説明

コネクタ

【課題】カバーとハウジングの間を水密に保持すると共に、カバーとハウジングの嵌合面から充填剤が漏出することを防ぐコネクタを提供する。
【解決手段】ハウジング4が、カバー5側の端部に、第1の壁部41と第2の壁部42を隣接して構成した溝部43を有し、カバー5が、ハウジング4側の端部に、第1の壁部51と第2の壁部52を隣接して構成した溝部54を有し、カバー5のハウジング4への組み付けにより、カバー5の第1の壁部51の先端部51bと第2の壁部52の先端部52bが、ハウジング4の溝部43内に入り込んで、ハウジング4のコネクタブロック31の周囲に充填剤7が注入される充填用空間6を構成し、充填用空間6内に注入された充填剤7の液圧により、カバー5の第1の壁部51の先端薄肉部51bと第2の壁部52の先端薄肉部52bが撓んで、ハウジング4の溝部43を構成する第1の壁部41と第2の壁部42と密接するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の接続等に使用されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体には、種々の電子機器が搭載されており、この電子機器に電力や制御信号を伝えるために、複数の電線を束ねたワイヤハーネスが配線されている。前記ワイヤハーネスの端部には、連結具としてのコネクタが設けられており、該コネクタが各種電子機器に接続されるようになっている。
【0003】
前記コネクタのうち、雨水等が侵入しやすい場所、例えばエンジンルーム内等で使用されるコネクタには、防水用のコネクタが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記防水用のコネクタは、前記エンジンルーム内の電子機器に取り付けられたコネクタと嵌合して、電子機器に制御信号等を伝える。
【0005】
前記防水用のコネクタは、電線の端部に接続された端子金具と、該端子金具が収容された端子収容部を備えたハウジングと、該ハウジングに組み付けられたカバーとを備えている。
【0006】
前記ハウジング及びカバーは、絶縁性の合成樹脂で箱状に形成されている。前記ハウジングに前記カバーを組み付けることにより、ハウジング内に収容された端子金具の電線との接続部分を保護するようになっている。
【0007】
前記ハウジングの端子収容部の周囲には、前記ハウジングに前記カバーを組み付けた状態で、充填用溝部が形成されている。該充填用溝部には、所定の充填剤が注入されるようになっている。
【0008】
そして、前記注入された充填剤により、前記ハウジングに前記カバーを組み付けた状態で、カバーとハウジングの間を水密に保持し、コネクタの外部からハウジングの内部に雨水等が浸入するのを防ぐようになっている。
【特許文献1】特開2001−76808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、前記したコネクタでは、ハウジング及びカバーが樹脂成型品で成型されているので、成型時の寸法誤差を避けることができない。このため、ハウジングにカバーを組み付けた際に、カバーとハウジングの間の嵌合面に僅かな隙間が生ずることがある。
【0010】
この状態で、前記充填用溝部に充填剤を注入すると、前記カバーとハウジングの嵌合面の隙間から充填剤が漏出するおそれがあった。
【0011】
前記嵌合面から漏出した充填剤は、前記ハウジングの内部の端子収容部内に入り込んで、端子金具の接触不良を引き起こしたり、前記ハウジングの外部に漏出して、コネクタの外観を汚損するという問題があった。
【0012】
したがって、本発明の目的は、カバーとハウジングの間を水密に保持することができるとともに、カバーとハウジングの嵌合面から充填剤が漏出することを防ぐことができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のコネクタは、端子金具を収容する端子収容部を備えたコネクタブロックを収納するハウジングと、該ハウジングに組み付けられて、前記コネクタブロックの開口を覆うカバーとを備えたコネクタにおいて、前記ハウジングが、前記カバー側の端部に、第1の壁部と第2の壁部を隣接して構成した溝部を有し、前記カバーが、前記ハウジング側の端部に、第1の壁部と第2の壁部を隣接して構成した溝部を有し、前記カバーの前記ハウジングへの組み付けにより、前記カバーと前記ハウジングのうちの一方の第1の壁部と第2の壁部の先端部が、前記カバーと前記ハウジングのうちの他方の前記溝部内に入り込んで、前記ハウジングのコネクタブロックの周囲に充填剤が注入される充填用空間を構成し、前記充填用空間内に注入された充填剤の圧力により、前記一方の壁部の先端部が撓んで、前記他方の溝部を構成する壁部と密接するようにしたことを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載のコネクタは、請求項1記載のコネクタにおいて、前記カバーが、前記ハウジングの外縁に取り付けられるとともに、前記第1の壁部を有する外カバーと、該外カバー内に収容されて前記コネクタブロックの開口を覆うとともに、前記第2の壁部を有する内カバーとを備え、該内カバーに、前記端子金具に取り付けられた電線を通す通孔を設け、前記充填剤が、前記内カバーを完全に覆う位置まで注入されることを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載のコネクタは、請求項1又は2記載のコネクタにおいて、前記ハウジングと前記カバーの双方に、前記カバーを前記ハウジングに組み付けた状態で前記端子金具に取り付けられた電線を外部に導き出す導出孔を形成する導出部を設け、前記ハウジングの導出部と前記カバーの導出部の少なくとも一方に、前記導出孔の内側に向かって立設して前記電線を押さえ付ける電線押さえ部を設け、前記導出孔内に、前記充填剤を注入したことを特徴としている。
【0016】
