説明

コネクタ

【課題】コネクタの高さ方向の大型化を回避する。
【解決手段】互いに嵌合可能な一対のハウジングのうちの一方のハウジング10には、電線Wの端末に接続された端子金具70を収容可能なキャビティ27Aが幅方向に複数列でかつ高さ方向に複数段に亘って形成されている。端子金具70には、他方のハウジング60との嵌合によって相手の音叉端子80と電気的に接触する接触面73Aを有する接続部73が一方のハウジング10の嵌合面から露出して形成されている。キャビティ27Aの全てに端子金具70が収容されたときに、一方のハウジング10の嵌合面に、接続部73が幅方向に整列して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに嵌合可能な一対のハウジングのうちの一方のハウジングの下段に、幅方向に複数の導体を並列させたフラットケーブルを収容するフラットケーブル収容部が形成され、上段に、ディスクリート線の端末に接続された端子金具を収容するキャビティが幅方向に複数並列して形成されている、コネクタの発明が開示されている。また、他方のハウジングの下段にはフラットケーブルの導体と接続可能な音叉端子が装着される装着部が形成され、上段には端子金具と接続可能な音叉端子が装着される装着部が同じく形成されている。
【特許文献1】特開2006−12717公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、例えば、自動車に搭載されるECU(電子制御ユニット)に組み込まれるコネクタの場合には、多極になりがちであるという一方で、ハウジングの高さ寸法をなるべく抑えたいとの要請が強い。しかるに上記の場合、一方のハウジングにはフラットケーブル収容部とキャビティとが上下に分かれて配置されているため、これに対応する他方のハウジングでも音叉端子の各装着部を上下に分けて配置する必要があり、高さ方向の大型化を避け得ないという事情がある。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、コネクタの高さ方向の大型化を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、互いに嵌合可能な一対のハウジングのうちの一方のハウジングには、電線の端末に接続された端子金具を収容可能なキャビティが幅方向に複数列でかつ高さ方向に複数段に亘って形成されており、前記端子金具には、他方のハウジングとの嵌合によって相手端子と電気的に接触する接触面を有する接続部が前記一方のハウジングの嵌合面から露出して形成されており、前記キャビティの全てに端子金具が収容されたときに、前記一方のハウジングの嵌合面に、前記接続部が幅方向に整列して配置されている構成としたところに特徴を有する。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記キャビティの配列は互いに幅方向に半ピッチずれた千鳥配置とされるところに特徴を有する。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記一方のハウジングの嵌合面には、前記接続部の接触面の反対側面を支持する支持部が突出して形成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記相手端子は、前記一方のハウジングとの嵌合によって前記接続部を高さ方向に弾性的に挟み込む板状の音叉端子によって構成され、その板面を高さ方向に沿わせるようにして前記他方のハウジングに装着されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のものにおいて、前記他方のハウジングの外面のうちの高さ方向の一方面には凹部が形成され、この凹部の底面にはロック受け部が形成され、前記一方のハウジングの外面のうちの高さ方向の一方面にはロック部が形成されており、このロック部が前記ロック受け部を係止することで、前記両ハウジングが離脱規制状態に保持されるようになっており、かつ、前記両ハウジングの嵌合状態において、前記両ハウジングの外面のうちの高さ方向の他方面は高さ方向に互いに重なり合わないところに特徴を有する。
【0009】
