説明

コレステロールレベル低下リポソーム

細胞侵入が可能である脂質粒子を使用して細胞コレステロールレベルを低下させる方法を提供する。そのような脂質粒子は、細胞コレステロールレベル増加に起因する又は細胞コレステロールレベル増加を随伴する疾患又は状態を処置又は予防するために、及びその複製を細胞コレステロールに依存するウイルスに起因する又は関連づけられる疾患又は状態を処置又は予防するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2009年3月27日出願の米国特許仮出願第61/202,699号の優先権を主張するものであり、該仮出願は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、一般に、治療薬としてそれら自体有用である又は薬物送達に使用することができる、脂質粒子、例えばリポソーム、薬物送達方法、及び特に、リポソームなどの脂質粒子を利用する薬物送達方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
細胞コレステロールレベルを低下させる方法は、細胞侵入が可能である脂質粒子、例えばリポソーム又はミセル、を含む組成物をその必要がある被験体に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】a)メバロン酸経路及びイソプレノイド合成、並びにb)種々の細胞ターゲットに対する種々の治療薬の効果を示すものである。PP=ピロリン酸、FTI=ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、GGTI=ゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ阻害剤、IPP=イソペンチルピロリン酸。
【図2】選択された脂質:A)22:6 PE、B)22:6 PC、C)PI、D)PS、E)DOPE、F)CHEMS、を図示するものである。
【図3】抗アクチン抗体と抗HMGCS抗体の両方を使用する22:6 ERリポソーム処置、JC−1感染Huh7.5細胞(MOI=0.5)のウエスタンブロット分析の結果を提示するものである。
【図4】22:6 PE:22:6 PC:PI:PS処置、JC1感染Huh7.5細胞(MOI=0.5)からの遊離コレステロールと全コレステロールの両方についての定量結果を提示するものである。
【図5】22:6リポソームで処置したPHA刺激PBMCについての定量結果を提示するものである。
【図6】A)16日間の22:6 ERリポソームでのJC−1感染Huh7.5細胞(MOI=0.02)の処置に関するデータを提示するものであり、処置全体を通してのHuh7.5細胞におけるJC−1 HCVcc感染レベル。データは、2回の独立した実験から三重反復実験サンプルの平均を表す。 B)16日間の22:6 ERリポソームでのJC−1感染Huh7.5細胞(MOI=0.02)の処置に関するデータを提示するものであり、JC−1 HCVcc分泌。データは、2回の独立した実験から三重反復実験サンプルの平均を表す。 C)16日間の22:6 ERリポソームでのJC−1感染Huh7.5細胞(MOI=0.02)の処置に関するデータを提示するものであり、分泌されたJC−1 HCVcc粒子の感染力。データは、2回の独立した実験から三重反復実験サンプルの平均を表す。 D)16日間の22:6 ERリポソームでのJC−1感染Huh7.5細胞(MOI=0.02)の処置に関するデータを提示するものであり、細胞内の遊離コレステロールレベル。データは、2回の独立した実験から三重反復実験サンプルの平均を表す。 E)16日間の22:6 ERリポソームでのJC−1感染Huh7.5細胞(MOI=0.02)の処置に関するデータを提示するものであり、細胞内のエステル化コレステロール。データは、2回の独立した実験から三重反復実験サンプルの平均を表す。
【図7】外因性コレステロール(15μg/mL及び150μg/mLのコレステロールの最終濃度)で処置した、22:6 ERリポソーム処置、PEG化 22:6 ERリポソーム処置及び未処置JC−1 HCVccについての感染力データを提示するものである。
【図8】JC−1 HCVccでの感染(MOI−0.5)前、4日間、22.6 ERリポソームで処置した未感染Huh7.5細胞についての定量結果を提示するものである。
【図9】A)22:6 ERリポソームでの4日の処置中のHIV−1の3つの遺伝的に異なる初代分離株(LAI、93UG067、及び93RW024)の平均分泌を示すものである。 B)22:6 ERリポソーム処置PBMCから分泌されたHIV−1の感染力を示すものである。
【図10】無血清完全DMEM中で24時間、リポタンパク質受容体の発現をアップレギュレート及びダウンレギュレートするために使用した薬物(それぞれSQ及び25HC)の存在下でインキュベートした未感染Huh7.5細胞についての実験の結果を示すものである。
【図11】Huh7.5細胞の1時間感染中のHCVccウイルスストックへの22:6 puERリポソームの添加についての実験結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
用語の定義
特に別の指定がない限り、「a」又は「an」は、「1つ又はそれ以上」を意味する。
本明細書において用いる場合、用語「ウイルス感染(症)」は、ウイルスが健常細胞に侵入し、その細胞の再生機構を用いて増殖又は複製し、最終的に細胞を溶解し、その結果、細胞を死滅させ、ウイルス粒子を放出させ、及び新たに生産された後代ウイルスによる他の細胞の感染を生じさせる病態を記述するものである。一定の細胞による潜伏感染も、ウイルス感染の起こりうる結果である。
【0006】
本明細書において用いる場合、用語「ウイルス感染(症)を処置又は予防すること」は、特定のウイルスの複製を阻害すること、ウイルス伝播を阻害すること、又はウイルスのその宿主におけるそれ自体の樹立を予防すること、及びウイルス感染に起因する疾患の症状を改善若しくは緩和することを意味する。ウイルス負荷量の低減、死亡率及び/又は罹患率の減少がある場合、その処置は治療的とみなされる。
【0007】
用語「治療薬」は、生理的状態、例えばウイルス感染又はそれに起因する疾患、の処置を支援することができる薬剤、例えば分子又は化合物、を指す。
【0008】
用語「リポソーム」は、通常は球状二重層構造である、二重層構造の脂質を含む粒子と定義することができる。用語「リポソーム」は、一枚膜リポソームと多重層リポソームの両方を包含する。本明細書において論ずるリポソームは、以下の略語によって表される1つ又はそれ以上の脂質を含むことがある:
CHEMSは、コレステリルヘミスクシナート脂質を表す。
DOPEは、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン脂質を表す。
DOPCは、ジオレオイルホスファチジルコリン脂質を表す。
PEは、ホスファチジルエタノールアミン脂質又はその誘導体を表す。
PEG−PEは、ポリエチレングリコール(PEG)とコンジュゲートしているPE脂質を表す。PEG−PEの一例は、ポリエチレングリコール−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン脂質である。PEGのPEG成分の分子量は、様々であり得る。
Rh−PEは、リサミンローダミンB−ホスファチジルエタノールアミン脂質を表す。
MCC−PEは、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[4−(p−マレイミドメチル)シクロヘキサン−カルボキサミド]脂質を表す。
PIは、ホスファチジルイノシトール脂質を表す。
PSは、ホスファチジルセリン脂質を表す。
用語「細胞内送達」は、リポソームから任意の細胞内区画への封入材料の送達を指す場合がある。
IC50又はIC90(阻害濃度50又は90)は、それぞれ、ウイルス感染の50%又は90%低下を達成するために使用される治療薬の濃度を指す場合がある。
PBMCは、末梢血単核細胞を表す。
sCD4は、可溶性CD4分子を表す。「可溶性CD4」又は「sCD4」又は「D1D2」は、通常の当業者に理解されているように、水溶液の状態である、及びHIV Envの配座の変更により天然膜固着CD4の活性を模倣することができる、CD4分子、又はそのフラグメントを意図したものである。可溶性CD4の一例は、例えば、Salzwedel et al. J. Virol. 74:326 333, 2000 に記載されている2ドメイン可溶性CD4(sCD4又はD1D2)である。
