説明

コネクタ

【課題】嵌合途上でハーネス側端子が機器側の端子台等に干渉することを防ぐ。
【解決手段】機器側コネクタ10と嵌合可能に設けられ、機器側端子20に対して嵌合方向と交差する方向における所定範囲内で遊動自在に保持されるハーネス側端子60を有し、機器側コネクタ10と正規嵌合した後にハーネス側端子60が機器側端子20にボルト止めされるハーネス側コネクタ10であって、キャビティ53が内部に設けられたハーネス側ハウジング51と、ハーネス側ハウジング51に固定され、キャビティ53内の正規位置に収容されたハーネス側端子60を抜止状態に保持する保持部品80と、保持部品80においてハーネス側端子60と対向する面に設けられ、ハーネス側端子60が嵌合途上でハーネス側端子60もしくは機器側端子20を支持する端子台14の周辺部と干渉することを回避する方向にハーネス側端子60を付勢する第1のばね部材85とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、相手側端子とボルト止めによって接続される端子を有するコネクタとして、例えば下記特許文献1に記載のコネクタが知られている。相手側端子は、機器側に直結された機器側コネクタに設けられており、機器側コネクタへの正規の取付位置に対してずれた位置に取り付けられる場合がある。このような場合、相手側コネクタとの嵌合方向に対して交差する方向に所定範囲内で端子の位置を遊動自在に保持する保持構造を設けることで、相手側端子の位置に応じて端子の位置を調整することが可能である。
【特許文献1】特開2005−129356公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した端子の保持構造では、端子の先端側がその自重によって下方に落ち込んだ傾き姿勢となり、嵌合途上で相手側端子あるいは相手側端子を支持する端子台に干渉する等のおそれがある。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子を遊動自在に保持する保持構造を備えつつ、嵌合途上で端子が相手側端子や端子台に干渉することを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、相手側コネクタと嵌合可能に設けられ、相手側コネクタに設けられた相手側端子に対して嵌合方向と交差する方向における所定範囲内で遊動自在に保持される端子を有し、相手側コネクタと正規嵌合した後に端子が相手側端子にボルト止めされるコネクタであって、端子を収容するキャビティが内部に設けられたコネクタハウジングと、コネクタハウジングに固定され、キャビティ内の正規位置に収容された端子を抜止状態に保持する保持部品と、保持部品において端子と対向する面に設けられ、端子が嵌合途上で相手側端子もしくは相手側端子を支持する端子台の周辺部と干渉することを回避する方向に端子を付勢する第1のばね部材とを備えた構成としたところに特徴を有する。
【0005】
このような構成によると、端子が第1のばね部材によって付勢された状態で相手側コネクタとの嵌合が行われ、相手側コネクタと正規嵌合した後に端子を相手側端子にボルト止めすることによって、両端子が接続固定される。このとき、相手側端子の位置に応じて端子の位置を調整することができることに加えて、端子が相手側端子もしくは端子台の周辺部と干渉することを防ぐことができる。
【0006】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
保持部品は、同保持部品を端子の遊動方向に沿って移動可能に支持する第2のばね部材と、正規嵌合時に相手側コネクタに設けられた解除部が嵌合することで第2のばね部材を圧縮させると共に第1のばね部材の端子に対する付勢を解除する解除受け部とを備えている構成としてもよい。
【0007】
仮に相手側コネクタと正規嵌合したときに、端子が第1のばね部材によって付勢されたままの場合には、相手側端子とボルト止めする際に、端子に不要な応力を生じさせることになる。その点上記した構成によると、正規嵌合時に解除部が解除受け部に嵌合することで第2のばね部材を圧縮させると共に第1のばね部材の端子に対する付勢を解除することができる。よって、端子を第1のばね部材に接触させないフリー状態に保持することができる。このため、端子は相手側端子にボルト止めされた状態で第1のばね部材からばね力を受けないから、接続状態が良好に維持される。
