説明

コリオリの力を利用した複合構造マイクロ流体CD(コンパクトディスク)におけるフロースイッチ

マイクロ流体を切り替える装置が、回転中心軸を有する平らなサブストレートと、この平らなサブストレートに設けられ分岐点まで半径方向に延在するマイクロチャネルとを具える。ある態様では、分岐点が2層分岐点のように形成され、ここでは、上流部分が下流部分から垂直方向にオフセットしている。さらに、上流部分の断面積は、下流部分よりも実質的に小さい。第1および第2の出口チャンバの一方の端部が、分岐点に接続されている。この装置は、中心軸を中心に時計回りに回転して、容器内の流体を第1(右側)の出口チャンバに流し、または反時計回りに回転して容器内の流体を第2(左側)の出口チャンバに流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、一般に、液体を異なる流路またはチャネルにゲート制御または切り替えるのに利用されるマイクロ流体装置および方法に関する。特に、本発明の液体は、マイクロ流体コンパクトディスク(CD)などのマイクロ流体装置に設けられた共通の入口と2つの出力チャネルとを具えるマイクロ液体構造により、液体の流れる方向を切り替える方法および装置に関する。
【0002】
関連出願のリファレンス
本出願は、2005年3月2日に出願された米国暫定特許出願第60/657,760の優先権を主張する。米国暫定特許出願第60/657,760は、その全体を説明するように参照して、ここに組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体装置は、研究および商業的な応用の双方にとって、益々重要になってきている。例えば、マイクロ流体装置は、少量の試薬を混合および反応させることでき、これにより、試薬の費用を最小限に抑える。また、このようなマイクロ流体装置は、比較的サイズが小さくまたは「フットプリント」であり、これにより実験室のスペースを節約する。例えば、マイクロ流体装置は、臨床的な応用に益々利用されるようになっている。最後に、マイクロ流体装置は小規模であるため、研究および/または商業的な応用で後に利用される製品を迅速および費用効率よく統合できる。
【0004】
多くのマイクロ流体装置は、ある流路から別の流路に液体をバルブ制御または切り替える必要性がある。通常、マイクロ流体システムにおける液体のバルブ制御またはゲート制御は、内部の駆動構成要素(例えば、圧電性、空気式、または磁力アシスト機構)を利用して開発されている。しかしながら、このような切り替え方式は、装置を製造する追加的な組み立てステップを必要とし、これにより費用がさらに高くなり、統合がより複雑になる。したがって、ある流路から別の流路に流体の流れをバルブ制御または切り替える、信頼性のある方法および装置の必要性がある。切り替え方法は、有利になるようにマイクロ流体装置に組み込んでもよい。同様に、最小限の組み立てステップで製造できるマイクロ流体スイッチの必要性がある。さらに、スイッチは、スイッチの複雑さが増す可能性のある僅かなあるいは少しの移動構成部材を具えることが好適である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様では、マイクロ流体装置内の流体の流れを切り替える方法が、サブストレート内に配置された半径方向のマイクロチャネルを有する回転駆動型サブストレートを提供するステップを含む。この半径方向のマイクロチャネルは、第1の出口チャネルおよび第2の出口チャネルへ分岐する分岐点まで延在する。ある実施例では、このチャネルはサブストレート上で逆Y字のように形成される。流体が、例えば容器または他のマイクロチャネルにより、半径方向のマイクロチャネルを介して提供される。次いで、サブストレートが、中心軸を時計回りに回転されることにより、流体が第1の出口チャネルに流れ、中心軸を反時計周りに回転されることにより、流体が第2の出口チャネルに流れる。
【0006】
本発明のある態様では、回転駆動型サブストレートは、比較的低い角周波数、例えば約90ラジアン/秒またはこれ以上で回転される。回転駆動型サブストレートは、例えば回転可能な圧盤等により回転されるコンパクトディスク(CD)から形成してもよい。また、別の実施例では、様々なチャネルをチャンバまたは他のチャネルに接続させてもよい。例えば、半径方向のマイクロチャネルは、サンプルまたは容器チャンバへ分岐する分岐点の反対側の端部まで延在してもよい。同様に、第1および第2の出口チャネルはそれぞれ、第1および第2の出口チャンバまで延在してもよい。さらに、本発明の他の態様は、第1および第2の出口チャンバを直接分岐点に接続させてもよい。
【0007】
また、別の実施例では、分岐点を2層分岐点として形成してもよい。例えば、2層分岐点は、下流のマイクロチャネルまたは下流部分から垂直方向にオフセットされ、または高い位置に設けられた上流のマイクロチャネルまたは上流部分を具えてもよい。また、別の実施例では、上流のマイクロチャネルまたは部分の断面積は、下流のマイクロチャネルまたは部分の断面積よりも小さい。
【0008】
