説明

コイルパターン計算方法および傾斜磁場コイル

【課題】コイルパターン設計の制限を無くし、製作性がよく、また磁場の精度を改善する。
【解決手段】コイルパターン計算方法は、入力された電流ポテンシャル分布の初期値に基づき、それぞれのコイル面を構成する有限面要素の各接点における電流ポテンシャルを計算し、電流ポテンシャルが表現する面電流が、有限面要素毎に設定される目標磁場分布に近付くように、コイル面毎に交互に繰り返し電流ポテンシャルの計算を行い、それぞれの磁場条件にそれぞれの目標磁場の許容誤差の範囲内となる磁場を発生する電流ポテンシャル分布を求めるステップと、この求めた電流ポテンシャル分布の等高線からコイルパターンを決定するステップと、を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルパターン計算方法および傾斜磁場コイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴を利用した診断では、磁場強度と診断箇所が対応している。したがって、マグネットシステムが発生する磁場強度に要求される精度は、磁場強度の百万分の1程度の誤差である。ところで、核磁気共鳴撮像装置(以下、「MRI装置」という。)における磁場には大別して3種類がある。
(1)時間的に定常であり空間的にも一定な静磁場であり、通常0.1から数テスラ以上の強さであるもの。この静磁場は、撮像を行う空間(通常、直径30−40cm程度の球または楕円体の空間である。以下「撮像領域」という。)内で数ppm程度の変動範囲となる。
(2)1秒程度以下の時定数で変化して、空間的に傾斜した傾斜磁場。
(3)核磁気共鳴に対応した周波数(数MHz以上)の高周波の電磁波による磁場。
【0003】
前記した(1)の空間的・時間的に一定な静磁場は、通常、永久磁石や電流を通じたコイルにより発生される。また、適所に配置した磁性体を磁化させることにより、より均一な磁場となる。
【0004】
前記した(2)の傾斜磁場は、時間的に変動する電流を流したコイル(以下、「傾斜磁場コイル」という。)により発生される。傾斜磁場を加えることで、前記した(3)で加えられる核磁気共鳴の周波数と位置とが関連付けられる。この傾斜磁場は、単純な円形導体パターンのコイルのみでは発生できない。
【0005】
前記した(2)の傾斜磁場を発生させるコイルは、特許文献1に記載されているように、鞍型で平行面間を行き来するような導線(立体配線)をもつ複雑なパターンのコイルとなる。このような複雑なパターンを目標の磁場にしたがって計算して求めるには、目標磁場を発生するコイルパターンを計算する手法が必要である。また、設計できるコイルパターンも計算する手法に依存する。
【0006】
前記の従来例では、図14(a)に示すように、コイルパターンを配置する面を四角形の有限面要素Fの組み合わせで表現する。図中に回転方向の矢印で示すように、有限面要素を循環する電流を考え、それぞれの大きさを、目標磁場を再現できるように決める。隣り合う有限面要素Fの循環電流の差から各辺の電流が求まる。その結果、全体として図14(b)に模式的に示したような線分で電流の流れを表現することができる。しかし、この手法には次に挙げるような課題がある。
【0007】
(2−1)中空リング状の面を流れる正味電流が表現できない。
渦のように流れる電流を表現することは可能であるが、全体として一方向に流れる電流は、表現することができない。例えば、図15に示すような円筒の体系で、周回方向に正味流れる電流は、この従来手法では表現できない。これは従来例が、基本的に、四角形要素内の循環電流において正味電流が存在しないことを計算の基本としているためであり、周回方向の電流を模擬すると、どこかで反対方向の電流を加えざるを得なくなる。もしくは、穴のない面を計算面とする必要がある。
(2−2)製作性を反映したコイルパターンを求めることができない。
従来例の電流パターンで、図14(b)における上下2面F1,F2の間を流れる電流パターンの部分は、導体の接続が必要となるので、コイルパターンとしては直線状のコイルパターンが望ましいところであるが、従来例では曲線状のコイルパターンとなってしまう。また、(2−1)と同じ理由であるが、導体の接続部が特定の領域に集中して配置されるようなコイルパターンは設計できない。
(2−3)流入・流出を含めた計算をすることができない。
基本的に循環電流を基本としているため、実際のパターンでは面に流入する流入箇所や面から流出する流出箇所があるが、これを表現することができない。これは、図14(b)に示した2面の組み合わせの傾斜磁場コイル(GC)では、両面を一度に計算してコイルパターンを求めることになるためであり、0.1ガウスの誤差磁場以下の精度が要求されるシールド性能と、数ガウスの誤差磁場が許される撮像領域の傾斜磁場との両立は難しく、無駄なパターンが発生してしまう。
(2−4)部位による磁場精度の違いを反映した計算をすることができない。
前記した上下2面F1,F2のそれぞれに要求される磁場性能の差異を反映した計算をすることができず、その結果、前記したような問題を生じる。