MAbは、モノクローナル抗体を表す。
DNJは、デオキシノジリマイシンを示す。
NB−DNJは、N−ブチルデオキシノジリマイシンを示す。
NN−DNJは、N−ノニルデオキシノジリマイシンを示す。
BVDVは、ウシウイルス性下痢ウイルスを表す。
HBVは、B型肝炎ウイルスを表す。
HCVは、C型肝炎ウイルスを表す。
HIVは、ヒト免疫不全ウイルスを表す。
Ncpは、非細胞変性の、を表す。
Cpは、細胞変性の、を表す。
ERは、小胞体を表す。
CHOは、チャイニーズハムスター卵巣細胞を表す。
MDBKは、メイディン・ダービー(Madin-Darby)ウシ腎細胞を表す。
PCRは、ポリメラーゼ連鎖反応を表す。
FOSは、遊離オリゴ糖を表す。
HPLCは、高性能液体クロマトグラフィーを表す。
PHAは、フィトヘムアグルチニンを表す。
FBSは、ウシ胎仔血清を表す。
TCID50は、50%組織培養感染用量を表す。
ELISAは、酵素結合免疫吸着検定法を表す。
IgGは、免疫グロブリンを表す。
DAPIは、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドールを表す。
PBSは、リン酸緩衝食塩水を表す。
LDは、脂肪滴を表す。
NSは、非構造の、を表す。
「MOI」は、感染の多重度を指す。
DMEMは、ダルベッコ変性イーグル培地を指す。
【0009】
関連文献
本開示は、参照により米国特許公開第20080138351号、同第20090252785号、及び同第20030124160号を全面的に組み込む。
【0010】
マクロファージ及びコレステロール代謝:
肝細胞を除く他の細胞と同様に、マクロファージは、はっきり認識できるいかなる程度にもコレステロールを分解することができない。従って、細胞コレステロール含有量は、本質的にコレステロール取込みとコレステロール流出の間のバランスであり得る。細胞へのコレステロール送達の2つの主要メカニズムは、血漿低密度リポタンパク質(LDL)の受容体媒介取込み、及び細胞内コレステロール生合成であり得る。コレステロール送達のこれら2つの主要径路のそれぞれが、コレステロール欠乏の場合に細胞の要求を完全に満たすことができ、及び両方が高度に調節され得る(Brown and Goldstein 1999、完全な引用文献については下のセクション「参考文献」を参照のこと)。しかし、炎症などの一部の病態生理学的状態では、高血漿LDL濃度及び酸化ストレスが、修飾された、主として酸化された、LDLの形成をもたらすことがある(Steinberg, Parthasarathy et al. 1989)。修飾LDLは、マクロファージをはじめとする幾つかの細胞タイプにおいて発現されるスカベンジャー受容体(SR)と相互作用することができる。修飾リポタンパク質の取込みは、細胞コレステロールの含有量に応じて調節されず、マクロファージへの過剰なコレステロールの無制御送達を生じさせる結果となることがある(Hajjar and Haberland 1997、Dhaliwal and Steinbrecher 2000)。コレステロール流出増加により補償されないと、これは、コレステロールの蓄積及び脂質沈着泡沫細胞の形成、その後の動脈壁における脂肪条痕の発生(アテローム性動脈硬化症の進行の最初期段階)につながることがある。コレステロール沈着マクロファージは、アテローム性動脈硬化症の病理発生の他の事象、例えば炎症の永続化、平滑筋細胞の表現型修飾、及び細胞外マトリックスタンパク質の過剰生産、の引き金になる可能性も高いだろう(Lusis 2000)。コレステロール生合成及びLDL受容体発現をダウンレギュレートすることにより、コレステロールの過剰量を補償することができる。しかし、LDL取込み及びコレステロール合成を減少させることにより修飾LDLによって送達されるコレステロールの重度の過剰量を補償する細胞の能力は制限されることがある。遊離コレステロールの過剰量を補償する2つの他のメカニズムは、コレステリルエステルの合成及びコレステロール流出であり得る。コレステリルエステル合成は一時的な緩和をもたらすことができるが、コレステリルエステルの連続生産は、細胞内脂肪滴の過剰蓄積につながることがある。コレステロールのマクロファージへの過剰負荷は、それらのアポトーシス及び壊死につながることがあり、それが後期アテローム性動脈硬化プラークの壊死及び石灰化コアの一因となる(Tabas 2002、Tabas 2002)。
【0011】
細胞におけるコレステロール生合成のためのメバロン酸経路:
メバロン酸−イソプレノイド経路における第一段階は、HMG−CoAシンターゼ(HMGCS)の作用によるアセチル−CoAからのアセトアセチルCoA経由での3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル(HMG)−CoAの合成を含む。HMG−CoAレダクターゼ(HMGCR)(自然界で最も高度に調節される酵素の1つ)は、HMG−CoAのメバロン酸への変換を触媒することができる(Goldstein and Brown 1990)。スタチン及びビスホスホネートによるメバロン酸経路及び下流イソプレノイド生合成経路の合理的な治療操作が徹底的に研究され、様々な疾患における興味深い及び画期的な選択肢であることが判明した(Buhaescu and Izzedine 2007)。図1は、メバロン酸経路及びイソプレノイド生合成を提示するものである。一定の重量な治療薬のそれらの種々の細胞ターゲットに対する効果も表す。
【0012】
コレステロール及びウイルス複製:
多数のウイルスは、それらの複製をコレステロールに依存し得る。そのようなウイルスとしては、ヘルペスウイルス科に属するウイルス、例えば、HSV 1又はHSV 2ウイルスであり得る単純ヘルペスウイルス(例えばItzhaki and Wozniak 2006参照)、及びエプスタイン・バーウイルス(例えば、Katzman and Longnecker 2003参照);オルトミクソウイルス科に属するウイルス、例えば、インフルエンザウイルスA,インフルエンザウイルスB又はインフルエンザウイルスCであり得るインフルエンザウイルス(例えば、Sun and Whittaker 2003参照);レトロウイルス、例えば、マウス白血病ウイルス(例えば、Beer, Pedersen et al. 2005参照)、及びHIV 1又はHIV 2ウイルスであり得るヒト免疫不全ウイルス(HIV)(例えば、Manes, del Real et al. 2000、Campbell, Crowe et al. 2001参照);ポックスウイルス科に属するウイルス、例えばワクシニアウイルス(例えば、Chung, Huang et al. 2005参照);ポリオーマウイルス(例えば、Kaur, Gopalakrishna et al. 2004参照);トガウイルス科に属するウイルス、例えばセムリキ森林ウイルス(例えば、Chatterjee, Eng et al. 2002参照)、フィロウイルス科に属するウイルス、例えばエボラウイルス(例えば、Empig and Goldsmith 2002参照)及びマールブルグウイルス(例えば、Bavari, Bosio et al. 2002参照);フラビウイルス属に属するウイルス、例えばデングウイルス(例えば、Reyes-del Valle, Chavez-Salinas et al. 2005参照)、及びヘパシウイルス属に属するウイルス、例えばC型肝炎ウイルス(HCV)(例えば、Aizaki, Morikawa et al. 2008参照)、を含む、フラビウイルス科に属するウイルス;パラミクソウイルス科に属するウイルス、例えば麻疹ウイルス(例えば、Manie, Debreyne et al. 2000参照);並びにヘパドナウイルス科に属するウイルス、例えばB型肝炎ウイルス(HBV)(例えば、Bremer, Bung et al. 2009参照)が挙げられるが、これらに限定されない。これらのウイルスのすべてが、マクロファージを感染させることができるとは限らず、このことは、コレステロール要求が、特定の細胞タイプの感染に限定されないことを示している。コレステロールが、エンベロープウイルスの膜の重要な成分であり得ることが広く認知されているにもかかわらず、驚くべきことに、何故及びどのようにコレステロールがウイルス複製に関与するのかについては殆ど知られていない。ウイルス複製におけるコレステロールの役割についての知識の大部分は、脂質ラフト(原形質膜のスフィンゴ脂質及びコレステロールに富むミクロドメイン)の機能に限定され得る。幾つかのエンベロープウイルス、例えばHIV(Campbell, Crowe et al. 2001)、エボラ及びマールブルグウイルス(Bavari, Bosio et al. 2002)、麻疹ウイルス(Vincent, Gerlier et al. 2000)及びインフルエンザウイルス(Scheiffele, Rietveld et al. 1999、Leser and Lamb 2005)、は、ウイルス構築のためのプラットフォームとしてラフト様ドメインを使用する場合がある。脂質ラフトは、ヘムアグルチニンが脂質ラフト内に集中しているという発見に基づき、インフルエンザウイルスについて提案されているように、ウイルス感染中に侵入点として用いられることもある(Takeda, Leser et al. 2003)。
