説明

コイル部品の製造方法及びコイル部品

【課題】引出導体以外の導体が、ダイシングによって切り離された後のコイル部品の側面に露出してしまうことを回避する。
【解決手段】コイル部品形成工程は、第1乃至第7の矩形領域A1〜A7それぞれに導体埋込用スルーホールを形成し、基板のおもて面2tに関して、矩形領域ごとに、内周端が導体埋込用スルーホールを覆う平面スパイラル導体を形成するとともに、第1乃至第4の矩形領域A1〜A4の各角部が集合する領域に、これらの矩形領域に対応する4つの平面スパイラル導体それぞれの外周端と接続する引出導体11aを形成し、基板のうら面2bに関して、矩形領域ごとに、内周端が導体埋込用スルーホールを覆う平面スパイラル導体を形成するとともに、第1及び第5乃至第7の矩形領域A1,A5〜A7の各角部が集合する領域に、これらの矩形領域に対応する4つの平面スパイラル導体それぞれの外周端と接続する引出導体11bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品の製造方法及びコイル部品に関し、特に、電解めっきによりプリント基板上に形成した平面スパイラル導体を有するコイル部品の製造方法及びそのようなコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
民生用又は産業用の電子機器分野では、電源用のインダクタとして表面実装型のコイル部品を用いることが多くなっている。表面実装型のコイル部品は、小型・薄型で電気的絶縁性に優れ、しかも低コストで製造できるためである。
【0003】
表面実装型のコイル部品の具体的構造のひとつに、プリント回路基板技術を応用した平面コイル構造がある。製造工程の観点からこの構造を簡単に説明すると、まずプリント回路基板上に平面スパイラル形状のシードレイヤ(下地膜)を形成する。そして、めっき液中に浸してシードレイヤに直流電流(以下、「めっき電流」という)を流すことにより、めっき液中の金属イオンをシードレイヤ上に電着させる。これにより平面スパイラル導体が形成され、その後、形成した平面スパイラル導体を覆う絶縁樹脂層と、保護層及び磁路としての金属磁性粉含有樹脂層とを順次形成し、コイル部品が完成する。この構造によれば、寸法及び位置の精度を非常に高い値に維持でき、また、小型化及び薄型化が可能になる。特許文献1には、このような平面コイル構造を有する平面コイル素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−310716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、平面コイル構造を有するコイル部品を量産する場合、一枚の大きな絶縁基板上にマトリクス状に多数のコイル部品を形成した後、ダイシングによる切り離し工程を経て、個々のコイル部品が製造されることになる。したがって、電解めっきを行う段階では各コイル部品は切り離されておらず、シードレイヤには、一枚の大きな絶縁基板の端部からめっき電流を流すことになる。
【0006】
ここで、図10は、本発明の背景技術によるコイル部品の平面図である。同図には、電解めっき終了直後の状態(切り離される前)の、基板のおもて面を示している。同図に示す破線は、ダイシングの切断線である。また、領域104は、後に金属磁性粉含有樹脂層を埋め込んで磁路を形成するための穴である。同図に示すように、基板のおもて面には略楕円形の平面スパイラル導体100がマトリクス状に多数形成され、その外周端は、後に引出導体となる平面導体101によって、y方向の一方側に隣接する他の平面スパイラル導体100と接続されている。図示していないが、基板のうら面にも同様の平面スパイラル導体100がマトリクス状に形成されており、おもて面の平面スパイラル導体100とうら面の平面スパイラル導体100とは、スルーホール導体102によって内周端同士で接続されている。うら面では、おもて面の平面導体101とは平面スパイラル導体100を挟んでy方向の反対側に平面導体101が形成されており、うら面の平面スパイラル導体100は、この平面導体101を介して、y方向の他方側に隣接する他の平面スパイラル導体100と接続されている。これにより、電解めっきの際、y方向にめっき電流を流すことが可能になる。
【0007】
さらに、図10に示すように、各平面導体101は、直線導体103を介して、x方向に隣接する2つの平面導体101とも接続されている。図示しないうら面についても同様である。このような構造を採用することにより、電解めっきの際、x方向にもめっき電流を流すことが可能になる。
【0008】
このようにx方向とy方向の両方にめっき電流が流れるようにすることは、均質なめっきを行うために必須な事項である。しかしながら、背景技術のような直線導体103には、ダイシングによって個々のコイル部品に分離した後、その端面がコイル部品の側面に露出してしまうという問題がある。このような露出は、分離後に行う外部端子のめっき工程でめっき伸びが発生する原因となったり、実装後の使用信頼性に悪影響を及ぼすため、好ましくない。
【0009】
