説明

コイル部品

【課題】自動実装吸引マウンターで吸着でき、基板との機械的・電気的接触が安定になり、ボビン無しでコイルを製造できるコイル部品を提供する。
【解決手段】自己融着絶縁電線を巻回すると共に両端部分(1c,1d)が平板状のコイル(1)と、コイル(1)を収容するコイル収容空間(2a,2b)およびマウンターで吸着可能な吸着面(2c)およびコイル(1)の両端部分(1c,1d)が巻き付けられてコイル(1)が係止されるボビン・ケース(2)とを具備する。
【効果】吸着面(2c)を自動実装吸引マウンターで吸着して基板に実装できる。両端部分(1c,1d)が平板状なので基板との機械的・電気的接触が安定になる。ボビン無しでコイル(1)を単独に製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品に関し、さらに詳しくは、基板に実装する際に自動実装吸引マウンターで吸着でき、基板との機械的・電気的接触が安定になり、さらにボビン無しでコイルを単独に製造できるコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、丸線を円型のソレノイド巻きにした円型コイルを含む高周波用インダクタンス素子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
一方、両脚部の間に巻芯部を有するコ字形のボビンの巻芯部に丸線を巻きつけてコイルとし、コイルの両端を両脚部に設けた電極に接続したチップインダクタが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平08−078237号公報
【特許文献2】特開2002−170717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の高周波用インダクタンス素子では、基板に実装する際、円形コイルであるため自動実装吸引マウンターで吸着できない問題点があった。また、基板との機械的・電気的接触が不安定な問題点があった。
一方、上記従来のチップインダタでは、コ字形のボビンを保持しながらボビンの巻芯部に丸線を巻きつけてコイルとするため、ボビン無しでコイルを単独に製造できない問題点があった。
そこで、本発明の目的は、基板に実装する際に自動実装吸引マウンターで吸着でき、基板との機械的・電気的接触が安定になり、さらにボビン無しでコイルを単独に製造できるコイル部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、電線を巻回すると共に両端部分(1c,1d)が平板状のコイル(1)と、前記コイル(1)を収容するコイル収容空間(2a,2b)およびマウンターで吸着可能な吸着面(2c)および前記コイル(1)の両端部分(1c,1d)が巻き付けられて前記コイル(1)が係止されるボビン・ケース(2)とを具備してなることを特徴とするコイル部品(10)を提供する。
上記第1の観点によるコイル部品(10)では、ボビン・ケース(2)が自動実装吸引マウンターで吸着可能な吸着面(2c)を有するため、コイル部品(10)を基板に実装する際に自動実装吸引マウンターで吸着できる。また、コイル(1)の両端部分(1c,1d)が平板状であるので、基板との機械的・電気的接触が安定になる。さらに、ボビン無しでコイル(1)を単独に製造できる。さらにまた、コイル(1)の両端部分(1c,1d)を巻き付けてコイル(1)をボビン・ケース(2)に係止するので、部品点数および組立工数が少なくて済む。
【0005】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点によるコイル部品(10)において、前記ボビン・ケース(2)は、熱可塑性樹脂に無機フィラーを配合した材料製であることを特徴とするコイル部品(10)を提供する。
上記第2の観点によるコイル部品(10)では、ボビン・ケース(2)に熱可塑性樹脂を用いるため、例えばアルミナセラミックを用いる場合に比べて、低コストで複雑な形状が可能になる。また、無機フィラーを配合しているため、耐熱性,形状精度,強度を向上することが出来ると共に、配合比率により誘電率を制御し誘電率損を抑えることも出来る。
なお、熱可塑性樹脂は、例えばLCPやPPSである。
また、無機フィラーは、例えばシリカやMBTフィラー(商品名:Zi−ma、住友大阪セメント株式会社)である。
【0006】