さらに、本発明の態様では、マイクロ流体スイッチは、回転中心軸を有する平らなサブストレートを具える。半径方向のマイクロチャネルが、この平らなサブストレートに配置され、当該マイクロチャネルの一方の端部が分岐点まで延在する。第1および第2の出口チャンバはそれぞれ、この分岐点に接続されており、切り替えられた流体を集める。第1および第2の出口チャンバは分岐点に直接接続されていてもよく、またはマイクロチャネル等を介して間接的に接続されていてもよい。平らなサブストレートは、回転可能な圧盤により回転されるCDを具えてもよい。モータまたはサーボ等を利用してこの圧盤を回転させ、CDを回転させてもよい。モータまたは他の駆動装置は、回転方向および回転速度(周波数)の変化を制御できることが好適である。
【0009】
本発明のある態様では、分岐点は、下流部分から垂直方向にオフセットまたは高い位置に設けられた上流部分を有する2層分岐点を形成する。ある実施例では、上流部分の断面積は下流部分の断面積よりも小さい。分岐点の2層特性は、(1)装置内の流体の接触面積を低減し、(2)コリオリの力を最大化し、これにより装置の所定の角周波数における流量を最大限にし、(3)2つの出口間のクロストークを軽減および削除するという利点がある。
【0010】
本発明の別の態様では、本装置は、特定の選択されたサブストレートの領域(例えば、出口チャンバ)を観察および/または分析可能な画像化システムを組み込んでもよい。例えば、画像化システムに操作可能に接続されたカメラは、特定の化学種または生物学的種の存在の有無を検出および計量できるようにしてもよい。この目的を達成するために、本装置を利用して溶剤を分類または分離できるようにしてもよい。一例として、本装置は、アフィニティ分離技術(例えば、溶離されるシリカマトリックスの核酸の吸着)で利用してもよい。このため、本装置は、特定の対象生体分子の抽出を要する迅速バイオアッセイおよび他の生物医学的な診断の応用に利用してもよい。
【0011】
したがって、本発明の目的は、コリオリの力を利用するマイクロ流体環境で液体を切り替えまたはゲート制御できる装置および方法を提供することである。また、本発明の目的は、流体の通路を2つの潜在的なブランチ通路のうちの一つに切り替えることができるバイナリスイッチを提供することである。さらに、本発明の目的は、残りの流体により発生する2つの下流ブランチまたはチャンバ間のクロストークまたは混入を軽減または削除するCDによるマイクロ流体スイッチを提供することである。さらなる特徴および利点は、以下の好適な図面および説明により明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、コンパクトディスク(CD)形状の回転駆動型サブストレート10を示している。図1の実施例では、サブストレート10は通常、円形であり、回転中心12を軸に回転する。サブストレート10は通常、マイクロ流体装置の形成に用いられる多くの材料から作ってもよい。さらに、以下により詳細に説明するように、サブストレート10は、サブストレートの形状の形成に利用される連続した個別の層を有する複合構造により形成してもよい。図1は、サブストレート10内に配置され、マイクロチャネルに収容された単位体積の流体16または液体を有する半径方向のマイクロチャネルの一部を示している。サブストレート10は矢印Aで示すように、回転中心を軸に反時計回りに角周波数ωで回転する。
【0013】
2つの主要な力が、半径方向のマイクロチャネル14に収容された単位体積の流体16に作用する。第1の力は遠心力(Fcen)であり、図1に示すように半径方向に外側へ流体16を押し動かす傾向がある。遠心力(Fcen)は、以下の公式により表わされ、ここでは、ρは流体の密度、ωは角周波数、rは単位体積の流体の半径距離を意味する。
【0014】
(1)Fcen=−ρ・ω×(ω×r)
【0015】
第2の力は、サブストレート10の半径方向に対して垂直または直角に流体16を押す傾向があるコリオリの力(Fcor)である。コリオリの力(Fcor)は以下の公式で表わされ、ここでは、vは単位体積当たりの速度である。
【0016】
(2)Fcor=−2・ρ・ω×v
【0017】
図2Aは、ここに説明する流体用スイッチ20を具える種類のサブストレート10を示している。本実施例によると、スイッチ20は、分岐点24で第1および第2の出口チャンバ26,28へ分岐している半径方向のマイクロチャネルにより、逆Y字のように形成されている。ある態様では、第1および第2の出口チャンバは、半径方向のマイクロチャネル22に対して左右対称に配置されている。半径方向のマイクロチャネル22は、流体16を保有または一時的に蓄える流体用容器30に接続されている。この流体用容器30は、通気口またはポート32を具えてもよい。もちろん、半径方向のマイクロチャネル22および/または流体用容器30は、他のマイクロチャネルまたはチャンバ(図示せず)に接続していてもよい。これは特に、サブストレート10が様々な形状で形成されている場合、例えば、サブストレート10が複雑な試料調整および分析に利用される場合に当てはまる。図2Aはまた、第1および第2の出口チャンバ26,28が出口用通気口34を具えていることを示している。また、この通気口34は流体16を取り出すのに利用してもよい。代替的に、チャンバ26,28は、サブストレート10に設けられた別の形状に流体を移動する1以上のマイクロチャネルに接続していてもよい。
