説明

コネクタ

【課題】相手方ハウジングを要することなく、端子同士の嵌合状態を保持し、かつ、コネクタハウジング内への端子の挿入不良を確実に検知する。
【解決手段】互いに嵌合可能な第1端子10及び第2端子20と、コネクタハウジング30とを備える。コネクタハウジング30は、第1端子挿入口32aと、第2端子挿入口32bとを有し、さらに半挿入検知部34を有する。半挿入検知部34は、第1端子10の挿入が不完全である場合、第2端子挿入口32b内に臨んで前記第1端子10と前記第2端子20との嵌合を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の端末等に装着される端子と、この端子を保持するコネクタハウジングとを備え、かつ、当該コネクタハウジングへの前記端子の挿入の良否を検知する機能をもつコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
端子及びその端子を保持するコネクタハウジングを備えたコネクタにおいては、当該コネクタハウジング内の正規の位置まで前記端子が完全に挿入されることが重要である。当該挿入が不完全なまま当該コネクタが使用されることは、接続不良等の要因になる。
【0003】
従来、前記のような挿入の良否を検知する機能を備えたコネクタとして、特許文献1に記載されるものが知られている。このコネクタは、雌端子と、この雌端子を保持するコネクタハウジングと、このコネクタハウジングに装着されるリテーナとを備える。前記コネクタハウジングは、前記雌端子が挿入可能な端子挿入口と、その挿入された雌端子を係止するためのランスとを備える。前記リテーナは、前記ランスとは別に前記雌端子を係止(二重係止)するための係止部を有する。この係止部は、前記コネクタハウジングに前記雌端子が挿入される過程で当該雌端子との接触によりコネクタハウジングの外側に撓み変形し、当該雌端子が正規の位置(前記ランスに係止される位置)まで挿入された時点で元の位置に弾性復帰するとともに当該雌端子を二重係止する。
【0004】
このコネクタは、相手方コネクタと結合される。相手方コネクタは、雄端子と、この雄端子を保持する相手方ハウジングとを有する。前記コネクタ内で前記雌端子が完全に挿入されているときは、そのコネクタの雌端子が前記相手方コネクタの雄端子と嵌合可能であるとともに、前記コネクタハウジングが前記相手方ハウジングと嵌合可能である。しかし、前記雌端子の挿入が不完全である場合は、前記係止部が前記コネクタハウジングからその外側に突出することにより、当該コネクタハウジングと前記相手方ハウジングとの嵌合を阻止する。これにより、作業者は前記雌端子の挿入が不完全であることを認識することができる。
【特許文献1】特開2001−203025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載されるコネクタは、そのコネクタハウジングとは別に、当該コネクタの雌端子と嵌合する雄端子を保持するための相手方ハウジングを必要とする。このことは、接続装置全体の部品点数を増やし、その占有スペースを大きくする。そして、前記相手方ハウジングは、前記コネクタハウジングと嵌合することにより、前記雌端子と前記雄端子との嵌合状態を保持する機能に加え、前記係止部との協働により前記雌端子の挿入不良を検知する機能を有するものであるから、その省略は困難である。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、相手方ハウジングを要することなく、端子同士の嵌合状態を保持し、かつ、コネクタハウジング内への端子の挿入不良を確実に検知することが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、第1端子と、この第1端子と嵌合可能な第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子を両端子が嵌合する状態で保持するためのコネクタハウジングとを備えたコネクタであって、前記コネクタハウジングは、当該コネクタハウジング内への