説明

コネクタ

【課題】防湿性に優れ、しかも温度変化があっても防湿特性を維持できるコネクタを提供する。
【解決手段】凸状接続端子3を有する凸状部3aと前記凸状接続端子3に接続する凹状接続端子4を有する凹状部4aで形成されるコネクタであって、前記凸状接続端子3と前記凹状接続端子4のうち固定構造部材に取り付けられた接続端子とその接続端子に連結されたハーネスとの接続部分が、受け容器状に形成された液体溜まり部7に溜められる疎水性のある液体9に浸漬して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、凹凸状の接続端子がそれぞれ形成され、固定されている一方の接続端子に他方の接続端子を連結することにより電気的な導通を成立させるコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、接続端子と接続端子とを接続する際にこの両接続端子を湿気から保護する技術が提案されている。その一例として、オス接続子とメス接続子を接続させる際にその接続通路に粘性絶縁材料であるグリスを注入してコネクタの絶縁を図る発明が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されているコネクタによれば、高湿度の状態でも不具合を生じないとされている。
【0003】
また、特許文献2には、光ファイバコネクタのフェルールの外表層に疎水性オイルの含浸層を形成した構成が記載されている。この特許文献2に記載されている光ファイバコネクタのフェルールによれば、フェルールに疎水性オイルの含浸層が形成されている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−20740号公報
【特許文献2】特開平3−7904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の発明では、高温度の場所で使用した場合にグリスが溶け出してしまう可能性があり、これを回避するためには密閉構造とする必要があり、その場合には、グリスを充填する特別な作業が必要となる可能性が生じる。
【0006】
また、特許文献2の発明では、フェルールに疎水性オイルの含浸層を形成するものの、フェルールは常に疎水性オイルに浸漬されてはおらず、またガイドピンにはその疎水性オイルの塗布も浸漬もないものとされている。したがってガイドピン付近に結露が発生する可能性がある。
【0007】
この発明は、上記の事情を背景にしてなされたものであり、防湿性に優れ、しかも温度変化があっても防湿特性を維持できるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、凸状接続端子を有する凸状部と前記凸状接続端子に接続する凹状接続端子を有する凹状部で形成されるコネクタにおいて、前記凸状接続端子と前記凹状接続端子のうち固定構造部材に取り付けられた接続端子とその接続端子に連結されたハーネスとの接続部分が、受け容器状に形成された液体溜まり部に溜められる疎水性のある液体に浸漬して構成されることを特徴とするコネクタである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記固定構造部材は、車両に搭載された変速機のケーシングであり、前記液体溜まり部は、前記ケーシングの内側に該ケーシングと一体に形成され、前記疎水性のある液体は、前記変速機の潤滑油であることを特徴とするコネクタである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載の発明において、前記変速機は、前記ケーシングの内部の前記潤滑油を掻き上げる回転部材を有し、前記液体溜まり部は、前記回転部材で掻き上げられた前記潤滑油を浸入させる開口部を有していることを特徴とするコネクタである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、凸状接続端子を有する凸状部と前記凸状接続端子に接続する凹状接続端子を有する凹状部で形成されるコネクタにおいて、前記凸状接続端子と前記凹状接続端子のうち固定構造部材に取り付けられた接続端子とその接続端子に連結されたリード線との接続部分が、受け容器状に形成された液体溜まり部に溜められる疎水性のある液体に浸漬しているので、凹凸状の接続端子とハーネスとの接続部分が結露するということがない。
【0012】
請求項2の発明によれば、前記固定構造部材は、車両に搭載された変速機のケーシングであり、前記液体溜まり部は、前記ケーシングの内側に該ケーシングと一体に形成され、前記疎水性のある液体は、前記変速機の潤滑油であるので、車両に搭載される凹凸状の接続端子とハーネスとの接続部分が結露するということがない。
【0013】
請求項3の発明によれば、前記変速機は、前記ケーシングの内部の前記潤滑油を掻き上げる回転部材を有し、前記液体溜まり部は、前記回転部材で掻き上げられた前記潤滑油を浸入させる開口部を有しているので、車両に搭載される凹凸状の接続端子とハーネスとの接続部分が結露するということがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明を実施した最良の形態について説明する。図1は、この発明に係るコネクタの実施例を模式的に示す断面図である。図1において、符号1はこの発明におけるコネクタであって、ここでは、たとえば車両に搭載される自動変速機(以下、トランスアクスルと記載する)にコネクタ1を構成した例を示している。
【0015】
トランスアクスル内部の図示しない各機構の動きを監視する各種のセンサ等の配線のため、トランスアクスルのケーシング2にコネクタ1が形成されている。そして、コネクタ1の多くはオイル漏れ等を回避するためにトランスアクスルのケーシング2の上部に設置されている。
【0016】
