説明

コネクタ

【課題】充填剤に触れないようにすることが可能な、また、充填剤の充填量を少なくしてコスト低減を図ることが可能なコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、高圧電線2の端末の端子金具3と、この端子金具3を収容する端子収容部14を有するコネクタハウジング4とを備える。コネクタ1は、コネクタハウジング4の充填室15に充填される充填剤Aにて防水が施される。コネクタ1は、コネクタハウジング4に嵌合するとともに充填室15から引き出される高圧電線2に係合するホルダー5を更に備える。このホルダー5には、充填室15の開口を横切り且つ一部が充填剤中に浸漬されるリブ26を一体に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化する充填剤を用いて防水をするコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
充填剤を用い、そして、この充填剤を硬化させることにより防水をするコネクタとしては、例えば下記特許文献1〜3に開示されている。開示技術によれば、コネクタを構成するコネクタハウジングには、充填剤を充填するための充填室が形成されている。この充填室に充填された充填剤は、この後に硬化し、そして、硬化した状態にあっては、電線を伝って電気的な接続部分まで水分等を浸入させないようにすることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2713846号公報
【特許文献2】特開2003−317876号公報
【特許文献3】特開2006−156052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充填剤を用いて防水をする従来のコネクタにおいて、充填剤は硬化するまでに多少の時間がかかることから、硬化するまでの間に次のようなことが生じてしまうという虞を有している。すなわち、充填室を大きく開口形成する必要があるような場合には、例えば作業者が誤って指を入れてしまうことが考えられ、その際に硬化前の充填剤に触れてしまうという虞を有している(例えば特許文献3に開示された充填室の場合が該当する)。従って、従来のコネクタにあっては、改善をする余地があると言える。尚、カバーを設けて充填室を覆うように改善をする場合、カバーで隠れて充填剤の硬化が完了したか否かを確認することができないことから、不十分な改善になってしまうと言える。
【0005】
この他、従来のコネクタにあっては、充填剤が比較的高価である場合に、充填量が多くなればなるほどコスト高になってしまうという問題点を有している。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、充填剤に触れないようにすることが可能なコネクタを提供することを課題とする。また、充填剤の充填量を少なくしてコスト低減を図ることが可能なコネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明のコネクタは、電線の端末に設けられる端子金具と、該端子金具を収容する端子収容部を有するコネクタハウジングとを備えるとともに、該コネクタハウジングの充填室に充填される充填剤にて防水をするコネクタにおいて、前記端子金具の電線接続部と該電線接続部に連続する電気接触部の連続部分とを少なくとも前記充填剤中に浸漬することが可能に前記充填室を配置形成する一方、前記コネクタハウジングに嵌合し且つ前記充填室から引き出される前記電線に係合するホルダーを備え、該ホルダーには、前記充填室の開口を横切り且つ一部が前記充填剤中に浸漬されるリブを一体に形成することを特徴とする。
【0008】
このような特徴を有する本発明によれば、ホルダーに形成されるリブの存在によって、作業者の指が充填剤に触れてしまうことを避けることが可能になる。また、本発明によれば、リブであることから充填室の開口全体を覆うのではなく、結果、充填剤を臨むことができて硬化が完了したか否かを確認することが可能になる。さらに、本発明によれば、リブの一部が充填剤中に浸漬されるようになることから、この浸漬の分だけ充填剤の充填量を削減することが可能になる。
【0009】
請求項2記載の本発明のコネクタは、請求項1に記載のコネクタにおいて、前記リブを、前記連続部分又は前記電線接続部に対応する位置まで延びるように形成するとともに、このような前記リブには、前記一部から前記充填室の底側に延出して前記連続部分又は前記電線接続部に当接可能な延出部を一体に形成することを特徴とする。
【0010】