したがって、本発明の目的の一つは、引出導体以外の導体が切り離し後の側面に露出してしまうことを回避できるコイル部品の製造方法及びコイル部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明によるコイル部品の製造方法は、複数のコイル部品を単一の基板上にマトリクス状に形成するコイル部品形成工程と、前記複数のコイル部品ごとに前記基板を切断する切断工程とを備え、前記コイル部品形成工程は、前記基板に区画された、第1の矩形領域、前記基板表面内の第1の方向の一方側で前記第1の矩形領域と隣接する第2の矩形領域、前記第1の方向と前記基板表面内で直角に交わる第2の方向の一方側で前記第2の矩形領域と隣接する第3の矩形領域、前記第2の方向の一方側で前記第1の矩形領域と隣接する第4の矩形領域、前記第1の方向の他方側で前記第1の矩形領域と隣接する第5の矩形領域、前記第2の方向の他方側で前記第5の矩形領域と隣接する第6の矩形領域、及び前記第2の方向の他方側で前記第1の矩形領域と隣接する第7の矩形領域それぞれに、導体埋込用スルーホールを形成する工程と、前記基板のおもて面に関して、前記第1乃至第7の矩形領域ごとに、内周端が前記導体埋込用スルーホールを覆う第1の平面スパイラル導体を形成するとともに、前記第1乃至第4の矩形領域の各角部が集合する領域に、前記第1乃至第4の矩形領域に対応する4つの前記第1の平面スパイラル導体それぞれの外周端と接続する第1の引出導体を形成する工程と、前記基板のうら面に関して、前記第1乃至第7の矩形領域ごとに、内周端が前記導体埋込用スルーホールを覆う第2の平面スパイラル導体を形成するとともに、前記第1及び第5乃至第7の矩形領域の各角部が集合する領域に、前記第1及び第5乃至第7の矩形領域に対応する4つの前記第2の平面スパイラル導体それぞれの外周端と接続する第2の引出導体を形成する工程と、電解めっき処理を行い、前記第1及び第2の平面スパイラル導体並びに前記第1及び第2の引出導体に金属イオンを電着させる工程とを含み、前記切断工程では、前記第1乃至第7の矩形領域ごとに前記基板が切り離されることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第1及び第2の引出導体を通じて、x方向とy方向の両方にめっき電流を流すことが可能になる。したがって、引出導体以外の導体が切り離し後の側面に露出してしまうことを回避できる。
【0012】
上記コイル部品の製造方法において、前記コイル部品形成工程は、前記第1乃至第7の矩形領域の角部のうち前記第1及び第2の引出導体のいずれもが形成されない角部に、前記基板を貫通する磁路形成用スルーホールを形成する工程と、前記磁路形成用スルーホール内に磁性体を埋め込む工程とをさらに含むこととしてもよい。これによれば、コイル部品のインダクタンスを向上できる。
【0013】
上記コイル部品の製造方法において、前記磁路形成用スルーホールは、前記平面スパイラル導体の中央部にも形成されることとしてもよい。これによれば、コイル部品のインダクタンスをさらに向上できる。
【0014】
上記コイル部品の製造方法において、前記磁路形成用スルーホールは、前記第1及び第2の平面スパイラル導体並びに前記第1及び第2の引出導体を形成する前に形成されることとしてもよい。これによれば、磁路形成用スルーホール内に張り出して第1及び第2の平面スパイラル導体を形成することが可能になるので、第1及び第2の平面スパイラル導体の形成領域を実質的に広く取ることが可能になる。
【0015】
上記コイル部品の製造方法において、前記コイル部品形成工程は、前記電解めっきの後、前記第1及び第2の平面スパイラル導体並びに前記第1及び第2の引出導体を覆う絶縁樹脂層を形成する工程をさらに含み、前記磁性体を埋め込む工程では、前記基板のおもて面及びうら面を覆うとともに、前記磁路形成用スルーホール内を埋める金属磁性粉含有樹脂層を形成することによって、前記磁路形成用スルーホール内に磁性体を埋め込むこととしてもよい。これによれば、直流重畳特性に優れた電源用チョークコイルを得ることが可能になる。
【0016】
上記コイル部品の製造方法において、前記第1及び第2の平面スパイラル導体はそれぞれ、対応する前記矩形領域の2本の対角線のうち、対応する前記第1の引出導体と対応する前記第2の引出導体を結ぶ一方の対角線の方向に相対的に長く、他方の対角線の方向に相対的に短い形状を有することとしてもよい。これによれば、コイル面積を広く取ることが可能になる。
【0017】
また、本発明の一側面によるコイル部品の製造方法は、複数のコイル部品を単一の基板上にマトリクス状に形成するコイル部品形成工程と、前記複数のコイル部品ごとに前記基板を切断する切断工程とを備え、前記切断工程では、それぞれ第1の方向に延伸し、かつ前記第1の方向と垂直な第2の方向に交互に配置された第1及び第2の切断線と、それぞれ前記第2の方向に延伸し、かつ前記第1の方向に交互に配置された第3及び第4の切断線とに沿って前記基板を切断し、前記コイル部品形成工程は、前記切断工程での切断線に囲まれた矩形領域それぞれに導体埋込用スルーホールを形成する工程と、前記基板のおもて面に関して、前記切断工程での切断線に囲まれた矩形領域それぞれに、内周端が前記導体埋込用スルーホールを覆う第1の平面スパイラル導体を形成するとともに、前記第1の切断線と前記第3の切断線の交点に、該交点を取り囲んで配置された4つの前記第1の平面スパイラル導体それぞれの外周端と接続する第1の引出導体を形成する工程と、前記基板のうら面に関して、前記切断工程での切断線に囲まれた矩形領域それぞれに、内周端が前記導体埋込用スルーホールを覆う第2の平面スパイラル導体を形成するとともに、前記第2の切断線と前記第4の切断線の交点に、該交点を取り囲んで配置された4つの前記第2の平面スパイラル導体それぞれの外周端と接続する第2の引出導体を形成する工程と、電解めっき処理を行い、前記第1及び第2の平面スパイラル導体並びに前記第1及び第2の引出導体に金属イオンを電着させる工程とを含むことを特徴とする。こうしても、第1及び第2の引出導体を通じて、x方向とy方向の両方にめっき電流を流すことが可能になる。したがって、引出導体以外の導体が切り離し後の側面に露出してしまうことを回避できる。
