説明

コイル式熱交換器

【課題】製作容易で、小型かつ安価で、圧力損失の小さなコイル式熱交換器を提供する。
【解決手段】螺旋状に巻かれた管から構成されるコイル2と、このコイルを収容するシェル3とを備える。コイル2を構成する管は、扁平な断面を有し、その扁平面をコイル2の軸方向両側へ向けると共に、扁平面間に隙間をあけて螺旋状に巻かれる。シェル3には、シェル3内へ流体を導入する管と、シェル3外へ流体を導出する管とが設けられる。この二種の管の内、第一の管12は、コイル2の径方向内側の空間に開口され、第二の管13は、コイル2の径方向外側の空間に開口される。熱交換を図ろうとする二つの流体の内、一方がシェル3に通され、他方がコイル2に通される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル式熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば、空気圧縮機からの圧縮空気を冷却するエアクーラとして、シェルアンドチューブ式熱交換器やプレートフィン式熱交換器が一般的に用いられている。
【0003】
シェルアンドチューブ式熱交換器は、中空容器状のシェル内に複数のチューブが配置されている。これを用いて圧縮空気を冷却する場合、シェルとチューブとの内、一方に圧縮空気を通し、他方に冷却用水を通せばよい。但し、熱交換量が同等なプレートフィン式に比べて、圧縮空気が通過する断面積が小さくなることが多いため、シェルアンドチューブ式は、プレートフィン式に比べて空気の圧力損失が大きくなることが多い。
【0004】
一方、プレートフィン式熱交換器は、間隔をあけて平行に配置された多数のプレートに、チューブが通されており、前記プレートがフィンとして機能する。これを用いて圧縮空気を冷却する場合、チューブに冷却用水を通しつつ、その外側のプレートフィンに空気を通せばよい。但し、熱交換量が同等なシェルアンドチューブ式に比べて、プレートフィン式は大型になる可能性がある。つまり、圧縮空気が通過するプレートフィン部は直方体にならざるを得ず、そのケーシングも直方体となってしまう上、圧縮空気の圧力(たとえば0.7MPa)に耐えるために、ケーシングが厚くならざるを得ないので、大きくて重たくなる。
【0005】
また、下記特許文献1に開示されるように、扁平な管によるコイルを用いた温水発生装置が提案されている。しかしながら、コイル内を通過する水を、バーナによる燃焼で温めるものであり、空気圧縮機からの圧縮空気を冷却するためのエアクーラなど、他の用途の利用を前提としない。すなわち、コイルを収容した缶体内へ外部から流体を導入し、コイル内を通される流体との熱交換後に、缶体外へ流体を導出するという構成ではない。
【0006】
また、下記特許文献2に開示されるように、平行に並べた複数の扁平管を、両端部においてヘッダタンクで接続した熱交換器も提案されている。しかしながら、扁平管とヘッダタンクとの溶接箇所が多く、製作に手間と費用を要すると共に、ヘッダタンクが必要であるため、大型化してしまう。また、扁平管を配置した領域にムラなく空気を通すのも困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−75995号公報
【特許文献2】特開2009−145010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、製作容易で小型で安価な熱交換器を提供することにある。また、たとえば圧縮空気を製造する際、エアクーラの圧力損失が小さいほど、同じ動力でより多くの圧縮空気を製造できるので、圧力損失の小さな熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、螺旋状に巻かれた管から構成されるコイルと、このコイルを収容するシェルとを備え、前記コイルを構成する管は、扁平な断面を有し、その扁平面を前記コイルの軸方向両側へ向けると共に、扁平面間に隙間をあけて螺旋状に巻かれており、前記シェルには、前記シェル内へ流体を導入する管と、前記シェル外へ流体を導出する管との、二種の管が設けられ、この二種の管の内、第一の管は、前記コイルの径方向内側の空間に開口され、第二の管は、前記コイルの径方向外側の空間に開口され、前記コイルの径方向内側の空間と、前記コイルの径方向外側の空間とは、前記扁平面間の隙間を介してのみ連通され、熱交換を図ろうとする二つの流体の内、一方が前記シェルに通され、他方が前記コイルに通されることを特徴とするコイル式熱交換器である。