【0008】
保持部品は端子を挟む両側に一対の半割体を有し、両半割体の合わせ面が端子の進入経路上に位置する構成としてもよい。このような構成によると、端子をキャビティ内に挿入していくと、端子が両半割体の合わせ面の端縁部に接触して両半割体の間に割って入り込むことができる。
【0009】
コネクタハウジングの外周に金属製のシールドシェルを取り付けた構成としてもよい。このような構成によると、本発明のコネクタをシールドコネクタに適用することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、相手側コネクタとの嵌合途上で端子が相手側端子や端子台の周辺部と干渉することを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図面を参照しながら説明する。
<全体構成>
本実施形態のシールドコネクタは電気自動車用のコネクタであって、インバータ等の機器(図示せず)に直結される機器側コネクタ10と、ワイヤハーネスWを介して三相モータ等の機器(図示せず)に連なるハーネス側コネクタ50とから構成されている。これらのコネクタ10,50は互いに嵌合可能に設けられ、機器側の電極に接続される機器側端子20及びワイヤハーネスWの端末に接続されたハーネス側端子60を備えている。両端子20,60は、両コネクタ10,50が正規嵌合した後に、ボルト止めされることによって接続固定されるようになっている。尚、機器側コネクタ10は、図示はしないものの、金属製のシールドケース(図示せず)によって全体が覆われた状態で機器側に取り付けられる。
【0012】
<機器側コネクタ10の構成>
機器側コネクタ10は本発明の「相手側コネクタ」に相当し、合成樹脂製の機器側ハウジング11と、この機器側ハウジング11内にインサート成形された3つの機器側端子20とを備えている。機器側端子20は本発明の「相手側端子」に相当し、本実施形態ではバスバーによって構成されている。機器側端子20の両端部には固定ボルトBを挿通してボルト止めを行うためのボルト挿通孔21が貫通形成されている。機器側ハウジング11には、ボルト挿通孔21と連通する空間が設けられ、この空間に固定ナットNが配置されることで、固定ナットNはボルト挿通孔21を通じて挿通された固定ボルトBと螺合可能である。
【0013】
機器側ハウジング11には、ハーネス側コネクタ50の後述するハーネス側ハウジング51を内部に嵌合可能なフード部12が前方に開口して形成されている。フード部12には、機器側端子20が前方に突出する形態で設けられ、この機器側端子20の一方側(図1及び図5における下側)には、機器側端子20を支持する端子台14がそれぞれ設けられている。端子台14には、前記した固定ナットNが配置され、さらに固定ナットNの奥方(固定ナットNを中心として機器側端子20とは反対の方向)には、固定ナットNに螺合した固定ボルトBの先端側が進入する逃がし空間が形成されている。
【0014】
端子台14は、図5に示すように、各機器側端子20毎に分離して図示3ヶ所設けられている。このうち左右両端の端子台14には、端子台14の前面壁より前方に突出する解除突部15がそれぞれ設けられている。解除突部15は本発明の「解除部」に相当し、解除突部15の先端下面側には、図1に示すように、前方に向けて上り勾配をなすテーパ面が形成されている。このため、解除突部15のテーパ面は、両コネクタ10,50の嵌合途上で後述する保持部品80に摺接してこれを下方に押し下げるように作用する。この点については、後に詳述する。
【0015】
