コア紐からなる拡径保持部材および拡径保持部材を用いた常温収縮チューブユニット
【課題】常温収縮チューブの収縮力が高い場合でも、コア紐の凹凸状の嵌合により耐えることが可能な拡径保持部材およびこの拡径保持部材を用いた常温収縮チューブユニットを提供する。
【解決手段】拡径保持部材1のコア紐10は、表面21と裏面22と第1側面31と第2側面32と、凸部41と、凹部42と、を備え、コア紐10の凸部41と、隣接して配置されるコア紐10の凹部42とを、コア紐10の長手方向と交差する方向Lに沿って嵌め合わせることで構成されている。
【解決手段】拡径保持部材1のコア紐10は、表面21と裏面22と第1側面31と第2側面32と、凸部41と、凹部42と、を備え、コア紐10の凸部41と、隣接して配置されるコア紐10の凹部42とを、コア紐10の長手方向と交差する方向Lに沿って嵌め合わせることで構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温収縮チューブを拡径状態に保持する拡径保持部材およびこの拡径保持部材を用いた常温収縮チューブユニットに関し、特に、高圧用電力ケーブルの絶縁処理に用いられる肉厚で収縮力の強い常温収縮チューブを拡径保持するのに好適な拡径保持部材およびこの拡径保持部材を用いた常温収縮チューブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルを接続する場合、一方の電力ケーブルの導体と他方の電力ケーブルの導体を接続スリーブにより電気的に接続し、その外周にゴム製の常温収縮チューブを装着して絶縁処理することが行われている。
【0003】
電力ケーブルに装着される前の常温収縮チューブは、コア紐をスパイラル状に巻いた円筒状の拡径保持部材で拡径状態に保持されている。巻かれたコア紐を解いて拡径保持部材を常温収縮チューブ内から取り除くと、常温収縮チューブは収縮して電力ケーブルの外周面に密着する。
この種の拡径保持部材としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1に記載されている拡径保持部材は、表面を右側方に延長して略L字状の嵌合部を設け、裏面を左側方に延長して略逆L字状の嵌合部を設けた樹脂製のコア紐からなるものである。このコア紐をスパイラル状に巻き、コア紐の隣接した部分の前記嵌合部同士を嵌め合わせることにより円筒形状に形成することにより、前記拡径保持部材は製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−187106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の拡径保持部材は、通常、巻付成形装置によりコア紐を筒状に巻くと同時に、超音波溶着機によって嵌め合い部分を一定間隔で溶着して、拡径保持部材とする。これにより、常温収縮チューブの収縮力(面圧)に耐える強度を確保できるようにしている。特に、高圧ケーブル用の肉厚な常温収縮絶縁筒は径方向に収縮しようとする力が大きいので、これを拡径するための拡径保持部材では、コア紐同士の溶着が必要になっている。
【0006】
ところが、コア紐の嵌め合い部分を超音波溶着した場合、その溶着強度は、コア紐の成形材料の品質や成形精度のバラツキによっても変化してしまう。コア紐の溶着強度が弱いと、常温収縮チューブの収縮力により、拡径保持部材の円筒形状が崩壊することがある。また、常温収縮チューブをケーブル接続部に装着するために、コア紐を巻解き、拡径保持部材を常温収縮チューブ内から引き抜く際の、途中の段階、すなわち、常温収縮チューブの一部が縮径し、常温収縮チューブが途中から拡径している状態になったときには、常温収縮チューブの収縮力が、途中まで引き抜かれた拡径保持部材の端部のコア紐に対して強く働き、拡径保持部材の円筒形状が崩れてしまうことがある。
逆に、超音波溶着の強度が過剰である場合には、コア紐を解くことができず、拡径保持部材を常温収縮チューブから引き抜けなくなり、常温収縮チューブを縮径することができずに施工不能になるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解消するために、常温収縮チューブの収縮力が高い場合でも、コア紐の凹凸状の嵌合により耐えることが可能な拡径保持部材およびこの拡径保持部材を用いた常温収縮チューブユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解消するために、本発明の拡径保持部材は、コア紐をスパイラル状に巻き、前記コア紐の隣接した部分同士を嵌め合わせることにより円筒形状に形成した、常温収縮チューブを拡径した状態に保持するための拡径保持部材であって、前記コア紐は、表面と、前記表面とは反対位置に形成された裏面と、前記表面と前記裏面とに交差するように形成された第1側面と、前記表面と前記裏面とに交差するように形成され、前記第1側面とは反対の位置に形成された第2側面と、前記第1側面の、前記表面および裏面から離れた位置に形成されている凸部と、前記第2側面の、前記表面および裏面から離れた位置に形成されている、前記凸部が嵌合可能な凹部と、を備えたものであり、前記コア紐の前記凸部と、隣接して配置される前記コア紐の前記凹部とを嵌め合わせることで構成されていることを特徴とする。これにより、この拡径保持部材は、コア紐の凸部と凹部が表面および裏面の両面から離れた位置に形成されているので、拡径保持部材の径方向内側に力が加わったときには、凸部の面と凹部の面が当たり抵抗する。この結果、この拡径保持部材は常温収縮チューブの収縮力が大きい場合でも、耐えて拡径保持状態を維持することができる。
【0009】
本発明の拡径保持部材では、前記凸部の先端が滑らかに膨らむように形成されており、前記凸部が嵌め合わされる前記凹部の奥部が滑らかに広がるように形成されてあってもよい。このように凸部を形成すると、拡径保持部材を製造する際にコア紐の凸部と凹部の嵌め合わせを円滑に行えると共に、拡径保持部材を解体する際にコア紐を滑らかに引き抜くことができる。
【0010】
本発明の拡径保持部材では、前記凸部の一方の面が前記表面に対して傾斜して形成されており前記凸部の他方の面が前記表面と平行であってもよい。このようにすれば、コア紐は常温収縮チューブを拡径して保持できる耐力が大きくなる
【0011】
また、本発明の拡径保持部材では、前記凸部の一方の平面が前記表面と平行であり前記凸部の他方の平面が前記表面に対して傾斜して形成されてあってもよい。このようにすれば、コア紐は常温収縮チューブを拡径して保持できる耐力が大きくなると共に、拡径保持部材を解体する際にコア紐を滑らかに引き抜くことができる。
【0012】
本発明の常温収縮チューブユニットは、常温収縮チューブの孔内に前記拡径保持部材を挿入して拡径したことを特徴とする。これにより、この常温収縮チューブユニットによれば、常温収縮チューブを拡径した状態をより安定に保持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、常温収縮チューブの収縮力が高い場合でも、コア紐の凹凸状の嵌合により耐えることが可能な拡径保持部材およびこの拡径保持部材を用いた常温収縮チューブユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すコア紐の隣接する部分の嵌め合わせ状態を示す断面を有する斜視図である。
【図3】図2に示すコア紐の断面を示す図である。
【図4】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図5】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図6】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図7】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図8】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図9】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図10】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図11】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図12】常温収縮チューブが拡径保持された状態からコア紐が引き抜かれ始め、そして常温収縮チューブが電力ケーブルの外周面に密着された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい実施形態を示す斜視図である。図1に示す拡径保持部材1は、凹凸形状部分を有する長尺のコア紐10を、コア成形装置(図示せず)によって、スパイラル状に巻いて形成された円筒状の部材である。拡径保持部材1はスパイラルコアとも呼ばれ、コア紐10は、可撓性を有する。
