説明

コネクタ

【課題】簡易防水を図ったコネクタを提供する。
【解決手段】ハウジング10の前面には、ランス30の撓み空間35が開口して形成され、撓み空間35の奥側に、ランス30の根元部分の壁面41が臨んでいる。キャビティ26内に端子金具90が挿入される過程では、ランス30がその根元を支点として撓み空間35側へ撓み変形される。キャビティ26内に端子金具90が正規挿入されると、ランス30が弾性復帰して端子金具90のキャビティ26からの抜け止めがなされる。ランス30の根元部分の壁面41には、凹部42が開口して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のコネクタが開示されている。このものは、キャビティを有するハウジングを備え、ハウジングにおけるキャビティの内面には、撓み可能なランスが前方へ突出して形成されている。ハウジングの前面には、ランスの撓み空間が開口して形成され、撓み空間の奥側には、ランスの根元部分の壁面が臨んでいる。
【0003】
ハウジングのキャビティ内には後方から端子金具が挿入される。挿入過程では、端子金具がランスと干渉して、ランスがその根元を支点として撓み空間側へ撓み変形される。その後、端子金具が正規挿入されると、ランスが弾性復帰して端子金具を抜け止めするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−231077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のコネクタは、ハウジングにシール部材が装着されない非防水タイプのものである。しかし、かかる非防水タイプのコネクタにおいても、キャビティ内に水が浸入する可能性があり、仮に、端子金具に水が付着すると、接続信頼性が低下するおそれがある。もちろん、ハウジングにシール部材を装着すれば、所定の防水性を得ることができるが、シール部材を用意する分、コスト高になるという事情があり、なるべく簡易な防止構造が希求されている。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、簡易防水を図ったコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、端子金具を挿入可能なキャビティを有するハウジングを備え、前記ハウジングにおける前記キャビティの内面に、撓み可能なランスが突出して形成され、前記ハウジングの外面に、前記ランスの撓み空間が開口して形成され、前記撓み空間の奥側に、前記ランスの根元部分の壁面が臨んでおり、前記キャビティ内に前記端子金具が挿入される過程で、前記ランスがその根元を支点として前記撓み空間側へ撓み変形され、前記キャビティ内に前記端子金具が正規挿入されると、前記ランスが弾性復帰して前記端子金具の前記キャビティからの抜け止めをなすコネクタであって、前記ランスの根元部分の壁面に、凹部が開口して形成されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記凹部が、前記端子金具の挿入方向に延出して形成されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のものにおいて、前記凹部が、前記ランスの幅内に形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
ランスの根元部分の壁面が撓み空間に臨み、撓み空間がハウジングの外面に開口するため、ハウジングの外面から撓み空間内に浸入した水が、ランスの根元部分の壁面を伝って、キャビティ内に入り込み、端子金具に付着する可能性がある。しかし、本発明によれば、ランスの根元部分の壁面に凹部が開口して形成されているため、水が凹部内に入り込むことにより、端子金具への沿面距離を長くとることができる。その結果、コネクタの簡易防水を図ることができる。
【0011】
<請求項2の発明>
凹部が端子金具の挿入方向に延出して形成されているから、沿面距離がより長くなり、防水性が高められる。
【0012】
<請求項3の発明>
凹部がランスの幅内に形成されているから、ランスの根元部分の強度が脆弱になるのが回避され、ランスの撓み動作の円滑性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態1に係るコネクタにおいて、ハウジングが相手ハウジングと正規嵌合した状態を示す断面図である。
【図2】ハウジングのロックアーム部分の断面図である。
【図3】ハウジングの幅方向端部寄りの断面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】ハウジングの正面図である。