【0018】
また、本発明によるコイル部品は、時計回りに第1乃至第4の角部を有する略矩形の基板と、前記基板のおもて面に電解めっき処理によって形成された第1の平面スパイラル導体と、前記基板のうら面に電解めっき処理によって形成された第2の平面スパイラル導体と、前記基板を貫通し、前記第1の平面スパイラル導体の内周端と前記第2の平面スパイラル導体の内周端とを接続するスルーホール導体と、前記第1の角部を含む前記おもて面内の領域に電解めっき処理によって形成され、前記第1の平面スパイラル導体の外周端と接続する第1の引出導体と、前記第3の角部を含む前記うら面内の領域に電解めっき処理によって形成され、前記第2の平面スパイラル導体の外周端と接続する第2の引出導体とを備えることを特徴とする。
【0019】
コイル部品にこのような構造を採用することにより、このコイル部品を量産する際に、第1及び第2の引出導体を通じて、x方向とy方向の両方にめっき電流を流すことが可能になる。したがって、引出導体以外の導体がコイル部品の側面に露出してしまうことを回避できる。
【0020】
上記コイル部品において、前記基板のうち前記第2の角部を含む部分及び前記第4の角部を含む部分をそれぞれ貫通する第1及び第2のスルーホール磁性体をさらに備えることとしてもよい。これによれば、コイル部品のインダクタンスを向上できる。
【0021】
上記コイル部品において、前記基板のうち前記第1及び第2の平面スパイラル導体の中央部に対応する部分を貫通する第3のスルーホール磁性体をさらに備えることとしてもよい。これによれば、コイル部品のインダクタンスをさらに向上できる。
【0022】
上記コイル部品において、前記第1及び第2の平面スパイラル導体並びに前記第1及び第2の引出導体を覆う絶縁樹脂層と、前記基板のおもて面及びうら面を覆う金属磁性粉含有樹脂層とをさらに備え、前記第1乃至第3のスルーホール磁性体は、前記金属磁性粉含有樹脂層の一部であることとしてもよい。これによれば、直流重畳特性に優れた電源用チョークコイルを得ることが可能になる。
【0023】
上記コイル部品において、前記第1及び第2の平面スパイラル導体はそれぞれ、前記第1の角部と前記第3の角部を結ぶ対角線の方向に相対的に長く、前記第2の角部と前記第4の角部を結ぶ対角線の方向に相対的に短い形状を有することとしてもよい。これによれば、コイル面積を広く取ることが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、第1及び第2の引出導体を通じて、x方向とy方向の両方にめっき電流を流すことが可能になる。したがって、引出導体以外の導体が切り離し後の側面に露出してしまうことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態によるコイル部品の分解斜視図である。
【図2】量産工程の途中における、本発明の実施の形態によるコイル部品を示す図である。(a)は、切断前の基板をおもて面側から見た平面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【図3】(a)(b)はそれぞれ、切断前の基板をおもて面側から見た場合の各構成の配置図、切断前の基板をうら面側から見た場合の各構成の配置図である。
【図4】量産工程の途中における、本発明の実施の形態によるコイル部品を示す図である。(a)は、切断前の基板をおもて面側から見た平面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【図5】量産工程の途中における、本発明の実施の形態によるコイル部品を示す図である。(a)は、切断前の基板をおもて面側から見た平面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【図6】量産工程の途中における、本発明の実施の形態によるコイル部品を示す図である。(a)は、切断前の基板をおもて面側から見た平面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【図7】量産工程の途中における、本発明の実施の形態によるコイル部品を示す図である。(a)は、切断前の基板をおもて面側から見た平面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。
【図8】個片化後の本発明の実施の形態によるコイル部品を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態の変形例によるコイル部品の平面図である。
【図10】本発明の背景技術によるコイル部品の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0027】
図1は、本実施の形態によるコイル部品1の分解斜視図である。同図に示すように、コイル部品1は略矩形の基板2を有している。「略矩形」とは、完全な矩形の他、一部の角が欠けている矩形を含む意である。本明細書では矩形の「角部」という用語を用いるが、一部の角が欠けている矩形についての「角部」とは、欠けがないとした場合に得られる完全な矩形の角部を意味する。以下では、基板2の4つの角部を、図1に示すように反時計回りに第1乃至第4の角部C〜Cと称する。
【0028】
基板2の材料には、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させた一般的なプリント基板を用いることが好ましい。また、例えばBTレジン基材、FR4基材、FR5基材を用いてもよい。
【0029】