【0016】
図1に示すコア紐10には、常温収縮チューブが収縮しようとする力に耐えうる強度が要求され、使用環境温度において軟化しにくく、常温収縮チューブの拡径状態を維持できる材質で成形されている。コア紐10は、例えば押出し成形により作られており、弾性変形可能な材質、例えばポリプロピレン樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂により作られている。コア紐10の先端部90は、拡径保持部材1の内側を通して後端側に引き出されている。
【0017】
拡径保持部材1は、被せられた常温収縮チューブの収縮力によって潰れない強度を要求される。
【0018】
図2は、図1に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10の嵌め合わせの構造例を示しており、図1のB−B線における断面を有する斜視図である。図2では、図面の簡単化のために、コア紐10の嵌め合わせ構造の一部分を代表して示している。すなわち、図2では、図1中に符号11、12で示す隣接したコア紐10の部分同士の嵌合状態を示している。図3は、より広い範囲の断面形状を示している。
【0019】
図2と図3に示すように、コア紐10は、肉圧が比較的均等になるように形成されている。
図2に示すコア紐10の隣接する部分11,12は、共に同じ断面形状を有している。コア紐10は、拡径保持部材1の外周面となる表面21と内周面となる裏面22と、第1側面31と、第1側面31とは反対側の第2側面32と、1つの凸部41と、1つの凹部42を有する。
【0020】
図2と図3に示すように、各部分11,12の表面21と裏面22は、距離S1だけ離れてY方向に沿って平行に形成されている。裏面22は、表面21とは反対側の面である。表面21は拡径保持部材1の外周面を形成する面で、裏面は拡径保持部材1の内周面を形成する面である。表面21と裏面22は、いずれもほぼ平面になっている。
【0021】
図2と図3の例では、第1側面31は、表面21と前記裏面22とに交差するように形成されている。第2側面32は、表面21と裏面22とに交差するように形成されている。第1側面31と第2側面32は互いに反対の位置に形成されている。第1側面31と第2側面32は、図示例では表面21と裏面22に対して直交する方向、すなわちZ方向に沿って形成されている。第1側面31と第2側面32は、凸部41と凹部42を嵌め合わせたとき、互いに密接する形状に形成されている。
【0022】
図2と図3に示すように、前記凸部41と1つの凹部42は、共にコア紐10の長手方向Lに沿って平行に連続して形成されている。
凸部41は、第1側面31の中央部に、すなわち表面21および裏面22から離れた位置に突設されている。凸部41の先端は滑らかに膨らむように形成されており、これに合わせて、凸部41が嵌め合わされる凹部42の奥部が滑らかに広がるように形成されている。凸部41の先端は滑らかに膨らむ円弧形状に形成され、凸部41の基部の両側にはくびれ部分41Rを有している。凹部42の奥部は滑らかに広がるように円弧形状に形成されており、凹部42の開口部分の両側には膨出部42Rを有している。
凸部41は、第1側面31に突出して形成され、しかもコア紐10の長手方向Lに沿って設けられている。凸部41と表面21との間には第1空間部51が形成され、凸部41と裏面22との間には第2空間部52が形成されている。図2中符号Dは、部分11,12の凸部41の先端から第2側面32までの形成幅である。
【0023】
図2と図3に示すように、第1側面31は、第1部分31Bと第2部分31Cを有する。第1部分31Bは、表面21と凸部41の間に形成されており、第2部分31Cは、裏面22と凸部41の間に形成されている。第1部分31Bは、凸部41の基部と表面21を接続している曲面部分であり、滑らかに削がれたくびれ部分41Rを有している。同様にして、第2部分31Cは、凸部41の基部と裏面22を接続している曲面部分であり、滑らかに削がれたくびれ部分41Rを有している。
【0024】
前記第2側面32の中央部、すなわち表面21および裏面22から離れた位置には前記凹部42が形成されており、第2側面32は、第1部分32Bと第2部分32Cを有する。第1部分32Bは、表面21と凹部42の間に形成されており、第2部分32Cは、裏面22と凹部42の間に形成されている。第1部分32Bは、凹部42の基部と表面21を接続している曲面部分であり、滑らかに突出して形成されている。同様にして、第2部分32Cは、凸部41の基部と裏面22を接続している曲面部分であり、滑らかに突出して形成されている。部分11と部分12の断面形状は、対称形状に形成されている。
【0025】
図2に示すように、コア紐10は、凸部41と凹部42と設けたので、コア紐10の断面形状で明らかなように、肉厚が比較的均等であり、押し出し成形がし易く、表面21と裏面22の平滑性が出しやすい。また凸部41と凹部42の形状を丸く形成したので、安定して成形できる。
【0026】
図2と図3に示すようにして、コア紐10の隣接する部分11,12は、凸部41と凹部42を用いて互いに中心軸CL(横方向)に沿って嵌め合わされており、着脱可能に中心軸CL方向、すなわちY方向に相互に連結されている。この場合に、凸部41のくびれ部分41Rが凹部42の膨出部42Rに嵌め合わされ、凸部41が第2側面32の第1部分32Bと第2部分32Cとに挟まれているので、拡径保持部材の径方向に加わる常温収縮チューブの収縮力によりコア紐10の凸部41の側面と凹部42の側面が当接して、この側面の当接力で部分11,12の凸部41と凹部42の嵌合が外れるのを抑制することができる。すなわち、部分11側に加わるチューブの収縮力に対しては、第2側面32の第1部分32Bが凸部41に当接することにより、部分11が脱落するのを防ぐ。他方、部分12に加わるチューブの収縮力に対しては、凸部41が第2側面32の第2部分32Cに当接することにより、部分12が脱落するのを防ぐ。
【0027】
また、凸部41が凹部42から引き抜かれる際に、凸部41のくびれ部分41Rが凹部42の膨出部42Rに嵌め合わされており、適度な引き抜き抵抗を発生させるので、拡径保持部材1のコア紐における相互の嵌め合わせの状態が自然崩壊するのを防止できる。すなわち、凸部41と凹部42の嵌め合わせを確実に行うことができ、容易に嵌め合わせ状態が解除しないようになっている。
また、第1側面31の第1部分31Bと第2部分31Cと、第2側面32の第1部分32Bと第2部分32Cは、いずれも滑らかな形状に形成されているので、部分11,12が互いに傷つけ合うのを防ぐことができる。
【0028】
この実施形態の拡径保持部材1は、前述のように常温収縮チューブの収縮力に耐えるので、拡径保持部材1を構成するコア紐10を超音波溶着しなくてもより大型の常温収縮チューブを拡径状態に保持することができる耐力を確保することができるため、従来生じていた“超音波溶着が過剰である場合にコア紐が引き抜けずに常温収縮チューブを縮径することができなくなり、施工不能になる”といった問題を回避できる。
さらに、拡径保持部材1は、溶着しなくても良いことから、コア紐10の原材料の特性にバラツキがあっても、コア紐10の嵌め合わせ強度が安定し、拡径保持部材の生産性が向上する。すなわち、原材料の特性のバラツキによって、溶着強度が得られなくなる等の不都合を回避できる。また、コア紐同士の嵌め合い部分に対して超音波溶着を施さなくても良いので、コア紐の成形精度のバラツキによる拡径保持部材1の耐圧のバラツキの問題も回避できる。
【0029】
次に、本発明の別の実施の形態を、図面を参照して説明するが、これらの別の実施の形態において、図1から図3に示す本発明の実施の形態と実質的に同じ箇所には同じ符号を記して、その説明を省略する。
図4を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
図4に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10Bでは、第1側面31の第1部分31Bと表面21との交わる部分が、角部分31Tになっている。同様にして、第2部分31Cと裏面22とが交わる部分も角部分31Tとなっている。また、第2側面32の第1部分32Bと表面21とが交わる部分は角部分32Tとなっている。同様にして、第2側面32の第2部分32Cと裏面22とが交わる部分は角部分32Tとなっている。
