説明

コネクタ

【課題】ヒケの防止とフード部内の排水を実現する。
【解決手段】合成樹脂製のハウジング10は、端子保持部11からフード部17を前方へ延出させたものであり、端子保持部11には、内面後端部に誘導凹部15が形成された誘導壁部19を有する。ハウジング10には、誘導壁部19の外面のうち誘導凹部15と対応する領域よりも前方の領域を凹ませた形態の型抜き凹部21と、型抜き凹部21に連通し且つ後面壁18を貫通した形態の型抜き孔22とからなる前後方向の型抜き経路20が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金型成形された合成樹脂製のハウジングと、前端部に細長いタブが形成された雄形の端子金具とを備えたコネクタが開示されている。以下、このコネクタの特徴を、図5に基づいて説明する。
【0003】
ハウジング100は、前後方向に貫通する端子収容室102が形成された端子保持部101と、端子保持部101の前端から前方へ延出するフード部103とを一体に形成して構成されている。端子収容室102の後端部の開口は、端子金具106を挿入させるための端子挿入口107となっており、端子収容室102の前端側領域は、挿入した端子金具106が傾かないように保持するための姿勢安定部108となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−220798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記コネクタは、端子金具106の端子収容室102への挿入を円滑に行わせるための手段として、端子挿入口107の内面には、姿勢安定部108の内面よりも凹ませた形態の誘導凹部109が形成されている。しかし、この誘導凹部109は、端子保持部101の外面と端子収容室102を構成する外壁部104の内面を切欠した形態である。そのため、外壁部104のうち端子挿入口107よりも前方の姿勢安定部108と対応する領域では、肉厚が厚くなり過ぎて、ヒケを生じることが懸念される。
一方、このコネクタがフード部103を上向きにした姿勢で使用された場合、フード部103内に流入した水分や結露水が溜まり、その結果、端子金具106間でリークを生じることも懸念される。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ヒケの防止とフード部内の排水を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、合成樹脂製のハウジングと、端子金具とを備え、前記ハウジングは、前後方向に貫通する端子収容室が形成された端子保持部と、前記端子保持部の前端から前方へ延出するフード部とを一体に成形して構成され、前記端子保持部は、前記端子保持部の外面を構成し、且つ前記端子収容室に臨む外壁部を有し、前記フード部は、前記外壁部から外方へ張り出した形態の後面壁を有し、前記端子収容室の後端部の開口部は、前記端子金具を挿入するための端子挿入口となっており、前記端子収容室の前端側領域は、挿入した前記端子金具を傾かないように保持するための姿勢安定部となっており、前記外壁部の内面のうち前記端子挿入口と対応する領域に、前記姿勢安定部の内面よりも凹ませた形態の誘導凹部が形成されており、前記外壁部のうち周方向において前記誘導凹部が形成されている領域が、誘導壁部となっており、前記ハウジングには、前記誘導壁部の外面のうち前記誘導凹部と対応する領域よりも前方の領域を凹ませた形態の型抜き凹部と、前記型抜き凹部に連通し且つ前記後面壁を貫通した形態の型抜き孔とからなる前後方向の型抜き経路が形成されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記フード部を構成する周壁部には、その内周面を溝状に凹ませた形態であって前記型抜き経路と一直線状に連なる前後方向の排水経路が形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
型抜き経路を形成したことにより、誘導壁部の外面のうち誘導凹部と対応する領域よりも前方の領域、即ち姿勢安定部と対応する領域は、肉薄になるので、ヒケの発生が防止される。また、フード部内の水分は、型抜き経路を通ることによってフード部の後方外部へ排出される。さらに、型抜き経路は、誘導壁部の外面においては前後方向に延び、フード部の後面壁を貫通する形態なので、前方へ型抜きされる金型によって形成することができる。したがって、前後方向と交差する方向へ型抜きされるスライド金型を用いずに済む。
【0009】
<請求項2の発明>
フード部内の水分は、排水経路と型抜き経路を通ってフード部の後方外部へ排出される。排水経路と型抜き空間は、一直線状に連なっているので、排水効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1のハウジングの斜視図