基板2のおもて面2tの中央部には、平面スパイラル導体10a(第1の平面スパイラル導体)が形成される。同様に、うら面2bの中央部には、平面スパイラル導体10b(第2の平面スパイラル導体)が形成される。また、基板2にはスルーホール12a(導体埋込用スルーホール)が設けられ、その内部にスルーホール導体12が埋め込まれている。平面スパイラル導体10aの内周端と平面スパイラル導体10bの内周端とは、スルーホール導体12によって互いに接続される。
【0030】
ここで、平面スパイラル導体10aと平面スパイラル導体10bとは、互いに反対向きに巻回されている。つまり、おもて面2tの側から見た平面スパイラル導体10aが、内周端から外周端に向かって時計回りに巻回されているのに対し、同様におもて面2tの側から見た平面スパイラル導体10bは、内周端から外周端に向かって反時計回りに巻回されている。このような巻回方法を採用したことにより、コイル部品1では、平面スパイラル導体10aの外周端と平面スパイラル導体10bの外周端との間に電流を流した場合に、両平面スパイラル導体が互いに同一方向の磁場を発生して強め合う。したがって、コイル部品1は、1つのインダクタとして機能する。
【0031】
また、平面スパイラル導体10a,10bはそれぞれ、第1の角部Cと第3の角部Cを結ぶ対角線の方向に相対的に長く、第2の角部Cと第4の角部Cを結ぶ対角線の方向に相対的に短い、若干ゆがんだ形状を有している。この点については、後にコイル部品1の製造工程を説明する際に再度より詳しく説明する。
【0032】
基板2のおもて面2tとうら面2bには、それぞれ引出導体11a,11bが形成される。引出導体11a(第1の引出導体)は、第1の角部Cを含むおもて面2t内の領域に形成される。一方、引出導体11b(第2の引出導体)は、第3の角部Cを含むうら面2b内の領域に形成される。引出導体11aは平面スパイラル導体10aの外周端と接続され、引出導体11bは平面スパイラル導体10bの外周端と接続される。
【0033】
以上の平面スパイラル導体10a,10b及び引出導体11a,11bは、無電解めっき工程によって下地層を形成した後、2度の電解めっき工程を経て形成される。下地層の材料及び2度の電解めっき工程で形成されるめっき層の材料は、いずれもCuとすることが好適である。本発明の主たる目的は、このうち2度目の電解めっき工程において、x方向とy方向の両方にめっき電流が流れるようにすることにある。この点についても、後にコイル部品1の製造工程を説明する際に再度より詳しく説明する。
【0034】
平面スパイラル導体10a,10b及び引出導体11a,11bは、絶縁樹脂層21によって覆われている。この絶縁樹脂層21は、各導体と後述する金属磁性粉含有樹脂層22とが導通してしまうことを防止するために設けられているものである。
【0035】
基板のおもて面2t及びうら面2bは、絶縁樹脂層21の上からさらに、金属磁性粉含有樹脂層22によって覆われている。金属磁性粉含有樹脂層22は、樹脂に金属磁性粉を混入して作られる磁性材料(金属磁性粉含有樹脂)によって構成される。金属磁性粉としては、パーマロイ系材料を用いることが好適である。具体的には、平均粒径が20〜50μmであるPb−Ni−Co合金と、平均粒径が3〜10μmであるカルボニル鉄とを所定の比率、例えば70:30〜80:20の重量比、好ましくは75:25の重量比で含む金属磁性粉を用いることが好ましい。金属磁性粉含有樹脂層22における金属磁性粉の含有率は90〜96重量%であることが好ましい。一方、樹脂としては、液状又は粉体のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。また、金属磁性粉含有樹脂層22における樹脂の含有率は4〜10重量%であることが好ましい。樹脂は絶縁結着材として機能する。以上の構成を有する金属磁性粉含有樹脂層22は、樹脂に対して金属磁性粉の量が少ないほど飽和磁束密度が小さくなり、逆に金属磁性粉の量が多いほど飽和磁束密度が大きくなるという性質を有している。
【0036】
また、基板2には、図1に示すように3つのスルーホール14(磁路形成用スルーホール)が形成される。このうちの2つはそれぞれ、基板2のうち第2及び第4の角部C,Cを含む部分を貫通して設けられ、他の1つは、基板2のうち平面スパイラル導体10a,10bの中央部に対応する部分を貫通して設けられる。金属磁性粉含有樹脂層22はこれらのスルーホール14内にも埋め込まれており、図1に示すように、埋め込まれた金属磁性粉含有樹脂層22のうち第4の角部Cに対応する部分は第1のスルーホール磁性体22aを構成し、第2の角部Cに対応する部分は第2のスルーホール磁性体22bを構成し、平面スパイラル導体10a,10bの中央部に対応する部分は第3のスルーホール磁性体22cを構成している。
【0037】
以上のような金属磁性粉含有樹脂層22を設けたことで、コイル部品1には完全な閉磁路が形成されている。また、金属磁性粉含有樹脂層22が上述したような性質を有していることから、金属磁性粉含有樹脂層22の金属磁性粉の含有率を調節することで、閉磁路の飽和磁束密度を調節することが可能となっている。
【0038】
なお、図1には示していないが、金属磁性粉含有樹脂層22の表面には薄い絶縁層が形成される。この絶縁層の形成は、金属磁性粉含有樹脂層22の表面をリン酸塩で処理することによって行う。この絶縁層を設けるのは、後述する外部電極25,26と金属磁性粉含有樹脂層22との導通を避けるためである。
【0039】