このような特徴を有する本発明によれば、ホルダーをコネクタハウジングに嵌合させる際に、延出部が端子金具に当接すれば、端子金具が端子収容部に対して半嵌合状態であることが検知可能になる。また、本発明によれば、延出部の分だけ充填剤の充填量を削減することが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された本発明によれば、充填剤に対し触手防止をすることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、充填剤の充填量を少なくしてコスト低減を図ることができるという効果を奏する。
【0012】
請求項2に記載された本発明によれば、端子金具の半嵌合検知をすることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、充填剤の充填量をさらに少なくしてコスト低減に寄与することができるという効果をすする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のコネクタを示す断面図である。
【図2】図1のコネクタの斜視図である。
【図3】図1のコネクタの平面図である。
【図4】図1のホルダーの斜視図である。
【図5】図1のコネクタを含むワイヤハーネスの図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
コネクタは、電線端末の端子金具と、この端子金具を収容する端子収容部を有するコネクタハウジングとを備える。コネクタは、コネクタハウジングの充填室に充填される充填剤にて防水が施される。コネクタは、コネクタハウジングに嵌合するとともに充填室から引き出される電線に係合するホルダーを更に備える。このホルダーには、充填室の開口を横切り且つ一部が充填剤中に浸漬されるリブを一体に形成する。
【実施例】
【0015】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1は本発明のコネクタを示す断面図である。また、図2及び図3はコネクタの斜視図及び平面図、図4はホルダーの斜視図、図5は図1のコネクタを含むワイヤハーネスの図である。
【0016】
図1において、引用符号1は本発明のコネクタを示している。コネクタ1は、本実施例において図5に示す如くのワイヤハーネス51の一端に設けられている(ワイヤハーネス51に関しては一例であるものとする)。図5において、ワイヤハーネス51は、高圧用のものであって、3本の高圧電線2(図1参照)を有しており、この3本の高圧電線2は一括して編組52にて覆われている。編組52の外側には、コルゲートチューブ53や筒部材54やプロテクタ55等の保護部材が設けられている。以下、コネクタ1について説明をする。
【0017】
図1において、コネクタ1は、高圧用のコネクタであって、比較的大きなものに形成されている。コネクタ1は、各高圧電線2(電線)の端末に設けられる導電性の端子金具3と、絶縁性を有する樹脂製のコネクタハウジング4と、このコネクタハウジング4に嵌合する樹脂製のホルダー5と、例えば相手側筐体に固定される金属製の固定部6(図5参照)とを備えて構成されている。コネクタ1には、防水が施されている(防水に関しては後述する)。
【0018】
端子金具3は、高圧電線2の端末が接続される電線接続部7と、相手端子(図示省略)に接触してこれに接続される電気接触部8とを有している。端子金具3は、電線接続部7と電気接触部8との連続部分9が略直角に折り曲げられてL字状となる形状に形成されている。電線接続部7は、高圧電線2の導体を加締めにより接続することができるように形成されている。電気接触部8の所定位置には、ボルト挿通孔10が貫通形成されている。このボルト挿通孔10と連続部分9との間には、コネクタハウジング4の後述する端子収容部14に対する嵌合部(符号省略)が形成されている。嵌合部は、略爪状の小さな突起であって、複数形成されている。端子金具3は、嵌合部が端子収容部14に対して嵌合することにより、抜けが防止されるようになっている。尚、嵌合部が端子収容部14に対して完全に嵌合しない場合にあっては、半嵌合の状態になってしまうことになる。半嵌合状態は、抜け等の不具合の原因になってしまうと言える。本発明では、後述するが、半嵌合の状態を検知することができるようになっている。
【0019】
図1ないし図3において、コネクタハウジング4は、射出成形により成形される樹脂成形品であって、図示しない相手側に対する相手側嵌合部11と、防水を施す部分となる防水形成部12と、これら相手側嵌合部11及び防水形成部12を連結するような連結部13とを有して例えば図示のような形状に形成されている。相手側嵌合部11は、この内部空間に端子金具3の電気接触部8を露出させることができるように形成されている。
【0020】