【図6】ハウジングの背面図である。
【図7】ハウジングの平面図である。
【図8】ハウジングの側面図である。
【図9】ハウジングの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図9によって説明する。実施形態1に係るコネクタは、通常よりも小型のコネクタであって、ハウジング10及び端子金具90を備え、相手コネクタに嵌合可能とされている。なお、以下の説明において前後方向については、両ハウジング10、60の嵌合面側を前方とする。
【0015】
相手コネクタは合成樹脂製の相手ハウジング60を備えている。図1に示すように、相手ハウジング60は角筒状のフード部61を有し、フード部61内には雄端子金具80のタブ81が突出して配置されている。フード部61の上壁の内面には、ロック部62が突出して形成されている。
【0016】
ハウジング10は合成樹脂製であって、全体として角ブロック状をなすハウジング本体11を有している。ハウジング本体11の上面における幅方向中央からやや一側へ寄った位置には、図6及び図7に示すように、凹溝12が前後方向の全長に亘って延出して形成されている。凹溝12の溝幅は、1cmにも満たない幅狭とされている。
【0017】
ハウジング本体11の凹溝12内には、ロックアーム13が配置されている。ロックアーム13は、凹溝12の底面前端に連結されて上方へ立ち上がる脚部14と、脚部14の上端から後方へ向けて略水平に延出されるアーム部15とを有している。アーム部15の後端は、ハウジング本体11の後端近傍にまで達している。
【0018】
アーム部15の上面の前後方向中間部には、ロック突起16が突出して形成されている。ロック突起16の上端は、ハウジング本体11の上面における凹溝12を挟んだ左右両側の面と同じ高さか又は少し低い位置に配されている。このため、ロック突起16は側面視して目視不能となっている。
【0019】
両ハウジング10、60の嵌合過程では、ロック突起16がロック部62と干渉することで、アーム部15が脚部14を支点として下方へ撓み変形される。また、両ハウジング10、60の正規嵌合時には、ロック突起16がロック部62にその後方から係止可能に配されて、両ハウジング10、60が離脱規制状態に保持されるようになっている。
【0020】
アーム部15の後端部には、図2にも示すように、解除操作部17が一段高くして形成されている。また、解除操作部17の後端には、解除リブ18が解除操作部17の全幅に亘って形成されている。アーム部15の両側縁には、解除操作部17と対応する位置に、左右一対の張出部19がこの両側縁に沿って形成されている。張出部19の側縁と凹溝12の側面との間は、後述する端子金具90に接続された電線51の外径よりも小さくされ、ここに前記電線51が噛み込まないように担保されている。
【0021】
また、ハウジング本体11の上面の後端部には、解除操作部17を挟んだ両側に、左右一対の保護部21が突出して形成されている。両保護部21の前部内縁には、左右一対の規制片22が内側(ロックアーム13側)へ突出して形成されている。規制片22に張出部19が当接することにより、アーム部15の上方への過度撓みが規制されるようになっている。
【0022】
保護部21の上面は、全面に亘ってフラットとされ、解除操作部17(解除リブ18を除く)の上面よりも上方でかつ解除リブ18とほぼ同じ高さ位置に配されている。両保護部21間でかつ解除操作部17(解除リブ18を除く)の上面上方には、解除空間が形成されている。両ハウジング10、60の嵌合状態を離脱させる際には、解除空間に指先を挿入し、指先の爪を解除リブ18に引っ掛けつつ、アーム部15を下方へ押圧することにより、ロック突起16をロック部62から離間させ、もってロック解除を行うようになっている。
【0023】
また、ハウジング本体11の上面の幅方向両端部には、ハウジング本体11のフード部61内への挿入案内をなす左右一対の上側ガイド突部23が前後方向に延出して形成されている。上側ガイド突部23の前端は、ハウジング本体11の前端よりも少し後方へ控えて配置され、上下方向に沿った垂直面とされている。上側ガイド突部23の後端は、ハウジング本体11の前後方向中央部に配置され、後方へ向けて下り勾配の斜面とされている。そして、両上側ガイド突部23の上面は、全面に亘ってフラットとされ、保護部21の上面とほぼ同じ高さ位置に配されている。仮に、ハウジング10を上下反転させてフラット面上に載せると、保護部21及び両上側ガイド突部23によってハウジング10が略水平にがた付きなく支持されるようになっている。
【0024】