このような手法の限界から、従来例では、前記図14(b)に示したように、上下2面F1,F2間を接続する導体は、湾曲膨出したものとなってしまう。したがって、製作が難しくなる。また、全体が筒状ではなく、例えば、壺形状のように曲面の中に穴が存在するような体系では、パターンが制限(正味電流が表現できない:前記(2−1)の場合)される。その結果、目標性能の達成が難しくなり、製作も難しいコイルとなる。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5309107号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、前記のようなコイルパターン設計の制限を無くし、製作性がよく、また磁場の精度を改善することができるコイルパターン計算方法および傾斜磁場コイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するための手段として本発明のコイルパターン計算方法は、2つ以上に分割されたコイル面を有するコイルのコイルパターンを計算するコイルパターン計算方法であって、入力された電流ポテンシャル分布の初期値に基づき、それぞれの前記コイル面を構成する有限面要素の各接点における電流ポテンシャルを計算し、前記電流ポテンシャルが表現する面電流が、前記有限面要素毎に設定される目標磁場分布に近付くように、前記コイル面毎に交互に繰り返し前記電流ポテンシャルの計算を行い、それぞれの磁場条件にそれぞれの目標磁場の許容誤差の範囲内となる磁場を発生する電流ポテンシャル分布を求めるステップと、この求めた電流ポテンシャル分布の等高線からコイルパターンを決定するステップと、を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コイルパターン設計の制限を無くし、製作性がよく、また磁場の精度を改善することができるコイルパターン計算方法および傾斜磁場コイルが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
前記したように、手法上の問題から発生するコイルパターンの制限は、手法が循環電流を持つ有限面要素に基礎を置いているところにある。そこで、有限面要素の接点に電流ポテンシャルを与え、その電流ポテンシャルを要素に持つ電流ポテンシャルベクトルTを目標磁場分布Bに近似するように接点の電流ポテンシャル分布を決める。電流ポテンシャルの勾配と電流面の法線のベクトル積で電流密度ベクトルが表現される。そして、この近似的な解法に特異値分解を応用する手法を利用することで、コイルパターン設計の制限を無くし、製作性がよく、また磁場の精度を改善することができるコイルパターンを有した傾斜磁場コイルを得ることができる。
【0013】
図1は本発明によるコイルパターン計算方法を実施するコイルパターン計算装置の概略構成を示す図である。図1に示す様に本実施形態のコイルパターン計算方法を実施するコイルパターン計算装置は、装置全体を制御するCPU100と、入力手段101と、CPU100により制御されてコイルパターン計算処理を行う計算処理部102と、計算処理部102に接続された記憶部103と、計算処理部102により計算処理されたデータを出力する出力手段104とを含んで構成される。
【0014】
入力手段101は、例えばキーボードやマウス等であり、計算処理部102や記憶部103にデータを入力したりする。
【0015】
出力手段104は、例えば、液晶ディスプレイであり、計算処理部102で計算されたデータや記憶部103に格納されたデータを表示する。また、出力手段104は、数値等のデータを傾斜磁場コイルの詳細な構造設計用に出力する。
【0016】
計算処理部102は、主として、作成部102A、重み付け処理部102B、特異値分解による固有ベクトル群算出部102C、目標磁場設定部102D、磁場評価部102E、磁場が目標性能を達成しているか否かを判定する目標性能判定部102Fを含んで構成される。
【0017】
作成部102Aは、入力手段101から入力されたデータや記憶部103に記憶されているデータや計算式等に基づいて、コイルを検討する面を三角状の有限要素(有限面要素)の集合で表す計算体系データを作成する(図3参照)。また、作成部102Aにおいて、磁場を評価する点(場所)も決定する。
【0018】
重み付け処理部102Bは、最小2乗法に基づき目標磁場に対する重み付け処理を行う(目標磁場の許容誤差の範囲内となる磁場を求めるための処理)。固有ベクトル群算出部102Cは、磁場評価点数と接点数との行列に、接点の拘束条件を加えて独立な接点の電流ポテンシャルから磁場評価点への応答行列とした行列を特異値分解して、磁場分布と電流ポテンシャルの固有分布関数のセット(固有ベクトル群)を得る。
【0019】
目標磁場設定部102Dは、コイルパターンを設計するための目標磁場を設定する。具体的には、磁場の初期値を設定し、発生したい磁場との差分を求める。そして、その差分を発生する独立接点の電流ポテンシャル分布の近似値を決定する。そして、磁場精度の要求に合わせて、磁場と、目標の磁場分布との差異が小さくなるように、前記近似値の分布により生成される磁場分布(係数)を決める。この点は前記した最小2乗法と同じであるが、ここでは、係数を固有磁場分布と目標磁場分布の内積で決める。
【0020】
磁場評価部102Eは、求めた電流ポテンシャル分布が、目標とする磁場性能を達成しているか否かを評価する。目標性能判定部102Fは、求めた電流ポテンシャル分布に基づき形成した実体配線パターンによる磁場が目標性能を達成しているか否かを判定する。
【0021】
次に、このような構成によりなる計算装置による基本的な計算手順を、図2のフローチャートを参照して説明する。