【0013】
HIVに対するコレステロール枯渇の効果:
HIV複製に対するコレステロール枯渇の効果は、細胞コレステロール含有量及び/又はコレステロール生合成速度の変化に応じての細胞代謝の多彩な変化の結果として生ずる、間接的なものである場合もある。例えば、スタチンによるコレステロール生合成の阻害は、タンパク質プレニル化に関与するものを含めて、HMG−CoAレダクターゼの上流のすべての中間体の定常濃度を低下させ得る(Buhaescu and Izzedine 2007)。小型Gタンパク質のプレニル化の低下は、Rho−グアノシントリホスファターゼ(GTPase)及びRho−A活性化の阻害をもたらし、その結果、ウイルス侵入低減が生ずることがある(del Real, Jimenez-Baranda et al. 2004)。加えて、スタチンは、コレステロール生合成に対するそれらの効果とは無関係に、HIV感染を低減することができる多面発現性有益効果を有することがある。これらの効果は、接着分子の発現(Jain and Ridker 2005)又は内皮細胞及び白血球上での受容体−リガンドペア、例えばICAM−1とLFA−1、の相互作用(Nishibori, K. Takahashi et al. 2003)を阻害するスタチンの能力の結果として生ずる抗炎症特性を含むことがある。スタチンによるICAM−1とLFA−1の相互作用の阻害は、細胞へのHIV付着を減少させることができる(Giguere and Tremblay 2004)。HIVのライフサイクルにおけるコレステロールの役割は多くの研究により調査されている。宿主細胞からのHIV−1発芽が脂質ラフトで発生し、その結果、高いウイルスエンベロープのコレステロール:リン脂質モル比(>1.0)が生ずる(Aloia, Tian et al. 1993、Nguyen and Hildreth 2000)。ラフトに対するこの親和性は、これらの膜ドメインと特異的に会合することができるGag前駆体によって決定され得る(Ono and Freed 2001、Ding, Derdowski et al. 2003、Holm, Weclewicz et al. 2003)。脂質−ラフト結合は、GagのN末端により媒介され得、Gag−Gag相互作用ドメインによって大きく強化され得る。細胞コレステロールの枯渇及びラフト数の減少は、顕著に及び特異的にHIV−1粒子生産を低下させ得る(Ono and Freed 2001)。
【0014】
上で説明したHIV侵入に対するコレステロール低下薬の間接的効果に加えて、HIVについての侵入点としての脂質ラフトの役割が、幾つかの研究により提案されている。このモデルは、HIV侵入部位でのCD4(HIV細胞受容体)とケモカイン受容体の共キャッピング(cocapping)現象に依存し(Alfano, Schmidtmayerova et al. 1999)、これもまたコレステロールに依存し得る(Nguyen, Giri et al. 2005)。Viardらによる研究(Viard, Parolini et al. 2002)は、コレステロール枯渇細胞が、ウイルス細胞融合に必要なCD4及びCXCR4(又はCCR5)のクラスターを形成できないことがあることを立証した。同様の観察がManesら(Manes, del Real et al. 2000)によって報告されており、彼らは、ラフト会合ケモカイン受容体と共にCD4−gp120複合体に結合する、ラフトのgp120誘導 側方再構成(lateral reorganization)についての役割を提案した。しかし、後の報告により、CD4及びケモカイン受容体とラフトの会合が、HIV感染に必要でないことがあることが立証された(Percherancier, Lagane et al. 2003、Popik and Alce 2004)。これらの発見の通常の予告記載は、それらの多くを、HIV受容体を過剰発現する細胞を使用して行ったということであろう。そのような細胞は、初代細胞へのHIV侵入に必要不可欠であり得るケモカイン受容体からのシグナリングについて以前に立証されているように、多くの場合、初代細胞とは別様に挙動し得る(Alfano, Schmidtmayerova et al. 1999)。これらすべての論文が同意していることは、ターゲット細胞膜内のコレステロールに対するHIV侵入の依存性である。コレステロールの枯渇が、ラフト会合及びラフト排除CD4により媒介されるHIV侵入を阻害した(Popik and Alce 2004)からである。
【0015】
HIVビリオンの感染力にとってのコレステロールの重要性は、MβCDなどのコレステロール捕捉薬でのHIV粒子の処置がウイルスを細胞侵入について無能にした実験により立証された(Campbell, Crowe et al. 2002、Guyader, Kiyokawa et al. 2002)。コレステロール枯渇HIV−1ビリオンは、ビリオン脂質二重層の破壊を示すことができ(Campbell, Crowe et al. 2002)、しかも尚、正常なgp120 Envレベルを呈示することができる(Guyader, Kiyokawa et al. 2002)。1つの研究は、MβCDがウイルス膜を透過性にし、その結果、Env糖タンパク質の喪失を伴わずに成熟Gagタンパク質(カプシドマトリックス、及びp6)の喪失を生じさせることができることを立証した(Graham, Chertova et al. 2003)。電子顕微鏡により、コレステロール枯渇ビリオンのウイルス膜内の穴、及びウイルスコア構造の摂動が明らかにされた(Graham, Chertova et al. 2003)。
【0016】
HIV及びアテローム性動脈硬化症
HIV感染は、アテローム性動脈硬化症の発現のリスクの増加(Hsue, Lo et al. 2004、van Wijk, de Koning et al. 2006)及び冠動脈疾患(CAD)のリスクの少なくとも3倍増加(Hsue and Waters 2005)を一貫して随伴し得る。この随伴は、以前は、もっぱら抗レトロウイルス療法の有害作用によるものとされていた。コレステロール代謝の多くの変化、例えば、LDLの上昇(El-Sadr, Mullin et al. 2005)及びCD36発現の誘導によるコレステロール取込み量増加(Allred, Smart et al. 2006)、は、抗レトロウイルス療法に起因し得る可能性が高い(Carpentier, Patterson et al. 2005)が、コレステロール代謝の変化への療法及びHIV感染それ自体の相対的寄与は、まだ確定されていない。予備的研究により、HIV感染それ自体がCADのリスク増加に重要な役割を果たし得ることが指摘されることがある。HIVは、マクロファージを感染させ、これらの細胞内の逆コレステロール輸送を損なわせることがある。
【0017】
マクロファージからのコレステロール流出の機能障害は、細胞内コレステロールの蓄積(Feng and Tabas 2002)並びに動物モデル(Aiello, Brees et al. 2002)及びヒト(Oram 2000)におけるアテローム性動脈硬化症の発現につながることがある。このプロセスは、脂質代謝異常を随伴するとき、特に迅速であり得る。抗レトロウイルス療法に起因する脂質代謝異常を随伴するとき、HIVへのマクロファージの感染は、マクロファージ内のコレステロールの蓄積、及びアテローム性動脈硬化症の迅速な発現を引き起こすことがあることが示唆され得る。
【0018】
細胞コレステロール及びHCV:
HCV感染は、哺乳動物コレステロール恒常性に極めて重大な役割を果たし得る、肝細胞に主として限定される(Chisari 2005)。コレステロールに富む原形質膜マイクロドメイン(すなわち脂質ラフト)への局在が、CD81(Soldaini, Wack et al. 2003、Cherukuri, Shoham et al. 2004)及びSR−BI(Rhainds, Bourgeois et al. 2004)(細胞へのHCV侵入に必要な2つの細胞受容体)の両方について立証されている。SR-BIは、カベオラと呼ばれるコレステロールに富む原形質膜マイクロドメインと会合することができる(Babitt, Trigatti et al. 1997、Graf, Connell et al. 1999)。CD81は、コレステロールと物理的に相互作用することが立証されている(Charrin, Manie et al. 2003)。細胞コレステロールに対するHCV感染の依存性は、現在、不明であるが、リポソームとのHCVpp融合は、ターゲット膜中のコレステロールの存在により強化され得る(Lavillette, Bartosch et al. 2006)。これらのデータは、原形質膜コレステロールがHCV侵入に必要とされ得ることを強く示唆し得る。HCV感染が、CD81とSR−BIとの協同的相互作用に依存し得ること、並びに細胞コレステロール含有量が、ことによるとCD81の細胞表面発現及び局在を調節することにより、HCV侵入に対して有意な影響を及ぼし得ることは、立証されている(Kapadia, Barth et al. 2007)。
【0019】
最近の研究により、HCV感染及びビリオン成熟におけるコレステロール及びスフィンゴ脂質についての重要な役割が証明された。具体的に言うと、成熟HCV粒子は、コレステロールが豊富であり得る(Aizaki, Morikawa et al. 2008)。ビリオン会合SMのHCVからの枯渇又は加水分解は、結果として感染力の喪失を生じさせる(Aizaki, Morikawa et al. 2008)。さらに、外因性コレステロールの追加は、感染力を回復させ得る。加えて、構造タンパク質の部分部分が、細胞内の脂質ラフト様膜構造に局在化される場合がある(Aizaki, Lee et al. 2004)。
【0020】
開示
本発明者らは、脂質粒子であって、細胞侵入及び/又はその粒子の内部に封入された材料の細胞内送達が可能であり得る脂質粒子、例えばリポソーム、が、この経路に関与する第一の酵素の1つ、HMGCS、をダウンレギュレートすることにより、コレステロール生合成を阻害することができることを発見した。
【0021】
一部の実施形態において、前記脂質粒子は、少なくとも1つのPE脂質及び/又はその誘導体を含有することがある。誘導体PE脂質の例としては、DOPE及びコンジュゲート化PE脂質が挙げられる。コンジュゲート化PE脂質としては、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーとコンジュゲートしているPE脂質、及び蛍光標識などの標識とコンジュゲートしているPE脂質を挙げることができる。前記PE脂質は、モノ飽和されていることもあり、又は多飽和されていることもある。
【0022】
一部の実施形態において、前記脂質粒子は、1つ又はそれ以上のPI、PS、PC及びCHEMS脂質(これらのそれぞれが、モノ飽和されていることもあり、又は多飽和されていることもある)を含むことがある。
一部の実施形態において、前記脂質粒子は、ポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーとコンジュゲートしている1つ又はそれ以上の脂質を含有することがある。前記親水性ポリマーの分子量は、様々であり得る。コンジュゲート化親水性ポリマーの使用は、脂質粒子のインビボ安定性及び循環時間を増すことができる。
【0023】
一部の実施形態において、コレステロール阻害が可能である前記脂質粒子は、PE脂質及び/又はそれらの誘導体並びにCHEMS脂質を含有する脂質粒子、例えば、米国特許公開第20080138351号に開示されているpH感受性リポソーム、であることがある。例えば、そのような脂質粒子は、モル比6:4若しくは6:3を有するDOPE−CHEMSリポソーム、又はモル比6:3:0.1を有するDOPE:CHEMS:PEG−PEである場合がある。
【0024】
一部の実施形態において、コレステロール阻害が可能である脂質粒子は、PE脂質及び/又はそれらの誘導体並びにPI及び/又はPS脂質を含有する、脂質粒子であることがある。そのような脂質粒子の例としては、2009年3月25日に出願された米国特許出願第12/410,750号に開示されているERターゲッティングリポソームが挙げられる。一部の実施形態において、前記脂肪粒子は、PE、PI、PS及びPC脂質(これらのそれぞれが、モノ飽和されていることもあり、又は多飽和されていることもある)を含む脂質粒子であることがある。
【0025】
一部の実施形態において、コレステロール阻害が可能である脂質粒子は、多不飽和脂質粒子、すなわち、少なくとも1つの多不飽和脂質を含む脂質粒子、であることがある。本明細書において用いる場合、用語「多不飽和脂質」は、1つより多くの不飽和化学結合、例えば二重又は三重結合、をその疎水性テールに含有する脂質を指す。一部の実施形態において、多不飽和脂質は、2から8個又は3から7個又は4から6個の二重結合をその疎水性テール内に有する場合がある。多不飽和脂質粒子は、米国特許公開第20090252785号に開示されている。多不飽和脂質の例は、米国特許公開第20090252785号の図2A〜B並びに図22A〜Dに提示されている。
【0026】
ターゲッティング部分
一部の実施形態において、脂質粒子を含む組成物は、脂質粒子とコンジュゲートすることができる又は該粒子の脂質層若しくは二重層に介在させることができる、少なくとも1つのターゲッティング部分を含むことができる。一部の実施形態において、前記ターゲッティング部分は、ウイルスのエンベロープタンパク質のリガンドであることがある、リガンドであることがあり、又はウイルスのエンベロープタンパク質に対する抗体であることがある、抗体であることがある。そのような部分は、ウイルスに感染した細胞への粒子のターゲッティングに使用することができる。そのようなターゲッティング部分は、ウイルスに関連づけられる又は起因するウイルス感染症に対する免疫の殺菌を果たすために使用することもできる。一部の実施形態において、前記ターゲッティング部分は、gp120/gp41ターゲッティング部分を含むことがある。そのような場合、前記脂質粒子を含む組成物は、HIV−1感染の処置及び/又は予防に好ましいことがある。gp120/pg41ターゲッティング部分は、sCD4分子又はモノクローナル抗体、例えばIgG 2F5若しくはIgG b12抗体、を含む場合がある。一部の実施形態において、前記ターゲッティング部分は、E1又はE2ターゲッティング部分、例えばHCVからのE1又はE2タンパク質、を含む場合がある。そのような場合、前記脂質粒子を含む組成物は、HCV感染の処置及び/又は予防に好ましいことがある。一部の場合、ターゲッティング部分は、E1及び/又はE2タンパク質をターゲッティングすることができる分子、例えばこれらのタンパク質に対する特異的抗体、並びに細胞受容体の可溶性部分、例えば可溶性CD81又はSR−BI分子であることもある。
【0027】
活性薬剤
一部の実施形態では、少なくとも1つの薬剤、例えば治療薬又はイメージング剤、を脂質粒子内に封入することができる。そのような薬剤は、例えば、水溶性分子、ペプチド又はアミノ酸であることがある。
【0028】
一部の実施形態において、脂質粒子内に封入される薬剤は、α−グルコシダーゼ阻害剤である場合がある。一部の実施形態において、前記α−グルコシダーゼ阻害剤は、ERα−グルコシダーゼI阻害剤又はERα−グルコシダーゼII阻害剤であることがある、ERα−グルコシダーゼ阻害剤である場合がある。一般に、そのウイルスエンベロープ糖タンパク質の正しいフォールディングをカルネキシン及び/又はカルレティキュリンとの相互作用に依存するいずれのウイルスも、ERα−グルコシダーゼ阻害剤でターゲッティングすることができる。
【0029】
アルファ−グルコシダーゼ阻害剤は、宿主アルファ−グルコシダーゼ酵素活性を、該薬剤の不在下での該アルファ−グルコシダーゼの酵素活性と比較して少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%、又はそれ以上阻害する薬剤であることがある。用語「アルファ−グルコシダーゼ阻害剤」は、宿主アルファ−グルコシダーゼ活性を阻害する、自然に存在する薬剤と合成薬剤の両方を包含する。
