説明

コラーゲン膜及びコラーゲン膜の製造方法

【課題】臓器などの動きに追従可能な伸縮性を有するコラーゲン膜を提供する。
【解決手段】コラーゲン膜10は、複数本のコラーゲン糸20が第1方向21に沿って配置された第1層11と、複数本のコラーゲン糸20が第2方向22に沿って配置された第2層12と、が積層され、かつ第1層11と第2層12とが相互に接着されたコラーゲン膜10であって、第3方向23に沿った帯状の第1加熱処理領域31と、第4方向24に沿った帯状の第2加熱処理領域32とを有する。コラーゲン膜10が、臓器などの動きに追従可能な伸縮性を有するので、例えば、胃や腸、心臓、肺のように拡張、収縮を繰り返す臓器において、臓器の動きを阻害したり、コラーゲン膜10が破断したりすることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コラーゲン糸が積層されたコラーゲン膜及びコラーゲン膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外科的処置や外傷の治療に用いられるものとして、コラーゲンを材料とする医療用基材が知られている。この医療用基材の一つとして、コラーゲン膜がある。コラーゲン膜は、湿式紡糸法により紡糸されたコラーゲン糸の複数本を所定の方向に配列させて一つの層を形成し、その方向とは別方向となるようにコラーゲン糸を配列させた別の層を積層して、各層を相互に接着させることにより形成される(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−301362号公報
【特許文献2】特開2004−148014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述されたコラーゲン膜は、例えば、組織が再生する医療基材として利用される。コラーゲン膜は、乾燥状態で保存されており、使用に際して生理食塩水などに浸されて柔軟性を有する湿潤状態とされる。コラーゲン膜が柔軟性を有することにより、様々な形状の組織などに固定することができる。
【0005】
しかしながら、コラーゲン膜は伸縮性に欠けるという問題がある。例えば、胃や腸、心臓、肺のように拡張、収縮を繰り返す臓器においては、固定されたコラーゲン膜が、臓器の動きに追従して伸縮することが望ましい。臓器の動きに対してコラーゲン膜の伸縮が足りないと、臓器の動きが阻害されたり、コラーゲン膜が破断したりするという問題がある。
【0006】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、臓器などの動きに追従可能な伸縮性を有するコラーゲン膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコラーゲン膜は、少なくとも、複数本のコラーゲン糸が第1方向に沿って配置された第1層と、複数本のコラーゲン糸が上記第1方向とは異なる第2方向に沿って配置された第2層と、が積層され、かつ第1層と第2層とが相互に接着されたコラーゲン膜であって、部分的に第1加熱処理領域を有する。
【0008】
第1加熱処理領域が伸縮性に優れるので、コラーゲン膜の伸縮性が向上される。
【0009】
上記第1加熱処理領域は、少なくとも第3方向に沿った帯状のものであってもよい。
【0010】
これにより、少なくとも第3方向に対する膜の伸縮性が向上される。
【0011】
上記第1加熱処理領域は、所定の間隔で複数設けられたものであってもよい。これにより、第3方向に対する膜の伸縮性が更に向上される。
【0012】
上記コラーゲン膜は、上記第3方向と交差する第4方向に沿った帯状の第2加熱処理領域を有するものであってもよい。これにより、第4方向に対する膜の伸縮性が向上される。
【0013】
上記第2加熱処理領域は、所定の間隔で複数設けられたものであってもよい。これにより、第4方向に対する膜の伸縮性が更に向上される。
【0014】
上記コラーゲン膜は、厚み方向に貫通する孔を有するものであってもよい。これにより、膜の伸縮性が更に向上される。
【0015】
上記孔は、第1加熱処理領域以外、及び第2加熱処理領域を有する場合には第2加熱処理領域以外の領域に設けられたものであってもよい。これにより、第1加熱処理領域又は第2加熱処理領域による膜の伸縮性の向上と、孔による膜の伸縮性の向上とを両立させることができる。
【0016】
本発明は、少なくとも、複数本のコラーゲン糸が第1方向に沿って配置された第1層と、複数本のコラーゲン糸が上記第1方向とは異なる第2方向に沿って配置された第2層と、を積層して、第1層と第2層とを相互に接着して薄平な膜とする第1ステップと、上記膜を部分的に加熱して加熱処理領域を形成する第2ステップと、を含むコラーゲン膜の製造方法として捉えられてもよい。
【0017】
