説明

コラーゲン関連ペプチド及びその使用並びに止血発泡体基材

本発明は、コラーゲン模倣三重らせんに非共有結合的に自己集合可能な、N−及びC−末端に疎水性アミノ酸基を有するコラーゲン関連ポリペプチド(CRP)、及びその原線維、並びにそれらの合成、使用方法及び組成物に関する。本発明はまた、新規な止血発泡体基材、発泡体基材の製造方法、及びそのような発泡体基材を使用した哺乳動物における止血の刺激方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−及びC−末端に疎水性アミノ酸基を有するコラーゲン関連ペプチド(CRP)、並びにコラーゲン模倣三量体及びその原線維、並びにそれらの合成、使用方法及び組成物、並びに止血発泡体基材、そのような基材の製造方法、及び止血を刺激する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
哺乳動物において最も豊富なタンパク質であるコラーゲンは、体内に広く分布されており、そのロープ状の三重らせん及び集合した原線維の剛性により、最も重要な構造的役割を担うことができ、組織に機械的強度を提供するのを助ける。最も豊富な原線維コラーゲン、I型、II型及びIII型は、皮膚、骨、軟骨、腱、靱帯、血管内、及び目の硝子液中に存在する。IV型及びVI型等のより複雑な非原線維コラーゲンは二次元及び三次元ネットワークを形成し、身体の間質組織を支持し、上皮及び内皮細胞層が付着できる基底膜の基本的構成要素である。
【0003】
一般に、原線維コラーゲンは、互いに巻き付いた3つの別個のペプチド鎖を含んで、三重らせんを形成する(Rich A and Crick FHC,J.Mol.Biol.,1961,3,483〜506)。コラーゲンの三重らせんの幾何学的制約及び安定性は、3つ毎のアミノ酸がグリシン(Gly又はG)であることを必要とし、その結果、反復−GXY−配列が形成され、ここでX及びYはそれぞれ、高い頻度でプロリン(Pro又はP)及びヒドロキシプロリン(Hyp又はO)を表す。コラーゲン三重らせんは、典型的には、300nmを超える長さであり、1000を超えるアミノ酸を有する。そのようなコラーゲン三重らせんの集合体から得られる原線維は、長さ1μmを超える。
【0004】
健康な非損傷組織内では、コラーゲンは血管壁及びその周囲組織を支持し、かつ内皮細胞層により隠され、血流中で循環している、凝固プロセスを調節する血小板と接触することができない。しかしながら、機械的外傷又は疾病血管壁内の動脈硬化プラークの破裂の結果として生じる血管壁の損傷は、内皮細胞層を除去する可能性があり、コラーゲンを血小板及び他の血漿タンパク質類と相互作用させて、血小板が活性化されて凝集及び接着する。これらのプロセスは凝固反応には絶対不可欠であり、当技術分野にてよく理解されている。
【0005】
三重らせん構造
コラーゲンは、異常な構造的特徴と、これらのタンパク質類の生物学的重要性とにより、長い間科学者を魅了してきた。コラーゲン三重らせんの構造、安定性及び機能に関する研究は、合成コラーゲン関連のペプチドの使用により促進されてきた(Feng Y、Melacini G、Taulane JP及びGoodman M、J.Am.Chem.Soc.,1996,118,10351〜10358;Fields GB及びProckop DJ、Biopolymers 1996,40,345〜357及びその中に引用されている参考文献;Holmgren SK、Taylor KM、Bretscher LE及びRaines RT、Nature 1998,392,666〜667;Jenkins CL及びRaines RT、Nat.Prod.Rep.2002,19,49〜59;及びShah NK、Ramshaw JAM、Kirkpatrick A、Shah C及びBrodsky、B.Biochemistry 1996,35,10262〜10268)。例えば、特定の認識モチーフを含む合成三重らせんペプチドの使用により、コラーゲンの受容体結合特性を詳細に調査することができた。加えて、コラーゲンの三重らせん配座は、血小板及び他のコラーゲン受容体によるそれらの認識に必須であり得る。また、反復する三つ組グリシン−プロリン−ヒドロキシプロリン(GPO)配列を含む所定の三重らせん配列は、GpVI等の血小板受容体と直接相互作用し得る。単純なコラーゲン関連ペプチドにおいて、(GPO)10配列は、融点58〜70℃を有する熱的に安定な三重らせんを形成する。ヒドロキシプロリンアミノ酸は、水媒介性の水素結合の形成を促進し、立体電子効果を提供することにより三重らせん構造を安定化させる。
【0006】
更に、国際公開第07/052067号は、III型コラーゲンドメインに広がり、血小板のフォン・ヴィレブランド因子のA3ドメインに対する親和性に基づいて血小板接着活性を有する一連の短い三重らせんコラーゲンペプチドを記載している。国際公開第07/017671号は、ペプチド間での架橋なしで血小板を活性化可能な、GPO反復を含む三量体ペプチドを記載している。国際公開第06/098326号には、POGポリペプチド及びリン酸カルシウム化合物から調製された合成コラーゲンフィルムが記載されている。特開2005206542号には、ポリペプチド配列Pro−X−Gly及びY−Z−Gly(式中、X及びZはプロリン(Pro)及びヒドロキシプロリン(Hyp)を表し、Yはカルボキシル基を有するアミノ酸残基を表す)を含むコラーゲン組織構造が記載されている。特開2005126360号には、コラゲナーゼを阻害するための、固相合成により調製されるポリペプチド配列Pro−Y−Gly−Z−Ala−Gly(式中、YはGln、Asn、Leu、Ile、Val又はAlaを表し、ZはIle又はLeuを表す)を含む美容及び食品組成物が記載されている。米国特許公開第2003/162941号(特開2003321500号に相当)には、配列Pro−Y−Gly(式中、YはPro又はHypを表す)を有する、三重らせん構造を有するコラーゲン様ポリペプチド類が記載されている。米国特許第5,973,112号(国際公開第99/10381号に相当)には、配列Xaa−Xbb−Gly(式中、Xaaはアミノ酸残基を表し、Xbbは4(R)−フルオロ−L−プロリン(Flp)、4(S)−フルオロ−L−プロリン、4,4−ジフルオロプロリン、又はアセチル、メシル若しくはトリフルオロメチル修飾されたヒドロキシプロリンを表す)のトリペプチドコラーゲン模倣体が記載されている。コラーゲン模倣体(Pro−Flp−Gly)10は、コラーゲン関連三重らせんPro−Pro−Gly及びPro−Hyp−Glyと比較して増大された安定性を示した。
【0007】
自己集合
単離されたコラーゲンリガンド配列内で三重らせん構造形成を誘導するのに、いくつかの戦略が使用されている(国際公開第98/007752号に相当する米国特許第6,096,863号、及びその中の参考文献に論じられているような)。単離されたコラーゲン配列内での三重らせん構造形成は、コラーゲン配列の両方の末端部に多数のGly−Pro−Hyp反復を加えることにより誘導することができる。しかしながら、Gly−Pro−Hyp反復からなるペプチド配列が50%を超えて存在しても、得られた三重らせんは、生理学的条件にて生存するのに十分な熱的安定性を有さない場合がある。三重らせん構造の実質的な安定性は、3つのペプチド鎖のC−末端領域の間に共有結合を導入することにより達成できるが、得られた「分枝状」三重らせんペプチド化合物の大きいサイズ(90〜125アミノ酸残基)によって、合成及び精製が困難となる(米国特許第6,096,863号及びその中の参考文献にて論じられるように)。オリゴマー形成CRPは、固定化されることなく、デンドリマー集合体又は共有結合架橋を介して血小板凝集を効果的に誘導し得るが、(POG)10配列を有するもの等の、比較的組織立っていないCRPは、この性質を欠いている(Rao GHR、Fields CG、White JG及びFields GB、J.Biol.Chem.1994,269,13899〜13903;Morton LF、Hargreaves PG、Farndale RW、Young RD及びBarnes MJ、Biochem.J.1995,306,337〜344;Knight CG、Morton LF、Onley DJ、Peachey AR、Ichinohe T、Okuma M、Farndale RW及びBarnes MJ.Cardiovasc.Res.1999,41,450〜457)。自己集合可能なCRPの入手可能性及び有用性は、それらの調製の容易さ、CRP構造の単純さ及び安定性、並びに凝集活性の可能性に依存している。合成は困難であり比較的複雑であるが、システインノットを使用することにより、共有結合的に付着した三重鎖実体の自己集合から、マイクロメートルスケールのCRPを基礎とした材料が得られた(Koide T、Homma DL、Asada S及びKitagawa K、Bioorg.Med.Chem.Lett.2005,15,5230〜5233;又、Kotch F及びRaines RT、Proc.Natl.Acad.Sci USA 2006,103,3028〜3033)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、ペプチドの整合、並びに原線維の開始及び増殖を容易にする、コラーゲン様構造モチーフを構築する簡素化された手法が今尚必要とされている。詳細には、容易に合成され、コラーゲン模倣特性を有する三量体に非共有結合的に自己集合可能な比較的短い単鎖CRPが必要とされている。当技術分野では、向上された止血特性又は止血(hemostatice)活性を有することによって止血を刺激することができる新規な基材、及び止血を刺激する新規な方法に対する必要性も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、広くは、コラーゲン模倣特性を有する三量体に非共有結合的に自己集合可能なコラーゲン関連ポリペプチド(CRP)に関する。
【0010】
CRPは、各末端部にN−末端及びC−末端合成又は天然疎水性アミノ酸を有し、前記アミノ酸は、原線維増殖を開始してコラーゲン様原線維を形成することができる。
【0011】
本発明は、式(I)のCRPにも関する。
B−(Z)m−X
(式中、
Zは、Gly−Pro−J、Pro−J−Gly及びJ−Gly−Proからなる群から選択される三つ組であり、
Jは、独立して各三つ組Zに関してHyp、fPro、mPro及びProからなる群から選択され、
mは、8、9、10、11、12、13、14又は15から選択される整数であり、
例えば、ZがGly−Pro−Jであり、かつmが8の場合、8つのJ置換基のそれぞれは、独立してHyp、fPro、mPro及びProからなる群から選択され、
B及びXは、独立してF−Phe、Phe(場合によりフェニル上でフルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシ、メチル又はCFで一置換又は二置換される)、Tyr、3,4−(OH)−Phe、MeO−Tyr、フェニルグリシン、2−ナフチル−Ala、1−ナフチル−Ala、Trp、Cha、Chg、Met、Leu、Ile及びValからなる群から選択される。)
【0012】
本明細書に記載するCRPは、血小板凝集の開始に使用することができ、また出血性疾患の処置及び診断に使用することができる合成コラーゲンの構成に有用である。本発明のCRPは、更に、止血剤として組成物中にて有用である。
【0013】
本発明の別の態様は、本明細書にて以下に更に記載される新規な止血発泡体基材、及びそのような発泡体基材の新規な製造方法である。本発明の更なる別の態様は、本明細書にて以下に記載される本発明の新規な発泡体基材を使用した、止血を刺激する新規な方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】血小板凝集刺激に関してコラーゲンと比較したSEQ ID 25、SEQ ID 26、SEQ ID 27、SEQ ID 28、SEQ ID 34及びSEQ ID 35を有するCRPの活性を示す用量応答曲線。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、広くは、コラーゲン模倣特性を有する三量体に非共有結合的に自己集合可能なCRPに関する。
【0016】
CRPは、各末端部にN−末端及びC−末端合成又は天然疎水性アミノ酸を有し、前記アミノ酸は、原線維増殖を開始してコラーゲン様原線維を形成することができる。
【0017】
本発明は、式(I)のCRPにも関する。
B−(Z)m−X
(式中、
Zは、Gly−Pro−J、Pro−J−Gly及びJ−Gly−Proからなる群から選択される三つ組であり、
Jは、独立して各三つ組Zに関してHyp、fPro、mPro及びProからなる群から選択され、
mは、8、9、10、11、12、13、14又は15から選択される整数であり、
例えば、ZがGly−Pro−Jであり、かつmが8の場合、8つのJ置換基のそれぞれは、独立してHyp、fPro、mPro及びProからなる群から選択され、
B及びXは、F−Phe、Phe(場合によりフェニル上でフルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシ、メチル又はCFで一置換又は二置換される)、Tyr、3,4−(OH)−Phe、MeO−Tyr、フェニル−Gly、2−ナフチル−Ala、1−ナフチル−Ala、Trp、Cha、Chg、Met、Leu、Ile及びValからなる群から独立して選択される。)
【0018】
本発明のCRPは、三量体に非共有結合的に自己集合可能である。得られたCRP三量体は、更に、非共有結合的な、芳香族−積み重ね及び規則的な疎水性相互作用により、コラーゲン様原線維へのより高次の自己集合が可能である。
【0019】
本発明の一実施形態は、本発明の複数のCRPを含むコラーゲン様原線維物質を含む。
【0020】
本発明の実施形態は、本発明の複数のCRPを含むコラーゲン様原線維物質を含み、CRPはコラーゲン様原線維物質中に複数のCRP三量体の形態で存在する。
【0021】
本発明の一実施形態において、CRP三量体はホモ三量体であり、3つのCRPは同種である。
【0022】
本発明の一実施形態において、CRP三量体はヘテロ三量体であり、3つのCRPは異種である。
【0023】
本発明の一実施形態は式(I)のCRPであり、Zは、Gly−Pro−J、Pro−J−Gly及びJ−Gly−Proからなる群から選択される三つ組であり、Jは、少なくとも4つの連続した三つ組Z内のHypである。
【0024】
本発明の一実施形態は式(I)のCRPであり、式中、Jは、独立して各三つ組Zに関して、Hyp、fPro及びProからなる群から選択される。
【0025】
本発明の一実施形態は式(I)のCRPであり、式中、Jは、独立して各三つ組Zに関して、Hyp及びProからなる群から選択される。
【0026】
本発明の一実施形態は式(I)のCRPであり、式中、mは10である。
【0027】
本発明の一実施形態は式(I)のCRPであり、式中、B及びXは、独立してF−Phe、Phe(場合によりフェニル上でフルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシ、メチル又はCFで一置換又は二置換される)、Tyr、3,4−(OH)−Phe、MeO−Tyr、フェニルグリシン、2−ナフチル−Ala、1−ナフチル−Ala、Trp、Cha、Chg、Met、Leu、Ile及びValからなる群から選択される。