一方、フード部12内において機器側端子20の上方(機器側端子20を基準として端子台14と反対側)には、両コネクタ10,50が正規嵌合したときにハーネス側端子60の進入を許容する進入空間が形成されている。この進入空間は、フード部12の外周面に貫通して設けた開口部13を通じて外部空間と連通し、この開口部13を通じて固定ボルトBが進入可能である。開口部13には、固定ボルトBによるボルト止めが完了した後に、同開口部13を塞ぐためのキャップ30が外側から装着可能である。開口部13に進入するキャップ30の外周面には周方向に沿って凹部が設けられ、この凹部にはシールリング31が嵌着されている。このシールリング31は、キャップ30が開口部13に装着された状態において開口部13を構成する筒部の内周面に密着している。したがって、開口部13からフード部12の内部に水が浸入することが規制される。
【0016】
<ハーネス側コネクタ50の構成>
ハーネス側コネクタ50は本発明における「コネクタ」であって、合成樹脂製のハーネス側ハウジング51と、このハーネス側ハウジング51に挿入される3つのハーネス側端子60とを備えている。ハーネス側ハウジング51は本発明の「コネクタハウジング」に相当し、その内部には前後方向に貫通する3つのキャビティ53が左右方向(図1において紙面と直交する方向)に一定ピッチで並列して形成されている。
【0017】
ハーネス側ハウジング51の前端部は、機器側ハウジング11のフード部12内に嵌合可能である。尚、ハーネス側ハウジング51の前端外周面には周方向に沿って凹部が設けられ、この凹部にはシールリング42が嵌着されている。このシールリング42は、両コネクタ10,50の嵌合に伴ってフード部12の内周面に密着することで、両コネクタ10,50間の防水機能を果たしている。
【0018】
また、ハーネス側ハウジング51の後部には、3つのハーネス側端子60にそれぞれかしめ付けにより固定された3本のワイヤハーネスWを一括してシールする一括ゴム栓40が装着可能となっている。すなわち、ハーネス側ハウジング51においてキャビティ53より後方には、後方に開口したフード状をなすゴム栓収容部52が設けられ、このゴム栓収容部52の内部に一括ゴム栓40が圧縮状態で装着されている。さらに、ゴム栓収容部52には、一括ゴム栓40の抜止を行うゴム栓ホルダ41が一括ゴム栓40の後方に装着されている。これにより、ハーネス側コネクタ50は、ゴム栓収容部52を通じて内部に水が浸入することを規制可能である。
【0019】
ゴム栓ホルダ41はポリプロピレン製であって、図示はしないものの、上下に対称をなす一対の半割体をヒンジにより連結した構成である。各半割体には、ワイヤハーネスWの外周形状に対応した半円部がそれぞれ形成されており、上下の半円部によってワイヤハーネスWが周方向に沿って挟まれるようになっている。ゴム栓ホルダ41の上下各面において半円部と対応する位置には、それぞれ一対の抜止突起が設けられている。これにより、ゴム栓ホルダ41は、抜止突起をゴム栓収容部52の抜止孔に係止させることにより、ハーネス側ハウジング51に対して離脱規制状態に組み付けられている。
【0020】
ワイヤハーネスWは、金属細線をメッシュ状に編み込んだ筒状をなすシールド部材(図示せず)によって包囲され、このシールド部材によって3本のワイヤハーネスWが一括してシールドされている。シールド部材の端末部には、金属製のリング状をなすシールドシェル70が固着されている。シールドシェル70は、内リング71と外リング72との二重筒構造であり、内リング71と外リング72との間にシールド部材の端末部が挟み付けられかしめ付けにより固定される。このシールドシェル70は、両コネクタ10,50が正規嵌合したときには内リング17の前端部が機器側のシールドケース(図示せず)と導通可能に接触するように設定されている。
【0021】
ハーネス側端子60は本発明の「端子」に相当し、各キャビティ53内に後方から挿入される。このハーネス側端子60は、機器側端子20と接続される接続部61と、ワイヤハーネスWの端末に圧着接続されるバレル部62とを備えている。接続部61には、固定ボルトBを挿通させるボルト挿通孔63と、そのボルト挿通孔63よりバレル部62側に配された係止孔64とが貫通形成されている。ハーネス側端子60は、係止孔64の周壁に後述する係止突部83を係止させることで、キャビティ53内の正規位置において抜止状態に保持される。
【0022】
