説明

コネクタ、トレイ、及びコネクタとトレイとを備えるコネクタ装置

【課題】側部に幅方向に変位するスイッチを備えた小型化可能なコネクタであってスイッチの信頼性を向上することのできるコネクタを提供すること。
【解決手段】コネクタは、カード挿入状態の検知に用いられるスイッチと、第1位置決め部とを備えている。スイッチは、幅方向に操作可能な被操作部を有している。被操作部は、カード挿入状態において、トレイに設けられた操作部と当接してコネクタの幅方向における外側に向けて移動し、これによってスイッチが切替られるように構成されている。カード挿入状態において、第1位置決め部の少なくとも一部は、幅方向においてトレイに設けられた第1被位置決め部と当接しており、これによって操作部が被操作部と当接するように操作部の位置決めが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SIM(Subscriber Identity Module)カードのようなカードと接続するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチメディアカード(MMC)などのメモリカードと接続するコネクタとしては、例えば、特許文献1及び特許文献2に開示されたものがある。特許文献1及び特許文献2のコネクタは、いずれもカードを挿入して収容するものであり、カードの挿入を検知するための挿入検知スイッチを備えている。特許文献1のコネクタ(図15参照)には、複数のスイッチが設けられているが、このうち挿入検知スイッチはコネクタの奥側(図15において手前左側)に設けられている。特許文献2のコネクタ(図16参照)における挿入検知スイッチもコネクタの奥側(図16において右奥の中央付近)に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−135424号公報
【特許文献2】特開2010−219070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コネクタの奥側にスイッチを備えようとすると、コネクタの奥側にそのための空間が必要となり、コネクタ全体のサイズが大きくなるおそれがある。コネクタをより小型化するためには、むしろコネクタの側部に幅方向に変位するスイッチを備えることが好ましい。
【0005】
カードと接続するコネクタとしては、カードを直接コネクタに挿抜するタイプの他に、トレイにカードを搭載してコネクタに挿入するタイプも存在する。後者のタイプにおいてコネクタの側部に幅方向に変位するスイッチを備える場合、トレイの側部がスイッチを幅方向に押して変位させることになる。従って、トレイはスイッチから幅方向に沿った反力を受けることになる。
【0006】
コネクタの小型化に伴い、トレイの小型化・低背化も進んでいる。このためトレイの剛性が低く、トレイによりスイッチを十分に変形させることができないおそれがある。また、トレイのサイズのばらつきに起因してスイッチの切替えが適切になされないおそれもある。
【0007】
そこで、本発明は、側部に幅方向に変位するスイッチを備えた小型化可能なコネクタであってスイッチの信頼性を向上することのできるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1のコネクタ装置として、
コネクタと、挿入方向に沿って前記コネクタに挿入可能なトレイとを備え、カードを前記トレイに搭載し且つ前記挿入方向に沿って前記コネクタに挿入したカード挿入状態において前記カードと前記コネクタとが接続するように構成された、コネクタ装置であって、
前記トレイは、前記挿入方向に延びるアームを備えており、
前記アームは、操作部と、第1被位置決め部とを備えており、
前記操作部は、前記アームの前記挿入方向と直交する幅方向における外側に設けられており、
前記第1被位置決め部は、前記操作部よりも前記幅方向における内側に設けられており、
前記コネクタは、前記カード挿入状態の検知に用いられるスイッチと、第1位置決め部とを備えており、
前記スイッチは、前記幅方向に操作可能な被操作部を有しており、
前記被操作部は、前記カード挿入状態において、前記操作部と当接して前記コネクタの前記幅方向における外側に向けて移動し、これによって前記スイッチが切替られるように構成されており、
前記カード挿入状態において、前記第1位置決め部の少なくとも一部は、前記幅方向において前記第1被位置決め部と当接しており、これによって前記操作部が前記被操作部と当接するように前記操作部の位置決めが行われる
コネクタ装置を提供する。
【0009】
本発明は、第2のコネクタ装置として、第1のコネクタ装置であって、