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、コイルとそれを収容するシェルとから、製作容易で小型で安価なコイル式熱交換器を実現することができる。また、このコイル式熱交換器では、コイルの径方向内側の空間と、コイルの径方向外側の空間とは、コイルの扁平面間の隙間を介してのみ連通される。従って、シェルを通される流体は、コイルの軸方向端部とシェルとの隙間をショートパスすることなく、必ずコイル間の隙間を通るため、コイルを通される流体との熱交換を確実に図ることができる。また、そのコイルの断面を扁平面としているので、断面円形の管の場合よりも熱交換に寄与する伝熱面積を大きくすることができる。しかも、仮に、断面円形の管をコイルにしただけでは、コイルの縦断面で観察した場合、円と円とが順に上下に並ぶことになり、コイルを径方向に通される流体の流路面積は、大きな縮小と拡大とを起こすことになり、圧力損失が大きい。ところが、請求項1に記載の発明によれば、コイルを構成する管は、断面円形ではなく、扁平に形成され、その扁平面をコイルの軸方向両側へ向けると共に、扁平面間に隙間をあけて螺旋状に巻かれる。従って、コイルの縦断面で観察した場合、扁平面と扁平面とが隙間をあけて平行に配置されることになるので、コイルを径方向に通される流体の流路面積は安定し、圧力損失を小さくすることができる。その上、扁平面の隙間を通される間、コイル内を通される流体との熱交換が有効に図られる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記コイルの径方向内側の空間は、軸方向一端部が閉塞される一方、軸方向他端部に前記第一の管が開口され、前記コイルの軸方向他端部において、前記コイルと前記第一の管との隙間が閉塞されることを特徴とする請求項1に記載のコイル式熱交換器である。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、コイルの径方向内側の空間は、軸方向一端部において、閉塞される一方、軸方向他端部において、シェル内へ流体を導出入する管が開口され、この管とコイルとの隙間が閉塞される。これにより、コイルを径方向に通される流体は、すべてコイルを構成する管の扁平面間の隙間を通過することになり、コイル内外の流体間の熱交換を有効に図ることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記コイルとして、同心円筒状に配置された複数のコイルを備え、前記シェルに設けられる二種の管の内、第一の管は、最も内側に配置される前記コイルの径方向内側の空間に開口され、第二の管は、最も外側に配置される前記コイルの径方向外側の空間に開口され、最も内側に配置される前記コイルの径方向内側の空間は、軸方向一端部が閉塞される一方、軸方向他端部に前記第一の管が開口され、最も内側に配置される前記コイルの軸方向他端部において、そのコイルと前記第一の管との隙間が閉塞され、前記複数のコイル同士の隙間は、軸方向両端部において閉塞されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコイル式熱交換器である。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、熱交換量を増加させたい場合、コイルの巻き数を増加させる以外に、コイルの列数を増加させることにより、伝熱面積を増やすことができる。しかも、複数のコイルを同心円筒状に配置することで、コンパクトになる。また、コイル同士の隙間を軸方向両端部において閉塞することで、コイルを径方向に通される流体は、すべてコイルを構成する管の扁平面間の隙間を通過することになる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記シェルは、前記第二の管から被冷却流体が導入され、前記第一の管から被冷却流体が導出されることを特徴とする請求項3に記載のコイル式熱交換器である。