説明

コネクタ

【課題】機器内に水が浸入することを簡素な構成で防止でき、取付性にも優れるコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ1は、複数の電線10を保持可能であり、当該複数の電線10を外部の機器90に接続するためのものである。また、このコネクタ1は、カバー部30と、シール部材20と、を備える。カバー部30は、機器90に形成された接続孔91に対して複数の電線10が挿入されるように、当該機器90に取付可能である。シール部材20には、電線保持孔22と、シール面21と、が形成されている。電線保持孔22は、電線10を伝って機器90内に水が浸入することを防止する。シール面21は、取付面92及び接続孔91を伝って機器90内に水が浸入することを防止する。なお、シール面21はループ状に構成され、当該シール面21の内側を複数の電線10がまとめて通過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水構造を備えるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電線を保持可能なコネクタを外部の機器に取り付ける場合において、機器に形成された接続孔に電線を挿入して、電線の端部に形成される端子と機器側の端子とを電気的に接続する構成が知られている。このようなコネクタによる接続構造においては、電線を伝う経路(第1の経路)、又は、接続孔が形成される面(コネクタが取り付けられる面)及び接続孔の内壁面を伝う経路(第2の経路)を介して、機器内に水が浸入する可能性がある。特許文献1から3までは、上記の構成で機器に取り付けられ、かつ上記の2つの経路からの浸水を防止した構成のコネクタを開示する。
【0003】
特許文献1のコネクタは、機器に接続孔(貫通孔)が1つだけ形成され、その接続孔に複数の電線をまとめて挿入してコネクタを取り付ける構成となっている。この特許文献1のコネクタにおいては、第1の経路からの浸水を防止するために、電線の外周面に密着するように円筒状のゴム栓を当該電線毎に取り付けている。また、このコネクタは、第2の経路からの浸水を防止するために、枠状に形成されたシールリングを接続孔の内周面に密着するように取り付ける構成となっている。
【0004】
特許文献2の実施形態2は、機器に複数の接続孔が形成され、それぞれの接続孔に1つずつ電線を挿入してコネクタを取り付ける構成となっている。この特許文献2のコネクタにおいては、筒状のゴムブーツが電線毎に取り付けられている。このゴムブーツの軸方向の長さは、特許文献1に示すゴム栓よりも相当に長く形成されている。そして、ゴムブーツの内周面は、電線及び電線に取り付けられた筒状の部材の外周面と密着できるような形状に構成されているため、第1の経路からの浸水を防止することができる。また、このコネクタにおいては、第2の経路からの浸水を防止するために、枠状に形成されたシールリングを、接続孔の内周面に密着するように接続孔毎に取り付けている。
【0005】
特許文献3の構成は、特許文献2と同様に、機器に形成された複数の接続孔に1つずつ電線を挿入してコネクタを取り付ける構成となっている。この特許文献3のコネクタは、電線の外周面及び接続孔の内周面と密着可能な筒形嵌合部を、保持する電線毎に備えている。この構成により、2つの経路からの浸水を防止することができる。なお、この複数の筒形嵌合部は、それぞれの一端部同士において連結されており、まとめて取り扱うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−281654号公報
【特許文献2】特開2002−373730号公報
【特許文献3】特開2002−246112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1及び2の構成は、第1の経路からの浸水を防止するために、電線毎に防水部材(ゴム栓、ゴムブーツ)を取り付ける必要がある。また、これらの構成は、第1の経路からの浸水を防止する防水部材に加えて、第2の経路からの浸水を防止する防水部材(シールリング)が更に必要となる。特に、特許文献2の構成では、第2の経路からの浸水を防止するために、接続孔毎にシールリングが必要になる。そのため、コネクタの部品点数が増加してしまい、コネクタの構成が複雑になり、コネクタの組立工数が増加してしまう。
【0008】
この点、特許文献3の構成は、2つの経路からの浸水を1つの防水部材で防止できる。しかし、特許文献3の構成では、複数の電線を対応した接続孔にそれぞれ挿入する必要があるため、機器へのコネクタの取付けが煩雑になることがある。また、特許文献3の防水部材は複数の筒形嵌合部と連結部とを備える構成であるため、複雑な形状となってしまう。従って、防水部材の製造に用いる金型が複雑になり、製造コストが増加することがある。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、機器内に水が浸入することを簡素な構成で防止でき、取付性にも優れるコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の観点によれば、複数の電線を保持可能であり、当該複数の電線を外部の機器に接続するためのコネクタにおいて、以下の構成が提供される。即ち、このコネクタは、取付部と、シール部材と、を備える。前記取付部は、前記機器に形成された接続孔に対して前記電線が挿入されるように、当該機器に取付可能である。前記シール部材は、前記機器内に水が浸入することを防止する。また、前記シール部材には、第1防水部と、第2防水部と、が形成されている。前記第1防水部は、前記電線を伝って前記機器内に水が浸入することを防止する。前記第2防水部は、前記接続孔が形成される面及び前記接続孔を伝って前記機器内に水が浸入することを防止する。なお、前記第2防水部はループ状のシール面で構成され、前記シール面の内側を複数の電線がまとめて通過する。