ハーネス側ハウジング51の嵌合面(前端面)には、装着凹部54が前方に開口して形成されている。装着凹部54は、図6に示すように、横長偏平形状をなす保持部品80を収容するための空間である。装着凹部54の奥面には、キャビティ53の前端開口が形成されている。すなわち、装着凹部54は、全てのキャビティ53の内部空間と連通している。また、装着凹部54の内壁及び保持部品80には、互いに係合可能な固定手段(図示せず)がそれぞれ設けられている。これにより、保持部品80は、装着凹部54内に装着されると、前記した各固定手段が係合することで装着凹部54に対して上下の移動を許容しつつ前方へ抜止状態に保持される。
【0023】
保持部品80は合成樹脂製で、図7に示すように、上下一対の半割体81,82(以下「上側半割体81」及び「下側半割体82」という。)によって構成されている。保持部品80には、前後方向に貫通する図示3つの端子挿通孔84が横並びに形成されている。端子挿通孔84は、ハーネス側端子60を内部に収容可能に設けられ、ハーネス側端子60が端子挿通孔84内に収容された状態では、上側半割体81と下側半割体82とがそれぞれハーネス側端子60を上下に挟む両側に位置することになる。
【0024】
各端子挿通孔84の内部における中央には、上側半割体81と下側半割体82とを連結する連結部83が設けられている。この連結部83は、ハーネス側端子60の係止孔64内に嵌り込んでその周壁に係止することでハーネス側端子60の抜止を行う係止突部83として機能している。また、ハーネス側端子60を上下に挟む上側半割体81と下側半割体82との間隔は、ハーネス側端子60の板厚のほぼ2倍となるように設定されている。したがって、保持部品80は、ハーネス側端子60に対してその板厚1枚分にほぼ相当する距離だけ上下に相対的に移動可能である。
【0025】
係止突部83は、上側半割体81から下側半割体82に向けて突出する突部と下側半割体82から上側半割体81に向けて突出する突部とが面当たりするように構成されている。この係止突部83を構成する上下各突部の突当面(本発明の「合わせ面」の一部を構成する。)は、キャビティ53内に挿入されるハーネス側端子60の進入経路上に位置している。このため、保持部品80を装着凹部54内に装着した上で、ハーネス側端子60をキャビティ53内に挿入していくと、ハーネス側端子60の先端が前記した突当面の後部に接触し、これらの間に割って入り込む。そして、ハーネス側端子60が正規位置に至ると、係止突部83を構成する上下各突部がハーネス側端子60の上下両側から係止孔64内に嵌り込んで突き当たることで係止突部83が一体となって構成される。よって、ハーネス側端子60は、係止孔64の周壁前端が係止突部83に係止することで後方に抜止状態に保持される。
【0026】
ところで、ハーネス側端子60がキャビティ53内に収容された状態では、ハーネス側端子60とこれを収容するキャビティ53の内壁との間に所定のクリアランスが設定されている。このため、正規位置にあるハーネス側端子60は、係止突部83によって後方に抜止された状態で、かつ、上下方向(両コネクタ10,50の嵌合方向と交差する方向)における所定範囲内で遊動自在に保持される。このようにハーネス側端子60をキャビティ53内で遊動自在に保持する構成としている理由は、機器側端子20が正規の位置に対して上下方向にずれた位置にインサート成形される場合があり、このような成形時における誤差を吸収した上でハーネス側端子60と機器側端子20とを接続可能にするためである。
【0027】
しかしながら、ハーネス側端子60は、キャビティ53内の正規位置に収容された状態では、ボルト挿通孔63が設けられている先端部分がキャビティ53の前端開口より前方に突出した状態となっているため、自重によって先端部分が下方に落ち込んだ姿勢(端子のお辞儀状態)になり易い。このため、従来のハーネス側コネクタ100では、図11に示すように、機器側コネクタ10との嵌合途上でハーネス側端子60が機器側端子20の端縁部等と接触する事態(端子へのどつき)が発生する可能性がある。尚、図11では、保持部品80の代わりにランス101でハーネス側端子60の抜止をしているものの、ハーネス側端子60を上下に遊動自在に保持する構成については本実施形態と同じである。そこで、本実施形態では、その対策構造として保持部品80に「第1のばね部材」及び「第2のばね部材」を設けている。以下、それらの構造について説明する。