前記コネクタは、ハウジングと、ハウジングの少なくとも一部を覆うシェルとを備えており、
前記被操作部と前記第1位置決め部とは、前記シェルに設けられている
コネクタ装置を提供する。
【0010】
本発明は、第3のコネクタ装置として、第1又は第2のコネクタ装置であって、
前記第1位置決め部と前記第1被位置決め部との少なくとも一方は、前記挿入方向に沿って延びている
コネクタ装置を提供する。
【0011】
本発明は、第4のコネクタ装置として、第1乃至第3のいずれかのコネクタ装置であって、
前記アームには、前記挿入方向に沿って延びる位置決め溝と、前記幅方向において前記位置決め溝の外側に位置し且つ前記挿入方向に沿って延びる突条部とが形成されており、
前記第1被位置決め部は、前記突条部の前記位置決め溝に面する部位であり、
前記操作部は、前記突条部の部位であって前記幅方向において前記第1被位置決め部と反対側に位置する部位であり、
前記トレイが前記コネクタに挿入される際、前記第1位置決め部が前記挿入方向に沿って前記位置決め溝に挿入されることで前記第1被位置決め部の位置決めが行われる
コネクタ装置を提供する。
【0012】
本発明は、第5のコネクタ装置として、第4のコネクタ装置であって、
前記位置決め溝の前記幅方向におけるサイズは、前記第1位置決め部の前記幅方向におけるサイズに対応している
コネクタ装置を提供する。
【0013】
本発明は、第6のコネクタ装置として、第1乃至第5のいずれかのコネクタ装置であって、
前記コネクタは、第2位置決め部を備えており、
前記アームは、第2被位置決め部を備えており、
前記第2被位置決め部は、前記幅方向において前記アームの前記操作部とは反対側の端部に設けられており、
前記第2位置決め部の少なくとも一部は、前記挿入方向において前記第1位置決め部の手前側に位置しており、
前記トレイが前記コネクタに挿入される際、前記第2位置決め部が前記第2被位置決め部に当接し、それによって、前記第1被位置決め部を前記第1位置決め部に向けてガイドする
コネクタ装置を提供する。
【0014】
本発明は、第7のコネクタ装置として、第6のコネクタ装置であって、
前記カード挿入状態において、前記第2位置決め部の少なくとも一部は、前記幅方向において前記アーム及び前記第1位置決め部と重なっており、前記被操作部による前記操作部に対する反力を前記第1位置決め部及び前記アームを介して受けるように構成されている
コネクタ装置を提供する。
【0015】
本発明は、第8のコネクタ装置として、第6又は第7のコネクタ装置であって、
前記シェルは、前記挿入方向及び前記幅方向の双方と直交する高さ方向の上方から前記ハウジングを覆っており、これによって前記トレイが挿入されるトレイ収納部が前記ハウジングと前記シェルとの間に形成されており、
前記第2位置決め部は、前記ハウジングに設けられている
コネクタ装置を提供する。
【0016】
本発明は、第9のコネクタ装置として、第6乃至第8のいずれかのコネクタ装置であって、
前記第2位置決め部と前記第2被位置決め部との少なくとも一方は、前記挿入方向に沿って延びている
コネクタ装置を提供する。
【0017】
本発明は、第1のコネクタとして、第1乃至第9のいずれかのコネクタ装置におけるコネクタを提供する。
【0018】
本発明は、第1のトレイとして、第1乃至第9のいずれかのコネクタ装置におけるトレイを提供する。
【発明の効果】
【0019】
カード挿入状態において、コネクタに設けた第1位置決め部の少なくとも一部が、トレイのアームに設けた第1被位置決め部と幅方向において当接し、これによってトレイのアームに設けた操作部がコネクタに設けたスイッチの被操作部と当接するように操作部の位置決めを行うこととしたため、操作部が幅方向において被操作部から離れる方向に移動することを防止することができ、スイッチの信頼性を向上することができる。
【0020】
トレイのアームに、挿入方向に沿って延びる位置決め溝を設け、トレイがコネクタに挿入される際、第1位置決め部が挿入方向に沿って位置決め溝に挿入されることで第1被位置決め部の位置決めが行われるように構成されている場合、第1被位置決め部を第1位置決め部により確実にガイドすることができる。
【0021】
コネクタに第2位置決め部を設け、アームに第2被位置決め部を設け、トレイがコネクタに挿入される際、第2位置決め部が第2被位置決め部に当接し、それによって、第1被位置決め部を第1位置決め部に向けてガイドするように構成されている場合、第1被位置決め部を第1位置決め部によりさらに確実にガイドすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態によるコネクタ装置を示す斜視図である。