前記第1端子の挿入を許容する第1端子挿入口と、この第1端子挿入口から所定の係止位置まで挿入された第1端子を係止するための第1端子係止部と、この第1端子係止部に係止された第1端子に前記第2端子が嵌合する位置まで当該第2端子の挿入を許容する第2端子挿入口と、前記第1端子が前記第1端子挿入口に挿入されかつ前記係止位置に至る前の半挿入位置にあることを検知するための半挿入検知部とを有し、この半挿入検知部は、前記第1端子が前記半挿入位置にあるときはこの第1端子に対して前記第2端子の嵌合を阻止するように前記第2端子挿入口に臨む嵌合阻止位置に位置し、前記第1端子が前記係止位置にあるときはこの第1端子に対して前記第2端子の嵌合を許容する嵌合許容位置に位置するように、前記第1端子との接触により変位するものである。
【0008】
このコネクタでは、単一のコネクタハウジングのみで、互いに嵌合する第1端子及び第2端子の保持と、当該コネクタハウジング内への前記第1端子の挿入の良否の検知とを行うことが可能である。
【0009】
前記第1端子は、前記コネクタハウジングにその第1端子挿入口から挿入され、所定の係止位置まで到達すると、この係止位置で前記コネクタハウジングの第1端子係止部により係止される。そして、同じコネクタハウジングの第2端子挿入口から第2端子が挿入され、この第2端子が前記第1端子に嵌合されることにより、これらの端子が互いに嵌合した状態で前記コネクタハウジング内に保持される。
【0010】
しかし、前記コネクタハウジングへの前記第1端子の挿入が不完全である場合、つまり、当該第1端子が前記係止位置に至る手前の半挿入位置にとどまっている場合には、当該コネクタハウジングの半挿入検知部が嵌合阻止位置、すなわち、前記第2端子挿入口に臨んでこの第2端子挿入口からの前記第1端子への第2端子の嵌合を阻止する位置に変位するので、当該第2端子は当該第1端子と嵌合することができない。このことは、前記第1端子が係止位置まで完全挿入されていないにもかかわらず当該第1端子と前記第2端子との嵌合作業が進められることを防ぐとともに、作業者に当該挿入の不良を報知することができる。
【0011】
より具体的には、前記コネクタハウジングが、前記第1端子挿入口及び前記第2端子挿入口を有するコネクタハウジング本体を有し、前記半挿入検知部が、前記第1端子係止部を有するとともに、前記コネクタハウジング本体に対して弾性変位可能となるように当該コネクタハウジング本体に連結され、この半挿入検知部に外力が加えられていない状態では前記嵌合許容位置にあり、前記第1端子が前記半挿入位置にあるときは当該第1端子との接触により前記嵌合阻止位置まで弾性変位し、当該第1端子が前記係止位置に達したときにはその弾性復帰力により前記嵌合許容位置に戻るものが、好適である。
【0012】
このコネクタでは、前記半挿入検知部に前記第1端子係止部が設けられることにより、コネクタハウジングの構造がより簡素化される。しかも、当該半挿入検知部の弾性変位及びその弾性復帰力を利用して、前記第1端子係止部と前記第1端子との係合と、当該第1端子の挿入不良の検知との双方を実現することができる。
【0013】
例えば、前記第1端子が前記半挿入検知部に向かって突出する被係止部を有し、前記第1端子係止部が、前記被係止部が嵌入可能な係止孔を有し、前記被係止部が、前記第1端子が前記半挿入位置にあるときに前記半挿入検知部を押圧してこの半挿入検知部を前記嵌合阻止位置へ変位させる形状を有するものであれば、当該半挿入検知部が前記第1端子に突設されるだけの簡素な構造で、前記第1端子係止部による前記第1端子の係止と、前記半挿入検知部の押圧によりこの半挿入検知部を嵌合阻止位置に変位させることによる半挿入検知との双方を実現することができる。
【0014】
前記半挿入検知部の弾性変位の態様としては、この半挿入検知部が前記第1端子挿入口と前記第2端子挿入口との間にある支点を中心として揺動可能となるように前記コネクタハウジング本体に連結され、前記被係止部が、前記第1端子が前記半挿入位置にあるときに前記半挿入検知部をコネクタハウジングの外側に押圧することにより、前記支点を挟んで前記被係止部と反対側の半挿入検知部の部分を前記第2端子挿入口内の嵌合阻止位置に変位させるものが、好適である。