【0030】
適するアルファ−グルコシダーゼ阻害剤としては、デオキシノジリマイシン及びN−置換デオキシノジリマイシン、例えば、式Iの化合物:
【化1】

(式中、Rは、置換又は非置換アルキル基(これらは、分岐アルキル基である場合もあり、又は直鎖アルキル基で場合もある)、置換又は非置換シクロアルキル基、置換又は非置換アリール基、置換又は非置換オキサアルキル基、置換又は非置換アリールアルキル、シクロアルキルアルキルから選択され、並びにW、X、Y及びZは、それぞれ独立して、水素、アルカノイル基、アロイル基、及びハロアルカノイル基から選択される)
及びそれらの医薬的に許容される塩、を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0031】
一部の実施形態では、RをC1−C20アルキル基又はC3−C12アルキル基から選択することができる。一部の実施形態では、Rをエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル及びn−デシルから選択することができる。一部の実施形態において、R1は、ブチル又はノニルである場合がある。
【0032】
一部の実施形態において、Rは、1から5個又は1から3個又は1から2個の酸素原子も含有し得る、C1−C20アルキル基又はC3−C12アルキル基である場合がある、オキサアルキル(oxalkyl)である場合がある。オキサアルキル(oxalkyl)基の例としては、−(CHO(CHCH、−(CHO(CHCH、−(CHOCHCH、及び−(CHOCHCHCHが挙げられる。
【0033】
一部の実施形態において、Rは、アリールアルキル基である場合がある。アリールアルキル基の例としては、C1−C12−Ph基、例えばC3−Ph、C4−Ph、C5−Ph、C6−Ph及びC7−Ph、が挙げられる。
一部の実施形態において、前記式Iの化合物は、N−(n−ヘキシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−ヘプチル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−オクチル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−オクチル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(n−ノニル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(n−デシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(n−ウンデシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(n−ノニル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−デシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−ウンデシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−ドデシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(2−エチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(4−エチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(5−メチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(3−プロピルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(1−ペンチルペンチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(1−ブチルブチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(7−メチルオクチル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(8−メチルノニル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(9−メチルデシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(10−メチルウンデシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(6−シクロヘキシルヘキシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(4−シクロヘキシルブチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(2−シクロヘキシルエチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(1−シクロヘキシルメチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(1−フェニルメチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(3−フェニルプロピル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(3−(4−メチル)−フェニルプロピル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(6−フェニルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール;N−(n−ノニル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(n−デシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(n−ウンデシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(n−ドデシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(2−エチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(4−エチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(5−メチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(3−プロピルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(1−ペンチルペンチルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(1−ブチルブチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(7−メチルオクチル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(8−メチルノニル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(9−メチルデシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(10−メチルウンデシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(6−シクロヘキシルヘキシル−)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(4−シクロヘキシルブチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(2−シクロヘキシルエチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(1−シクロヘキシルメチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(1−フェニルメチル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(3−フェニルプロピル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(3−(4−メチル)−フェニルプロピル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;N−(6−フェニルヘキシル)−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−グルシトール,テトラブチラート;それらの医薬的に許容される塩;及びそれらの任意の2つ又はそれ以上の混合物から選択することができるが、それらに限定されない。