【0012】
これにより、2つの経路(電線を伝わる経路及び接続孔等を伝わる経路)からの浸水を単一のシール部材によって防止できる。そのため、浸水を防止する部材を経路毎に配置する構成に比べて、部品点数を削減することができる。従って、コネクタの構成を簡素化できるとともに、製造コスト及び組立工数を低減できる。また、上記の構成は、1つの接続孔に対して複数の電線を挿入して機器と電線とを接続する構成にしても確実にシールを行うことができる。従って、機器に複数の接続孔を形成する必要をなくすことができ、接続作業を容易にすることができる。
【0013】
前記のコネクタにおいては、前記シール部材には、電線の外周面と密着するように当該電線を保持可能な複数の保持孔が、前記第1防水部として形成されていることが好ましい。
【0014】
これにより、複数の電線についての電線を伝わる経路からの浸水を簡素な構成で防止できる。また、シール部材が電線を保持することができるので、電線を保持するための特別な部材が不要になり、コネクタの構成を簡素化できる。
【0015】
前記のコネクタにおいては、前記シール面は、前記接続孔が形成される面に対して、当該接続孔を囲うように密着可能であることが好ましい。
【0016】
即ち、防水のための部材を接続孔の内部に挿入してシールを行う場合は、当該部材を接続孔の形状に応じて形成する必要がある。この点、上記の構成では、接続孔を囲うことができればシール面の形状は任意であるため、接続孔の形状が複雑な場合であっても、シール部材を容易に形成することができる。
【0017】
前記のコネクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記シール部材は、前記取付部に取付可能に構成されている。前記シール部材又は前記取付部には、前記取付部に対する前記シール部材の相対移動を規制して、前記取付部から前記シール部材が外れることを防止する規制部が形成される。
【0018】
これにより、シール部材が外れることを防止する特別な部材が不要になり、コネクタの構成を簡素化できる。
【0019】
前記のコネクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、このコネクタは、遮蔽部と、保持部と、を備える。前記遮蔽部は、前記複数の電線をまとめて覆うように配置され、当該電線を流れる信号に発生するノイズを低減する。前記保持部は、前記遮蔽部を保持する。前記規制部は、前記電線の長手方向に少なくとも2箇所形成され、当該2つの規制部の間の位置で前記保持部が前記遮蔽部を保持する。
【0020】
これにより、コネクタの組立て時において、遮蔽部を保持する位置を作業者が簡単に認識することができるので、遮蔽部を取り付ける作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタの斜視図。
【図2】コネクタの分解斜視図。
【図3】コネクタが機器に取り付けられる様子を示す側面断面図。
【図4】機器に接続されたコネクタの様子を示す側面断面図。
【図5】コネクタの組立方法の前半部を示す側面断面図。
【図6】コネクタの組立方法の後半部を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。初めに、図1から図4を参照してコネクタ1の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタ1の斜視図である。図2は、コネクタ1の分解斜視図である。図3は、コネクタ1が機器90に取り付けられる様子を示す側面断面図である。図4は、機器90に接続されたコネクタ1の様子を示す側面断面図である。
【0023】
初めに、コネクタ1及び機器90の構成及び取付方法の概要について説明する。本実施形態のコネクタ1は、自動車等が備える機器90(図3を参照)に電線10を電気的に接続するために用いられる。このコネクタ1は、図1等に示すように、複数(3本)の電線10を保持している。一方、機器90は、図3等に示すように、平坦な取付面92を有している。この取付面92には、電線10を挿入して接続するための接続孔91が形成されている。そして、接続孔91に電線10を挿入した後に、コネクタ1を取付面92に固定することにより、コネクタ1を機器90に取り付けることができる(図4)。
【0024】