相手側嵌合部11と防水形成部12との間となる連結部13には、端子収容部14が形成されている。端子収容部14は、連結部13の内部を貫通するように形成されている。端子収容部14は、防水形成部12の側から端子金具3の電気接触部8を挿通することができるように、また、端子金具3の嵌合部(符号省略)を引っ掛けて係止することができるように形成されている。
【0021】
防水形成部12は、上記の如く防水を施す部分であって、充填剤を充填するための充填室15を有している。充填室15は、図中矢印Pの方向を前後方向、矢印Qの方向を上下方向、矢印Rの方向を左右方向と定義すると、前壁16と、左右の側壁17と、この左右の側壁17の間に位置する二つの隔壁18とにより区画形成されている。防水形成部12(充填室15)は、後側と上側とを開口(開放)するように、また、底19を有するように形成されている。前壁16の近傍において、底19には、端子収容部14の一端が開口するようになっている。防水形成部12(充填室15)は、この上側の開口を介して端子金具3が収容・装着されるようになっている。上側の開口は、端子金具3の電線接続部7及び連続部分9の平面視形状に配慮して形成されている。
【0022】
防水形成部12の後側には、ホルダー嵌合部20が形成されている。このホルダー嵌合部20は、ホルダー5を嵌合させるための部分であって、ホルダー挿入部分21と、ホルダー係止部分22とを有している。ホルダー挿入部分21は、ホルダー5の後述する被覆係合部分28に対応するように形成されている。また、ホルダー係止部分22は、略爪状の突起であって、ホルダー5の後述する係止アーム部分29を引っ掛けて係止することができるように形成さている。ホルダー係止部分22は、左右の側壁17の外面に配置形成されている。
【0023】
防水形成部12は、上記の他に、ホルダー5の後述するリブ26を係止するためのリブ係止部分23を有している。リブ係止部分23は、防水形成部12の前側であって、左右の側壁17及び二つの隔壁18にそれぞれ形成されている。
【0024】
図1ないし図4において、ホルダー5は、コネクタハウジング4と同様、射出成形により成形される樹脂成形品であって、コネクタハウジング4の防水形成部12に嵌合し、且つ充填室15から引き出される高圧電線2の被覆部分24に係合するようなホルダー本体25と、このホルダー本体25に一体形成される複数のリブ26と、複数のリブ26に跨って形成される第二リブ27とを有して図4に示す如くの形状に形成されている。
【0025】
ホルダー本体25は、コネクタハウジング4のホルダー挿入部分21に挿入されて高圧電線2の被覆部分24に係合する被覆係合部分28と、コネクタハウジング4のホルダー係止部分22に引っ掛かり係止される係止アーム部分29とを有している。被覆係合部分28は、高圧電線2の数に合わせて突出形成されている。被覆係合部分28の先端には、高圧電線2の被覆部分24に密着するような半円筒形状の押圧溝30が形成されている。被覆係合部分28及び押圧溝30は、充填室15に充填剤が充填されると、この充填剤の漏れを防止することができるように形成されている。係止アーム部分29は、ホルダー本体25の左右両側部となる位置に配置形成されている。係止アーム部分29は、略枠状となるアーム形状に形成されている。
【0026】
リブ26は、充填室15の上側の開口を横切るように、また、端子金具3の連続部分9(又は電線接続部7)に対応する位置まで延びるように配置形成されている。リブ26は、作業者の指幅よりも側壁17との間隔や、隔壁18との間隔が狭くなるように配置形成されている。リブ26は、作業者が誤って指を入れてしまうことを防止するために、また、充填室15に充填された硬化前の充填剤に触れてしまうことを防止するために設けられている。リブ26は、本実施例の形状の他に、例えば格子状に形成してもよいものとする。リブ26は、本実施例において、この先端(自由端部)が防水形成部12の前壁16に支持されるように形成されている。
【0027】
リブ26は、この下側が充填剤浸漬部分31(特許請求の範囲に記載したリブの一部に相当)として形成されている。充填剤浸漬部分31は、充填室15に充填された充填剤に浸漬される部分であって、浸漬の分だけ充填剤の充填量を低減することを目的に形成されている。このようなリブ26の下側には、充填室15の底19側に延出するような延出部32が一体形成されている。
【0028】
延出部32は、端子金具3の半嵌合検知をする部分として形成されている。延出部32は、本実施例において、端子金具3の連続部分9に対応する位置に配置形成されている(電線接続部7に対応する位置であってもよいものとする)。延出部32は、ホルダー5をコネクタハウジング4に嵌合させる際、仮に端子金具3に当接したとすれば、端子金具3が端子収容部14に対して半嵌合状態であることが分かるような部分として形成されている。延出部32は、充填剤浸漬部分31よりも下方へ突出することから、この延出部32の分だけ充填剤の充填量を削減することが可能になっている。
