説明

コルゲートクランプ

【課題】コルゲートチューブで外装されたワイヤハーネスの車体固定と車体アース接続の作業性を高め、部品点数も削減する。
【解決手段】コルゲートチューブ55の環状の凹凸部56と嵌合する凹凸部18、19を内周面に備える基部11および蓋部15と、基部11の外面から突出する車体係止用のブラケット部16を備えたコルゲートクランプ10を導電性樹脂で一体成形し、コルゲートチューブ55内を貫通するワイヤハーネス50よりアース線52を取り出し、該アース線52の絶縁被覆53を剥離して露出させた芯線54を基部11の凹凸部18の内面に接触させてコルゲートチューブ55の外面との間で固定し、ブラケット部16に車体パネル40から一体に突設した係止片41を挿入係止してブラケット部16と車体パネル40とを接触させることで、アース線52と車体パネル40とが導通される構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコルゲートクランプに関し、特に、コルゲートチューブに外装されて車両に配索されるワイヤハーネスに取り付けて該ワイヤハーネスを車体に固定するコルゲートクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に配索されるワイヤハーネスには、走行中の衝撃や干渉から保護するためにコルゲートチューブ等の外装材が取り付けられている。
また、車両に配索されるワイヤハーネスは車体に固定され、前記のようなコルゲートチューブで外装されたワイヤハーネスW/Hを車体に固定する場合は、該コルゲートチューブを樹脂成形品からなるコルゲートクランプを取り付け、該コルゲートクランプを介して車体に固定している。
【0003】
この種のコルゲートクランプを用いた車体固定構造からなる特開2004−166403号(特許文献1)では、図7に示すように、コルゲートチューブTの外周にコルゲートクランプ1を嵌合固定し、該コルゲートクランプ1に設けたタブ挿入口1aに車体側タブ2aを挿入係止してワイヤハーネスW/Hを車体2に固定している。
しかしながら、コルゲートチューブでワイヤハーネスを外装し、該コルゲートチューブをコルゲートクランプで車体に係止する場合、ワイヤハーネス中のアース線の接続は、図8に示すように、コルゲートチューブからアース線を引き出し、該アース線の端末にアース端子を接続し、車体パネルのボルト固定穴にボルトで締結固定している場合が多い。
【0004】
詳細には、ワイヤハーネスから引き出したアース線4の端末にアース端子5を圧着接続する一方、車体3の所定位置にボルト固定穴3aを設け、車体3の裏面にはボルト固定穴3aに沿ってナット6を固着している。前記アース端子5は、円環形状の電気接触部5aの丸穴5bをボルト固定穴3aに一致させ、丸穴5b、ボルト固定穴3aにボルト7を通してナット6にネジ締めして固定し、アース端子5を車体3に接触させてアース接続している。
【0005】
しかしながら、前記アース端子5を用いたアース接続は、車体3にボルト固定穴3aを穿設しておく必要があるうえ、アース線4の端末の芯線露出部にアース端子5を圧着する作業と、該アース端子5を車体3にボルト7とナット6で締め付け固定する作業とが必要であり、これらの作業に時間と手間がかかる点に問題がある。特に、一台の自動車にはアース接続箇所が平均して10〜50箇所あり、ボルト締め箇所は1000箇所近くあるため、作業効率を高めるためにボルト締め作業の削減が強く要望されている。
また、ワイヤハーネスW/Hの車体アース接続作業が前記車体固定作業とは別工程となる点でも作業効率が悪いうえ、車体アース接続にはアース端子5、ボルト7、ナット6を要し、車体固定にはコルゲートクランプ1を要するため、部品点数が多くなり、コスト高および重量増となる点でも問題がある。
なお、特開平7−104024号公報、特開2006−296050号公報、実開平6−61960号公報に本発明と関連する従来技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−166403号公報
【特許文献2】特開平7−104024号公報
【特許文献3】特開2006−296050号公報、
【特許文献4】実開平6−61960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、ワイヤハーネスをコルゲートチューブで外装し、該コルゲートチューブをコルゲートクランプを介して車体パネルに固定する場合に、前記ワイヤハーネス中のアース線をコルゲートクランプを車体パネルに固定する作業で同時に車体パネルにアース接続できるように、アース線の車体パネルへのボルト締め作業を無くすことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、コルゲートチューブで外装されたワイヤハーネスの電線群中に集束されているアース線を車体パネルにアース接続するコルゲートクランプであって、