請求項6の発明は、請求項5に記載のものにおいて、前記一方のハウジングには、複数の前記キャビティからなるキャビティ部と、幅方向に複数の導体を並列させた帯状のフラットケーブルを収容するフラットケーブル収容部とが、それぞれ、前記ロック部を挟む幅方向の両側に配置されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
一方のハウジングには高さ方向に複数段のキャビティが形成されているものの、これらキャビティの全てに端子金具が収容されたときに、一方のハウジングの嵌合面に端子金具の接続部が幅方向に整列して配置されるから、これら接続部の接続相手となる相手端子を他方のハウジングにおいて幅方向に整列して配置させることができる。したがって、他方のハウジングが高さ方向に大型化するのを回避できる。
【0011】
<請求項2の発明>
キャビティの配列が互いに幅方向に半ピッチずれた千鳥配置とされるから、全ての端子金具において幅方向に関する接続部の突出位置をほぼ同じ位置に揃えることができる。
<請求項3の発明>
一方のハウジングの嵌合面には接続部の接触面の反対側面を支持する支持部が突出して形成されているから、接続部が折損・破損されるのを防止できる。
【0012】
<請求項4の発明>
相手端子が複数の板状の音叉端子によって構成され、これら音叉端子がその板面を高さ方向に沿わせつつ他方のハウジングに装着されているから、これら音叉端子を幅方向に狭ピッチにつめて整列させることができ、多極化に対応することができる。また、既存の音叉端子を利用できるため、コストを抑えることができる。
【0013】
<請求項5の発明>
ロック受け部が他方のハウジングにおける高さ方向の一方面に形成された凹部の底面に形成され、しかも両ハウジングの嵌合状態において両ハウジングの外面のうちの高さ方向の他方面は高さ方向に互いに重なり合わないから、他方のハウジングが一方のハウジングとの嵌合状態において高さ方向に大型化するのを効果的に抑えることができる。
【0014】
<請求項6の発明>
一方のハウジングにはキャビティ部とフラットケーブル収容部とがロック部を挟む幅方向の両側にそれぞれ配置されているから、キャビティ部への各端子金具の挿抜作業を円滑に行うことができるとともに、端子金具の挿抜作業を不要とする部位にはフラットケーブルで賄わせることができ、作業効率が良好となる。また、キャビティ部とフラットケーブル収容部との間にロック部が配置されているから、一方のハウジングのスペース効率が良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図14によって説明する。本実施形態のコネクタは、自動車に搭載されるECU(電子制御ユニット)に用いられるコネクタを例示するものであって、互いに嵌合離脱可能な一対のハウジング10,60を備えて構成されている。
【0016】
両ハウジング10,60のうち、ECU回路に接続される音叉端子80を装着したECU側のハウジング(以下、他方のハウジング60)は合成樹脂製であって、図2及び図14に示すように、幅方向に細長い扁平な角ブロック状をなしている。この他方のハウジング60の上面(高さ方向の一方面)には、幅方向の中央より少し片側へ寄った位置に、前後方向(両ハウジング10,60の嵌合離脱方向)に沿って延びるとともに同ハウジング60の前後両面に開口する凹部61が形成されている。凹部61の底面の前端には、ロック受け部62が突設されている。ロック受け部62は凹部61の深さ内に収まっており、ロック受け部62の上端は他方のハウジング60の上面(凹部61を除く上面)より下方に位置している。
【0017】
他方のハウジング60には、複数の端子収容室63が幅方向に一列に整列して並設されている。各端子収容室63は、ロック受け部62を挟んだ幅方向の両側に分かれて配置されており、このうち、正面視して向かって左側は、電線Wの端末に接続された相手側の端子金具70を受容する第1収容室63Aとされ、右側は、幅方向に複数の導体91を並列させた相手側のフラットケーブル90を受容する第2収容室63Bとされる。そして、各端子収容室63は、縦長のスリット状をなし、ここに、各音叉端子80が縦向きの姿勢で圧入により装着されるようになっている。
【0018】
各端子収容室63に収容される音叉端子80は、導電性金属製であっていずれも同形同大の板状をなし、高さ方向(上下方向)に弾性撓み可能な接触片81及びその下側の支持片82からなる略Uの字の部分と、この部分の後端から後方に延びてその途中で下向きに屈曲される略クランク状の脚部83とを備えている。ここで、音叉端子80がその板面を高さ方向に沿わせつつ各端子収容室63内に後方から差し込まれることにより、音叉端子80が各端子収容室63内に圧入保持され、さらに、脚部83の下端がプリント回路基板100のランドに半田付けされることにより、音叉端子80がECU回路に電気的に接続されるようになっている。