【0015】
この構造によれば、前記コネクタハウジング内への前記第1端子の挿入時に当該第1端子の被係止部が前記半挿入検知部をコネクタハウジングの外側に押圧することが、当該半挿入検知部の(支点を挟んで)反対側の部分を内向きに弾性変位させて、当該半挿入検知部が前記第1端子と前記第2端子との嵌合を阻止することを可能にする。
【0016】
また、前記コネクタハウジングは、このコネクタハウジング内の係止位置に係止された第1端子に嵌合される第2端子を係止するための第2端子係止部を有するのが、より好ましい。この第2端子係止部は、両端子の嵌合状態の保持をより確実にする。
【0017】
本発明に係るコネクタは、いわゆるジョイントコネクタにも好適である。すなわち前記第2端子を複数個備え、前記コネクタハウジングが、前記各第2端子がそれぞれ挿入可能な複数の第2端子挿入口を有し、前記第1端子が、前記各第2端子がそれぞれ嵌合可能な複数の端子嵌合部を有し、これらの端子嵌合部に嵌合する第2端子同士を短絡させるジョイント端子であってもよい。このようなジョイント端子である第1端子が予めコネクタハウジング内に係止された状態で、当該コネクタハウジングの各第2端子挿入口に各第2端子が挿入されて前記第1端子の各端子嵌合部に嵌合されることにより、単一のコネクタハウジング内で前記第1端子と第2端子との電気的接続に加えて第2端子同士の短絡も実現される。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、相手方ハウジングを要することなく、第1端子と第2端子とに共通のコネクタハウジングを用いながら、当該コネクタハウジング内への第1端子の挿入の良否を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1に示されるように、この実施の形態に係るコネクタは、電線Dの端末に装着される第1端子10と、複数本(図例では3本)の電線Dの端末にそれぞれ装着される複数の第2端子20と、これらの端子10,20に共通のコネクタハウジング30と、係止部材であるリテーナ40とを備える。
【0021】
前記第1端子10は、雌型のジョイント端子である。具体的には、図2にも示されるように、前記各第2端子20とそれぞれ嵌合可能な端子嵌合部12と、前記電線Dに圧着される電線圧着部14とを有する。これらは単一の金属板の加工により形成される。この第1端子10は、前記端子嵌合部12に嵌合する第2端子20を前記電線Dに電気的に接続するとともに、当該第2端子20同士を短絡する機能を有する。
【0022】
前記端子嵌合部12は、偏平な角筒状の枠体16と、この枠体16の内側に配される複数の弾性接触片17と、被係止部18とを有する。
【0023】
各弾性接触片17は、前記各第2端子20に対応して設けられ、前記枠体16の幅方向に間隔を置いて並んでいる。各弾性接触片17は、前記枠体16の上側壁の前端(図2では手前側端)から前方に延びる短冊状片が後ろ向きに折り返されて前記枠体16内に収められたもので、当該枠体16の高さ方向に弾性変形(撓み変形)可能な形状を有する。これに対し、前記枠体16の下側壁では、前記各弾性接触片17と対向する位置にそれぞれ電気接触部16aが形成されている。各電気接触部16aは、前記下側壁の上面から僅かに隆起し、後述のように前記弾性接触片17との間で前記第2端子20を挟持する。
【0024】
前記被係止部18は、前記枠体16の上側壁から上向きに突出する。この被係止部18は、後述のように、前記コネクタハウジング30側に係止されるとともに、第1端子10の挿入不良の検知に寄与する。
【0025】
前記電線圧着部14は、前記端子嵌合部12の枠体16の下側壁の後端から後方に延び、その枠体16に近い側から順に左右一対の導体バレル14a及び左右一対のインシュレーションバレル14bを有する。前記導体バレル14aは、電線Dの端末において露出する導体を抱き込むように当該導体に圧着され、これにより当該導体と第1端子10とを電気的に接続する。前記インシュレーションバレル14bは、前記導体の露出部分よりも後方の位置で前記電線Dの絶縁被覆を抱き込むように当該絶縁被覆に圧着される。
