説明

コイル内蔵基板および電子モジュール

【課題】コイル内蔵基板において磁性基体内に設けられたコイルの特性を向上させること。
【解決手段】コイル内蔵基板1は、磁性基体11を含む絶縁基体と、磁性基体11の内部に設けられたコイル12と、平面視において磁性基体11の複数の角部分に設けられた複数のキャスタレーション導体とを含んでいる。複数のキャスタレーション導体は、磁性基体11上に実装されるIC素子に電気的に接続される電源電位用導体と接地電位用導体と制御信号用導体とを含んでおり、電源電位用導体と接地電位用導体が制御信号用導体よりも大きい寸法を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばDC−DCコンバータモジュール等に用いられるコイル内蔵基板、および電子モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば携帯電話機、PCまたは産業機器等の電子機器分野において、小型化、高性能化または機能のモジュール化の観点から、コイルおよびIC素子等の複数の素子が一体化された電子モジュールの開発が進められており、電源用の電子モジュールとして例えばDC−DCコンバータモジュールなどが提供されている。
【0003】
従来のコイルを有する電子モジュールとして、例えば下記特許文献1に示されているように、磁性基体内にコイルを備えており、IC素子と外部端子との間の電気的な接続がビア導体によって実現されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2007/138857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ICと外部端子との間の電気的な接続をビア導体によって行った場合は、ビア導体の全周にわたって磁性体が存在することになり、ビア導体の周りに不要な磁界が発生して、磁性基体内に内蔵されたコイルの特性を低下させる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様によるコイル内蔵基板は、磁性基体と、磁性基体の内部に設けられたコイルと、平面視において磁性基体の複数の角部分に設けられた複数のキャスタレーション導体とを含んでいる。複数のキャスタレーション導体は、磁性基体上に実装されるIC素子に電気的に接続される。
【0007】
本発明の他の態様による電子モジュールは、上記構成のコイル内蔵基板と、コイル内蔵基板の磁性基体上に搭載されておりコイルおよび複数のキャスタレーション導体に電気的に接続されたIC素子とを含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によるコイル内蔵基板において、複数のキャスタレーション導体が磁性基体上に実装されるIC素子に電気的に接続される。本発明の一つの態様によるコイル内蔵基板は、このような構成を含んでいることによって、IC素子と外部端子との間の電気的な接続が磁性基体から部分的に露出されたキャスタレーション導体によって実現されており、例えばIC素子と外部端子との間の電気的な接続が磁性基体内に設けられたビア導体によって実現されている構成に比べて、不要な磁界が低減されており、磁性基体内に設けられたコイルの特性に関して向上されている。
【0009】
本発明の他の態様による電子モジュールは、上記構成のコイル内蔵基板を含んでいることによって、コイルの特性に関して向上されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一つの実施形態における電子モジュールを示す斜視図である。
【図2】図1に示されたコイル内蔵基板の分解斜視図を示している。
【図3】図1に示された電子モジュールの平面図を示している。
【図4】図1に示された電子モジュールの下面図を示している。
【図5】図1に示された電子モジュールの回路図を示している。
【図6】図1に示されたコイル内蔵基板を得るための集合基板の例を示す平面図である。
【図7】図1に示されたコイル内蔵基板を得るための集合基板の他の例を示す平面図である。
【図8】図1に示された電子モジュールの他の構造例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
本実施形態における電子モジュールは、図1〜図3に示されているように、コイル内蔵基板1と、コイル内蔵基板1に搭載されたIC素子2とを含んでいる。図1において、電子モジュールは、仮想のxyz空間におけるxy平面に実装されている。図1において、上方向とは仮想のz軸の正方向のことをいう。
【0013】