【0030】
これにより、対応する角部分31Tと角部分32Tがそれぞれ密着しているので、隣接する部分11,12の表面21,21の間には隙間ができておらず、隣接する裏面22,22の間にも隙間ができていない。従って、このコア紐10Bからなる拡径保持部材1の外周面には、常温収縮チューブの内周面が入り込む隙間が存在しないので、チューブの内周面に凹凸形状が転写されてしまうことを防げる。図4に示す実施の形態の拡径保持部材1の他の作用効果は、図2と図3に示す実施の形態の拡径保持部材1と同様である。
【0031】
図5を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
図5に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10Cの凸部141の形状と凹部142の形状が、図2と図3に示す実施の形態の拡径保持部材1のコア紐10の凸部41の形状と凹部42の形状と異なるが、その他の部分は同じである。
図5に示す凸部141の先端の表面21側にある一部分141Fが滑らかに膨らむように形成され凸部141の先端の裏面22側の他部分141Gが裏面22とほぼ平行な面に形成されている。しかも、凸部141に合わせて、これが嵌め合わされる凹部142の奥部の一部分142Fが滑らかに広がるように形成され、凹部142の奥部の他部分142Gがほぼ平面に形成されている。
【0032】
これにより、コア紐10の隣接する部分11,12は、凸部141と凹部142を用いて嵌め合わされており、着脱可能に中心軸CL方向に関して相互に連結されている。この場合に、凸部141のくびれ部分141Rが凹部142のくびれ部分142Rに嵌め合わされ、凸部141と凹部142の嵌合が中心軸CLに沿って行われているので、拡径保持部材の径方向に加わる常温収縮チューブの収縮力によりコア紐10Cの凸部141と凹部142の側面が当接して、この側面の当接力でこれらの嵌合が外れるのを抑制することができる。
【0033】
また、凸部141が凹部142から引く抜かれる際に、凸部141のくびれ部分141Rが凹部142の膨出部分142Rに嵌め合わされており、適度な引き抜き抵抗を発生させることが可能になるので、拡径保持部材1のコア紐10Cにおける相互の嵌め合わせの状態が自然崩壊するのを防止できる。すなわち、凸部141と凹部142の嵌め合わせを確実に行うことができ、容易に嵌め合わせ状態が解除しないようになっている。
また、第1側面31の第1部分31Bと第2部分31Cと、第2側面32の第1部分32Bと第2部分32Cは、いずれも滑らかな形状に形成されているので、部分11,12が互いに傷つけ合うことを防ぐことができる。
【0034】
図6を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
図6に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10Dの凸部241の形状と凹部242の形状が、図5に示すコア紐10Cの凸部141の形状と凹部142の形状と比べると、中心軸CLを中心として反対の形状になっている。
図6に示す凸部241の先端の一部分241Gが表面21とほぼ平行に形成され凸部241の先端の他部分241Fが滑らかに膨らむように形成されている。しかも、凸部241が嵌め合わされる凹部242の奥部の一部分242Gが表面21とほぼ平行に形成され、凹部242の奥部の他部分242Fが滑らかに広がるように形成されている。
【0035】
これにより、コア紐10の隣接する部分11,12は、凸部241と凹部242を用いて嵌め合わされており、着脱可能に中心軸CL方向に関して相互に連結されている。この場合に、凸部241のくびれ部分241Rが凹部242のくびれ部分242Rに嵌め合わされ、凸部241と凹部242の嵌合が中心軸CLに沿って行われているので、拡径保持部材の径方向に加わる常温収縮チューブの面圧によりコア紐10Cの凸部241と凹部242の側面が当接して、この側面の圧接力でこれらの嵌合が外れるのを抑制することができる。
また、図5と図6に示す実施の形態を採用することで、コア紐10C、10Dでは凸部141、241の一方側にだけくびれ部分141R,241Rが形成されているので、コア紐10C、10Dの引き抜く力は、図3と図4の実施の形態のコア紐10,10Bの両側にくびれ部分41Rが形成されている場合の引き抜き力に比べて、軽めに設定することができる。
【0036】
図7を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
図7に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10Fの凸部341の形状と凹部342の形状は、これまでの実施の形態とは異なり、滑らかな曲線では形成されておらず、凸部341の一方の面341Bが表面21に対して傾斜した傾斜面であり、凸部341の他方の面341Cが表面21に平行な平坦面である。また、凹部342の形状は、凸部341に対応しており、凹部342の一方の面342Bが表面21に対して傾斜した傾斜面であり、凹部342の他方の面342Cが表面21に平行な平坦面である。凸部341は先端に近づくに従って幅が方向に広がっており、凹部342の傾斜面は奥部ほど幅が広がっている。第1側面331の第1部分331Bと第2部分331Cは、表面21と裏面22に対して直交する平面である。第2側面332の第1部分332Bと第2部分332Cも、表面21と裏面22に対して直交する平面である。
【0037】
図7に示すようにして、コア紐10Fの隣接する部分11,12は、凸部341と凹部342を用いて嵌め合わされており、着脱可能に中心軸CL方向に関して相互に連結されている。この場合に、凸部341のくびれ部分341Rが凹部42の膨出部分342Rに嵌め合わされ、凸部341と凹部342の嵌合が中心軸CLに沿って行われているので、拡径保持部材の径方向に加わる常温収縮チューブの収縮力によりコア紐10Fの凸部341と凹部342の側面が当接して、これらの嵌合が外れるのを抑制することができる。しかも、凸部341と凹部342は角張っているので、コア紐10Fの引き抜き力を図2〜図6の実施の形態に比べて重めにすることができる。
【0038】
また、凸部341が凹部342から引く抜かれる際に、凸部341のくびれ部分341Rが凹部342の膨出部分342Rに嵌め合わされており、凸部341と凹部342は角っているので、適度な引き抜き抵抗を発生させることが可能となり、拡径保持部材1のコア紐における相互の嵌め合わせの状態が自然崩壊するのを防止できる。さらに隣接する部分11,12の表面21,21と、裏面22,22には隙間が生じない。
【0039】
図8を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
図8に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10Gの凸部441の形状と凹部442の形状は、図7に示すコア紐10Fに対して中心軸CLに対して逆の形状に形成されている。すなわち、凸部441の一方の面441Bが表面21に対して平行な平面であり、凸部441の他方の面441Cが表面21に傾斜している傾斜面である。また、凹部442の形状は、凸部441に対応しており、凹部442の一方の面442Bが表面21に対して平行な平面であり、凹部442の他方の面442Cが表面21に対して傾斜した平面である。
【0040】
第1側面431の第1部分431Bと第2部分431Cは、表面21と裏面22に対して直交する平面である。第2側面432の第1部分432Bと第2部分432Cも、表面21と裏面22に対して直交する平面である。図8に示す実施の形態の作用効果は、図7の実施の形態とほぼ同じである。また、図7と図8に示す実施の形態を採用することで、凸部と凹部は角っているので、コア紐10F、10Gを引き抜く力を図2〜図6の実施の形態に比べて重めに設定することができる。
【0041】
図9を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