【図2】ハウジングの平面図
【図3】ハウジングの正面図
【図4】ハウジングに端子金具を取り付けた状態の断面図
【図5】従来例の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1〜図4を参照して説明する。図4に示すように、本実施形態1のコネクタは、ハウジング10と、前端部に細長いタブ26が形成された雄形の端子金具25とを備えて構成されている。
【0012】
ハウジング10は、金型成形された合成樹脂製のものであり、前後方向に貫通する左右一対の端子収容室12が形成された端子保持部11と、端子保持部11の前端から前方へ延出するフード部17とを一体に形成して構成されている。端子収容室12の後端部の開口は、端子金具25を挿入させるための端子挿入口13となっている。端子収容室12の前端側領域(端子挿入口13よりも前方の領域)は、挿入した端子金具25を傾かないように保持するための姿勢安定部14となっている。
【0013】
端子保持部11は、その外面を構成し、且つ端子収容室12内に臨む外壁部16を有している。外壁部16のうち、周方向において端子収容室12の天井面を構成する壁部は、誘導壁部19となっている。誘導壁部19の内面(端子収容室12の天井面)のうち端子挿入口13と対応する領域には、端子金具25の端子収容室12への挿入を円滑に行わせるための手段として、姿勢安定部14の内面(天井面)よりも凹ませた形態の誘導凹部15が形成されている。つまり、外壁部16のうち周方向において誘導凹部15が形成されている上面領域が、誘導壁部19となっている。誘導凹部15を形成したことにより、端子挿入口13の高さ寸法は、姿勢安定部14の高さ寸法よりも大きくなっている。
【0014】
フード部17は、端子保持部11の誘導壁部19から外方(上方)へ張り出した形態の後面壁18を有している。フード部17の後面壁18が誘導壁部19から外方へ張り出している場合、ハウジング10を前後へ方向に型開きされる金型(図示省略)だけで成形しようとすると、誘導壁部19の外面(上面)は、後方へ型開きされる金型で成形することになるため、誘導壁部19の外面は、その前端から後端に亘って面一状となり、誘導壁部19の上面に高低差を形成することはできない。一方、誘導壁部19の内面(下面)は、端子挿入口13に誘導凹部15を形成したことにより、端子挿入口13の天井面と姿勢安定部14の天井面との間で高低差が生じる。
【0015】
したがって、誘導壁部19の上下寸法(厚さ寸法)は、端子挿入口13と対応する後端部領域で必要最小の寸法に抑えたとしても、姿勢安定部14と対応する領域においては、外壁部16の厚さ寸法が必要以上に大きくなる。したがって、外壁部16のうち姿勢安定部14と対応する部分で、金型成型の際に「ヒケ」と称される不正な変形を生じることが懸念される。
【0016】
また、本実施形態のコネクタを、フード部17が上向きに開口する姿勢で使用する場合において、フード部17内に外部からの水が流入したり、フード部17内で結露が生じたりすると、流入した水分や結露水がフード部17内に溜まり、この溜まった水によって端子金具25間でリークを生じることが懸念される。
【0017】
その対策として本実施形態では、ハウジング10に型抜き経路20を形成している。型抜き経路20は、図1,2,4に示すように端子保持部11に形成した前後方向に直線状に延びる5本の型抜き凹部21と、図3,4に示すようにフード部17の後面壁18を前後に貫通する5つの型抜き孔22とによって構成されている。5本の型抜き凹部21は、左右方向(幅方向)に一定ピッチで並列配置されている。図4に示すように、型抜き凹部21の前後方向における形成領域は、後面壁18の後端面から、誘導凹部15の前端よりも少し前方の位置(即ち、姿勢安定部14の後端よりも少し前方の位置)に亘っている。図3に示すように、5つの型抜き孔22は、型抜き凹部21と同じ幅寸法であり、5本の型抜き凹部21と同じピッチで配置されている。したがって、5本の型抜き凹部21と5つの型抜き孔22は、一対一で対応し、対応する型抜き凹部21と型抜き孔22とが、互いに直接、連通している。
【0018】
このように本実施形態においては、ハウジング10に、誘導壁部19の外面のうち誘導凹部15と対応する領域よりも前方の領域(姿勢安定部14と対応する領域)を凹ませた形態の型抜き凹部21と、型抜き凹部21に直接連通し且つ後面壁18を貫通した形態の型抜き孔22とからなる前後方向の型抜き経路20を形成している。この構成によれば、型抜き経路20を形成したことにより、誘導壁部19のうち誘導凹部15よりも前方の領域、即ち姿勢安定部14と対応する領域が、肉薄になるので、ヒケの発生が防止される。また、フード部17内の水分は、型抜き経路20を通ることによってフード部17の後方外部へ排出される。さらに、型抜き経路20は、誘導壁部19の外面においては前後方向に延び、フード部17の後面壁18を貫通する形態なので、前方へ型抜きされる金型によって形成することができる。したがって、前後方向と交差する方向へ型抜きされるスライド金型を用いずに済む。