【0026】
前記各第2端子20は、前記第1端子10と嵌合可能な雄型端子であり、当該第1端子10の端子嵌合部12と嵌合可能な端子嵌合部22と、前記電線Dに圧着される電線圧着部24とを有し、これらが単一の金属板の加工により形成されている。
【0027】
図3に示されるように、前記端子嵌合部22は、前記金属板が複数層に折りたたまれることにより形成されたタブであって、前記端子嵌合部12のうち対応する弾性接触片17と電気接触部16aとの間に嵌入可能な厚みを有する。すなわち、この端子嵌合部22は、前記弾性接触片17を外向き(図では上向き)に撓み変形させながら当該弾性接触片17と前記電気接触部16aとの間に割込み可能であって、かつ、その割込み状態(嵌入状態)で前記弾性接触片17のばね力により前記電気接触部16aに所定の圧力で押付けられることが可能な厚みを有する。
【0028】
なお、前記端子嵌合部22は、その本体部分から左右両外側に突出するスタビライザ26を有する。これらのスタビライザ26は、前記端子嵌合部22が天地逆の姿勢で前記コネクタハウジング30に挿入されるのを防ぐためのものである。
【0029】
前記電線圧着部24は、前記電線圧着部14と同様に、前記端子嵌合部22の後端から後方に延び、その端子嵌合部22に近い側から順に左右一対の導体バレル24a及び左右一対のインシュレーションバレル24bを有する。
【0030】
なお、図1〜図3では便宜上、前記各バレル14a,14b,24a,24bが電線Dに圧着される前の状態が描かれている。
【0031】
前記コネクタハウジング30は、その全体が合成樹脂により一体に成型されたもので、ハウジング本体32と、第1端子係止部34eを有する半挿入検知部34と、左右一対の連結部36とを有している。
【0032】
前記ハウジング本体32は、前後に開口する略角筒状をなす。詳しくは、図5〜図7にも示されるように、その前後方向中間位置を挟んで一方の側に、前記第1端子10が挿入可能な第1端子挿入口32aが形成され、他方の側に、前記各第2端子20が個別に挿入可能な第2端子挿入口32b(図4)が形成されている。
【0033】
前記ハウジング本体32の上側壁にはこれを壁厚方向に貫通する窓33が形成され、この窓33の中に前記半挿入検知部34が設けられている。この半挿入検知部34は、平面視矩形状の本体と、その中央から後方に延びる前記第1端子係止部34eとを有する略T字状をなしている。
【0034】
前記両連結部36は、前記半挿入検知部34と前記ハウジング本体32とを連結する。これらの連結部36は、前記第1端子係止部34eの左右に位置し、前記半挿入検知部34の本体部分の左右後端と、前記ハウジング本体32における窓33の後側周縁とにつながる。
【0035】
前記半挿入検知部34は、前記両連結部36とつながる部位を支点35として、上下方向に揺動するように弾性変位が可能である。従って、この半挿入検知部34の後部である第1端子係止部34eが図6(a)(b)に示すようにハウジング本体32の外側(同図では上側)に変位すると、前記支点35を挟んで前記第1端子係止部34eと反対側の端部すなわち前端部34bはハウジング本体32の内側(同図では下側)に変位する。
【0036】
前記第1端子係止部34eには、これを板厚方向に貫通する係止穴34aが設けられる。この係止穴34aには、前記第1端子10の被係止部18が嵌入可能であり、その嵌入が行われる位置が係止位置、すなわち、当該第1端子10がコネクタハウジング30側に係止される位置に相当する。
【0037】
前記半挿入検知部34は、前記第1端子10が前記係止位置よりも手前の半挿入位置にとどまっていることを検知するためのものである。具体的に、この半挿入検知部34は、前記第1端子10が前記第1端子挿入口32a内に挿入されてから前記係止位置に至るまでの間は、当該半挿入検知部34の第1端子係止部34eが当該第1端子10の被係止部18により内側から押圧されることによって、前記支点35回りに揺動変位する。この変位が後述のように第1端子10の半挿入検知に寄与する。