(3−1)はじめに、作成部102Aが計算体系データを作成する(ステップS1)。この体系は、一般的に図3に示すような体系である。ここでは、コイルを検討する面(CWS:Current Winding Surface)を三角状の有限面要素の集合で表現している。また、同時に作成部102Aにおいて磁場を評価する点も決める。磁場を評価する点(磁場評価点)は、面を構成する必要はないが、図3においては、下側に表された平面(MES:Magnetic field Evaluating Surface)に配置している(不図示)。
(3−2)入力手段101による入力や記憶部103に予め記憶されている、目標磁場とその重み(許容誤差)データを読み出して、計算処理部102に入力する(ステップS2)。この重みは、実験データを整理する最小2乗法で計測データの誤差に相当するものである。
(3−3)次に、固有ベクトル群算出部102Cが、傾斜磁場コイルから磁場の応答行列とその特異値分解で固有ベクトル群を得る(ステップS3)。まず、前記の条件で、
B = AT (1)
の方程式を構築する。この式は、電流面上の接点の電流ポテンシャル値を要素に持つ電流ポテンシャルベクトルTから、磁場評価点の磁場の応答を示す式であり、行列Aはm(磁場評価点数)行、n(接点数)列である。電流ポテンシャルベクトルは、その勾配と面の放線のベクトル積から電流密度に換算することができ、電流分布を計算することができる。一度、電流分布が求められれば、磁場を計算することはビオサバールの式で容易である。
【0022】
この行列Aに接点の拘束条件を加えて独立な接点の電流ポテンシャルから磁場評価点への応答行列A’とした行列を特異値分解して、磁場分布と、電流ポテンシャルの固有分布関数のセット(固有ベクトル群)とを得る。つまり、全接点の電流ポテンシャルベクトルTに対し、独立接点の電流ポテンシャルベクトルT’の関係は、
T = RT’ (2)
と表すことができる。ここで、Rは全接点数、独立接点数の大きさの行列である。全接点が独立であればRは単位行列に他ならないが、実体系では、端部から電流の漏れ出しが無い条件で、端に位置する接点の電流ポテンシャルが全て同一になっている必要がある等の条件が入り、非正方行列となる。この式を考慮して、前記式(1)を書きなおすと、
B = ART’ (3)
A’ = AR (4)
である。
特異値分解で得られる磁場分布の固有分布は、
,u ,u (5)
であり、電流ポテンシャルの固有分布は、
,v ,v (6)
であり、uとvとの間には、
λ・u = A’・ v
の関係がある。ここでλは特異値である。また、添え字jは特異値の大きさの順に固有分布に番号を付けた順番の数値である。
【0023】
(3−4)目標磁場設定部102Dが、初期電流ポテンシャル分布を入力し、初期条件を設定する(ステップS4)。
(3−5)また、目標磁場設定部102Dが、電流ポテンシャルの初期値Tを決める(ステップS5)。
(3−6)そして、目標磁場設定部102Dが、磁場の初期値を
= AT (7)
とし、発生したい磁場との差分Bを求め、コイル検討用目標磁場を設定する(ステップS6)。
= Btg−B (8)
(3−7)ここで、Bを発生する独立接点の電流ポテンシャル分布の近似値T’を
’= C + C + C (9)
のように決め、コイル電流ポテンシャルを補正する(ステップS7)。係数Cは、次のような方法で決める。基本的には、Cは、T分布により生成される磁場分布であり、磁場(=AT)と、記憶部103に記憶された目標の磁場分布Btgとの差異が小さくなるように決める。この点は前記した最小2乗法と同じであるが、ここでは、Cを固有磁場分布と目標の磁場分布Btgの内積で決める。つまり、
=(B・u)/ λ (10)
である。ただし、必要に応じて、例えば磁場精度の要求に合わせて、Cを調整することは問題ない。前記式(9)では、例として3番目の固有分布までの加算を示しているが、この個数を増やしていくと最小2乗法による解と同等となる。
【0024】
(3−8)そして、目標の磁場分布Btgを発生する電流ポテンシャル分布Tを、
T= T+ RT’ (11)
で求める。この電流ポテンシャル分布の等高線が求めるコイルパターンの形状となる。
(3−9)磁場評価部102Eは、前記式(11)で求めた電流ポテンシャル分布Tが、目標とする磁場性能を達成しているか否かを評価する(ステップS8)。電流ポテンシャル分布が目標とする磁場性能を達成していると判定(ステップS8でYes)した場合には、ステップS9に移行して、電源電流に合わせて離散化による実体配線パターンを形成する。一方、目標とする磁場性能を達成していないと判定(ステップS8でNo)した場合には、ステップS4〜S8を繰り返す。
(3−10)そして、目標性能判定部102Fにより、ステップS10において、ステップS9で形成した実体配線パターンが目標とする磁場性能を達成しているか否かを評価する。実体配線パターンが目標とする磁場性能を達成していると判定(ステップS10でYes)した場合には、計算を終了し、目標とする磁場性能を達成していないと判定(ステップS10でNo)した場合には、ステップS7をステップS9に移行して、電源電流に合わせて離散化による実体配線パターンを形成する。なお、必要に応じて、ステップS8でNoと判定された場合には、ステップS2〜ステップS7を繰り返してもよいし、またステップS1〜ステップS7を繰り返してもよい。
【0025】
