説明

コネクタ

【課題】ハウジングを成形する金型の構造を簡素化することのできるコネクタを提供する。
【解決手段】ハウジング20の背面壁21bの一部をハウジング本体21とは別体の端子保持部材22によって形成し、端子保持部材22をハウジング20の外壁面の一部(背面壁21bの内面及び外面)をなすように形成したので、ハウジング本体21を二次成形する際、端子保持部材22の周面(上端面、下端面及び幅方向両端面)とハウジング本体21となる部分のみを金型(図示せず)で密閉すればよく、各端子10を一本ずつ挿通する孔を金型に設ける必要がない。これにより、金型の構造を簡素化することができるので、端子10の本数及びピッチが同一でハウジングの形状が異なる複数種類のコネクタを製造する場合、製造設備に要するコストの低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプリント基板に取付けて使用されるコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコネクタとしては、一端を開口したハウジングと、ハウジングに互いに幅方向に間隔をおいて保持された複数の端子とを備え、各端子をハウジングの他端側の壁面を貫通するように設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
前記コネクタを製造する場合、ハウジングを合成樹脂のインサート成形によって各端子と一体に形成しているが、この場合は成形時に各端子をそれぞれ金型に保持しておかなければならず、金型の構造が複雑になるという問題がある。
【0004】
そこで、各端子を保持した端子保持部材を一次成形によって形成し、ハウジング本体(端子保持部材以外の部分)を端子保持部と一体に二次成形することにより、ハウジング用の金型で各端子を直接保持することなくハウジングを形成するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−19053号公報
【特許文献2】特開平7−106045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のように端子保持部材を一次成形によって形成するようにしたコネクタでは、端子保持部材をハウジング本体に埋設するようにしているため、各端子のハウジング本体から突出する部分を挿通するための複数の孔を金型に設けておかなければならず、その分だけ金型の構造が複雑になるという問題点があった。
【0007】
また、端子の本数及びピッチが同一でハウジングの形状の異なる複数種類のコネクタを製造する場合、若干の形状変更であれば、一部を交換可能な金型を用いて製造することができるが、ハウジングの形状が大幅に異なる場合には金型の一部交換では対応することができず、金型を全て新規に製作しなければならない。この場合、端子保持部材を一次成形によって形成するようにしても、前述のようにハウジング本体を成形する金型に各端子の突出部分を挿通する複数の孔を設けることによって金型の構造が複雑化するため、端子の本数及びピッチが同一であっても、ハウジングの形状が大幅に異なる複数種類のコネクタを製造する場合には、製造設備に要するコストが高くつくという問題点があった。
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ハウジングを成形する金型の構造を簡素化することのできるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的を達成するために、一端を開口したハウジングと、ハウジングに互いに幅方向に間隔をおいて保持された複数の端子とを備え、ハウジングの一部を各端子が保持された端子保持部材によって形成し、端子保持部材をハウジングの他の部分とは別体の部材によって形成したコネクタにおいて、前記端子保持部材を少なくとも各端子が貫通する部分のハウジングの外壁面をなすように形成している。
【0010】
これにより、端子保持部材の少なくとも各端子が貫通する部分がハウジングの外壁面をなすように形成されていることから、ハウジングの端子保持部材以外の部分を金型で成形する際、端子保持部材の各端子が貫通する部分以外の部分とハウジングの他の部分となる部分のみを金型で密閉すればよく、各端子を一本ずつ挿通する孔を金型に設ける必要がない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ハウジングの端子保持部材以外の部分を金型で成形する際、各端子を一本ずつ挿通する孔を金型に設ける必要がないので、金型の構造を簡素化することができ、例えば端子の本数及びピッチが同一でハウジングの形状が異なる複数種類のコネクタを製造する場合には、製造設備に要するコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示すコネクタの背面側斜視図
【図2】コネクタの正面図
【図3】コネクタの側面断面図
【図4】端子保持部材の部分斜視図
【図5】端子保持部材の側面断面図
【図6】図5のA−A線矢視方向断面図
【図7】ハウジング本体が二次成形される端子保持部材の側面断面図
【図8】溝の拡大正面断面図
【図9】ハウジングの形状が異なる他の種類のコネクタを示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図9は本発明の一実施形態を示すものである。同図に示すコネクタは、プリント基板に取り付けられ、相手側コネクタに接続して使用されるものである。
【0014】
本実施形態のコネクタは、互いに幅方向に間隔をおいて保持された複数の端子10と、各端子10を保持するハウジング20とを備え、各端子10はハウジング20の背面を貫通するように設けられている。
【0015】
各端子10は導電性を有する金属製のピンからなり、一端側が前後方向に延びるとともに、他端側が下方に屈曲するL字状に形成されている。各端子10は上下二列をなすように配列され、上側の端子10の他端側は下側の端子10の他端側に対して後方に配置されている。
【0016】