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、コイルを径方向に通される流体は、コイルの外周側から中央部へ向けて流れるので、熱交換効率がよい。すなわち、まず前提として、同心円筒状に複数のコイルを配置する場合、コイルの巻き数が同じであれば、内側のコイルほど通過断面積が小さくなる。また、一般に、流体は、温度が下がれば容積が小さくなる。従って、コイルを径方向に通される流体は、温度が下がって容積が小さくなってから、流路面積が比較的小さくなる内側のコイルを通過するのが好ましいことになる。これにより、コイル内外の流体間の熱交換を有効に図ることができる。
【0017】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記コイルは、軸方向両端部がそれぞれ円筒壁にはめ込まれると共に、その円筒壁との隙間を封止され、前記コイルの軸方向一端部に設けられる前記円筒壁は、その中空穴が閉塞され、前記コイルの軸方向他端部に設けられる前記円筒壁の内、最も内側に配置される前記円筒壁は、その中空穴に前記第一の管が接続されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコイル式熱交換器である。
【0018】
コイルは、当然ながら螺旋状に形成されるので、軸方向端部において隙間を封止するのが難しいが、請求項5に記載の発明によれば、コイルの端部を円筒壁にはめ込むことで、軸方向端部の閉塞を容易で確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、製作容易で小型で安価なコイル式熱交換器を実現することができる。また、圧力損失の小さなコイル式熱交換器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のコイル式熱交換器の一実施例を示す斜視図であり、一部を切り欠いて断面にして示している。
【図2】図1のコイル式熱交換器の上部を拡大して示す縦断面図である。
【図3】図1のコイル式熱交換器の下部を拡大して示す縦断面図である。
【図4】図1のコイル式熱交換器の各コイルの扁平面間の隙間を流体が通過する際の状態を示す概略縦断面図である。
【図5】図4において、各コイルの断面を単に円形とした場合を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明のコイル式熱交換器1の一例を示す斜視図であり、一部を切り欠いて断面にして示している。また、図2および図3は、図1のコイル式熱交換器1の端部を拡大して示す縦断面図であり、図2はコイル式熱交換器1の上部を示し、図3はコイル式熱交換器1の下部を示している。
【0023】
コイル式熱交換器1は、扁平な断面を有する細長い管を螺旋状に巻いて構成されるコイル2(2A,2B)と、このコイル2を収容する中空容器状のシェル3とを備える。これにより、コイル式熱交換器1において、コイル2に通される流体と、シェル3に通される流体とを、混ぜることなく熱交換することができる。つまり、コイル2を構成する管内を通される流体と、その管外ではあるがシェル3内を通される流体とを、混ぜることなく熱交換することができる。
【0024】
コイル2は、一つでもよいし、複数でもよい。複数のコイル2を用いる場合、図示例のように、同心円筒状に複数のコイル2を配置するのがよい。熱交換量を増加させたい場合、コイル2の巻き数を増加させることに代えてまたはこれに加えて、コイル2の列数(つまり同心円筒状に配置するコイル2の数)を増加させればよい。これにより、コンパクトに効率よく伝熱面積の増加を図り、熱交換量を増加させることができる。
【0025】