【図2】図1のコネクタ装置を示す側面図である。なお、コネクタの排出部材は表示していない。
【図3】図1のコネクタ装置に挿入されるカードを示す平面図である。(a)は上面図であり、(b)は裏面図である。
【図4】図1のコネクタ装置のコネクタとトレイとを示す平面図である。なお、トレイに搭載されるカードを破線で表示している。
【図5】図4のトレイを示す斜視図である。
【図6】図4のトレイのアームの先端部分(破線Aの部分)を示す拡大部分平面図である。
【図7】図6のアームの先端部分をVII-VII線に沿って示す断面図である。
【図8】図4のコネクタを示す分解斜視図である。なお、コネクタの排出部材は表示していない。
【図9】図4のコネクタを示す平面図である。なお、ハウジングのうちシェルに覆われた部分の概略形状を破線で表示している。
【図10】図9のハウジングの第2位置決め部付近(破線Bの部分)を示す拡大部分平面図である。
【図11】図2のコネクタ装置をX-X線に沿って示す断面図である。
【図12】図4のトレイを図4のコネクタに挿入した際のハウジングの第2位置決め部付近を示す拡大部分平面図である。なお、シェルの第1位置決め部とスイッチとを破線で表示している。
【図13】図9のシェルの第1位置決め部付近(破線Cの部分)を示す拡大部分平面図である。
【図14】製品出荷時における図2のコネクタ装置をXIV-XIV線に沿って示す断面図である。
【図15】従来のコネクタ装置の一例を示す斜視図である。
【図16】従来のコネクタ装置の別の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1、図2及び図4に示されるように、本実施の形態によるコネクタ装置10は、コネクタ200と、挿入方向(−X方向)に沿ってコネクタ200に挿入可能なトレイ300とを備えている。トレイ300には、カード900を搭載することができる。本実施の形態によるカード900は、例えば、SIMカードである。図3(b)に示されるように、カード900の裏面(−Z側)には複数の電極部910が形成されている。一方、コネクタ200は、金属からなる複数のコンタクト290を備えている。コネクタ装置10は、カード900をトレイ300に搭載し且つ−X方向(挿入方向)に沿ってコネクタ200に挿入したカード挿入状態において、カード900の電極部910とコネクタ200のコンタクト290とが接触し、これによってカード900とコネクタ200とが電気的に接続されるように構成されている。
【0024】
本実施の形態によるトレイ300は、絶縁樹脂をモールドして得られるものであり、図1、図4及び図5に示されるように、前壁部310、側壁部320及び搭載部340を有している。前壁部310は、トレイ300の+X方向前端部分であり、トレイ300をコネクタ200内に挿入するときに(即ち、トレイ300を−X方向(挿入方向)に向けて押し込むときに)押される部位である。前壁部310は、Y方向(幅方向)に沿って延びており、Y方向における両端付近から、2つの側壁部320が−X方向に沿って延びている。側壁部320には、Y方向において内側に向かって凹んだ凹部321が夫々形成されている。
【0025】
搭載部340は、カード900を搭載・保持する部位であり、前壁部310及び側壁部320に沿うようにして、トレイ300の底面部分に設けられている。搭載部340のZ方向(高さ方向)のサイズは、前壁部310及び側壁部320のZ方向のサイズよりも小さい。
【0026】
図4乃至図7に示されるように、トレイ300のY方向における両側部分には、側壁部320と搭載部340とからなるアーム350が形成されている。アーム350は、−X方向(挿入方向)に沿って延びており、アーム350の一方には、位置決め溝351と突条部352とが形成されている。位置決め溝351は、側壁部320のY方向内側を切り欠くようにして形成されており、且つ、−Z方向に凹んでいる。また位置決め溝351は、−X方向(挿入方向)に沿って延びている。突条部352は、Y方向(幅方向)において位置決め溝351の外側に位置しており、+Z方向に突出すると共に−X方向(挿入方向)に沿って延びている。また、アーム350の下面には段差部350sが形成されており、アーム350の−X側の底面の位置が、+X側の底面の位置よりも、やや高くなっている。
【0027】