請求項4に記載のコネクタは、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコネクタにおいて、前記充填剤が、発泡性樹脂で構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載のコネクタは、端子金具を収容する端子収容部を備えたコネクタブロックを収納するハウジングと、該ハウジングに組み付けられて、前記コネクタブロックの開口を覆うカバーとを備えたコネクタにおいて、前記ハウジングが、前記カバー側の端部に、第1の壁部と第2の壁部を隣接して構成した溝部を有し、前記カバーが、前記ハウジング側の端部に、第1の壁部と第2の壁部を隣接して構成した溝部を有し、前記カバーの前記ハウジングへの組み付けにより、前記カバーと前記ハウジングのうちの一方の第1の壁部と第2の壁部の先端部が、前記カバーと前記ハウジングのうちの他方の前記溝部内に入り込んで、前記ハウジングのコネクタブロックの周囲に充填剤が注入される充填用空間を構成し、前記充填用空間内に注入された充填剤の圧力により、前記一方の壁部の先端部が撓んで、前記他方の溝部を構成する壁部と密接するようにしたので、カバーとハウジングの間を水密に保持することができ、また、ハウジング及びカバーの成型時の寸法誤差により、ハウジングにカバーを組み付けた際に、カバーとハウジングの間の嵌合面に僅かな隙間が生ずるような場合でも、前記嵌合面からの充填剤の漏出を防ぐことができる。
【0018】
そのために、前記嵌合面から漏出した充填剤が、ハウジングの内部のコネクタブロック内に入り込んで端子金具の接触不良を引き起こしたり、ハウジングの外部へ漏出してコネクタの外観を汚損することを防ぐことができる。
【0019】
また、充填用空間内に注入された充填剤の圧力により、前記カバーと前記ハウジングのうちの一方の壁部の先端部が撓んで、前記カバーと前記ハウジングのうちの他方の溝部を構成する壁部と密接するようにしたので、カバーとハウジングの間を水密に保持するためにパッキン等の専用の部材を設ける必要がなく、部品点数の増加を防止してコストの高騰を防止できる。
【0020】
請求項2に記載のコネクタは、前記カバーが、前記ハウジングの外縁に取り付けられるとともに、前記第1の壁部を有する外カバーと、該外カバー内に収容されて前記コネクタブロックの開口を覆うとともに、前記第2の壁部を有する内カバーとを備え、該内カバーに、前記端子金具に取り付けられた電線を通す通孔を設け、前記充填剤が、前記内カバーを完全に覆う位置まで注入されるので、外カバー及び内カバーとハウジングの間を水密に保持することができ、また、外カバー及び内カバーとハウジングの間の嵌合面に僅かな隙間が生ずるような場合でも、前記嵌合面からの充填剤の漏出を防ぐことができる。
【0021】
また、前記内カバーに、前記端子金具に取り付けられた電線を通す通孔を設け、前記充填剤が、前記内カバーを完全に覆う位置まで注入されるので、電線が内カバーの通孔を通る際に電線がはらけて電線の間に隙間が生じるようになり、この状態で、充填剤が内カバーを完全に覆う位置まで注入されるので、前記電線の間の隙間にも充填剤が入り込むようになり、そのために、電線の間を充填剤で効率的に封止することができ、コネクタの水密性をより高めることができる。
【0022】
請求項3に記載のコネクタは、前記ハウジングと前記カバーの双方に、前記カバーを前記ハウジングに組み付けた状態で前記端子金具に取り付けられた電線を外部に導き出す導出孔を形成する導出部を設け、前記ハウジングの導出部と前記カバーの導出部の少なくとも一方に、前記導出孔の内側に向かって立設して前記電線を押さえ付ける電線押さえ部を設け、前記導出孔内に、前記充填剤を注入したので、前記したカバーとハウジングの間を水密に保持することができるとともに、カバーとハウジングの間の嵌合面に僅かな隙間が生ずるような場合でも、前記嵌合面からの充填剤の漏出を防ぐことができるという効果に加えて、電線押さえ部で押さえ付けられた電線が前記導出部の導出孔を通って外部に導き出される際に、電線がばらけて電線の間に隙間が生じるようになり、この状態で、前記導出孔内に充填剤を注入したので、前記電線の間の隙間にも充填剤が入り込むようになり、そのために、電線の間を充填剤で効率的に封止することができ、コネクタの水密性をより高めることができる。
【0023】
請求項4に記載のコネクタは、前記充填剤が、発泡性樹脂で構成されているので、膨らんだ充填剤の圧力により、前記カバーと前記ハウジングのうちの一方の壁部の先端部が十分に撓んで、前記カバーと前記ハウジングのうちの他方の溝部を構成する壁部と密接するようになり、カバーとハウジングの間を確実に水密に保持することができる。
【0024】
また、ハウジング及びカバーの成型時の寸法誤差により、ハウジングにカバーを組み付けた際に、カバーとハウジングの間の嵌合面に僅かな隙間が生ずるような場合でも、嵌合面からの充填剤の漏出を確実に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の第1の実施形態に係るコネクタを、図1乃至図7に基いて説明する。
【0026】
図1乃至図4に示すように、本発明のコネクタCは、電線1の端部に接続された端子金具2と、該端子金具2が収容された端子収容部3を備えたコネクタブロック31を収納したハウジング4と、該ハウジング4に組み付けられて、前記コネクタブロック31の開口を覆うカバー5とを備えている。
【0027】
前記ハウジング4は、絶縁性の合成樹脂で構成されて、筒状に形成されている。前記ハウジング4の内部には、端子収容部3を備えたコネクタブロック31が収納されるようになっている。
【0028】
前記ハウジング4は、周壁として筒状に形成された第1の壁部41を備えており、該第1の壁部41の内側には、第1の壁部41と同軸状で筒状の第2の壁部42が形成されている。そして、前記第2の壁部42の内側には、前記コネクタブロック31が収納されている。
【0029】
前記コネクタブロック31は、図2に示すように、端子収容プレート32の集合体をホルダ33に組み込んで構成される。前記コネクタブロック31は、前記端子収容プレート32により区画された端子収容部3としてのキャビティ34を複数備えており、該キャビティ34には、端子金具2が収容されるようになっている。
【0030】