この手法は基本的に循環電流に基礎を置かないので、要素の大きさが許す範囲で、任意の電流分布を計算できる。磁場分布の重み(許容誤差)には言及しなかったが重みを導入することは、磁場分布の各点のデータを変数変換することに等価である。つまり、前記式(1)および前記式(3)の磁場は前記式(8)で求める差分であるが、その成分について重みを考えると、
← B/w (12)
である。ここで添え字iは磁場分布ベクトルのi番目の要素であることを示す。また、wはi番目の磁場データの重み(許容誤差)である。最小2乗法による近似のように、小さい方が正確に近似されることを要求する。
【0026】
なお、図2に示すフローチャートによれば、固有ベクトル群算出部102Cが、傾斜磁場コイルから磁場の応答行列とその特異値分解で固有ベクトル群を得る(ステップS3)機能を、一連の動作として説明したが、この機能は、実際にはステップS4〜S7と並行して実現されるものであり、ここでは便宜上一連の動作の流れとして示したものである。
【0027】
そして、本発明の実施形態では、以上説明の計算手法に、次のような特徴的な計算手法を取り入れている。
(4−1)まず、接点の電流ポテンシャルの割り振り計算で、重みの導入を行う。
重みは、前記式(12)と同様に変数変換で考える。つまり前記式(1)の電流ポテンシャルに対して、
→ T/wTi (13)
である。独立接点に対する重みは従属となる接点の重みを対応する要素の面積を考慮して加算して決める。wTiは、許容変動幅に比例する量と考えることができる。なお、小さい数値では繰り返し計算での変動幅を抑える。つまり、パターンをT時のままで固定したい場合には、その該当領域に小さなwTiを置く。wTiについて重みとして考えると、大きな数値は変動幅が大きくなり、重みが大きなことに対応する。一方、wは小さい方がより正確に磁場を近似させることを要求することになり、この場合、通常の意味で重みというと、小さなwが重みが大きいといえる。このような意味合いの差異がある。
【0028】
(4−2)次に、電流の流出・流入を計算に導入する。
電流は、電流ポテンシャルの差で表現される。電流初期値として、流入・流出箇所に流出入電流に相当する電流ポテンシャル差を入力する。この流入流出に相当する電流ポテンシャル分布は端部の接点に入力する。また、内部の設定には、この入力した電流ポテンシャルに連続に電流ポテンシャル分布を入力する。図4にこの例を示す。図4において、傾斜磁場コイルを模擬した計算モデル11’は、有限面要素Fで構成されている。X軸近傍で左から4kA(2000A+2000A)の電流が流入し、右から4kA(2000A+2000A)の電流が流出する。前記した補正分T’の計算では流入流出のない条件で計算して、初期値として入力した流入出の電流は保存される。なお、実計算での入力例は、後記する。
【0029】
(4−3)計算領域を複数に分割し、交互にコイルパターンを計算する手順を収束するまで繰り返す。
例として、図5に示す水平磁場型MRI装置用のマグネット6と組み合わせる傾斜磁場コイル1を挙げて説明する。コイルパターンの領域としては、円筒状の主傾斜磁場コイル2と傾斜磁場シールドコイル3との2つの領域に分割する。そして、前記式(1)〜(12)と、図2に示した手順のうち、初期条件の設定(ステップS4)からコイル電流ポテンシャル補正、T= T +T’(ステップS7)をそれぞれの領域で計算して、収束するまで繰り返す。
【0030】
図5において、下側に矢印で示したように、主傾斜磁場コイル2では、撮像領域10の磁場を形成するようにコイルパターンを決めていき、傾斜磁場シールドコイル3では、磁石内部へ漏れ出ていく磁場をなくすようにコイルパターンを決めていく。どちら側の磁場に対してコイルパターンを決めていくかは、前記式(12)の重みで決める。繰り返し計算の中で、傾斜磁場シールドコイル3側のコイルパターンを決めるときには、撮像領域10の磁場評価点に対しwを大きく、もしくは目標磁場評価点から除外するようにする。一方、主傾斜磁場コイル2のパターンを決めるときには、磁石への漏れ磁場評価点のwを大きく、もしくは目標磁場評価点から除外する。また、電流ポテンシャルの重みwTiについても同様の重み付けを行う。
【0031】
このような特徴的な計算手法を取り入れた計算装置における計算手順を図2のフローチャートとの相違点を中心として、図6のフローチャートを参照して説明する。
ここで、コイルパターン計算方法では、傾斜磁場コイル1が、2分割の領域に分割されることを想定しており、主傾斜磁場コイル2と傾斜磁場シールドコイル3との、2セットの特異値分解で得られる固有ベクトル群(ステップS31,S32)をそれぞれ算出し、2つ領域における電流ポテンシャル分布の補正(ステップS7’,S7’’)をそれぞれ行い、電流ポテンシャル分布が収束するまでの繰り返し計算(ステップS71)が行われ、さらに、重みの設定(ステップS11,S2)がされることを特徴としている。
【0032】
すなわち、入力手段101による入力や記憶部103に予め記憶されている接点重み(許容誤差および変動幅)のデータを、計算処理部102に入力し(ステップS11)、固有ベクトル群算出部102Cが、主傾斜磁場コイル2、傾斜磁場シールドコイル3から磁場の応答行列とその特異値分解で固有ベクトル群をそれぞれ得(ステップS31,S32)、目標磁場設定部102Dが、初期電流ポテンシャル分布の入力で流入流出を入力し、初期条件を設定する(ステップS4’)。
【0033】
そして、電流ポテンシャルi回目計算の初期値を決め(ステップS5’)、i回目計算の主傾斜磁場コイル2の検討用目標磁場を設定する(ステップS6’)。そして、主傾斜磁場コイル電流ポテンシャル補正を行い(S61)、主傾斜磁場コイル2分を補正した電流ポテンシャルを得る(ステップS7’)。
