性エラストマー組成物を用いて発泡成形品が得られることが知られている。
【0003】
しかし、かかる動的架橋し得る熱可塑性エラストマー組成物に含有される架橋ゴム成分は均一に発泡させることができず、結晶性ポリオレフィンのみが均一に発泡し、全体としては不均質な発泡成形品になる。また、成形品の表面から発泡ガスが抜けるため、表面が平滑にならず、外観に劣る。更に、この熱可塑性エラストマー組成物を用いた発泡成形品では、臭気及び変色が十分に低減されていない。その他にも、製造工程が複雑である、使用し得る架橋剤が高価である、架橋剤等による汚損のため用途が限られる等、解決すべき課題が多い。また、非架橋型のものでは、生成する発泡成形品が架橋構造を有さないため、圧縮による永久歪みが大きい等の問題がある。
【0004】
熱可塑性エラストマー組成物として、例えば、下記特許文献1等に記載されている熱可塑性エラストマー組成物を用いて得られる発泡成形品は、従前のものと比べて柔軟である。一方、非架橋型のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を発泡させることもでき、この組成物は溶融させることで容易に、且つ均一に発泡させることができる。
【0005】
【特許文献1】特開平6−73222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の射出発泡成形法では、発泡成形品のセル径が大きくなるため、適度な柔軟性を有し、クッション性等に優れた発泡成形品が得られないとの問題がある。更に、セル径が不均一であり、特に、ゲート近傍と末端部とでセル径が大きく異なる発泡成形品となる傾向がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するものであり、気泡の形状及びセル径が均一であり、独立気泡性が高く、圧縮永久歪みが小さい等の優れた物性を備え、且つ良好な外観を有する発泡成形品を得ることができるコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物及びそれを用いた射出発泡成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するものであり、以下に挙げられる。
1. エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、を含み、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマー、発泡剤(4)及び造核剤(5)を含有し、
該熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
2. 上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記発泡剤(4)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する上記1に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
3. エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、を含有し、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマーと、
発泡剤(4)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた発泡剤含有樹脂と、
造核剤(5)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた造核剤含有樹脂と、を配合してなり、
上記熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
4. 上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記発泡剤(4)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する上記3に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
5. エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、下記ブロック共重合体(3)と、を含み、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)及び該ブロック共重合体(3)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマー、発泡剤(4)及び造核剤(5)を含有し、
該熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
[ブロック共重合体(3)];結晶性エチレン系重合体ブロックと、上記結晶性ポリエチレン系樹脂(2)に対するよりも上記エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)に対する相溶性が高いブロックとを備えるブロック共重合体
6. 上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記発泡剤(4)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する上記5に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
7. エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、下記ブロック共重合体(3)と、を含有し、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)及び該ブロック共重合体(3)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマーと、
発泡剤(4)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた発泡剤含有樹脂と、
造核剤(5)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた造核剤含有樹脂と、を配合してなり、
上記熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
[ブロック共重合体(3)];結晶性エチレン系重合体ブロックと、上記結晶性ポリエチレン系樹脂(2)に対するよりも上記エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)に対する相溶性が高いブロックとを備えるブロック共重合体
8. 上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記発泡剤(4)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する上記7に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
9. エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、を含み、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマー、有機系発泡剤(4a)、無機系発泡剤(4b)及び造核剤(5)を含有し、
上記熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
10. 上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記有機系発泡剤(4a)は、アゾ系発泡剤、ニトロソ系発泡剤、スルホニルヒドラジド系発泡剤、トリアジン系発泡剤及びテトラゾール系発泡剤から選ばれる少なくとも1種であり、上記無機系発泡剤(4b)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する上記9に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
11. エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、を含有し、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマーと、
(i)有機系発泡剤(4a)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた有機系発泡剤含有樹脂及び無機系発泡剤(4b)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた無機系発泡剤含有樹脂、又は(ii)有機系発泡剤(4a)及び無機系発泡剤(4b)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた有機・無機系発泡剤含有樹脂と、
造核剤(5)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた造核剤含有樹脂と、を配合してなり、
上記熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
12. 上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記有機系発泡剤(4a)は、アゾ系発泡剤、ニトロソ系発泡剤、スルホニルヒドラジド系発泡剤、トリアジン系発泡剤及びテトラゾール系発泡剤から選ばれる少なくとも1種であり、上記無機系発泡剤(4b)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する上記11に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
13. エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、下記ブロック共重合体(3)と、を含み、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)及びブロック共重合体(3)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマー、有機系発泡剤(4a)、無機系発泡体(4b)及び造核剤(5)を含有し、
上記熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
[ブロック共重合体(3)];結晶性エチレン系重合体ブロックと、上記結晶性ポリエチレン系樹脂(2)に対するよりも上記エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)に対する相溶性が高いブロックとを備えるブロック共重合体
14. 上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記有機系発泡剤(4a)は、アゾ系発泡剤、ニトロソ系発泡剤、スルホニルヒドラジド系発泡剤、トリアジン系発泡剤及びテトラゾール系発泡剤から選ばれる少なくとも1種であり、上記無機系発泡剤(4b)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する上記13に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
15. エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、下記ブロック共重合体(3)と、を含有し、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)及びブロック共重合体(3)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマーと、
(i)有機系発泡剤(4a)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた有機系発泡剤含有樹脂及び無機系発泡剤(4b)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた無機系発泡剤含有樹脂、又は(ii)有機系発泡剤(4a)及び無機系発泡体(4b)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた有機・無機系発泡剤含有樹脂と、
造核剤(5)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた造核剤含有樹脂と、を配合してなり、
上記熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
[ブロック共重合体(3)];結晶性エチレン系重合体ブロックと、上記結晶性ポリエチレン系樹脂(2)に対するよりも上記エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)に対する相溶性が高いブロックとを備えるブロック共重合体
16. 上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記有機系発泡剤(4a)は、アゾ系発泡剤、ニトロソ系発泡剤、スルホニルヒドラジド系発泡剤、トリアジン系発泡剤及びテトラゾール系発泡剤から選ばれる少なくとも1種であり、上記無機系発泡剤(4b)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する上記15に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
17. 上記1乃至16のいずれか1項に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出し、その後、0.05〜0.4mm/秒の型開速度をもって金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して該熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得ることを特徴とする射出発泡成形方法。
18. 金型後退遅延時間が、充填完了後0〜5秒である上記17記載の射出発泡成形方法。
19. 上記金型内キャビティ空間に充填された素材の初期肉厚に対して上記発泡成形品の最終肉厚が1.1〜5.0倍となるように型開きする上記17に記載の射出発泡成形方法。
20. 基材の表面に発泡成形品を形成する上記17に記載の射出発泡成形方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコアバック型発泡射出成形用熱可塑性エラストマー組成物によれば、化学架橋によらない3次元網目構造を有し、この3次元網目構造は融点を越えれば溶融して消滅するため、優れた加工性を有する熱可塑性エラストマー組成物とすることができる。この熱可塑性エラストマー組成物を使用すれば、独泡性が高く、セルの形状が均一であり、且つセル径が小さく、弾性回復性、柔軟性及び外観に優れた発泡成形品とすることができる。
また、有機系発泡剤と無機系発泡剤とを併用した場合は、先行して分解する無機系発泡剤が分解して生成する分解生成物が造核剤として機能するため、造核剤を別途配合する必要がない。更に、併用により、発泡成形品に残存する臭気が問題となる有機系発泡剤の含有量を低減することもできる。また、特に、無機系発泡剤と弱酸性化合物を併用した場合は、分解速度が高められる。尚、造核剤の粒径が2〜50μmであれば、適度なセル径を有し、クッション性等に優れた発泡成形品とすることができる。
本発明の射出発泡成形方法によれば、化学架橋によらない3次元網目構造を有し、この3次元網目構造は融点を越えれば溶融して消滅するため、優れた加工性を有する射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を使用し、特定の型開速度でコアバック方式により射出発泡成形することにより、独泡性が高く、セルの形状が均一であり、且つセル径が小さく、弾性回復性、柔軟性及び外観に優れた発泡成形品を得ることができる。
また、金型後退遅延時間、及び金型内キャビティ空間に充填された素材の初期肉厚に対する発泡成形品の最終肉厚を特定することによって、より優れた品質の発泡成形品を得ることができる。更に、特に、弱酸性化合物を併用した場合は、分解速度が高められる。また、樹脂製等の基材の表面に発泡成形品を形成すれば、基材と発泡層との積層品からなる自動車等の内装部品等を容易に成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上記「エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)」[以下、「EAO系共重合体(1)」ということもある。]は、エチレンと、エチレンを除くα−オレフィンとを主たる単量体として得られる共重合体である。このEAO系共重合体(1)に含まれるエチレン単位とα−オレフィン単位との合計を100モル%とした場合に、エチレン単位の含有量は、好ましくは40〜90モル%、特に好ましくは50〜90モル%である。エチレン単位の含有量が40モル%未満であると、発泡成形品の機械的強度が低下することがある。一方、90モル%を越えると、硬くなり過ぎることがある。
【0011】
このEAO系共重合体(1)としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・ブテン−1・非共役ジエン共重合体、エチレン・オクテン−1共重合体、エチレン・オクテン−1・非共役ジエン共重合体のようなオレフィン単位を主成分とする共重合体を使用することができる。これらの共重合体は1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、非共役ジエンとしては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等が好ましい。これらの非共役ジエンはEAO系共重合体(1)のヨウ素価が40以下となる量比で用いることが好ましい。
【0012】
EAO系共重合体(1)のムーニー粘度は特に限定されないが、好ましくは10〜500ML1+4(100℃)、特に好ましくは30〜400ML1+4(100℃)である。ムーニー粘度が10ML1+4(100℃)未満であると、発泡成形品の機械的強度及び弾性回復性が低下する傾向にある。一方、500ML1+4(100℃)を越えると、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)が十分に分散しないことがあり好ましくない。
【0013】
上記「結晶性ポリエチレン系樹脂(2)」は、エチレンを主たる単量体としてなり、エチレン単位の含有量は90〜100モル%である。また、この結晶性ポリエチレン系樹脂(2)を沸騰n−ヘキサンに溶解させた場合に、不溶分が好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上(通常、95質量%以下)である。不溶分が10質量%未満であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の加工性及び発泡成形品の機械的強度等が低下することがある。尚、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)の、差動走査熱量計による融解ピークは100℃以上であることが好ましい。
【0014】