【0019】
また、他方のハウジング60には、各端子収容室63と連通するよう幅方向に横切る受け部64が形成されている。受け部64は、第1収容室63Aと対応する第1受け部64Aと第2収容室63Bと対応する第2受け部64Bとからなり、これら第1受け部64Aと第2受け部64Bがロック受け部62を挟んだ両側に分かれて配置されている。そして、受け部64は、他方のハウジング60の前面に横長スリット状に開口する形態とされ、この前面開口から内部に相手側の突出部分(後述する支持部36及びケーブル支持台28B)を受け入れ可能となっている。なお、第1受け部64Aの前面開口は幅方向に真直ぐ延びる直線状をなし、第2受け部64Bの前面開口は幅方向両端部が上方に切り上がった凹形状をなしている。
【0020】
他方のハウジング60の接続相手となるハウジング(以下、一方のハウジング10)は合成樹脂製であって、図9ないし図13に示すように、他方のハウジング60と同様に幅方向に細長い扁平な角ブロック状をなし、他方のハウジング60との正規嵌合時には、その前面を他方のハウジング60の前面に突き合わせた状態で他方のハウジング60と正規嵌合される。この一方のハウジング10は、図8に示すように、ハウジング本体11とカバー12とからなり、ハウジング本体11の上面(高さ方向の一方面)にカバー12が覆い被さるように取り付けられる。
【0021】
カバー12は板状をなし、幅方向の両側に位置する左右夫々の覆い板13と、両覆い板13の幅方向の外縁から垂下する幅方向に撓み可能な一対の弾性片14と、両覆い板13の間でかつ幅方向の中央より少し片側に寄った位置に存するロック部15とを備えている。ロック部15は、両覆い板13の内縁間にて幅方向に架け渡されるブリッジ部16と、ブリッジ部16の下方に位置して前後両方向に延びるロック本体17とからなり、ロック本体17がブリッジ部16の下端に設けられた支点部18を支点として高さ方向にシーソ状に揺動可能となっている。このうち、前側のロック本体17は両ハウジング10,60の正規嵌合時に相手側のロック受け部62を嵌合可能なロック孔19を有する門形枠状をなし、このロック孔19にロック受け部62が嵌ることで、両ハウジング10,60が離脱規制状態に保持されるようになっている。また、後側のロック本体17はロック状態にある両ハウジング10,60を離脱させる際に押圧される方形板状の解除操作部21を有している。
【0022】
ロック本体17の幅方向の両端には弾性片14と略平行に垂下する一対の弾性補助片22が形成されている。弾性補助片22の内面の下端部には一対の係止爪23が内向きに突出して形成されている。同様に弾性片14の内面の下端部にも一対の係止爪23が内向きに突出して形成されている。
【0023】
ハウジング本体11の両側面には、弾性片14と係止可能な一対の係止突起24が形成されている。弾性片14の係止爪23が係止突起24に弾性的に掛け止めされることにより、カバー12の幅方向の両端部がハウジング本体11に抜け止め保持される。また、ハウジング本体11の上面には、幅方向の中央より少し片側に寄った位置に、前後方向に延びるとともにハウジング本体11の前後両面に開口する凹溝25が形成されている。この凹溝25内にはカバー12のロック部15のロック本体17が嵌合可能とされ、凹溝25の底面には弾性補助片22と係止可能な一対の係止溝26が凹み形成されている。弾性補助片22の係止爪23が係止溝26の溝面に弾性的に掛け止めされることにより、カバー12の幅方向の中間部がハウジング本体11に抜け止め保持される。こうして弾性片14が係止突起24を弾性係止するとともに、弾性補助片22が係止溝26を弾性係止することにより、カバー12とハウジング本体11とが一体化されるようになっている。
【0024】