【0028】
本発明の一実施形態は式(I)のCRPであり、式中、B及びXは、独立してF−Phe、Phe及びLeuからなる群から選択される。
【0029】
本発明の一実施形態は式(I)のCRPであり、式中、Bは、F−Phe、Phe(場合によりフェニル上でフルオロ、ヒドロキシ、メチル又はCFで一置換又は二置換される)、Tyr、3,4−(OH)−Phe、MeO−Tyr、フェニルグリシン、2−ナフチル−Ala、1−ナフチル−Ala、Trp、Cha、Chg及びLeuからなる群から選択される。
【0030】
本発明の一実施形態は式(I)のCRPであり、式中、Bは、F−Phe、Phe(場合によりフェニル上でフルオロ、ヒドロキシ、メチル又はCFで一置換又は二置換される)及びLeuからなる群から選択される。
【0031】
本発明の一実施形態は式(I)のCRPであり、式中、Bは、F−Phe、Phe及びLeuからなる群から選択される。
【0032】
本発明の一実施形態は式(I)のCRPであり、式中、Xは、Phe(場合によりフェニル上でフルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシ、メチル又はCFで一置換又は二置換される)、Tyr、3,4−(OH)−Phe、MeO−Tyr、フェニルグリシン、2−ナフチル−Ala、1−ナフチル−Ala、Trp、Cha、Chg、Met、Leu、Ile及びValからなる群から選択される。
【0033】
本発明の一実施形態は式(I)のCRPであり、式中、XはPheである。
【0034】
本発明の一実施形態は、以下から選択される式(I)のCRPである。
SEQ ID 1:B−(Gly−Pro−Hyp)4−(Gly−Pro−J)n−X(式中、nは、4、5、6、7、8、9、10又は11から選択される整数である)、
SEQ ID 2:B−(Gly−Pro−Hyp)8−(Gly−Pro−J)p−X(式中、pは、0、1、2、3、4、5、6又は7から選択される整数である)、
SEQ ID 3:B−(Gly−Pro−Hyp)12−(Gly−Pro−J)q−X(式中、qは、0、1、2又は3から選択される整数である)、
SEQ ID 4:B−(Pro−Hyp−Gly)4−(Pro−J−Gly)n−X(式中、nは、4、5、6、7、8、9、10又は11から選択される整数である)、
SEQ ID 5:B−(Pro−Hyp−Gly)8−(Pro−J−Gly)p−X(式中、pは、0、1、2、3、4、5、6又は7から選択される整数である)、
SEQ ID 6:B−(Pro−Hyp−Gly)12−(Pro−J−Gly)q−X(式中、qは、0、1、2又は3から選択される整数である)、
SEQ ID 7:B−(Hyp−Gly−Pro)4−(J−Gly−Pro)n−X(式中、nは、4、5、6、7、8、9、10又は11から選択される整数である)、
SEQ ID 8:B−(Hyp−Gly−Pro)8−(J−Gly−Pro)p−X(式中、pは、0、1、2、3、4、5、6又は7から選択される整数である)、又は
SEQ ID 9:B−(Hyp−Gly−Pro)12−(J−Gly−Pro)q−X(式中、qは、0、1、2又は3から選択される整数である)。
【0035】
代替的な実施形態では、式(I)のCRPは、以下から選択される。
SEQ ID 10:B−(Gly−Pro−J)n−(Gly−Pro−Hyp)4−X(式中、nは、4、5、6、7、8、9、10又は11から選択される整数である)、
SEQ ID 11:B−(Gly−Pro−J)p−(Gly−Pro−Hyp)8−X(式中、pは、0、1、2、3、4、5、6又は7から選択される整数である)、
SEQ ID 12:B−(Gly−Pro−J)q−(Gly−Pro−Hyp)12−X(式中、qは、0、1、2又は3から選択される整数である)、
SEQ ID 13:B−(Pro−J−Gly)n−(Pro−Hyp−Gly)4−X(式中、nは、4、5、6、7、8、9、10又は11から選択される整数である)、
SEQ ID 14:B−(Pro−J−Gly)p−(Pro−Hyp−Gly)8−X(式中、pは、0、1、2、3、4、5、6又は7から選択される整数である)、
SEQ ID 15:B−(Pro−J−Gly)q−(Pro−Hyp−Gly)12−X(式中、qは、0、1、2又は3から選択される整数である)、
SEQ ID 16:B−(J−Gly−Pro)n−(Hyp−Gly−Pro)4−X(式中、nは、4、5、6、7、8、9、10又は11から選択される整数である)、
SEQ ID 17:B−(J−Gly−Pro)p−(Hyp−Gly−Pro)8−X(式中、pは、0、1、2、3、4、5、6又は7から選択される整数である)、又は
SEQ ID 18:B−(J−Gly−Pro)q−(Hyp−Gly−Pro)12−X(式中、qは、0、1、2又は3から選択される整数である)。
【0036】
更なる代替的な実施形態では、式(I)のCRPは、以下から選択される。
SEQ ID 19:B−(Gly−Pro−J)r−(Gly−Pro−Hyp)4−(Gly−Pro−J)s−X(式中、r及びsは、それぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10から選択される整数であり、(Gly−Pro−J)r、(Gly−Pro−J)s及び(Gly−Pro−Hyp)4の組み合わせは、(Z)15を超えない)、
SEQ ID 20:B−(Gly−Pro−J)t−(Gly−Pro−Hyp)8−(Gly−Pro−J)u−X(式中、t及びuは、それぞれ1、2、3、4、5又は6から選択される整数であり、(Gly−Pro−J)t、(Gly−Pro−J)u及び(Gly−Pro−Hyp)8の組み合わせは、(Z)15を超えない)、
SEQ ID 21:B−(Pro−J−Gly)r−(Pro−Hyp−Gly)4−(Pro−J−Gly)s−X(式中、r及びsは、それぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10から選択される整数であり、(Pro−J−Gly)r、(Pro−J−Gly)s及び(Gly−Pro−Hyp)4の組み合わせは、(Z)15を超えない)、
SEQ ID 22:B−(Pro−J−Gly)t−(Pro−Hyp−Gly)8−(Pro−J−Gly)u−X(式中、t及びuは、それぞれ1、2、3、4、5又は6から選択される整数であり、(Pro−J−Gly)t、(Pro−J−Gly)u及び(Gly−Pro−Hyp)8の組み合わせは、(Z)15を超えない)、
SEQ ID 23:B−(J−Gly−Pro)r−(Hyp−Gly−Pro)4−(J−Gly−Pro)s−X(式中、r及びsは、それぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10から選択される整数であり、(J−Gly−Pro)r、(J−Gly−Pro)s及び(Gly−Pro−Hyp)4の組み合わせは、(Z)15を超えない)、
SEQ ID 24:B−(J−Gly−Pro)t−(Hyp−Gly−Pro)8−(J−Gly−Pro)u−X(式中、t及びuは、それぞれ1、2、3、4、5又は6から選択される整数であり、(J−Gly−Pro)t、(J−Gly−Pro)u及び(Gly−Pro−Hyp)8の組み合わせは、(Z)15を超えない)。
【0037】
特定の実施形態において、式(I)のCRPは、以下から選択される。
SEQ ID 25:FPhe−(Gly−Pro−Hyp)10−Phe、
SEQ ID 26:Phe−(Gly−Pro−Hyp)10−Phe、
SEQ ID 27:Leu−(Gly−Pro−Hyp)10−Phe、
SEQ ID 31:FPhe−(Gly−Pro−Hyp)9−Phe、
SEQ ID 32:Phe−(Gly−Pro−Hyp)9−Phe、及び
SEQ ID 33:Leu−(Gly−Pro−Hyp)9−Phe。
【0038】
本発明に関する検討において、所定の他のポリペプチド配列は、以下を含む。
比較物SEQ ID 28:Gly−(Gly−Pro−Hyp)10−Gly、
比較物SEQ ID 29:Ac−(Gly−Pro−Hyp)10−Gly、
参照SEQ ID 30:(Pro−Hyp−Gly)4−(Pro−Hyp−Ala)−(Pro−Hyp−Gly)5、
参照SEQ ID 34:(Pro−Hyp−Gly)10、及び
比較物SEQ ID 35:FPhe−(Gly−Pro−Hyp)5−Ph。
【0039】
例として、SEQ ID 25を有する式(I)のCRPは、以下の構造を有する。
【化1】

【0040】
本発明は更に、コラーゲン様原線維物質の形成方法に関し、前記方法は、複数の式(I)のCRPを選択する工程と、複数のCRPを、複数の三量体、超分子複合体及びコラーゲン様原線維の形成を開始及び増殖させるのに有利な水性条件下で混合する工程と、を含む。
【0041】
本方法の一実施形態において、複数のCRP三量体は、複数のホモ三量体、ヘテロ三量体、又はそれらの混合物から選択される。
【0042】
本方法の一実施形態において、コラーゲン様原線維物質は、複数の超分子複合体又はコラーゲン様原線維から選択される。
【0043】
本方法の一実施形態において、有利な水性条件は、複数のコラーゲン関連ペプチドを、水中又は水性塩溶液中にて約50℃未満の温度で混合する工程を更に含む。
【0044】
本方法の一実施形態において、水性塩溶液は、緩衝生理食塩水、リン酸緩衝液、ハンクのバランス塩溶液、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、Hepes緩衝生理食塩水、及びそれらの混合物から選択される。
【0045】
本方法の一実施形態において、水性塩溶液はPBSである。
【0046】
定義
本発明の実施形態に関して、本明細書全体に提供される以下の及び他の定義は、当業者の知識の限りにおいて、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0047】
用語「三つ組」は、3つのアミノ酸Gly、Pro及びJを有する組Gly−Pro−J、3つのアミノ酸Pro、J及びGlyを有する組Pro−J−Gly、並びに3つのアミノ酸J、Gly及びProを有する組J−Gly−Proにより規定されるような3つのアミノ酸からなる組を指す。
【0048】
用語「ホモ三量体」は、3つの同一の式(I)のCRPにより形成された三重らせんを指す。
【0049】
用語「ヘテロ三量体」は、式(I)のCRPから形成された三重らせんを指す。
【0050】
用語「三量体」は、3つの式(I)のCRPにより形成された三重らせんを指す。
【0051】
用語「超分子複合体」は、コラーゲン様原線維及び原線維構造を含む、様々な形態の集合したCRP三量体を指す。
【0052】
用語「Ala」又は「A」はアミノ酸アラニンを指し、「Cha」は模倣アミノ酸シクロヘキシル−アラニンを指し、「Chg」は模倣アミノ酸シクロヘキシル−グリシンを指し、「F−Phe」は模倣アミノ酸1、2、3、4、5−F−フェニル−アラニンを指し、「fPro」は模倣アミノ酸(4R)−フルオロプロリンを指し、「Gly」又は「G」はアミノ酸グリシンを指し、「Hyp」又は「O」は模倣アミノ酸(4R)−ヒドロキシプロリンを指し、「Met」はアミノ酸メチオニンを指し、「mPro」は模倣アミノ酸(4S)−メチルプロリンを指し、「Phe」又は「F」はアミノ酸フェニルアラニンを指し、「Pro」又は「P」はアミノ酸プロリンを指し、「Tyr」はアミノ酸チロシンを指す。
【0053】
本発明に関する検討
所定の自己集合単量体が記載されており、メタ置換フェニレンジオキサミン酸ジエチルエステル単量体が、固体X線により、H−結合(末端部−末端部)を介してらせん鎖に自己集合することが示され、隣接するらせんはπ−積み重ねにより側部−側部にて整合されている(Blay G、Fernandez I、Pedro JR、Ruiz−Garcia R、Munoz MC、Cano J及びCarrasco R、Eur.J.Org.Chem,2003,1627〜1630)。本発明の発明者らによる自己集合CRP三量体の最初の設計は、(GPO)10配列のN末端及びC末端の両方にフェニルオキサミン酸エステルアミド基を付着させて、水素結合による末端部−末端部の集合を容易にすることを含んでいた。
【0054】
しかしながら、ベンゼンとヘキサフルオロベンゼンとの間の強力な非共有結合的な芳香族積み重ね相互作用により(Hunter CA及びSanders JKM、J.Am.Chem.Soc.1990,112,5525〜5534;Gdaniec M、Jankowski W、Milewska MJ及びPolonski T、Angew.Chem.Int.Ed.2003,42,3903〜3906(及びその中で引用されているRef 9及び10);並びに、Lozman OR、Bushby RJ and Vinter JG、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.2 2001,1446〜1453)、本発明の発明者らは、芳香族積み重ね(末端部−末端部及び側部−側部)及び規則的な疎水性相互作用が、本発明のCRP三量体の、コラーゲン様原線維及び繊維へのより高次な自己集合を更に可能にするとの仮説を立てた。
【0055】
その結果、水素結合の自己集合設計は、芳香族基及び疎水性基の間の相互作用が、π−積み重ね及び規則的な疎水性相互作用により、末端部−末端部の自己集合に使用される本発明の設計に発展した。本発明の線状CRPの配列は三量体に自己集合可能であり、続いて非共有結合手段により超分子複合体及び原線維に自己集合可能である。他の者は、コラーゲン配列がTyr、Phe及びLeu等の芳香族及び疎水性アミノ酸残基を特に含むテロペプチド領域を有することに注目していた。それらの芳香族及び疎水性残基の三重らせん自己集合における重要性が示されている(Helseth DL,Jr.及び Veis A、J.Biol.Chem.,1981,256,7118〜7128;Prockop DJ及びFertala A、J.Biol.Chem.1998,273,15598〜15604;及び、Traub W、FEBS Letters 1978,92,114〜120)。
【0056】
したがって、本発明のCRP三量体、例えば配列SEQ ID 25:FPhe−(Gly−Pro−Hyp)10−Pheを有するCRP三量体による原線維増殖の開始の可能性が調査された。以下の実施例3に示すように、計算分子モデリングを用いて、SEQ ID 25を有する2つの頭−尾(head-to-tail)CRP三量体間の界面を評価した。XED(広がった電子分布)力場を使用して、互いに向かって2つの三重らせんを引いた。三重らせんが互いに接近するにつれて、フェニル/ペンタフルオロフェニルの対は面−面(face-to-face)(FTF)配向を採用し、−231.0kJ/mol(−55.2kcal/mol)の総界面結合エネルギーを生じた。芳香族環が縁−面(edge-to-face)配向にて設置された際、再最小化された集合体は面−面配向に戻った。
【0057】