この結晶性ポリエチレン系樹脂(2)としては、ポリエチレンの他、エチレンと、プロピレン、ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等の炭素数3〜8のα−オレフィンとを共重合させてなり、エチレン単位の含有量が90モル%以上である共重合体等が挙げられる。尚、ポリエチレンとしては、高圧法で製造された低密度ポリエチレン、及び中低圧法で製造された高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンのいずれも使用することができ、異なる方法により製造された2種以上を併用することもできる。
【0015】
EAO系共重合体(1)と結晶性ポリエチレン系樹脂(2)の各々の含有量は、これらの合計を100質量%とした場合に、EAO系共重合体(1)は、好ましくは10〜94質量%、更に好ましくは20〜94質量%、特に好ましくは40〜94質量%である。また、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)は、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは5〜30質量%である。EAO系共重合体(1)の含有量が10質量%未満であると、発泡成形品の弾性回復性が低下することがあり、94質量%を越えると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の加工性が低下する傾向にあり好ましくない。また、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)の含有量が5質量%未満であると、弾性回復性が低下することがあり、80質量%を越えると、弾性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0016】
上記「ブロック共重合体(3)」は、EAO系共重合体(1)に対する相溶性が高いブロックと、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)に対する相溶性が高いブロックとを有する。そのため、EAO系共重合体(1)と結晶性ポリエチレン系樹脂(2)とがブロック共重合体(3)を間にして橋架けされたかのような構造になり、EAO系共重合体(1)がマトリックスとなって、その中で結晶性ポリエチレン系樹脂(2)及びブロック共重合体(3)が3次元網目構造を形成することになるものと考えられる。
【0017】
ブロック共重合体(3)が有する結晶性エチレン系重合体ブロックとしては、エチレンの単独重合体、又はエチレン単位の含有量が50モル%以上である共重合体からなるブロックが挙げられる。また、このブロック共重合体(3)は両末端に結晶性エチレン系重合体ブロックを備えることが好ましい。このようなブロック共重合体(3)であれば、特に、均一な3次元網目構造が形成される。尚、通常、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)及びブロック共重合体(3)の各々が、3次元網目構造をそれぞれ形成している。
【0018】
ブロック共重合体(3)としては、両末端ブロックがブタジエン重合体ブロックからなり、中間ブロックが共役ジエン重合体ブロック及びビニル芳香族化合物−共役ジエンランダム共重合体ブロックの少なくとも一方からなり、両末端ブロックの1,2−ビニル基含量が中間ブロックの1,2−ビニル基含量未満であるブロック共重合体を水素添加してなるものが好ましい。
【0019】
更に、水素添加前のブロック共重合体において、両末端ブロックと中間ブロックとの合計を100質量%とした場合に、両末端ブロックが5〜90質量%、特に10〜80質量%であり、その1,2−ビニル基含量が25モル%未満であって、中間ブロックの1,2−ビニル基含量が25モル%以上であることがより好ましい。両末端ブロックの含有量が5質量%未満であると、マトリックスとなるEAO系共重合体(1)との結晶性の差が大きくなり、3次元網目構造が形成され難くなる。一方、この含有量が90質量%を越えると、発泡成形品の硬度が過度に上昇することがあり好ましくない。
【0020】
両末端ブロックは、90質量%以上、特に95質量%以上が1,3−ブタジエン単位からなる1,3−ブタジエン重合体ブロックであることが好ましい。その1,2−ビニル基含量は好ましくは25モル%未満、更に好ましくは20モル%以下、特に好ましくは15モル%以下である。この両末端ブロックの1,2−ビニル基含量が25モル%以上であると、水素添加後の結晶の融点降下が著しく、発泡成形品の機械的強度が低下し易い。この両末端ブロックの数平均分子量は好ましくは25,000〜630,000、特に好ましくは100,000〜480,000である。尚、ブロック共重合体(3)において、水素添加された両末端ブロックはポリメチレン構造を有する。
【0021】
中間ブロックは、50質量%以上、特に60質量%以上が共役ジエン単位からなる共役ジエン重合体ブロックであることが好ましい。共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等が挙げられる。これらのうちでは、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等が好ましく、1,3−ブタジエンが特に好ましい。共役ジエンは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
また、中間ブロックの1,2−ビニル基含量は、好ましくは25モル%以上、更に好ましくは25〜90モル%、特に好ましくは25〜85モル%である。この含量が25モル%未満であると、発泡成形品の柔軟性が低下し易い。この中間ブロックの数平均分子量は、好ましくは5,000〜665,000、特に好ましくは20,000〜540,000である。
【0023】
中間ブロックがビニル芳香族単位を有する場合、この単量体単位の含有量は、中間ブロック全体を100質量%とした場合に、好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。ビニル芳香族単位はブロック共重合体(3)のガラス転移温度を上昇させ、得られる熱可塑性エラストマー組成物の低温特性及び発泡成形品の柔軟性が低下する傾向にある。この中間ブロックは、水素添加によりゴム質のエチレン・ブテン−1共重合体、或いはビニル芳香族化合物・エチレン・ブテン−1共重合体と同様の構造を有する。
【0024】
ブロック共重合体(3)では、水素添加前のブロック共重合体の二重結合の少なくとも80%、特に90%、更には95〜100%が水素添加により飽和されていることが好ましい。ブロック共重合体(3)に残存する二重結合が多いと、発泡成形品の熱安定性及び耐久性が低下する傾向にある。更に、ブロック共重合体(3)の数平均分子量は、好ましくは50,000〜700,000、特に好ましくは100,000〜600,000である。数平均分子量が50,000未満であると、発泡成形品の耐熱性及び機械的強度等が低下することがあり、700,000を越えると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の流動性及び加工性が低下することがある。尚、本発明において使用することができるブロック共重合体(3)は、特開平3−1289576号公報に開示される方法によって調製することができる。
【0025】
ブロック共重合体(3)は、複数のブロック共重合体(3)がカップリング剤残基により連結されたものであってもよい。例えば、両末端ブロックを「A」、中間ブロックを「B」とした場合に、[A−B−A−X]−(A−B−A)(但し、nは2〜4の整数、Xはカップリング剤残基である。)であってもよい。また、カップリング剤残基の分子量が、各々のブロックの分子量に比べて十分に小さく、ブロック共重合体(3)の結晶性に影響しない範囲であれば、[A−B−X]−(B−A)(但し、nは2〜4の整数、Xはカップリング剤残基である。)であってもよい。即ち、相対的に小さなカップリング剤残基を省略して記載した場合に、[A−B]−Aであってもよい。
【0026】
カップリング剤としては、アジピン酸ジエチル、ジビニルベンゼン、テトラクロロケイ素、ブチルトリクロロケイ素、テトラクロロスズ、ブチルトリクロロスズ、ジメチルクロロケイ素、テトラクロロゲルマニウム、1,2−ジブロモエタン、1,4−クロロメチルベンゼン、ビス(トリクロロシリル)エタン、エポキシ化アマニ油、トリレンジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート等を使用することができる。
【0027】
ブロック共重合体(3)は、官能基により変性された変性水素添加ブロック重合体であってもよい。この官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、エポキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、イソシアネート基、スルホニル基及びスルホネート基等が挙げられる。変性は公知の方法により行うことができる。この変性ブロック重合体における官能基の含有量は、重合体の単量体単位全体を100モル%とした場合に、好ましくは0.01〜10モル%、更に好ましくは0.1〜8モル%、特に好ましくは0.15〜5モル%である。
【0028】
これらの官能基を導入するための好ましい単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
【0029】