上記コラーゲン膜の製造方法は、上記膜を厚み方向に貫通する孔を形成する第3ステップを更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コラーゲン膜が、臓器などの動きに追従可能な伸縮性を有するので、例えば、胃や腸、心臓、肺のように拡張、収縮を繰り返す臓器において、臓器の動きを阻害したり、コラーゲン膜が破断したりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るコラーゲン膜10を示す模式図である。
【図2】図2は、コラーゲン膜10の構成を示す分解模式図である。
【図3】図3は、本発明の変形例に係る孔33を有さないコラーゲン膜10を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の変形例に係る部分的な加熱処理領域34を有するコラーゲン膜10を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、適宜図面が参照されて、本発明の好ましい実施形態が説明される。なお、以下に説明される各実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態が適宜変更できることは言うまでもない。
【0021】
図1,2に示されるように、コラーゲン膜10は、複数本のコラーゲン糸20が第1方向21に沿って配置された第1層11と、複数本のコラーゲン糸20が第2方向22に沿って配置された第2層12と、が積層され、かつ第1層11と第2層12とが相互に接着されたものである。コラーゲン膜10の外形は、概ね四角形である。
【0022】
コラーゲン糸20は、可溶化されたコラーゲンを紡糸原液として紡糸される。可溶化されたコラーゲン溶液からコラーゲン糸20を紡糸する方法として、例えば、前述された特許文献1,2や、特開平6−228505号公報、特開平6−228506号公報に記載された方法が挙げられる。
【0023】
コラーゲンの由来は特に限定されないが、一般的にはウシ、ブタ、鳥類、魚類、ウサギ、ヒツジ、ネズミ、ヒトなどが挙げられる。コラーゲンは、これら動物種の皮膚、腱、骨、軟骨、臓器等から公知の抽出方法により得られる。また、コラーゲンのタイプは、I型、II型、III型などの分類可能なタイプのうち、いずれかに限定されるものではないが、取り扱いの観点から、I型が好適である。
【0024】
可溶化されたコラーゲンとは、溶媒の溶解できるように処理が施されたコラーゲンであって、例えば、熱可溶化コラーゲン、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲン、酵素可溶化コラーゲン、中性可溶化コラーゲンが挙げられる。特に、可溶化処理と共に、コラーゲンの抗原決定基であるテロペプタイドの除去処理が施されているアテロコラーゲンが好ましい。コラーゲンを可溶化させる溶媒は特に限定されないが、代表的なものとして、塩酸、酢酸、硝酸などの希酸溶液や、エタノール、メタノール、アセトンなどの親水性有機溶媒と水とこの混合液、水などが挙げられる。コラーゲンを可溶化する方法として、例えば、特公昭46−15003号公報、特公昭43−259839号公報、特公昭43−27513号公報に記載された方法が挙げられる。
【0025】
コラーゲン膜10は、第1層11及び第2層12が、相互のコラーゲン糸20の配列方向(第1方向21、第2方向22)が所定の角度をなして積層されて相互に接着されている。この所定の角度は、0°でない任意の角度であるが、好ましくは鋭角である角度が20°以下であり、より好ましくは10°以下であるか、或いは70〜90°、より好ましくは80〜90°である。第1層11と第2層12とが積層されているとは、第1層11を構成するコラーゲン糸20と、第2層12を構成するコラーゲン糸20とが、その境界において相互に接触している状態をいう。
【0026】
なお、本実施形態では、コラーゲン膜10は、第1層11及び第2層12が積層されたものであるが、所定方向に配列された複数本のコラーゲン糸20から構成された第3層、第4層などがさらに積層されたものであってもよい。なお、第3層や第4層などが積層されたコラーゲン膜10においては、相互に接触していない各層のコラーゲン糸20がなす角度は特に限定されず、例えば0°であってもよい。
【0027】
第1層11における各コラーゲン糸20は、ほぼ第1方向21に沿って配列されているが、各コラーゲン糸20の長尺方向がなす角度は、第1方向21から若干ずれていてもよい。具体的には、第1方向に対して約0〜5°程度ずれた方向であってもよい。第2層12における各コラーゲン糸20の長尺方向がなす角度も、第2方向22に対して約0〜5°程度ずれていてもよい。
【0028】