配列SEQ ID 26:Phe−(Gly−Pro−Hyp)10−Phe及びSEQ ID 27:Leu−(Gly−Pro−Hyp)10−Pheを有する類似のCRP三量体の界面も試験した。SEQ ID 26の場合、対称FTF相互作用が観察されず、比較的低い界面エネルギーが観察された(総エネルギー−205.9kJ/mol(−49.2kcal/mol))。SEQ ID 27に関しては、結合エネルギーの更なる低下が生じた(総エネルギー−136.0kJ/mol(−32.5kcal/mol))。SEQ ID 25を有するCRP三量体の反対側の末端部の間の強力な相互作用、並びにSEQ ID 26及びSEQ ID 27を有するCRP三量体の反対側の末端部の間の相互作用は、本発明のCRP三量体が、芳香族積み重ね及びCRP三量体間の規則的な疎水性相互作用により、原線維増殖を開始させる可能性に関する本発明者らの仮説を支持する。
【0058】
モデリング作業は、原線維増殖を開始するためのCRP三量体の末端部−末端部界面を試験したが、本発明の範囲は、コラーゲンテロペプチドの場合のように、例えば疎水性相互作用がCRP間でCRP三量体内の異なる位置において末端部−末端部配向で生じ、疎水性相互作用により可能となる隣接するCRP三量体との側部−側部相互作用が生じる、ずれた界面等の他の可能な界面を含むことを意図する。
【0059】
CRP構造
前記の非限定的な実施形態に加えて、本発明はまた、式(I)で表される、配列の任意の組み合わせからなるCRPと、該CRPのホモ三量体及びヘテロ三量体とを包含する。
【0060】
本明細書に記載するCRPの全長は、26アミノ酸から47アミノ酸までの範囲であり得る。本発明の実施形態では、CRPの全長は32アミノ酸までであり得る。
【0061】
本明細書に記載するCRPは、非限定的に、エフェクター分子、ラベル、マーカー、薬物、毒素、担体若しくは輸送分子、又は抗体若しくはその結合断片等の標的分子、又は他のリガンド等のペプチジル又は非ペプチジル連結パートナーと重合又は結合されてもよい。ペプチジル及び非ペプチジル連結パートナーの両方に対するCRPポリペプチド連結のための技術は、当技術分野にて周知である。
【0062】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載するCRPは、固体表面、又は不溶性支持体上に被覆され得る。支持体は、微粒子又は固体形態、例えばプレート、試験管、ビーズ、ボール、フィルター、織物、ポリマー又は膜などであってよい。CRPポリペプチドを固体表面又は不溶性支持体に定着させる方法は、当業者には公知である。
【0063】
いくつかの実施形態では、支持体は、タンパク質、例えば免疫グロブリン又はフィブロネクチン等の血漿タンパク質又は組織タンパク質であってよい。別の実施形態では、支持体は合成であってよく、例えば生体適合性の生分解性ポリマーであってよい。好適なポリマー類としては、ポリエチレングリコール類、ポリグリコール酸類、ポリラクチド類、ポリオルトエステル類、ポリ酸無水物類、ポリホスファゼン類、及びポリウレタン類が挙げられる。本発明の別の態様は、不活性ポリマーに付着した、本明細書に記載するポリペプチドを含む抱合体を提供する。
【0064】
CRPの一末端部に反応性基を含めることにより、不活性担体に対する化学的連結が可能となり、その結果、得られた生成物は、血流中に入らずに慢性創傷又は急性外傷の部位等の病理学的損傷に送達されることができる。
【0065】
本発明のCRPは、全体的に又は部分的に、化学合成によって、例えば確立した標準的な液相又は好ましくは固相ペプチド合成方法に従って生成されることができ、前記合成方法の一般的な記載は広く入手可能であり(例えばJ.M.Stewart及びJ.D.Young、Solid Phase Peptide Synthesis,2nd edition,Pierce Chemical Company,Rockford,Illinois(1984)内、M.Bodanzsky及びA.Eodanzsky、The Practice of Peptide Synthesis,Springer Verlag,New York(1984)内、J.H.Jones、The Chemical Synthesis of Peptides.Oxford University Press,Oxford 1991内、Applied Biosystems 430A Users Manual,ABI Inc.,Foster City,California内、G.A.Grant、(Ed.)Synthetic Peptides,A User’s Guide.W.H.Freeman & Co.,New York 1992,E.Atherton及びR.C.Sheppard、Solid Phase Peptide Synthesis,A Practical Approach.IRL Press 1989内、及びG.E.Fields、(Ed.)Solid−Phase Peptide Synthesis(Methods in Enzymology Vol.289)Academic Press,New York and London 1997内を参照されたい)、又は溶液中で液相方法により、又は固相、液相及び溶液化学の任意の組み合わせにより調製されることができる。
【0066】
CRP構造的修飾
本明細書に記載するCRPは、例えば1つ以上のポリエチレングリコール分子、糖、リン酸塩、及び/又は他のそのような分子を加えることにより、化学的に修飾されてもよく、ここで前記分子は野生型コラーゲンタンパク質に天然に付着していない。CRPの好適な化学的修飾、及び化学合成によるCRPの作製方法は当業者に周知であり、これらも本発明に包含される。同一種類の修飾が、CRP上のいくつかの位置に同一の又は様々な程度にて存在し得る。更に、修飾はCRP主鎖上、任意のアミノ酸側鎖上、及びアミノ又はカルボキシル末端を含む、CRP配列内のどの場所にも存在し得る。したがって、所定のCRPは多数の種類の修飾を含み得る。
【0067】
上記に指摘したように、本明細書に記載するCRPは、構造的に修飾されていてもよい。構造的に修飾されたCRPは、三次元形状及び生物学的活性の両方において本明細書に記載するCRPと実質的に類似しており、好ましくはCRP配列の活性基の三次元配置と非常に似た反応性化学部分の空間的配置を含む。アミノ酸の化学基を類似した構造の他の化学基で置き換えることにより、更なる修飾も可能であり得る。
【0068】
加えて、本明細書に記載するCRPは、1つ以上のD−アミノ酸を含むよう構造的に修飾されることができる。例えば、CRPは、CRPのアミノ酸配列内の1つ以上のL−アミノ酸残基が、対応するD−アミノ酸残基又は逆−Dポリペプチドで置き換えられたエナンチオマーであってもよく、前記逆−Dポリペプチドは、上述したL−アミノ酸配列と比較して逆の順序に配置されたD−アミノ酸からなるポリペプチドである(Smith CSら、Drug Development Res.,1988,15,pp.371〜379)。構造的に修飾された好適なポリペプチド類の生成方法は、当該技術分野にて周知である。
【0069】
CRP組成物
本発明のCRPは、単離及び/又は精製され、続いて所望に応じて使用されることができる。本発明の一実施形態において、CRPは、医薬組成物、又は医療デバイスとして使用するのに好適な組成物等の組成物中で使用されてもよく、前記組成物は当技術分野にて公知の1つ以上の賦形剤を含むがこれに限定されない1つ以上の任意の構成成分を含んでもよい。そのような非限定的な実施形態に加えて、本発明はまた、そのような組成物の式(I)で表される配列の任意の組み合わせからなるCRP、並びに該CRPのホモ三量体及びヘテロ三量体を包含する。
【0070】
所定のポリペプチド類は様々な医薬組成物、医療デバイス、及び組み合わせ製品に使用されるよう記載されている。例えば、国際公開第07/044026号には、損傷した軟骨を修復するためのコラーゲン模倣ペプチド−ポリエチレングリコールジアクリレートヒドロゲル足場が記載されている。米国特許公開第2006/073207号には、様々な医療用途のためのウシコラーゲン/エラスチン/ナトリウムヘパリネート(heparinate)非晶質コアセルベート組成物が記載されている。米国特許公開第2005/147690号には、血管移植片として使用するためのコラーゲン/エラスチン/ヘパリン包埋表面を有する修飾ポリウレタンフィルムが記載されている。特開第2005060550号には、分子量100,000〜600,000の三重らせん構造を有するポリペプチド配列Pro−Y−Gly(式中、YはPro又はHypを表す)を含む、基材に対する接着のための組成物が記載されている。特開2005060315号には、分子量100,000〜600,000の三重らせん構造を有するポリペプチド配列Pro−Y−Gly(式中、YはPro又はHypを表す)とビタミンCとを含有する医薬組成物が記載されている。特開第2005060314号には、分子量100,000〜600,000の三重らせん構造を有するポリペプチド配列Pro−Y−Gly(式中、YはPro又はHypを表す)を含有する美容組成物が記載されている。特開第2005058499号には、コラゲナーゼで分解され得る分子量100,000〜600,000の三重らせん構造を有する配列Pro−Y−Gly(式中、YはPro又はHypを表す)のポリペプチドで含浸された不織布組成物が記載されている。特開第2005058106号には、コラゲナーゼで分解され得る分子量100,000〜600,000の三重らせん構造を有するポリペプチド配列Pro−Y−Gly(式中、YはPro又はHypを表す)を含有する食用組成物が記載されている。特開第2005053878号には、コラゲナーゼで分解され得る分子量70,000〜600,000の三重らせん構造を有する配列Pro−X−Gly及びPro−Y−Gly−Z−Ala−Gly(式中、XはPro又はHypを表し、YはGln、Asn、Leu、Ile、Val又はAlaを表し、ZはIle又はLeuを表す)を有するポリペプチド類が記載されている。国際公開第98/52620号には、インプラント補綴物として使用するための、生体適合性バルク材料の表面に共有結合した配列Gly−Pro−Nleuを有するバイオポリマー化合物が記載されている。米国特許第6,096,863号には、固相合成により調製された、親油性部分とコラーゲン様配列RC(CHCH(CO)NHCO(CHCO(Gly−Pro−Hyp)0〜4−[ペプチド]−(Gly−Pro−Hyp)0〜4(式中、R及びRは、それぞれ独立して、1〜20個のヒドロカルビル基である)を有するペプチド部分とを有するペプチド両親媒性複合体が記載されている。米国特許第6,096,710号及び同第6,329,506号には、反復アミノ酸三つ組Gly−Xp−Pro、Gly−Pro−Yp、Gly−Pro−Hyp及びGly−Pro−Pro(式中、Xp及びYpは、N−置換アミノ酸から選択されるペプトイド残基である)を有する三重らせん合成コラーゲン誘導体が記載されている。
【0071】
本発明は、所望により他の分子、ペプチド類、ポリペプチド類及び特定の結合部材に結合した本明細書に記載するCRPのみでなく、そのようなCRPを含有する医薬組成物、医薬品、薬物、医療デバイス若しくはその構成成分、又は他の組成物も含む様々な態様に広がる。そのような医薬組成物、医薬品、薬物、医療デバイス若しくはその構成成分、又は他の組成物は、診断、治療及び/又は予防目的を含むがこれらに限定されない様々な目的に使用され得る。
【0072】
本発明は、そのような組成物の製造におけるそのようなCRPの使用、並びにそのようなCRPを任意の所望の賦形剤及び任意のその他の成分と混合することを含む、そのような組成物の製造方法にも広がる。好適な賦形剤の例としては、当技術分野にて周知のビヒクル、担体、緩衝液、安定剤等のうちのいずれかが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
組成物が医薬組成物である実施形態では、組成物はそのようなCRPに加えて二次的な医薬活性剤を含有してもよく、得られた組み合わせ生成物は、当該技術分野で薬学的に許容し得るとして周知の賦形剤のような賦形剤と共に更に混合されてもよい。そのような好適な賦形剤の例は、例えばHandbook of Pharmaceutical Excipients,(Fifth Edition,October 2005,Pharmaceutical Press,Eds.Rowe RC、Sheskey PJ及びWeller P)に開示されている。そのような材料は、毒性がなく、かつそのようなCRP又は二次的な医薬活性剤の効果を妨害するべきではない。本発明のそのような組成物は、所望の部位へ局部的に投与されてもよく、又はCRP若しくは二次的な医薬活性剤が特定の細胞若しくは組織を標的にするよう送達されてもよい。好適な二次的医薬活性剤としては、止血薬(トロンビン、フィブリノゲン、ADP、ATP、カルシウム、マグネシウム、TXA、セロトニン、エピネフリン、血小板因子4、因子V、因子XI、PAI−1、トロンボスポンジン等、及びそれらの組み合わせ等)、抗感染薬(抗体、抗原、抗生物質、抗ウイルス薬等、及びそれらの組み合わせ等)、鎮痛薬及び鎮痛薬の組み合わせ、又は抗炎症薬(抗ヒスタミン薬等)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
そのような組成物の広範な使用において、組成物は止血剤として、例えば医薬製剤として又は創傷被覆材の構成成分として創傷部位に局所適用されることができる。組成物は、処置されるべき状況に応じて、単独で、又は他の処置と組み合わせて、実質的に同時に、若しくは連続して投与されてもよい。単独の、又は創傷被覆材などの、そのようなCRPを含む物品若しくはデバイス内のそのようなCRPは、キットで、例えば内容物を外部環境から保護する好適な容器内に密封されて、提供されてもよい。そのようなキットは、使用説明書を含んでもよい。
【0075】
一実施形態において、本明細書に記載するCRPは、例えば道路交通事故又は戦場損傷後の急性外傷において、さもなくば致命的な失血を生じるであろう創傷に局所適用されることによって止血を刺激するのに有用であり得る。そのような創傷部位での止血の刺激方法は、その部位を本明細書に記載するCRPからなる組成物と接触させることを含んでもよく、ここで組成物は所望により基材を含んでもよく、その結果CRPは、止血を誘導及び維持するのに十分な量で基材表面に存在する。
【0076】
別の実施形態において、本明細書に記載するCRPは、潰瘍等の慢性創傷にて止血を刺激するのに有用であり得る。提案された機構に関する理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、CRPが最初に細胞接着を向上させるよう作用し、その後、活性化血小板顆粒内容物の放出が、血流からの、及び治癒プロセスに寄与する近隣の損傷組織からの細胞の移動を刺激し得ると考える。個人内のそのような慢性創傷部位における止血の刺激方法は、その部位を本明細書に記載するCRPからなる組成物と接触させることを含んでもよく、ここで組成物は所望により基材を含有してもよく、その結果CRPは、止血を誘導するのに十分な量で基材表面に存在する。
【0077】