前記キャビティ34は、図4に示すように、前記コネクタブロック31が前記ハウジング4に収納されることにより、前記ハウジング4内を上下方向に貫通するようになっている。前記キャビティ34内には、図5に示すように、雌型の端子金具2が収容されている。
【0031】
前記端子金具2は、導電性の金属板を打ち抜いて形成されており、電線接続部21と、電気接触部22を備えている。前記電線接続部21には、自動車の車体内に配線されたワイヤーハーネスを構成する電線1の端部がかしめられており、これにより、端子金具2が電線1の端部に接続固定されるとともに、電気的に接続されている。前記電気接触部22は、筒状に形成されており、図示しない雄型端子の挿入端を受け入れる雌型端子として構成されている。
【0032】
そして、前記キャビティ34内に雌型の端子金具2を収容したコネクタブロック31が、前記ハウジング4内に収納されることにより、複数の端子金具2を高密度に実装した多極のコネクタCが構成されるようになっている。前記コネクタCは、例えば、自動車のエンジンルーム内の電子機器に取り付けられたコネクタ(図示せず)と嵌合する。前記電子機器側のコネクタは、雄型の端子金具(図示せず)を備えており、該雄型の端子金具が前記コネクタCの雌型の端子金具2と接続することにより、電子機器に制御信号等が伝えられる。
【0033】
前記ハウジング4には、前記コネクタブロック31のキャビティ34の開口を覆うようにカバー5が組み付けられる。該カバー5は、絶縁性の合成樹脂で構成されて、箱状に形成されている。
【0034】
前記ハウジング4は、前記したように、周壁としての第1の壁部41と、その内側に第2の壁部42を備えている。図5に示すように、前記ハウジング4は、前記カバー5側の端部に、第1の壁部41と第2の壁部42が隣接して構成された断面コ字状の溝部43を有している。
【0035】
そして、図4に示すように、前記溝部43が、前記ハウジング4に収納されたコネクタブロック31の周囲を囲むように構成されている。なお、図5に示すように、前記溝部43を構成するハウジング4の第1の壁部41の先端面41aが、第2の壁部42の先端面42aより高い位置に形成されている。
【0036】
一方、前記ハウジング4に組み付けられるカバー5は、図5に示すように、周壁として筒状に形成された第1の壁部51と、該第1の壁部51の内側に、第1の壁部51と同軸状で筒状の第2の壁部52と、前記第1の壁部51と第2の壁部52の一方の開放端部を塞いだ底壁部53とを備えており、全体として、前記したように箱状に形成されている。
【0037】
また、前記カバー5は、前記ハウジング4側の端部に、前記第1の壁部51と第2の壁部52が隣接して構成された断面コ字状の溝部54を有している。
【0038】
図6に示すように、前記カバー5の第1の壁部51と第2の壁部52のハウジング4側の先端部には、それぞれ、段部51a、52aが形成されており、該段部51a、52aより先の部分には、壁部51、52の板厚を薄くした先端薄肉部51b、52bが形成されている。そして、前記ハウジング4にカバー5を組み付けたときに、カバー5の第1の壁部51の段部51aと第2の壁部52の段部52aが、それぞれ、ハウジング4の第1の壁部41の先端面41aと第2の壁部42の先端面42aに当接するとともに、前記カバー5の第1の壁部51の先端薄肉部51bと第2の壁部52の先端薄肉部52bが、前記ハウジング4の溝部43内に入り込むようになっている。その際、ハウジング4の溝部43内に入り込んだカバー5の第1の壁部51の先端薄肉部51bとハウジング4の溝部43を構成する第1の壁部41、及び、カバー5の第2の壁部52の先端薄肉部52bとハウジング4の溝部43を構成する第2の壁部42の間には、それぞれ、隙間x1、x2が形成されている。
【0039】
前記ハウジング4へのカバー5の組み付けにより、前記カバー5の第1の壁部51の先端薄肉部51bと第2の壁部52の先端薄肉部52bが、前記ハウジング4の溝部43内に入り込み、ハウジング4の端部の溝部43とカバー5の端部の溝部54が一体に構成されるようになっており、ハウジング4に収納されたコネクタブロック31の周囲には、充填剤が注入される充填用空間6が構成されるようになっている。そして、前記充填用空間6内には、発泡性の充填剤7(例えば、二液混合型の発泡ウレタン樹脂)が注入されるように構成されている。
【0040】
また、図7に示しように、前記充填用空間6内で膨らんだ充填剤7の液圧により、ハウジング4の溝部43内に入り込んだカバー5の第1の壁部51の先端薄肉部51bと第2の壁部52の先端薄肉部52bが、それぞれ、二点鎖線で示すように外側に向けて撓み、ハウジング4の第1の壁部41と第2の壁部42に密接するように構成されている。
【0041】
これにより、ハウジング4の溝部43内に入り込んだカバー5の第1の壁部51の先端薄肉部51bとハウジング4の溝部43を構成する第1の壁部41、及び、カバー5の第2の壁部52の先端薄肉部52bとハウジング4の溝部43を構成する第2の壁部42の間に形成された隙間x1、x2が塞がれるようになり、その後、所定時間が経過して前記充填剤7が硬化することにより、ハウジング4にカバー5を組み付けた状態で、カバー5とハウジング4の間を水密に保持できるようになっている。
【0042】
また、図6に示すように、カバー5の第1の壁部の段部51aと第2の壁部52の段部52aがそれぞれ当接するハウジング4の第1の壁部41の先端面41aと第2の壁部42の先端面42aは、ハウジング4にカバー5を組み付けた際のカバー5とハウジング4の間の嵌合面8a、8bを構成するようになっている。
【0043】
このため、図7に示すように、前記カバー5の第1の壁部51の先端薄肉部51bと第2の壁部52の先端薄肉部52bが、前記したように撓んで変形して、ハウジング4の第1の壁部41と第2の壁部42に密接することにより、カバー5とハウジング4の間の嵌合面8a、8bに僅かな隙間が生ずるような場合でも、カバー5とハウジング4の嵌合面8a、8bから充填剤7が漏出することを防ぐことができるようになっている。
【0044】
なお、前記カバー5の第1の壁部51の先端薄肉部51bと第2の壁部52の先端薄肉部52bの撓み量は、前記ハウジング4の溝部43内に入り込んだ前記先端薄肉部51b、52bの長さ及び肉厚と、前記充填剤7の液圧との関係で決まるものである。