図9に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10Hの凸部541の形状と凹部542の形状は、図3に示すコア紐10の凸部41の形状と凹部42の形状に比べて、次の点が異なる。すなわち、凸部541は断面がほぼ角の丸められた正方形状に形成されており、膨らんだ部分が無い。このため、凸部541のくびれ部は形成されていない。同様にして、凹部542も断面がほぼ角の丸められた正方形形状に形成されており、膨らんだ部分が無い。このため。凹部542の開口部に膨出部は形成されていない。
これにより、図9に示す実施の形態は、例えば図3に示す実施の形態に比べて、凸部のくびれ部分と凹部の膨出部の嵌合がないので、コア紐10Kを巻き解す時に引き抜き易い。このような凸部541と凹部542の形状を採用しても、拡径保持部材1の常温収縮チューブにより押されるので、実質的には凸部と凹部が相互に噛み合う抵抗が生じ、この側面の圧接力でこれらの嵌合が外れるのを抑制することができる。
【0042】
図10を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
図10に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10Kの凸部641の形状と凹部642の形状は、図7に示すコア紐10Fの凸部341の形状と凹部342の形状に比べて、次の点が異なる。すなわち、凸部641と凹部642は断面矩形である。
この図10の実施形態も前記図9の実施形態とほぼ同様の作用効果を奏するが、その凸部641と凹部642の嵌合はやや固めである。
【0043】
図11は、本発明のさらに別の実施の形態を示している。
図11では、コア紐10Lの部分11,12の幅D1が、例えば図2に示す部分11,12の幅Dに比べて短縮されている。これにより、中心軸CL方向についての単位長さ当たりのコア紐10Lの部分の巻き数を増やすことができる。
【0044】
次に、上述した例えば図2と図3に示すコア紐10からなる拡径保持部材1を用いて、常温収縮チューブを拡径して保持する拡径保持方法および拡径保持部材1のコア紐10を引き抜いて常温収縮チューブを縮径させる作業について説明する。ただし、この作業は、図2と図3に示す実施の形態以外の実施の形態であっても同様である。
まず、図1と図2に示すように、拡径保持部材1は、凹凸形状部分を有する長尺のコア紐10を、コア成形装置(図示せず)によって、スパイラル状に巻いていくことで円筒状に形成する。これにより、図2に示すように、部分12の凸部31は、隣接する部分11の凹部32内に嵌め合わされる。この実施の形態では、超音波溶着は用いなくてもよい。
【0045】
この拡径保持部材1は、図12(A)に示すように、円筒状の常温収縮チューブ100の内側に配置される。常温収縮チューブ100と拡径保持部材1は、常温収縮チューブユニットを構成している。拡径保持部材1は、常温収縮チューブ100の収縮しようとする力に耐えて常温収縮チューブ100を拡径して保持している。このように、拡径保持部材1が常温収縮チューブ100の内径を拡大して保持している状態では、コア紐10の表面21が常温収縮チューブ100の内周面に密着される。この常温収縮チューブ100は、弾性材である例えばシリコーンゴム、エチレンプロピレンゴムなどのゴム等により作られている円筒状の絶縁体である。
【0046】
図1と図12(A)に示すように、拡径保持部材1の先端部分90は、引き抜き端部とされており、拡径保持部材1の内周側に引き抜き方向Tに沿って配置されている。
図12(A)に示すように、常温収縮チューブ100と拡径保持部材1からなるユニットは、電力ケーブルの接続部120の周囲に配置される。電力ケーブルの接続部120は、第1電力ケーブル111と第2電力ケーブル112を接続している部分である。第1電力ケーブル111はケーブル絶縁体121とケーブル導体123を有しており、第2電力ケーブル112はケーブル絶縁体122とケーブル導体124を有している。
ケーブル導体123とケーブル導体124とが、接続スリーブ125を用いて電気的に機械的に接続されている。ケーブル導体123,124および接続スリーブ125の周囲には絶縁材126が配置されている。
【0047】
図12(A)に示すように、拡径保持部材1の内径Mは、第1電力ケーブル111と第2電力ケーブル112の外径Nに比べて大きく設定されている。これにより、拡径保持部材1は常温収縮チューブ100を拡径状態に保持したままで、電力ケーブルの接続部120の周囲に配置することができる。図12(A)に示す先端部分90を、図12(B)に示すように拡径保持部材1の引き抜き方向Tに沿って引き抜き始めると、図2に示す部分12の凸部31が、部分11の凹部32の口元部分を押し開くので、部分11の凹部32が押し広げられる。
【0048】
図2に示すように、凸部31と凹部32とは、コア紐10の長手方向Lに沿って連続的に形成されているので、図12(A)に示すように、拡径保持部材1のコア紐を引き抜き方向Tに沿って一定の力で引き抜いていくことができ、隣接する部分の相互の嵌め合わせ状態が、T方向に沿って順次解かれていくことになる。コア紐が解かれていくと、図12(B)に示すように、常温収縮チューブ100の部分118が収縮して縮径するので、常温収縮チューブ100の部分118の内面がケーブル絶縁体121の外周面に密着される。
【0049】
さらに、拡径保持部材1のコア紐を引き抜き方向Tに沿って引き抜いていくと、最終的にコア紐10が全て解かれて、図12(C)に示すように、拡径保持部材1のコア紐は常温収縮チューブ100の内側から除去される。すなわち、常温収縮チューブ100の全体の内部から拡径保持部材1が除去されるので、常温収縮チューブ100は常温収縮して、常温収縮チューブ100はケーブル絶縁体121の外周面、半導電材126の外周面、そしてケーブル絶縁体122の外周面に密着される。このようにして、拡径保持部材1による常温収縮チューブの拡径保持機能を果たすことができる。
【0050】
拡径保持部材1はコア紐10を超音波溶着しなくとも、より大型の常温収縮チューブ100を拡径状態に保持することができる耐力を確保することができる。そしてこれにより、コア紐を解いて取り除くときの引き抜き力を適度に設計することが可能になる。
【0051】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
例えば、コア紐の凸部と凹部の形状は、図示例に限らず任意に設定することがで、特に限定されない。また、本発明の拡径保持部材には、補助的にコア紐を超音波溶着したもの、例えば、拡径保持部材の端部からコア紐が解けるのを防止するために拡径保持部材の端部でコア紐を溶着したものも含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 拡径保持部材
10,10B、10C、10D、10F、10G、10H、10K、10L コア紐
11,12 隣接する部分
21 表面
22 裏面
31 第1側面
32 第2側面
41 凸部
42 凹部
CL 中心軸方向(コア紐の長手方向と交差する方向)
L コア紐の長手方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温収縮チューブを拡径状態に保持する拡径保持部材およびこの拡径保持部材を用いた常温収縮チューブユニットに関し、特に、高圧用電力ケーブルの絶縁処理に用いられる肉厚で収縮力の強い常温収縮チューブを拡径保持するのに好適な拡径保持部材およびこの拡径保持部材を用いた常温収縮チューブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルを接続する場合、一方の電力ケーブルの導体と他方の電力ケーブルの導体を接続スリーブにより電気的に接続し、その外周にゴム製の常温収縮チューブを装着して絶縁処理することが行われている。
【0003】
電力ケーブルに装着される前の常温収縮チューブは、コア紐をスパイラル状に巻いた円筒状の拡径保持部材で拡径状態に保持されている。巻かれたコア紐を解いて拡径保持部材を常温収縮チューブ内から取り除くと、常温収縮チューブは収縮して電力ケーブルの外周面に密着する。