ハウジング本体11の下面の幅方向両端部には、図9にも示すように、左右一対の下側ガイド突部24が形成されている。両下側ガイド突部24は、両上側ガイド突部23と略同形同大であって、両上側ガイド突部23と上下対称な位置関係にある。また、ハウジング本体11の下面の後端には、下側リブ25が幅方向に延出して形成されている。下側リブ25の下端は、両下側ガイド突部24の下端とほぼ同じ高さ位置に配されている。仮に、ハウジング10を水平面上に載せると、下側リブ25及び両下側ガイド突部24によってハウジング10が略水平にがた付きなく支持されるようになっている。
【0025】
また、ハウジング本体11内には、複数のキャビティ26が前後方向に貫通して形成されている。各キャビティ26は上下2段に整列して配置され、このうち、上段のキャビティ26は凹溝12を挟んで左右両側に分断されている。各キャビティ26内には後方から端子金具90が挿入される。
【0026】
端子金具90は導電性の金属板を曲げ加工等して一体に成形され、角筒状の箱部91とその後方に連なるオープンバレル状のバレル部92とを有している。バレル部92は、電線51の端末部にかしめ付けによって接続されている。両ハウジング10、60の嵌合動作に伴い、箱部91内に前方からタブ81が挿入され、正規挿入されたタブ81が箱部91内に撓み可能に形成された弾性接触片93に弾接して、両端子金具80、90同士の接続がとられるようになっている。
【0027】
箱部91の後端部には、上下夫々のスタビライザ94が突出して形成されている。ハウジング本体11内には上下一対の案内溝27が各キャビティ26に沿って形成され、各案内溝27に、スタビライザ94が挿入されて摺動可能となっている。かかるスタビライザ94により、端子金具90のキャビティ26内への挿入動作が案内され、かつ端子金具90のキャビティ26内への誤挿入が防止されるようになっている。また、箱部91には、後述するランス30が嵌合可能なランス孔96がスタビライザ94の切り起こしに伴って形成されている。
【0028】
ハウジング本体11におけるキャビティ26の内面には、撓み可能なランス30が形成されている。ランス30は、図3に示すように、キャビティ26の内壁下面の前後方向中間部に肉盛りされつつ前方へ延出するランス本体31と、ランス本体31の上面の先端部に突成されたランス突起32とからなる。図4にも示すように、ランス本体31の根元部分の一側縁には、下側の案内溝27が前後方向に延出して形成されている。ランス突起32の前面はややオーバハング状に前方へ迫り出す係止面33とされ、箱部91におけるランス孔96の前縁に係止可能とされている。ランス突起32の後面は前方へ向けて上り勾配で傾斜する案内斜面34とされ、キャビティ26内に挿入される端子金具90との円滑な摺動動作が担保されている。
【0029】
キャビティ26の内壁下面の略前半部は、略後半部に対して一段低い位置に配され、ランス本体31の下面の先端部との間に、ランス30の撓み空間35を保有している。撓み空間35はハウジング本体11の前面に開口されている。図5に示すように、ハウジング本体11の前面におけるキャビティ26の開口縁部及び撓み空間35の開口縁部には、前面に向けてラッパ状に拡開するテーパ部36が形成されている。
【0030】
また、ハウジング本体11には、撓み空間35とその上方に位置するキャビティ26との間を仕切る左右一対の側板37が形成されている。キャビティ26内に端子金具90が正規挿入されると、箱部91の下面の幅方向両端部が両側板37によって下支えされるようになっている。両側板37間は、ランス本体31及びランス突起32の両前端を成形するための金型の引き抜きに起因する型抜き孔38が形成されている。型抜き孔38は、ハウジング本体11の前面に開口され、かつキャビティ26及び撓み空間35と上下で連通されている。
【0031】
さて、ランス30の根元部分には、ランス本体31の下面と撓み空間35の下面とに連なって上下方向に切り立つ壁面41が撓み空間35を臨むように形成されている。そして、ランス30の根元部分の壁面41下部には、凹部42がランス30毎に開口して形成されている。凹部42は、断面矩形状をなし、ランス30の幅方向及び長さ方向の範囲内で、壁面41から後方へ向けて細長く延びる形状とされている。凹部42の後端は下側の案内溝27の前端よりも前方に配置されている。
【0032】
また、ハウジング本体11における撓み空間35の下面には、浅底の溝部43が撓み空間35の全長に亘って延出して形成されている。溝部43は、凹部42の下端部を成形するのに伴って形成されるものであって、凹部42の前端に連続するとともに、撓み空間35のテーパ部36を切り欠きつつハウジング本体11の前面に開口されている。かかる凹部42により、肉厚化されたランス30の根元部分の引けが防止されるようになっている。
【0033】