【0045】
また、図3に示すように、前記ハウジング4に組み付けられたカバー5は、カバー5に突設されたフック55がハウジング4の係止部44と係合することで、ハウジング4へのカバー5の組み付け状態が保持されるようになっている。
【0046】
また、前記カバー5には、前記充填用空間6内の空気を排出するための排出孔56が形成されており、充填用空間6内に充填される充填剤7の充填動作を円滑にするようにしている。
【0047】
図3及び図4に示すように、コネクタCのハウジング4のコネクタブロック31に収容された端子金具2と接続された電線1の束は、前記ハウジング4にカバー5を組み付けた状態で、ハウジング4とカバー5により形成された筒体状の導出部9の導出孔9aを通ってコネクタCの外部に導き出されるようになっている。
【0048】
前記導出部9は、前記ハウジング4と前記カバー5の双方に設けられており、前記ハウジング4の周壁としての第1の壁部41に突設された支持板部45と、前記カバー5の周壁としての第1の壁部51に突設されたU字状部57から構成されている。前記ハウジング4の導出部としての支持板部45は、コネクタCの外部に導き出される電線1を支持するようになっており、前記カバー5の導出部としてのU字状部57は、前記電線1の周囲を覆うようになっている。
【0049】
図1に示すように、前記ハウジング4の支持板部45の内面45aは、前記ハウジング4の第1の壁部41の先端面41aと同じ高さの位置に形成されており、前記支持板部45から前記ハウジング4の溝部43に向けて段差45bが形成されるようになっている。
【0050】
また、前記カバー5のU字状部57には、前記充填剤7を注入するための注入孔58が形成されている。
【0051】
前記した構成のコネクタCを組み立てるには、まず、前記コネクタブロック31を、前記ハウジング4の第2の壁部42の内側に収納する。
【0052】
次に、前記コネクタブロック31のキャビティ34内に、電線1の端部に接続固定された端子金具2を収容する。
【0053】
次に、前記端子金具2と接続した電線1の束を前記ハウジング4の支持板部45で支持する。
【0054】
次に、前記ハウジング4に前記カバー5を組み付ける。
【0055】
その際、前記カバー5の第1の壁部51の段部51aと第2の壁部52の段部52aが、それぞれ、ハウジング4の第1の壁部41の先端面41aと第2の壁部42の先端面42aと当接するとともに、前記カバー5の第1の壁部51の先端薄肉部51bと第2の壁部52の先端薄肉部52bが、前記ハウジング4の溝部43内に入り込むようになっている。これにより、ハウジング4の端部の溝部43とカバー5の端部の溝部54が一体に構成されるようになり、ハウジング4のコネクタブロック31の周囲には、充填剤が注入される充填用空間6が構成される。
【0056】
また、前記カバー5のフック55が、前記ハウジング4の係止部44と係合して、ハウジング4へのカバー5の組み付け状態が保持される。さらに、前記カバー5のU字状部57により、前記導出された電線1の周囲が覆われる。
【0057】
次に、前記ハウジング4に組み付けたカバー5のU字状部57の注入孔58から、図示しない注入ノズルを介して発泡性の充填剤7(例えば、二液混合型の発泡ウレタン樹脂)を注入する。前記発泡性の充填剤7は、注入直後は流動性が高く、狭い隙間の間にも入り込みやすいが、所定時間が経過すると硬化する性質を有している。
【0058】
前記カバー5のU字状部57の注入孔58から注入された充填剤7は、前記U字状部57で覆われた電線1の束の周囲及び電線1の束の隙間を伝わって、前記電線1を支持する前記ハウジング4の支持板部45に向けて流れ、さらに、前記支持板部45の内面45a、及び支持板部45に形成された段差45bを経て、前記ハウジング4の溝部43内に流れ込む。そして、前記ハウジング4のコネクタブロック31の周囲に形成された充填用空間6内に、前記充填剤7が充填されるようになる。
【0059】
前記充填用空間6内に充填された充填剤7は、発泡性を有しているので、充填用空間6内で膨らむ。そして、図7に示すように、膨らんだ充填剤7の液圧により、ハウジング4の溝部43内に入り込んだカバー5の第1の壁部51の先端薄肉部51bと第2の壁部52の先端薄肉部52bが、二点鎖線で示すように外側に向けて撓み、ハウジング4の第1の壁部41と第2の壁部42に密接するようになる。これにより、ハウジング4の溝部43内に入り込んだカバー5の第1の壁部51の先端薄肉部51bとハウジング4の溝部43を構成する第1の壁部41、及び、前記カバー5の第2の壁部52の先端薄肉部52bとハウジング4の溝部43を構成する第2の壁部42の間に形成された隙間x1、x2が塞がれるようになる。
【0060】
その後、所定時間が経過すると、前記充填剤7が硬化し、ハウジング4にカバー5を組み付けた状態で、カバー5とハウジング4の間を水密に保持したコネクタCが得られる。
【0061】
なお、前記ハウジング4とカバー5により形成された導出部9においても、電線1の束の周囲及び電線1の束の隙間に充填された充填剤7が硬化するので、前記導出部9における水密も保持される。
【0062】
このように、本実施形態のコネクタCにおいては、ハウジング4が、カバー5側の端部に、第1の壁部41と第2の壁部42を隣接して構成した溝部43を有し、カバー5が、ハウジング4側の端部に、第1の壁部51と第2の壁部52を隣接して構成した溝部54を有し、カバー5のハウジング4への組み付けにより、カバー5の第1の壁部51の先端部51bと第2の壁部52の先端部52bが、ハウジング4の溝部43内に入り込んで、ハウジング4のコネクタブロック31の周囲に充填剤7が注入される充填用空間6を構成し、充填用空間6内に注入された充填剤7の液圧により、カバー5の第1の壁部51の先端薄肉部51bと第2の壁部52の先端薄肉部52bが撓んで、ハウジング4の溝部43を構成する第1の壁部41と第2の壁部42と密接するようにしたので、カバー5とハウジング4の間を水密に保持することができ、また、ハウジング4及びカバー5の成型時の寸法誤差により、ハウジング4にカバー5を組み付けた際に、カバー5とハウジング4の間の嵌合面8a、8bに僅かな隙間が生ずるような場合でも、前記嵌合面8a、8bからの充填剤7の漏出を防ぐことができる。