【0028】
各端子挿通孔84の内部には、図示3つの係止突部83の両側にそれぞれ配置されることで全部で6つの第1のばね部材85が設けられている。第1のばね部材85は端子挿通孔84の内周下面(保持部品80の下側半割体82においてハーネス側端子60と対向する面)に基端部を有し、その基端部から後方に向けて片持ち状に突出する形態をなしている。このため、第1のばね部材85は、基端部を支点として全体が上下に撓み可能である。第1のばね部材85は、保持部品80が装着凹部54内に装着された状態では、ハーネス側端子60の下面に接触し、次述する第2のばね部材86と共にハーネス側端子60を上方に付勢するように作用する。
【0029】
一方、下側半割体82の下面には、一対の第2のばね部材86が幅方向に所定間隔を空けて設けられている。第2のばね部材86は、第1のばね部材85とは上下対称をなす形態であって第1のばね部材85よりも大きめに形成され、その基端部を支点として全体が上下に撓み可能である。このため、保持部品80が装着凹部54内に装着された状態では、第2のばね部材86が装着凹部54の内周下面に弾性的に接触し、保持部品80の下面と装着凹部54の内周下面との間に所定のクリアランスが形成される。すなわち、両コネクタ10,50の嵌合前においては、ハーネス側端子60は第1のばね部材85及び第2のばね部材86の双方によって支持される。したがって、ハーネス側端子60は、先端部分が下方に落ち込んだ傾いた姿勢となることを防ぐことができると共に、水平姿勢をとったまま嵌合動作を行うことができる(図1、図3参照)。
【0030】
保持部品80の下側半割体82には、嵌合途上で機器側コネクタ10に向けて開口する一対の解除凹部87が前方に突出した状態で設けられている。解除凹部87は本発明の「解除受け部」に相当し、両コネクタ10,50が正規嵌合したときに機器側コネクタ10の解除突部15が内部に嵌合可能である。解除凹部87の開口縁部下端は、嵌合時に解除突部15のテーパ面と当接可能な高さに設定されている。このため、両コネクタ10,50を嵌合させると、解除突部15のテーパ面が解除凹部87の開口縁部下端に摺接しつつ、保持部品80を装着凹部54内で押し下げるように作用する。そして、両コネクタ10,50が正規嵌合したときには第2のばね部材86を嵌合前よりも圧縮させた状態で解除突部15が解除凹部87内に嵌合し、第1のばね部材85のハーネス側端子60に対する付勢を解除して第1のばね部材85とハーネス側端子60とが非接触状態となるように保持可能である(図2、図4参照)。
【0031】
本実施形態は以上のような構造であって、続いてその作用を説明する。
まず、ハーネス側端子60のハーネス側ハウジング51への組み付けを行う。ハーネス側端子60に接続されたワイヤハーネスWに一括ゴム栓40を装着しておき、ハーネス側ハウジング51の後方からゴム栓収容部52を通ってキャビティ53内に挿入していく。この間、ハーネス側端子60は、係止突部83を構成する上下各突部の間に割って入り込み、正規位置に至ると各突部が上下両側から係止孔64内に嵌り込んで一体となる。こうして、係止突部83が係止孔64の周壁に係止してハーネス側端子60の抜止が行われる。尚、一括ゴム栓40はゴム栓収容部52内に進入し、ワイヤハーネスWの外周面とゴム栓収容部52の内周面との双方に密着した状態となる。この後、ゴム栓収容部52にゴム栓ホルダ41を挿入して同ゴム栓収容部52内に固定することで一括ゴム栓40が抜け止めされる。
【0032】
次に、両コネクタ10,50の嵌合を行う。両コネクタ10,50の嵌合時においてハーネス側端子60は、図1に示すように、第1のばね部材85及び第2のばね部材86によって水平姿勢に保たれているため、ハーネス側端子60の先端が機器側端子20の端縁部や端子台14(固定ナットNやハーネス側ハウジング11の樹脂部分も含む。)等に干渉することで折れ曲がる等の不具合を回避することができる。そして、ハーネス側端子60が機器側端子20の上方に進入し両端子20,60の干渉が回避されると、機器側コネクタ10の解除突部15がハーネス側コネクタ50の解除凹部87の開口縁部に摺接し保持部品80を下方に押し下げる。