【0034】
その後、交互に行われる計算として、i回目計算の傾斜磁場シールドコイル3の検討用目標磁場を設定し(ステップS6’’)、傾斜磁場シールドコイル3分を補正した電流ポテンシャルを得る(ステップS7’’)。
【0035】
その後、ステップS71に移行して電流ポテンシャル分布が収束したか否かが判定される。収束したと判定された場合(ステップS71でYes)には、前記と同様にステップS8〜S10の手順が行われて、ステップS10で、実体配線パターンが目標とする磁場性能を達成していると判定(ステップS10でYes)した場合には、計算を終了する。
【0036】
一方、ステップS71で、収束していないと判定された場合(ステップS71でNo)には、ステップS71’でi←i+1として、ステップS5’〜S71を繰り返す。
【0037】
図7はこのコイルパターン計算方法で計算した板状の傾斜磁場コイルの一例を示す図である。図7では、全体の1/4体系を計算し、またコイル導体4の中心線を表示している。上側に示した図が主傾斜磁場コイル2のコイルパターンであり、下側に示した図が傾斜磁場シールドコイル3のコイルパターンである。主傾斜磁場コイル2の右半分には、傾斜磁場シールドコイル3が重なって配置された場合の、他種傾斜磁場シールドコイル8を書き込んでいる。図中×印で示した部分は、主傾斜磁場コイル2と傾斜磁場シールドコイル3との接続部7を示している。
本実施形態の計算手法では、各コイルの端子を予め決めた領域に集中させることができる。ドットを記している領域は、電流ポテンシャルが負となる領域である。傾斜磁場シールドコイル3がこの領域であり、傾斜磁場シールドコイル3の巻き線中心が最も低い電流ポテンシャル値で、傾斜磁場シールドコイル3が主傾斜磁場コイル2とは逆方向巻きの電流経路となっていることを示している。
この1/4領域から対称条件で、全体の傾斜磁場コイルが作る磁場を計算して、目標磁場となるように、前記したフローチャート(図6参照)により電流経路を計算してみた。
【0038】
前記したように、主傾斜磁場コイル2と傾斜磁場シールドコイル3とに分けて、それぞれについてコイルパターンを計算した。これら2枚のコイルは半径大の寸法とされた外周部の一部領域で接続されている。接続部7とその周辺において、最初に、初期値として電流ポテンシャルを決め、この部分において目標磁場に対しての最適化は行わないようにした。つまり、接続部7とその周辺の初期値が作る磁場がすでに存在するとして、そのほかの部分の電流分布を決めている。
このため、接続部7の周辺では、直線の組み合わせを基本とするパターンとなっている。
【0039】
この例では、接続部7が、板状の傾斜磁場コイル1の中心(図の原点)から見て、最大外径と最小外径との中間位置に設けられている。つまり、最も距離の大きな(極座標で半径の最も大きな)位置にある傾斜磁場シールドコイル8の磁場傾斜方向(X−GCであればX方向)の端部より小さい半径位置にあり、一方、最も半径方向位置の小さな主傾斜磁場コイル2の磁場傾斜方向端部より大きな半径位置にある。
従来の計算方法では、接続位置は全体を計算する中で自由に決めることはできないので、他のコイル部分との位置関係を調整することはできない。この場合、接続部が他のコイルであるシールドコイルや主コイルと構造的に干渉することになる。一方、本実施形態のように接続位置を調整すると、傾斜方向の主傾斜磁場コイル2と傾斜磁場シールドコイル3との位置関係で漏れ磁場を小さくでき、その間を他のコイルと構造的干渉無しに接続することができる。
【0040】
ここで、図7が求めたコイルパターンであるが、その準備として図8に示すような計算体系を準備した。Y−GCを検討するとして、図8(b)はY方向から見た計算体系である。下部に示した半球は、撮像領域の磁場評価領域15を示している。傾斜磁場コイルの計算モデル11の上にある面は、マグネットへの漏れ磁場評価面14である。傾斜磁場コイルパターンを求める曲面を図8(b)中矢印Y1の方向から見ると、図8(a)に示すような体系となる。傾斜磁場シールドコイル計算モデル13と主傾斜磁場コイル計算モデル12があり、主傾斜磁場コイル計算モデル12には、傾斜磁場シールドコイル計算モデル13に接続された立体配置の接続部の計算モデル17が両側に付加されている。計算体系は1/4の空間であるが、対称条件で全体が表現される(図示の計算体系は1/2のみである)。
【0041】
側面には、接続部の計算モデル17が配置されているが、正面の部分にはこれが存在しない。この部分に他の傾斜磁場コイル(X−GC)の立体電流を流す接続部を配置するためである。従来とは異なり、本実施形態のコイルパターン計算方法では、このように穴の空いた面を有していてもその周りを巡回する電流(立体電流)を表現することができる。
【0042】
図9に電流ポテンシャル等高線16で示す電流ポテンシャル初期値を図8に示した計算体系の傾斜磁場コイル曲面に対して設定した状態を示した。ここで、等高線は500A毎に示している。図7に示した傾斜磁場コイルと同様に、主傾斜磁場コイル2(計算モデル12、以下同じ)と傾斜磁場シールドコイル3(計算モデル13、以下同じ)との2つのパターンを示している。この初期値は一意ではないが、主傾斜磁場コイル2と傾斜磁場シールドコイル3間を立体的に接続する接続部7は接続導体位置を位置させるようにコイル端部の電流ポテンシャル値を一致させている。このように接続部7を強制的に位置させることができることで、主傾斜磁場コイル2と傾斜磁場シールドコイル3のパターンを独立にそれぞれ、撮像領域の磁場とマグネットへの漏れ磁場に対して誤差磁場を、それぞれに必要とされる精度で、小さくすることができる。