【0063】
そのために、前記嵌合面8a、8bから漏出した充填剤7が、ハウジング4の内部のコネクタブロック31内に入り込んで端子金具2の接触不良を引き起こしたり、ハウジング4の外部へ漏出してコネクタCの外観を汚損することを防ぐことができる。
【0064】
また、充填用空間6の内部に注入した充填剤7の液圧により、カバー5の第1の壁部51の先端薄肉部51bと第2の壁部52の先端薄肉部52bが撓んで、ハウジング4の第1の壁部41と第2の壁部42と密接するようにしたので、カバー5とハウジング4の間を水密に保持するためにパッキン等の専用の部材を設ける必要がなく、部品点数の増加を防止してコストの高騰を防止できる。
【0065】
本実施形態のコネクタCにおいては、充填用空間6の内部に注入した充填剤7が、発泡性樹脂で構成されているので、充填用空間6内で充填剤7が膨らむようになり、この膨らんだ充填剤7の液圧により、カバー5の第1の壁部51の先端薄肉部51bと第2の壁部52の先端薄肉部52bが十分に撓んで、ハウジング4の第1の壁部41と第2の壁部42と密接するようになり、カバー5とハウジング4の間を確実に水密に保持することができる。また、ハウジング4及びカバー5の成型時の寸法誤差により、ハウジング4にカバー5を組み付けた際に、カバー5とハウジング4の間の嵌合面8a、8bに僅かな隙間が生ずるような場合でも、嵌合面8a、8bからの充填剤7の漏出を確実に防ぐことができる。
【0066】
なお、前記した実施形態では、カバー5のハウジング4への組み付けにより、カバー5の第1の壁部51の先端部51bと第2の壁部52の先端部52bが、ハウジング4の溝部43内に入り込んで、充填用空間6を構成するようになっているが、ハウジング4の第1の壁部41の先端部と第2の壁部42の先端部がカバー5の溝部54内に入り込んで、充填用空間6を構成するようにしてもよい。
【0067】
即ち、充填剤7の液圧により、ハウジング4の壁部41、42の先端部が撓んで、カバーの壁部51、52と密接するようになれば、カバー5とハウジング4の間を確実に水密に保持することができ、また、ハウジング4及びカバー5の成型時の寸法誤差により、ハウジング4にカバー5を組み付けた際に、カバー5とハウジング4の間の嵌合面に僅かな隙間が生ずるような場合でも、前記嵌合面からの充填剤7の漏出を確実に防ぐことができる。
【0068】
また、前記充填剤7は、前記発泡ウレタン樹脂に限定されるものではなく、発泡性樹脂で注入後に硬化する性質を有するものであれば、いずれでもよい。
【0069】
図8乃至図10は、本発明の第2の実施形態に係るコネクタCを示したもので、前記した実施形態と同一部分には同一符号を付して、説明を省略する。本実施形態のコネクタCは、前記ハウジング4に組み付けられるカバー5が、外カバー510と内カバー520から構成されている。
【0070】
前記外カバー510は、前記ハウジング4の外縁に取り付けられるように形成されるとともに、周壁としての第1の壁部511を有している。そして、前記第1の壁部511が、前記ハウジング4の周壁としての第1の壁部41と係合するようになっている。
【0071】
即ち、前記外カバー510は、前記ハウジング4側の端部に、第1の壁部511を有している。図10に示すように、前記外カバー510の第1の壁部511のハウジング4側の先端部には、段部511aが形成されており、該段部511aより先の部分には、壁部の板厚を薄くした先端薄肉部511bが形成されている。
【0072】
そして、前記ハウジング4に外カバー510を組み付けたときに、前記外カバー510の第1の壁部511の段部511aが、ハウジング4の第1の壁部41の先端面41aと当接するとともに、前記外カバー510の第1の壁部511の先端薄肉部511bが、前記ハウジング4の溝部43内に入り込むようになっている。
【0073】
また、前記内カバー520は、前記外カバー510内に収容されて、前記ハウジング4内に収納されたコネクタブロック31のキャビティ34の開口を覆うように形成されるとともに、前記ハウジング4側の端部に、第2の壁部521を有している。
【0074】
図10に示すように、前記内カバー520の第2の壁部521のハウジング4側の先端部には、段部521aが形成されており、該段部521aより先の部分には、壁部の板厚を薄くした先端薄肉部521bが形成されている。
【0075】
そして、前記ハウジング4に内カバー520を組み付けたときに、前記内カバー520の第2の壁部521の段部521aが、ハウジング4の第2の壁部42の先端面42aと当接するとともに、前記内カバー520の第2の壁部521の先端薄肉部521bが、前記ハウジング4の溝部43内に入り込むようになっている。
【0076】
また、前記外カバー510及び前記内カバー520をハウジング4に組み付けたときに、外カバー510と内カバー520の間には、充填剤7が注入される溝部541が形成されるようになり、外カバー510及び内カバー520のハウジング4への組み付けにより、ハウジング4の端部の溝部43と外カバー510及び内カバー520による溝部541が一体に構成されて、ハウジング4のコネクタブロック31の周囲には、充填剤7が注入される充填用空間6が構成される。そして、前記充填用空間6には、発泡性の充填剤7が注入されるようになっている。
【0077】
また、前記充填用空間6内で膨らんだ充填剤7の液圧により、ハウジング4の溝部43内に入り込んだ外カバー510の第1の壁部511の先端薄肉部511bと、内カバー520の第2の壁部521の先端薄肉部521bが、それぞれ、外側に向けて撓み、外カバー510の第1の壁部511の先端薄肉部511bがハウジング4の第1の壁部41に密接するとともに、内カバー520の第2の壁部521の先端薄肉部521bがハウジング4の第2の壁部42に密接するように構成されている。
【0078】