コイル部品1の側面には、外部電極25,26が形成される。外部電極25,26はそれぞれ、側面に露出した引出導体11a,11bと接触する。したがって、外部電極25は引出導体11aと導通し、外部電極26は引出導体11bと導通する。なお、外部電極25,26と金属磁性粉含有樹脂層22とは、上述した薄い絶縁層が存在することにより、導通しない。外部電極25,26の形状は、図1に示すように、引出導体11a,11bの露出面をすべて覆う形状とすることが好適である。外部電極25,26は、図示しない実装基板上に形成された配線と、はんだ等によって接着される。これにより、実装基板上に形成された配線を通じて、平面スパイラル導体10aの外周端と平面スパイラル導体10bの外周端との間に電流を流すことが実現されている。
【0040】
コイル部品1に以上のような構造を採用したことにより、このコイル部品1を量産する際の電解めっき工程(上述した2度目の電解めっき工程)において、引出導体11a,11bを通じて、x方向とy方向の両方にめっき電流を流すことが可能になる。以下、コイル部品1の量産工程を説明しながら、この点について詳しく説明する。
【0041】
図2及び図4〜図8は、量産工程の途中におけるコイル部品1を示す図である。このうち図8を除く各図の(a)は、切断前の基板2をおもて面2t側から見た平面図であり、(b)は(a)のA−A線断面図である。なお、図8を除く各図の(a)に示す破線は、ダイシング工程における切断線を示している。この切断線で囲まれた1つ1つのエリアが、個々のコイル部品1となる。図8は、こうして個片化されたコイル部品1の断面図である。同図に示す断面は、図7のA−A線の下半分に対応している。
【0042】
また、図3(a)(b)はそれぞれ、切断前の基板2をおもて面2t側から見た場合の各構成の配置図、切断前の基板2をうら面2b側から見た場合の各構成の配置図を示している。これらの図においては、平面スパイラル導体10a,10bは省略している。また、これらの図においても、破線は後のダンシング工程における切断線を示している。
【0043】
図3(a)(b)に示すように、基板2には、切断線によって多数の矩形領域が区画される。これらの矩形領域は、図3(a)(b)に示す第1乃至第7の矩形領域A1〜A7を一単位として、繰り返し構造を有している。第1の矩形領域A1とその他の矩形領域との位置関係を説明すると、まず第2の矩形領域A2は、基板2表面内のx方向(第1の方向)の一方側で第1の矩形領域A1と隣接している。第3の矩形領域A3は、x方向と基板2表面内で直角に交わるy方向(第2の方向)の一方側で第2の矩形領域A2と隣接している。第4の矩形領域A4は、y方向の一方側で第1の矩形領域A1と隣接している。第5の矩形領域A5は、x方向の他方側で第1の矩形領域A1と隣接している。第6の矩形領域A6は、y方向の他方側で第5の矩形領域A5と隣接している。最後に、第7の矩形領域A7は、y方向の他方側で第1の矩形領域A1と隣接している。以下、これらの矩形領域も参照しながらコイル部品1の量産工程について説明するが、その前に、図3(a)(b)を参照して、これらの矩形領域と引出導体11a,11bと磁路形成用のスルーホール14との平面的な位置関係について説明する。
【0044】
まず、引出導体11aは、図3(a)に示すように、基板2のおもて面2tのうち第1乃至第4の矩形領域A1〜A4の各角部が集合する領域に形成される。図3には示していないが、おもて面2tでは第1乃至第7の矩形領域A1〜A7ごとに平面スパイラル導体10aが形成されており、引出導体11aは、自身を取り囲んで配置された第1乃至第4の矩形領域A1〜A4に対応する4つの平面スパイラル導体それぞれの外周端と接続するよう構成される。
【0045】
一方、引出導体11bは、図3(b)に示すように、基板2のうら面2bのうち第1及び第5乃至第7の矩形領域A1,A5〜A7の各角部が集合する領域に形成される。図3には示していないが、うら面2bでも第1乃至第7の矩形領域A1〜A7ごとに平面スパイラル導体10bが形成されており、引出導体11bは、自身を取り囲んで配置された第1及び第5乃至第7の矩形領域A1,A5〜A7に対応する4つの平面スパイラル導体それぞれの外周端と接続するよう構成される。
【0046】
磁路形成用スルーホール14は、第1乃至第7の矩形領域A1〜A7の角部のうち引出導体11a,11bのいずれもが形成されない角部に形成される。なお、スルーホール14は基板2を貫通しているため、引出導体11a,11bのいずれか一方が形成されている領域には形成できない。
【0047】
別の観点から、矩形領域と引出導体11a,11bと磁路形成用のスルーホール14との平面的な位置関係について再度説明する。基板2の表面には、図3に示すように、切断線x1,x2(第1及び第2の切断線)がy方向に交互に配置され、切断線y1,y2(第3及び第4の切断線)がy方向に交互に配置される。引出導体11aは、切断線x1と切断線y1との交点に配置され、該交点を取り囲んで配置された4つの平面スパイラル導体それぞれの外周端と接続するよう構成される。一方、引出導体11bは、切断線x2と切断線y2との交点に配置され、該交点を取り囲んで配置された4つの平面スパイラル導体それぞれの外周端と接続するよう構成される。そして、磁路形成用スルーホール14は、切断線x1と切断線y2との交点及び切断線x2と切断線y1との交点に配置される。
【0048】
さて、図2及び図4〜図8を参照しながら、コイル部品1の量産工程について説明する。以下では第1乃至第7の矩形領域A1〜A7のみに着目して説明するが、その他の矩形領域についても同様である。
【0049】