実施形態1に係るコネクタの構造は上述の通りであり、続いて、コネクタの作用効果について説明する。
ハウジング10のキャビティ26内に後方から端子金具90を挿入する。挿入の過程では、端子金具90の箱部91がランス突起32の案内斜面34を摺動して、ランス本体31がその根元を支点として撓み空間35側(下方)へ撓み変形される。端子金具90がキャビティ26内に正規挿入されると、ランス突起32がランス孔96に嵌り、それに伴ってランス本体31が弾性復帰して、端子金具90がキャビティ26内に抜け止め状態で収容される。
【0034】
次いで、両ハウジング10、60を互いに正対させ、その状態から両ハウジング10、60を互いに嵌合させる。両ハウジング10、60が正規嵌合されると、図1に示すように、ロックアーム13のロック突起16がロック部62を弾性係止して両ハウジング10、60が嵌合保持されるとともに、タブ81が箱部91内に正規深さで挿入され、両端子金具80、90が互いに導通接続される。両ハウジング10、60の嵌合過程では、保護部21及び下側リブ25をそれぞれ指で摘みながらハウジング10を相手ハウジング60のフード部61内に差し込むことが可能とされる。両ハウジング10、60が正規嵌合されると、保護部21の前端がフード部61の前端に近接して配置されるようになっている。
【0035】
ところで、このコネクタは、シール部材を有さない非防水タイプのものであるが、例えば、両ハウジング10、60が嵌合状態にあるときに、両ハウジング10、60の嵌合面(前面)間を水が伝って、ハウジング10のキャビティ26内に水が浸入し、端子金具90に水が付着するおそれがある。しかるに実施形態1によれば、仮に、両ハウジング10、60の嵌合面を伝って撓み空間35内に水が浸入しても、浸入した水が溝部43から凹部42内に入り込み、端子金具90に至るまでに凹部42内を迂回しなければならないため、端子金具90への沿面距離が長くなり、コネクタの簡易防水を図ることができる。
【0036】
また、凹部42が端子金具90の挿入方向となる前後方向に延出して形成されているから、沿面距離がより長くなり、防水性が高められる。さらに、凹部42がランス30の全幅内に形成されているから、ランス30の根元部分の強度が脆弱になるのが回避され、ランス30の撓み動作の円滑性が確保される。
【0037】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)凹部は、隣接するランス間に跨って形成されるものであってもよい。
(2)凹部は、任意形状であり、例えば、断面円形状をなすものであってもよい。
(3)ハウジングにリテーナ(フロントリテーナ、サイドリテーナ、バックリテーナ)が装着され、端子金具がリテーナ及びランスによって二重に係止される構成であってもよい。
(4)本発明は、ハウジングにシール部材を装着する防水タイプのコネクタにも適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
10…ハウジング
26…キャビティ
30…ランス
35…撓み空間
41…壁面
42…凹部
90…端子金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具を挿入可能なキャビティを有するハウジングを備え、前記ハウジングにおける前記キャビティの内面に、撓み可能なランスが突出して形成され、前記ハウジングの外面に、前記ランスの撓み空間が開口して形成され、前記撓み空間の奥側に、前記ランスの根元部分の壁面が臨んでおり、
前記キャビティ内に前記端子金具が挿入される過程で、前記ランスがその根元を支点として前記撓み空間側へ撓み変形され、前記キャビティ内に前記端子金具が正規挿入されると、前記ランスが弾性復帰して前記端子金具の前記キャビティからの抜け止めをなすコネクタであって、
前記ランスの根元部分の壁面に、凹部が開口して形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記凹部が、前記端子金具の挿入方向に延出して形成されている請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記凹部が、前記ランスの幅内に形成されている請求項1又は2記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−129297(P2011−129297A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285083(P2009−285083)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】