これにより、ハウジング4の溝部43内に入り込んだ外カバー510の第1の壁部511の先端薄肉部511bとハウジング4の溝部43を構成する第1の壁部41、及び、内カバー520の第2の壁部521の先端薄肉部521bとハウジング4の溝部43を構成する第2の壁部42との間に形成された隙間が塞がれるようになり、所定時間が経過して前記充填剤7が硬化することにより、ハウジング4に外カバー510及び内カバー520を組み付けた状態で、外カバー510及び内カバー520とハウジング4の間を水密に保持できるようになっている。
【0079】
また、前記外カバー510の第1の壁部511の先端薄肉部511bと、内カバー520の第2の壁部521の先端薄肉部521bが、前記したように撓んで変形して、ハウジング4の第1の壁部41と第2の壁部42に密接することにより、外カバー510及び内カバー520とハウジング4の間の嵌合面8a、8bに僅かな隙間が生ずるような場合でも、前記嵌合面8a、8bから充填剤7が漏出することを防ぐことができるようになっている。
【0080】
また、前記内カバー520には、前記端子金具2に取り付けられた電線1を通す通孔522が設けられている。
【0081】
即ち、内カバー520の外カバー510側の端部には、長孔形状の通孔522が設けられている。前記内カバー520の通孔522の開口面積は、前記ハウジング4側の端部の開口面積より小さく形成されており、前記内カバー520は、前記ハウジング4側から前記外カバー5側に向けてすぼまるように形成された段部523を備えている。そして、前記ハウジング4のコネクタブロック31に収容された端子金具2に接続された電線1の束が、図9に示すように、前記内カバー520の通孔522を通って内カバー520の外部に引き出されるようになっている。
【0082】
また、前記した状態で、前記充填剤7が、前記内カバー520を完全に覆う位置まで充填されるようになっている。
【0083】
また、前記引き出された電線1の束は、前記ハウジング4に外カバー510を組み付けた状態で、ハウジング4と外カバー510により形成された筒体状の導出部9の導出孔9aを通ってコネクタCの外部に導き出されるようになっている。なお、前記内カバー520の前記導出部9側の端部524は、開放されており、前記内カバー520から引き出された電線1の束が、前記導出部9に向けて案内されるようになっている。
【0084】
前記したように、前記内カバー520に、前記端子金具2に取り付けられた電線1を通す通孔522を設け、前記充填剤7が、前記内カバー520を完全に覆う位置まで注入されるので、電線1が内カバー520の通孔522部分を通る際に、電線1がはらけて電線1の間に隙間が生じるようになる(図9参照)。この状態で、充填剤7が内カバー520を完全に覆う位置まで注入されるので、前記内カバー520の通孔522部分を通る電線1の間の隙間にも充填剤7が入り込むようになり、そのために、電線1の間を充填剤7で効率的に封止することができるようになる。
【0085】
なお、前記充填剤7は、所定時間が経過すると硬化するので、充填剤7が前記内カバー520の通孔522部分の電線1の間の隙間からハウジング4のコネクタブロック31側に入り込むおそれはない。
【0086】
前記した構成のコネクタCを組み立てるには、ハウジング4のコネクタブロック31に端子金具2を収容するまでは、前記した第1の実施形態と同じである。この状態で、ハウジング4に内カバー520を組み付けるとともに、内カバー520の通孔522を通って、前記端子金具2に接続された電線1の束を内カバー520の外へ引き出す。
【0087】
次に、ハウジング4に外カバー510を組み付ける。
【0088】
これにより、外カバー510の第1の壁部511の先端薄肉部511bと、内カバー520の第2の壁部521の先端薄肉部521bが、ハウジング4の溝部43内に入り込むようになり、外カバー510及び内カバー520のハウジング4への組み付けにより、外カバー510と内カバー520の間には、充填剤7が注入される溝部541が形成されるようになる。そして、前記溝部541が、ハウジング4の端部の溝部43と一体に構成されて、ハウジング4のコネクタブロック31の周囲には、充填剤7が注入される充填用空間6が構成される。
【0089】
この状態で、外カバー510の注入孔58から発泡性の充填剤7(例えば発泡ウレタン樹脂)を注入すると、充填剤7は、前記充填用空間6内に充填されるようになる。
【0090】
そして、前記充填用空間6内で膨らんだ充填剤7の液圧により、外カバー510の第1の壁部511の先端薄肉部511bと内カバー520の第2の壁部521の先端薄肉部521bが外側に向けて撓み、外カバー510の第1の壁部511がハウジング4の第1の壁部41に密接するとともに、内カバー520の第2の壁部521がハウジング4の第2の壁部42に密接する。これにより、外カバー510の第1の壁部511の先端薄肉部511bとハウジング4の溝部43を構成する第1の壁部41、及び、内カバー520の第2の壁部521の先端薄肉部521bとハウジング4の溝部43を構成する第2の壁部42の間に形成された隙間が塞がれたコネクタCが得られる。
【0091】
また、前記充填用空間6に注入された充填剤7が、内カバー520を完全に覆う位置まで注入されることにより、前記通孔522部分を挿通する際に電線1の束がばらけて生じた電線1の間の隙間にも、充填剤7が入り込むようになり、電線1の間を充填剤7で効率的に封止したコネクタCが得られる。
【0092】
このように、本実施形態のコネクタCにおいては、カバー5が、ハウジング4の外縁に取り付けられるとともに、第1の壁部511を有する外カバー510と、外カバー510内に収容されてコネクタブロック31の開口を覆うとともに、第2の壁部521を有する内カバー520とを備え、内カバー520に、端子金具2に取り付けられた電線1を通す通孔522を設け、充填剤7が、内カバー520を完全に覆う位置まで注入されるので、外カバー510及び内カバー520とハウジング4の間を水密に保持することができ、また、外カバー510及び内カバー520とハウジング4の間の嵌合面8a、8bに僅かな隙間が生ずるような場合でも、嵌合面8a、8bからの充填剤7の漏出を防ぐことができる。
【0093】