【0033】
こうして、ハーネス側端子60を水平姿勢に保ったまま両コネクタ10,50が正規嵌合に至ると、ハーネス側端子60のボルト挿通孔63と機器側端子20のボルト挿通孔21とがほぼ同軸上に位置することで、固定ボルトBによる締め付けが可能になる。また、機器側コネクタ10の解除突部15がハーネス側コネクタ50の解除凹部87内に嵌合することで、第2のばね部材86を圧縮状態に保持すると共に第1のばね部材85がハーネス側端子60に対して非接触状態に保持され、ハーネス側端子60に対する付勢が解除される。このため、ハーネス側端子60は機器側端子20にボルト止めされた状態で第1のばね部材85からばね力を受けないから、接続状態を良好に維持することが可能になる。尚、固定ボルトBによる締め付けは、予めキャップ30を機器側ハウジング11から外しておき、固定ボルトBを開口部13からフード部12内に進入させ、両端子20,60のボルト挿通孔21,63を通って固定ナットNに螺合させる。固定ボルトBによる締め付けが完了した後には、再びキャップ30を装着して開口部13を塞いでおく。
【0034】
以上のように本実施形態では、機器側端子20の位置に応じてハーネス側端子60の位置を調整することができることに加えて、ハーネス側端子60が機器側端子20の端縁部や端子台14等と干渉することを防ぐことができる。したがって、両コネクタ10,50の嵌合作業性を向上させることができる。
また、正規嵌合時に解除突部15が解除凹部87に嵌合することで第2のばね部材86を圧縮させると共に第1のばね部材85のハーネス側端子60に対する付勢を解除することができる。よって、ハーネス側端子60をフリー状態に保持することができるから、機器側端子20にボルト止めされた状態で第1のばね部材85からばね力を受けず、接続状態を良好に維持することができる。
【0035】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図面を参照しながら説明する。本実施形態のハーネス側コネクタ90は、図8に示すように、実施形態1の保持部品80とは異なる形態をなす保持部品91を有し、この保持部品91を収容する装着凹部94の形態も異なっている。保持部品91は、図9及び図10に示すように、上側半割体81が各端子挿通孔84毎に個別に設けられ、合わせて3つの上側半割体92とこれらの上側半割体92に共通の下側半割体93とから構成されている。また、下側半割体93には、実施形態1の解除凹部87に相当する部分が設けられていない。
【0036】
より詳細に説明すると、ハーネス側端子60がキャビティ53内に挿入された状態では、図8の拡大図に示すように、上側半割体81のうちハーネス側端子60と対向する面がキャビティ53の内壁上面とほぼ面一をなしている。これは、本実施形態では保持部品91を装着凹部94に対して相対的に上下に移動可能に支持する必要がなく、上側半割体81とハーネス側端子60との間にクリアランスを設定しなくてもよいためである。したがって、上側半割体81とハーネス側端子60との間のクリアランスをなくし、もって保持部品80の低背化を図ることができる。
【0037】
また、上側半割体92が個別に設けられている点については、以下のような利点がある。例えば、1つのハーネス側コネクタ90に複数種類のハーネス側端子60を混在させて用いる場合には、個別の上側半割体92をハーネス側端子60の種類に応じて変更することができるから、保持部品91全体を設計し直す必要がない。したがって、保持部品91全体の設計変更を要することなく、ハーネス側端子60の選択自由度を高めることができる。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)本実施形態では樹脂製の保持部品80を例示しているものの、本発明によると、金属製の保持部品としてもよい。つまり、第1のばね部材85及び第2のばね部材86は共に樹脂ばねである必要はなく、金属ばねであってもよい。
(2)本実施形態では保持部品80を上側半割体81と下側半割体82とから構成しているものの、本発明によると、保持部品80を下側半割体82のみで構成してもよい。
【0039】