初めに、図2に示すように、基板2に導体埋込用のスルーホール12aと磁路形成用のスルーホール14とを設ける。スルーホール12aは、第1乃至第7の矩形領域A1〜A7それぞれに1つずつ設けられる。スルーホール14については、上述したように第1乃至第7の矩形領域A1〜A7の角部のうち引出導体11a,11bのいずれもが形成されない角部(切断線x1と切断線y2との交点及び切断線x2と切断線y1との交点)に1つずつ設けられる他、平面スパイラル導体10a,10bの中央部にも設けられる。
【0050】
次に、図4に示すように、基板2のおもて面2tに関して、第1乃至第7の矩形領域A1〜A7ごとに、内周端がスルーホール12aを覆う平面スパイラル導体10aを形成する。また、上述した位置(第1乃至第4の矩形領域A1〜A4の各角部が集合する領域。切断線x1と切断線y1との交点)に、引出導体11aを形成する。この際、第1乃至第4の矩形領域A1〜A4に対応する4つの平面スパイラル導体10aそれぞれの外周端が、引出導体11aと接続するようにする。
【0051】
基板2のうら面2bに関しても同様に、第1乃至第7の矩形領域A1〜A7ごとに、内周端がスルーホール12aを覆う平面スパイラル導体10bを形成する。また、上述した位置(第5乃至第7の矩形領域A1,A5〜A7の各角部が集合する領域。切断線x2と切断線y2との交点)に、引出導体11bを形成する。この際、第5乃至第7の矩形領域A1,A5〜A7に対応する4つの平面スパイラル導体10bそれぞれの外周端が、引出導体11bと接続するようにする。
【0052】
平面スパイラル導体10a,10b及び引出導体11a,11bの具体的な形成方法は、次のとおりである。すなわち、まず基板2の両面に無電解めっきによってCuの下地層を形成し、この下地層の表面にフォトレジスト層を電着成膜する。なお、この下地層はスルーホール12a内にも形成され、スルーホール導体12を構成する。続いて、このフォトレジスト層に、片面ずつのフォトリソグラフィ法によって、平面スパイラル導体10a,10b及び引出導体11a,11bの形状の開口パターン(ネガパターン)を設ける。そして、電解めっきによって開口パターン内にめっき層を形成し、フォトレジスト層を除去した後、めっき層が形成された部分以外の下地層をエッチングにより除去する。ここでの電解めっき工程は、上述した1度目の電解めっき工程に相当する。ここでは、下地層はパターニングされていない板状の導体であるので、めっき電流の流れる方向に関する問題は生じない。以上の工程により、それぞれ下地層とめっき層からなる平面スパイラル導体10a,10b及び引出導体11a,11bが形成される。
【0053】
ここまでの工程で基板2のおもて面2t及びうら面2bに形成した各導体は、後述する2度目の電解めっき工程におけるシードレイヤとなる。このシードレイヤは、引出導体11a,11bとスルーホール導体12とを通じてx方向とy方向の両方につながっているため、2度目の電解めっき工程では、x方向とy方向の両方にめっき電流を流すことが可能になる。
【0054】
ここで、図4に示すように、平面スパイラル導体10aでは、対応する矩形領域の2本の対角線のうち、対応する引出導体11aと対応する引出導体11bを結ぶ一方の対角線の方向の長さLが、他方の対角線の方向の長さLに比べて長くなるようにしている。図示していないが、平面スパイラル導体10bについても同様である。これにより、平面スパイラル導体10a,10bの形状は若干ゆがむことになるが、こうすることで、基板表面を有効に利用し、コイル面積を広く取ることが可能になる。
【0055】
さて、続いて図5に示すように、2度目の電解めっき処理を行う。具体的には、切断前の基板2の端部からシードレイヤとしての上記各導体にめっき電流を流しながら、基板2をめっき液に浸す。この際、上述したようにシードレイヤがx方向とy方向の両方につながっていることから、めっき電流はx方向とy方向の両方に流れる。これにより、平面スパイラル導体10a,10b及び引出導体11a,11bに金属イオンが均一に電着し、均一な膜厚のめっき層20が形成される。
【0056】
めっき層20の形成により、図5(b)に示すように、各導体の膜厚を大幅に増大させることが可能になる。このようにして大きな膜厚を確保するのは、本実施の形態によるコイル部品1が電源用のインダクタであり、極めて小さな直流抵抗を実現する必要があるためである。
【0057】
2度目の電解めっき処理の後には、基板2の両面に絶縁樹脂を成膜し、図6に示すように、各導体及びめっき層20を絶縁樹脂層21で覆う。このとき、スルーホール14の側壁も絶縁樹脂層21に覆われるが、スルーホール14の全域が絶縁樹脂層21によって埋め尽くされることのないようにする必要がある。
【0058】
次に、図7に示すように、基板2の両面を金属磁性粉含有樹脂層22で覆う。具体的な形成方法について説明すると、まず基板2の反りを抑制するためのUVテープ(不図示)を基板2のうら面2bに貼り、おもて面2tに金属磁性粉含有樹脂ペーストをスクリーン印刷する。UVテープの代わりに熱剥離テープを用いてもよい。金属磁性粉含有樹脂ペーストからなるスクリーンシートとしては、約0.27mm厚のものを用いることが好適である。また、スクリーン印刷の後には、脱泡と、80℃での30分間の加熱とを経て、ペーストを仮硬化させる。続いて、UVテープを剥がし、うら面2bに金属磁性粉含有樹脂ペーストをスクリーン印刷する。ここでも、金属磁性粉含有樹脂ペーストからなるスクリーンシートとしては、約0.27mm厚のものを用いることが好適である。また、スクリーン印刷の後には、160℃で1時間加熱することにより、ペーストを本硬化させる。以上の処理により、金属磁性粉含有樹脂層22が完成する。
【0059】
以上の工程において、金属磁性粉含有樹脂層22はスルーホール14にも埋め込まれる。これにより、スルーホール14内に、図1に示した第1乃至第3のスルーホール磁性体22a〜22cが形成される。