【0018】
図2Bは、本発明の別の態様によるスイッチ20の拡大図である。スイッチ20は、回転中心12の近くに配置され、一方の端部が2層分岐点40で終了する半径方向のマイクロチャネル22を具えている。マイクロチャネル22のもう一方の端部は、流体用容器30に接続している。2層分岐点40は、第1および第2の出口チャネル50,52(図2Bに示す)または第1および第2の出口チャンバ26,28(例えば、図2Aに示す種類、4)と半径方向のマイクロチャネル22が接続することにより形成された平らでない分岐点である。本発明のある実施例では、半径方向のマイクロチャネル22は、出口チャネル50,52または代替的に第1および第2の出口チャンバ26,28に対して、垂直方向にオフセットされ、あるいは高い位置に設けられている。
【0019】
図3Aは、図2BのA−A’線に沿った半径方向のマイクロチャンバ22の断面図である。この断面図は、2層分岐点40近くの上流部分である。図3Bに示すB−B’線に沿った断面図は透視図である。図3Bは、2層分岐点40近くの下流にあるスイッチ20の領域の断面図である。図3Aおよび3Bに最もよく示すように、半径方向のマイクロチャネル22は、第1および第2の出口チャネル50,52から垂直方向にオフセットしている。この点において、半径方向のマイクロチャネル22の下側面54は、第1および第2の出口チャネル50,52の下側面56に対して高く、あるいは高い位置に設けられている。さらに、本発明のある実施例によると、半径方向のマイクロチャネル22の断面積は、2層分岐点40近くの下流部分の断面積(例えば、図3Bに示す面積)よりも小さい。
【0020】
スイッチ20の2層分岐点40は、平らな分岐点に優る利点を提供する。この利点には、(1)スイッチ20の分岐点の領域内の流体16の接触面積を減らして所望の出口チャンバまたは出口チャネルへの流体16の移動を促進すること、(2)コリオリの力を最大化して装置の所定の角周波数における流体16の流量率を最大にすること、(3)2つの出口チャネル50,52(または出口チャンバ26,28)間の流体16のクロストークまたは混入を軽減または削除することが含まれる。
【0021】
図4はスイッチ20の拡大図である。図4に示す実施例では、2層分岐点40は、下流側で第1および第2の出口チャンバ26,28に接続されている。この実施例では、2層分岐点40の下流側の端部に接続するマイクロチャネル自体が存在しない。図4はまた、2層分岐点40の拡大された走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示している。2層分岐点の断層になったあるいは垂直方向にオフセットした特性が明確に示されている。
【0022】
図5は、ここに記載したスイッチ20を具えるサブストレート10を形成する一の方法を示している。図5に示す方法は、成形したエラストマを利用してマイクロ流体スイッチ20の形状を形成する。しかしながら、マイクロ流体技術の当業者が知っている他の製造技術を利用して、回転可能なサブストレート10上に1以上のスイッチ20を形成してもよい。例えば、コンピュータ数値制御(CNC)マシンを利用して、装置を製造してもよい。代替的に、マイクロ流体の模様は、2枚の外側プラスチックディスクの間にラミネートされたドライフィルムレジストにより、写真のようにエッチングしてもよい。
【0023】
図5を参照すると、ステップ100では、シリコンウエハなどのサブストレート60が提供され、SU−8(マサチューセッツ州ニュートン所在のMicroChem社から入手可能なNANO SU−8)などのネガ型フォトレジスト(negative tone photoresist)62が、スピンコーティングによりサブストレート60の上側面に配置されている。次いで、(SU−8を具える)サブストレート60は、予備ベーク処理により溶剤を蒸発し、フィルムを圧縮する。例えば、厚さが100μmの場合、サブストレート60は約65℃で約10分間熱せられる。最初に塗布するフォトレジスト62の厚さは、通常160μmである。
【0024】
予備ベークの後、マスクが、サブストレート60と、フォトレジスト62の選択した部分を露光する紫外線光源(図示せず)との間に挿入される。SU−8を交差結合(cross-link)するのに利用可能な通常の波長は、約350nmから約400nmの範囲である。紫外線光は、最終的にスイッチ20の形状になるフォトレジスト62の特定の部分を交差結合するのに利用される。例えば、1回目の紫外線光の露光は、最終的に容器30および半径方向のマイクロチャネル22になる形状を形成するのに利用される。
【0025】
図5のステップ110を参照すると、1回目の紫外線光の露光の後にマスクが取り除かれ、フォトレジスト62の2番目の層がスピンコーティングによりサブストレート60に配置される。フォトレジスト62の2番目の層の厚さは約270μmでもよい。別の予備ベーク処理を実施して(通常約65℃で)再び溶剤を蒸発させ、数分間フィルムを圧縮する。次に、別のマスクが、サブストレート60と、フォトレジスト62の所定の領域を選択的に露光する紫外線光源との間に挿入される。2回目の紫外線の露光が、(例えば、430μmの厚さの)出口チャンバ26,28および/または出口チャネル50,52ならびに2層分岐点40を形成するのに利用される。次いで、サブストレート60は、露光後ベーク熱処理(post-exposure bake heating operation)され、サブストレートが約65℃から約95℃で数分間熱せられ、フォトレジスト62が固まる。