導電性樹脂により一体成形しており、前記コルゲートチューブの環状の凹凸部と嵌合する凹凸部を内周面に備える基部および蓋部と、前記基部の外面から突出する係止用のブラケット部を備え、
前記コルゲートチューブ内を貫通する前記ワイヤハーネスより前記アース線を取り出し、該取り出されたアース線の絶縁被覆を剥離して露出させた芯線を前記基部の凹凸部の内面に接触させて前記コルゲートチューブの外面との間で固定しており、
前記ブラケット部に前記車体パネルから突設した係止片を挿入係止して、該ブラケット部と車体パネルとを接触させることで、前記アース線の芯線と車体パネルとが導通される構成としていることを特徴とするコルゲートクランプを提供している。
【0009】
前記構成のコルゲートクランプを用いると、アース線へのアース端子の圧着作業が不要となると共に、車両組み立てラインにおいてアース端子を車体パネルにボルト締め作業が不要となり、車体へのボルト固定箇所を減少することができる。また、前記コルゲートクランプは通常の車体固定機能のみでなく車体アース接続機能を備えているため、前記ブラケット部を車体パネルの前記係止片に挿し込むというワンタッチ作業によって、ワイヤハーネスを車体パネルに固定する作業と、アース線の芯線を車体パネルに導通させる作業とを同時に完了させることができる。
また、従来のアース接続に要したアース端子、ボルト、ナットが不要となり、部品点数を削減できるため、車両の低コスト化および軽量化の要請にも応えることができる。
【0010】
前記基部の一端側に、前記ワイヤハーネスより取り出した前記アース線を外部から貫通させて該基部の内部空間へ案内する貫通穴を設けた突出部を設け、該貫通穴に前記アース線を貫通させて先端側の絶縁被覆を剥離して芯線を露出させ、該露出させた芯線を前記基部の凹凸部の内面に添わせて配置していることが好ましい。
【0011】
このように前記コルゲートクランプに設けた突出部の貫通穴にアース線を貫通させることにより、アース線の先端側を前記基部の内面側へ向けた状態で該アース線の絶縁被覆箇所を貫通穴で安定保持することができるため、アース線の芯線とコルゲートクランプとの接触箇所に応力がかかることを防ぎ、アース線とコルゲートクランプとの導通状態を安定させることができる。
【0012】
前記コルゲートクランプの材料となる導電性樹脂として、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリポロール、ポリチオフェン等が挙げられ、該導電性樹脂を射出成型等により前記した形状に成形している。
【発明の効果】
【0013】
上述したように、本発明によれば、コルゲートクランプを導電性樹脂で成形しているため、該コルゲートクランプのブラケット部を車体の係止片に装着するというワンタッチ作業によって、ワイヤハーネスの車体アース接続と車体固定とを同時にできる。このように、アース線へのアース端子の接続作業やアース端子の車体パネルへのボルト締め作業を不要とでき、かつ、車体パネルへのボルト締め箇所を大幅に減少することができる。
また、従来のアース接続に要したアース端子、ボルト、ナットが不要となり部品点数を削減できるため、車両の低コスト化および軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図6に本発明の実施形態に係るコルゲートクランプ10を示す。
コルゲートクランプ10は、図4(C)に示すように、車両に配索されるワイヤハーネス50に外装される樹脂成形品からなるコルゲートチューブ55の外周面に取り付けられる。ワイヤハーネス50には、図4(A)にも示すように、他の電線群51と共にアース線52が集束されている。
コルゲートチューブ55は、環状の凹凸部56を軸線方向に連続し、剛性と屈曲性を備えている。該コルゲートチューブ55には全長にわたってスリット57が設けられ、該スリット57の所要箇所にアース線引き出し用の切欠穴58を形成している。
【0015】
前記コルゲートクランプ10は導電性樹脂で一体成形している。該コルゲートクランプ10は、図1に示すように、底壁12と両側壁13、14とを備えて、内部に前記ワイヤハーネス50の挿通空間を形成した短尺樋形状の基部11と、該基部11の上面開口を開閉自在に閉鎖する蓋部15と、車体係止用のブラケット部16とを備えている。