この種の拡径保持部材としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1に記載されている拡径保持部材は、表面を右側方に延長して略L字状の嵌合部を設け、裏面を左側方に延長して略逆L字状の嵌合部を設けた樹脂製のコア紐からなるものである。このコア紐をスパイラル状に巻き、コア紐の隣接した部分の前記嵌合部同士を嵌め合わせることにより円筒形状に形成することにより、前記拡径保持部材は製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−187106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の拡径保持部材は、通常、巻付成形装置によりコア紐を筒状に巻くと同時に、超音波溶着機によって嵌め合い部分を一定間隔で溶着して、拡径保持部材とする。これにより、常温収縮チューブの収縮力(面圧)に耐える強度を確保できるようにしている。特に、高圧ケーブル用の肉厚な常温収縮絶縁筒は径方向に収縮しようとする力が大きいので、これを拡径するための拡径保持部材では、コア紐同士の溶着が必要になっている。
【0006】
ところが、コア紐の嵌め合い部分を超音波溶着した場合、その溶着強度は、コア紐の成形材料の品質や成形精度のバラツキによっても変化してしまう。コア紐の溶着強度が弱いと、常温収縮チューブの収縮力により、拡径保持部材の円筒形状が崩壊することがある。また、常温収縮チューブをケーブル接続部に装着するために、コア紐を巻解き、拡径保持部材を常温収縮チューブ内から引き抜く際の、途中の段階、すなわち、常温収縮チューブの一部が縮径し、常温収縮チューブが途中から拡径している状態になったときには、常温収縮チューブの収縮力が、途中まで引き抜かれた拡径保持部材の端部のコア紐に対して強く働き、拡径保持部材の円筒形状が崩れてしまうことがある。
逆に、超音波溶着の強度が過剰である場合には、コア紐を解くことができず、拡径保持部材を常温収縮チューブから引き抜けなくなり、常温収縮チューブを縮径することができずに施工不能になるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解消するために、常温収縮チューブの収縮力が高い場合でも、コア紐の凹凸状の嵌合により耐えることが可能な拡径保持部材およびこの拡径保持部材を用いた常温収縮チューブユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解消するために、本発明の拡径保持部材は、コア紐をスパイラル状に巻き、前記コア紐の隣接した部分同士を嵌め合わせることにより円筒形状に形成した、常温収縮チューブを拡径した状態に保持するための拡径保持部材であって、前記コア紐は、表面と、前記表面とは反対位置に形成された裏面と、前記表面と前記裏面とに交差するように形成された第1側面と、前記表面と前記裏面とに交差するように形成され、前記第1側面とは反対の位置に形成された第2側面と、前記第1側面の、前記表面および裏面から離れた位置に形成されている凸部と、前記第2側面の、前記表面および裏面から離れた位置に形成されている、前記凸部が嵌合可能な凹部と、を備えたものであり、前記コア紐の前記凸部と、隣接して配置される前記コア紐の前記凹部とを嵌め合わせることで構成されていることを特徴とする。これにより、この拡径保持部材は、コア紐の凸部と凹部が表面および裏面の両面から離れた位置に形成されているので、拡径保持部材の径方向内側に力が加わったときには、凸部の面と凹部の面が当たり抵抗する。この結果、この拡径保持部材は常温収縮チューブの収縮力が大きい場合でも、耐えて拡径保持状態を維持することができる。
【0009】
本発明の拡径保持部材では、前記凸部の先端が滑らかに膨らむように形成されており、前記凸部が嵌め合わされる前記凹部の奥部が滑らかに広がるように形成されてあってもよい。このように凸部を形成すると、拡径保持部材を製造する際にコア紐の凸部と凹部の嵌め合わせを円滑に行えると共に、拡径保持部材を解体する際にコア紐を滑らかに引き抜くことができる。
【0010】
本発明の拡径保持部材では、前記凸部の一方の面が前記表面に対して傾斜して形成されており前記凸部の他方の面が前記表面と平行であってもよい。このようにすれば、コア紐は常温収縮チューブを拡径して保持できる耐力が大きくなる
【0011】
また、本発明の拡径保持部材では、前記凸部の一方の平面が前記表面と平行であり前記凸部の他方の平面が前記表面に対して傾斜して形成されてあってもよい。このようにすれば、コア紐は常温収縮チューブを拡径して保持できる耐力が大きくなると共に、拡径保持部材を解体する際にコア紐を滑らかに引き抜くことができる。
【0012】
本発明の常温収縮チューブユニットは、常温収縮チューブの孔内に前記拡径保持部材を挿入して拡径したことを特徴とする。これにより、この常温収縮チューブユニットによれば、常温収縮チューブを拡径した状態をより安定に保持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、常温収縮チューブの収縮力が高い場合でも、コア紐の凹凸状の嵌合により耐えることが可能な拡径保持部材およびこの拡径保持部材を用いた常温収縮チューブユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すコア紐の隣接する部分の嵌め合わせ状態を示す断面を有する斜視図である。
【図3】図2に示すコア紐の断面を示す図である。
【図4】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図5】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図6】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図7】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図8】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図9】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図10】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図11】本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい別の実施形態を示す図である。
【図12】常温収縮チューブが拡径保持された状態からコア紐が引き抜かれ始め、そして常温収縮チューブが電力ケーブルの外周面に密着された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明のコア紐からなる拡径保持部材の好ましい実施形態を示す斜視図である。図1に示す拡径保持部材1は、凹凸形状部分を有する長尺のコア紐10を、コア成形装置(図示せず)によって、スパイラル状に巻いて形成された円筒状の部材である。拡径保持部材1はスパイラルコアとも呼ばれ、コア紐10は、可撓性を有する。
【0016】
図1に示すコア紐10には、常温収縮チューブが収縮しようとする力に耐えうる強度が要求され、使用環境温度において軟化しにくく、常温収縮チューブの拡径状態を維持できる材質で成形されている。コア紐10は、例えば押出し成形により作られており、弾性変形可能な材質、例えばポリプロピレン樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂により作られている。コア紐10の先端部90は、拡径保持部材1の内側を通して後端側に引き出されている。
【0017】
拡径保持部材1は、被せられた常温収縮チューブの収縮力によって潰れない強度を要求される。
【0018】
図2は、図1に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10の嵌め合わせの構造例を示しており、図1のB−B線における断面を有する斜視図である。図2では、図面の簡単化のために、コア紐10の嵌め合わせ構造の一部分を代表して示している。すなわち、図2では、図1中に符号11、12で示す隣接したコア紐10の部分同士の嵌合状態を示している。図3は、より広い範囲の断面形状を示している。
【0019】
図2と図3に示すように、コア紐10は、肉圧が比較的均等になるように形成されている。
図2に示すコア紐10の隣接する部分11,12は、共に同じ断面形状を有している。コア紐10は、拡径保持部材1の外周面となる表面21と内周面となる裏面22と、第1側面31と、第1側面31とは反対側の第2側面32と、1つの凸部41と、1つの凹部42を有する。
【0020】
図2と図3に示すように、各部分11,12の表面21と裏面22は、距離S1だけ離れてY方向に沿って平行に形成されている。裏面22は、表面21とは反対側の面である。表面21は拡径保持部材1の外周面を形成する面で、裏面は拡径保持部材1の内周面を形成する面である。表面21と裏面22は、いずれもほぼ平面になっている。
【0021】