【0043】
ところで、撮像領域の傾斜磁場は数ガウスの誤差が許容されるが、漏れ磁場は数MATの大起磁力のコイルに電磁力を与えることから、0.1ガウス程度の誤差以下に抑える必要がある。このように必要とされる精度に差がある部分を同時に一度の計算で最適化しようとすると、それぞれに必要な精度を守ることはできなくなり、必要以上に複雑なパターンが計算で出現することになる。
【0044】
図9では、電流ポテンシャル初期値で、傾斜磁場シールドコイル3には接続部7の電流ポテンシャルを単に内挿したのみの電流ポテンシャルを入力したが、主傾斜磁場コイル2には求めるX−GC(またはY−GC)の電流ポテンシャル分布に近い分布を入力した。このように初期値を最終的な解に近い分布としておくと、収束がよく、また必要以上に複雑なパターンとなることを避けることができる。
【0045】
図10は、初期値から繰り返し計算で一歩進んだ計算時点の電流ポテンシャル分布を示した図である。主傾斜磁場コイル2に、傾斜磁場シールドコイル3が作る磁場を考慮して撮像領域に必要な磁場を発生するように第一回目の主傾斜磁場コイル電流ポテンシャルを計算した結果である。主傾斜磁場コイル2ではパターンが初期値から変化しているが、接続部7の付近では直線状のパターンが保存されていることが解る。また、傾斜磁場シールドコイル3にはまだ計算が進んでない。主傾斜磁場コイル2の計算後、傾斜磁場シールドコイル3のパターンを計算する。この繰り返しを収束するまで(繰り返しで大きな電流ポテンシャルの変化がなくなるまで)行う。
【0046】
このような繰り返しが収束すると、図7に示すような傾斜磁場コイルの電流ポテンシャル分布となる。なお、等高線がコイル形状を示している。実際には、ターン間に段落として接続が必要であり、図11に示すように、離散化したコイルパターンを傾斜磁場コイルに適用する。図11は主傾斜磁場コイル2について示している。この段階でも傾斜磁場シールドコイル3(図7参照)との接続部7に近いところは直線上のパターンとなっている。コイル導体4を中心線で示しているが、上部に接続されてない部分がある。この部分は段落とし接続部9である。
【0047】
以上のように決定したパターンを持つ傾斜磁場コイルは、3方向の傾斜磁場コイルを組み合わせて一枚の傾斜磁場コイル1として図12に示すように、開放型の電磁石装置(マグネット)と組み合わせられ核磁気共鳴撮像装置として構成される。さらに人が横たわるベッド25と組み合わされ診断撮像に用いられる。
【0048】
このような特徴的な計算手法を取り入れたことによる作用を順に述べる。
前記(4−1)で説明した重み付けを導入することで、コイルパターンの複雑になる領域を調整することができる。つまり、接続等の配線を施す必要がある領域に対しては、複雑なパターンを配置することを防ぐことができ、このような領域には、直線状のパターン等、曲率半径の小さな曲線パターンを極力少なく配置することができる。
こうすることで、製作性を向上させることができる。傾斜磁場は、例えば、5%程度の線型な磁場分布(X−GCであればB=αX:αは比例常数)からのずれを許容する。つまり、この許容される誤差を、前記した直線状等のパターンを配置する任意性に利用することが可能である。
【0049】
また、前記(4−2)で説明した電流の流出・流入を計算に導入することで、コイルの電流端子の位置を計算で考慮することができる。また、前記(4−3)で説明した領域の分割において、分割した領域の接続するためにも、電流端子の位置を考慮する必要が生じる。
【0050】
さらに、前記(4−3)で説明した、計算領域を複数に分割し、繰り返して交互にコイルパターンを計算する手順を収束するまで繰り返す手法を導入することで、撮像領域の磁場とシールド機能をそれぞれに必要とされる精度でコイルパターンを計算することができる。
複数の領域に分割してコイルパターンを計算する場合には、領域毎に要求される磁場精度が異なるため、同時にこれらを分割せずに計算しようとすると、それぞれの領域を必要精度でコイルパターンの計算をすることが難しくなる。
ところが、本発明では複数の領域に分割し、これらを交互に繰り返し計算を行う。
図5に示したように、傾斜磁場コイル1は、主として主傾斜磁場コイル2と傾斜磁場シールドコイル3の組み合わせで成り立つ。主傾斜磁場コイル2は、目標磁場に対して数%の誤差が許容される。
一方、傾斜磁場シールドコイル3は、与えられた主コイルが作る静磁場を撮像領域10の反対側でコイルやその他構造物が存在する領域には渦電流発生による撮像に悪影響を与える磁場発生をさけるために、磁場の到達がほぼ零(撮像領域10の自爆に比べて0.1%程度以下)となるように高い精度が要求される。
したがって、このような要求磁場精度が異なることに対して、主傾斜磁場コイル2と傾斜磁場シールドコイル3とに領域を分割し、それぞれの領域毎(コイル毎)に繰り返し計算を行うことで、撮像領域10に形成される磁場とシールド機能とを、それぞれに必要とされる精度を確保したコイルパターンを有するように計算することができる。