ハウジング20は一端側(前面)を開口した中空状の合成樹脂の成形品からなり、その前面開口部からプラグコネクタ等の相手側コネクタが嵌合するようになっている。ハウジング20は、相手側コネクタが嵌合するハウジング本体21と、各端子10を保持する端子保持部材22とからなり、端子保持部材22には各端子10が前後方向に貫通するように保持されている。ハウジング本体21は、上面壁21a、背面壁21b、底面壁21c及び左右側面壁21dからなり、背面壁21bの一部(略下半分)は端子保持部材22によって形成されている。端子保持部材22はハウジング本体21とは別体の部材からなり、背面壁21bと同等の厚さを有する四角形状の板状部材によって形成されている。この場合、端子保持部材22はその周面(上端面、下端面及び幅方向両端面)のみがハウジング20の他の部分と一体をなし、その厚さ方向両面はハウジング20の外壁面(背面壁21bの内面及び外面)をなすように形成されている。端子保持部材22の上端面及び下端面にはそれぞれハウジング20の幅方向に延びる溝22aが設けられ、各溝22a内には端子保持部材22を貫通する端子10の一部が溝22aの底面と間隔をおいて配置されている。各溝22a内には各端子10の間を仕切る仕切部22bが設けられ、各仕切部22bは端子10と幅方向に間隔をおいて配置されている。この場合、各仕切部22bの高さは、端子保持部材22の上端面(下端面)よりも低く、各端子10の上端または下端と同等の高さになっている。
【0017】
以上の構成からなるコネクタを製造する場合には、まず、各端子10を保持した端子保持部材22を合成樹脂の一次成形品によって形成する。次に、図7に示すようにハウジング本体21をインサート成形によって端子保持部材22と一体に成形することにより、ハウジング本体21を二次成形品として形成する。その際、二次成形時にハウジング本体21の合成樹脂が端子保持部材22の各溝22a内に流入して硬化することにより、端子保持部材22とハウジング本体21が各溝22aによって形成される凹凸により確実に係合する。また、各溝22a内には端子10の一部が溝22aの底面及び仕切部22bと間隔をおいて配置されているので、図8に示すように各溝22a内に流入した合成樹脂が端子10の周囲に回り込み、各端子10がハウジング本体21側の合成樹脂によっても保持される。
【0018】
このように、本実施形態のコネクタによれば、ハウジング20の背面壁21bの一部をハウジング本体21とは別体の端子保持部材22によって形成し、端子保持部材22をハウジング20の外壁面の一部(背面壁21bの内面及び外面)をなすように形成したので、ハウジング本体21を二次成形する際、端子保持部材22の周面(上端面、下端面及び幅方向両端面)とハウジング本体21となる部分のみを金型(図示せず)で密閉すればよく、各端子10を一本ずつ挿通する孔を金型に設ける必要がない。これにより、金型の構造を簡素化することができるので、端子10の本数及びピッチが同一でハウジングの形状が異なる複数種類のコネクタを製造する場合、製造設備に要するコストの低減を図ることができる。即ち、図9に示すように前記実施形態と同一の端子保持部材22を一次成形品として用い、前記実施形態とは異なる形状のハウジング30を二次成形することにより、他の種類のコネクタを共通部品(端子保持部材22)を用いて製造することができるとともに、二次成形用(ハウジング本体31用)の新たな金型の構造も簡素化することができる。
【0019】
この場合、端子保持部材22を背面壁21bの他の部分と同等の厚さ寸法に形成することができるので、従来のように端子保持部材をハウジングに埋設するようにしたものに比べ、背面壁21bの厚さ寸法が無用に大きくなることがなく、ハウジング20の小型化に極めて有利である。
【0020】
また、ハウジング20の他の部分を合成樹脂のインサート成形によって端子保持部材22と一体に形成するようにしているので、端子保持部材22とハウジング20の他の部分とを容易に一体化することができ、生産性の向上を図ることができる。
【0021】
更に、端子保持部材22に設けた溝22aに、ハウジング本体21をなす合成樹脂の一部が二次成形時に流入して硬化することにより、端子保持部材22をハウジング本体21に係合するようにしたので、成形後の端子保持部材22とハウジング本体21とを確実に結合することができ、耐久性の向上を図ることができる。
【0022】
また、端子保持部材22の溝22a内に配置される各端子10の一部が溝22aの底面及び仕切部22bと間隔を有するようにしたので、溝22a内に流入した合成樹脂を端子10の周囲に回り込ませることができ、二次成形の合成樹脂によっても各端子10を保持することができる。これにより、二次成形によって各端子10の保持力を十分確保することができるので、例えば端子保持部材22に各端子10を圧入するようにした場合、圧入時の挿入力を少なくすることができ、圧入時の端子10の損傷防止に効果的である。
【0023】
尚、前記実施形態では、ハウジング本体21をインサート成形によって端子保持部材22と一体に形成するようにしたものを示したが、ハウジング本体21を端子保持部材22とは別体の部材によって形成し、接着、溶着または嵌合等によって端子保持部材22と結合するようにしてもよい。
【0024】
また、前記実施形態では、端子保持部材22をハウジング20の背面壁21bの一部をなすように形成したものを示したが、少なくとも各端子10が貫通する部分のハウジング20の外壁面をなすものであれば、背面壁21bの全体、或いはハウジング本体の一部をも含むように形成することも可能である。
【符号の説明】
【0025】
10…端子、20…ハウジング、21…ハウジング本体、21b…背面壁、22…端子保持部材、22a…溝、30…ハウジング、31…ハウジング本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を開口したハウジングと、ハウジングに互いに幅方向に間隔をおいて保持された複数の端子とを備え、ハウジングの一部を各端子が保持された端子保持部材によって形成し、端子保持部材をハウジングの他の部分とは別体の部材によって形成したコネクタにおいて、
前記端子保持部材を少なくとも各端子が貫通する部分のハウジングの外壁面をなすように形成した
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングの他の部分を合成樹脂のインサート成形によって端子保持部材と一体に形成した
ことを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記端子保持部材に、ハウジングの他の部分をなす合成樹脂の一部が成形時に流入する溝を設けた
ことを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記端子保持部材を、前記溝内に配置される各端子の一部が溝の底面と間隔を有するように形成した
ことを特徴とする請求項3記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−216404(P2011−216404A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85121(P2010−85121)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(390012977)イリソ電子工業株式会社 (76)
【Fターム(参考)】