【0060】
最後に、ダイサーを用い、切断線に沿って基板2を切断する。これにより矩形領域ごとに個々のコイル部品1が得られるので、次に、図8に示すように、金属磁性粉含有樹脂層22の表面に絶縁層23を形成する。絶縁層23の形成は、金属磁性粉含有樹脂層22の表面をリン酸塩で処理することによって行う。その後は、スパッタ等によって図1に示した外部電極25,26を形成し、コイル部品1が最終的に完成する。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態によるコイル部品1の製造方法によれば、量産の際に、引出導体11a,11bを通じて、x方向とy方向の両方にめっき電流を流すことが可能になる。したがって、x方向とy方向の両方にめっき電流を流すために引出導体以外の導体が切り離し後の側面に露出してしまうことを、回避できる。
【0062】
また、引出導体11a,11bのいずれもが形成されない角部に第1及び第2のスルーホール磁性体22a,22bを形成し、さらに、平面スパイラル導体10a,10bの中央部に対応する部分にも第3のスルーホー磁性体22cを形成するので、これらを形成しない場合に比べ、コイル部品のインダクタンスを向上できる。
【0063】
また、磁路形成用のスルーホール14を、平面スパイラル導体10a,10b及び引出導体11a,11bを形成する前に形成するので、図7(b)に例示するように、スルーホール14内に張り出して平面スパイラル導体10a,10bを形成することが可能になる。したがって、平面スパイラル導体10a,10bの形成領域を実質的に広く取ることが可能になる。
【0064】
また、磁性基板ではなく金属磁性粉含有樹脂層22によって磁路を形成することから、直流重畳特性に優れた電源用チョークコイルを得ることが可能になる。
【0065】
また、平面スパイラル導体10a,10bを若干ゆがませて形成していることから、コイル面積を広く取ることが可能になる。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0067】
例えば、引出導体11a,11bの形状は、必ずしも図1〜図7に示したような長方形状(角丸長方形状を含む)としなければならないわけではなく、例えば図9に示すように、正方形から角部を扇形に取り去った形状としてもよい。これによれば、取り去った扇形部分にも平面スパイラル導体を形成することができるので、平面スパイラル導体10a,10bの形成領域を広く取ることが可能になる。
【符号の説明】
【0068】
A1〜A7 第1乃至第7の矩形領域
〜C 角部
22a〜22c 第1乃至第3のスルーホール磁性体
1 コイル部品
2 基板
2b 基板2のおもて面
2t 基板2のうら面
10a,10b 平面スパイラル導体
11a,11b 引出導体
12 スルーホール導体
12a 導体埋込用スルーホール
14 磁路形成用スルーホール
20 めっき層
21 絶縁樹脂層
22 金属磁性粉含有樹脂層
22a〜22c 第1乃至第3のスルーホール磁性体
23 絶縁層
25,26 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイル部品を単一の基板上にマトリクス状に形成するコイル部品形成工程と、
前記複数のコイル部品ごとに前記基板を切断する切断工程とを備え、
前記コイル部品形成工程は、
前記基板に区画された、第1の矩形領域、前記基板表面内の第1の方向の一方側で前記第1の矩形領域と隣接する第2の矩形領域、前記第1の方向と前記基板表面内で直角に交わる第2の方向の一方側で前記第2の矩形領域と隣接する第3の矩形領域、前記第2の方向の一方側で前記第1の矩形領域と隣接する第4の矩形領域、前記第1の方向の他方側で前記第1の矩形領域と隣接する第5の矩形領域、前記第2の方向の他方側で前記第5の矩形領域と隣接する第6の矩形領域、及び前記第2の方向の他方側で前記第1の矩形領域と隣接する第7の矩形領域それぞれに、導体埋込用スルーホールを形成する工程と、
前記基板のおもて面に関して、前記第1乃至第7の矩形領域ごとに、内周端が前記導体埋込用スルーホールを覆う第1の平面スパイラル導体を形成するとともに、前記第1乃至第4の矩形領域の各角部が集合する領域に、前記第1乃至第4の矩形領域に対応する4つの前記第1の平面スパイラル導体それぞれの外周端と接続する第1の引出導体を形成する工程と、
前記基板のうら面に関して、前記第1乃至第7の矩形領域ごとに、内周端が前記導体埋込用スルーホールを覆う第2の平面スパイラル導体を形成するとともに、前記第1及び第5乃至第7の矩形領域の各角部が集合する領域に、前記第1及び第5乃至第7の矩形領域に対応する4つの前記第2の平面スパイラル導体それぞれの外周端と接続する第2の引出導体を形成する工程と、
電解めっき処理を行い、前記第1及び第2の平面スパイラル導体並びに前記第1及び第2の引出導体に金属イオンを電着させる工程とを含み、
前記切断工程では、前記第1乃至第7の矩形領域ごとに前記基板が切り離される
ことを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項2】
前記コイル部品形成工程は、
前記第1乃至第7の矩形領域の角部のうち前記第1及び第2の引出導体のいずれもが形成されない角部に、前記基板を貫通する磁路形成用スルーホールを形成する工程と、
前記磁路形成用スルーホール内に磁性体を埋め込む工程とをさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項3】
前記磁路形成用スルーホールは、前記平面スパイラル導体の中央部にも形成される