また、内カバー520に、端子金具2に取り付けられた電線1を通す通孔522を設け、充填剤7が、内カバー520を完全に覆う位置まで注入されるので、電線1が内カバー520の通孔522を通る際に電線1がはらけて電線1の間に隙間が生じるようになり、この状態で、充填剤7が内カバー520を完全に覆う位置まで注入されるので、電線1の間の隙間にも充填剤7が入り込むようになり、そのために、電線1の間を充填剤7で効率的に封止することができ、コネクタCの水密性をより高めることができる。
【0094】
なお、前記した実施形態では、外カバー510及び内カバー520のハウジング4への組み付けにより、外カバー510の第1の壁部511の先端薄肉部511bがハウジング4の溝部43内に入り込む(即ち、外カバー510の第1の壁部511の先端薄肉部511bがハウジング4の第1の壁部41の内側に入り込む)とともに、内カバー520の第2の壁部521の先端薄肉部521bがハウジング4の溝部43内に入り込む(即ち、内カバー520の第2の壁部521の先端薄肉部521bがハウジング4の第2の壁部42の内側に入り込む)ようなっているが、ハウジング4の第1の壁部41の先端部と第2の壁部42の先端部が、それぞれ、外カバー510の第1の壁部511と内カバー520の第2の壁部521の内側に入り込んで、充填用空間6を構成するようにしてもよい。
【0095】
即ち、充填剤7の液圧により、ハウジング4の壁部41、42の先端部がそれぞれ外側に撓んで、外カバー510の第1の壁部511と内カバー520の第2の壁部521と密接するようになれば、外カバー510及び内カバー520とハウジング4の間を確実に水密に保持することができ、また、ハウジング4及び外カバー510、内カバー520の成型時の寸法誤差により、ハウジング4に外カバー510及び内カバー520を組み付けた際に、外カバー510及び内カバー520とハウジング4の間の嵌合面に僅かな隙間が生ずるような場合でも、前記嵌合面からの充填剤7の漏出を確実に防ぐことができる。
【0096】
図11及び図12は、本発明の第3の実施形態に係るコネクタCを示したもので、本実施形態のコネクタCは、前記した第1の実施形態の構成に加えて、コネクタCの外部に導き出される電線1を押さえ付ける電線押さえ部10a、10bを有している。
【0097】
即ち、前記したように、コネクタCのハウジング4のコネクタブロック31に収容された端子金具2と接続された電線1の束は、ハウジング4にカバー5を組み付けた状態で、ハウジング4とカバー5により形成された筒体状の導出部9の導出孔9aを通ってコネクタCの外部に導き出されるようになっている。
【0098】
前記導出部9は、前記ハウジング4と前記カバー5の双方に設けられており、前記ハウジング4の周壁としての第1の壁部41に突設された支持板部45と、前記カバー5の周壁としての第1の壁部51に突設されたU字状部57から構成されている。前記導出部9の内部には、前記電線1をコネクタCの外部に導き出す導出孔9aが形成されている。
【0099】
また、前記導出部9を構成する前記ハウジング4の支持板部45に面した前記ハウジング4の第2の壁部42には、前記導き出される電線1を押さえ付けるように前記導出孔9aの内側に向かって、電線押さえ部10aが立設されている。また、前記カバー5のU字状部57の内面であって、前記ハウジング4の電線押さえ部10aと対応した位置にも、前記導き出される電線1を押さえ付けるように前記導出孔9aの内側に向かって、電線押さえ部10bが立設されている。
【0100】
そして、ハウジング4にカバー5を組み付けた状態で、ハウジング4のコネクタブロック31に収容された端子金具2と接続した電線1の束が、前記ハウジング4とカバー5の電線押さえ部10a、10bにより、上下から押さえ付けられて束ねられ、この束ねられた電線1の束が、前記導出部9の導出孔9aを通ってコネクタCの外部に導き出されるようになっている。
【0101】
ここで、前記コネクタCの外部に導出される電線1の束は、前記したように、一度前記電線押さえ部10a、10bで押さえ付けられて束ねられてから導出部9の導出孔9aを通ってコネクタCの外部に導き出されるので、前記電線1の束は、前記導出部9を通る際には、前記電線押さえ部10a、10bで押さえ付けられた状態からややばらけた状態となっている。このため、前記導出部9を通る電線1の束は、電線1の間に隙間が生じた状態となっている。
【0102】
このような状態で、前記導出部9に形成された注入孔58から、前記導出孔9a内に充填剤7が注入されるようになっている。このため、前記充填剤7が、前記導出部9内をややばらけた状態で通る電線1の間の隙間に容易に入り込むようになり、電線1の間を充填剤7で効率的に封止することができるようになる。
【0103】
また、前記ハウジング4の第2の壁部42に電線押さえ部10aが立設されているので、前記導出部9の注入孔58から注入されて前記ハウジング4の溝部43内に流れ込む充填剤7が、前記ハウジング4の第2の壁部42の内側に収納されたコネクタブロック31の方へ流れ込むことを防ぐことができ、充填剤7による端子金具2の接触不良を防ぐことができる。
【0104】
このように、本実施形態のコネクタCにおいては、ハウジング4とカバー5の双方に、5カバーをハウジング4に組み付けた状態で端子金具2に取り付けられた電線1を外部に導き出す導出孔9aを形成する導出部9を設け、ハウジング4の導出部45とカバーの導出部57に、導出孔9aの内側に向かって立設して電線1を押さえ付ける電線押さえ部10a、10bを設け、導出孔9a内に、充填剤7を注入したので、前記したようにカバー5とハウジング4の間を水密に保持することができるとともに、カバー5とハウジング4の間の嵌合面に僅かな隙間が生ずるような場合でも、前記嵌合面からの充填剤7の漏出を防ぐことができるという効果に加えて、前記電線押さえ部10a、10bで押さえ付けられた電線1が前記導出部9の導出孔9aを通って外部に導き出される際に、電線1がばらけて電線1の間に隙間が生じるようになり、この状態で、前記導出孔内9aに充填剤7を注入したので、前記電線1の間の隙間にも充填剤7が入り込むようになり、そのために、電線1の間を充填剤7で効率的に封止することができ、コネクタCの水密性をより高めることができる。