以下、このコネクタ1の詳細な構成について説明する。コネクタ1は、図2等に示すように、シール部材20と、カバー部(取付部)30と、クランプ部(保持部)40と、ケーブルブーツ60と、を主要な構成として備えている。なお、以下の説明において、電線10が保持される箇所における当該電線10の軸方向(長手方向)のことを単に「軸方向」と称し、当該軸方向に垂直な方向を単に「垂直方向」と称することがある。また、コネクタ1において、機器90に取り付けられる側(端子部11側)を「機器側」と称し、その反対側を単に「反機器側」と称することがある。
【0025】
図3等に示すように、電線10はコネクタ1(詳細には後述の電線保持孔22)に保持されており、この電線10の軸方向一端側の端部には、端子部11が備えられている。この端子部11は、機器90が有する図略の端子と電気的に接続できるように構成されている。
【0026】
カバー部30は、コネクタ1の各構成が取り付けられるとともに、コネクタ1を機器90に取り付けるための金属製の筒状部材である。カバー部30は、図2及び図3に示すように、軸方向の位置によって断面形状が異なるように形成されている。カバー部30の内部には、シール部材20を取り付けるための中空部35が形成されており、この中空部35を電線10が通過している。また、カバー部30には、図3に示すように、軸方向の中央部から反機器側に掛けて、軸方向に垂直に切った断面が一様な中途部34が形成されている。
【0027】
また、図2に示すように、カバー部30は、機器側の端部において前記軸方向に垂直な向きに突出した3つの突出部31,32,33を有している。これらの突出部31,32,33には、取付孔31a,32a,33aがそれぞれ形成されている。図3及び図4に示すように、カバー部30の取付孔31a,32a,33aにボルト等を差し込んでネジ孔に固定することで、コネクタ1を機器90の取付面92に取り付けることができる。
【0028】
シール部材20は弾性変形可能な樹脂製の部材であって、図2等に示すように、断面が長円形となるように構成されている。シール部材20には、機器側の端部において垂直方向に突出した第1規制部(規制部)23が形成されている。同様に、シール部材20には、反機器側の端部において垂直方向に突出した第2規制部(規制部)24が形成されている。そして、この第1規制部23と第2規制部24とに挟まれた部分である中途部25は、軸方向に垂直に切った断面の大きさが一定となっている。なお、シール部材20の中途部25は、カバー部30の中途部34と軸方向の長さが略同一となるように構成されている。
【0029】
この構成により、図3等に示すようにシール部材20の中途部25とカバー部30の中途部34とを互いに向き合わせるようにして、シール部材20をカバー部30の内側に取り付けることができる。また、シール部材20に形成された第1規制部23は、カバー部30に対してシール部材20が反機器側へ相対移動することを規制している。同様に、シール部材20に形成された第2規制部24は、カバー部30に対してシール部材20が機器側へ相対移動することを規制している。従って、シール部材20からカバー部30が外れることを防止できる。
【0030】
また、シール部材20は、図2及び図3等に示すように、機器側の端部において、ラッパを直線状に引き延ばしたような形状となっている。このラッパ状部分の縁の表面(長円状のシール面21(第2防水部))は、コネクタ1を機器90に取り付けたときに(図4)、接続孔91を囲うことができるように構成されている。そして、コネクタ1を機器90に取り付けたときには、ラッパ状部分の縁がカバー部30によって押し潰されつつ、シール面21が取付面92に押し付けられる。この構成により、シール部材20に形成されたループ状(無端状)のシール面21によって、取付面92及び接続孔91を経由した水の浸入を防止できる。
【0031】
また、図3等に示すように、シール部材20の内部には、電線10の数に対応して3つの電線保持孔(第1防水部)22が形成されている。電線保持孔22はそれぞれ円形状に形成され、複数の電線10の各外周面に密着して、それぞれの電線10を保持可能に構成されている。具体的には、電線保持孔22の内周面にリング状の凸部が複数並べて形成され、この凸部が電線10の外周面をシールするように構成している。この電線保持孔22によって、電線10の表面を経由した水の浸入を防止できる。
【0032】
図3等に示すように、コネクタ1には、複数の電線10をまとめて覆うように構成された遮蔽部材50が配置されている。この遮蔽部材50は、例えば金属製の線材を編んだ部材(編組チューブ、編組シールド材)等で構成されている。この遮蔽部材50は、導電性の部材(例えば前記カバー部30)と接続されており、この導電性の部材を介してアース(接地)が行われている。この構成により、電線を流れる信号に発生するノイズ等を低減することができる。
【0033】
図2等に示すクランプ部40は、この遮蔽部材50を保持(固定)するためのものである。クランプ部40は、長い板状部材を適宜折り曲げた、第1固定板41と第2固定板42とを備えている。第1固定板41には、長手方向の一端部において固定孔41aが形成され、長手方向の他端部において固定孔41bが形成されている。また、第1固定板41において長手方向の両端部以外の箇所は、カバー部30の中途部34の外周面に沿うことができるように適宜曲げられている。なお、第2固定板42は第1固定板41と同一の形状であるため、説明を省略する。