また、目標磁場に対して電流ポテンシャル値を繰り返し計算中に変化させていく第1の領域(コイルの端部の直線状部分以外の領域)と、この第1の領域よりも電流ポテンシャル値の変化量を小さく変化させ、またはポテンシャル値を変化させない第2の領域(コイルの端部の直線状部分の領域)と、に区別して計算を行ってもよい。このように区別することで、コイルの端部において直線状のコイルパターンを維持することができ、製作性に優れたコイルパターンを有する傾斜磁場コイルを得ることができる。
【0051】
以下では、本実施形態において得られる効果を説明する。
(A)以上のように本実施形態のコイルパターン計算方法によれば、必要磁場精度を考慮したコイルパターンを有する主傾斜磁場コイル2および傾斜磁場シールドコイル3を得ることができる。接続部7付近のコイルパターンを設計者自身の意志で、製作性の良いパターンとすることができるため、磁場性能を低下させることなく軽量・安価な傾斜磁場コイルおよびそれを内蔵するMRI装置を提供することができる。
(B)本実施形態のコイルパターン計算方法により得られるコイルパターンで形成される主傾斜磁場コイル2および傾斜磁場シールドコイル3は、これらの間の配線やその接続部の近傍部分(コイルパターンの端部における、複数の配線に接続される部分のパターン)を、直線状の配線や直線状のコイルパターンとすることができるので、配線の接続性に優れ、製作性がよいという利点が得られる。
(c)主傾斜磁場コイル2と傾斜磁場シールドコイル3との間を正味に巡回する電流(立体電流)を考慮したコイルパターンが設計可能である。これにより、傾斜磁場コイル1必要な性能が満たされるだけでなく、製作性の良い、かつ、穴部を設けることが可能である等、形状に制限のないコイルパターン設計が可能となる。
(D)有限面要素によるコイルパターン検討面を作成するため、任意の外形形状の傾斜磁場コイル1の設計が可能である。つまり、静磁場発生のマグネットで均一磁場生成に必要な形状を優先し、与えられた傾斜磁場用の空間がどのような形状となってもコイルパターンの設計が可能となる。
(E)傾斜磁場コイルの外形は、MRI装置のマグネットに合わせた形状とできるので、装置全体としてコンパクトな形状が可能で、被検者に開放的な感覚を与えるMRI装置が得られる。
【0052】
図13(a)(b)はその他の傾斜磁場コイル1’を模式的に示した図である。前記と同様に、全体の1/4でX−GC(もしくはY―GC)の導体中心線を示している。図13(b)は、図13(a)の図中における矢印X1の方向から見たときの傾斜磁場コイル外形を示している。主傾斜磁場コイル2’と傾斜磁場シールドコイル3’とからなる。接続部7付近が直線状の導体の組み合わせで構成されていることがわかる。この構成は本実施形態のコイルパターン計算方法を利用して形成することができ、全体を傘型として周囲への漏れ磁場を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係るコイルパターン計算方法を実施する計算装置の概略構成を示す図である。
【図2】コイルパターン計算方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【図3】一般的な計算体系を説明するための図である。
【図4】流出流入に対応した電流ポテンシャル値の設定を説明するための図である。
【図5】水平磁場MRI装置用傾斜磁場コイルへ適用したときの状態を示す概念図である。
【図6】コイルパターン計算方法の手順を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係るコイルパターン計算方法により計算された傾斜磁場コイルの電流ポテンシャルを等高線で示した図である。
【図8】(a)(b)は計算体系を説明するための図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るコイルパターン計算方法を適用したコイルパターンを求める計算における初期電流ポテンシャル分布図である。
【図10】同じく、主傾斜磁場コイルの電流ポテンシャルを撮像領域の静磁場に対して1回の近似計算を実施したときの電流ポテンシャル分布図である。
【図11】主傾斜磁場コイルの離散化したコイルパターンを示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る傾斜磁場コイルを適用した核磁気共鳴撮像装置を示す概略図である。
【図13】(a)(b)はその他の例のコイルパターンを示す図である。
【図14】(a)(b)は従来技術の説明図である。
【図15】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 傾斜磁場コイル
1’ 傾斜磁場コイル
2 主傾斜磁場コイル
2’ 主傾斜磁場コイル
3 傾斜磁場シールドコイル
3’ 傾斜磁場シールドコイル
7 接続部
10 撮像領域
11 計算モデル
12 主傾斜磁場コイル計算モデル
13 傾斜磁場シールドコイル計算モデル
16 電流ポテンシャル等高線
17 計算モデル
100 CPU
101 入力手段
102 計算処理部
102A 作成部
102B 処理部
102D 目標磁場設定部
102E 磁場評価部
102F 目標性能判定部
103 記憶部
104 出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上に分割されたコイル面を有するコイルのコイルパターンを計算するコイルパターン計算方法であって、
入力された電流ポテンシャル分布の初期値に基づき、それぞれの前記コイル面を構成する有限面要素の各接点における電流ポテンシャルを計算し、