【0038】
なお、前記第1端子係止部34eの後端には、この第1端子係止部34eの内側に前記被係止部18がもぐり込むのを助けるためのテーパー面34cが形成されている。
【0039】
前記各第2端子挿入口32bは、図4にも示すように、それぞれの第2端子20がそのスタビライザ26も含めて挿入可能な形状であって、かつ、その挿入される第2端子20を両端子嵌合部12,22同士が嵌合する嵌合位置へ案内する形状を有する。
【0040】
前記ハウジング本体32の底壁には、前記各第2端子挿入口32bに臨む位置にランス38が形成される。これらのランス38は、対応する第2端子20を前記嵌合位置で係止する(具体的には図6及び図7に示されるように第2端子20の端子嵌合部22の底面と係合する)第2端子係止部として機能する。
【0041】
前記リテーナ40は、前記嵌合位置にある第2端子20をさらに係止(二重係止)するためのものである。このリテーナ40は、底壁42と、この底壁42の左右両側から上方に立ち上がる側壁44とを一体に有し、図5〜図7に示される仮係止位置と、それよりもハウジング本体32の内側寄りの本係止位置とに切換可能となるように、前記ハウジング本体32に装着される。前記仮係止位置は、前記底壁42が前記ハウジング本体32の底壁に沈み込んで前記第2端子挿入口32b内への前記第2端子20の挿入を許容する位置であり、前記本係止位置は、前記底壁42が前記ハウジング本体32の底壁よりもハウジング内側に突出して前記嵌合位置にある第2端子20の端子嵌合部22の後端に後方から当接する位置である。
【0042】
次に、このコネクタの使用要領を説明する。
【0043】
前記コネクタハウジング30に対し、まず第1端子10が挿入される。具体的には、前記コネクタハウジング30の第1端子挿入口32a内に前記第1端子10がその端子嵌合部12側から挿入される。
【0044】
この挿入の過程では、前記第1端子10の枠体16から上向きに突出する被係止部18が半挿入検知部34の第1端子係止部34eの内側にもぐりこんで当該第1端子係止部34eをハウジング本体32の外側に変位させる。すなわち、当該半挿入検知部34が両連結部36の前端を支点35として揺動するように、当該半挿入検知部34を弾性変位させる。しかし、前記被係止部18が前記第1端子係止部34eの係止穴34aに嵌り込む係止位置に到達すると、前記半挿入検知部34は弾性復帰力によって元の位置(すなわち外力を受けていない状態での位置)に復帰する。これにより、前記第1端子10は前記コネクタハウジング30内の係止位置に係止される。
【0045】
次に、反対側の各第2端子挿入口32b内にそれぞれ前記第2端子20がその端子嵌合部22側から挿入される。この挿入は、前記リテーナ40が仮係止位置にある状態で行われる。この挿入により当該第2端子20が図7に示すような嵌合位置、すなわち、その端子嵌合部22が前記端子嵌合部12の弾性接触片17と電気接触部16aとの間に嵌入される位置に到達すると、ハウジング本体32のランス38が前記端子嵌合部22の底面と係合することにより第2端子20を係止する。さらに、この状態でリテーナ40が前記仮係止位置から本係止位置まで押し込まれることにより、当該リテーナ40の底壁42が前記第2端子20を二重係止する。これにより、両端子10,20同士の嵌合状態はコネクタハウジング30内でより確実に保持される。
【0046】
前記第2端子20の挿入の際、仮に前記第1端子10の挿入が不完全であった場合、すなわち、この第1端子10が図6(a)(b)に示すように前記係止位置よりも手前の半挿入位置にとどまっていた場合は、当該第2端子20が前記嵌合位置に到達することができない。前記半挿入位置にある第1端子10の被係止部18は、前記半挿入検知部34の第1端子係止部34eを内側から押し上げる。この押し上げは、逆に、前記半挿入検知部34の前端部34bを図6(a)(b)に示すような嵌合阻止位置、すなわち、図5(a)(b)に示すような本来の嵌合許容位置(つまり前記両端子10,20の嵌合を許容する位置)よりも内側(図では下側)で前記第2端子挿入口32b内に臨む位置に変位させる。この嵌合阻止位置にある半挿入検知部34の前端部34bは、前記第2端子挿入口32b内に挿入される第2端子20と当接することによって、当該第2端子20と前記第1端子10との嵌合を阻む。これにより、作業者は、前記第1端子10の挿入が不完全であることを認識することができる。