【0026】
次に、ステップ120に示すように、サブストレート60は現像液またはエッチング液(MicroChem社から入手可能)に浸され、フォトレジスト62の露光されていない部分を除去する。実際の現像時間はフォトレジスト62の厚さに依存する。厚さが150μmのフォトレジスト層62の場合、浸漬時間は約15分から20分である。他の利用可能な溶剤型の現像液には、乳酸エチルおよびジアセトンアルコールが含まれる。高アスペクト比構造の場合は、溶剤をかき混ぜる必要がある。
【0027】
ここでステップ130を参照すると、サブストレート60が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)プリカーサをサブストレート60の上面に維持するバリアとして機能する周辺リムを具える保持リング64に配置される。次いで、PDMSプリカーサと硬化剤(ミシガン州ミッドランド所在のDow Corning社のSylgard185)が、重量比10:1で完全に混ぜられる。真空状態で混合液のガスを抜いた後、混合液がSU−8のマスター型に注がれて硬化する。型を熱して硬化処理を加速してもよい。
【0028】
ステップ140に示すように、硬化処理の後、スイッチ20の形状を含むPDMS層66がマスター型から剥がされる。完全なサブストレート10を形成するために、両面粘着フィルムを使って2つのポリカーボネイトディスクの間にPDMS層66を挟んでもよい。
【0029】
図6は、こうして形成されたサブストレート10を回転するのに利用される装置を示している。この装置は、サブストレート10が設けられる土台または圧盤70を具える。圧盤70は、中心軸を時計回りまたは反時計回りに回転する。ある実施例では、圧盤70は、サブストレート10に形成された穴74を部分的または完全に貫通するスピンドル72を具える。圧盤70は、シャフト78を介して、圧盤70およびサブストレート10を駆動するのに利用されるモータまたはサーボ76に接続させてもよい。モータまたはサーボ76は両方向式であり、圧盤70が時計回りまたは反時計回りのいずれかに回転する。さらに、モータまたはサーボ76の速度は、角回転周波数を制御するために制御可能であることが好ましい。例えば、モータまたはサーボ76は、回転周波数(例えば、回転速度、順序、タイミング等)を制御可能なPC(図示せず)などのコンピュータに接続してもよい。
【0030】
図6を参照すると、画像化システム80が本システムに組み込まれている。画像化システム80は、例えば、流体16中の1以上の成分を照射する放射線源を具えてもよい。また、画像化システム80は、例えば、サブストレート10の1以上の領域(例えば、出口チャンバ26,28)を選択的に観察するのに利用できるカメラまたは電荷結合素子(CCD)等の画像化手段を具えてもよい。さらに、画像化システム80は、流体16中に含まれる特定の化学種(species)または成分を自動的に分析および検出するのに利用される画像分析ソフトウェアを具えてもよい。
【0031】
図7および8は、2つの出口チャネル50,52のうちの一方に流体16を選択的に送るのに利用するスイッチ20の画像である。図7では、スイッチ20を具えるサブストレート10が反時計回りに回転する。サブストレート10が反時計回りに回転することにより、流体16が容器30から2層分岐点40を介して第1の(図7では左側の)出口チャネル50に送られる。対照的に図8では、スイッチ20を具えるサブストレート10が時計回りに回転する。サブストレート10が反時計回りに回転することにより、流体16が容器30から2層分岐点40を介して第2の(図8では右側の)出口チャネル52に送られる。
【0032】
スイッチ20で使用される2層分岐点40の大きな利点の一つは、意図していないチャネルまたは出口チャンバへの流体16の流入を防ぐことである。図9は、時計回りに100ラジアン/秒で回転した一層または平らな分岐点を利用したスイッチ20の画像である。図9に示すように、分岐点から下流側の左側出口チャネルの一部に位置する液体プラグがある。1層分岐点は、高い周波数(例えば、310ラジアン/秒)でさえ好ましくない液体プラグを発生させることが確認された。しかしながら、この好ましくない作用は、2層分岐点40により取り除かれる。クロストークまたは混入を防ぐ2層分岐点40の能力は、混入の危険性なく特定の対象物質を分離する必要があるバイオアッセイで利用される、流れを切り替える応用例には不可欠である。
【0033】
2層分岐点40の別の利点は、低い角周波数で切替ができることである。例えば、本発明のある態様では、2層分岐点40を利用したスイッチ20は、比較的低い角周波数、例えば約90ラジアン/秒以上で流体16を切り替えることができる。
【0034】