N−置換デオキシノジリマイシンが有効であり得る疾患及び状態は、米国特許第4,849,430号、同第4,876,268号、同第5,411,970号、同第5,472,969号、同第5,643,888号、同第6,225,325号、同第6,465,487号、同第6,465,488号、同第6,515,028号、同第6,689,759号、同第6,809,083号、同第6,583,158号、同第6589,964号、同第6,599,919号、同第6,916,829号、同第7,141,582号;米国特許出願第12/656,993号(2010年2月22日出願)、同第12/656,992号(2010年2月22日出願);米国特許仮出願第61/282,507号(2010年2月22日出願)、同第61/272,253号(2009年9月4日出願)、同第61/272,252号(2009年9月4日出願)、同第61/186,614号(2009年6月12日出願)、同第61/282,508号(2010年2月22日出願)、同第61/272,254号(2009年9月4日出願)に開示されている。N−置換デオキシノジリマイシンが有効であり得る疾患及び状態としては、HIV感染症;C型肝炎及びB型肝炎感染症を含む、肝炎感染症;テイ・サックス病、ゴーシェ病、クラッベ病及びファブリ病を含む、リソソーム脂質蓄積症;並びに嚢胞性線維症が挙げられるが、これらに限定されない。N−置換デオキシノジリマイシンが有効であり得る疾病及び状態としては、デングウイルスに起因する又は関連づけられるウイルス感染症;アレナウイルス科に属するもの、例えばピキンデウイルス又はフニンウイルス、に起因する又は関連づけられるウイルス感染症;ポックスウイルス科に属するもの、例えばワクシニアウイルス、に起因する又は関連づけられるウイルス感染症;フィロウイルス科に属するもの、例えばエボラウイルス及びマールブルグウイルス、に起因する又は関連づけられるウイルス感染症;ブニヤウイルス科に属するもの、例えばリフトバレー熱ウイルス、に起因する又は関連づけられるウイルス感染症;トガウイルス科に属するもの、例えばチクングニアウイルス及びベネズエラウマ脳炎ウイルス、に起因する又は関連づけられるウイルス感染症;オルソミクソウイルス科に属するもの、例えば、H1N1及びH3N2サブタイプを含めてインフルエンザAウイルス、に起因する又は関連づけられるウイルス感染症も挙げられる。
【0034】
一部の実施形態において、α−グルコシダーゼ阻害剤は、N−オキサアルキル化デオキシノジリマイシン又はN−アルキルオキシデオキシノジリマイシン、例えば、米国特許第4,639,436号に記載されているN−ヒドロキシエチルDNJ(ミグリトール又はGlyset(登録商標))、である場合がある。
【0035】
一部の実施形態において、α−グルコシダーゼ阻害剤は、カスタノスペルミン及び/又はカスタノスペルミン誘導体、例えば、米国特許出願第2006/0194835号に開示されている式(I)の化合物及びそれらの医薬的に許容される塩[6−O−ブタノイルカルタノスペルミン(セルゴシビル)を含む]、並びにPCT公開番号第01054692号に開示されている式IIの化合物及びそれらの医薬的に許容される塩、である場合がある。
【0036】
カスタノスペルミン及びその誘導体が有効であり得る疾患及び状態は、米国特許第4,792,558号、同第4,837,237号、同第4,925,796号、同第4,952,585号、同第5,004,746号、同第5,214,050号、同第5,264,356号、同第5,385,911号、同第5,643,888号、同第5,691,346号、同第5,750,648号、同第5,837,709号、同第5,908,867号、同第6,136,820号、同第6,583,158号、同第6,589,964号、同第6,656,912号、及び米国特許公開第20020006909号、同第20020188011号、同第20060093577号、同第20060194835号、同第20080131398号に開示されている。カスタノスペルミン及びその誘導体が有効であり得る疾患及び状態としては、HIV感染症をはじめとするレトロウイルス感染症;脳性マラリア;B型肝炎及びC型肝炎感染症をはじめとする肝炎感染症;糖尿病;並びにリソソーム蓄積症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
一部の実施形態において、アルファグルコシダーゼ阻害剤は、アカルボーズ(O−4,6−ジデオキシ−4−[[(1S,4R,5S,6S)−4,5,6−トリヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−2−シクロヘキセン−1−イル]アミノ]−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−O−→−D−グルコピラノシル−(1→4)−D−グルコース)、又はPrecose(登録商標)である場合がある。アカルボーズは、米国特許第4,904,769号に開示されている。一部の実施形態において、アルファグルコシダーゼ阻害剤は、アカルボーズの高精製形態(例えば、米国特許第4,904,769号参照)である場合がある。一部の実施形態において、リポソーム内に封入される薬剤は、イオンチャネル阻害剤である場合がある。一部の実施形態において、前記イオンチャネル阻害剤は、HCV p7タンパク質の活性を阻害する薬剤である場合がある。イオンチャネル阻害剤及びそれらの同定方法は、米国特許公開第2004/0110795号において詳述されている。適するイオンチャネル阻害剤としては、N−(7−オキサ−ノニル)−1,5,6−トリデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクシトール(N−7−オキサ−ノニル6−MeDGJ又はUT231B)及びN−10−オキサウンデシル−6−MeDGJをはじめとする、式Iの化合物及びそれらの医薬的に許容される塩が挙げられる。適するイオンチャネル阻害剤としては、N−ノニルデオキシノジリマイシン、N−ノニルデオキシガラクトノジリマイシン(N-nonyl deoxynogalactonojirimycin)及びN−オキサノニルデオキシノガラクトノジリマイシン(N-oxanonyl deoxynogalactonojirimycin)も挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
一部の実施形態において、リポソーム内に封入される薬剤は、イミノ糖である場合がある。適するイミノ糖は、自然に存在するイミノ糖と合成イミノ糖の両方を含む。一部の実施形態において、前記イミノ糖は、デオキシノジリマイシン又はN−置換デオキシノジリマイシン誘導体である場合がある。適するN−置換デオキシノジリマイシン誘導体の例としては、本出願の式IIの化合物、米国特許第6,545,021号の式Iの化合物、及びN−オキサアルキル化デオキシノジリマイシン、例えば米国特許第4,639,436号に記載されているN−ヒドロキシエチルDNJ(ミグリトール又はGlyset(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、前記イミノ糖は、カスタノスペルミン又はカルタノスペルミン誘導体である場合がある。適するカルタノスペルミン誘導体としては、米国特許出願第2006/0194835号に開示されている式(I)の化合物及びそれらの医薬的に許容される塩、並びにPCT公開番号第01054692号に開示されている式IIの化合物及びそれらの医薬的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
