説明

コルゲートチューブおよびその製造方法

【課題】生産性を落とすことなく可撓部と剛性部とを備えたコルゲートチューブを得る。
【解決手段】押出機21からチューブ原料を単位時間当たり一定の供給量でコルゲートユニット22へ供給する。コルゲートユニット22において一定の速度でコルゲートチューブCTを成形する。コルゲートユニット22におけるコルゲートチューブ成形過程において、第1の蛇腹高さを有し可撓性を備える可撓部と、第2の蛇腹高さを有し剛性を備える剛性部を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を備えた可撓部と剛性を備えた剛性部とを備えるコルゲートチューブおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィラーパイプやワイヤハーネスの保護カバー等として樹脂製のコルゲートチューブが用いられている。これらのチューブは、機器等の配置に合わせ配管する必要がある。配管アレンジメントには、直線部と湾曲部が存在するため、チューブには可撓性が必要な部分と剛性が必要な部分が存在する。このようなことから、管路軌道に沿ったプロテクタをチューブに被せる構成(特許文献1)や、コルゲートチューブにストレート部を設け、成形速度を調整してストレート部と蛇腹部の肉厚を調整する構成(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−097054号公報
【特許文献2】特開2007−046772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、プロテクタでコルゲートチューブを覆う構成では、プロテクタが別途必要になるとともに、プロテクタ装着のため手間も増大する。また、コルゲートチューブの成形速度を調整して肉厚を調整する構成では、肉厚部で成形速度を遅くする必要があるため生産性に問題が発生する。
【0005】
本発明は、生産性を落とすことなく可撓部と剛性部とを備えたコルゲートチューブを得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコルゲートチューブは、連続する第1の蛇腹高さを有し可撓性を備える可撓部と、連続する第2の蛇腹高さを有し剛性を備える剛性部とを備え、第2の蛇腹高さが第1の蛇腹高さよりも低く、可撓部および剛性部の蛇腹の山の肉厚が実質的に等しいことを特徴としている。
【0007】
コルゲートチューブの取り付け効率を向上するには、剛性部の外径が可撓部の外径に等しいことが好ましい。例えば第2の蛇腹高さは、第1の蛇腹高さの80%以下である。また、第2の蛇腹高さは、第1の蛇腹高さの75%であることがより好ましい。
【0008】
本発明のコルゲートチューブ製造方法は、チューブ原料を単位時間当たり一定の供給量でコルゲートユニットに供給し、コルゲートユニットが一定の速度でコルゲートチューブを成形し、コルゲートユニットにおけるコルゲートチューブ成形過程において第1の蛇腹高さを有し可撓性を備える可撓部と、第2の蛇腹高さを有し剛性を備える剛性部とが形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生産性を落とすことなく可撓部と剛性部とを備えたコルゲートチューブを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態のコルゲートチューブの側断面図である。
【図2】本実施形態のコルゲートチューブを形成するためのコルゲート管製造装置の構成図である。
【図3】谷外径の大きさの違いによるキンク発生時の曲げ半径の変化と、谷外径の大きさの違いによる一定の曲げ半径における山内径部の軸応力の変化をシミュレートした結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態であるコルゲートチューブの中心軸に沿った断面図であり、図にはコルゲートチューブの一部が示される。
【0012】
本実施形態においてコルゲートチューブ10は、相対的に可撓性に富む可撓部11と、相対的に剛性に富む剛性部12とから構成される。図1では、コルゲートチューブ10の可撓部11と剛性部12の接続部周辺のみが示される。可撓部11および剛性部12は、ともにそれぞれ連続する蛇腹構造を有し、本実施形態では、両部位の山部の外径(山外径)Dは等しい。一方、可撓部11および剛性部12の谷部の外径(谷外径)φ1、φ2は、可撓部11の谷外径φ1の方が剛性部12の谷外径φ2よりも小さい(φ1<φ2)。可撓部11の湾曲に対し、剛性部12が十分な剛性を発揮するには、剛性部12の蛇腹高さh2=(D−φ2)/2は、可撓部11の蛇腹高さh1=(D−φ1)/2の80%以下であり、より好ましくは75%以下、また更に好ましくは75%である。また、高いキンク強度を維持するには、蛇腹高さh2をh1の10%以上、より好ましくは35%以上、更には60%以上とすることが好ましい。
【0013】
図2は、本実施形態のコルゲートチューブ10を製造するためのコルゲート管製造装置20の構成図である。
【0014】
コルゲート管製造装置20は、加熱して柔らかくなったチューブ原料を管状に成形して押出機21からコルゲートユニット22へと連続的に供給する。コルゲートユニット22では、周知のように蛇腹形状を形成する一対の金型が複数連続して無限軌道状に搬送される。本実施形態のコルゲートユニット22では、可撓部11の蛇腹形状を成形する金型Aと、剛性部12の蛇腹形状を成形する金型Bが所定の順序で配列される。