コイル内蔵基板1は、絶縁基体10を含んでおり、絶縁基体10は磁性基体11によって構成されている。コイル内蔵基板1は、磁性基体11の内部に設けられたコイル12と、磁性基体11に設けられた複数のキャスタレーション導体13と、磁性基体11の下面に設けられた複数の外部端子14と、磁性基体11の上面に設けられた複数のIC素子実装用パッド15とをさらに含んでいる。
【0014】
磁性基体11は、平面視において略矩形状を有しており、略矩形状の複数の角部分に切欠き部を有している。切欠き部は、磁性基体11の上面から下面にかけて設けられている。磁性基体11は、例えば磁性体セラミック材料から成る。磁性基体11は、互いに積層された第1〜第3の磁性層11a〜11cを含んでいる。
【0015】
コイル12は、磁性層11bの上面および磁性層11cの上面に設けられている。コイル12の例は、図2に示されているように、複数の磁性層に設けられた積層型スパイラルコイル、または一つの磁性層に設けられた平面スパイラルコイル等である。
【0016】
複数のキャスタレーション導体13は、平面視において磁性基体11の複数の角部分に設けられており、電源電位用導体13aと接地電位用導体13bと複数の制御信号用導体13c,13dとを含んでいる。複数の制御用信号導体は、オンオフ制御用信号導体13cおよび電圧制御用信号導体13dとを含んでいる。複数のキャスタレーション導体13は、磁性基体11から部分的に露出されている。
【0017】
複数の外部端子14は、電源電位用外部端子14aと、接地電位用外部端子14bと、オンオフ制御用信号外部端子14cと、電圧制御用信号外部端子14dと、出力外部端子14eとを含んでいる。
【0018】
複数のIC素子実装用パッド15は、電源電位用パッド15aと、接地電位用パッド15bと、オンオフ制御用信号パッド15cと、電圧制御用信号パッド15dと、コイル接続用パッド15eとを含んでいる。
【0019】
図5を参照して本実施形態の電子モジュールにおける電気的接続について説明する。電源電位用パッド15aは、電源電位用外部端子14aおよびIC素子2に電気的に接続されて
いる。電源電位用外部端子14aには、電源電位VDDが供給される。接地電位用パッド15bは、接地電位用外部端子14bおよびIC素子2に電気的に接続されている。接地電位用外部端子14bには、接地電位GNDが供給される。オンオフ制御用信号パッド15cは、オンオフ制御用信号外部端子14cおよびIC素子2に電気的に接続されている。オンオフ制御用信号外部端子14cには、オンオフ制御用信号ContON/OFFが供給される。オンオフ制御用信号ContON/OFFは、IC素子2の動作状態と停止状態とを切り替える信号である。電圧制御用信号パッド15dは、電圧制御用信号外部端子14dおよびIC素子2に電気的に接続されている。電圧制御用信号外部端子14dには、電圧制御用信号Contが供給される。電圧制御用信号Contは、出力電圧を制御するための信号である。コイル接続用パッド15eは、コイル12およびIC素子2に電気的に接続されている。コイル12は、出力外部端子14eに電気的に接続されている。
【0020】
図6に示されているように、本実施形態におけるコイル内蔵基板1は、例えば複数の内蔵基板1がアレイ状に配置されている集合基板を分割することによって得られる。集合基板は、交互に配列された複数の第1の貫通導体31と複数の第2の貫通導体32とを有している。第1の貫通導体31と第2の貫通導体32とは、平面視おいて互いに半径が異なる。第1の貫通導体31は例えば0.4mmの半径を有しており、第2の貫通導体32は例えば0.2mmの半径を有している。集合基板が分割される際に、第1の貫通導体31も分割されて電源電位用導体13aおよび接地電位用導体13bが得られる。また、集合基板が分割される際に、第2の貫通導体32も分割されてオンオフ制御用信号導体13cおよび電圧制御用信号導体13dが得られる。
【0021】
図7に示されているように、本実施形態におけるコイル内蔵基板1を得るための他の例の集合基板は、同じ半径を有する複数の貫通導体33を有している。他の例における集合基板は、同じ半径を有する複数の貫通導体33を異なる位置で分割することによって、電源電位用導体13aおよび接地電位用導体13bとオンオフ制御用信号導体13cおよび電圧制御用信号導体13dとの寸法が異なるように分割される。
【0022】