図5乃至図7に示されるように、アーム350の突条部352は、操作部353、第1被位置決め部354を備えている。第1被位置決め部354は、突条部352の位置決め溝351に面する部位であり、操作部353は、突条部352の部位であってY方向(幅方向)において第1被位置決め部354と反対側に位置する部位である。即ち、操作部353は、アーム350のY方向(幅方向)における外側に設けられており、第1被位置決め部354は、操作部353よりもY方向(幅方向)における内側に設けられている。第1被位置決め部354は、−X方向(挿入方向)に沿って延びており、−X方向先端部分に第1ガイド部354aを有している。第1ガイド部354aは、Y方向外側に傾斜しながら−X方向に延びている。換言すれば、第1ガイド部354aは、X方向及びY方向の双方と斜交する面状に形成されている。また、アーム350の先端付近には第3ガイド部357が形成されている。第3ガイド部357は、X方向及びY方向の双方と斜交する面状に形成されている。第1ガイド部354aと第3ガイド部357とは、位置決め溝351の先端付近をY方向において挟んでおり、−X方向に向かってY方向において互いに離れるようにして延びている。
【0028】
アーム350は、更に第2被位置決め部358を備えている。第2被位置決め部358は、Y方向(幅方向)においてアーム350の操作部353とは反対側の端部に設けられており、−X方向(挿入方向)に沿って延びている。詳しくは、第2被位置決め部358は、第2ガイド部358aと被係止部358bとを有している。被係止部358bは、XZ平面に平行な面状に形成されている。第2ガイド部358aは、被係止部358bの−X方向先端から+Y方向に傾斜しながら−X方向に延びている。換言すれば、第2ガイド部358aは、X方向及びY方向の双方と斜交する面状に形成されている。また、第2被位置決め部358の−X方向先端は、−X方向(挿入方向)において第1被位置決め部354よりも前方に位置している。
【0029】
図1、図2、図4、図8及び図9に示されるように、コネクタ200は、金属からなるシェル210と絶縁樹脂からなるハウジング250とを備えている。シェル210は、ハウジング250の少なくとも一部を覆っている。詳しくは、シェル210は、−X方向(挿入方向)及びY方向(幅方向)の双方と直交するZ方向(高さ方向)の上方からハウジング250を覆っており、これによってトレイ300が挿入されるトレイ収納部280がハウジング250とシェル210との間に形成されている。
【0030】
図8及び図9に示されるように、ハウジング250は、略矩形状の本体部260と、後端部265とを有している。後端部265は、本体部260の−X方向且つ+Y方向の端部付近から、ハウジング250の後方に向けて突出している。本体部260のY方向における両側部には、金属からなる側壁板251がインサート成型により組み込まれている。2つの側壁板251のY方向における幅は、2つのアーム350(図5参照)のY方向における幅と夫々対応している。また、Z方向において、側壁板251の側板部分の上端は本体部260の上面よりも高い位置に位置する一方、側壁板251の底板部分の上面は本体部260の上面よりもやや低い位置に位置しており、トレイ300のアーム350をガイド可能となっている。また、一方の側壁板251と後端部265とのX方向における境界部分は、カード挿入状態において、アーム350の段差部350s(図5参照)と対応するように構成されている。従って、カード挿入状態において、アーム350の下部を側壁板251部分に収容・保持することができる。
【0031】
本体部260には、コンタクト290が保持されている。本実施の形態によるコンタクト290は、ハウジング250の形成時にインサート成型されたものである。コンタクト290は、ハウジング250からトレイ収納部280の内部に突出しており、トレイ収納部280に挿入されたカード900の電極部910と接触可能となっている。
【0032】
図8乃至図11に示されるように、ハウジング250の後端部265には、第2位置決め部270が形成されている。第2位置決め部270は、ハウジング250からトレイ収納部280の内部に突出しており、−X方向(挿入方向)に沿って延びている。第2位置決め部270は、第2ガイド部270aと、係止部270bとを備えている。係止部270bは、XZ平面に平行な面状に形成されている。図11に示されるように、係止部270bは、カード挿入状態において、アーム350の被係止部358bとY方向(幅方向)において対応する位置に設けられている。第2ガイド部270aは、係止部270bの+X方向先端から−Y方向に傾斜しながら+X方向に延びている。換言すれば、第2ガイド部358aは、X方向及びY方向の双方と斜交する面状に形成されている。
【0033】