EAO系共重合体(1)、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)及びブロック共重合体(3)の各々の含有量は、これらの合計を100質量%とした場合に、EAO系共重合体(1)は、好ましくは10〜94質量%、より好ましくは20〜94質量%、更に好ましくは25〜94質量%であり、特に好ましくは40〜94質量%、最も好ましくは50〜94質量%である。また、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)は、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは5〜30質量%であり、ブロック共重合体(3)は、好ましくは1〜80質量%、更に好ましくは2〜50質量%、特に好ましくは3〜30質量%である。
【0030】
EAO系共重合体(1)の含有量が10質量%未満であると、発泡成形品の弾性回復性が低下することがあり、94質量%を越えると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の加工性が低下する傾向にあり好ましくない。また、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)の含有量が5質量%未満であると、弾性回復性が低下することがあり、80質量%を越えると、弾性が低下する傾向にあり好ましくない。更に、ブロック共重合体(3)の含有量が1質量%未満であると、発泡成形品の弾性回復性が低下することがあり、80質量%を越えると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の加工性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0031】
また、これら3成分の合計を100質量%とした場合に、EAO系共重合体(1)が、40〜94質量%、特に50〜94質量%であり、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)及びブロック共重合体(3)の合計が6〜60質量%、特に6〜50質量%であって、且つ結晶性ポリエチレン系樹脂(2)とブロック共重合体(3)との合計を100質量%とした場合に、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)が、20〜80質量%、特に30〜70質量%である場合に特に安定して3次元網目構造が形成される。
【0032】
上記ブロック共重合体(3)は、両末端の結晶性エチレン共重合体ブロック(A)が結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と相溶性の高いブロックとして機能し、中間の共役ジエン系重合体からなるブロック(B)がEAO系共重合体(1)と、より相溶性の高いブロックとして機能する。
【0033】
本発明に関わる熱可塑性エラストマーは、上記エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、を含有する。必要に応じて他の添加剤を含有してもよい。
【0034】
本発明に関わる熱可塑性エラストマーは、温度230℃、荷重10kgの条件で測定したメルトフローレートが5g/10分以上であり、好ましくは10g/10分以上、特に好ましくは15g/10分以上(通常、200g/10分以下)である。メルトフローレートが5g/10分未満であると、得られる熱可塑性エラストマー組成物を射出する際の流動性が不十分となり、特に、流動距離が長い製品では充填不良が発生する。更に、この熱可塑性エラストマーは、210℃、引き取り速度2m/分で測定した溶融張力が3.0gf以上であり、好ましくは3.5gf以上、特に好ましくは4.0gf分以上(通常、12.0gf以下)である。溶融張力が3.0gf未満であると、コアバックにより発泡させる際にセル膜が破れてセルが連通化し、発泡成形品の内部に大きな空隙が生じ、クッション性に劣った製品となる。
【0035】
また、熱可塑性エラストマーは、その中実成形品のJIS−A硬度が好ましくは50〜90、特に好ましくは55〜80である。この硬度が50未満であると、発泡成形品の表面が過度に柔らかくなり、傷が付き易い。一方、90を越えると、柔軟性及び弾性回復性が低下する傾向にある。
【0036】
上記「発泡剤(4)」としては、熱分解型発泡剤、揮発型発泡剤及び中空粒子型発泡剤等の有機系発泡剤(4a)、並びに無機系発泡剤(4b)を使用することができる。これらの発泡剤は発泡成形品の製造法により選択して用いることが好ましい。発泡剤は、1種のみを使用してもよいし、所定の外観、物性等を備える発泡成形品が得られれば、2種以上を併用することもできる。
【0037】
熱分解型の有機系発泡剤(4a)としては、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ系発泡剤;アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、バリウムアゾジカルボキシレートのアゾ系発泡剤;p,p−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p−トルエンスルホニルセミカルバジド等のスルホニルヒドラジド系発泡剤;トリヒドラジノトリアジン等のトリアジン系発泡剤;5−フェニルテトラゾール、アゾビステトラゾールジグアニジン、アゾビステトラゾールアミノグアニジン等のテトラゾール系発泡剤等が挙げられる。
【0038】
揮発型の有機系発泡剤(4a)としては、プロパン、ブタン及びペンタン等の脂肪族炭化水素類;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;クロロジフルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフロオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、パーフルオロシクロブタン等のハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素、窒素、空気等;及び水等が挙げられる。
【0039】
中空粒子型の有機系発泡剤(4a)は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、内包される膨張剤とを有する熱膨張性微小球である。膨張剤としては、揮発型発泡剤と同様なものが用いられる。この発泡剤(4a)を100質量%とした場合に、膨張剤は5〜30質量%であることが好ましい。外殻を形成する熱可塑性樹脂としては、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリレート、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、スチレン系化合物、酢酸ビニル、ブタジエン、クロロプレン、ビニルピリジン等を重合又は共重合させたものが挙げられる。
【0040】
また、この外殻を形成する熱可塑性樹脂は、ジビニルベンゼン、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアヌレート等により架橋されていてもよい。この中空粒子型発泡剤の膨張前の質量平均粒子径は、通常、1〜100μmである。
【0041】
有機系発泡剤(4a)の含有量は、発泡剤の種類、所定の発泡倍率等により選択すればよいが、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に含まれる重合体成分の全量を100質量部とした場合に、好ましくは0.1〜10質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部である。
【0042】
無機系発泡剤(4b)としては、熱分解型発泡剤である炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機化合物が挙げられる。無機系発泡剤(4b)の含有量は、発泡剤の種類、所定の発泡倍率等により選択すればよいが、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に含まれる重合体成分の全量を100質量部とした場合に、好ましくは0.1〜10質量部、特に好ましくは0.5〜5質量部である。
【0043】
上記有機系発泡剤(4a)及び無機系発泡剤(4b)を併用する場合の含有割合(4a)/(4b)は、その合計を100質量%とすると、好ましくは5〜50/95〜5、特に好ましくは5〜20/95〜80である。
【0044】
上記無機系発泡剤(4b)を用いる際には、組成物に更に弱酸性化合物を含有させることが好ましい。弱酸性化合物を含有させることにより、分解速度を高めることができる。弱酸性化合物としては、シュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸等の有機酸、ホウ酸等の無機酸、及びクエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウム等の酸性塩が挙げられ、特にクエン酸及びクエン酸モノソーダが好ましい。これらは1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0045】
上記弱酸性化合物の配合量は、上記無機系発泡剤(4b)を100質量部とした場合に、好ましくは10〜60質量部、特に好ましくは25〜50質量部である。
尚、有機系発泡剤(4a)を使用すれば、容易に高倍率の発泡成形品とすることができるが、発泡成形品に臭気が残ることがある。一方、無機系発泡剤(4b)を用いた場合は、ほとんど臭気が発生せず、特に、車両内装材等の臭いが問題となる用途では好ましい。また、無機系発泡剤(4b)を併用すれば、有機系発泡剤(4a)の含有量を減らすことができ、これによって臭気を低減することができ、好ましい。
【0046】