【0019】
また、フード部17を構成する上面壁23(本発明の構成要件である周壁部)には、その内周面を溝状に凹ませた形態であって型抜き経路20と一直線状に連なる前後方向の排水経路24が5本形成されている。この5本の排水経路24は、型抜き経路20と同じ幅寸法であって、型抜き経路20と同じピッチで配置されている。したがって、排水経路24と型抜き経路20は、一対一で対応し、対応する排水経路24と型抜き経路20とが、互いに直接的に且つ一直線状に連通している。このような排水経路24を形成したことにより、フード部17内の水分は、排水経路24と型抜き経路20を通ってフード部17の後方外部へ排出されることになる。排水経路24と型抜き空間は、一直線状に連なっているので、排水効果が高い。
【0020】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、型抜き経路20の数を5本としたが、型抜き経路の数は、4本以下でもよく、6本以上でもよい。
(2)上記実施形態では、型抜き経路20を、誘導壁部19(外壁部16のうち誘導凹部15が形成されている壁部)の外面(上面)のみに形成したが、型抜き経路は、誘導壁部19の外面に加えて、端子保持部の外壁部のうち誘導凹部が形成されていない下壁部や側壁部の外面(下面や側面)にも形成することができる。
(3)上記実施形態では、フード部17を構成する上面壁23(周壁部)に、型抜き経路20と一直線状に連なる溝状の排水経路24を形成したが、フード部17内には溝状の排水経路24を形成しない形態としてもよい。
(4)上記実施形態では、型抜き経路20と排水経路24を同じ幅寸法としたが、型抜き経路と排水経路は異なる幅寸法であってもよい。
(5)上記実施形態では、型抜き経路20のうち後面壁18を貫通する型抜き孔22と、誘導壁部19の外面の型抜き凹部21とを同じ数として、一対一で連通させたが、1つの型抜き孔が複数本の型抜き凹部と連通する形態であってもよい。この場合、型抜き孔の数は、1つでもよく、複数でもよい。
【符号の説明】
【0021】
10…ハウジング
11…端子保持部
12…端子収容室
13…端子挿入口
14…姿勢安定部
15…誘導凹部
16…外壁部
17…フード部
18…後面壁
19…誘導壁部
20…型抜き経路
21…型抜き凹部
22…型抜き孔
23…上面壁(周壁部)
24…排水経路
25…端子金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のハウジングと、
端子金具とを備え、
前記ハウジングは、前後方向に貫通する端子収容室が形成された端子保持部と、前記端子保持部の前端から前方へ延出するフード部とを一体に成形して構成され、
前記端子保持部は、前記端子保持部の外面を構成し、且つ前記端子収容室に臨む外壁部を有し、
前記フード部は、前記外壁部から外方へ張り出した形態の後面壁を有し、
前記端子収容室の後端部の開口部は、前記端子金具を挿入するための端子挿入口となっており、
前記端子収容室の前端側領域は、挿入した前記端子金具を傾かないように保持するための姿勢安定部となっており、
前記外壁部の内面のうち前記端子挿入口と対応する領域に、前記姿勢安定部の内面よりも凹ませた形態の誘導凹部が形成されており、
前記外壁部のうち周方向において前記誘導凹部が形成されている領域が、誘導壁部となっており、
前記ハウジングには、前記誘導壁部の外面のうち前記誘導凹部と対応する領域よりも前方の領域を凹ませた形態の型抜き凹部と、前記型抜き凹部に連通し且つ前記後面壁を貫通した形態の型抜き孔とからなる前後方向の型抜き経路が形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記フード部を構成する周壁部には、その内周面を溝状に凹ませた形態であって前記型抜き経路と一直線状に連なる前後方向の排水経路が形成されていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−62025(P2013−62025A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197736(P2011−197736)
【出願日】平成23年9月10日(2011.9.10)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】