【0034】
この構成で、カバー部30の中途部34に遮蔽部材50を沿わせるように配置した上で、第1固定板41及び第2固定板42によって挟み込み、固定孔41aと固定孔42a、固定孔41bと固定孔42bをそれぞれ合わせてボルト及びナットで固定する。これにより、遮蔽部材50をカバー部30の中途部34に接触させた状態で固定することができる。
【0035】
ケーブルブーツ60は、コネクタ1の各構成を保護するための樹脂製の部材である。また、図3等に示すように、ケーブルブーツ60の反機器側の端部は円筒状に構成されており、この円筒状の部分に接続されたコルゲートチューブ61が電線10及び遮蔽部材50をまとめて覆うように配置されている。コルゲートチューブ61は、波状(蛇腹状)の部分を有する樹脂製の円筒状の部材として構成されている。これにより、衝撃や折曲げ等から電線10及び遮蔽部材50を保護することができる。
【0036】
次に、コネクタ1を組み立てる工程について、図5及び図6を参照して説明する。図5及び図6は、コネクタ1の組立方法を示す側面断面図である。
【0037】
初めに、作業者は、シール部材20をカバー部30に取り付ける。前述のとおり、シール部材20は樹脂製であるため、シール部材20の第2規制部24を押し縮めるように弾性変形させることによりカバー部30の中空部35にシール部材20を挿入することができる。なお、従来は、防水のための部材が複数個で構成されていたり、防水のための部材が複雑な形状で構成されていたりするため、取付けに時間が掛かることがあった。この点、本実施形態の構成では、単一のシール部材20をカバー部30内に挿入するだけであるため、取付性に優れている。また、シール部材20をカバー部30に取り付けた後は、前述のように、シール部材20に一体的に形成されている第1規制部23及び第2規制部24によって、カバー部30からシール部材20が外れることを防止できる。
【0038】
次に、作業者は、シール部材20、カバー部30、遮蔽部材50、ケーブルブーツ60、コルゲートチューブ61等の部材に電線10を挿入する(図5(a))。その後、作業者は、挿入した遮蔽部材50を、カバー部30の中途部34の外側に被せる(図5(b))。
【0039】
次に、作業者は、遮蔽部材50が動かないように押さえながら、第1固定板41及び第2固定板42で外側から挟み込み、ボルト及びナットを使用して当該第1固定板41及び第2固定板42を互いに固定する。これにより、遮蔽部材50をカバー部30の中途部34に固定することができる(図6(a))。なお、本実施形態の構成では、それぞれ突出している第1規制部23及び第2規制部24の間の位置にクランプ部40を取り付ければ良いため、遮蔽部材50を保持する位置を作業者が簡単に認識することができる。従って、遮蔽部材50を取り付ける作業を容易にすることができる。
【0040】
次に、作業者は、ケーブルブーツ60及びコルゲートチューブ61を軸方向一端側に移動させて、カバー部30等に差し込む(図6(b))。以上により、コネクタ1の組立てが完了する。
【0041】
以上に示したように、本実施形態のコネクタ1は、複数の電線10を保持可能であり、当該複数の電線10を外部の機器90に接続するためのものである。また、このコネクタ1は、カバー部30と、シール部材20と、を備える。カバー部30は、機器90に形成された接続孔91に対して複数の電線10が挿入されるように、当該機器90に取付可能である。シール部材20には、電線保持孔22と、シール面21と、が形成されている。電線保持孔22は、電線10を伝って機器90内に水が浸入することを防止する。シール面21は、取付面92及び接続孔91を伝って機器90内に水が浸入することを防止する。なお、シール面21はループ状に構成され、当該シール面21の内側を複数の電線10がまとめて通過する。
【0042】
これにより、2つの経路(電線10を伝わる経路及び接続孔91等を伝わる経路)からの浸水を単一のシール部材20によって防止できる。そのため、浸水を防止する部材を経路毎に配置する構成に比べて、部品点数を削減することができる。従って、コネクタ1の構成を簡素化できるとともに、製造コスト及び組立工数を低減できる。また、本実施形態の構成は、機器90に形成された1つの接続孔91に電線10をまとめて挿入する構成であるため、接続作業が容易である。
【0043】
また、本実施形態のコネクタ1において、シール部材20には、電線10の外周面と密着するように当該電線10を保持可能な複数の電線保持孔22が形成されている。
【0044】
これにより、複数の電線10について、それぞれの電線10を伝わることによって生じる浸水を、簡素な構成でまとめて防止できる。また、シール部材20が電線10を保持することができるので、電線10を保持するための特別な部材が不要になり、コネクタ1の構成を簡素化できる。
【0045】
また、本実施形態のコネクタ1において、シール面21は、取付面92に対して、接続孔91を囲うように密着可能である。
【0046】
即ち、防水のための部材を接続孔91の内部に挿入してシールを行う場合は、当該部材を接続孔91の形状に応じて形成する必要がある。この点、上記の構成では、接続孔91を囲うことができればシール面の形状は任意であるため、接続孔91の形状が複雑な場合であっても、シール部材20を容易に形成することができる。