上記「造核剤(5)」としては、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シリカ、チタニア等の無機化合物の粉末を使用することができる。これらの造核剤を含有させることにより、セル径を容易に調整することができ、適度な柔軟性等を有する発泡成形品とすることができる。造核剤の粒径は特に限定されないが、好ましくは2〜50μm、特に好ましくは5〜20μmである。この粒径が2μm未満であると、造核剤としての効果が得られ難くなり、セル径が大きくなってしまうため好ましくない。一方、粒径が50μmを越えると、セルが粗大、且つ少数となり、発泡成形品が柔軟になり過ぎ、クッション性に劣るものとなるため好ましくない。造核剤の含有量は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に含まれる重合体成分の全量を100質量部とした場合に、好ましくは0.01〜3質量部、更に好ましくは0.05〜2質量部、特に好ましくは0.1〜1質量部である。
【0047】
この造核剤(5)として、無機系発泡剤(4b)が分解して生成する分解生成物を利用することもできる。有機系発泡剤(4a)と無機系発泡剤(4b)とを併用した場合、無機系発泡剤(4b)が先行して分解し、例えば、炭酸水素ナトリウムを使用した場合は、分解後、炭酸ナトリウム等が生成する。そして、有機系発泡剤(4a)が分解する際に、この分解生成物が造核剤として機能する。従って、造核剤を配合しなくても、適度なセル径を有し、柔軟であってクッション性に優れる発泡成形品とすることができる。
【0048】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、更に、他の重合体を含有させることができる。例えば、樹脂成分として、炭素数3以上の結晶性α−オレフィン系重合体を含有させることができる。これにより発泡成形品の表面をより平滑にすることができる。この結晶性α−オレフィン系重合体としては、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ4−メチル−ペンテン−1、ポリヘキセン−1、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0049】
この結晶性α−オレフィン系重合体の含有量は、この重合体と、EAO共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、ブロック共重合体(3)の合計量を100質量部とした場合に、好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、特に好ましくは4質量部以下である。この含有量が10質量部を越えると、安定した3次元網目構造が形成されないことがある。
【0050】
更に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、鉱物油系軟化剤を含有させることができる。鉱物油系軟化剤としては、ナフテン系、パラフィン系等の鉱物油等が挙げられる。このような軟化剤を含有させることにより、得られる熱可塑性エラストマー組成物の加工性を向上させることができる。鉱物油系軟化剤の配合量は、EAO系共重合体(1)、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)及びブロック共重合体(3)の合計を100質量部とした場合に、通常、200質量部以下、好ましくは100質量部以下、更には50質量部以下である。鉱物油系軟化剤を配合する方法及び工程は特に限定されない。
【0051】
本発明のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物は、EAO系共重合体(1)、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)、場合によりブロック共重合体(3)を、所定の温度に調温されたバンバリーミキサ、加圧ニーダ等の密閉型混練機、ロールミル、一軸押出機、二軸押出機、或いは混練押出機等に供給し、混練して、好ましくはペレット形状で熱可塑性エラストマーとして調製した後、この熱可塑性エラストマーと、発泡剤(4)及び造核剤(5)とを射出成形機に供給し、混練することにより製造することができる。熱可塑性エラストマーを調製するための混練温度は、少なくともブロック共重合体(3)が溶融する温度であることが好ましく、通常、120〜280℃とすることができる。混練時間は、用いる装置及び混練温度にもよるが、好ましくは10秒〜60分、特に好ましくは30秒〜30分である。
【0052】
発泡剤(4)及び造核剤(5)は、それぞれ予めオレフィン系樹脂(6)に練り込み、発泡剤含有樹脂、又は造核剤含有樹脂とした後、EAO系共重合体(1)、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)、場合によりブロック共重合体(3)に配合することが好ましい。このようにすれば、発泡剤及び造核剤を得られる熱可塑性エラストマー組成物中でより均一に分散させることができる。
【0053】
オレフィン系樹脂(6)としては、主としてエチレン単位からなる樹脂、主としてプロピレン単位からなる樹脂、エチレン・プロピレン共重合体等を使用することができる。これらは結晶性であっても、非晶性であってもよく、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)として用いる樹脂と同じものであってもよい。また、発泡剤に用いるオレフィン系樹脂(6)と、造核剤に用いるオレフィン系樹脂(6)とは、同じであっても異なっていてもよい。尚、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に含有されるオレフィン系樹脂(6)は、その結晶性によりマトリックスを形成することもあり、三次元網目構造を構成することもある。更に、オレフィン系樹脂(6)は少量であるため、マトリックスと3次元網目構造とからなる熱可塑性エラストマー組成物の特定の構造が損なわれることはない。
【0054】
発泡剤含有樹脂を100質量%とした場合に、発泡剤の含有量は、好ましくは10〜60質量%、特に好ましくは20〜50質量%である。また、造核剤含有樹脂原料を100質量%とした場合に、造核剤の含有量は、好ましくは2〜20質量%、特に好ましくは5〜15質量%である。このような高濃度の樹脂原料、所謂、マスターバッチを調製し、これらのマスターバッチを、発泡剤、或いは造核剤が所定量となるように配合することにより、特に、発泡剤、造核剤の含有量が少量である場合でも、それらを均一に分散させることができる。
【0055】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、必要に応じて、各種添加剤、例えば、滑剤、老化防止剤、熱安定剤、HALS等の耐光剤、耐候剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、銅害防止剤等の安定剤、防菌剤、防黴剤、分散剤、可塑剤、難燃剤、粘着付与剤、酸化チタン、カーボンブラック及び有機顔料等の着色剤、フェライト等の金属粉末、ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の有機繊維、複合繊維、チタン酸カリウムウィスカー等の無機ウィスカー、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、アスベスト、マイカ、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、ハイドロタルサイト、カオリン、けい藻土、グラファイト、軽石、エボ粉、コットンフロック、コルク粉、硫酸バリウム、フッ素樹脂、ポリマービーズ、ポリオレフィンワックス、セルロースパウダー、ゴム粉、木粉等の充填剤又はこれらの混合物、イソブチレン・イソプレン共重合体、シリコーンゴム等のゴム、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂等を含有させることができる。
【0056】
本発明の射出発泡成形方法では、上記射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を、射出成形機の金型内に形成されたキャビティ空間に射出し、直ちに、或いは所定時間が経過した後、可動型、或いは可動型に内設された可動コアを所定の速度で所定位置まて後退させ、キャビティ空間を拡大することにより発泡させる、所謂、コアバック方式の射出成形法によって発泡成形品を得ることができる。金型の温度は、通常、射出される際の熱可塑性エラストマー組成物の温度より相当に低いため、キャビティの表面に接して形成される発泡成形品の表面には、ほとんど発泡していない緻密なスキン層が形成される。
【0057】
発泡成形品は、樹脂製等の基材の表面に接するように一体に形成することもできる。このような積層品は、キャビティ空間に予め基材を配置しておき、その表面に熱可塑性エラストマー組成物を射出することにより形成することができる。また、2本の射出ユニットが搭載された射出成形機を使用し、先ず、基材となる樹脂等を射出して基材を形成し、その後、可動型に内設された可動コアを後退させて熱可塑性エラストマー組成物を射出するためのキャビティ空間を形成し、次いで、熱可塑性エラストマー組成物を射出し、その後、可動コアを更に後退させてキャビティ空間を拡大し、発泡させて、基材の表面に発泡成形品が積層された積層品とすることもできる。
【0058】
本発明の射出発泡成形方法では、可動型の後退速度、或いは可動型に内設して設けられた可動コアの後退速度、即ち、上記「型開速度」は0.05〜0.4mm/秒である。この型開速度は、好ましくは0.1〜0.4mm/秒、更に好ましくは0.1〜0.3mm/秒である。このような型開速度とすることにより、平均セル径が200μm以下、特に50〜150μmと適度に微細であり、且つゲート近傍における平均セル径(D)と末端部における平均セル径(D)の差が小さい[(D/D)により表わした場合に、0.65以上、特に0.7以上(通常、1.2以下)である。]均質な発泡成形品とすることができる。