また、ハウジング本体11には、凹溝25を挟んだ幅方向の両側に、キャビティ部27とフラットケーブル収容部28とが幅方向に分断して配置されている。このうち、正面視して向かって左側に位置するフラットケーブル収容部28は、図7に示すように、前後方向に貫通するとともに幅方向に細長く延びるスリット状のケーブル挿入孔28Aを有し、このケーブル挿入孔28A内に後方からフラットケーブル90が挿入されるようになっている。また、フラットケーブル収容部28の前端部には、フラットケーブル90の前端部を支持するケーブル支持台28Bがハウジング本体11の前面から前方へ突出して形成されている。ケーブル支持台28Bの幅方向の両端部にはフラットケーブル90の幅方向の遊動を規制する一対の側壁28Cが前後方向に沿って立ち上げ形成されており、ケーブル支持台28Bの前端にはフラットケーブル90の前方への遊動を規制するとともにフラットケーブル90の浮き上がりを規制する差込溝28Dを有する前壁28Eが幅方向に沿って立ち上げ形成されている。このケーブル支持台28Bは他方のハウジング60との嵌合によって第2受け部64B内に挿入されるようになっている。
【0025】
また、ハウジング本体11の後端部には、ケーブル挿入孔28Aに挿入されたフラットケーブル90を上方から押さえ付けるブロック状の押さえ部29が形成されている。押さえ部29は、ヒンジ31を介してハウジング本体11の前部側と一体に連結されており、かつヒンジ31を中心として回動されることで閉じ状態と開き状態とに変位可能となっている。押さえ部29が開き状態にあるときに、ケーブル挿入孔28A内へのフラットケーブル90の差し込みがなされ、押さえ部29が閉じ状態にあるときに、フラットケーブル90の後方への抜け止めがなされる。なお、ハウジング本体11にカバー12が一体に保持されることで、押さえ部29の上方がカバー12の覆い板13によって覆われ、押さえ部29が閉じ状態に保たれる。
【0026】
フラットケーブル90は、複数の導体91が幅方向に一定ピッチで並び、それら導体91の周りが端末部(前端部)を除いて絶縁樹脂によって包囲された帯状をなし、その端末部にて露出する導体(以下、露出導体91)に、相手側の音叉端子80の接触片81が弾性的に接触するようになっている。
【0027】
一方、正面視して向かって右側に位置するキャビティ部27は複数のキャビティ27Aからなり、各キャビティ27Aは幅方向に並列でかつ高さ方向に二段に形成されている。また、上下の各キャビティ27Aは幅方向に互いに半ピッチずれて交互に配置され、一方のハウジング10全体としてキャビティ27Aの配列が千鳥配置とされている。
【0028】
キャビティ27Aの内壁には、キャビティ27A内に収容される端子金具70を抜け止め保持するランス32が撓み可能に形成されている。下段のキャビティ27Aに対応するランス32はハウジング本体11の下面に露出して配置され、上段のキャビティ27Aに対応するランス32はハウジング本体11の上面に露出して配置されるとともにハウジング本体11に被せ付けられるカバー12によって保護状態に被覆される。また、各キャビティ27Aは、ハウジング本体11の後面に開口される一方、ハウジング本体11の前面には実質的に閉止されている。各キャビティ27A内に端子金具70が後方から挿入されると、端子金具70はハウジング本体11の前壁33に突き当たって前止まりされる。
【0029】
ハウジング本体11の前面にはランス32の成形時における型抜き孔34がランス32毎に対応して開設されており、この型抜き孔34にランス32の先端部が臨んでいる。また、ハウジング本体11の前面には、ハウジング本体11の高さ方向の略中央部でかつ各キャビティ27Aと対応する位置毎に、端子金具70の接続部73(後述する)が貫通する貫通孔35が幅方向に一列に整列して並設されている。貫通孔35は、上段のキャビティ27Aの下端部に連通する第1貫通孔35Aと下段のキャビティ27Aの上端部に連通する第2貫通孔35Bとからなり、これらがほぼ同じ高さ位置で幅方向に交互に並んで配置されている。貫通孔35の内壁は、図4に示すように、キャビティ27Aと連通する後面開口から前方へ向けて次第に高さ寸法を狭める先窄まりのテーパ面35Eとされ、このテーパ面35Eによって後方から挿入される接続部73が誘い込まれるようになっている。
【0030】
また、ハウジング本体11の前面には、高さ方向の略中央部でかつ各貫通孔35の前方に、端子金具70の接続部73を下方から支持する支持部36が突出して形成されている。支持部36は、ハウジング本体11の前面を幅方向に横切るステージ状をなし、端子金具70を支持する支持面(上面)に、各貫通孔35に連通するとともに前後方向に延びる位置決め溝36Aが幅方向に並列に形成されている。各位置決め溝36Aには端子金具70の接続部73が幅方向に位置決めして嵌合されるようになっている。また、支持部36の前端には、接続部73の前方への遊動を規制する保護壁36Bが幅方向に沿って立ち上げ形成されている。なお、ハウジング本体11には、キャビティ27A内に挿入された端子金具70と係止してこの端子金具70を抜け止めするリテーナ40がカバー12の被着側とは反対となるハウジング本体11の下面に差し込まれるようになっている。