図2と図3の例では、第1側面31は、表面21と前記裏面22とに交差するように形成されている。第2側面32は、表面21と裏面22とに交差するように形成されている。第1側面31と第2側面32は互いに反対の位置に形成されている。第1側面31と第2側面32は、図示例では表面21と裏面22に対して直交する方向、すなわちZ方向に沿って形成されている。第1側面31と第2側面32は、凸部41と凹部42を嵌め合わせたとき、互いに密接する形状に形成されている。
【0022】
図2と図3に示すように、前記凸部41と1つの凹部42は、共にコア紐10の長手方向Lに沿って平行に連続して形成されている。
凸部41は、第1側面31の中央部に、すなわち表面21および裏面22から離れた位置に突設されている。凸部41の先端は滑らかに膨らむように形成されており、これに合わせて、凸部41が嵌め合わされる凹部42の奥部が滑らかに広がるように形成されている。凸部41の先端は滑らかに膨らむ円弧形状に形成され、凸部41の基部の両側にはくびれ部分41Rを有している。凹部42の奥部は滑らかに広がるように円弧形状に形成されており、凹部42の開口部分の両側には膨出部42Rを有している。
凸部41は、第1側面31に突出して形成され、しかもコア紐10の長手方向Lに沿って設けられている。凸部41と表面21との間には第1空間部51が形成され、凸部41と裏面22との間には第2空間部52が形成されている。図2中符号Dは、部分11,12の凸部41の先端から第2側面32までの形成幅である。
【0023】
図2と図3に示すように、第1側面31は、第1部分31Bと第2部分31Cを有する。第1部分31Bは、表面21と凸部41の間に形成されており、第2部分31Cは、裏面22と凸部41の間に形成されている。第1部分31Bは、凸部41の基部と表面21を接続している曲面部分であり、滑らかに削がれたくびれ部分41Rを有している。同様にして、第2部分31Cは、凸部41の基部と裏面22を接続している曲面部分であり、滑らかに削がれたくびれ部分41Rを有している。
【0024】
前記第2側面32の中央部、すなわち表面21および裏面22から離れた位置には前記凹部42が形成されており、第2側面32は、第1部分32Bと第2部分32Cを有する。第1部分32Bは、表面21と凹部42の間に形成されており、第2部分32Cは、裏面22と凹部42の間に形成されている。第1部分32Bは、凹部42の基部と表面21を接続している曲面部分であり、滑らかに突出して形成されている。同様にして、第2部分32Cは、凸部41の基部と裏面22を接続している曲面部分であり、滑らかに突出して形成されている。部分11と部分12の断面形状は、対称形状に形成されている。
【0025】
図2に示すように、コア紐10は、凸部41と凹部42と設けたので、コア紐10の断面形状で明らかなように、肉厚が比較的均等であり、押し出し成形がし易く、表面21と裏面22の平滑性が出しやすい。また凸部41と凹部42の形状を丸く形成したので、安定して成形できる。
【0026】
図2と図3に示すようにして、コア紐10の隣接する部分11,12は、凸部41と凹部42を用いて互いに中心軸CL(横方向)に沿って嵌め合わされており、着脱可能に中心軸CL方向、すなわちY方向に相互に連結されている。この場合に、凸部41のくびれ部分41Rが凹部42の膨出部42Rに嵌め合わされ、凸部41が第2側面32の第1部分32Bと第2部分32Cとに挟まれているので、拡径保持部材の径方向に加わる常温収縮チューブの収縮力によりコア紐10の凸部41の側面と凹部42の側面が当接して、この側面の当接力で部分11,12の凸部41と凹部42の嵌合が外れるのを抑制することができる。すなわち、部分11側に加わるチューブの収縮力に対しては、第2側面32の第1部分32Bが凸部41に当接することにより、部分11が脱落するのを防ぐ。他方、部分12に加わるチューブの収縮力に対しては、凸部41が第2側面32の第2部分32Cに当接することにより、部分12が脱落するのを防ぐ。
【0027】
また、凸部41が凹部42から引き抜かれる際に、凸部41のくびれ部分41Rが凹部42の膨出部42Rに嵌め合わされており、適度な引き抜き抵抗を発生させるので、拡径保持部材1のコア紐における相互の嵌め合わせの状態が自然崩壊するのを防止できる。すなわち、凸部41と凹部42の嵌め合わせを確実に行うことができ、容易に嵌め合わせ状態が解除しないようになっている。
また、第1側面31の第1部分31Bと第2部分31Cと、第2側面32の第1部分32Bと第2部分32Cは、いずれも滑らかな形状に形成されているので、部分11,12が互いに傷つけ合うのを防ぐことができる。
【0028】
この実施形態の拡径保持部材1は、前述のように常温収縮チューブの収縮力に耐えるので、拡径保持部材1を構成するコア紐10を超音波溶着しなくてもより大型の常温収縮チューブを拡径状態に保持することができる耐力を確保することができるため、従来生じていた“超音波溶着が過剰である場合にコア紐が引き抜けずに常温収縮チューブを縮径することができなくなり、施工不能になる”といった問題を回避できる。
さらに、拡径保持部材1は、溶着しなくても良いことから、コア紐10の原材料の特性にバラツキがあっても、コア紐10の嵌め合わせ強度が安定し、拡径保持部材の生産性が向上する。すなわち、原材料の特性のバラツキによって、溶着強度が得られなくなる等の不都合を回避できる。また、コア紐同士の嵌め合い部分に対して超音波溶着を施さなくても良いので、コア紐の成形精度のバラツキによる拡径保持部材1の耐圧のバラツキの問題も回避できる。
【0029】
次に、本発明の別の実施の形態を、図面を参照して説明するが、これらの別の実施の形態において、図1から図3に示す本発明の実施の形態と実質的に同じ箇所には同じ符号を記して、その説明を省略する。
図4を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
図4に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10Bでは、第1側面31の第1部分31Bと表面21との交わる部分が、角部分31Tになっている。同様にして、第2部分31Cと裏面22とが交わる部分も角部分31Tとなっている。また、第2側面32の第1部分32Bと表面21とが交わる部分は角部分32Tとなっている。同様にして、第2側面32の第2部分32Cと裏面22とが交わる部分は角部分32Tとなっている。
【0030】
これにより、対応する角部分31Tと角部分32Tがそれぞれ密着しているので、隣接する部分11,12の表面21,21の間には隙間ができておらず、隣接する裏面22,22の間にも隙間ができていない。従って、このコア紐10Bからなる拡径保持部材1の外周面には、常温収縮チューブの内周面が入り込む隙間が存在しないので、チューブの内周面に凹凸形状が転写されてしまうことを防げる。図4に示す実施の形態の拡径保持部材1の他の作用効果は、図2と図3に示す実施の形態の拡径保持部材1と同様である。
【0031】
図5を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
図5に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10Cの凸部141の形状と凹部142の形状が、図2と図3に示す実施の形態の拡径保持部材1のコア紐10の凸部41の形状と凹部42の形状と異なるが、その他の部分は同じである。
図5に示す凸部141の先端の表面21側にある一部分141Fが滑らかに膨らむように形成され凸部141の先端の裏面22側の他部分141Gが裏面22とほぼ平行な面に形成されている。しかも、凸部141に合わせて、これが嵌め合わされる凹部142の奥部の一部分142Fが滑らかに広がるように形成され、凹部142の奥部の他部分142Gがほぼ平面に形成されている。
【0032】
これにより、コア紐10の隣接する部分11,12は、凸部141と凹部142を用いて嵌め合わされており、着脱可能に中心軸CL方向に関して相互に連結されている。この場合に、凸部141のくびれ部分141Rが凹部142のくびれ部分142Rに嵌め合わされ、凸部141と凹部142の嵌合が中心軸CLに沿って行われているので、拡径保持部材の径方向に加わる常温収縮チューブの収縮力によりコア紐10Cの凸部141と凹部142の側面が当接して、この側面の当接力でこれらの嵌合が外れるのを抑制することができる。
【0033】