【0059】
型開速度が0.05mm/秒未満であると、冷却が進んで発泡不足が発生し、表面に凹凸が生じる。一方、型開速度が0.4mm/秒を越えると、セル径が大きくなり、過度に柔軟になって、クッション性等に優れた発泡成形品が得られない。また、セル径が不均一になり、特に、ゲート近傍と末端部のセル径が大きく異なった発泡成形品となる。
【0060】
更に、射出される熱可塑性エラストマー組成物の温度は、好ましくは180〜250℃、特に好ましくは190〜220℃である。この温度が180℃未満であると、熱可塑性エラストマー組成物の流動性が不十分となり、特に、末端部では充填不良が発生することがある。一方、250℃を越えると、熱可塑性エラストマー組成物の組成によっては熱劣化等が懸念される。また、金型温度は、好ましくは20〜60℃、特に好ましくは30〜50℃である。この温度が20℃未満であると、金型内表面と接触した熱可塑性エラストマー組成物が急激に冷却され、均質な発泡成形品とすることができず、末端部で充填不良が発生することもある。一方、60℃を越えると、発泡成形品のキャビティの表面に接して形成された部分に均質なスキン層が形成されないことがあり、好ましくない。
【0061】
また、熱可塑性エラストマー組成物を射出してから可動型、或いは可動型に内設された可動コアの後退を開始するまでの時間(金型後退遅延時間)は、型開速度にもよるが、5秒以下とすることが好ましく、射出完了後、直ちに後退を開始してもよい。この金型後退遅延時間は、好ましくは0.5〜3秒、特に好ましくは0.5〜1.5秒である。金型後退遅延時間が5秒を越えると、冷却が進んで均質な発泡成形品とすることができない場合がある。
【0062】
金型の後退量は所定の発泡倍率により設定すればよく、限定されないが、特に、車両用内装材等では、金型内キャビティ空間に充填された素材の初期肉厚に対して発泡成形品の最終肉厚が1.1〜5.0倍となるように金型を後退させる、即ち、型開きすることが好ましい。この肉厚の比を発泡倍率とすれば、発泡倍率は、好ましくは1.3〜3倍、更に好ましくは1.5〜2倍であり、発泡成形品の肉厚が2〜10mm、特に3〜6mmである製品が多いことを考慮すれば、金型の後退量は、通常、0.5〜4mmである。
【0063】
尚、冷却時間は発泡成形品の寸法、或いは冷却方法にもよるが、脱型時の発泡成形品の温度が40〜80℃程度にまで低下しておればよく、一般に30秒以上であればよく、大型の製品であっても100秒で十分である。
【実施例】
【0064】
以下、車両内装材であるグローブボックスリッドを製造する場合の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明する。
【0065】
[1]コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物の製造
実施例1−1
下記〔1〕〜〔5〕の各々の成分を下記の質量比で使用し、容量10リットルの加圧型ニーダ(モリヤマ社製)により、設定温度150℃、混練時間15分、ロータの回転数(前方側)32回/分、(後方側)28回/分で溶融させ、混練した後、フィーダールーダ(モリヤマ社製)によりペレット化し、発泡成形品を製造するための熱可塑性エラストマーとして用いた。更に、このペレットを使用し、射出成形機(東芝機械社製、型式「IS−90B」)により厚さ2mmのシートを成形し、透過型電子顕微鏡により観察した。また、このシートを用いてJIS−A硬度を測定した。
【0066】
シートの観察は、上記シートをミクロトームにより平面方向に切断して薄片とし、この薄片をRuO等により染色した後、透過型電子顕微鏡により観察することにより行った。倍率2000倍の写真による説明図である図1によれば、3次元網目構造が形成されていることが明瞭に分かる。また、この実施例1−1の熱可塑性エラストマーの後記の方法により測定したメルトフローレート(MFR)は16g/10分、溶融張力は6.7gf、JIS−A硬度は67であった。
【0067】
(1)配合成分及び配合量
〔1〕EAO系共重合体(1):エチレン・プロピレン・5−エチリデン−2−ノルボルネン3元共重合体(エチレン含量;66質量%、5−エチリデン−2−ノルボルネン含量;4.5質量%、ML1+4(100℃)=400、鉱物油系軟化剤(出光興産社製、商品名「ダイアナプロセスオイルPW380」)を50質量%含有し油展されている。)、配合量;58質量部
〔2〕結晶性ポリエチレン系樹脂(2):線状低密度ポリエチレン(密度;0.925g/cm、MFR(温度190℃、荷重2.16kg);0.8g/10分、日本ポリケム社製、商品名「ノバテックLLDPE UF423」)、配合量;17質量部
〔3〕ブロック共重合体(3):表1に記載の水素添加ジエン系共重合体、配合量;20質量部
〔4〕結晶性α−オレフィン共重合体:プロピレン−エチレンブロック共重合体(密度;0.90g/cm、MFR(温度230℃、荷重2.16kg);3g/10分、日本ポリケム社製、商品名「ノバテックPP BC5CW」)、配合量;5質量部
〔5〕老化防止剤:チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1010」、配合量;0.2質量部
但し、〔1〕、〔2〕、〔3〕及び〔4〕の合計を100質量部とする。
【0068】
【表1】

【0069】
尚、発泡剤及び造核剤は、以下のようにして調製したマスターバッチを、前記のようにして調製した熱可塑性エラストマーとともに射出成形機に供給し、配合した。このようにしてコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0070】
発泡剤マスターバッチ(永和化成社製、商品名「ポリスレンEE405」、低密度ポリエチレンに、無機系発泡剤である炭酸水素ナトリウムとクエン酸とが合計量で40質量%配合されている。)と、造核剤マスターバッチ(低密度ポリエチレンに炭酸カルシウム粉末が8質量%配合されている。)とを、質量比で等量混合して発泡剤と造核剤とを含有するマスターバッチを調製し、上記熱可塑性エラストマーの場合と同様にしてペレットとした。
【0071】
(2)物性の評価方法
〔1〕メルトフローレート(MFR);温度230℃、荷重10kgで、JIS K 7210により測定した。
〔2〕溶融張力;メルトテンションテスター(東洋精機製作所社製、型式「メルトテンションテスターII型」)により、温度210℃、押出速度10mm/分、引き取り速度2m/分の条件で測定した。
〔3〕JIS−A硬さ;シートをダンベルカッターにより所定の形状に打ち抜いて試験片を作製し、JIS K 6301により測定した。
【0072】
実施例1−2
発泡剤マスターバッチ(永和化成社製、商品名「ポリスレンEV309」、低密度ポリエチレンに有機系発泡剤であるアゾジカルボンアミドが30質量%配合されている。)と、造核剤マスターバッチ(低密度ポリエチレンに炭酸カルシウム粉末が6質量%配合されている。)とを、質量比で等量混合して発泡剤と造核剤とを含有するマスターバッチを調製し、配合した他は、実施例1−1と同様にしてコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0073】
実施例1−3
発泡剤マスターバッチ(永和化成社製、商品名「ポリスレンEE202H」、低密度ポリエチレンに、有機系発泡剤であるアゾジカルボンアミドと無機系発泡剤である炭酸水素ナトリウムとクエン酸とが合計量で20質量%配合されている。)を配合した他は、実施例1−1と同様にしてコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を得た。尚、この実施例1−3では、造核剤は配合されていないが、先行して分解する炭酸水素ナトリウムから生成する炭酸ナトリウムが、遅れて分解するアゾジカルボンアミドの分解時に造核剤として機能する。
【0074】
実施例1−4
まず、下記〔1〕〜〔6〕の各々の成分を所定の質量比で使用し、実施例1−1と同様にして熱可塑性エラストマーを得た。
〔1〕EAO系共重合体(1):実施例1−1で用いた重合体、配合量;65質量部
〔2〕結晶性ポリエチレン系樹脂(2):線状高密度ポリエチレン(日本ポリオレフィン社製、商品名「KMA90K」)、配合量;10質量部
〔3〕ブロック共重合体(3):表1に記載の水素添加ジエン系共重合体、配合量;10質量部
〔4〕結晶性α−オレフィン共重合体:実施例1−1で用いたプロピレン−エチレンブロック共重合体、配合量;10質量部
〔5〕鉱物油系軟化剤:出光興産社製、商品名「ダイアナプロセスオイルPW−380」、配合量;5質量部
〔6〕老化防止剤:チバスペシャルティケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1010」、配合量;0.2質量部
但し、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕及び〔5〕の合計を100質量部とする。得られた熱可塑性エラストマーのMFRは50g/10分、溶融張力は3.4gf、JIS−A硬度は70であった。
この熱可塑性エラストマーを用いて、実施例1−1と同様にして、コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0075】
比較例1−1
部分架橋型熱可塑性エラストマー(住友化学社製、商品名「TPE4652」)に、実施例1−1と同様にして、無機系発泡剤と造核剤とを配合し、熱可塑性エラストマー組成物を得た。部分架橋型熱可塑性エラストマーの実施例1−1と同様にして測定したMFRは15g/10分、溶融張力は2.8gf、JIS−A硬度は57であった。
【0076】
比較例1−2
造核剤マスターバッチを配合せず、発泡剤マスターバッチを3.75質量部配合した他は、実施例1−1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0077】