【0031】
キャビティ27A内に挿入される端子金具70は導電性の金属板を折り曲げ加工して形成され、図3に示すように、前部に角筒状の箱部71を備えるとともに後部にオープンバレル状のバレル部72を備え、かつ箱部71の前方に前後方向に細長い接続部73を備えている。箱部71とバレル部72とからなる形態は公知の雌側端子金具と同じであり、公知の雌側端子金具に接続部73を付加することによって端子金具70を構成することが可能とされる。したがって、端子金具70を製造するにあたり、大幅な設計変更を伴うことはない。
【0032】
箱部71には、端子金具70がキャビティ27A内に正規挿入されたときにランス32によって弾性的に係止されるランス孔74が開設され、ランス孔74の孔縁前端にはランス32との係り代を増す抜止突起75が起立して形成されている。箱部71の後端には他方のハウジング60との嵌合過程でキャビティ27Aに沿った切り溝27Bに嵌合可能なスタビライザ76が突出して形成されている。バレル部72は、電線Wの端末被覆にかしめ付けにより圧着されるインシュレーションバレル72Aと、電線Wの端末芯線に同じくかしめ付けにより圧着されるワイヤバレル72Bとからなる。
そして、接続部73は、箱部71の前端における幅方向の略中央部から前方へ箱部71と一体に突出する形態とされ、上段のキャビティ27Aに挿入される端子金具70では箱部71の下縁に設置され、下段のキャビティ27Aに挿入される端子金具70では箱部71の上縁に設置されている。全ての端子金具70がキャビティ27A内に正規挿入されたきに、上下の接続部73は、貫通孔35を貫通して支持部36の位置決め溝36Aに位置決め状態で支持されるとともに、相手側の第1収容室63Aと対応して幅方向に一列に整列するようになっており、全体としては高さ方向のほぼ同じ位置に交互に並んで配置されるようになっている。
【0033】
次に、本実施形態のコネクタの作用を説明する。
他方のハウジング60については、各端子収容室63内に後方から音叉端子80を挿入して保持させ、各音叉端子80の後端部をプリント回路基板100に半田接続する。
【0034】
一方のハウジング10については、ハウジング本体11の押さえ部29を開き状態として、フラットケーブル収容部28のケーブル挿入孔28A内に後方からフラットケーブル90を差し入れる。フラットケーブル90の先端を差込溝28D内に差し込み、押さえ部29を閉じ状態とすることにより、一方のハウジング10内にフラットケーブル90を固定する。すると、フラットケーブル90の露出導体91がハウジング本体11の前面より前方へ廻り込み、この露出導体91がケーブル支持台28Bの上面に上向きに配置される。
【0035】
また、キャビティ部27の各キャビティ27A内に後方から電線W付きの端子金具70を挿入する。端子金具70を挿入するにあたり、上段のキャビティ27Aには、図6に示すように、箱部71の下縁から接続部73が突出する端子金具70を挿入し、下段のキャビティ27Aには、図5に示すように、箱部71の上縁から接続部73が突出する端子金具70を挿入する。端子金具70の挿入過程では、箱部71にランス32が干渉して弾性的に撓み変形されるとともに、接続部73が貫通孔35内に後方から挿入されてハウジング本体11の前面に露出する。端子金具70が正規挿入されると、ランス32が弾性復帰して端子金具70の箱部71のランス孔74にランス32の先端部が弾性的に嵌って端子金具70がキャビティ27A内に後方へ抜け止めされた状態で保持されるとともに、接続部73が位置決め溝36A内に嵌合して接続部73の先端が保護壁36Bに後方から当接する。これにより、接続部73は、支持部36によって支持される下面とは反対側の上面(以下、接触面73A)を上方に向けて露出させる。また、一方のハウジング10については、ハウジング本体11にカバー12を被せ付けて両者11,12を一体化させておく。
【0036】