ここに記載したマイクロ流体スイッチ20は、バイナリスイッチが利用されまたは有用である任意のマイクロ流体の応用例で利用できる。例えば、スイッチ20は、生物医学および臨床検査の応用例における生体分子のアフィニティ分離に利用できる。スイッチ20はまた、特定の対象生体分子を採取または分離する必要がある、迅速バイオアッセイおよび生物医学的診断の応用例に実装できる。
【0035】
本発明の実施例が図示および説明されているが、本発明の目的から逸脱しない範囲で様々な修正が可能である。したがって本発明は、請求項および請求項の内容と同等のもの以外によって限定すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明のマイクロ流体スイッチが配置された例示的なサブストレートを示している。図1は、半径方向のマイクロチャネル内に配置された単位体積の流体に働くコリオリ(Fcor)の力および遠心力(Fcen)を示している。
【図2】図2Aは、マイク流体スイッチを具える回転駆動型サブストレート(例えばCD)の平面図である。図2Bは、本発明のある実施例によるマイクロ流体スイッチの拡大図である。サブストレートの回転中心に対するスイッチの方向が示されている。
【図3】図3Aは、図2BのA−A’線に沿った断面図である。図3Bは、図2BのB−B’線に沿った断面図である。
【図4】図4は、2層分岐点を具えるマイクロ流体スイッチのある実施例を示している。図4はまた、2層分岐点の拡大された走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示している。
【図5】図5は、PDMS成型技術を用いて回転駆動型サブストレートを製造する処理フローチャートを示している。
【図6】図6は、スイッチを具えるサブストレートを回転させるシステムを示している。図6はまた、利用される光学画像システムを示している。
【図7】図7は、反時計回りに回転するスイッチを具えるCDの写真である。流体は、左側の出口チャンバに送られる。
【図8】図8は、時計回りに回転するスイッチを具えるCDの写真である。流体は、右側の出口チャンバに送られる。
【図9】図9は、平らな分岐点を有するスイッチの写真である。この写真は、左側のブランチチャネルに存在する所望されない液体プラグを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体装置内の流体の流れを切り替える方法であって、
第1の出口チャネルおよび第2の出口チャネルへ分岐する分岐点まで半径方向に延在するマイクロチャネルを具える回転駆動型サブストレートを提供するステップと、
前記半径方向のマイクロチャネルに流体を供給するステップと、
前記サブストレートを中心軸を軸に時計回りに回転させて前記流体を前記第1の出口チャネルに流すステップと、前記サブストレートを中心軸を軸に反時計回りに回転させて前記流体を前記第2の出口チャネルに流すステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記回転駆動型サブストレートが、約90ラジアン/秒以上の角周波数で回転されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記回転駆動型サブストレートが、コンパクトディスク(CD)を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記サブストレートが、回転可能な圧盤を介して回転駆動されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記半径方向のマイクロチャネルが、前記分岐点の上流でチャンバに接続されていることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記第1の出口チャネルが、第1の出口チャンバまで延在することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法において、前記第2の出口チャネルが、第2の出口チャンバまで延在することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6に記載の方法がさらに、前記第1の出口チャンバに収容されている流体を取り出すステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法がさらに、前記第2の出口チャンバに収容されている流体を取り出すステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記分岐点が、下流部分から垂直方向にオフセットした上流部分を具える2層分岐点を具えることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記上流部分が、前記下流部分の断面積よりも小さい断面積を有することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記半径方向のマイクロチャネルならびに第1および第2の出口チャネルが、逆Y字のように形成されることを特徴とする方法。
【請求項13】
マイクロ流体装置内の流体の流れを切り替える方法であって、
2つの収集用チャンバへ分岐する分岐点まで半径方向に延在する上流チャネルを具える回転駆動型サブストレートを提供するステップと、