前記電流ポテンシャルが表現する面電流が、前記有限面要素毎に設定される目標磁場分布に近付くように、前記コイル面毎に交互に繰り返し前記電流ポテンシャルの計算を行い、それぞれの磁場条件にそれぞれの目標磁場の許容誤差の範囲内となる磁場を発生する電流ポテンシャル分布を求めるステップと、
この求めた電流ポテンシャル分布の等高線からコイルパターンを決定するステップと、
を行うことを特徴とするコイルパターン計算方法。
【請求項2】
前記電流ポテンシャル分布を求めるステップは、
前記電流ポテンシャルから目標磁場分布への応答行列を用い、前記各接点における前記電流ポテンシャルに重みを加えて、前記コイル面を、前記目標磁場に対して電流ポテンシャル値を繰り返し計算中に変化させ、その変化量を前記重みの分布で調整する第1の領域と、前記第1の領域よりも前記電流ポテンシャル値の変化量を小さく変化させ、または前記ポテンシャル値を変化させない第2の領域と、に区別するステップと、
これらの第1,第2の領域を前記重み付けで区別して計算するステップと、
を行うことを特徴とする請求項1に記載のコイルパターン計算方法。
【請求項3】
前記コイル面は、主コイルを構成するコイル面およびシールドコイルを構成するコイル面であり、
前記電流ポテンシャル分布を求めるステップは、
前記主コイル、前記シールドコイル、およびこれらの連結部に貫流する電流に相当する初期電流ポテンシャル分布を、前記有限面要素の前記各接点に割り付け、前記連結部とその周囲に割り付けた前記電流ポテンシャル値は、繰り返し計算中における変化量を、これら以外の部分よりも小さく変化させることで、前記連結部で前記主コイルと前記シールドコイルとの前記コイル面間を循環する電流を表現するように計算するステップを有したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコイルパターン計算方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載されたコイルパターン計算方法により計算されたコイルパターンにより構成され、
核磁気共鳴信号に位置情報を付加するために線形な磁場分布を加え、撮像領域に線形な磁場分布を作る主傾斜磁場コイルと、前記主傾斜磁場コイルに対して前記撮像領域の反対側に位置し、均一な静磁場を生成するマグネットへの漏れ磁場を抑制する傾斜磁場シールドコイルとから構成される傾斜磁場コイルであって、
前記主傾斜磁場コイルと前記傾斜磁場シールドコイルとの間を接続する複数の配線を備え、
前記複数の配線は、いずれも直線状とされていることを特徴とする傾斜磁場コイル。
【請求項5】
前記主傾斜磁場コイルと前記傾斜磁場シールドコイルとに形成される前記コイルパターンは、その端部における前記複数の配線に接続される部分のパターンが直線状とされていることを特徴とする請求項4に記載の傾斜磁場コイル。
【請求項6】
前記主傾斜磁場コイルおよび前記傾斜磁場シールドコイルは、それぞれ円板状を呈しており、
前記複数の配線は、円周方向の一部の領域に集中して設けられていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の傾斜磁場コイル。
【請求項7】
前記複数の配線は、前記主傾斜磁場コイルおよび前記傾斜磁場シールドコイルにおける最大外径と最小外径との中間位置にて、前記主傾斜磁場コイルおよび前記傾斜磁場シールドコイル間を接続していることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の傾斜磁場コイル。
【請求項8】
2つ以上に分割されたコイル面を有するコイルのコイルパターンを計算するコイルパターン計算方法であって、
入力された電流ポテンシャル分布の初期値に基づき、それぞれの前記コイル面を構成する有限面要素の各接点における電流ポテンシャルを計算する計算ステップと、
前記電流ポテンシャルに基づく磁場が、前記有限面要素毎に設定される目標磁場からの許容誤差の範囲内であるかを判断する判断ステップと、
前記許容誤差の範囲内であると判断した場合に、前記電流ポテンシャルに基づく電流ポテンシャル分布から前記コイルパターンを決定する決定ステップと、
を行うことを特徴とするコイルパターン計算方法。
【請求項9】
2つ以上に分割されたコイル面を有するコイルのコイルパターンを計算するコイルパターン計算方法であって、
入力された電流ポテンシャル分布の初期値に基づき、それぞれの前記コイル面を構成する有限面要素の各接点における電流ポテンシャルを計算する計算ステップと、
前記電流ポテンシャルに基づく磁場が、前記有限面要素毎に設定される目標磁場からの許容誤差の範囲内であるかを判断する判断ステップと、
前記許容誤差の範囲内でないと判断した場合、前記許容誤差の範囲内となるまで前記計算ステップおよび前記判断ステップを繰返し、前記許容誤差の範囲内となる前記電流ポテンシャルに基づく電流ポテンシャル分布から前記コイルパターンを決定する決定ステップと、
を行うことを特徴とするコイルパターン計算方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−240391(P2009−240391A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87862(P2008−87862)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】