【0047】
また、本実施形態のコネクタ1において、シール部材20は、カバー部30に取付可能に構成されている。シール部材20に形成された第1規制部23及び第2規制部24は、カバー部30に対するシール部材20の相対移動を規制して、カバー部30からシール部材20が外れることを防止している。
【0048】
これにより、シール部材20が外れることを防止する特別な部材が不要になり、コネクタ1の構成を簡素化できる。
【0049】
また、本実施形態のコネクタ1は、遮蔽部材50と、クランプ部40と、を備える。遮蔽部材50は、複数の電線10をまとめて覆うように配置され、当該電線10を流れる信号に発生するノイズを低減する。クランプ部40は、電線10の軸方向に並べて配置された第1規制部23及び第2規制部24の間の位置で、遮蔽部材50を保持する。
【0050】
これにより、コネクタ1の組立て時において、遮蔽部材50を保持する位置を作業者が簡単に認識することができるので、遮蔽部材50を取り付ける作業を容易にすることができる。
【0051】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0052】
前記の実施形態は、電線10が3本配置された構成であるが、電線10の本数はこれに限られず、例えば2本、4本、5本以上等に変更することができる。
【0053】
シール部材20の形状は上記で示した例に限られず、電線を伝って機器内に水が浸入することを防止する第1防水部と、接続孔が形成される面等を伝って機器内に水が浸入することを防止する第2防水部と、が形成された部材であれば、適宜変更することができる。例えば、接続孔91の内周面に沿うように形成された筒状の部材が第2防水部として形成されたシール部材を用いても良い。また、第2防水部が有するループ状のシール面21の形状は、長円状とすることに代えて、例えば円形、矩形等に変更することができる。
【0054】
カバー部30、クランプ部40、ケーブルブーツ60等についても上記で示した構成は例示であり、構成の一部又は全部を適宜変更することができる。
【0055】
本発明は、電気部品に信号を送って制御するためのコネクタに限定されず、例えば電力供給のための電力線のコネクタ等、種々のコネクタに適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 コネクタ
10 電線
20 シール部材
21 シール面(第2防水部)
22 電線保持孔(第1防水部)
23 第1規制部(規制部)
24 第2規制部(規制部)
30 カバー部(取付部)
40 クランプ部(保持部)
50 遮蔽部材(遮蔽部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線を保持可能であり、当該複数の電線を外部の機器に接続するためのコネクタにおいて、
前記機器に形成された接続孔に対して前記電線が挿入されるように、当該機器に取付可能な取付部と、
前記機器内に水が浸入することを防止するシール部材と、
を備え、
前記シール部材には、
前記電線を伝って前記機器内に水が浸入することを防止する第1防水部と、
前記接続孔が形成される面及び前記接続孔を伝って前記機器内に水が浸入することを防止する第2防水部と、
が形成されており、
前記第2防水部はループ状のシール面で構成され、前記シール面の内側を複数の電線がまとめて通過することを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記シール部材には、電線の外周面と密着するように当該電線を保持可能な複数の保持孔が、前記第1防水部として形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタであって、
前記シール面は、前記接続孔が形成される面に対して、当該接続孔を囲うように密着可能であることを特徴とするコネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のコネクタであって、
前記シール部材は、前記取付部に取付可能に構成されており、
前記シール部材又は前記取付部は、前記取付部に対する前記シール部材の相対移動を規制して、前記取付部から前記シール部材が外れることを防止する規制部が形成されることを特徴とするコネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載のコネクタであって、
前記複数の電線をまとめて覆うように配置され、当該電線を流れる信号に発生するノイズを低減する遮蔽部と、
前記遮蔽部を保持する保持部と、
を備え、
前記規制部は、前記電線の長手方向に少なくとも2箇所形成され、当該2つの規制部の間の位置で前記保持部が前記遮蔽部を保持することを特徴とするコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−89332(P2012−89332A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234522(P2010−234522)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】