図1において、コネクタ1は、凸状接続端子3を有する凸状部3aとこの凸状接続端子3に接続する凹状接続端子4を有する凹状部4aで形成される。そして、凸状部3a例えば合成樹脂で形成され、図示しないセンサへの配線をする配線部5に繋がっている。また、この凹状接続端子4の先端部6が受け容器状に形成された液体溜まり部7の内部8に溜められる疎水性のある液体9に浸漬している。この疎水性のある液体9は、トランスアクスル内に蓄えられる油(以下、潤滑油と記載する)9である。この潤滑油9は電気的な絶縁性のある材料で構成されている。そして、潤滑油9はトランスアクスル内の図示しない各機構の潤滑、冷却、洗浄を担う役割を負っている。そのため、トランスアクスル内には液体溜まり部7の内部8には十分な量の潤滑油9が充填されている。
【0017】
液体溜まり部7は受け容器状にその内部8が形成されている。そして、その内部8には潤滑油9が溜められている。また、液体溜まり部7は、その一部が開口状態に開口部10が形成されている。そのため、この開口部10から潤滑油9が自由に液体溜まり部7の内部8に出入り可能である。開口部10の開口端10aの位置よりも凹状接続端子4の先端部(リード線などのハーネス11との接続部)6が、液体溜まり部7の内部8の底の方側に深く配置されている。そのため凹状接続端子4の先端部6が液体溜まり部7の内部8に溜められる潤滑油9に浸される。
【0018】
そして、上記のトランスアクスルは、そのケーシング2の内部に収容したギヤなどの回転部材12を有しており、車両の走行時や動力が入力されている場合にその回転部材12が回転するように構成されている。ケーシング2には、前述したように、十分な量の潤滑油9が封入されており、ケーシング2の底部に溜まっている潤滑油9を回転部材12が掻き上げ、あるいは回転部材12に付着した潤滑油9を回転部材12がその上方を含む外周側に振り払って飛散させるようになっている。したがって、上記の液体溜まり部7は、回転部材12によって掻き上げられた潤滑油9、あるいは回転部材12から飛散した潤滑油9がその開口部10から入り込み、その結果、常時、前記先端部6が浸る程度の潤滑油9を保持するように構成されている。
【0019】
これにより液体溜まり部7の内部8には潤滑油9が常に補充されるように構成されている。そのため、凹状接続端子4の先端部6は、常に潤滑油9に浸されている。したがって、ケーシング2の内部に、ブリーザー(図示せず)などから湿気が浸入したとしても、ケーシング2の内部の温度が低下した際に、凹状接続端子4の先端部6に結露が生じることがない。そして、凹状接続端子4の先端部6にはハーネス11が配設され、そのハーネス11がトランスアクスル内の図示しない各機構に接続されている。
【0020】
トランスアクスル内の温度は、およそ−30℃〜+120℃までの範囲の温度環境となる。その温度環境下でも凸状接続端子3やこれに接続する凹状接続端子4に凹状部4a、またその凹状接続端子4の先端部6およびハーネス11は充分にその熱に耐えられるように形成されている。
【0021】
温度が高くなることに伴ってケーシング2の内部の圧力が高くなると、ブリーザーから圧力が抜け、これとは反対に温度が低くなってケーシング2の内部の圧力が低下すると、ブリーザーから外気が吸入される。その結果、ケーシング2の内部に外気が導入されるから、外気と同様に湿気を含んだ空気がケーシング2の内部に入り込み、したがって車両が低温環境下に長時間停車するなどのことにより、トランスアクスルの全体の温度が低下すると、ケーシング2の内部で結露が生じることがある。しかしながら、上述したこの発明に係るコネクタでは、ケーシング2に取り付けられている凹状接続端子4の先端部6が、潤滑油9に浸漬されて空気に触れていないので、凹状接続端子4の先端部6に水分が付着することを回避することができる。また、潤滑油9を溜める構造であるから、凹状接続端子4の先端部6は温度の影響を受けない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係るコネクタの実施例の構成を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1…コネクタ、 2…ケーシング、 3…凸状接続端子、3a…凸状部、 4…凹状接続端子、 4a…凹状部、 5…配線部、 6…先端部、 7…液体溜まり部、 8…内部、 9…潤滑油、 10…開口部、 10a…開口端、 11…ハーネス、 12…回転部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸状接続端子を有する凸状部と前記凸状接続端子に接続する凹状接続端子を有する凹状部で形成されるコネクタにおいて、
前記凸状接続端子と前記凹状接続端子のうち固定構造部材に取り付けられた接続端子とその接続端子に連結されたハーネスとの接続部分が、受け容器状に形成された液体溜まり部に溜められる疎水性のある液体に浸漬して構成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記固定構造部材は、車両に搭載された変速機のケーシングであり、
前記液体溜まり部は、前記ケーシングの内側に該ケーシングと一体に形成され、
前記疎水性のある液体は、前記変速機の潤滑油である
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記変速機は、前記ケーシングの内部の前記潤滑油を掻き上げる回転部材を有し、
前記液体溜まり部は、前記回転部材で掻き上げられた前記潤滑油を浸入させる開口部を有している
ことを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。

【図1】
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【公開番号】特開2009−37855(P2009−37855A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200933(P2007−200933)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】