本明細書に記載する本発明のそれらのCRPは、多数の研究室及び臨床現場で、出血性疾患の診断用を含む貴重な試薬として広く有用であり得る。例えば、本明細書に記載するそれらのCRPは合成コラーゲンの構築に有用であり得、前記合成コラーゲンは次に血小板凝集の開始に使用され得る。別の例では、そのようなCRPは、血小板凝集及び活性化、並びに/又は血液凝固を阻害する試験化合物の調査又はスクリーニングに有用であり得る。更なる例では、そのようなCRPは、血小板の活性化及び/又は凝集の研究のための試薬として有用であり得る。血小板の活性化及び/又は凝集方法は、血小板を本明細書に記載するそれらのCRPで処理することを含んでもよい。
【0078】
一実施形態において、血小板は血漿の存在下でインビトロで処理されてもよい。処理された血小板、即ち本明細書に記載するそのようなCRPとの接触後の血小板の活性は、例えば、当技術分野にて予想される好適な対照実験により、因子若しくは薬剤、試験組成物、又は関心対象の物質の存在下又は不在下で測定又は決定することができる。血小板活性化及び/又は凝集に対する因子の効果は、血小板を本明細書に記載するそのようなCRPで処理すること、並びに血小板活性化及び/又は凝集に対する因子の効果を決定することを含む方法により決定され得る。血小板活性化及び/又は凝集は、因子の存在下若しくは不在下で、又は異なる濃度の因子を用いて決定されてもよい。
【0079】
本発明の別の実施形態では、本明細書に記載するそのようなCRPは、例えば動物組織から抽出したコラーゲン原線維を血小板凝集測定において試薬として日常的に使用する診断等の血小板疾患の診断、又はPlatelet Function Analyzer及び他の器具での固定化コラーゲン調製にも有用であり得る。例えば、そのようなCRPは、本明細書に記載するそのようなCRPで処理した試料中の血小板の活性化及び/若しくは凝集を測定することにより、血小板活性若しくは機能を調査、又は血小板活性における機能不全を診断するのに使用されてもよい。例えば、本明細書に記載するそのようなCRPは、個人から得た血液試料と接触させた後、血小板の凝集を当該技術分野において周知の方法に従って測定してもよい。
【0080】
本発明の別の実施形態において、本発明のそのようなCRPは、細胞接着を直接確保すると共に、例えば他の生物活性分子の産生及び放出に寄与することによって血小板を局部的に凝集及び活性化させるように作用する生物活性表面コーティングとして有用であり得る。1つの方法は、例えば、血小板を本明細書に記載するそのようなCRPと接触させることを含んでもよく、前記CRPは、血漿の存在下で固体又は半固体支持体上に固定化されて、前記支持体にて又は該支持体の付近にて血小板を凝集及び/又は活性化させ得る。
【0081】
本発明のCRPはまた、出血性疾患の処置に広く有用であり得る。
【0082】
本明細書に記載するそのようなCRPが不活性ポリマー支持体等の固体又は半固体支持体上に吸着され、又は該支持体内若しくは該支持体上に別様に含まれる一実施形態において、得られた支持体は、自己免疫性血小板減少症(thrombocytopaenia)、又は癌療法等での骨髄の治療的アブレーションから生じ得る、及びグランツマン血小板無力症等の他の原因による出血性疾患から生じ得る血小板機能不全のケースにて血小板輸血の補助物又は代替物としての役割を果たすのに有用であり得る。この実施形態では、固体又は半固体支持体上に吸着され、又は該支持体内若しくは該支持体上に別様に含まれるそのようなCRPは、例えば、血小板機能不全を有し得る、及び/又は上記に示した医学的状態を有し得る個人等の、それを必要とする個人に投与され得る。
【0083】
固体又は半固体支持体上に吸着されるか又は該支持体内若しくは該支持体上に別様に含まれる本明細書に記載するそのようなCRPは、大動脈瘤の血栓形成の誘導にも有用であり得る。例えば、そのようなCRPは、塞栓コイルの外側に被覆されて組織を固定し、及び/又は膨張した動脈の更なる拡張を防止することができる。この実施形態では、個人の損傷した血管組織内の血栓形成は、血管組織を、不活性ポリマー支持体等の固体又は半固体支持体上に吸着されるか又は該支持体内若しくは該支持体上に別様に含まれる本明細書に記載するCRPと接触させることにより誘導され得る。好適な不活性ポリマー支持体の例としては、ステント、塞栓コイル等が挙げられるが、これらに限定されない。そのような個人は、例えば、膨張した動脈若しくは他の血管、及び/又は大動脈瘤等の医療問題に苦しんでいる場合がある。一実施形態において、支持体は、タンパク質類、ポリエチレングリコール、又はリポソーム類からなる不活性ポリマー支持体であってもよく、前記支持体は、該支持体に吸着する本発明のCRPで被覆されている。
【0084】
本明細書に記載する本発明のそのようなCRPは、胚幹細胞の誘導分化のために、前記コラーゲン関連ペプチドが補充された、化学的に定義された三次元ポリマーマトリックスを含む組成物中で更に有用であり得る。その全体が参照により全目的のために本明細書に組み込まれる国際出願第07/075807号には、胚幹細胞の誘導分化を支持する、コラーゲンIVポリペプチドが補充された、化学的に定義された三次元ポリマーマトリックスを含む組成物が記載されている。
【0085】
本発明の更なる別の実施形態は、それを必要とする対象における止血状態の処置方法に関し、前記方法は、本発明のCRPを含有する組成物を投与することを含み、前記組成物は、非限定的に、本明細書に記載するそのようなCRPを含み得る。ポリペプチド組成物は、所望により投与中に基材を含んでもよい。それらの組成物は、一般に、対象に効果を示すのに十分な投与計画に従って投与され得る。投与される実際の量、並びに投与の速度及び経時的変化は、例えば処置されている疾病又は状態の性質及び重篤さ等のいくつかの因子に依存するであろう。組成物は、処置される疾病又は状態に応じて、単独で、又は他の処置からなる補助的療法と組み合わせて、同時に若しくは連続して投与されてもよい。
【0086】
止血状態を処置するためのこの方法によれば、本明細書に記載するCRP組成物は、単独で、又は賦形剤及び任意の他の成分と組み合わせて使用されて止血を提供することができる。別の実施形態では、そのようなCRPは、止血剤として使用されるのに好適な基材と組み合わせてもよい。止血CRP組成物は、粉末、繊維、フィルム又は発泡体を含むがこれらに限定されない様々な形態を有し得る。
【0087】
CRP含有発泡体は、例えば、凍結乾燥法又は超臨界溶媒発泡法(supercritical solvent foaming)等のプロセスにより調製することができる。これらのプロセスの詳細は当技術分野にて周知であり、例えば、S.Matsuda、Polymer J.,1991,23(5),435〜444(凍結乾燥法)及び欧州特許出願第464,163 B1号(超臨界溶媒発泡法)に開示されている。一般に、本発明のCRPを含有する凍結乾燥発泡体は、最初にCRP、及び例えば可塑剤等の当技術分野にて公知の所望による任意の成分を、このような溶解に十分な温度下で好適な溶媒に溶解した後、CRP含溶溶液を鋳型内に注ぐことにより調製され得る。CRPは、CRP含有溶液の全重量に基づいて、約0.1mg/mL〜約10mg/mLの範囲内、又は約0.1mg/mL〜約1mg/mLの範囲内、又は約0.3mg/mLの量でCRP含有溶液中に存在してよい。好適な可塑剤としては、グリセロール、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、グリセロールのモノアセテート、グリセロールのジアセテート、グリセロールのトリアセテート及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されず、また前記可塑剤は、CRP含有発泡体の最終乾燥重量に基づいて、約0.5パーセント〜約15パーセントの範囲内、又は約1パーセント〜約5パーセントの範囲内の量で使用されてよい。CRPへの可能な有害な影響を最小限にするために、溶解温度は約50℃を超えてはならない。溶解は水中、又は緩衝生理食塩水、リン酸緩衝液、ハンクのバランス塩溶液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリス緩衝生理食塩水、Hepes緩衝生理食塩水、及びそれらの混合物等の水性塩溶液中を含むがこれらに限定されない、有利な水性条件下で行われ得る。
【0088】
一実施形態において、溶媒は約6〜約8のpH範囲に緩衝されてもよい。鋳型を所望の量の溶液で満たした後、鋳型を凍結乾燥機内に移動させ、前記凍結乾燥機は、溶液を凍結した後真空乾燥して、得られた発泡体から溶媒を除去する。得られた発泡体の厚さは、例えば鋳型内の溶液の量、溶液中のCRPの濃度等に応じて変動し得るが、典型的には、得られた発泡体は約0.5mm〜約10mmの範囲内、又は約1mm〜約5mmの範囲内の厚さと、約1マイクロメートル〜約500マイクロメートルの範囲内の孔径とを有し得る。発泡体は、出血部位の止血課題に対処する際の使用に好適であり得る様々なサイズで作製されることできる。
【0089】
CRP含有フィルムは、例えば、好適な溶媒からフィルムをキャスティングする等のプロセスにより調製することができる。このプロセスの詳細は当技術分野にて周知であり、例えば、Bagrodia S及びWilkes GLの「Effects of Solvent Casting Copolymer Materials As Related to Mechanical Properties,」J Biomed Mater Res.,1976(Jan),10(1),101〜11に開示されている。この実施形態によれば、本発明のCRPは、例えば、可塑剤等の当技術分野にて公知の所望による任意の成分と共に、十分な量の水性溶媒に溶解されてもよい。CRPは、溶液の全重量に基づいて、約0.1mg/mL〜約10mg/mLの範囲内、又は約0.1mg/mL〜約1mg/mLの範囲内、又は約0.3mg/mLの量で溶液中に存在してよい。好適な可塑剤としては、グリセロール、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、グリセロールのモノアセテート、グリセロールのジアセテート、グリセロールのトリアセテート及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されず、また前記可塑剤は、CRP含有フィルムの最終乾燥重量に基づいて、約0.5パーセント〜約15パーセントの範囲内、又は約1パーセント〜約5パーセントの範囲内の量で使用されてよい。
【0090】
好適な水性溶媒の例としては、水、混和性有機溶媒類、アルコール類又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好適な混和性有機溶媒類及びアルコール類の例としては、アセトン、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、メタノール等、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。CRPへの可能な有害な影響を最小限にするために、溶解温度は約50℃を超えてはならない。次に、CRP含有溶液を、例えば滴下により加えるか、又は好適な量を別様に注いで、キャスティング基材上の所望の表面積を覆ってもよい。
【0091】
好適なキャスティング基材の例には、CRP含有フィルムを容易に解放する材料を含むものが挙げられ、ガラス、金属、テフロン被覆容器等から作製されるものを挙げることができるが、これらに限定されない。そのような基材のサイズ及び形状は、組成物の必要性により変動し得る。次に、CRP含有溶液から溶媒を蒸発又は風乾により除去し、その後、所望により、得られたフィルムを、真空乾燥による等の様々な方法により乾燥して、残留溶媒を除去してもよい。より厚いフィルムを所望する場合、1つ以上のCRP含有溶液の層を、先にキャスティングしたフィルムの上面の上にキャスティングしてプロセスを繰り返してもよい。得られたフィルムの厚さは、例えばキャスティング基材上に注がれた溶液の量、溶液中のCRPの濃度等に応じて変動し得るが、典型的には各フィルム層の厚さは、約50マイクロメートル〜約150マイクロメートルの範囲内であり得る。発泡体に関連して上記に示したように、フィルムは様々なサイズに調製されることもできる。
【0092】
CRP含有粉末は、当技術分野にて周知のプロセスを用いて、本発明のCRPからなる繊維、フィルム又は発泡体を、手で、又は機械的に摩砕若しくは粉砕することにより得ることができる。CRP繊維、フィルム又は発泡体を摩砕又は粉砕して粉末にする例示的な技術には、乳鉢及び乳棒を使用するもの、回転刃、又はボールミル等の衝撃粉砕機が挙げられるが、これらに限定されない。CRPを摩砕して粉末とするこれら及び他の手段は、室温で、又は低温摩砕プロセスでは、CRPの凝固点を下回る温度で達成され得る。得られたCRP含有粉末は、任意により篩にかけられて約1マイクロメートル〜約2000マイクロメートルの範囲内、又は約10マイクロメートル〜約500マイクロメートルの範囲内の粒径を有する粉末を得ることができる。
【0093】
CRP含有粉末、フィルム、及び/又は発泡体は、止血剤として出血部位に直接適用されて、止血を向上又は引き起こすことができる。代替的に、本明細書に記載するCRPは基材構成成分と組み合わせて適用されてもよく、そのような実施形態では、CRPを以下、CRP止血構成成分と称する。基材は、個人内に移植するのに好適な基材、又は移植不可能な基材のいずれかであり得る。
【0094】
好適な移植可能な基材の例としては、縫合糸アンカー、縫合糸、ステープル、外科用鋲、クリップ、プレート、ねじ、及びフィルム等の医療デバイス、不織フェルト、織成メッシュ又は織物等の組織工学用足場、発泡体、並びに粉末が挙げられるが、これらに限定されない。これらの移植可能な基材は、身体内への移植に好適な任意の材料からなることができ、前記材料には、生体適合性の生体吸収性ポリマー類、例えば脂肪族ポリエステル類、ポリ(L−リシン)及びポリ(グルタミン酸)等のポリ(アミノ酸)類、コポリ(エーテル−エステル)類、1〜10個の炭素原子のアルキル基の長さを有するもの等のポリアルキレンオキサレート類、ポリオキサアミド類、チロシン由来ポリカーボネート類、ポリ(イミノカーボネート)類、ポリオルトエステル類、ポリオキサエステル類、ポリエステルアミド類、アミン基を含むポリオキサエステル類、ポリ(酸無水物)類、ポリホスファゼン類、生体分子類(コラーゲン、エラスチン、及びゼラチン、並びに澱粉、アルギネート、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩、酸化再生セルロース(oxidized regenerated cellulose)等の多糖類等のバイオポリマーを含む)、並びにそれらのコポリマー類及びブレンド類、並びに綿、リネン、絹、ナイロン6−6等のナイロン、芳香族ポリアミド類、例えば商標名「KEVLAR」又はNOMEXでE.I.du Pont de Nemours and Companyから市販されているもの、ポリ(エチレンテレフタレート)等のポリエステル類、フルオロポリマー類、例えばポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリ(エチレン−プロピレン)(FEP)及びポリフッ化ビニリデン(PFA)、ポリオレフィン類、例えばポリエチレン及びポリプロピレン、ポリウレタン類、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない非吸収性材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