【0047】
このコネクタでは、前記コネクタハウジング30とは別に第2端子20用のハウジングを具備しなくても、当該コネクタハウジング30内で両端子10,20の嵌合状態を保持することが可能である。しかも、第1端子10の挿入が不完全であるときはコネクタハウジング30の半挿入検知部34が前記第1端子10への前記第2端子20の嵌合を阻むことにより、当該第1端子10の挿入不良が確実に検知される。
【0048】
また、この実施の形態では、前記第2端子20の挿入が不完全である場合、リテーナ40が前記仮係止位置から本係止位置に押し込まれることができないので、当該第2端子20の挿入不良の検知も可能である。
【0049】
なお、この実施の形態では、前記半挿入検知部34に第1端子係止部34eが形成されているが、第1端子係止部は半挿入検知部から独立していてもよい。ただし、前記半挿入検知部34に第1端子係止部34eが形成されることは、コネクタ全体の構造の簡素化に寄与する。しかも、前記半挿入検知部34の弾性変位及びその弾性復帰力を利用して、前記第1端子係止部34eと前記第1端子10との係合と、当該第1端子10の挿入不良の検知との双方を実現することができる。
【0050】
前記第1端子係止部が前記第1端子を係止するための具体的な構造は特に限定されない。例えば、当該第1端子係止部は、通常のランスのように、第1端子の適当な孔や窪みに嵌り込む係止突起を有するものでもよい。
【0051】
前記半挿入検知部は、第1端子が挿入される前の時点から嵌合阻止位置に位置する形状であってもよい。その場合、当該第1端子が係止位置に至った時点で当該第1端子が前記半挿入検知部を強制的に前記嵌合阻止位置から嵌合許容位置に変位させるものであればよい。
【0052】
また、本発明に係るコネクタは、いわゆるジョイントコネクタに限定されない。例えば、前記図1に示される第1端子10は、複数の第2端子20のそれぞれに一対一で嵌合する通常の雌端子であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係るコネクタの分解斜視図である。
【図2】前記コネクタの第1端子の斜視図である。
【図3】前記コネクタの第2端子の斜視図である。
【図4】前記コネクタのコネクタハウジングを第2端子挿入口から見た図である。
【図5】前記コネクタのコネクタハウジングに第1端子及び第2端子が挿入される前の状態を示す断面図であって、(a)は前記コネクタをそのコネクタハウジングの幅方向中央で切断した縦断面図、(b)は前記コネクタをそのコネクタハウジングの連結部で切断した縦断面図である。
【図6】前記コネクタのコネクタハウジングにおいて第1端子が半挿入位置にある状態を示す断面図であって、(a)は前記コネクタをそのコネクタハウジングの幅方向中央で切断した縦断面図、(b)は前記コネクタをそのコネクタハウジングの連結部で切断した縦断面図である。
【図7】前記コネクタのコネクタハウジングに第1端子及び第2端子が挿入された状態を示す断面図であって、前記コネクタをそのコネクタハウジングの幅方向中央で切断した縦断面図である。
【符号の説明】
【0054】
D 電線
10 第1端子
12 端子嵌合部
16 枠体
16a 電気接触部
17 弾性接触片
18 被係止部
20 第2端子
22 端子嵌合部
30 コネクタハウジング
32 ハウジング本体
32a 第1端子挿入口
32b 第2端子挿入口
34 半挿入検知部
34a 係止穴
34e 第1端子係止部
35 支点
36 連結部
38 ランス(第2端子係止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子と、この第1端子と嵌合可能な第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子を両端子が嵌合する状態で保持するためのコネクタハウジングとを備えたコネクタであって、