(3)本実施形態では第1のばね部材85と第2のばね部材86の双方でハーネス側端子60を支持しているものの、本発明によると、第1のばね部材85のみでハーネス側端子60を支持してもよい。
(4)本実施形態では下側半割体82に第1のばね部材85及び第2のばね部材86を設けているものの、本発明によると、上側半割体81に第1のばね部材85及び第2のばね部材86を設けてもよい。
【0040】
(5)本実施形態では解除突部15が解除凹部87に嵌合することで保持部品80を押し下げているものの、本発明によると、解除突部15が第1のばね部材85を直接押し下げることでハーネス側端子60に対する付勢を解除してもよい。
(6)本実施形態ではシールドコネクタに適用したものを例示しているものの、本発明によると、シールドコネクタ以外のコネクタに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態1における両コネクタの嵌合前における状態を示す断面図
【図2】その両コネクタが正規嵌合して両端子がボルト止めされた状態を示す断面図
【図3】図1において保持部品の周辺部を拡大した状態を示す断面図
【図4】図2において保持部品の周辺部を拡大した状態を示す断面図
【図5】実施形態1における機器側コネクタの正面図
【図6】そのハーネス側コネクタの正面図
【図7】その保持部品の正面図
【図8】実施形態2におけるハーネス側コネクタの断面図及び保持部品の拡大図
【図9】そのハーネス側コネクタの正面図
【図10】その保持部品の正面図
【図11】従来のハーネス側コネクタにおいて端子同士が干渉する様子を示した断面図
【符号の説明】
【0042】
10…機器側コネクタ(相手側コネクタ)
14…端子台
15…解除突部(解除部)
20…機器側端子
50…ハーネス側コネクタ(コネクタ)
51…ハーネス側ハウジング(コネクタハウジング)
53…キャビティ
60…ハーネス側端子
70…シールドシェル
80…保持部品
81…上側半割体
82…下側半割体
85…第1のばね部材
86…第2のばね部材
87…解除凹部(解除受け部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタと嵌合可能に設けられ、前記相手側コネクタに設けられた相手側端子に対して嵌合方向と交差する方向における所定範囲内で遊動自在に保持される端子を有し、前記相手側コネクタと正規嵌合した後に前記端子が前記相手側端子にボルト止めされるコネクタであって、
前記端子を収容するキャビティが内部に設けられたコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに固定され、前記キャビティ内の正規位置に収容された前記端子を抜止状態に保持する保持部品と、
前記保持部品において前記端子と対向する面に設けられ、前記端子が嵌合途上で前記相手側端子もしくは前記相手側端子を支持する端子台の周辺部と干渉することを回避する方向に前記端子を付勢する第1のばね部材とを備えたコネクタ。
【請求項2】
前記保持部品は、同保持部品を前記端子の遊動方向に沿って移動可能に支持する第2のばね部材と、正規嵌合時に前記相手側コネクタに設けられた解除部が嵌合することで前記第2のばね部材を圧縮させると共に前記第1のばね部材の前記端子に対する付勢を解除する解除受け部とを備えている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記保持部品は前記端子を挟む両側に一対の半割体を有し、前記両半割体の合わせ面が前記端子の進入経路上に位置する請求項1又は請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記コネクタハウジングの外周に金属製のシールドシェルを取り付けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−300330(P2008−300330A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148296(P2007−148296)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】