また、凸部141が凹部142から引く抜かれる際に、凸部141のくびれ部分141Rが凹部142の膨出部分142Rに嵌め合わされており、適度な引き抜き抵抗を発生させることが可能になるので、拡径保持部材1のコア紐10Cにおける相互の嵌め合わせの状態が自然崩壊するのを防止できる。すなわち、凸部141と凹部142の嵌め合わせを確実に行うことができ、容易に嵌め合わせ状態が解除しないようになっている。
また、第1側面31の第1部分31Bと第2部分31Cと、第2側面32の第1部分32Bと第2部分32Cは、いずれも滑らかな形状に形成されているので、部分11,12が互いに傷つけ合うことを防ぐことができる。
【0034】
図6を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
図6に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10Dの凸部241の形状と凹部242の形状が、図5に示すコア紐10Cの凸部141の形状と凹部142の形状と比べると、中心軸CLを中心として反対の形状になっている。
図6に示す凸部241の先端の一部分241Gが表面21とほぼ平行に形成され凸部241の先端の他部分241Fが滑らかに膨らむように形成されている。しかも、凸部241が嵌め合わされる凹部242の奥部の一部分242Gが表面21とほぼ平行に形成され、凹部242の奥部の他部分242Fが滑らかに広がるように形成されている。
【0035】
これにより、コア紐10の隣接する部分11,12は、凸部241と凹部242を用いて嵌め合わされており、着脱可能に中心軸CL方向に関して相互に連結されている。この場合に、凸部241のくびれ部分241Rが凹部242のくびれ部分242Rに嵌め合わされ、凸部241と凹部242の嵌合が中心軸CLに沿って行われているので、拡径保持部材の径方向に加わる常温収縮チューブの面圧によりコア紐10Cの凸部241と凹部242の側面が当接して、この側面の圧接力でこれらの嵌合が外れるのを抑制することができる。
また、図5と図6に示す実施の形態を採用することで、コア紐10C、10Dでは凸部141、241の一方側にだけくびれ部分141R,241Rが形成されているので、コア紐10C、10Dの引き抜く力は、図3と図4の実施の形態のコア紐10,10Bの両側にくびれ部分41Rが形成されている場合の引き抜き力に比べて、軽めに設定することができる。
【0036】
図7を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
図7に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10Fの凸部341の形状と凹部342の形状は、これまでの実施の形態とは異なり、滑らかな曲線では形成されておらず、凸部341の一方の面341Bが表面21に対して傾斜した傾斜面であり、凸部341の他方の面341Cが表面21に平行な平坦面である。また、凹部342の形状は、凸部341に対応しており、凹部342の一方の面342Bが表面21に対して傾斜した傾斜面であり、凹部342の他方の面342Cが表面21に平行な平坦面である。凸部341は先端に近づくに従って幅が方向に広がっており、凹部342の傾斜面は奥部ほど幅が広がっている。第1側面331の第1部分331Bと第2部分331Cは、表面21と裏面22に対して直交する平面である。第2側面332の第1部分332Bと第2部分332Cも、表面21と裏面22に対して直交する平面である。
【0037】
図7に示すようにして、コア紐10Fの隣接する部分11,12は、凸部341と凹部342を用いて嵌め合わされており、着脱可能に中心軸CL方向に関して相互に連結されている。この場合に、凸部341のくびれ部分341Rが凹部42の膨出部分342Rに嵌め合わされ、凸部341と凹部342の嵌合が中心軸CLに沿って行われているので、拡径保持部材の径方向に加わる常温収縮チューブの収縮力によりコア紐10Fの凸部341と凹部342の側面が当接して、これらの嵌合が外れるのを抑制することができる。しかも、凸部341と凹部342は角張っているので、コア紐10Fの引き抜き力を図2〜図6の実施の形態に比べて重めにすることができる。
【0038】
また、凸部341が凹部342から引く抜かれる際に、凸部341のくびれ部分341Rが凹部342の膨出部分342Rに嵌め合わされており、凸部341と凹部342は角っているので、適度な引き抜き抵抗を発生させることが可能となり、拡径保持部材1のコア紐における相互の嵌め合わせの状態が自然崩壊するのを防止できる。さらに隣接する部分11,12の表面21,21と、裏面22,22には隙間が生じない。
【0039】
図8を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
図8に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10Gの凸部441の形状と凹部442の形状は、図7に示すコア紐10Fに対して中心軸CLに対して逆の形状に形成されている。すなわち、凸部441の一方の面441Bが表面21に対して平行な平面であり、凸部441の他方の面441Cが表面21に傾斜している傾斜面である。また、凹部442の形状は、凸部441に対応しており、凹部442の一方の面442Bが表面21に対して平行な平面であり、凹部442の他方の面442Cが表面21に対して傾斜した平面である。
【0040】
第1側面431の第1部分431Bと第2部分431Cは、表面21と裏面22に対して直交する平面である。第2側面432の第1部分432Bと第2部分432Cも、表面21と裏面22に対して直交する平面である。図8に示す実施の形態の作用効果は、図7の実施の形態とほぼ同じである。また、図7と図8に示す実施の形態を採用することで、凸部と凹部は角っているので、コア紐10F、10Gを引き抜く力を図2〜図6の実施の形態に比べて重めに設定することができる。
【0041】
図9を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
図9に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10Hの凸部541の形状と凹部542の形状は、図3に示すコア紐10の凸部41の形状と凹部42の形状に比べて、次の点が異なる。すなわち、凸部541は断面がほぼ角の丸められた正方形状に形成されており、膨らんだ部分が無い。このため、凸部541のくびれ部は形成されていない。同様にして、凹部542も断面がほぼ角の丸められた正方形形状に形成されており、膨らんだ部分が無い。このため。凹部542の開口部に膨出部は形成されていない。
これにより、図9に示す実施の形態は、例えば図3に示す実施の形態に比べて、凸部のくびれ部分と凹部の膨出部の嵌合がないので、コア紐10Kを巻き解す時に引き抜き易い。このような凸部541と凹部542の形状を採用しても、拡径保持部材1の常温収縮チューブにより押されるので、実質的には凸部と凹部が相互に噛み合う抵抗が生じ、この側面の圧接力でこれらの嵌合が外れるのを抑制することができる。
【0042】
図10を参照して、本発明の別の実施形態を説明する。
図10に示す拡径保持部材1を構成しているコア紐10Kの凸部641の形状と凹部642の形状は、図7に示すコア紐10Fの凸部341の形状と凹部342の形状に比べて、次の点が異なる。すなわち、凸部641と凹部642は断面矩形である。
この図10の実施形態も前記図9の実施形態とほぼ同様の作用効果を奏するが、その凸部641と凹部642の嵌合はやや固めである。
【0043】
図11は、本発明のさらに別の実施の形態を示している。
図11では、コア紐10Lの部分11,12の幅D1が、例えば図2に示す部分11,12の幅Dに比べて短縮されている。これにより、中心軸CL方向についての単位長さ当たりのコア紐10Lの部分の巻き数を増やすことができる。
【0044】
次に、上述した例えば図2と図3に示すコア紐10からなる拡径保持部材1を用いて、常温収縮チューブを拡径して保持する拡径保持方法および拡径保持部材1のコア紐10を引き抜いて常温収縮チューブを縮径させる作業について説明する。ただし、この作業は、図2と図3に示す実施の形態以外の実施の形態であっても同様である。
まず、図1と図2に示すように、拡径保持部材1は、凹凸形状部分を有する長尺のコア紐10を、コア成形装置(図示せず)によって、スパイラル状に巻いていくことで円筒状に形成する。これにより、図2に示すように、部分12の凸部31は、隣接する部分11の凹部32内に嵌め合わされる。この実施の形態では、超音波溶着は用いなくてもよい。
【0045】