第1層11及び第2層12における複数本のコラーゲン糸20の間隔は特に限定されるものではないが、約0〜40ミリメートル程度の間隔で配列されていることが好ましく、より好ましくは約0〜10ミリメートル程度であり、さらに好ましくは約0〜1ミリメートル程度である。
【0029】
コラーゲン膜10は、第3方向23に沿った帯状の第1加熱処理領域31、及び第4方向24に沿った帯状の第2加熱処理領域32を有する。第1加熱処理領域31及び第2加熱処理領域32は、コラーゲン膜10の一部領域を加熱処理したものである。この加熱処理は、例えば、刃型の熱源をコラーゲン膜10に押し当てて、当該熱源により所定の温度に瞬間的に加熱することにより実現される。このような加熱処理を行う機器として、例えば、インパルスシーラーが挙げられる。なお、図2においては、第1加熱処理領域31及び第2加熱処理領域32の図示が省略されている。
【0030】
第3方向23及び第4方向24は、各々がコラーゲン膜10の外形である四角形において隣接する各辺に沿った方向であり、両者は直交している。なお、第3方向23及び第4方向24は、コラーゲン膜10の表面に沿った方向であればよく、外形に沿った方向であってもなくてもよいし、直線のように必ずしも一定の方向でなくとも湾曲していてもよい。これらの方向は、コラーゲン膜10の伸縮性を向上させる方向に沿っていることが好ましい。また、第3方向23と第4方向24とは必ずしも直交している必要はなく、所定の角度で交わっていればよい。また、第1加熱処理領域31と第2加熱処理領域32とは、必ずしも双方が設けられている必要はなく、一方のみが設けられていてもよい。例えば、第1加熱領域31のみが蛇行した方向に湾曲して設けられていてもよい。
【0031】
第1加熱処理領域31は、第4方向24に沿って所定の間隔で複数が設けられている。第2加熱処理領域32は、第3方向に沿って所定の間隔で複数が設けられている。第1加熱処理領域31又は第2加熱処理領域32の各間隔は、特に限定されず、また、必ずしも一定でなくてもよい。間隔が小さければ、コラーゲン膜10の伸縮性が向上するが、加熱処理によるコラーゲン膜10の変形が大きい。また、第1加熱処理領域31又は第2加熱処理領域32の各帯状の幅は特に限定されないが、一般的には数ミリメートル程度である。幅が大きければ、コラーゲン膜10の伸縮性が向上するが、加熱処理によるコラーゲン膜10の変形が大きい。
【0032】
コラーゲン膜10は、厚み方向に貫通する孔33を有する。孔33は、コラーゲン膜10を厚み方向に貫通するものであれば形状や大きさは特に限定されないが、長孔や長方形のように長手方向を有する形状であれば、その長手方向へコラーゲン膜10が伸びやすくなるが、その長手方向に対して破断しやすくもなる。また、孔33を大きくすれば、コラーゲン膜10が伸びやすくなるが破断しやすくもなる。
【0033】
孔33は、複数設けられているが、その個数や間隔は特に限定されない。孔33の個数を多くすれば、コラーゲン膜10が伸びやすくなるが破断しやすくもなる。間隔を小さくすれば、コラーゲン膜10が伸びやすくなるが破断しやすくもなる。
【0034】
孔33は、第1加熱処理領域31及び第2加熱処理領域32以外の領域に設けられている。これにより、第1加熱処理領域31及び第2加熱処理領域32によるコラーゲン膜10の伸縮性の向上と、孔33によるコラーゲン膜10の伸縮性の向上とが両立される。なお、第1加熱処理領域31又は第2加熱処理領域32の間隔が小さければ、孔33が第1加熱処理領域31又は第2加熱処理領域32に形成されていても、両者により各作用が相殺される割合が小さいので、必ずしも、孔33が第1加熱処理領域31及び第2加熱処理領域32以外の領域に設けられていなくともよい。
【0035】
以下、コラーゲン膜10の製造方法が説明される。コラーゲン膜10の製造方法は、主として次の三つのステップに大別される。
(1)複数本のコラーゲン糸20が第1方向21に沿って配置された第1層11と、複数本のコラーゲン糸20が第2方向22に沿って配置された第2層12と、を積層して、第1層11と第2層12とを相互に接着して薄平な膜とする第1ステップ。
(2)膜の表面に沿った第3方向23及び第4方向24へ帯状にそれぞれ加熱して第1加熱処理領域31及び第2加熱処理領域32を形成する第2ステップ。
(3)膜を厚み方向に貫通する孔33を形成する第3ステップ。
【0036】
第1ステップにおいて、前述されたように、コラーゲン糸20は、可溶化されたコラーゲンを紡糸原液として紡糸される。湿式紡糸においては、通常、コラーゲン溶液を所定の径のノズルから連続的に親水性有機溶媒等の脱溶媒剤が充填された浴槽中に吐出して、コラーゲン溶液を脱水及び凝固させる。これにより、ノズルから吐出されたコラーゲン溶液が糸状に連続したコラーゲン糸20が得られる。得られたコラーゲン糸20を、例えば矩形平板形状の巻取部材を回転させながら巻き取る。このとき、コラーゲン糸20の長尺方向と、矩形平板の各辺との角度を所定の角度とすることにより、任意の第1角度21又は第2角度22を設定することができる。例えば、第1層11が第1角度21となるように巻取部材を所定角度に維持しながら回転させてコラーゲン糸20を巻き取った後、第2層12が第2角度22となるように巻取部材を所定角度に変更して回転させて、第1層11の上にコラーゲン糸20を巻き取って第2層12を積層する。