一部の実施形態において、前記イミノ糖は、デオキシガラクトノジリマイシン(deocynogalactojirimycin)又はそのN−置換誘導体、例えばPCT公開番号第99/24401号及び第01/10429号に開示されているもの、である場合がある。適するN−置換デオキシガラクトノジリマイシン(N-substituted deoxynogalactojirimycin)誘導体としては、N−アルキル化デオキシガラクトノジリマイシン(N-alkylated deocxnogalactojirimycin)(N−アルキル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール)、例えば、N−ノニルデオキシガラクトノジリマイシン(N-nonyl deoxynogalactojirimycin)、及びN−オキサ−アルキル化デオキシガラクトノジリマイシン(N-oxa-alkylated deocynogalactojirimycin)(N−オキサ−アルキル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール)、例えば、N−7−オキサノニルデオキシガラクトノジリマイシン(N-7-oxynonyl deoxynogalactojirimycin)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
一部の実施形態において、前記イミノ糖は、式IIの化合物:
【化2】

(式中、Rは、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換シクロアルキル基、置換若しくは非置換ヘテロシクリル基、又は置換又は非置換オキサアルキル基から選択される)
をはじめとする(しかし、これらに限定されない)、N−置換1,5,6−トリデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−置換MeDGJ)である場合がある。一部の実施形態において、置換若しくは非置換アルキル基及び/又は置換若しくは非置換オキサアルキル基は、1から16個の炭素原子、又は4から12個の炭素原子、又は8から10個の炭素原子を含む。一部の実施形態において、置換若しくは非置換アルキル基及び/又は置換若しくは非置換オキサアルキル基は、1から4個の酸素原子、及び他の実施形態では1から2個の酸素原子、を含む。他の実施形態において、置換若しくは非置換アルキル基及び/又は置換若しくは非置換オキサアルキル基は、1から16個の炭素原子及び1から4個の酸素原子を含む。従って、一部の実施形態において、Rは、−(CHOCH、−(CHOCHCH、−(CHO(CHCH、−(CHO(CHCH、−(CHO(CHCH、−(CHO(CHCH、及び−(CHO(CHCHから選択されるが、これらに限定されない。N−置換MeDGJは、例えば、PCT公開番号第01/10429号に開示されている。
【0041】
一部の実施形態において、リポソーム内に封入される薬剤としては、式IIIを有する窒素含有化合物:
【化3】

又はその医薬的に許容される塩である場合があり、この式中、
12は、アルキル、例えばC−C20、又はC−C、又はC−C12、又はC−C16、であり、及び1から5個又は1から3個又は1から2個の酸素原子も含有する場合があり、R12は、オキサ置換アルキル誘導体である場合がある。オキサ置換アルキル誘導体の例としては、3−オキサノニル、3−オキサデシル、7−オキサノニル及び7−オキサデシルが挙げられる。
【0042】
は、水素であり、Rは、カルボキシ、若しくはC−Cアルコキシカルボニルであり、又はRとRが一緒に、
【化4】

若しくは−(CXY)−になり、この場合、nは、3又は4であり、それぞれのXは、独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、C−Cアルキルカルボキシ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアシルオキシ、又はアロイルオキシであり、及びそれぞれのYは、独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、C−Cアルキルカルボキシ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアシルオキシ、アロイルオキシであるか、削除され(すなわち、存在しない);
は、水素であるか、削除され(すなわち、存在しない);及び
は、水素、ヒドロキシ、アミノ、置換アミノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ヒドロキシアルキル、アシルオキシ、若しくはアロイルオキシであり;又は
とRが一緒にフェニルを形成し、及びRは、削除される(すなわち、存在しない)。
【0043】
一部の実施形態において、前記窒素含有化合物は、式:
【化5】

(式中、R−R10のそれぞれは、独立して、水素、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、C−Cアルキルカルボキシ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cヒドロキシアルキル、C−Cアシルオキシ、及びアロイルオキシから成る群より選択され;並びにR11は、水素又はC−Cアルキルである)
を有する。
【0044】
前記窒素含有化合物は、N−アルキル化ピペリジン、N−オキサ−アルキル化ピペリジン、N−アルキル化ピロリジン、N−オキサ−アルキル化ピロリジン、N−アルキル化フェニルアミン、N−オキサ−アルキル化フェニルアミン、N−アルキル化ピリジン、N−オキサ−アルキル化ピリジン、N−アルキル化ピロール、N−オキサ−アルキル化ピロール、N−アルキル化アミノ酸、又はN−オキサ−アルキル化アミノ酸である場合がある。一定の実施形態において、N−アルキル化ピペリジン、N−オキサ−アルキル化ピペリジン、N−アルキル化ピロリジン、又はN−オキサ−アルキル化ピロリジン化合物は、イミノ糖である場合がある。例えば、一部の実施形態において、前記窒素含有化合物は、式:
【化6】

を有するN−アルキル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−アルキル−DGJ)若しくはN−オキサ−アルキル−1,5−ジデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−オキサ−アルキル−DGJ)又は式:
【化7】

を有するN−アルキル−1,5,6−トリデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−アルキル−MeDGJ)若しくはN−オキサ−アルキル−1,5,6−トリデオキシ−1,5−イミノ−D−ガラクチトール(N−オキサ−アルキル−MeDGJ)である場合がある。本明細書において用いる場合、炭素原子数が別様に指定されていない限り、基は、以下の特徴を有する。アルキル基は、1から20個の炭素原子を有し、及び線状であり又は分岐しており、置換されている又は非置換である。アルコキシ基は、1から16個の炭素原子を有し、及び線状であり又は分岐しており、置換されている又は非置換である。アルコキシカルボニル基は、2から16個の炭素原子を有するエステル基である。アルケニルオキシ基は、2から16個の炭素原子、1から6個の二重結合を有し、及び線状であり又は分岐しており、置換されている又は非置換である。アルキニルオキシ基は、2から16個の炭素原子、1から3個の三重結合を有し、及び線状であり又は分岐しており、置換されている又は非置換である。アリール基は、6から14個の炭素原子(例えば、フェニル基)を有し、及び置換されている又は非置換である。アラルキルオキシ(例えば、ベンジルオキシ)及びアロイルオキシ(例えば、ベンゾイルオキシ)基は、7から15個の炭素原子を有し、及び置換されている又は非置換である。
【0045】
アミノ基は、第一級、第二級、第三級、又は第四級アミノ基(すなわち、置換アミノ基)である場合がある。アミノカルボニル基は、1から32個の炭素原子を有するアミド基(例えば、置換アミド基)である。置換されている基は、ハロゲン、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C210アルケニル、C1−10アシル、又はC1−10アルコキシから成る群より選択される置換基を含む場合がある。
【0046】