前記蓋部15は、前記基部11の一方の側壁13の上端縁に薄肉ヒンジ17を介して連結している。前記ブラケット部16は、基部11の他方の側壁14の外面に突設している。
【0016】
前記基部11のワイヤハーネス挿通方向の一方側の内面には、前記コルゲートチューブ55の凹凸部56と嵌合する凹凸部18を底壁12から両側壁13、14にかけて連続形成している。また、前記蓋部15のワイヤハーネス挿通方向の一方側の内面にも、コルゲートチューブ55の凹凸部56と嵌合する凹凸部19を形成している。
【0017】
前記基部11のワイヤハーネス挿通方向の他方側では、底壁12の下面側に突出部20を突設していると共に、該底壁12の内面の前記凹凸部18の近傍に、後述の内部開口部23を設けている。
前記突出部20はワイヤハーネス挿通方向に貫通する貫通穴21を備えている。詳しくは、図2に示すように、貫通穴21は一端側を前記基部11の外部に向けて開口し、この外部開口部22から底壁12の中央部に向けて延伸した後、上向きに屈曲して底壁12を貫通し基部11の内部空間へと通じる内部開口部23を他端側に設けている。
【0018】
前記蓋部15の開閉端側には、閉鎖状態において前記ブラケット部16内に挿入されるロック爪24を突設している。
【0019】
前記ブラケット部16は、前記基部11の側壁14と一体化した上下両端開口の四角枠体からなり、図3に示すように、ブラケット部16の上端開口は蓋部15の前記ロック爪24を受け入れるロック爪挿入口25とし、下端開口は車体パネル40に突設した係止片41を受け入れる係止片挿入口26としている。
【0020】
図1および図3に示すように、前記ブラケット部16内には、基部11の側壁14の外面上部より、前記蓋部15のロック爪24とロック係止する被ロック爪27を突設している。また、前記側壁14と対向するブラケット部16の外側壁28の中央には、上端から切り込まれた2本のスリット29に挟まれ下端で前記外側壁28と連続する可撓片30を設けている。該可撓片30の前記被ロック爪27よりも下方位置に、前記車体パネル40の係止片41に穿設された係止穴42に挿入係止する係止突起31をブラケット部16内に突設している。
【0021】
次に、前記構成のコルゲートクランプ10を用いた車体アース接続および車体固定の作業手順を説明する。
まず、ワイヤハーネス50の組み立てラインにおいて、図4(A)に示すように、ワイヤハーネス50に集束されているアース線52をコルゲートチューブ55のスリット57に設けた前記切欠穴58から外部へと引き出す。この引き出したアース線52の先端の絶縁被覆53は予め皮剥ぎして芯線54を露出させている。
【0022】
次に、図4(B)に示すように、アース線52の先端部をコルゲートクランプ10の前記貫通穴21に前記外部開口部22から挿入する。このとき、貫通穴21の前記内部開口部23から前記基部11の内面側に前記芯線54の露出部分が出ると共に、アース線52の絶縁被覆53の部分が貫通穴21内に深く入り込むまでアース線52を送り込んで貫通させ、芯線54をワイヤハーネス挿通方向に引き出して基部11の凹凸部18上に載置する。
【0023】
次に、図4(C)に示すように、ワイヤハーネス50に外装したコルゲートチューブ555をコルゲートクランプ10の基部11内に挿通し、該基部11の凹凸部18とコルゲートチューブ55の凹凸部56との間に前記芯線54を挟み込んだ状態で嵌合する。この状態で、蓋部15を基部11の上面に被せて蓋部15の凹凸部19をコルゲートチューブ55の凹凸部56と嵌合し、図6に示すように、蓋部15のロック爪24をブラケット部16のロック爪挿入口25内に挿入して、被ロック爪27にロック係止する。
これにより、図5に示すように、アース線の芯線54はコルゲートチューブ55の凹凸部56の外面に押し付けられることによってコルゲートクランプ10の凹凸部18の内面に沿って接触し、アース線52とコルゲートクランプ10とを導通させている。
【0024】
前記のように、ワイヤハーネス50にコルゲートチューブ55を外装し、該コルゲートチューブ55にコルゲートクランプ10を取り付けた状態で、車両組み立てラインにおいてワイヤハーネスを車体に沿って配索する。
【0025】
前記ワイヤハーネスの配索時に、図6に示すように、車体パネル40からL形状に一体に突設した係止片41に、前記コルゲートクランプ10をブラケット部16の係止片挿入口26から挿し込む。これにより、係止片41に設けた係止穴42にブラケット部16内の係止突起31を挿入係止して、ワイヤハーネス50は車体パネル40に固定され、同時に、導電性樹脂からなるコルゲートクランプ10と車体パネル40とが導通する。