図示例のコイル式熱交換器1は、内側コイル2Aと外側コイル2Bとの二つのコイル2を備える。内側コイル2Aと外側コイル2Bとは、図示例では、径が異なるだけで同一の巻き数を同一のピッチで巻かれ、また同一断面の管から構成される。そして、図2や図3に示すように、コイル式熱交換器1を縦断面で見た場合、各コイル2を構成する管の断面は、それぞれ上下に等間隔に現れるが、図示例では、内側コイル2Aと外側コイル2Bとで対応した高さに配置される。但し、内側コイル2Aと外側コイル2Bとで巻き数やピッチを変えたり、各コイル2を構成する管の断面を互いに異なったものとしたり、コイル式熱交換器1を縦断面で見た場合における各コイル2を構成する管の断面の出現を上下にずらしたりしてもよい。さらに、図示例では、内側コイル2Aの外周面と外側コイル2Bの内周面との間には、隙間をあけているが、この隙間の有無または量は適宜に設定される。
【0026】
各コイル2は、細長い管が螺旋状に巻かれて構成される。各コイル2を構成する管は、少なくとも螺旋部において扁平な断面を有し、その扁平面をコイル2の軸方向両側へ向けると共に、扁平面間に隙間をあけて螺旋状に巻かれる。
【0027】
図2または図3では、コイル2を構成する管は、左右両端部が略半円状で、上下両端部が略水平な扁平面の断面を有する。つまり、コイル2を構成する管の断面は、図2および図3において、左右方向寸法が上下方向寸法よりも大きい。そして、その扁平面を上下に向けて、扁平面間に隙間をあけて螺旋状に巻かれる。
【0028】
各コイル2を構成する管は、螺旋部の両端部に、非螺旋部4を有する。この非螺旋部4は、断面は円形のままでよく、むしろその方が、他の管との配管がし易い。図示例では、非螺旋部4は、上下方向へ沿って配置された直管状とされる。但し、非螺旋部4は、たとえばL字形状などに適宜屈曲されてもよい。
【0029】
各コイル2は、螺旋部で構成される中央穴の軸方向一端部(図1において下端部)が閉塞される。この閉塞を確実に行うために、図示例では、内筒5、外筒6および閉塞板7が用いられる。内筒5は、内側コイル2Aが適合してはめ込まれる大きさの円筒である。また、外筒6は、外側コイル2Bが適合してはめ込まれる大きさの円筒である。さらに、閉塞板7は、外筒6の下部開口を閉塞する大きさの円板である。
【0030】
図1および図3に示すように、内側コイル2Aの下端部は、二〜三巻き程度を内筒5にはめ込まれて、内筒5と接合(ロウ付けまたは溶接)される。同様に、外側コイル2Bの下端部は、二〜三巻き程度を外筒6にはめ込まれて、外筒6と接合される。さらに、外筒6の下部開口を塞ぐように閉塞板7が設けられ、この閉塞板7と外筒6の下端部との間、および閉塞板7と内筒5の下端部との間が、それぞれ接合される。内筒5および外筒6は、各コイル2の下端部よりも少し(たとえば各コイル2の二〜三巻き相当分)だけ下方へ延出される。なお、各コイル2は、内筒5または外筒6にはめ込まれる箇所では、扁平面間に隙間を開けずに密に巻かれていてもよい。
【0031】
内側コイル2Aおよび外側コイル2Bは、図示例では、それぞれ内筒5または外筒6の外周面にはめ込まれているが、一方または双方のコイル2A,2Bは、内筒5または外筒6の内周面にはめ込まれてもよい。すなわち、内側コイル2Aの下端部は、図示例では、内筒5の外周面にはめ込まれているが、内筒5の大きさを変えて、内筒5の内周面にはめ込まれてもよい。また、外側コイル2Bの下端部は、図示例では、外筒6の外周面にはめ込まれているが、外筒6の大きさを変えて、外筒6の内周面にはめ込まれてもよい。
【0032】
内側コイル2Aと外側コイル2Bとの間の円環状の隙間は、軸方向他端部(図1において上端部)においても閉塞される。具体的には、内側コイル2Aと外側コイル2Bとの隙間の上端部には、円環状の閉塞材8がはめ込まれる。この閉塞材8は、上方へ開口した略コ字形状の縦断面を有する円環状の部材である。そして、内側コイル2Aの上端部は、二〜三巻き程度を閉塞材8の内周面にはめ込まれて接合される。また、外側コイル2Bの上端部は、二〜三巻き程度を閉塞材8の外周面にはめ込まれて接合される。なお、各コイル2は、閉塞材8にはめ込まれる箇所では、扁平面間に隙間を開けずに密に巻かれていてもよい。
【0033】