前記サブストレートを中心軸を軸に時計回りに回転させて、前記流体を前記半径方向の上流チャネルを介して前記第1の出口チャネルに流すステップと、前記サブストレートを中心軸を軸に反時計回りに回転させて、前記流体を前記半径方向の上流チャネルを介して前記第2の出口チャネルに流すステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、前記回転駆動型サブストレートが、約90ラジアン/秒以上の角周波数で回転されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、前記回転駆動型サブストレートが、コンパクトディスク(CD)を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法において、前記サブストレートが、圧盤を介して回転駆動されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法において、前記分岐点が、下流部分から垂直方向にオフセットした上流部分を具える2層分岐点を具えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法において、前記上流部分が、前記下流部分の断面積よりも小さい断面積を有することを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項13に記載の方法において、前記半径方向のマイクロチャネルならびに第1および第2の出口チャネルが、逆Y字のように形成されることを特徴とする方法。
【請求項20】
回転中心軸を有する平らなサブストレートと、
前記サブストレートに設けられ、分岐点まで半径方向に延在するマイクロチャネルと、
一方の端部が前記分岐点に接続された第1の出口チャンバと、
一方の端部が前記分岐点に接続された第2の出口チャンバとを具えることを特徴とするマイクロ流体切り替え装置。
【請求項21】
請求項20に記載の装置において、前記平らなサブストレートが、コンパクトディスク(CD)を含むことを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項20に記載の装置において、前記第1および第2の出口チャンバが、個別のマイクロチャネルを介して前記分岐点に接続されていることを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項20に記載の装置において、前記分岐点が、下流部分から垂直方向にオフセットした上流部分を有する2層分岐点を具えることを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項23に記載の装置において、前記2層分岐点の上流部分が、前記下流部分の断面積よりも小さい断面積を有することを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項20に記載の装置がさらに、前記回転中心軸を軸に前記マイクロ流体切り替え装置を回転させる回転可能な圧盤を具えることを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項25に記載の装置がさらに、前記回転可能な圧盤を時計回りまたは反時計回りに回転させる手段を具えることを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項26に記載の装置において、前記手段がモータを具えることを特徴とする装置。
【請求項28】
請求項20に記載の装置において、前記第1および第2の出口チャンバが左右対称であることを特徴とする装置。
【請求項29】
請求項27に記載の装置において、前記マイクロ流体切り替え装置の回転周波数の切り替え閾値が、約90ラジアン/秒以上であることを特徴とする装置。
【請求項30】
請求項20に記載の装置がさらに、画像化システムを具えることを特徴とする装置。
【請求項31】
請求項20に記載の装置がさらに、前記半径方向のマイクロチャネルに接続されているサンプルチャンバを具えることを特徴とする装置。
【請求項32】
請求項23に記載の装置において、前記マイクロ流体切り替え装置は、前記第1および第2の出口チャンバ間の混入がほとんどない状態で、前記第1および第2の出口チャンバ間の流体を切り替えることができることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−531273(P2008−531273A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558140(P2007−558140)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/007119
【国際公開番号】WO2006/093978
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(507296779)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (10)
【Fターム(参考)】