第3の観点では、本発明は、前記第1または前記第2の観点によるコイル部品(10)において、前記両端部分(1c,1d)の少なくとも基板のランド部に当接する面は、基板のランド面に半田リフローで電気的・機械的に接続されうる構造であることを特徴とするコイル部品(10)を提供する。
上記第3の観点によるコイル部品(10)では、例えば絶縁被覆を剥離して半田めっきした構造の両端部分(1c,1d)とするため、コイル(1)を基板に半田リフローにより半田付けすることが出来る。
【0007】
第4の観点では、本発明は、前記第1から前記第3のいずれかの観点によるコイル部品(10)において、前記電線の両端部分(1c,1d)以外の部分は平板状でないことを特徴とするコイル部品(10)を提供する。
上記第4の観点によるコイル部品(10)では、両端部分(1c,1d)以外の部分も平板状である平線やリボン線を用いず、両端部分(1c,1d)以外の部分の断面が丸形,角形,星形,花形などの電線を用いるため、コイルを巻回しやすく、安価になる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のコイル部品によれば、基板に実装する際に自動実装吸引マウンターで吸着でき、基板との機械的・電気的接触が安定になり、さらにボビン無しでコイルを単独に製造でき、さらにまた、部品点数および組立工数が少なくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0010】
−実施例1−
図1は、実施例1に係るコイル部品10を示す上面図である。図2は、コイル部品10の底面図である。図3は、コイル部品10の右側面図である。
このコイル部品10は、電線を巻回すると共に両端部分1c,1dが平板状のコイル1と、コイル1を収容する凹部であるコイル収容空間2a,2bおよび自動実装吸引マウンターで吸着可能な平面である吸着面2cおよびコイル1の両端部分1c,1dが巻き付けられてコイル1が係止されるボビン・ケース2と、コ字形部材3を具備してなる。
【0011】
コイル1は、ボビン・ケース2とは独立であり、単独で製造することが出来る。
図4〜図6は、コイル1の製造過程を表している。
図4に示すように、例えば外径0.4mmの丸線を巻回し、2つのソレノイドコイルの一端側を渡り線部1eで接続して全体形状をコ字状にしたコイル1’を作成する。
次に図5に示すように、両端部分1c,1dを平板状に潰し、両端部分1c,1dの絶縁被覆を剥離し、両端部分1c,1dに半田めっきする。
次に図6に示すように、両端部分1c,1dを折り曲げ、ボビン・ケース2に巻き付け易くする。
【0012】
図7は、ボビン・ケース2の上面図である。図8は、ボビン・ケース2の底面図である。図9は、ボビン・ケース2の右側面図である。図10は、ボビン・ケース2の背面図である。図11は、ボビン・ケース2の正面図である。
ボビン・ケース2は、例えばLCPやPPSをベースとし、シリカやMBTフィラー(商品名:Zi−ma、住友大阪セメント株式会社)を70〜95重量%配合した材料を、射出成形したものである。
【0013】
吸着面2cは、例えば2.2mm×4.5mmの長方形になっている。
2d,2eは、コイル1の両端部分1c,1dを巻き付けるための凹部である。
2fは、コ字形部材3を位置決めするための凹部である。
2gは、ボビン・ケース2の樹脂量を少なくするための凹部である。
【0014】
コ字形部材3は、コ字形の金属板であり、半田,錫,ニッケルあるいは金でめっきされている。
【0015】
コイル部品10は、コイル1をボビン・ケース2に嵌め込んでコイル1の両端部分1c,1dをボビン・ケース2の凹部2d,2eに巻き付け、また、コ字形部材3をボビン・ケース2の凹部2fに嵌めることにより組み立てられる。
なお、渡り線部1eをボビン・ケース2に接着剤で接着してもよいし、弾性的にボビン・ケース2に係止されるようにしてもよい。また、コ字形部材3をボビン・ケース2に接着剤で接着してもよいし、弾性を有する金属製としてクリップのようにボビン・ケース2の凹部2fに嵌めるようにしてもよい。
【0016】
実施例1のコイル部品10によれば次の効果が得られる。
(1)ボビン・ケース2が自動実装吸引マウンターで吸着可能な吸着面2cを有するため、コイル部品10を基板に実装する際に自動実装吸引マウンターで吸着できる。
(2)コイル1の両端部分1c,1dが平板状であるので、基板との機械的・電気的接触が安定になる。
(3)ボビン無しでコイル1を単独に製造できる。