本明細書で使用される「生体吸収性」は、身体組織に曝露された後、比較的短時間で酵素又は加水分解反応を介して容易に分解する材料を指すものとする。「分解」とは、材料が身体によって実質的に代謝又は排除され得る小部分に破壊されることを意味するものとする。完全な生体吸収は約12ヶ月以内に行われるが、生体吸収は例えば約9ヶ月以内、又は約6ヶ月以内、又は約3ヶ月以内、又はそれ未満で完了する場合がある。
【0096】
本発明の目的において、ポリ(イミノカーボネート)類には、Dombら編、Handbook of Biodegradable Polymers,Hardwood Academic Press,pp.251〜272(1997)にKemnitzer及びKohnにより記載されるポリマー類が挙げられると理解される。本発明の目的において、コポリ(エーテル−エステル)類は、Cohn及びYounesによるJournal of Biomaterials Research,Vol.22,pages 993〜1009,1988、及びCohnによるPolymer Preprints(Polymer ChemistryのACS Division),Vol.30(1),page 498,1989に記載されるコポリエステル−エーテル類(例えばPEO/PLA)が挙げられると理解される。本発明の目的において、ポリアルキレンオキサレート類には、米国特許第4,208,511号、同第4,141,087号、同第4,130,639号、同第4,140,678号、同第4,105,034号及び同第4,205,399号に記載されるものが挙げられる。本発明の目的において、チロシン由来ポリカーボネート類には、Pulapuraら、Biopolymers,Vol.32,Issue 4,pgs 411〜417及びErtelら、J.Biomed.Mater.Res.,1994,28,919〜930に記載されるポリマー類が挙げられると理解される。本発明の目的において、ポリホスファゼン類、L−ラクチド、D、L−ラクチド、乳酸、グリコリド、グリコール酸、パラ−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート及びε−カプロラクトンから作製された、コ(co)、ター(ter)、及びより高次のモノマーベースの混合ポリマー類には、The Encyclopedia of Polymer Science,Vol.13,pages 31〜41,Wiley Intersciences,John Wiley&Sons,1988にAllcockにより、及びDombら編Handbook of Biodegradable Polymers,Hardwood Academic Press,pp.161〜182(1997)にVandorpeらにより記載されるものが挙げられると理解される。本発明の目的において、ポリエステルアミド類には、米国特許出願第20060188547号及び米国特許第5,919,893号に記載されるポリマー類が挙げられると理解される。ポリ酸無水物類には、12個までの炭素原子の脂肪族α−ω二酸を有するHOOC−C−O−(CH−O−C−COOH(式中、mは2〜8の範囲内の整数である)の形態の二酸から誘導されたもの、及びそのコポリマー類が挙げられる。アミン及び/又はアミド基を含有するポリオキサエステル類、ポリオキサアミド類、及びポリオキサエステル類は、以下の1つ以上にて記載されている:米国特許第5,464,929号、同第5,595,751号、同第5,597,579号、同第5,607,687号、同第5,618,552号、同第5,620,698号、同第5,645,850号、同第5,648,088号、同第5,698,213号、同第5,700,583号及び同第5,859,150号。本発明の目的において、ポリオルトエステル類には、Dombら編、Handbook of Biodegradable Polymers,Hardwood Academic Press,pp.99〜118(1997)にHellerにより記載されるポリマー類が挙げられると理解される。本発明の目的において、ポリウレタン類には、米国特許第6,326,410号、同第6019996号、同第5571529号及び同第4,960,594号に記載されるポリマー類が挙げられると理解される。
【0097】
本発明の目的において、脂肪族ポリエステル類には、非限定的に、ラクチド(乳酸D−、L−及びメソラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネート(1,3−ジオキサン−2−オン)、米国特許第5,412,068号に記載されているようなトリメチレンカーボネートのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシブチレート、ヒドロキシバレレート、1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2−オン及びそれらの組み合わせの、ホモポリマー類及びコポリマー類が挙げられると理解される。
【0098】
一実施形態において、脂肪族ポリエステルは、エラストマー性コポリマーである。「エラストマー性コポリマー」は、室温で、元の長さの少なくとも約2倍に繰り返し伸びることができ、即時に応力が解放されると、およそ元の長さに戻る材料と定義される。好適な生体吸収性の生体適合性エラストマー類には、ε−カプロラクトンとグリコリドとのエラストマー性コポリマー類(ε−カプロラクトンとグリコリドとのモル比が約30:70〜約70:30の範囲内、又は約35:65〜約65:35の範囲内、又は約45:55〜35:65の範囲内のもの等)、ε−カプロラクトンとラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、それらのブレンド又は乳酸コポリマー類を含む)とのエラストマー性コポリマー類(ε−カプロラクトンとラクチドとのモル比が約35:65〜約65:35の範囲内、又は約45:55〜30:70の範囲内のもの等)、p−ジオキサノン(1,4−ジオキサン−2−オン)とラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド及び乳酸を含む)とのエラストマー性コポリマー類(p−ジオキサノンとラクチドとのモル比が約40:60〜約60:40の範囲内のもの等)、ε−カプロラクトンとp−ジオキサノンとのエラストマー性コポリマー類(ε−カプロラクトンとp−ジオキサノンとのモル比が約30:70〜約70:30の範囲内のもの等)、p−ジオキサノンとトリメチレンカーボネートとのエラストマー性コポリマー類(p−ジオキサノンとトリメチレンカーボネートとのモル比が約30:70〜約70:30の範囲内のもの等)、トリメチレンカーボネートとグリコリドとのエラストマー性コポリマー類(トリメチレンカーボネートとグリコリドとのモル比が約30:70〜約70:30の範囲内のもの等)、トリメチレンカーボネートとラクチド(L−ラクチド、D−ラクチド、それらのブレンド、又は乳酸コポリマー類)とのエラストマー性コポリマー類(トリメチレンカーボネートとラクチドとのモル比が約30:70〜約70:30の範囲内のもの等)、及びそれらのブレンドからなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。別の実施形態において、エラストマー性コポリマーは、ε−カプロラクトンとグリコリドとのモル比が約35:65〜約65:35の範囲内である、ε−カプロラクトン及びグリコリドである。更なる別の実施形態では、エラストマー性コポリマーは、モル比が約35:65のε−カプロラクトン及びグリコリドである。
【0099】
好適な移植不可能な基材の例には、包帯及び創傷被覆材が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「包帯」は、身体の疾病又は傷害部分を巻く又はと包むのに使用される一片の布又は他の材料を意味するものとする。包帯は、創傷と直接接触して設置されるか、又は創傷被覆材を創傷に巻くよう使用される。本明細書で使用される「創傷被覆材」は、創傷と直接接触して設置され、また創傷を保護し、治癒を促進し、及び/又は水分を提供、保持、若しくは除去する目的に役立ち、場合により包帯の使用により定位置に保持される、一片の布又は材料を意味するものとする。
【0100】
移植不可能な基材は、織物、発泡体、ガーゼ、フィルム、接着包帯、親水コロイド、ゲル及びそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない様々な形態であることができる。これらの移植不可能な基材は、身体への適用に(移植することなく)好適な任意の材料からなることができ、前記材料には、生体適合性の生体吸収性ポリマー類、例えば脂肪族ポリエステル類、ポリ(L−リシン)及びポリ(グルタミン酸)等のポリ(アミノ酸)類、コポリ(エーテル−エステル)類、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を有するもの等のポリアルキレンオキサレート類、ポリオキサアミド類、チロシン由来ポリカーボネート類、ポリ(イミノカーボネート)類、ポリオルトエステル類、ポリオキサエステル類、ポリエステルアミド類、アミン基を含むポリオキサエステル類、ポリ(酸無水物)類、ポリホスファゼン類、生体分子類(コラーゲン、エラスチン、及びゼラチン等のバイオポリマー類、並びに澱粉、アルギネート、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩、酸化再生セルロース等の多糖類を含む)、並びにそれらのコポリマー類及びブレンド類、並びに非生体吸収性材料、例えば綿、リネン、絹、ナイロン6−6等のナイロン、及び芳香族ポリアミド類、例えば商標名「KEVLAR」又は「NOMEX」でE.I.du Pont de Nemours and Companyから市販されているもの、ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)、フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリ(エチレン−プロピレン)(FEP)及びポリフッ化ビニリデン(PFA)、ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレン、ポリウレタン類、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらの材料は、上述したように定義される。
【0101】
CRP止血構成成分は、浸漬コーティング、スプレーコーティング、凍結乾燥コーティング、及び静電コーティング技術等の従来のコーティング技術を介して、そのような基材の表面に適用することができる。これらのコーティング方法の詳細は当技術分野にて周知であり、例えば、米国特許第6,669,980号;Yun JHら、40(3)ASAIO J.M,401〜5(Jul.〜Sep.1994);及びKrogars Kら、Eur J Pharm Sci.,2002(Oct.),17(1〜2),23〜30に開示されている。一般に、所望の量のCRP止血構成成分を含有する溶液は、調製され、選択されたコーティング技術により所望の基材の表面に適用され得る。次に、基材は、風乾、真空炉内での真空乾燥、又は凍結乾燥を含むがこれらに限定されない従来の乾燥プロセスを介して乾燥されてもよい。CRPは、凝血、血小板凝集等の所望の止血特性を達成するのに必要な量で使用されるべきであるが、一般にCRPは、基材被覆の目的において、基材の約0.01mg/cm〜約1mg/cmの範囲内、又は約0.1mg/cm〜約0.5mg/cmの範囲内、又は約0.4mg/cmの範囲内の量で存在する。
【0102】
基材が注射用又はスプレー用のゲル又はゲル形成液体である別の実施形態では、粉末又はコラーゲン様原線維物質の形態であり得るCRP−止血構成成分は、当技術分野にて公知の従来の混合技術により、注射用又はスプレー用のゲル又は液体と組み合わせることができる。注射用又はスプレー用のゲル又はゲル形成液体は、水性塩溶液及びゲル化材料からなり得る。
【0103】
好適な水性塩溶液の例としては、生理学的緩衝液、生理食塩水、水、緩衝生理食塩水、リン酸緩衝液、ハンクのバランス塩溶液、PBS、トリス緩衝生理食塩水、Hepes緩衝生理食塩水、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、水性塩溶液は、リン酸緩衝液又はPBSであってよい。
【0104】
好適なゲル化材料の例としては、コラーゲン、エラスチン、トロンビン、フィブロネクチン、ゼラチン、フィブリン、トロポエラスチン、ポリペプチド類、ラミニン、プロテオグリカン類、フィブリン接着剤、フィブリン塊、血小板豊富血漿(PRP)塊、血小板欠乏血漿(PPP)塊、自己集合ペプチドヒドロゲル類、及びアテロコラーゲン等のタンパク質類、澱粉、ペクチン、セルロース、アルキルセルロース(例えばメチルセルロース)、アルキルヒドロキシアルキルセルロース(例えばエチルヒドロキシエチルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えばヒドロキシエチルセルロース)、硫酸セルロース、カルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、キチン、カルボキシメチルキチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、アルギネート、架橋アルギネートアルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、グリコーゲン、デキストラン、デキストラン硫酸、カードラン、ペクチン、プルラン、キサンタン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸類、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルキトサン、キトサン、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパラン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、カラギーナン類、キトサン、澱粉、アミロース、アミロペクチン、ポリ−N−グルコサミン、ポリマンヌロン酸、ポリグルクロン酸、及び誘導体等の多糖類、ポリヌクレオチド類、例えばリボ核酸類、デオキシリボ核酸類、及びその他、例えばポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(オキシアルキレン)、ポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)のコポリマー類、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリレート、モノステアロイルグリセロールコ−スクシネート/ポリエチレングリコール(MGSA/PEG)のコポリマー類、並びにそれらのコポリマー類及び組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