続いて、図1及び図2に示すように、両ハウジング10,60の前面(嵌合面)を互いに正対させ、その状態で両ハウジング10,60を互いに嵌合する。両ハウジング10,60の嵌合の過程では、支持部36が第1受け部64A内に嵌合状態で挿入されるとともにケーブル支持台28Bが第2受け部64B内に嵌合状態で挿入され、これにより、両ハウジング10,60の嵌合動作が案内されて、嵌合方向と交差する方向への遊動が規制される。両ハウジング10,60が正規嵌合されると、両ハウジング10,60の前面が互いに突き合わされるとともに、ロック部15がロック受け部62を弾性的に係止して両ハウジング10,60が離脱規制状態にロックされる。また、この正規嵌合状態では、ケーブル支持台28Bとこれに支持されたフラットケーブル90の露出導体91が端子収容室63の第2収容室63B内に前方から挿入され、フラットケーブル90の露出導体91に音叉端子80の接触片81が上方から弾性的に接触して双方80,90間の導通がとられるとともに、支持部36とこれに支持された端子金具70の接続部73が端子収容室63の第1収容室63A内に前方から挿入され、接続部73の接触面73Aに音叉端子80の接触片81が上方から弾性的に接触して双方70,80間の導通がとられる。さらに、この正規嵌合状態では、ロック部15とロック受け部62との係止部分を含む両ハウジング10,60の上面側においては高さ方向で互いに重なり合う部分を有するものの、両ハウジング10,60の下面側においては互いに重なり合う部分を有しないため、高さ方向に大型化するのが回避される。
【0037】
以上のように本実施形態によれば、一方のハウジング10に上下2段のキャビティ27Aが形成されているという事情があるものの、これらキャビティ27Aの全てに端子金具70が挿入されると、一方のハウジング10の前面に端子金具70の接続部73が幅方向に一列に整列して配置されるから、これら接続部73の接続相手となる相手の音叉端子80を他方のハウジング60において幅方向に一列に整列して配置させることができる。したがって、他方のハウジング60におけるキャビティ27Aの多段化が防止され、他方のハウジング60の高さ寸法を抑えることができる。
【0038】
この場合、一方のハウジング10には板状の音叉端子80がその板面を高さ方向に沿わせつつ幅方向に狭ピッチでつめて装着されているから、ECU回路等の多極化に十分に対応することができる。しかも、既存の音叉端子80を利用できるため、コストも抑えられる。
【0039】
また、キャビティ27Aの配列が互いに幅方向に半ピッチずれた千鳥配置とされるから、全ての端子金具70について接続部73の突出位置を幅方向の略中央部に揃えることができ、設計上の煩雑さを少なくできる。
また、一方のハウジング10の前面には接続部73の接触面73Aの反対側の面を支持する支持部36が突出して形成されているから、接続部73が折損・破損されるのを防止できる。この場合、支持部36が両ハウジング10,60の嵌合動作を案内する案内機能を兼備しているから、一方のハウジング10の構成を簡素化できる。
【0040】
また、ロック受け部62が他方のハウジング60の上面における凹部61の底面に形成され、しかも両ハウジング10,60の嵌合状態において両ハウジング10,60の下面側では高さ方向に互いに重なり合う部分を有しないから、他方のハウジング60が一方のハウジング10との嵌合状態においても高さ方向に大型化するのが抑えられる。
【0041】
さらに、一方のハウジング10にはキャビティ部27とフラットケーブル収容部28とがロック部15を挟む幅方向の両側にそれぞれ配置されているから、キャビティ部27への各端子金具70の挿抜作業を円滑に行うことができるとともに、端子金具70の挿抜作業を不要とする部位にはフラットケーブル90で賄わせることができ、作業効率が良好となる。また、キャビティ部27とフラットケーブル収容部28との間にロック部15が配置されているから、一方のハウジング10のスペース効率が良好となる。
【0042】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)キャビティは一方のハウジングにおいて高さ方向に3段以上となって配置されていてもよい。
(2)他方のハウジングは、電線付きの端子金具が挿入されるキャビティ部とフラットケーブル収容部とを混在して構成されたが、フラットケーブル収容部を省略してキャビティ部のみで構成されてもよい。
(3)一方のハウジングには音叉端子の代わりに接続部が挿入される箱部を有する公知の雌側端子金具等が装着されていてもよい。