(4)コイル1の両端部分1c,1dを巻き付けてコイル1をボビン・ケース2に係止するので、部品点数および組立工数が少なくて済む。
(5)コイル1の両端部分1c,1dを基板に半田リフローにより半田付けすることが出来る。
(6)コ字形部材3を付加しているので、コイル1の両端部分1c,1dと共に3点支持になり、基板へのコイル部品10の保持が安定になる。
(7)ボビン・ケース2に熱可塑性樹脂を用いるため、低コストで複雑な形状が可能になる。また、無機フィラーを配合しているため、耐熱性,形状精度,強度を向上することが出来ると共に、配合比率により誘電率を制御し誘電率損を抑えることも出来る。
(8)凹部2gを設けてボビン・ケース2の樹脂量を少なくしているため、コイル1に対する誘電体の影響が少なくなり、空芯コイルに近い周波数特性を得ることが出来る。
(9)電線同士を熱融着することにより、コイルの形状を保持することが出来る。
(10)丸線を用いるため、平線やリボン線を用いるよりもコイルを巻回しやすく、安価になる。
【0017】
−実施例2−
図12は、実施例2に係るコイル部品10を示す上面図である。
このコイル部品10は、形状が異なるが、基本的構成は実施例1に係るコイル部品10と同じである。
吸着面2cは、例えば直径2.2mmの円形になっている。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明のコイル部品は、例えばGHz帯のアンテナコイルとして利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1に係るコイル部品を示す上面図である。
【図2】実施例1に係るコイル部品を示す底面図である。
【図3】実施例1に係るコイル部品を示す右側面図である。
【図4】丸線を用いたコイル(両端部分も丸線)を示す上面図である。
【図5】丸線を用いたコイル(両端部分が平板状)を示す上面図である。
【図6】両端部分を折り曲げた図5のコイルを示す上面図である。
【図7】ボビン・ケースを示す上面図である。
【図8】ボビン・ケースを示す底面図である。
【図9】ボビン・ケースを示す右側面図である。
【図10】ボビン・ケースを示す背面図である。
【図11】ボビン・ケースを示す正面図である。
【図12】実施例2に係るコイル部品を示す上面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 コイル
1c,1d 両端部分
1e 渡り線部分
2 ボビン・ケース
2a,2b コイル収容空間
2c 吸着面
2d,2e,2f,2g 凹部
3 コ字形部材
10 コイル部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を巻回すると共に両端部分(1c,1d)が平板状のコイル(1)と、前記コイル(1)を収容するコイル収容空間(2a,2b)およびマウンターで吸着可能な吸着面(2c)および前記コイル(1)の両端部分(1c,1d)が巻き付けられて前記コイル(1)が係止されるボビン・ケース(2)とを具備してなることを特徴とするコイル部品(10)。
【請求項2】
請求項1に記載のコイル部品(10)において、前記ボビン・ケース(2)は、熱可塑性樹脂に無機フィラーを配合した材料製であることを特徴とするコイル部品(10)。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコイル部品(10)において、前記両端部分(1c,1d)の少なくとも基板のランド部に当接する面は、基板のランド面に半田リフローで電気的・機械的に接続されうる構造であることを特徴とするコイル部品(10)。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のコイル部品(10)において、前記電線の両端部分(1c,1d)以外の部分は平板状でないことを特徴とするコイル部品(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−118380(P2010−118380A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288554(P2008−288554)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000003414)東京特殊電線株式会社 (173)
【Fターム(参考)】