[2]グローブボックスリッドの基材の作製
10質量%のタルクと、3質量%のエチレン・プロピレン共重合ゴムを含有するポリプロピレン(出光石油化学社製、商品名「出光ポリプロピレン J−762HP」)からなる複合材料を使用し、射出成形により厚さ2.5mmの基材を作製した。
【0078】
[3]グローブボックスリッドの製造
実施例2−1〜4及び比較例2−1〜2
[1]で調製した実施例1−1〜4及び比較例1−1〜2における熱可塑性エラストマーペレット100質量部と、マスターバッチペレット7.5質量部とをドライブレンドした後、射出成形機(東芝機械社製、型式「IS280E」)のホッパーに供給し、下記のようにして[2]において作製した基材の表面に厚さ4mmの発泡層(発泡成形品)が形成されたグローブボックスリッドを製造した。
【0079】
以下、グローブボックスリッドの製造方法を、その工程の概略を記載した図2に基づいて説明する。
図2(a)のように、30℃に調温された金型1のキャビティ空間の一部に、基材2を配置した。その後、図2(b)のように、キャビティ空間の基材2が配置されていない厚さ2mmの他部空間に、210℃の熱可塑性エラストマー組成物3を射出した。射出は1.5秒で完了し、図2(c)のように、キャビティ空間の他部に熱可塑性エラストマー組成物3が充填された。1秒後(コアバック開始時間)、図2(d)のように、可動型1aを0.3mm/秒の速度(コアバック速度)で2mm(コアバック量)後退させ、熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、そのまま60秒冷却した。次いで、図2(e)のように、型開きし、基材2の表面に厚さ4mm(発泡倍率は2倍になる。)の発泡層4が形成されてなるグローブボックスリッドを得た。
【0080】
比較例2−3
型開速度を1mm/秒とした他は、実施例2−1と同様にしてグローブボックスリッドを得た。
【0081】
[4]発泡層の評価
[3]で製造したグローブボックスリッドの断面をマイクロスコープにより観察した。その結果、図3及び図4の写真による説明図のように、実施例2−1は、ゲート近傍と末端部との平均セル径の差が小さく、且つ径が200μm以下の微細なセルを有する発泡層が形成されていた。発泡層のゲート近傍における平均セル径(D)は98μm、末端における平均セル径(D)は102μmであり、(D/D)は0.96であった。
【0082】
また、実施例2−2〜4も同様に、均一、且つ径が200μm以下の微細なセルを有する発泡層が形成されていた。尚、実施例2−2〜4の発泡層において、ゲート近傍におけるセル径はそれぞれ105μm、94μm及び98μmであり、末端におけるセル径はそれぞれ115μm、123μm及び118μmであった。
一方、図5の写真による説明図のように、比較例2−1は、架橋反応により均一な発泡が阻害され、粗大な空隙が形成されたり、一部に割れが発生したりしていた。また、図6の写真による説明図のように、比較例2−2は、セルが不均一、且つ粗大であった。
【0083】
また、図7の写真による説明図のように、比較例2−3において得られたグローブボックスリッドでは、セル径が全般に大きく、末端部では特に大きく、発泡層のゲート近傍における平均セル径(D)は210μm、末端における平均セル径(D)は345μmであり、(D/D)は0.61であった。そのため、柔軟になりすぎ、基材に突き当たる底突き感があり、品質の低いものであった。
【0084】
尚、本発明では、上記の実施例に限られず、本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。例えば、グローブボックスリッドは、以下のようなダブルインジェクション方式により製造することもできる。
【0085】
図8(a)のように、可動コア1bを有する可動型1aを備える金型1を準備する。その後、図8(b)のように、適温に調温された金型1のキャビティ空間に、複合材料2を射出し、冷却して基材3を形成する。次いで、図8(c)のように、可動コア1bを後退させ、熱可塑性エラストマー組成物を射出するための空間を形成する。その後、この空間に、図8(d)のように、所定温度の熱可塑性エラストマー組成物4を射出する。所定の時間経過後、図8(e)のように、可動コア1bを所定の型開速度で後退させ、熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、そのまま冷却する。次いで、図8(f)のように、脱型し、基材3の表面に所定泡倍率の発泡層5が形成されてなるグローブボックスリッドを得る。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施例1−1のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を射出成形したシートの倍率2000倍の写真による説明図である。
【図2】グローブボックスリッドの製造工程の模式図である。(a)はキャビティ空間に基材を配置した状態である。(b)は射出しつつある状態である。(c)は射出が完了した状態である。(d)は可動型を後退させ、発泡させた状態である。(e)は型開きした状態である。
【図3】実施例2−1で得られたグローブボックスリッドの断面のマイクロスコープによる拡大写真による説明図である。
【図4】実施例2−1で得られたグローブボックスリッドの断面の、(a)はゲート近傍、(b)は末端部のマイクロスコープにより得た拡大写真による説明図である。
【図5】比較例2−1で得られたグローブボックスリッドの断面のマイクロスコープによる拡大写真による説明図である。
【図6】比較例2−2で得られたグローブボックスリッドの断面のマイクロスコープによる拡大写真による説明図である。
【図7】比較例2−3で得られたグローブボックスリッドの断面の、(a)はゲート近傍、(b)は末端部のマイクロスコープにより得た拡大写真による説明図である。
【図8】グローブボックスリッドの他の製造工程の模式図である。(a)は成形開始前の状態である。(b)は複合材料を射出した後の状態である。(c)は複合材料を冷却し、基材を形成した後、可動コアを後退させ、熱可塑性エラストマー組成物を射出するための空間を形成した状態である。(d)は射出が完了した状態である。(e)は可動コアを後退させ、発泡させた状態である。(f)は脱型した状態である。
【符号の説明】
【0087】
1;金型、1a;可動型、1b;可動コア、2;基材,複合材料、3;熱可塑性エラストマー組成物,基材、4;発泡層,熱可塑性エラストマー組成物、5;発泡層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、を含み、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマー、発泡剤(4)及び造核剤(5)を含有し、
該熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記発泡剤(4)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する請求項1に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、を含有し、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマーと、
発泡剤(4)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた発泡剤含有樹脂と、
造核剤(5)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた造核剤含有樹脂と、を配合してなり、
上記熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記発泡剤(4)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する請求項3に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、下記ブロック共重合体(3)と、を含み、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)及び該ブロック共重合体(3)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマー、発泡剤(4)及び造核剤(5)を含有し、
該熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
[ブロック共重合体(3)];結晶性エチレン系重合体ブロックと、上記結晶性ポリエチレン系樹脂(2)に対するよりも上記エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)に対する相溶性が高いブロックとを備えるブロック共重合体
【請求項6】
上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記発泡剤(4)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する請求項5に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、下記ブロック共重合体(3)と、を含有し、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)及び該ブロック共重合体(3)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマーと、
発泡剤(4)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた発泡剤含有樹脂と、