本明細書に記載するセルロース材料の定義において、用語「アルキル」は、特定の実施形態において特に指示しない限り、約1〜約7個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖であり得る炭化水素鎖を指し、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2,3−ジメチルブチル、ネオヘキシル、又はヘプチルである。
【0106】
一実施形態において、ゲル化材料は、多糖類からなる。別の実施形態では、ゲル化材料は、カルボキシメチルセルロースナトリウムからなる。
【0107】
注射用又はスプレー用ゲル又は液体は、有効量のゲル化材料を水性塩溶液に溶解して最初のゲルを形成することにより調製することができる。
【0108】
「有効量」のゲル化材料は、注射用又はスプレー用ゲル又は液体を、罹患した範囲内に注射し又は該範囲上に噴霧し、適用後、実質的に定位置に残留できるようにするのに十分必要なゲル化材料の量と定義される。有効量のゲル化材料は、例えば、選択されるゲル化材料、所望のCRPの量等に応じて変動し得るが、当業者は、必要以上の実験を行うことなく、有効量のゲル化材料を容易に決定することができる。ゲル化材料がカルボキシメチルセルロースナトリウムである一実施形態では、ゲル化材料は、溶液の全重量に基づいて、約0.1パーセント〜約5パーセントの範囲内、又は約0.5パーセント〜約3パーセントの範囲内の量で存在してよい。
【0109】
次に、CRP止血構成成分を、スパチュラを用いて手で混合、磁気撹拌、又はモーター及び回転パドル若しくは刃を使用した機械的混合が挙げられるがこれらに限定されない当技術分野にて公知の任意の従来の混合技術により最初のゲルと組み合わせてもよい。CRPへの可能な有害な影響を最小限にするために、混合温度は約50℃を超えてはならない。CRP止血剤は、出血部位に適用された際に止血を誘導するのに有効な量で、得られたゲル中に存在し、典型的には、最終ゲルの全重量に基づいて、約0.1mg/mL〜約10mg/mLの範囲内、又は約0.1mg/mL〜約1mg/mLの範囲内、又は約0.3mg/mLである。一実施形態において、注射用又はスプレー用ゲル又は液体は、注射前にゲル形態を有してもよい一方、代替的な実施形態では、注射用又はスプレー用ゲル又は液体は、注射前に液体形態を有するが、所望の位置に投与された後、実質的に定位置に残留できるゲル形態を有し得る。
【0110】
CRP止血構成成分が粉末の形態を有する実施形態では、CRPは当技術分野にて公知の任意の好適な粉末担体と組み合わされてもよい。一実施形態において、担体は例えば、Maa YFら、SJ Curr Pharm Biotechnol.,2000(Nov.),1(3),283〜302に開示されている方法を用いて、粉末粒子上にスプレー塗布されてもよい。CRP−止血構成成分は、粉末の全重量に基づいて、約0.5パーセント〜約100パーセントの範囲内、又は約2パーセント〜約10パーセントの範囲内の量で粉末中に存在してよい。
【0111】
好適な粉末担体の例としては、多糖類、例えば澱粉、ペクチン、セルロース、アルキルセルロース(例えばメチルセルロース)、アルキルヒドロキシアルキルセルロース(例えばエチルヒドロキシエチルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えばヒドロキシエチルセルロース)、硫酸セルロース、カルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、キチン、カルボキシメチルキチン、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、アルギネート、架橋アルギネートアルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、グリコーゲン、デキストラン、デキストラン硫酸、カードラン、ペクチン、プルラン、キサンタン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸類、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルキトサン、キトサン、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ヘパラン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、カラギーナン類、キトサン、澱粉、アミロース、アミロペクチン、ポリ−N−グルコサミン、ポリマンヌロン酸、ポリグルクロン酸、マンニトール、多孔質溶岩(porous lava)、ポリエステル類、並びにそれらのコポリマー類及び混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
一般的なCRP合成
本発明のCRPは、様々な固相又は溶液技術により作製することができる。例えば、CRPは他の方法(例えば、溶液方法)で調製して、次の連結のために支持体材料に付着させることができるが、固相ポリペプチド合成(SPPS)技術等の標準的な固相有機合成技術を使用することが好ましい。即ち、本発明のCRPは、合成した後、支持体材料に付着させ、様々な試薬と結合した後、様々な技術を用いて支持体材料から除去することができる。しかしながら、支持体材料上でCRPを合成し、試薬と結合した後、様々な技術を用いて支持体材料から除去することが好ましい。
【0113】
CRP(オリゴペプチド類、ポリペプチド類、又はタンパク質類)の調製において、固相ペプチド合成は、新生CRP鎖を、付着用の適切な官能基を含む支持体材料(典型的には、不溶性ポリマー支持体)に結合する共有結合的付着工程(即ち、固着)を含む。続いて、固着されたCRPを、CからNへの方向にN−保護及び側鎖保護アミノ酸を段階的に加える一連の追加(脱保護/連結)サイクルにより延長する。鎖集合体が達成された後、保護基を除去し、CRPを支持体から切断する。場合によっては、保護基を除去する前に、CRPに他の基を加える。
【0114】
典型的には、SPPSは、ハンドルを使用して、最初のアミノ酸残基を官能性支持体材料に付着させることにより開始する。ハンドル(即ち、リンカー)は、一方では円滑に切断可能な保護基の特徴を組み込み、他方では、活性化されて官能性支持体材料への連結を可能にする、多くの場合カルボキシル基である官能基を組み込んだ、二官能性スペーサである。公知のハンドルとしては、酸に不安定なp−アルコキシベンジル(PAB)ハンドル、感光性o−ニトロベンジルエステルハンドル、並びにAlbericio et al.,J.Org.Chem.,55,3730〜3743(1990)及びその中に引用されている参考文献、並びに米国特許第5,117,009号(Barany)及び同第5,196,566号(Baranyら)により記載されているもの等のハンドルが挙げられる。
【0115】
例えば、支持体材料がアミノ官能性モノマーにより調製されている場合、一般に、適切なハンドルは、一工程でアミノ官能性支持体上に定量的に連結されてポリペプチド鎖集合体の明確に規定された構造の一般的な出発点を提供する。ハンドル保護基が除去され、N’−保護された第1のアミノ酸のC−末端残基がハンドルに定量的に連結される。ハンドルが支持体材料に連結され、最初のアミノ酸がハンドルに付着された後、一般的な合成サイクルが開始する。合成サイクルは一般に、支持体材料上のアミノ酸のN−保護アミノ基を脱保護し、洗浄し、必要であれば中和工程を行い、その後、次のN−保護アミノ酸のカルボキシル活性化形態と反応させることからなる。サイクルを繰り返して、関心対象のCRPを形成する。官能性不溶性支持体材料を使用した固相ペプチド合成方法は周知である。
【0116】
SPPS技術を用いて支持体材料上でCRPを合成する場合、Fmoc方法論は、塩基に不安定な9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護基を使用した穏やかな直交性(mild orthogonal)技術を用いることを含む。Fmocアミノ酸は、炭酸フルオレニルメチルスクシンイミジル(Fmoc−OSu)、塩化Fmoc、又は[4−(9−フルオレニルメチルオキシカルボニルオキシ)フェニル]ジメチルスルホニウムメチルサルフェート(Fmoc−ODSP)を使用して調製することができる。Fmoc基は、ジメチルホルムアミド(DMF)若しくはN−メチルピロリドン中のピペリジン、又はDMF中の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)を使用して除去することができる。Fmoc除去後、支持樹脂の遊離N−アミンは遊離しており、介在する中和工程を有することなく、即時に脂質付着する状態になっている。次に、所望のCRPの固定化疎水性類似体を、例えば室温でトリフルオロ酢酸(TFA)を使用して除去してもよい。そのようなFmoc固相ポリペプチド合成方法論は、当業者に周知である。
【0117】
本発明の複合体を調製するための様々な支持体材料を使用することができる。それらは無機材料であっても有機材料であってもよく、様々な形態を有することができる(膜、粒子、球状ビーズ、繊維、ゲル、ガラス等)。例としては、多孔質ガラス、シリカ、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリジメチルアクリルアミド類、綿、紙等が挙げられる。アミノ官能性ポリスチレン、アミノメチルポリスチレン、アミノアシルポリスチレン、p−メチルベンズヒドリルアミンポリスチレン又はポリエチレングリコール−ポリスチレン樹脂等の官能性ポリスチレン類も、本目的に使用することができる。
【0118】
特定のCRP合成
当業者であれば、本明細書の記載に基づいて本発明を最大限利用できるであろう。以下の具体的な実施形態は、単なる例示として解釈すべきであり、いかなることがあっても以下の開示を限定するものではない。
【0119】
材料及び方法:Fmoc−アミノ酸、HBTU/HOBT、DIEA、NMP及びDCMをApplied Biosystems,Incから購入した。ピペリジンをSigma−Aldrichから購入した。Fmoc−Gly−Wang樹脂はBachem製であり、Fmoc−Phe−Wang樹脂はNovabiochem製であった。MALDI−TOF質量分析は、M−Scan Inc.にて、α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸をマトリックスとして使用して、Delayed Extractionレーザー脱離質量分析計と連結したApplied Biosystems Voyager−DE PRO Biospectrometryワークステーションを用いて行った。アミノ酸分析は、カリフォルニア大学デイビス校のMolecular Structural Facilityにて、Beckman 6300 Li−ベースのアミノ酸分析器を使用して行った。得られたCRPは純度>90%であり、各実験に対してポリペプチド含有率を考慮して溶液を調製した。加えて、214(PBS中、ε=6.0×10−1cm−1)又は215nm(水中、ε=6.5×10−1cm−1)で吸収を測定して、CRP濃度を確認した。電子顕微鏡実験のための全てのポリペプチド濾過は、Whatman製のNucleporeフィルター(0.4μm、ポリカーボネート膜)を使用して行い、濾過の残りは、Pall製のAcrodiscシリンジフィルター(0.45μm、ポリテトラフルオロエチレン膜)を使用して行った。
【0120】
特段の記載がない限り、本明細書で用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術における通常の知識を有する者が共通に解釈するのと同じ意味を有する。本明細書で使用される略称は、以下の通りである。
【表1】

【実施例】
【0121】
(実施例1)
SEQ ID 25:(F)−Phe−(Gly−Pro−Hyp)10−Phe
比較物SEQ ID 29:Ac−(Gly−Pro−Hyp)10−Gly
比較物SEQ ID 35:FPhe−(Gly−Pro−Hyp)5−Phe
【0122】
SEQ ID 25を有するCRPとSEQ ID 29及びSEQ ID 35を有する比較物ポリペプチドとを、標準的なFastMoc法を使用して合成し、逆相HPLCにより精製し、特徴付けを行った。
【0123】
SEQ ID 25を有するCRPは、FastMoc法(0.1mmol目盛り)及びFmoc−Phe−Wang樹脂(0.74mmol/g、100〜200メッシュ)を使用して、ABI 431合成機上で合成した。TFA/トリイソプロピルシラン/水(95:2.5:2.5)を2時間使用して、CRPを樹脂から切断した。Phenomenex C−18逆相カラム(25×5cm)内で、10〜95% B(A:0.2% TFA/HO、B:0.16% TFA/MeCN)の直線勾配を用いて、流速50mL/分でHPLC精製を60分間かけて行った。CRPを総収率32%で白色粉末として得た。SEQ ID 25:(F)−Phe−(Gly−Pro−Hyp)10−Phe:C1381853243に関してMALDI−TOF−MS(M+Na)の計算値3096.3、実測値3096.8。SEQ ID 35:FPhe−(Gly−Pro−Hyp)5−Pheを有する比較物ポリペプチドは、SEQ ID 25:(F)−Phe−(Gly−Pro−Hyp)10−Pheを有するCRPと同様に合成した。
【0124】
SEQ ID 29:Ac−(Gly−Pro−Hyp)10−Glyを有する比較物ポリペプチドは、FastMoc法(0.1mmol目盛り)及びFmoc−Gly−Wang(0.7mmol/g、100〜200メッシュ)を使用して、ABI 433A合成機上で合成した。95%のTFAを2時間使用して、比較物ポリペプチドを樹脂から切断した。2つのVydac C−1逆相カラム(25×2.5cm)内で、0〜100% B(A:0.1% TFA/HO、B:0.1% TFAを含む80% MeCN/HO)のステップ勾配を用いて、流速6mL/分で90分間かけてHPLC精製を行った。比較物ポリペプチドを総収率34%で白色粉末として得た。SEQ ID 29:Ac−(Gly−Pro−Hyp)10−Gly:C1241773143に関してMALDI−TOF−MS(M+Na)の計算値2811.3、実測値2812.2。
【0125】
円偏光二色性(CD)分光法
SEQ ID 25を有するCRP並びにSEQ ID 29及びSEQ ID 35を有する比較物ポリペプチドの溶液(水中、0.25mM及び0.013mM)を4℃で24時間保管し、三量体形成に関して監視した。Jasco J−710器具にて光路長0.1cmのセルを使用して、走査速度100nm/分で平均10又は20回の走査の信号により、25℃にてCDスペクトルを測定した。SEQ ID 25を有するCRP及びSEQ ID 29を有する比較物ポリペプチドは、CD分光法(θmax=225nm)により、三重らせん構造を採用したことがわかった。Peltier温度制御システムを装備したAviv 215分光計で、CD融解曲線を得た。225nmでの楕円率を、速度1℃/分にて、3℃の増分で、5分間の平衡時間及び0.1−cmの光路長を用いて20〜100℃にて監視した。
【0126】