【0105】
なお、前記電線押さえ部10a、10bは、前記ハウジング4及びカバー5と一体に形成してもよく、また、別体に形成してもよい。前記ハウジング4及びカバー5と別体に形成する場合には、前記電線押さえ部10a、10bをゴム等の弾性部材で構成するようにすれば、電線押さえ部10a、10bで押さえ付けられて束ねられる電線1の径が異なる場合でも、電線押さえ部10a、10bの弾性変形により、前記電線1の径の違いを吸収することができる。このため、電線押さえ部10a、10bで押さえ付けられた電線1と電線押さえ部10a、10bの間に隙間が形成されることを防ぐことができ、そのために、前記隙間からハウジング4のコネクタブロック31の方に充填剤7が流れ込むことを防ぐことができ、よって、充填剤7による端子金具2の接触不良を防ぐことができる。
【0106】
また、前記電線押さえ部10a、10bは、前記ハウジング4と前記カバー5の両方に設けられている必要はなく、前記電線1を押さえ付けることができれば、前記ハウジング4と前記カバー5のいずれか一方に設けられていれば、十分である。
【0107】
また、前記した実施形態では、前記第1の実施形態のコネクタCに電線押さえ部10a、10bを設けた場合を説明したが、前記第2の実施形態のコネクタCに電線押さえ部10a、10bを設けるようにしてもよい。この場合、前記カバー5の電線押さえ部10bは、外カバー510又は内カバー520のいずれかに設けるようにすればよい。
【0108】
なお、前記した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るコネクタを示す分解斜視図である。
【図2】コネクタに収納されるコネクタブロックを示す分解斜視図である。
【図3】コネクタ全体を示す斜視図である。
【図4】コネクタの組立状態を説明する図3のI−I線横断面図である。
【図5】コネクタの組立状態を説明する図3のII−II線縦断面図である。
【図6】図5のA部の拡大説明図で、充填剤を注入する前の状態を示す図である。
【図7】図5のA部の拡大説明図で、充填剤を注入した後の状態を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るコネクタを示す分解斜視図である。
【図9】コネクタのハウジングに外カバーを組み付ける前の状態を示す斜視図である。
【図10】コネクタの組立状態を説明する縦断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るコネクタを示すもので、特にコネクタのハウジングを示す斜視図である。
【図12】コネクタの組立状態を説明する横断面図である。
【符号の説明】
【0110】
C コネクタ
1 電線
2 端子金具
21 電線接続部
22 電気接触部
3 端子収容部
31 コネクタブロック
34 キャビティ
4 ハウジング
41 第1の壁部
41a 先端面
42 第2の壁部
42a 先端面
43 溝部
45 支持板部
45a 内面
45b 段差
5 カバー
51 第1の壁部
51a 段部
51b 先端薄肉部
52 第2の壁部
52a 段部
52b 先端薄肉部
54 溝部
56 排出孔
57 U字状部
58 注入孔
510 外カバー
511 第1の壁部
511b 先端薄肉部
520 内カバー
521 第2の壁部
521b 先端薄肉部
522 通孔
541 溝部
6 充填用空間
7 充填剤
8a、8b 嵌合面
9 導出部
9a 導出孔
10a、10b 電線押さえ部
x1、x2 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具を収容する端子収容部を備えたコネクタブロックを収納するハウジングと、
該ハウジングに組み付けられて、前記コネクタブロックの開口を覆うカバーとを備えたコネクタにおいて、
前記ハウジングが、前記カバー側の端部に、第1の壁部と第2の壁部を隣接して構成した溝部を有し、
前記カバーが、前記ハウジング側の端部に、第1の壁部と第2の壁部を隣接して構成した溝部を有し、
前記カバーの前記ハウジングへの組み付けにより、前記カバーと前記ハウジングのうちの一方の第1の壁部と第2の壁部の先端部が、前記カバーと前記ハウジングのうちの他方の前記溝部内に入り込んで、前記ハウジングのコネクタブロックの周囲に充填剤が注入される充填用空間を構成し、
前記充填用空間内に注入された充填剤の圧力により、前記一方の壁部の先端部が撓んで、前記他方の溝部を構成する壁部と密接するようにしたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記カバーが、
前記ハウジングの外縁に取り付けられるとともに、前記第1の壁部を有する外カバーと、
該外カバー内に収容されて前記コネクタブロックの開口を覆うとともに、前記第2の壁部を有する内カバーとを備え、
該内カバーに、前記端子金具に取り付けられた電線を通す通孔を設け、
前記充填剤が、前記内カバーを完全に覆う位置まで注入されることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングと前記カバーの双方に、前記カバーを前記ハウジングに組み付けた状態で前記端子金具に取り付けられた電線を外部に導き出す導出孔を形成する導出部を設け、
前記ハウジングの導出部と前記カバーの導出部の少なくとも一方に、前記導出孔の内側に向かって立設して前記電線を押さえ付ける電線押さえ部を設け、
前記導出孔内に、前記充填剤を注入したことを特徴とする請求項1又は2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記充填剤が、発泡性樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−66687(P2007−66687A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250970(P2005−250970)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】