図1、図2及び図4に示されるように、シェル210は、Y方向において側部210a及び側部210bを有しており、X方向において前端部210f及び後端部210rを有している。シェル210の上面には、金属からなる排出部材295が取り付けられている。排出部材295は、コネクタ200に挿入したトレイ300をコネクタ200から排出する際に操作される。また、シェル210の側部210a及び側部210bには、夫々、保持バネ220が形成されている。各保持バネ220は、くの字状の先端部分を有している。トレイ300がコネクタ200内に挿入されると、保持バネ220の先端部分がトレイ300の凹部321に受容され、それによってコネクタ200へのトレイ300の収容状態が維持される。
【0034】
図1、図4、図8及び図9に示されるように、シェル210は、側部210aに、金属からなる第1位置決め部230を備えている。第1位置決め部230は、側部210aの後端部210r付近に設けられている。本実施の形態による第1位置決め部230は、シェル210の一部に切り込みを入れて、−Z方向に向けて折り曲げることによって形成されており、−X方向(挿入方向)に沿って延びている。詳しくは、第1位置決め部230は、XZ平面と平行な略矩形の板状に形成されており、上端部分でシェル210の上面と接続している。第1位置決め部230は、カード挿入状態において、アーム350の位置決め溝351とY方向(幅方向)において対応する位置に設けられている(図11参照)。また、第1位置決め部230のY方向における幅は、トレイ300の位置決め溝351に挿入できる程度に設定されている。換言すれば、トレイ300の位置決め溝351のY方向(幅方向)におけるサイズは、第1位置決め部230のY方向におけるサイズに対応している。また、第2位置決め部270の一部である第2ガイド部270aは、−X方向(挿入方向)において第1位置決め部230の手前側に位置している(図11参照)。
【0035】
図1、図4及び図8に示されるように、コネクタ200は、金属からなるスイッチ240を備えている。スイッチ240は、トレイ300及びカード900がコネクタ200に収容されているか否かを検知するために(即ち、カード挿入状態の検知に)用いるものであり、検知回路(図示せず)と接続されている。スイッチ240は、ハウジング250の後端部265に固定された固定部242と、シェル210に取り付けられ、Y方向(幅方向)に操作可能な被操作部244とを有している。固定部242は、一端をハウジング250の後端部265に固定・支持されており、他方の端部242aは、第1位置決め部230をやや越えた位置まで+Y方向に沿って延びている。被操作部244は、シェル210の側部210aに一端を固定されており、側部210aの近傍を−X方向に延びている。詳しくは、被操作部244は、側部210aから離れるようにして延びた後、第1位置決め部230に接近するようにして延び、再び側部210aから離れるようにして固定部242の端部242a近傍まで延びている。
【0036】
図13(a)に示されるように、コネクタ200にトレイ300が挿入されていない状態において、被操作部244の自由端は、固定部242の端部242aと接触している。一方、図13(b)に示されるように、被操作部244は、カード挿入状態において、アーム350の操作部353と当接して、コネクタ200のY方向(幅方向)における外側に向けて移動する。従って、被操作部244の自由端は、固定部242の端部242aから離れ、これによってスイッチ240が切替られるように構成されている。
【0037】
なお、図1から明らかなように、シェル210のY方向のサイズ(側部210aと側部210bとの間の距離)よりもトレイ300の前壁部310のY方向のサイズの方が大きい。特に、本実施の形態による前壁部310は、側部210a側で側部210aよりもY方向に大きく突出しており、排出部材295がシェル210の側部210aよりも突出しており、側部210a側にスペースがある。このため、スイッチ240を側部210aに設けるメリットが大きい。
【0038】
以下、トレイ300にカード900を搭載してコネクタ200に挿入する際の被操作部244等の位置決めについて説明する。
【0039】
図12(a)から理解されるように、トレイ300をコネクタ200に挿入開始した時点において、第1位置決め部230及び第1被位置決め部354の対向する先端間の距離は、第2位置決め部270及び第2被位置決め部358の対向する先端間の距離よりも短くなるように設計されている。また、第2被位置決め部358は、カード挿入状態において、第2位置決め部270に沿うようにして、第2位置決め部270の+Y方向側に位置するように設計されている。同様に、第1被位置決め部354は、カード挿入状態において、第1位置決め部230に沿うようにして、第1位置決め部230の+Y方向側に位置するように設計されている。