SEQ ID 25を有するCRPホモ三量体は、約57℃のTを有すると判断された。SEQ ID 25を有するCRP三量体に関する結果を温度依存性H NMR試験により確認し、プロリンのδ−Hの特徴的な低磁場シフト(元はδ3.0〜3.5ppm)が約55℃〜約65℃で生じた(平衡化を伴う)。したがって、SEQ ID 25を有するCRP三量体は室温超で安定であった。SEQ ID 25を有するCRP三量体に関する熱安定性は、一対のジスルフィド結合により共有結合された3つのペプチド鎖を有する、最近記載されたコラーゲン模倣化合物(T=47℃)に関するものと比較して僅かに高い(Kotch F及びRaines RT,Proc.Natl.Acad.Sci USA 2006,103,3028〜3033)。SEQ ID 29(T70℃)を有する参照ポリペプチド三量体と比較して低い、SEQ ID 25を有するCRP三量体の融解温度は、SEQ ID 25を有するCRP三量体の末端部における、フェニル及びペンタフルオロフェニル基による幾分かの構造的分裂(「ほつれ」)に起因し得る。
【0127】
動的光散乱(DLS)
633−nmレーザー(He−Ne、4.0mW)及び173°での後方散乱検出を装備したMalvern Zetasizer Zen 1600器具で、DLS測定を行った。SEQ ID 25を有するCRP及びSEQ ID 29を有する参照ポリペプチドの溶液(水中0.5mg/mL)を70℃で10分間加熱し、0.45μmフィルターで熱濾過し、溶液が室温に到達した際(時間=0で)、及び24時間後に、プラスチックキュベット(1.0cm)内で測定した。
【0128】
DLSを測定して、SEQ ID 25を有するCRPとSEQ ID 29を有する比較物ポリペプチドとにより形成された超分子複合体のサイズを25℃にて水中で決定した。SEQ ID 25を有するCRPの新鮮な溶液は、サイズ3nm及び190nmの2つの種を含み、これらは24時間後、集まっておよそ1000nmのサイズを有する凝集物質となった。対照的に、SEQ ID 29を有する比較物ポリペプチドは、ほぼ4及び100nmのサイズを有する2つの種を示し、これらは同一時間中に増大しなかった。これらの結果は、仮定されたフェニル−ペンタフルオロフェニル芳香族積み重ね機構が、SEQ ID 25を有するCRPが超分子複合体に形成されるのを促進していたことを示唆する。
【0129】
透過電子顕微鏡(TEM)
SEQ ID 25を有するCRPの超分子複合体のサイズ及び形態は、TEM Philips EM 300で撮影されたTEM像によっても評価された。SEQ ID 25を有するCRPの水性溶液(0.05mg/mL)を0.4μmフィルターで濾過し、炭素フィルムで被覆された銅格子上に堆積させた。溶液を40℃で乾燥し、像を80kVで記録した。マウス動脈を2%グルタルアルデヒドで染色し、TEM用のエポキシブロック内に設置した。エポキシブロック内部の動脈の薄い切片(ほぼ200〜500nmのサイズ)を、菱形切片工具を使用して切った。切片を銅格子上に載せ、像を60kVで記録した。各実験において、マウス大動脈組織内に見られるコラーゲン原線維(平均直径:0.05μm)と類似したμm長の複合体原線維(平均直径:0.26μm)が観察された。SEQ ID 25を有するCRPの原線維の寸法は、それぞれの方向に、少なくとも100個のSEQ ID 25を有するCRP三量体の末端部−末端部(線状)及び側部−側部(横)集合体の組み合わせを必要とした。
【0130】
プロトンNMR分光法
SEQ ID 25を有するCRP(DO中1mM、4℃で24時間インキュベート)のプロトンNMRスペクトルを三重共鳴(H、13C、15N)、三軸、勾配プローブを装備したDMX−600 NMR分光計(Bruker Biospin,Inc.,Billerica,MA 01821−3991)上で収集した。リサイクル遅延(recycle delay)及び混合時間中のプレサチュレーションを伴う一次元NOESYを使用して、データを収集した。温度を10℃の増分で上昇させ、15分間の平衡化後にスペクトルを測定した。
【0131】
(実施例2)
SEQ ID 25:FPhe−(Gly−Pro−Hyp)10−Phe
SEQ ID 26:Phe−(Gly−Pro−Hyp)10−Phe
SEQ ID 27:Leu−(Gly−Pro−Hyp)10−Phe
SEQ ID 28:Gly−(Gly−Pro−Hyp)10−Gly。
【0132】
SEQ ID 25、SEQ ID 26及びSEQ ID 27を有するCRPとSEQ ID 28を有する比較物ポリペプチドとを、標準的なFastMoc法を使用して合成し、逆相HPLCにより精製し、特徴付けを行った。
【0133】
ペプチド合成
SEQ ID 25、SEQ ID 26及びSEQ ID 27を有するCRPと、SEQ ID 28を有する比較物ポリペプチドとを、FastMoc法(0.1mmol目盛り)及びFmoc−Phe−Wang樹脂(0.74mmol/g、100〜200メッシュ)又はFmoc−Gly−Wang樹脂(0.66mmol/g、100〜200メッシュ)を使用して、ABI 431合成機で合成した。TFA/トリイソプロピルシラン/水(95:2.5:2.5)を2時間使用して、CRP及びポリペプチドを樹脂から切断した。RP−HPLC(Zorbax 300 SB−C18、21.2×150mm、60℃にて)により、5〜95% B(A:0.05% TFA/水、B:0.05% TFA/MeCN)の直線勾配を用いて、流速20mL/分で15分間かけて精製を行った。LC/MSにより、Finnigan LCQ検出器と連結したAgilent 1100上で、60℃にてZorbax 300 SB−C18カラム(3.5μm 4.6×150mm)及び5〜95% B(A:0.02%ギ酸/水、B:0.02%ギ酸(formic)/MeCN)の直線勾配を用いて流速1mL/分で20分間かけて画分を分析した。
【0134】
表1に示すように、純粋な(>90%)材料を含む画分を組み合わせ、凍結乾燥してペプチドを白色粉末として得た。215nmでの吸収を測定し、参照ペプチドSEQ ID 34:(Pro−Hyp−Gly)10(売主:Peptides International)に関して決定された消散係数(ε=6.5×10−1cm−1)を使用することにより、ペプチド含有率を決定した。計算及び実測MS値は、MALDI−TOF−MS(M+Na)を使用して決定した。
【表2】

【0135】
CRP分析
CD分光法:SEQ ID 25、SEQ ID 26及びSEQ ID 27を有するCRP並びにSEQ ID 28を有する比較物ポリペプチドの溶液(水中、0.25mM及び0.013mM)を4℃で24時間保管し、三重らせん形成に関して監視した。Jasco J−710器具にて光路長0.1cmのセルを使用して、走査速度100nm/分で平均10又は20回の走査の信号により、25℃にてCDスペクトルを測定した。Peltier温度制御システムを装備したAviv 215分光計で、CD融解曲線を得た。225nmでの楕円率を、速度1℃/分にて、3℃の増分で、5分間の平衡時間及び0.1−cmの光路長を用いて20〜100℃にて監視した。
【0136】
3つのCRP(水中0.25mM)の25℃でのCDスペクトルは、コラーゲン三重らせんに特徴的な225nm(θmax)バンドを示した。SEQ ID 25、SEQ ID 26及びSEQ ID 27を有するCRPにより形成された三重らせんの熱的安定性はまた、225nmでの楕円率を、3℃の増分及び5分間の平衡化時間で20〜100℃にて監視することにより、比較的に試験した。3つのCRPの融解温度は非常に類似しており(56〜59℃の範囲内)、それらのN−末端の構造的相違とは独立して、全て安定な三量体を形成したことを示した。
【0137】
(実施例3)
SEQ ID 31:FPhe−(Gly−Pro−Hyp)9−Phe
SEQ ID 32:Phe−(Gly−Pro−Hyp)9−Phe
SEQ ID 33:Leu−(Gly−Pro−Hyp)9−Phe
【0138】
以下により完全に記載するように、本発明のCRP三量体のモデル構造は、SEQ ID 30:(Pro−Hyp−Gly)−(Pro−Hyp−Ala)−(Pro−Hyp−Gly)を有するコラーゲン様ポリペプチド三量体のX線構造から構成された(Bella J、Eaton M、Brodsky B及びBerman HM、Science 1994,266,75〜81)。SEQ ID 30を有するコラーゲン様ポリペプチド三量体は、N−末端(Pro−位置)にFPhe、C−末端(Gly−位置)にPheを組み込んでSEQ ID 31(SEQ ID 25と類似するが、1つのGPO反復が欠如)を有するCRPを提供するよう変異された。SEQ ID 32及びSEQ ID 33を有するポリペプチドは、それぞれPhe及びLeuを使用して同様に調製された。
【0139】
計算化学
SEQ ID 30を有するコラーゲン様ポリペプチドの結晶構造を、モデリングのための出発点として使用した。この構造は中心アラニン残基を含んでいたため、この残基を最初にグリシンに変異させた。次に、式(I)のCRPのB及びX単位のそれぞれの1つを、SEQ ID 30を有する三重らせんの各鎖のN−末端及びC−末端に加えた。C−末端上では、SEQ ID 30のGly残基をPheで置き換えた(SEQ ID 31、SEQ ID 32及びSEQ ID 33に関して)。N−末端上では、Pro−Hyp部分を単一のFPhe(SEQ ID 31)、Phe(SEQ ID 32)及びLeu(SEQ ID 33)で置き換えた。
【0140】
配列の性質に起因して、SEQ ID 31、SEQ ID 32及びSEQ ID 33を有するCRPのそれぞれは、(SEQ ID 25、SEQ ID 26及びSEQ ID 27と比較して)GPOモチーフの反復を1つ少なく含んでいたが、SEQ ID 25、SEQ ID 26及びSEQ ID 27の分子モデリングに好適であった。Macromodel 9.0(MacroModel 9.0,2005,Schrodinger,Inc.,1500 SW First Ave.,Suite 1180,Portland,OR 97201)を用いて、拘束主鎖、OPLS−AA力場(Jorgensen WL及びTirado−Rives J、J.Am.Chem.Soc.1988,110,1657〜1666)、GB/SA水(Qui D、Shenkin PS、Hollinger FP及びStill CW、J.Phys.Chem.A.,1997,101,3005〜3014)を使用して各CRP三量体を最小化して、修飾により生じる任意のひずみを弛緩させた。次に、三量体単位のうち2つを三量体中心軸に沿って整合することにより、各CRP三量体を同一配列のCRP三量体と組み合わせた。この工程では、疎水性認識単位の大まかな整合を提供するよう注意を払った。
【0141】
SEQ ID 31、SEQ ID 32又はSEQ ID 33を有する、整合されたCRP三量体の対のそれぞれの自己集合及び原線維増殖をXED力場を使用して評価し、整合された三量体の各対を<0.01rmsに最小化した(制約がない共役勾配、Hunter CA、Sanders JKM、J.Am.Chem.Soc.,1990,112,5525〜5534;Vinter JG、J.Comp.−Aid.Mol.Design,1994,8,653〜668;Vinter JG、J.Comp.−Aid.Mol.Design,1996,10,417〜426;及び、Chessari G、Hunter CA、Low CMR、Packer MJ、Vinter JG及びZonta C、Chem.Eur.J.,2002,8,2860〜2867)。全てのカルボキシレート及びアンモニウムイオンは、一部の溶媒効果の原因となる、完全帯電の1/8で帯電されていた。最小化の後、2つの三重らせん単位間の相互作用エネルギー(IE)を計算すると、クーロン成分及びファンデルワールス成分の両方からなっていた。このエネルギーは、各三重らせん単位間の全ての分子間項を含んでいた。分子内項、及び同一の三重らせん束内の鎖間のエネルギーは、含まれなかった。認識要素のいくつかの組み合わせに関する結果を、表2に纏める。
【0142】
SEQ ID 31を有する整合されたCRP三量体の対に関してモデリングされた界面エネルギーを(表2、エントリー1)に示す。面−面配向を採用した3つの芳香族環対及び1つの水素結合が、界面で観察された。芳香族を縁−面配置に再配向させた後、再最小化することにより、構造を試験した(表2、エントリー2)。得られた界面構造は、同様の界面エネルギーを有する面−面相互作用に戻った。SEQ ID 32を有するCRP三量体の対の界面は、縁−面(表2、エントリー3)相互作用か、又は変位し角度付けされた面−面相互作用を示した。SEQ ID 33を有するCRP三量体の対の全界面エネルギーは、より低かった(表2、エントリー4)。
【表3】

SEQ ID 31のPhe−ペンタフルオロフェニルアラニン(面−面配向で開始)モデル、
SEQ ID 31のPhe−ペンタフルオロフェニルアラニン(T形配向で開始)モデル、最小化して面−面配向に戻る、
縁−面配向に向かって最小化する。
【0143】
表2に示すように、SEQ ID 31、SEQ ID 32及びSEQ ID 33を有するポリペプチドは、様々な程度に末端部−末端部を集合させる構造的条件を有する。これと類似して、SEQ ID 25、SEQ ID 26及びSEQ ID 27を有するポリペプチドも同様に、末端部−末端部を集合させる構造的条件を有するであろう。
【0144】
(実施例4)
血小板凝集試験
SEQ ID 25を有するCRPの、コラーゲンの生物学的機能を模倣する能力をヒト血小板凝集アッセイにて評価した。Biological Specialties,Inc.(Colmar,PA)から、健康な志願者からのヒト血小板豊富血漿(PRP)濃縮物を購入した。24時間経過したPRPは、コラーゲン、及びSEQ ID 25を有するCRPに対して相当弱力化した反応を与えるため、PRPは5時間を経過していなかった。PRPを730gで15分間遠心分離機にかけた。得られた血小板ペレットを、1U/mLアピラーゼ(等級V、Sigma−Aldrich)を含有するCGS緩衝液(13mMクエン酸ナトリウム、30mMブドウ糖、120mM NaCl、pH6.5)中で2回洗浄し、Tyrodeの緩衝液(140mM NaCl、2.7mM KCl、12mM NaHCO、0.76mM NaHPO、5.5mMデキストロース、5.0mM Hepes、0.2% BSA、pH 7.4)中に再懸濁した。「洗浄した」血小板を3×10血小板/mLに希釈し、使用前に>37℃で45分間超保った。
【0145】
アッセイのために、105μLの洗浄した血小板、2mM CaCl及び2.5mMのフィブリノゲンを96−ウェルマイクロタイタープレートに加えた。一連の濃度の天然コラーゲン原線維(ウマ型I、ヒトコラーゲン配列に対して92%同一性、Chrono−log Corp.,Havertown,PA)又は試験ペプチドを加えることにより血小板凝集を開始させた。緩衝液を1組の対照ウェルに加えた。アッセイプレートを絶えず撹拌し、断続的にマイクロプレートリーダー(Softmax,Molecular Devices,Menlo Park,CA)内に設置して、化合物溶液の添加から0分後及び5分後に光学密度(650nm)を読み取った。0分及び5分の時間の測定値の間の光学密度の低下として凝集を計算し、凝集パーセントとして表した。