【0037】
巻き取られたコラーゲン糸20を乾燥することにより、第1層11のコラーゲン糸20と第2層12のコラーゲン糸20とが接着される。また、巻き取られたコラーゲン糸20に対してコラーゲン溶液を噴霧或いは含浸させた後に乾燥させて、第1層11のコラーゲン糸20と第2層12のコラーゲン糸20とが接着されてもよい。そして、巻取部材に巻き取られたコラーゲン糸20における矩形平板形状の周縁部分が切り取られることにより、矩形薄平な膜が得られる。
【0038】
第2ステップにおいて、膜は、第3方向23及び第4方向24に帯状に加熱処理がなされる。この帯状の加熱処理は、前述されたように、例えばインパルスシーラーを用いて行われる。加熱処理は、膜を湿潤状態として行うことが好ましい。
【0039】
第3ステップにおいて、孔33が形成される。孔33は、例えばパンチングにより形成され得る。第3ステップは、第2ステップの前に行われても後に行われてもよいが、孔33が形成されるときには、膜は乾燥状態であることが好ましい。第1加熱処理領域31、第2加熱処理領域32、及び孔33が形成されて、必要に応じて乾燥されることにより、コラーゲン膜10が得られる。
【0040】
このようにして得られたコラーゲン膜10は、使用に際して、生理食塩水などに浸された湿潤状態とされる。湿潤状態のコラーゲン膜10は、臓器などの動きに追従可能な伸縮性を有するので、例えば、胃や腸、心臓、肺のように拡張、収縮を繰り返す臓器に固定されたときに、臓器の動きを阻害したり、コラーゲン膜10が破断したりすることがない。
【0041】
[変形例]
なお、本実施形態に係るコラーゲン膜10には孔33が設けられているが、第1加熱処理領域31及び第2加熱処理領域32のみによってコラーゲン膜10に所望の伸縮性が得られるのであれば、図3に示されるように、孔33が設けられなくてもよい。
【0042】
また、本実施形態に係るコラーゲン膜10には、第1加熱処理領域31及び第2加熱処理領域32が設けられているが、これらはいずれか一方のみが設けられていてもよい。また、第1加熱処理領域31又は第2加熱処理領域32は、必ずしも連続した帯状である必要はなく、破線状に設けられていてもよい。
【0043】
また、本実施形態に係るコラーゲン膜10には、帯状の第1加熱処理領域31及び第2加熱処理領域32が設けられているが、本発明に係る部分的な加熱処理領域は、図4に示されるように、円形状の領域が相互に接することなく複数が分散されて、いわゆる水玉状に加熱処理領域34が設けられていてもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例が説明される。
【0045】
[実施例1]
前述された実施形態における製造方法によって膜を作成した。具体的には、ブタ由来I型/III型混合コラーゲン粉末(日本ハム株式会社製)を注射用蒸留水(大塚製薬社製)に溶解し、7重量%に調製した。そして、この7重量%コラーゲン水溶液をシリンジ(EFD社製DisposableBarrels/Pistons,55mL)に充填し、シリンジに装着した針(EFD社製UltraDispensingTips,27G,ID:φ0.21mm)よりコラーゲン水溶液を空気圧によりエタノール槽中に吐出した。吐出された7重量%コラーゲン水溶液はエタノール中で脱水されて糸状になった後、エタノール槽から引き上げられた。引き上げられたコラーゲン糸状物を、エタノール槽とは完全に分離独立された別のエタノール槽に室温で約30秒間浸漬し、さらに凝固を施した。続いて、第2のエタノール槽から引き上げたコラーゲン糸状物を、15rpmで回転している1辺が16cm、厚さ8mmの板状部材に巻き取った。板状部材に均等にコラーゲン糸状物を巻き取っていくために、板状部材の水平位置を周期的に移動させる往復機構を用いて、板状部材を1.5mm/秒で往復させた。また、板状部材を365回転させると、その回転軸を90°方向転換し、これを12回繰り返して、合計約4400回の巻き取りを行い、コラーゲン糸状物の12層の積層体を作成した。この積層体をバキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS-300VD型)と油回転真空ポンプ(ULVAC社製:GCD135-XA型)を用いて、130℃、減圧下(1hPa以下)で24時間熱脱水架橋反応を行うことにより、板状部材の片面に1枚ずつの合計2枚のコラーゲン不織布を作成した。