【0040】
しかしながら、実際にはトレイ300とコネクタ200との間には多少の位置ずれが生ずることもある。その場合、図12(a)に示されるように、トレイ300がコネクタ200に挿入される際、第2位置決め部270の第2ガイド部270aが第2被位置決め部358の第2ガイド部358aに当接する。第2ガイド部358aは、第2ガイド部270aから+Y方向に沿った力を受け、これによってアーム350は、Y方向において位置合わせされる。換言すれば、第2位置決め部270は、アーム350の第1被位置決め部354を第1位置決め部230とY方向において当接する位置に向けてガイドする。本実施形態においては、第2ガイド部270a及び第2ガイド部358aの双方とも、X方向及びY方向に斜交し、且つ互いに略平行な平面状に形成されているので、第2被位置決め部358をスムーズにガイドすることができる。但し、第2ガイド部270a及び第2ガイド部358aの形状は、上記の形状には限られない。
【0041】
図12(b)に示されるように、トレイ300を更にコネクタ200に挿入すると、アーム350の位置決め溝351は、第1位置決め部230に接近し、第1位置決め部230は、第1ガイド部354a又は第3ガイド部357と当接する。トレイ300の挿入を続けると、位置決め溝351は、第1位置決め部230に向けてガイドされ、第1位置決め部230を受容する。即ち、本実施の形態においては、第1位置決め部230が−X方向(挿入方向)に沿って位置決め溝351に挿入されることで第1被位置決め部354の位置決めが行われる。従って、第1被位置決め部354を第1位置決め部230とY方向において当接する位置まで、より確実にガイドすることができる。
【0042】
図12(c)及び図13(b)に示されるように、カード挿入状態においては、第1位置決め部230は、位置決め溝351に挿入されており、アーム350の突条部352は、Y方向において、第1位置決め部230と被操作部244とに挟まれている。換言すれば、第1位置決め部230の少なくとも一部は、Y方向(幅方向)において第1被位置決め部354と当接しており、これによって操作部353が被操作部244と当接するように操作部353の位置決めが行われている。従って、操作部353により被操作部244を十分に変形させてスイッチ240を切替えることができると共に、操作部353がY方向において被操作部244から離れる方向に移動することを防止することができ、スイッチ240の信頼性を向上することができる。
【0043】
以上に説明したように、本実施の形態においては、トレイ300をコネクタ200に挿入する際の操作部353の位置決めが、まず、第2位置決め部270と第2被位置決め部358によって行われ、続いて第1位置決め部230と第1被位置決め部354によって行われる。このように2段階で位置決めを行うことで、精度よくスムーズに位置決めすることができる。但し、1段階で位置決めするようにしてもよい。具体的には、例えば、第1位置決め部230と第1被位置決め部354とによる位置決めのみ行うようにしてもよい。このようにすることで、部材の形状をよりシンプルにすることができる。また、本実施の形態による第1位置決め部230、第1被位置決め部354、第2位置決め部270及び第2被位置決め部358は、いずれもX方向に長く延びているが、X方向において短く形成することも可能である。但し、より確実に位置決めされるようにするためには、本実施の形態のように構成することが好ましい。
【0044】
図13(b)から理解されるように、カード挿入状態において、トレイ300の操作部353は、被操作部244から−Y方向の反力を受けるが、コネクタ200の第1位置決め部230がこの反力を受け止めるので、操作部353が幅方向に移動することを防止することができる。更に、本実施の形態においては、操作部353を介してアーム350の先端部付近が反力の一部を受ける。更に、図11に示されるように、カード挿入状態において、アーム350の被係止部358bは、コネクタ200の係止部270bのY方向における近傍に位置している。また、係止部270bのコネクタ200奥側部分は、Y方向において被係止部358b及び第1位置決め部230と重なっている(図12(c)参照)。換言すれば、本実施の形態においては、カード挿入状態において、第2位置決め部270の少なくとも一部は、Y方向(幅方向)においてアーム350及び第1位置決め部230と重なっている。以上の説明から理解されるように、本実施の形態による第2位置決め部270は、被操作部244による操作部353に対する反力を第1位置決め部230及びアーム350を介して受けるように構成されている。従って、アーム350の−Y方向の移動は、係止部270bによって係止され、トレイ300を変形させることなく、Y方向(幅方向)の力を受け止めることができる。