さらに、内側コイル2Aの上端部には、ガイド筒9がはめ込まれる。すなわち、内側コイル2Aの上端部は、二〜三巻き程度をガイド筒9の外周面にはめ込まれて接合される。この場合も、内側コイル2Aは、ガイド筒9にはめ込まれる箇所では、扁平面間に隙間を開けずに密に巻かれていてもよい。ガイド筒9は、各コイル2の上端部よりも上方へ延出している。図示例では、各コイル2の上端部から上方へのガイド筒9の延出長さは、各コイル2の下端部から下方への内筒5および外筒6の延出長さよりも長いが、場合により同一または短くしてもよい。
【0034】
内側コイル2Aと外側コイル2Bとは、後述するように、第一管12や支持材15により、シェル3内の中途に同心円筒状に保持される。シェル3は、コイル2を収容する中空容器であり、図示例では中空円筒状とされる。各コイル2とシェル3とは、同心円筒状に配置される。各コイル2の軸方向両端部に設けられた前記各非螺旋部4は、シェル3を気密に貫通してシェル3の外側へ導出される。
【0035】
各コイル2の上端部の非螺旋部4,4同士、および/または、各コイル2の下端部の非螺旋部4,4同士は、シェル3の内側または外側において、一本にまとめられてもよい。その場合、コイル2を通される流体は、コイル式熱交換器1への入口で分岐して各コイル2内へ導入され、コイル式熱交換器1からの出口で合流して導出される。
【0036】
シェル3は、円筒状の胴10と、その軸方向両端部(図1において上下両端部)を閉塞するよう設けられる端壁11,11とを備える。各端壁11には、シェル3に対し流体を導入または導出するための管12,13が貫通して設けられる。図1において、上側の端壁11に設けられる管を第一管12、下側の端壁11に設けられる管を第二管13と呼ぶことにする。第一管12と第二管13とは、図示例では同一直径の円管状とされ、シェル3の端壁11の中央部に設けられる。但し、シェル3に通される流体がコイル2に通される流体で膨張または収縮することを考慮して、それに応じて、第一管12と第二管13とを異なる直径とするのもよい。また、第一管12と第二管13とは、図示例ではそれぞれ一本であるが、所望により複数本としてもよい。
【0037】
第一管12は、前記ガイド筒9よりも小径の円管状であり、上側の端壁11を貫通して、中途部の外周面が端壁11に気密に接合される。第一管12は、下端部にフランジ状に円板14が設けられ、その円板14の外周部がガイド筒9の上端部に接合される。このようにして、各コイル2の上端部は、ガイド筒9および第一管12を介して、シェル3の上側の端壁11に取り付けられる。なお、第一管12は、ガイド筒9および円板14を備えた形で、段付き円筒状に一体形成されてもよい。
【0038】
一方、シェル3内下部の周方向複数箇所には支持材15が設けられ、その支持材15に各コイル2の下端部が載せられて保持される。つまり、図1に示すように、シェル3内には、下側の端壁11から浮いた位置に、たとえば板状の複数の支持材15が内方へ延出して水平に設けられている。そして、その各支持材15の上に、前記閉塞板7が載せられて、各コイル2が保持される。但し、支持材15は、板状に限らず、アングル材やチャンネル材などを用いてもよい。
【0039】
コイル式熱交換器1には、熱交換を図ろうとする二つの流体の内、一方(第一流体)がシェル3に通され、他方(第二流体)がコイル2に通される。たとえば、空気圧縮機からの圧縮空気を冷却するためのエアクーラとして用いる場合、シェル3に圧縮空気が通され、各コイル2に冷却用水が通される。
【0040】
具体的には、図1では、第一流体(たとえば圧縮空気)は、第一管12からガイド筒9を介して内側コイル2Aの中央穴へ導入される。その第一流体は、内側コイル2Aの扁平面間の隙間、および外側コイル2Bの扁平面間の隙間を介して、各コイル2を径方向外側へ進んだ後、外側コイル2Bとシェル3との隙間を下方へ進み、第二管13から導出される。一方、第二流体(たとえば冷却用水)は、下方の各非螺旋部4から各コイル2を構成する管内へ導入され、各コイル2内を進んだ後、上方の各非螺旋部4から導出される。
【0041】
このような構成であるから、第一流体は、各コイル2の中央穴から放射状に各コイル2を通過する間、および外側コイル2Bの外周面を下方へ進む間に、それぞれ第二流体と熱交換される。
【0042】