【0029】
第二リブ27は、複数のリブ26の間隔を保つように形成されている。第二リブ27には、コネクタハウジング4のリブ係止部分23に係止される被係止部分33が複数形成されている。
【0030】
上記構成及び構造において、高圧電線2の端末の端子金具3をコネクタハウジング4に収容すると、防水形成部12(充填室15)の上側の開口からは端子金具3の連続部分9及び電線接続部7を臨むことができるような状態になる。また、この時、防水形成部12(充填室15)の後側の開口からは高圧電線2が引き出されるような状態になる。
【0031】
コネクタハウジング4(防水形成部12)に対しホルダー5を嵌合させると、高圧電線2にはホルダー5の被覆係合部分28が係合し、これにより押さえ付けられる。ホルダー5がコネクタハウジング4に嵌合することにより、被覆係合部分28は、防水形成部12(充填室15)の後側の開口を塞ぐようになる。また、ホルダー5の嵌合により、リブ26が充填室15の上側の開口を横切るような状態になる。
【0032】
このような状態において、充填室15に充填剤をディスペンサー等で充填すると、リブ26の充填剤浸漬部分31が充填剤に浸漬されるような状態になる(図1の仮想線Aを充填剤とすれば、浸漬状態が分かる)。充填室15に充填された充填剤(仮想線A参照)は、これが硬化するまで多少時間を要するが、ホルダー5のリブ26の存在によって、作業者の指が充填剤に触れてしまうような不都合はない。
【0033】
ホルダー5は、充填室15の上側の開口全体を覆うものではないことから、充填剤を臨むことができ、硬化が完了したか否かを確認することができる。
【0034】
以上、図1ないし図5を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、充填剤に対し触手防止をすることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、充填剤の充填量を少なくしてコスト低減を図ることができるという効果を奏する。
【0035】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
1…コネクタ
2…高圧電線(電線)
3…端子金具
4…コネクタハウジング
5…ホルダー
6…固定部
7…電線接続部
8…電気接触部
9…連続部分
10…ボルト挿通孔
11…相手側嵌合部
12…防水形成部
13…連結部
14…端子収容部
15…充填室
16…前壁
17…側壁
18…隔壁
19…底
20…ホルダー嵌合部
21…ホルダー挿入部分
22…ホルダー係止部分
23…リブ係止部分
24…被覆部分
25…ホルダー本体
26…リブ
27…第二リブ
28…被覆係合部分
29…係止アーム部分
30…押圧溝
31…充填剤浸漬部分(リブの一部)
32…延出部
33…被係止部分
51…ワイヤハーネス
A…充填剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末に設けられる端子金具と、該端子金具を収容する端子収容部を有するコネクタハウジングとを備えるとともに、該コネクタハウジングの充填室に充填される充填剤にて防水をするコネクタにおいて、
前記端子金具の電線接続部と該電線接続部に連続する電気接触部の連続部分とを少なくとも前記充填剤中に浸漬することが可能に前記充填室を配置形成する一方、
前記コネクタハウジングに嵌合し且つ前記充填室から引き出される前記電線に係合するホルダーを備え、
該ホルダーには、前記充填室の開口を横切り且つ一部が前記充填剤中に浸漬されるリブを一体に形成する
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記リブを、前記連続部分又は前記電線接続部に対応する位置まで延びるように形成するとともに、このような前記リブには、前記一部から前記充填室の底側に延出して前記連続部分又は前記電線接続部に当接可能な延出部を一体に形成する
ことを特徴とするコネクタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−228112(P2011−228112A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96666(P2010−96666)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】