(4)一方のハウジングは、カバーを有さず、ロック部を有するハウジング本体のみからなるものであってもよい。
(5)上下のキャビティは高さ方向の同軸上の揃って配置されていてもよい。この場合、上段のキャビティに挿入される端子金具では箱部の下縁の幅方向一端側に接続部を設置し、下段のキャビティに挿入される端子金具では箱部の上縁の幅方向他端側に接続部を設置するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のコネクタにおいて、両ハウジングが正規嵌合された状態を示す要部側断面図
【図2】両ハウジングを嵌合する前の状態を示す要部側断面図
【図3】端子金具の側面図
【図4】ハウジング本体の要部側断面図
【図5】下段のキャビティに端子金具を挿入したハウジング本体の要部側断面図
【図6】上段のキャビティに端子金具を挿入したハウジング本体の要部側断面図
【図7】両ハウジングを嵌合する前の状態を示すフラットケーブル収容部側の断面図
【図8】ハウジング本体にカバーを取り付ける前の状態を示す要部側断面図
【図9】一方のハウジングの平面図
【図10】ハウジング本体の正面図
【図11】ハウジング本体の平面図
【図12】ハウジング本体の背面図
【図13】ハウジング本体の要部拡大正面図
【図14】他方のハウジングの正面図
【符号の説明】
【0044】
10…一方のハウジング
11…ハウジング本体
12…カバー
27A…キャビティ
36…支持部
60…他方のハウジング
70…端子金具
73…接続部
73A…接触面
80…音叉端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合可能な一対のハウジングのうちの一方のハウジングには、電線の端末に接続された端子金具を収容可能なキャビティが幅方向に複数列でかつ高さ方向に複数段に亘って形成されており、
前記端子金具には、他方のハウジングとの嵌合によって相手端子と電気的に接触する接触面を有する接続部が前記一方のハウジングの嵌合面から露出して形成されており、
前記キャビティの全てに端子金具が収容されたときに、前記一方のハウジングの嵌合面に、前記接続部が幅方向に整列して配置されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記キャビティの配列は互いに幅方向に半ピッチずれた千鳥配置とされることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記一方のハウジングの嵌合面には、前記接続部の接触面の反対側面を支持する支持部が突出して形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記相手端子は、前記一方のハウジングとの嵌合によって前記接続部を高さ方向に弾性的に挟み込む板状の音叉端子によって構成され、その板面を高さ方向に沿わせるようにして前記他方のハウジングに装着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項5】
前記他方のハウジングの外面のうちの高さ方向の一方面には凹部が形成され、この凹部の底面にはロック受け部が形成され、前記一方のハウジングの外面のうちの高さ方向の一方面にはロック部が形成されており、このロック部が前記ロック受け部を係止することで、前記両ハウジングが離脱規制状態に保持されるようになっており、かつ、前記両ハウジングの嵌合状態において、前記両ハウジングの外面のうちの高さ方向の他方面は高さ方向に互いに重なり合わないことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項6】
前記一方のハウジングには、複数の前記キャビティからなるキャビティ部と、幅方向に複数の導体を並列させた帯状のフラットケーブルを収容するフラットケーブル収容部とが、それぞれ、前記ロック部を挟む幅方向の両側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−170323(P2009−170323A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8682(P2008−8682)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】