【0045】
図4に示されるように、トレイ300の搭載部340は、トレイ300の内壁に沿うように設けられている。従って、一方のアーム350が受けたY方向の力をトレイ300全体で受け止めることができる。また、搭載部340に搭載されたカード900もY方向の力を受ける。このように、本実施の形態によるコネクタ装置100は、幅方向に沿った力によるトレイ300の変形を効果的に防止することができる。
【0046】
コネクタ200の第1位置決め部230だけで反力を十分に受け止めることができる場合には、第2位置決め部270の係止部270bのような部位は不要である。この他にも、位置決めに係る構造を様々に変形することが可能である。例えば、図5に示されるように、本実施の形態における位置決め溝351は、側壁部320のY方向における端部に形成されトレイ300の内部空間に連通しているが、側壁部320のY方向における中央部分に位置決め溝351を形成してもよい。
【0047】
図14(a)から理解されるように、本実施の形態による被操作部244は、初期状態においては、第1位置決め部230の下方を通過し、コネクタ200の内部に向かって、固定部242の端部242aを越えて延びており、被操作部244を保護するようになっている。この状態においてトレイ300をコネクタ200に挿入すると、図14(b)から理解されるように、被操作部244は固定部242と接触し、更に固定部242を乗り越えてY方向外側に移動する。カード挿入状態においては、図11に示されるように、被操作部244は固定部242から+Y方向側に離れて位置する。被操作部244は、トレイ300を引き抜いたときに初期状態における位置(図14(a)参照)には戻らず、図13(a)に示される位置に位置する。
【0048】
本実施の形態によるコネクタ装置10は、スタンダードタイプのコネクタ装置であり、ハウジング250がコネクタ200の底面側に配置されている。しかしながら、本発明は、ハウジングがコネクタの上面側に配置され、シェルが下方からハウジングを覆っているリバースタイプのコネクタ装置についても適用可能である。リバースタイプのコネクタ装置においては、カードは、電極部が設けられた面を上に向けてトレイに搭載され、コネクタに挿入される。この場合、第2位置決め部をシェルに設けることができる。即ち、第1位置決め部、第2位置決め部及びスイッチの操作部の全てをシェルに設けることができるので、各部位の位置的関係の精度を高めることができる。
【0049】
また、本実施の形態によるスイッチ240は、ノーマルクローズのスイッチであり、トレイ300が挿入されていない状態において、固定部242と被操作部244とが接触している。しかしながら、本発明は、トレイ300が挿入されていない状態において、固定部242と被操作部244とが離れているノーマルオープンのスイッチについても適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 コネクタ装置
200 コネクタ
210 シェル
210a 側部
210b 側部
210f 前端部
210r 後端部
220 保持バネ
230 第1位置決め部
240 スイッチ
242 固定部
242a 端部
244 被操作部
250 ハウジング
251 側壁板
260 本体部
265 後端部
270 第2位置決め部
270a 第2ガイド部
270b 係止部
280 トレイ収納部
290 コンタクト
295 排出部材
300 トレイ
310 前壁部
320 側壁部
321 凹部
340 搭載部
350 アーム
350s 段差部
351 位置決め溝
352 突条部
353 操作部
354 第1被位置決め部
354a 第1ガイド部
357 第3ガイド部
358 第2被位置決め部
358a 第2ガイド部
358b 被係止部
900 カード
910 電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタと、挿入方向に沿って前記コネクタに挿入可能なトレイとを備え、カードを前記トレイに搭載し且つ前記挿入方向に沿って前記コネクタに挿入したカード挿入状態において前記カードと前記コネクタとが接続するように構成された、コネクタ装置であって、
前記トレイは、前記挿入方向に延びるアームを備えており、
前記アームは、操作部と、第1被位置決め部とを備えており、
前記操作部は、前記アームの前記挿入方向と直交する幅方向における外側に設けられており、