【0026】
このように、導電性樹脂からなるコルゲートクランプ10がアース線52と車体パネル40の両方と直接的に導通接触し、該コルゲートクランプ10を介してアース線52と車体パネル40とを導通させることができる。従って、従来のアース端子圧着作業、ボルト締め作業を不要とでき、かつ、車体パネルに設けるボルト穴を減少してボルト締め作業を減少することができる。
【0027】
また、コルゲートクランプ10を車体パネル40の係止片41に挿し込むという単純なワンタッチ作業によって、ワイヤハーネス50の車体固定作業と車体アース接続の両方を完了させることができるため、工数をさらに削減でき、作業性を向上させることができる。
さらに、コルゲートクランプ10が通常の車体固定機能に加えて車体アース接続機能を有するため、従来要したアース端子、ボルト、ナットが不要となり、部品点数を削減でき、車両の低コスト化および軽量化も可能となる。
【0028】
また、前記アース線52の先端を前記貫通穴21に挿通する構成としているため、アース線52の芯線54を基部11の内面側へと案内した状態で絶縁被覆53部分を貫通穴21で保持することができ、コルゲートクランプ10とコルゲートチューブ55との間に挟まれて固定されている芯線54に強い応力が加わることを防ぎ、該芯線54とコルゲートクランプ10との導通状態を安定させることができる。
なお、コルゲートクランプには、前記アース線52をガイドするための前記貫通穴を有する突出部を設けずに、アース線52の露出した芯線をコルゲートクランプとコルゲートチューブの凹凸嵌合部の間に挿入して、コルゲートクランプに接触させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第一実施形態に係るコルゲートクランプを示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線要部断面図である。
【図3】図1のIII−III線要部断面図である。
【図4】(A)〜(C)は図1に示すコルゲートクランプをコルゲートチューブの外周に取り付ける作業手順を示す説明斜視図である。
【図5】図4(C)のV−V線断面図である。
【図6】ワイヤハーネスを車体パネルに固定した状態を示す要部断面図である。
【図7】従来例を示す図である。
【図8】従来のアース接続方法を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
10 コルゲートクランプ
11 基部
15 蓋部
16 ブラケット部
18 (基部の)凹凸部
19 (蓋部の)凹凸部
21 貫通穴
40 車体パネル
41 係止片
50 ワイヤハーネス
52 アース線
55 コルゲートチューブ
56 (コルゲートチューブの)凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コルゲートチューブで外装されたワイヤハーネスの電線群中に集束されているアース線を車体パネルにアース接続するコルゲートクランプであって、
導電性樹脂により一体成形しており、前記コルゲートチューブの環状の凹凸部と嵌合する凹凸部を内周面に備える基部および蓋部と、前記基部の外面から突出する係止用のブラケット部を備え、
前記コルゲートチューブ内を貫通する前記ワイヤハーネスより前記アース線を取り出し、該取り出されたアース線の絶縁被覆を剥離して露出させた芯線を前記基部の凹凸部の内面に接触させて前記コルゲートチューブの外面との間で固定しており、
前記ブラケット部に前記車体パネルから突設した係止片を挿入係止して、該ブラケット部と車体パネルとを接触させることで、前記アース線の芯線と車体パネルとが導通される構成としていることを特徴とするコルゲートクランプ。
【請求項2】
前記基部の一端側に、前記ワイヤハーネスより取り出した前記アース線を外部から貫通させて該基部の内部空間に案内する貫通穴を設けた突出部を設け、該貫通穴に前記アース線を貫通させて先端側の絶縁被覆を剥離して芯線を露出させ、該露出させた芯線を前記基部の凹凸部の内面に添わせて配置している請求項1に記載のコルゲートクランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−165216(P2009−165216A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339994(P2007−339994)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】