次ぎに、ブタ由来I型/III型混合コラーゲン粉末(日本ハム株式会社製)を注射用蒸留水(大塚製薬社製)に溶解し、1重量%に調製した。この1重量%に調製したコラーゲン水溶液を、得られたコラーゲン不織布に含浸させ、膜状に成型した後、常温で十分に自然乾燥した。その後、前述のバキュームドライオーブンを用いて、130℃、減圧下(1hPa以下)で12時間熱脱水架橋反応を行い、膜状のコラーゲン不織布を得た。
この膜状のコラーゲン不織布に対して、一定の方向に5箇所の加熱処理領域をインパルスシーラー(富士インパルス社製:P−300)により形成して、コラーゲン膜10を得た。
【0046】
[実施例2]
前述された実施例1と同様にして膜状のコラーゲン不織布を作成した。この膜状のコラーゲン不織布に対して、一定の方向に2箇所の加熱処理領域を前述のインパルスシーラーにより形成して、加熱処理領域の間、及び加熱処理領域と膜の縁との間の合計3箇所に孔33を形成して、コラーゲン膜10を得た。
【0047】
[比較例]
前述された実施例1と同様にして膜状のコラーゲン不織布を作成し、加熱処理領域及び孔33を形成することなく乾燥してコラーゲン膜とした。
【0048】
[引っ張り試験]
実施例1,2及び比較例で得られた各コラーゲン膜を室温の水に2時間浸して湿潤状態とし、縦×横の寸法が15mm×50mmの大きさの短冊に切断して試験片とした。短冊形状の長尺方向を引っ張り方向として、引っ張り試験器(株式会社島津製作所製:AG-IS)により各つかみ位置間の距離が30mmとなるように掴ませて、10mm/分の速度で引っ張り試験を行った。そのときの引っ張り力が最大となったときの力及び変位、並びに試験片が破断したときの力を測定した。その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から明らかなように、実施例1,2は、比較例に対して最大点となるときの力が小さくなり、かつ変位が大きくなった。これは、実施例1,2におけるコラーゲン膜が、比較例におけるコラーゲン膜より、伸びやすく、収縮可能な変位が大きいことを示している。つまり、実施例1,2におけるコラーゲン膜が、比較例におけるコラーゲン膜より伸縮性に優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0051】
10・・・コラーゲン膜
11・・・第1層
12・・・第2層
20・・・コラーゲン糸
21・・・第1方向
22・・・第2方向
23・・・第3方向
24・・・第4方向
31・・・第1加熱処理領域
32・・・第2加熱処理領域
33・・・孔
34・・・加熱処理領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、複数本のコラーゲン糸が第1方向に沿って配置された第1層と、複数本のコラーゲン糸が上記第1方向とは異なる第2方向に沿って配置された第2層と、が積層され、かつ第1層と第2層とが相互に接着されたコラーゲン膜であって、部分的に第1加熱処理領域を有するコラーゲン膜。
【請求項2】
上記第1加熱処理領域は、少なくとも第3方向に沿った帯状のものである請求項1に記載のコラーゲン膜。
【請求項3】
上記第1加熱処理領域が、所定の間隔で複数設けられた請求項2に記載のコラーゲン膜。
【請求項4】
上記第3方向と交差する第4方向に沿った帯状の第2加熱処理領域を有する請求項2又は3に記載のコラーゲン膜。
【請求項5】
上記第2加熱処理領域が、所定の間隔で複数設けられた請求項4に記載のコラーゲン膜。
【請求項6】
厚み方向に貫通する孔を有する請求項1から5のいずれかに記載のコラーゲン膜。
【請求項7】
上記孔は、第1加熱処理領域以外、及び第2加熱処理領域を有する場合には第2加熱処理領域以外の領域に設けられたものである請求項6に記載のコラーゲン膜。
【請求項8】
少なくとも、複数本のコラーゲン糸が第1方向に沿って配置された第1層と、複数本のコラーゲン糸が上記第1方向とは異なる第2方向に沿って配置された第2層と、を積層して、第1層と第2層とを相互に接着して薄平な膜とする第1ステップと、
上記膜を部分的に加熱して加熱処理領域を形成する第2ステップと、を含むコラーゲン膜の製造方法。
【請求項9】
上記膜を厚み方向に貫通する孔を形成する第3ステップを更に含む請求項8に記載のコラーゲン膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−24253(P2012−24253A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164868(P2010−164868)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】