図4は、各コイル2の扁平面間の隙間Xを第一流体が通過する際の状態を示す概略縦断面図である。この図に示すように、図示例のコイル式熱交換器1では、扁平面と扁平面とが隙間をあけて平行に配置される。従って、各コイルを径方向に通される流体の流路面積は扁平面間では一定となり、圧力損失の増大を防止することができる。仮に、細長い円管を単に螺旋状に巻いてコイル2を形成した場合、図5に示すように、円と円とが上下に並ぶことになる。この場合、各コイル2を径方向に通される流体の流路面積は、大きな縮小と拡大とを起こすことになり、圧力損失が大きくなる。なお、図5における上下の円間の隙間Xは、図4における上下の扁平面間の隙間と同一としている。
【0043】
また、図示例のコイル式熱交換器1によれば、シェル3を通される第一流体は、各コイル2の扁平面間の隙間を通過する間、各コイル2を通される第二流体との熱交換を有効に図られる。しかも、各コイル2は、軸方向両端部が閉塞板7や閉塞材8で塞がれるので、内側コイル2Aの中央穴に導入された第一流体は、すべて必ず扁平面間の隙間を介してのみ導出されることになる。これにより、シェル3を通される第一流体とコイル2を通される第二流体との熱交換を有効に図ることができる。
【0044】
ところで、以上の説明では、第一流体は、第一管12から導入され第二管13から導出されたが、これとは逆に、第二管13から導入され第一管12から導出されてもよい。シェル3を通される第一流体(特に気体)を、コイル2を通される第二流体で冷却しようとする場合、第一流体は、第二管13から導入され第一管12から導出されるのがよい。この場合、第一流体は、各コイル2を径方向内側へ向けて通されることになり、次に述べる理由により熱交換を有効に図ることができるからである。
【0045】
すなわち、まず前提として、同心円筒状に複数のコイル2を配置する場合、コイル2を構成する管の断面やコイル2の巻き数およびピッチが同じであれば、内側のコイル2Aほど伝熱面積が小さくなる。一方、一般に、流体、特に気体は、温度が下がれば容積が小さくなる。従って、コイル2を径方向に通される流体は、温度が下がって容積が小さくなってから、伝熱面積が比較的小さくなる内側コイル2Aを通過させるのが好ましいことになる。これにより、コイル2内外の流体間の熱交換を有効に図ることができる。なお、第一流体を、第一管12から導入して第二管13へ導出することに代えて、第二管13から導入して第一管12へ導出する場合、第二流体は、図1においてコイル2の下方から導入して上方へ導出することに代えて、コイル2の上方から導入して下方へ導出するのが好ましい。
【0046】
逆に、シェル3を通される第一流体を、コイル2を通される第二流体で加熱しようとする場合(第二流体を第一流体で冷却しようとする場合ともいえる)、コイル2を径方向に通される流体は、温度が上がって容積が大きくなってから、伝熱面積が比較的大きくなる外側コイル2Bを通過させるのが好ましい。従って、この場合、第一流体は、第一管12から導入され第二管13から導出されるのが好ましい。
【0047】
本発明のコイル式熱交換器1は、前記実施例およびその変形例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、図1のコイル式熱交換器1は、内外二重のコイル2を備えたが、一つのコイル2だけを備えてもよいし、三つ以上のコイル2を備えてもよい。一つのコイル2だけを備える場合、図1において、外側コイル2B、外筒6および閉塞材8を省略した構成となる。一方、三つのコイル2を備える場合、図1において、外側コイル2Bの外側に第三のコイルを同心円筒状に配置し、その第三のコイルと外側コイル2Bとの隙間の上下を、上述した内側コイル2Aと外側コイル2Bとの隙間の上下と同様の構成で閉塞すればよい。四つ以上のコイル2を備える場合も、同様に構成できる。
【0048】
また、図1では、コイル式熱交換器1は、非螺旋部4が上下方向外側へ向けられたが、その他の方向へ向けられてもよい。たとえば、各非螺旋部4は、シェル3を構成する胴10を介して、シェル3の外側へ導出されてもよい。また、図1では、コイル式熱交換器1は、第一管12と第二管13とが、それぞれシェル3の上下に接続されたが、シェル3の周側壁(つまり胴10)に接続されもよい。