造核剤(5)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた造核剤含有樹脂と、を配合してなり、
上記熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
[ブロック共重合体(3)];結晶性エチレン系重合体ブロックと、上記結晶性ポリエチレン系樹脂(2)に対するよりも上記エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)に対する相溶性が高いブロックとを備えるブロック共重合体
【請求項8】
上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記発泡剤(4)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する請求項7に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項9】
エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、を含み、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマー、有機系発泡剤(4a)、無機系発泡剤(4b)及び造核剤(5)を含有し、
上記熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項10】
上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記有機系発泡剤(4a)は、アゾ系発泡剤、ニトロソ系発泡剤、スルホニルヒドラジド系発泡剤、トリアジン系発泡剤及びテトラゾール系発泡剤から選ばれる少なくとも1種であり、上記無機系発泡剤(4b)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する請求項9に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項11】
エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、を含有し、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマーと、
(i)有機系発泡剤(4a)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた有機系発泡剤含有樹脂及び無機系発泡剤(4b)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた無機系発泡剤含有樹脂、又は(ii)有機系発泡剤(4a)及び無機系発泡剤(4b)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた有機・無機系発泡剤含有樹脂と、
造核剤(5)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた造核剤含有樹脂と、を配合してなり、
上記熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項12】
上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記有機系発泡剤(4a)は、アゾ系発泡剤、ニトロソ系発泡剤、スルホニルヒドラジド系発泡剤、トリアジン系発泡剤及びテトラゾール系発泡剤から選ばれる少なくとも1種であり、上記無機系発泡剤(4b)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する請求項11に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項13】
エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、下記ブロック共重合体(3)と、を含み、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)及びブロック共重合体(3)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマー、有機系発泡剤(4a)、無機系発泡体(4b)及び造核剤(5)を含有し、
上記熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
[ブロック共重合体(3)];結晶性エチレン系重合体ブロックと、上記結晶性ポリエチレン系樹脂(2)に対するよりも上記エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)に対する相溶性が高いブロックとを備えるブロック共重合体
【請求項14】
上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記有機系発泡剤(4a)は、アゾ系発泡剤、ニトロソ系発泡剤、スルホニルヒドラジド系発泡剤、トリアジン系発泡剤及びテトラゾール系発泡剤から選ばれる少なくとも1種であり、上記無機系発泡剤(4b)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する請求項13に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項15】
エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)と、結晶性ポリエチレン系樹脂(2)と、下記ブロック共重合体(3)と、を含有し、該エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)からなるマトリックス中において、該結晶性ポリエチレン系樹脂(2)及びブロック共重合体(3)が3次元網目構造を構成している熱可塑性エラストマーと、
(i)有機系発泡剤(4a)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた有機系発泡剤含有樹脂及び無機系発泡剤(4b)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた無機系発泡剤含有樹脂、又は(ii)有機系発泡剤(4a)及び無機系発泡体(4b)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた有機・無機系発泡剤含有樹脂と、
造核剤(5)がオレフィン系樹脂(6)に練り込まれた造核剤含有樹脂と、を配合してなり、
上記熱可塑性エラストマーの温度230℃、荷重10kgにおけるメルトフローレートが5g/10分以上であり、且つ210℃、引き取り速度2m/分における溶融張力が3.0gf以上であって、
本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出した後、金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して本コアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得るために用いられることを特徴とするコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
[ブロック共重合体(3)];結晶性エチレン系重合体ブロックと、上記結晶性ポリエチレン系樹脂(2)に対するよりも上記エチレン・α−オレフィン系共重合体(1)に対する相溶性が高いブロックとを備えるブロック共重合体
【請求項16】
上記造核剤(5)は粒径2〜50μmの無機化合物粉末であり、上記有機系発泡剤(4a)は、アゾ系発泡剤、ニトロソ系発泡剤、スルホニルヒドラジド系発泡剤、トリアジン系発泡剤及びテトラゾール系発泡剤から選ばれる少なくとも1種であり、上記無機系発泡剤(4b)は炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムから選ばれる少なくとも1種であり、更に、本組成物にシュウ酸、マロン酸、クエン酸、乳酸、ホウ酸、クエン酸モノソーダ、酸性酒石酸カリウムから選ばれる少なくとも1種の弱酸性化合物を含有する請求項15に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載のコアバック型射出発泡成形用熱可塑性エラストマー組成物を金型内キャビティ空間に射出し、その後、0.05〜0.4mm/秒の型開速度をもって金型を開くことにより該キャビティ空間を拡大して該熱可塑性エラストマー組成物を発泡させ、スキン層と発泡層とを有する発泡成形品を得ることを特徴とする射出発泡成形方法。
【請求項18】
金型後退遅延時間が、充填完了後0〜5秒である請求項17記載の射出発泡成形方法。
【請求項19】
上記金型内キャビティ空間に充填された素材の初期肉厚に対して上記発泡成形品の最終肉厚が1.1〜5.0倍となるように型開きする請求項17に記載の射出発泡成形方法。
【請求項20】
基材の表面に発泡成形品を形成する請求項17に記載の射出発泡成形方法。

【図2】
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【図8】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−13780(P2008−13780A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257964(P2007−257964)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【分割の表示】特願2003−523532(P2003−523532)の分割
【原出願日】平成14年8月30日(2002.8.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】