本実施形態におけるコイル内蔵基板1は、平面視において磁性基体11の複数の角部分に設けられた複数のキャスタレーション導体13とを含んでいる。複数のキャスタレーション導体13は、磁性基体11に実装されるIC素子2に電気的に接続される電源電位用導体13aと接地電位用導体13bと制御信号用導体13c,13dとを含んでおり、電源電位用導体13aおよび接地電位用導体13bが制御信号用導体13c,13dよりも大きい寸法を有している。本実施形態におけるコイル内蔵基板1において、IC素子と外部端子との間の電気的な接続は磁性基体から部分的に露出されたキャスタレーション導体によって実現されており、本実施形態におけるコイル内蔵基板1は、例えばIC素子と外部端子との間の電気的な接続が磁性基体内に設けられたビア導体によって実現されている構成に比べて、不要な磁界が低減されており、磁性基体内に設けられたコイルの特性に関して向上されている。さらに、本実施形態におけるコイル内蔵基板1において、電源電位用導体13aおよび接地電位用導体13bが制御信号用導体13c,13dよりも大きい寸法を有していることによって、本実施形態におけるコイル内蔵基板1は、小型化を図りつつ電源電位および接地電位の安定化を図ることができる。
【0023】
本実施形態におけるコイル内蔵基板1において、複数のキャスタレーション導体13が平面視において磁性基体11の複数の角部分に設けられていることによって、コイル12とIC素子および外部端子間の電気的接続構造との距離を比較的大きくとることができコイル12の特性を向上させることができるとともに、コイル12が例えば図2に示されているように直線部分と角部分とを有するものであり角部分の磁束が比較的弱いものであったとしても、例えば、例えばIC素子と外部端子との間の電気的な接続が磁性基体内に設けられたビア導体によって実現されている構成に比べて、この磁束が比較的弱いコイルの角部分に対
するIC素子と外部端子との間の電気的な接続構造の影響は比較的小さくなっている。
【0024】
本実施形態における電子モジュールは、上述のような構成のコイル内蔵基板1を含んでいることによって、コイル12の特性の向上に伴ってモジュールの機能特性が向上されている。
【0025】
なお、図8に示されているように、絶縁基体10は、磁性基体11上に設けられておりIC素子2の搭載領域を有する非磁性基体16をさらに含んでいるものであってもよい。本実施形態において、非磁性基体16を有する構造例は、IC素子2とコイル12との不要な磁界による結合をさせることができ、コイル12の特性に関して向上されている。
【0026】
また、絶縁基体10の上面に例えばチップコンデンサ等の電子部品が搭載される場合、電子部品に電気的に接続される導体は、平面視において絶縁基体10の角部分ではなく辺部分に設けられていてもよい。例えばチップコンデンサ等の電子部品に電気的に接続される導体は、IC素子2に電気的に接続される導体に比べてコイル12からの影響を低減させる必要がない場合があり、平面視において絶縁基体10の辺部分に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 コイル内蔵基板
10 絶縁基体
11 磁性基体
12 コイル
13 キャスタレーション導体
14 外部端子
15 IC素子実装用パッド
2 IC素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性基体を含む絶縁基体と、
前記磁性基体の内部に設けられたコイルと、
平面視において前記磁性基体の複数の角部分に設けられた複数のキャスタレーション導体とを備えており、
該複数のキャスタレーション導体が、前記磁性基体上に実装されるIC素子に電気的に接続されることを特徴とするコイル内蔵基板。
【請求項2】
前記複数のキャスタレーション導体が、電源電位用導体と接地電位用導体と制御信号用導体とを含んでおり、前記電源電位用導体および前記接地電位用導体が前記制御信号用導体よりも大きい寸法を有していることを特徴とする請求項1記載のコイル内蔵基板。
【請求項3】
前記絶縁基体が、前記磁性基体上に設けられておりIC素子の搭載領域を有する非磁性基体をさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載のコイル内蔵基板。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたコイル内蔵基板と、
該コイル内蔵基板の前記絶縁基体上に搭載されており、前記コイルおよび前記複数のキャスタレーション導体に電気的に接続されたIC素子とを備えていることを特徴とする電子モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−26277(P2013−26277A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156816(P2011−156816)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】