【0049】
また、前記実施例では、コイル式熱交換器1は、シェル3の軸線を上下方向へ沿って配置して、立てた状態で使用されたが、場合により、シェル3の軸線を左右方向へ沿って配置して、寝かせた状態で使用されてもよい。コイル式熱交換器1の使用時におけるシェル3の軸線の配置方向に応じて、支持材15の構成は適宜に変更される。
【0050】
さらに、前記実施例では、コイル式熱交換器1は、空気圧縮機からの圧縮空気の冷却に用いたが、本発明のコイル式熱交換器1は、空気圧縮機からの圧縮空気を冷却するエアクーラに限らず、空気圧縮機の潤滑油を冷却するオイルクーラとしても利用できる他、圧縮されていない空気(温風や熱風)を冷却用水で冷却しようとする場合や、燃焼機器からの燃焼ガスの潜熱を回収するために、排ガスとその冷却用水との熱交換器などにも、同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 コイル式熱交換器
2 コイル
2A 内側コイル
2B 外側コイル
3 シェル
4 非螺旋部
5 内筒(円筒壁)
6 外筒(円筒壁)
7 閉塞板
8 閉塞材(円筒壁)
9 ガイド筒(円筒壁)
10 胴
11 端壁
12 第一管(第一の管)
13 第二管(第二の管)
14 円板
15 支持材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に巻かれた管から構成されるコイルと、このコイルを収容するシェルとを備え、
前記コイルを構成する管は、扁平な断面を有し、その扁平面を前記コイルの軸方向両側へ向けると共に、扁平面間に隙間をあけて螺旋状に巻かれており、
前記シェルには、前記シェル内へ流体を導入する管と、前記シェル外へ流体を導出する管との、二種の管が設けられ、
この二種の管の内、第一の管は、前記コイルの径方向内側の空間に開口され、第二の管は、前記コイルの径方向外側の空間に開口され、
前記コイルの径方向内側の空間と、前記コイルの径方向外側の空間とは、前記扁平面間の隙間を介してのみ連通され、
熱交換を図ろうとする二つの流体の内、一方が前記シェルに通され、他方が前記コイルに通される
ことを特徴とするコイル式熱交換器。
【請求項2】
前記コイルの径方向内側の空間は、軸方向一端部が閉塞される一方、軸方向他端部に前記第一の管が開口され、
前記コイルの軸方向他端部において、前記コイルと前記第一の管との隙間が閉塞される
ことを特徴とする請求項1に記載のコイル式熱交換器。
【請求項3】
前記コイルとして、同心円筒状に配置された複数のコイルを備え、
前記シェルに設けられる二種の管の内、第一の管は、最も内側に配置される前記コイルの径方向内側の空間に開口され、第二の管は、最も外側に配置される前記コイルの径方向外側の空間に開口され、
最も内側に配置される前記コイルの径方向内側の空間は、軸方向一端部が閉塞される一方、軸方向他端部に前記第一の管が開口され、
最も内側に配置される前記コイルの軸方向他端部において、そのコイルと前記第一の管との隙間が閉塞され、
前記複数のコイル同士の隙間は、軸方向両端部において閉塞される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコイル式熱交換器。
【請求項4】
前記シェルは、前記第二の管から被冷却流体が導入され、前記第一の管から被冷却流体が導出される
ことを特徴とする請求項3に記載のコイル式熱交換器。
【請求項5】
前記コイルは、軸方向両端部がそれぞれ円筒壁にはめ込まれると共に、その円筒壁との隙間を封止され、
前記コイルの軸方向一端部に設けられる前記円筒壁は、その中空穴が閉塞され、
前記コイルの軸方向他端部に設けられる前記円筒壁の内、最も内側に配置される前記円筒壁は、その中空穴に前記第一の管が接続される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコイル式熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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