ことを特徴とする請求項2に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項4】
前記磁路形成用スルーホールは、前記第1及び第2の平面スパイラル導体並びに前記第1及び第2の引出導体を形成する前に形成される
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項5】
前記コイル部品形成工程は、
前記電解めっきの後、前記第1及び第2の平面スパイラル導体並びに前記第1及び第2の引出導体を覆う絶縁樹脂層を形成する工程をさらに含み、
前記磁性体を埋め込む工程では、前記基板のおもて面及びうら面を覆うとともに、前記磁路形成用スルーホール内を埋める金属磁性粉含有樹脂層を形成することによって、前記磁路形成用スルーホール内に磁性体を埋め込む
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項6】
前記第1及び第2の平面スパイラル導体はそれぞれ、対応する前記矩形領域の2本の対角線のうち、対応する前記第1の引出導体と対応する前記第2の引出導体を結ぶ一方の対角線の方向に相対的に長く、他方の対角線の方向に相対的に短い形状を有する
ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一項に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項7】
複数のコイル部品を単一の基板上にマトリクス状に形成するコイル部品形成工程と、
前記複数のコイル部品ごとに前記基板を切断する切断工程とを備え、
前記切断工程では、それぞれ第1の方向に延伸し、かつ前記第1の方向と垂直な第2の方向に交互に配置された第1及び第2の切断線と、それぞれ前記第2の方向に延伸し、かつ前記第1の方向に交互に配置された第3及び第4の切断線とに沿って前記基板を切断し、
前記コイル部品形成工程は、
前記切断工程での切断線に囲まれた矩形領域それぞれに導体埋込用スルーホールを形成する工程と、
前記基板のおもて面に関して、前記切断工程での切断線に囲まれた矩形領域それぞれに、内周端が前記導体埋込用スルーホールを覆う第1の平面スパイラル導体を形成するとともに、前記第1の切断線と前記第3の切断線の交点に、該交点を取り囲んで配置された4つの前記第1の平面スパイラル導体それぞれの外周端と接続する第1の引出導体を形成する工程と、
前記基板のうら面に関して、前記切断工程での切断線に囲まれた矩形領域それぞれに、内周端が前記導体埋込用スルーホールを覆う第2の平面スパイラル導体を形成するとともに、前記第2の切断線と前記第4の切断線の交点に、該交点を取り囲んで配置された4つの前記第2の平面スパイラル導体それぞれの外周端と接続する第2の引出導体を形成する工程と、
電解めっき処理を行い、前記第1及び第2の平面スパイラル導体並びに前記第1及び第2の引出導体に金属イオンを電着させる工程とを含む
ことを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項8】
時計回りに第1乃至第4の角部を有する略矩形の基板と、
前記基板のおもて面に電解めっき処理によって形成された第1の平面スパイラル導体と、
前記基板のうら面に電解めっき処理によって形成された第2の平面スパイラル導体と、
前記基板を貫通し、前記第1の平面スパイラル導体の内周端と前記第2の平面スパイラル導体の内周端とを接続するスルーホール導体と、
前記第1の角部を含む前記おもて面内の領域に電解めっき処理によって形成され、前記第1の平面スパイラル導体の外周端と接続する第1の引出導体と、
前記第3の角部を含む前記うら面内の領域に電解めっき処理によって形成され、前記第2の平面スパイラル導体の外周端と接続する第2の引出導体と
を備えることを特徴とするコイル部品。
【請求項9】
前記基板のうち前記第2の角部を含む部分及び前記第4の角部を含む部分をそれぞれ貫通する第1及び第2のスルーホール磁性体をさらに備える
ことを特徴とする請求項8に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記基板のうち前記第1及び第2の平面スパイラル導体の中央部に対応する部分を貫通する第3のスルーホール磁性体をさらに備える
ことを特徴とする請求項9に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記第1及び第2の平面スパイラル導体並びに前記第1及び第2の引出導体を覆う絶縁樹脂層と、
前記基板のおもて面及びうら面を覆う金属磁性粉含有樹脂層とをさらに備え、
前記第1乃至第3のスルーホール磁性体は、前記金属磁性粉含有樹脂層の一部である
ことを特徴とする請求項10に記載のコイル部品。
【請求項12】
前記第1及び第2の平面スパイラル導体はそれぞれ、前記第1の角部と前記第3の角部を結ぶ対角線の方向に相対的に長く、前記第2の角部と前記第4の角部を結ぶ対角線の方向に相対的に短い形状を有する
ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか一項に記載のコイル部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−248628(P2012−248628A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118359(P2011−118359)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】