【0146】
血小板凝集試験におけるペプチド製剤の条件を、表3に示す。ペプチドをPBS(pH7)又は水(最終pH 5)に溶解して、濃度2mg/mLとした。いくつかの試料は水浴(70℃)内で10分間加熱し、0.45μmフィルターで濾過し、4℃で24時間又は7日間インキュベートした。濾過の前及び後の215nmでのUV測定値は、ペプチドの損失がないことを示した。PBS(pH 7)又は水中のSEQ ID 25を有するCRPのいくつかの試験溶液は、24時間又は7日間(4℃)インキュベートし、他の試料は変性させ(H+F)、4℃で再アニールした。
【表4】

H+Fは、70℃での10分間加熱、及び0.45μmフィルターを介した濾過を表す。
【0147】
SEQ ID 25を有するCRPの異なる溶液は、血小板凝集を誘導したが、インキュベーションはより短く、「H+F」試料は効力の低下を示した。SEQ ID 25を有するCRP(未処理、PBS中で7日間熟成、EC50=0.37μg/mL)はウマ型Iコラーゲン(EC50=0.25μg/mL)とほぼ等効力であった一方、SEQ ID 34(Pro−Hyp−Gly)10を有する30−mer参照ポリペプチドは、血小板を凝集させなかった。SEQ ID 34(Pro−Hyp−Gly)10のペプチドは、Peptides International,Inc.から購入した。
【0148】
これらの結果は、SEQ ID 25を有するCRP三量体が、ある時間にわたり自己集合して適切な長さ及び配座に凝集して、(おそらく血小板コラーゲン受容体での)血小板認識に関する構造的条件を満たすことができることを示す。加えて、SEQ ID 25を有する短い(8−nm)CRPが、非共有結合的手段によりCRP三量体に、及びその後コラーゲン−模倣特性を有するコラーゲン様原線維に自己集合することが観察された。特に、CD、DLS及びTEMデータにより決定されるように、マイクロメートル長の三重らせん含有複合体原線維が形成された。また、SEQ ID 25を有するCRP三量体は、コラーゲンと類似した血小板凝集を誘導する能力を有する機能性タンパク質様材料として作用した。式(I)のCRPの芳香族−芳香族及び疎水性−疎水性認識モチーフは、コラーゲン模倣ペプチドの自己集合に対する直接的なアプローチを提供し、生物学的に機能的な原線維構造に集合可能なCRP三量体を提供する。
【0149】
(実施例5)
コラーゲン又はSEQ ID 25を有するCRP三量体により誘導された血小板凝集の阻害は、インテグリンGPIIb/IIIa拮抗薬エラロフィバンを使用して得られた(Hoekstra WJら、J.Med.Chem.1999,42,5254〜5265)。SEQ ID 25を有するCRP三量体及びコラーゲンにより誘導された血小板凝集は、エラロフィバン、GPIIb/IIIa阻害剤により阻害された。
【0150】
SEQ ID 25を有するCRP三量体及びコラーゲンを加える前に、洗浄した血小板を様々なエラロフィバン用量(10、100及び1000nM)で5分間インキュベートした。血小板凝集の用量依存性阻害が観察された。これらのデータは、コラーゲン並びにSEQ ID 25を有するCRP三量体が、GPIIb/IIIaシグナル伝達を引き起こすことにより血小板凝集を活性化することを示唆する。
【0151】
(実施例6)
コラーゲン又はSEQ ID 25、SEQ ID 26、SEQ ID 27、SEQ ID 28及びSEQ ID 34を有するCRP三量体により誘導される血小板凝集は、実施例4に記載される方法により行った。本発明の実施形態によれば、図1は、SEQ ID 25、SEQ ID 26及びSEQ ID 27を有するCRP三量体が血小板凝集を様々な程度に刺激し、SEQ ID 25を有するCRP三量体及びSEQ ID 26を有するCRP三量体がより強力であることを示す。SEQ ID 28、SEQ ID 34及びSEQ ID 35を有する参照ポリペプチドは、血小板凝集の刺激において有効ではなかった。コラーゲン並びにSEQ ID 25、SEQ ID 26及びSEQ ID 27を有するCRP三量体に関して得られた図1のEC50値(±SEM)(μg/mL)を、表4に示す。
【表5】

【0152】
(実施例7)
脾臓損傷モデルにおけるCRP被覆及びPBS対照被覆PCL/PGA発泡体
工程A.CRP縣濁液
0.33mg CRP/PBS 1mLの濃度を有する試験縣濁液を、SEQ ID 25を有するCRPをpH 7.4のリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)に溶解することにより調製した後、縣濁液を4℃で7日間インキュベートした。
【0153】
工程B.PCL/PGA基材発泡体の調製
35/65(mol/mol)PCL/PGAの1,4−ジオキサン中の3重量パーセント溶液50グラムを、11.4cm×11.4cm(4.5”×4.5”)のアルミニウム鋳型内で、凍結乾燥装置(FTS Systems,Model TD3B2T5100)内にて約5〜約−5℃の温度条件下で約3時間凍結乾燥することにより、厚さ3mmのポリ(ε−カプロラクトン−コ−グリコリド)(「PCL/PGA発泡体」)を調製した。得られたPCL/PGA発泡体を鋳型から取り出した後、数個の5.1cm×5.1cm(2”×2”)の四角形に切った。
【0154】
工程C.ポリペプチド被覆発泡体の調製
上記の工程Bに示した手順に従って調製したPCL/PGA発泡体の四角形を、5.1cm×5.1cm(2”×2”)のアルミニウム鋳型内に設置した。上記の工程Aに示した手順に従って調製したCRP縣濁液を均質に見えるまで混合した後、7mLの縣濁液を鋳型内に注いで発泡体の上面を実質的に覆った。次に、鋳型を凍結乾燥装置(FTS Systems,Model TD3B2T5100)内に設置し、−50℃に予備冷却し、−25℃で約44時間凍結乾燥した。
【0155】
工程D.PBS被覆対照発泡体の調製
上記の工程Bに示した手順に従って調製した厚さ3mmのPCL/PGA発泡体を含む5.1cm×5.1cm(2”×2”)鋳型に7mLのPBSを加えて、発泡体の上面を実質的に覆うことにより、PBS被覆発泡体を調製した。鋳型を凍結乾燥装置(FTS Systems,Model TD3B2T5100)内に設置し、−50℃に予備冷却し、−25℃で約44時間凍結乾燥した。
【0156】
次に、CRP被覆発泡体及びPBS被覆対照発泡体を、続く試験のために数個の2cm×3cmの切片に切った。
【0157】
脾臓損傷モデル
2つの線状裂傷(それぞれ長さ1cm、深さ0.3cmであった)を豚の脾臓上に形成した。創傷から約3〜5秒間出血させた後、工程Cに示したように作製したCRP被覆発泡体片を1つの創傷の表面に手で適用し(試験グループ1)、工程Dに従って調製したPBS被覆対照発泡体片を他の創傷の表面に手で適用した(試験グループ2)。次に、試験部位のそれぞれに同様の下方圧力を30秒間適用した。被覆発泡体片を除去した後、各創傷のそれぞれを視覚的に評価して、止血が達成されたか否かを決定した。必要であれば、同様のタイプの清潔な被覆発泡体片を用いて、各創傷にそれぞれ30秒の間隔で圧力を再び適用した。各創傷に関する止血達成、出血停止の時間を以下の表5に示す。
【表6】

【0158】
結果は、CRP被覆発泡体が、対照発泡体より短い時間で、止血を達成するのに有用であったことを示す。
【0159】
(実施例8)
35/65 PCL/PGA発泡体の調製
厚さおよそ3mmのポリ(ε−カプロラクトン−コ−グリコリド)(PCL/PGA)発泡体を調製した。21グラムのポリマーを70℃で4時間磁気撹拌して679グラムの1,4−ジオキサンに溶解することにより、35/65(mol/mol)PCL/PGAの1,4−ジオキサン中の3重量パーセント溶液を調製した。鋳型内に注ぐ前に、ガラス−フリット漏斗を使用して溶液を濾過した。次に、35/65(mol/mol)PCL/PGAの1,4−ジオキサン中の3重量パーセント溶液60mLを11.4cm×11.4cm(4.5”×4.5”)のアルミニウム鋳型内で凍結乾燥することにより、発泡体を調製した。鋳型を凍結乾燥機(FTS Systems,Model TD3B2T5100,Stone Ridge,NY)内に設置し、−41℃に予備冷却した後、約5〜−5℃の温度条件下で約23時間凍結乾燥した。次に、得られたPCL/PGA発泡体を同一の鋳型内にて室温で60mLの水で浸し、その後、凍結乾燥機(FTS Systems,Model TD3B2T5100,Stone Ridge,NY)内に設置し、−50℃に予備冷却し、−25℃で約44時間凍結乾燥した。
【0160】
(実施例9)
ブタ肝臓切除出血モデルにおける35/65 PCL/PGAの止血活性
ブタ肝臓切除出血モデルを使用して、35/65 PCL/PGA発泡体の止血活性を試験した。豚にテラゾール(telazol)(5mg/kg IM)、キシラジン(5mg/kg IM)及びグリコピロレート(0.011mg/kg、IM)を筋内注射した。この動物が十分なレベルの麻酔に到達した際、耳周辺静脈(marginal ear vein)内に静脈内カテーテルを設置した。気管内チューブを挿入し、獣医用の麻酔機械に取り付けた。準備の残部及び外科手技のための麻酔はイソフルランの半閉鎖回路吸入により維持され、酸素流速は1〜2リットル/分であった。補助換気は、8〜12呼吸/分、及びおよそ10mL/体重1kgの一回換気量に設定した機械的人工呼吸器により達成した。安定した麻酔水準(plane of anesthesia)は、以下の生理学的標的を実現するよう調整された換気及び麻酔薬パラメータにより維持された:中核体温37.0〜39.0℃及びPCO38〜5.60kPa(42mmHg)。麻酔の深度は、顎の緊張及び足指抓み反射の評価により確認した。麻酔した動物の両目に眼科用軟膏を適用した。ドブタミン(10〜12.5μg/kg/分)を投与して心拍出量を支持することによりMAP(8.00kPa(60mmHg))を維持した。
【0161】
剣状突起から恥骨結合のすぐ頭部の地点まで、腹側正中線切開部を形成した。日常的なクランピング及び電気焼灼を用いて皮膚出血を調節した。正中線を介して腹腔に入り、腹部器官の過去及び現在の疾病プロセス又は他の異常の証拠について検査した。小腸をタオルで纏め、引っ込めた。
【0162】
肝臓を確認し、生理食塩水で浸されたガーゼ及び/又は開腹術スポンジで保湿した。外科用メス刃、外科用器具、及び焼灼を用いて、標的器官に応じておよそ1〜10cmの周辺部切除を行った。実施例8で調製したPCL/PGA発泡体を適用し、止血に関して評価した。対照として、折ったガーゼ4×4、8プライ(HENRY SCHEIN Inc.,Melville,NY 11747,USA)及び市販の酸化再生セルロース止血剤を使用した。試験物品を適用後に該物品が出血を停止するのに要した時間の長さにより、止血活性を測定した。試験物品は、出血部位に重なるのに十分な大きさを有していた。6つのPCL/PGA発泡体試料、3つの酸化再生セルロース止血剤、及び1つのガーゼ試料を試験した。PCL/PGA発泡体が止血を達成する平均時間は、45秒であった。出血を完全に停止するのに、ガーゼは10分超、酸化再生セルロース止血剤は4.5分を要した。これらの結果は、PCL/PGA発泡体が止血を達成するのに有用であることを示す。
【0163】
(実施例10)
ブタ腎臓出血モデルにおける35/65 PCL/PGAの止血効果
実施例9に記載するものと同一の豚を使用して、部分切除術後の止血活性を試験した。腎臓を鈍的切開により後腹膜腔から解放した。この手技は腎血管の閉塞なしに行った。半腎摘出術を行い、新たに形成した創傷部位に試験物品を適用した後、ガーゼ及び閉塞する指圧を適用した。実施例8で調製したPCL/PGA発泡体を適用し、止血に関して評価した。市販の酸化再生セルロース止血剤を対照として使用した。2つのPCL/PGA発泡体試料及び2つの酸化再生セルロース止血剤を試験した。PCL/PGA発泡体が止血を達成する平均時間は、1分であった。対照試料が止血を達成して出血を完全に停止する平均時間は、4.2分であった。これらの結果は、PCL/PGA発泡体が止血を達成するのに有用であることを示す。
【0164】
本発明の新規な発泡体止血基材、製造方法、及び止血を刺激する方法が、前述の実施例及び詳細な説明に記載されている。
【0165】
前述の明細書は、例示を目的として提供される実施例と共に、本発明の原理を教示するが、本発明の実践は、以下の「特許請求の範囲」及びそれらの等価物の範囲内に含まれるすべての通常の変形、改作及び/又は修正を包含することが理解されるであろう。同様に、上記の明細書中に開示されている全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、それらの全体が参照により全目的のために本明細書に組み込まれる。
【0166】
〔実施の態様〕
(1) 止血発泡体基材の作製方法であって、
35/65(mol/mol)のPCL/PGAの1,4−ジオキサン中の3重量%溶液を調製する工程と、
前記溶液を鋳型内に注ぐ工程と、
前記溶液を前記鋳型内で凍結乾燥する工程と、
前記鋳型内の前記発泡体に水性溶液を加える工程と、
前記発泡体を前記水性溶液中に室温で十分に有効な時間浸す工程と、
前記水性溶液中の前記発泡体を凍結乾燥する工程と、
を含む、方法。
(2) 実施態様1に記載の方法により調製された、止血発泡体基材。
(3) 哺乳動物における止血を向上させる方法であって、前記哺乳動物の出血部位に、実施態様1に記載の発泡体基材を適用することを含む、方法。
(4) 35/65(mol/mol)のPCL/PGAを含む、実施態様2に記載の止血発泡体基材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
止血発泡体基材の作製方法であって、
35/65(mol/mol)のPCL/PGAの1,4−ジオキサン中の3重量%溶液を調製する工程と、
前記溶液を鋳型内に注ぐ工程と、
前記溶液を前記鋳型内で凍結乾燥する工程と、
前記鋳型内の前記発泡体に水性溶液を加える工程と、
前記発泡体を前記水性溶液中に室温で十分に有効な時間浸す工程と、
前記水性溶液中の前記発泡体を凍結乾燥する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法により調製された、止血発泡体基材。
【請求項3】
35/65(mol/mol)のPCL/PGAを含む、請求項2に記載の止血発泡体基材。

【図1】
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【公表番号】特表2012−516219(P2012−516219A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548325(P2011−548325)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/022517
【国際公開番号】WO2010/088469
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(591286579)エシコン・インコーポレイテッド (170)
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
【Fターム(参考)】