前記コネクタハウジングは、当該コネクタハウジング内への前記第1端子の挿入を許容する第1端子挿入口と、この第1端子挿入口から所定の係止位置まで挿入された第1端子を係止するための第1端子係止部と、この第1端子係止部に係止された第1端子に前記第2端子が嵌合する位置まで当該第2端子の挿入を許容する第2端子挿入口と、前記第1端子が前記第1端子挿入口に挿入されかつ前記係止位置に至る前の半挿入位置にあることを検知するための半挿入検知部とを有し、
この半挿入検知部は、前記第1端子が前記半挿入位置にあるときはこの第1端子に対して前記第2端子の嵌合を阻止するように前記第2端子挿入口に臨む嵌合阻止位置に位置し、前記第1端子が前記係止位置にあるときはこの第1端子に対して前記第2端子の嵌合を許容する嵌合許容位置に位置するように、前記第1端子との接触により変位するものであることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のコネクタにおいて、
前記コネクタハウジングは、前記第1端子挿入口及び前記第2端子挿入口を有するコネクタハウジング本体を有し、
前記半挿入検知部は、前記第1端子係止部を有するとともに、前記コネクタハウジング本体に対して弾性変位可能となるように当該コネクタハウジング本体に連結され、この半挿入検知部に外力が加えられていない状態では前記嵌合許容位置にあり、前記第1端子が前記半挿入位置にあるときは当該第1端子との接触により前記嵌合阻止位置まで弾性変位し、当該第1端子が前記係止位置に達したときにはその弾性復帰力により前記嵌合許容位置に戻ることを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項2記載のコネクタにおいて、
前記第1端子は前記半挿入検知部に向かって突出する被係止部を有し、
前記第1端子係止部は、前記被係止部が嵌入可能な係止孔を有し、
前記被係止部は、前記第1端子が前記半挿入位置にあるときに前記半挿入検知部を押圧してこの半挿入検知部を前記嵌合阻止位置へ変位させる形状を有することを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項2または3記載のコネクタにおいて、
前記半挿入検知部は、前記第1端子挿入口と前記第2端子挿入口との間にある支点を中心として揺動可能となるように前記コネクタハウジング本体に連結され、
前記被係止部は、前記第1端子が前記半挿入位置にあるときに前記半挿入検知部をコネクタハウジングの外側に押圧することにより、前記支点を挟んで前記被係止部と反対側の半挿入検知部の部分を前記第2端子挿入口内の嵌合阻止位置に変位させることを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のコネクタにおいて、
前記コネクタハウジングは、このコネクタハウジング内の係止位置に係止された第1端子に嵌合される第2端子を係止するための第2端子係止部を有することを特徴とするコネクタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のコネクタにおいて、
前記第2端子を複数個備え、
前記コネクタハウジングは、前記各第2端子がそれぞれ挿入可能な複数の第2端子挿入口を有し、
前記第1端子は、前記各第2端子と同時に嵌合可能な端子嵌合部を有し、かつ、この端子嵌合部に嵌合する第2端子同士を短絡させるジョイント端子であることを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−282546(P2008−282546A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123069(P2007−123069)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】