前記第1被位置決め部は、前記操作部よりも前記幅方向における内側に設けられており、
前記コネクタは、前記カード挿入状態の検知に用いられるスイッチと、第1位置決め部とを備えており、
前記スイッチは、前記幅方向に操作可能な被操作部を有しており、
前記被操作部は、前記カード挿入状態において、前記操作部と当接して前記コネクタの前記幅方向における外側に向けて移動し、これによって前記スイッチが切替られるように構成されており、
前記カード挿入状態において、前記第1位置決め部の少なくとも一部は、前記幅方向において前記第1被位置決め部と当接しており、これによって前記操作部が前記被操作部と当接するように前記操作部の位置決めが行われる
コネクタ装置。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタ装置であって、
前記コネクタは、ハウジングと、ハウジングの少なくとも一部を覆うシェルとを備えており、
前記被操作部と前記第1位置決め部とは、前記シェルに設けられている
コネクタ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のコネクタ装置であって、
前記第1位置決め部と前記第1被位置決め部との少なくとも一方は、前記挿入方向に沿って延びている
コネクタ装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のコネクタ装置であって、
前記アームには、前記挿入方向に沿って延びる位置決め溝と、前記幅方向において前記位置決め溝の外側に位置し且つ前記挿入方向に沿って延びる突条部とが形成されており、
前記第1被位置決め部は、前記突条部の前記位置決め溝に面する部位であり、
前記操作部は、前記突条部の部位であって前記幅方向において前記第1被位置決め部と反対側に位置する部位であり、
前記トレイが前記コネクタに挿入される際、前記第1位置決め部が前記挿入方向に沿って前記位置決め溝に挿入されることで前記第1被位置決め部の位置決めが行われる
コネクタ装置。
【請求項5】
請求項4記載のコネクタ装置であって、
前記位置決め溝の前記幅方向におけるサイズは、前記第1位置決め部の前記幅方向におけるサイズに対応している
コネクタ装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のコネクタ装置であって、
前記コネクタは、第2位置決め部を備えており、
前記アームは、第2被位置決め部を備えており、
前記第2被位置決め部は、前記幅方向において前記アームの前記操作部とは反対側の端部に設けられており、
前記第2位置決め部の少なくとも一部は、前記挿入方向において前記第1位置決め部の手前側に位置しており、
前記トレイが前記コネクタに挿入される際、前記第2位置決め部が前記第2被位置決め部に当接し、それによって、前記第1被位置決め部を前記第1位置決め部に向けてガイドする
コネクタ装置。
【請求項7】
請求項6記載のコネクタ装置であって、
前記カード挿入状態において、前記第2位置決め部の少なくとも一部は、前記幅方向において前記アーム及び前記第1位置決め部と重なっており、前記被操作部による前記操作部に対する反力を前記第1位置決め部及び前記アームを介して受けるように構成されている
コネクタ装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載のコネクタ装置であって、
前記シェルは、前記挿入方向及び前記幅方向の双方と直交する高さ方向の上方から前記ハウジングを覆っており、これによって前記トレイが挿入されるトレイ収納部が前記ハウジングと前記シェルとの間に形成されており、
前記第2位置決め部は、前記ハウジングに設けられている
コネクタ装置。
【請求項9】
請求項6乃至請求項8のいずれかに記載のコネクタ装置であって、
前記第2位置決め部と前記第2被位置決め部との少なくとも一方は、前記挿入方向に沿って延びている
コネクタ装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のコネクタ装置におけるコネクタ。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のコネクタ装置におけるトレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−221751(P2012−221751A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86574(P2011−86574)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】