この拡径保持部材1は、図12(A)に示すように、円筒状の常温収縮チューブ100の内側に配置される。常温収縮チューブ100と拡径保持部材1は、常温収縮チューブユニットを構成している。拡径保持部材1は、常温収縮チューブ100の収縮しようとする力に耐えて常温収縮チューブ100を拡径して保持している。このように、拡径保持部材1が常温収縮チューブ100の内径を拡大して保持している状態では、コア紐10の表面21が常温収縮チューブ100の内周面に密着される。この常温収縮チューブ100は、弾性材である例えばシリコーンゴム、エチレンプロピレンゴムなどのゴム等により作られている円筒状の絶縁体である。
【0046】
図1と図12(A)に示すように、拡径保持部材1の先端部分90は、引き抜き端部とされており、拡径保持部材1の内周側に引き抜き方向Tに沿って配置されている。
図12(A)に示すように、常温収縮チューブ100と拡径保持部材1からなるユニットは、電力ケーブルの接続部120の周囲に配置される。電力ケーブルの接続部120は、第1電力ケーブル111と第2電力ケーブル112を接続している部分である。第1電力ケーブル111はケーブル絶縁体121とケーブル導体123を有しており、第2電力ケーブル112はケーブル絶縁体122とケーブル導体124を有している。
ケーブル導体123とケーブル導体124とが、接続スリーブ125を用いて電気的に機械的に接続されている。ケーブル導体123,124および接続スリーブ125の周囲には絶縁材126が配置されている。
【0047】
図12(A)に示すように、拡径保持部材1の内径Mは、第1電力ケーブル111と第2電力ケーブル112の外径Nに比べて大きく設定されている。これにより、拡径保持部材1は常温収縮チューブ100を拡径状態に保持したままで、電力ケーブルの接続部120の周囲に配置することができる。図12(A)に示す先端部分90を、図12(B)に示すように拡径保持部材1の引き抜き方向Tに沿って引き抜き始めると、図2に示す部分12の凸部31が、部分11の凹部32の口元部分を押し開くので、部分11の凹部32が押し広げられる。
【0048】
図2に示すように、凸部31と凹部32とは、コア紐10の長手方向Lに沿って連続的に形成されているので、図12(A)に示すように、拡径保持部材1のコア紐を引き抜き方向Tに沿って一定の力で引き抜いていくことができ、隣接する部分の相互の嵌め合わせ状態が、T方向に沿って順次解かれていくことになる。コア紐が解かれていくと、図12(B)に示すように、常温収縮チューブ100の部分118が収縮して縮径するので、常温収縮チューブ100の部分118の内面がケーブル絶縁体121の外周面に密着される。
【0049】
さらに、拡径保持部材1のコア紐を引き抜き方向Tに沿って引き抜いていくと、最終的にコア紐10が全て解かれて、図12(C)に示すように、拡径保持部材1のコア紐は常温収縮チューブ100の内側から除去される。すなわち、常温収縮チューブ100の全体の内部から拡径保持部材1が除去されるので、常温収縮チューブ100は常温収縮して、常温収縮チューブ100はケーブル絶縁体121の外周面、半導電材126の外周面、そしてケーブル絶縁体122の外周面に密着される。このようにして、拡径保持部材1による常温収縮チューブの拡径保持機能を果たすことができる。
【0050】
拡径保持部材1はコア紐10を超音波溶着しなくとも、より大型の常温収縮チューブ100を拡径状態に保持することができる耐力を確保することができる。そしてこれにより、コア紐を解いて取り除くときの引き抜き力を適度に設計することが可能になる。
【0051】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
例えば、コア紐の凸部と凹部の形状は、図示例に限らず任意に設定することがで、特に限定されない。また、本発明の拡径保持部材には、補助的にコア紐を超音波溶着したもの、例えば、拡径保持部材の端部からコア紐が解けるのを防止するために拡径保持部材の端部でコア紐を溶着したものも含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 拡径保持部材
10,10B、10C、10D、10F、10G、10H、10K、10L コア紐
11,12 隣接する部分
21 表面
22 裏面
31 第1側面
32 第2側面
41 凸部
42 凹部
CL 中心軸方向(コア紐の長手方向と交差する方向)
L コア紐の長手方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア紐をスパイラル状に巻き、前記コア紐の隣接した部分同士を嵌め合わせることにより円筒形状に形成した、常温収縮チューブを拡径した状態に保持するための拡径保持部材であって、
前記コア紐は、
表面と、
前記表面とは反対位置に形成された裏面と、
前記表面と前記裏面とに交差するように形成された第1側面と、
前記表面と前記裏面とに交差するように形成され、前記第1側面とは反対の位置に形成された第2側面と、
前記第1側面の、前記表面および裏面から離れた位置に形成されている凸部と、
前記第2側面の、前記表面および裏面から離れた位置に形成されている、前記凸部が嵌合可能な凹部と、を備えたものであり、
前記コア紐の前記凸部と、隣接して配置される前記コア紐の前記凹部とを嵌め合わせることで構成されていることを特徴とするコア紐からなる拡径保持部材。
【請求項2】
前記凸部の先端が滑らかに膨らむように形成されており、前記凸部が嵌め合わされる前記凹部の奥部が滑らかに広がるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコア紐からなる拡径保持部材。
【請求項3】
前記凸部の一方の面が前記表面に対して傾斜して形成されており前記凸部の他方の面が前記表面と平行であることを特徴とする請求項1に記載のコア紐からなる拡径保持部材。
【請求項4】
前記凸部の一方の平面が前記表面と平行であり前記凸部の他方の平面が前記表面に対して傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコア紐からなる拡径保持部材。
【請求項5】
常温収縮チューブの孔内に請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載された拡径保持部材を挿入して拡径したことを特徴とする常温収縮チューブユニット。
【請求項1】
コア紐をスパイラル状に巻き、前記コア紐の隣接した部分同士を嵌め合わせることにより円筒形状に形成した、常温収縮チューブを拡径した状態に保持するための拡径保持部材であって、
前記コア紐は、
表面と、
前記表面とは反対位置に形成された裏面と、
前記表面と前記裏面とに交差するように形成された第1側面と、
前記表面と前記裏面とに交差するように形成され、前記第1側面とは反対の位置に形成された第2側面と、
前記第1側面の、前記表面および裏面から離れた位置に形成されている凸部と、
前記第2側面の、前記表面および裏面から離れた位置に形成されている、前記凸部が嵌合可能な凹部と、を備えたものであり、
前記コア紐の前記凸部と、隣接して配置される前記コア紐の前記凹部とを嵌め合わせることで構成されていることを特徴とするコア紐からなる拡径保持部材。
【請求項2】
前記凸部の先端が滑らかに膨らむように形成されており、前記凸部が嵌め合わされる前記凹部の奥部が滑らかに広がるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコア紐からなる拡径保持部材。
【請求項3】
前記凸部の一方の面が前記表面に対して傾斜して形成されており前記凸部の他方の面が前記表面と平行であることを特徴とする請求項1に記載のコア紐からなる拡径保持部材。
【請求項4】
前記凸部の一方の平面が前記表面と平行であり前記凸部の他方の平面が前記表面に対して傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコア紐からなる拡径保持部材。
【請求項5】
常温収縮チューブの孔内に請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載された拡径保持部材を挿入して拡径したことを特徴とする常温収縮チューブユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−213428(P2010−213428A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55852(P2009−55852)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]