【0015】
押出機21から供給される管状のチューブ原料は、搬送される金型A、B内に送り込まれ、各金型に設けられたバキューム機構(図示せず)により、金型A、Bの内側面に密着される。これにより、可撓部11、剛性部12の蛇腹形状を備えたコルゲートチューブCTが賦形され、コルゲートユニット22の下流側から送出される。
【0016】
本実施形態において、押出機21からコルゲートユニット22へ供給されるチューブ原料の単位時間当たりの供給量は一定とされ、コルゲートユニット22における金型の搬送速度も一定に維持される。このとき可撓部11、剛性部12における蛇腹の山の肉厚は略同じ厚さとなる。
【0017】
図3は、谷外径の大きさの違いによるキンク発生時の曲げ半径の変化と、谷外径の大きさの違いによる一定の曲げ半径における山内径部の軸応力の変化をシミュレートした結果を示すグラフである。
【0018】
シミュレーションでは、蛇腹の山の肉厚(略0.3mm)、ピッチ(2.09mm)、山外径(7.8mm)を一定とし、谷外径(蛇腹高さ)を5.30mm(1.25mm)、5.53mm(1.135mm)、5.75mm(1.025mm)、6.19mm(0.805mm)としたときのキンク時曲げ半径(P1〜P4)をシミュレーションにより求めた。また、同谷外径を有するコルゲートチューブを13.9mmの半径で曲げたときの山内径部における軸方向応力(Q1〜Q4)を求めた。
【0019】
図3に示されるように、谷外径が大きくなるにしたがってキンク時曲げ半径は増大する。すなわち、蛇腹高さが小さくなるにしたがってキンク曲げ半径が増大する。一方、P1では、キンク時曲げ半径が7.0mmよりも小さく、山外径が7.8mmであることからP1の蛇腹高さでは、キンクは発生しないことが分かる。
【0020】
また、P4のキンク時曲げ半径は、13.9mmであり、各谷外径を有するコルゲートチューブをこの曲げ半径まで曲げたときの山内径部の軸方向応力(Q1〜Q4)は、谷外径が大きくなるほど大きくなる。すなわち、蛇腹高さが小さくなるほどコルゲートチューブの曲げ抵抗が大きくなることが分かる。
【0021】
以上のように本実施形態によれば、蛇腹高さを調整することでコルゲートチューブに可撓部と剛性部を形成することができる。このときチューブ原料の供給量および製造速度を一定に維持しながらも剛性部における山の外径部の肉厚を可撓部と略同じに厚さに維持できるので、剛性部のキンク強度を高めることができる。
【0022】
また、本実施形態では上記効果を利用して可撓部と剛性部の外径を等しくすることができるので、コルゲートチューブを固定するためのファスナに同じ大きさのものを利用することができる。これにより、コルゲートチューブの取付け効率が向上される。例えば、コルゲートチューブの外径を一定に維持しながら剛性部をストレート部として形成する場合には、チューブ原料の供給量を増大させるか製造速度を低減しなければ、ストレート部における肉厚が薄くなりキンク強度が低下してしまうが、本実施形態ではこのような問題が発生することがない。
【0023】
なお、コルゲートチューブの外径を一定とする必要がない場合には、剛性部の外径を可撓部よりも小さくするなど、その外径を異ならせることも可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 コルゲートチューブ
11 可撓部
12 剛性部
20 コルゲート管製造装置
21 押出機
22 コルゲートユニット
CT コルゲートチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する第1の蛇腹高さを有し、可撓性を備える可撓部と、
連続する第2の蛇腹高さを有し、剛性を備える剛性部とを備え、
前記第2の蛇腹高さが前記第1の蛇腹高さよりも低く、前記可撓部および前記剛性部の蛇腹の山の肉厚が実質的に等しい
ことを特徴とするコルゲートチューブ。
【請求項2】
前記剛性部の山外径が前記可撓部の山外径に等しいことを特徴とする請求項1に記載のコルゲートチューブ。
【請求項3】
前記第2の蛇腹高さが前記第1の蛇腹高さの80%以下であることを特徴とする請求項1に記載のコルゲートチューブ。
【請求項4】
前記第2の蛇腹高さが前記第1の蛇腹高さの75%であることを特徴とする請求項1に記載のコルゲートチューブ。
【請求項5】
チューブ原料を単位時間当たり一定の供給量でコルゲートユニットに供給し、
前記コルゲートユニットが一定の速度で前記コルゲートチューブを成形し、
前記コルゲートユニットにおけるコルゲートチューブ成形過程において第1の蛇腹高さを有し可撓性を備える可撓部と、第2の蛇腹高さを有し剛性を備える剛性部とが形成される
ことを特徴とするコルゲートチューブ製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−255511(P2012−255511A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129824(P2011−129824)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】