N−アルキル化アミノ酸は、N−アルキル化された自然に存在するアミノ酸、例えばN−アルキル化α−アミノ酸、である場合がある。自然に存在するアミノ酸は、20の一般的なα−アミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Asp、Asn、Lys、Glu、Gln、Arg、His、Phe、Cys、Trp、Tyr、Met、及びPro)、並びに天然産物である他のアミノ酸、例えばノルロイシン、エチルグリシン、オルニチン、メチルブテニル−メチルトレオニン、及びフェニルグリシンのうちの1つである。アミノ酸側鎖(例えば、R)の例としては、H(グリシン)、メチル(アラニン)、−CHC(O)NH(アスパラギン)、−CH−SH(システイン)、及び−CH(OH)CH(トレオニン)が挙げられる。
【0047】
アミノ(又はイミノ)化合物の還元アルキル化によって、N−アルキル化化合物を調製することができる。例えば、アミノ又はイミノ化合物を還元剤(例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム)と共にアルデヒドに暴露して、そのアミンをN−アルキル化することができる。類似して、アミノ(又はイミノ)化合物の還元アルキル化によって、N−オキサ−アルキル化化合物を調製することができる。例えば、アミノ又はイミノ化合物を還元剤(例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム)と共にオキサ−アルデヒドに暴露して、そのアミンをN−オキサ−アルキル化することができる。
【0048】
前記窒素含有化合物は、1つ又はそれ以上の保護基を含む場合がある。様々な保護基が周知である。一般に、保護基の種類は重要でないが、但し、その化合物の他の位置に関する一切の後続の反応(単数又は複数)の条件に対して安定であること、及びその分子の残部に悪影響を及ぼすことなく適切な時点で除去することができることを条件とする。加えて、実質的な合成変換が完了した後、保護基を別のものに置換することができる。化合物が、本明細書に開示する化合物と、該開示化合物の1つ又はそれ以上の保護基が異なる保護基で置換されている点でしか異ならない場合、その化合物は、明らかに、本発明の範囲内である。さらなる例及び条件は、Greene, Protective Groups in Organic Chemistry, (1st Ed., 1981, Greene & Wuts, 2ndEd., 1991)において見つけられる。
【0049】
前記窒素含有化合物を、例えば結晶化又はクロマトグラフ法によって、精製することができる。立体特異的アミノ又はイミノ化合物を出発原料として使用して、立体特異的に化合物を調製することができる。
【0050】
長鎖N−アルキル化化合物の調製の際に出発原料として使用されるアミノ及びイミノ化合物は、市販されており(Sigma、ミズーリ州セントルイス;Cambridge Research Biochemicals、英国チェシア州Norwich;Toronto Research Chemicals、カナダ、オンタリオ州)、又は公知合成法によって調製することができる。例えば、前記化合物は、N−アルキル化イミノ糖化合物又はそれらのオキサ置換誘導体である場合がある。前記イミノ糖は、例えば、デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)、1−メチル−デオキシガラクトノジリマイシン(MeDGJ)、デオキシノジリマイシン(DNJ),アルトロスタチン、2R,5R−ジヒドロキシメチル−3R,4R−ジヒドロキシピロリジン(DMDP)、又はそれらの誘導体、エナンチオマー若しくは立体異性体である場合がある。
【0051】
一部の実施形態において、前記脂質粒子内に封入される薬剤は、式IV又はVの化合物:
【化8】

であることがあり、これらの式中、Rは、
【化9】

であり;R’は、
【化10】

であり;Rは、置換又は非置換アルキル基であり;Rは、置換又は非置換アルキル基であり;W1−4は、独立して、水素、置換若しくは非置換アルキル基、置換若しくは非置換ハロアルキル基、置換若しくは非置換アルカノイル基、置換若しくは非置換アロイル基、又は置換若しくは非置換ハロアルカノイル基から選択され;X1−5は、独立して、H、NO、N、又はNHから選択され;Yは、不在であり、又はカルボニル以外の置換若しくは非置換C−アルキル基であり、Zは、結合又はNHから選択されるが、但し、Zが結合であるとき、Yが不在であること、及びZがNHであるとき、Yが、カルボニル以外の置換若しくは非置換C−アルキル基であることを条件とし;並びにZ’は、結合又はNHである。式IV及びVの化合物並びにそれらの合成方法は、例えば、米国特許公開番号US2007/0275998に開示されている。式IV及びVの化合物の非限定的な例としては、N−(N’−{4’アジド−2’−ニトロフェニル}}−6−アミノヘキシル}−デオキシノジリマイシン(NAP−DNJ)及びN−(N’−{2,4−ジニトロフェニル}}−6−アミノヘキシル}−デオキシノジリマイシン(NDP−DNJ)が挙げられる。様々なイミノ糖化合物の合成が記載されている。例えば、DNJ誘導体を合成する方法は公知であり、例えば、米国特許第5,622,972号、同第5,401,645号、同第5,200,523号、同第5,043,273号、同第4,994,572号、同第4,246,345号、同第4,266,025号、同第4,405,714号、及び同第4,806,650号に記載されている。他のイミノ糖誘導体を合成する方法は公知であり、例えば、米国特許第4,861,892号、同第4,894,388号、同第4,910,310号、同第4,996,329号、同第5,011,929号、同第5,013,842号、同第5,017,704号、同第5,580,884号、同第5,286,877号、及び同第5,100,797号、並びにPCT公開番号第01/10429号に記載されている。2R,5R−ジヒドロキシメチル−3R,4R−ジヒドロキシピロリジン(DMDP)のエナンチオ特異的合成は、Fleet及びSmith(Tetrahedron Lett. 26:1469-1472, 1985)により記載されている。
【0052】
前記イメージング剤は、タグ付又は蛍光水性材料、例えばカルセイン、又は蛍光標識分子、例えばsiRNA、抗体若しくは他の小分子阻害剤である場合がある。タグ付親油性材料が細胞膜への組み込みのために脂質粒子に組み込まれる場合もある、例えば、細胞内のリポソームを可視化するために使用されるrh−PE脂質、及び可視化又は精製のためのタグを有する他の類似した脂質。これには、蛍光部分若しくは可視化若しくは精製のための他のタグを有する、タグ付親油性タンパク質又は薬物も挙げることができる。
【0053】
一部の実施形態において、封入される活性薬剤は、レトロウイルス薬であることがあり、このレトロウイルス薬は、例えば、ヌクレオシド逆転写酵素(RT)阻害剤、例えば(−)−2’−デオキシ−3’−チオシチジン−5’−三リン酸(3TC);(−)−cis−5−フルオロ−1−[2−(ヒドロキシ−メチル)−[1,3−オキサチオラン−5−イル]シトシン(FTC);3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT)及びジデオキシ−イノシン(ddI);非ヌクレオシドRT阻害剤、例えばN11−シクロプロピル−4−メチル−5,11−ジヒドロ−6H−ジピリド[3,2−b:2’3’−e]−[1,4]ジアゼピン−6−オン(Neviparine)、プロテアーゼ阻害剤、又はそれらの組み合わせであることがある。
【0054】
介在部分
一部の実施形態において、前記脂質粒子は、その脂質層又は二重層に介在した1つ又はそれ以上の部分を含むことがある。介在部分の例としては、膜貫通型タンパク質、タンパク質脂質コンジュゲート、標識脂質、親油性化合物又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、前記介在部分は、脂質−PEGコンジュゲートを含むことがある。そのようなコンジュゲートは、脂質粒子のインビボ安定性を増大させることができ、及び/又はその循環時間を増加させることができる。一部の実施形態において、前記介在部分は、長いアルキル鎖のイミノ糖、例えば、C7−C16アルキル若しくはオキサアルキル置換N−デオキシノジリマイシン(DNJ)又はC7−C16アルキル若しくはオキサアルキル置換デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)を含むことがある。長いアルキル鎖のイミノ糖の非限定的な例としては、N−ノニルDNJ及びN−ノニルDGJが挙げられる。一部の実施形態において、前記介在部分は、蛍光体−脂質コンジュゲートを含むことがあり、このコンジュゲートは、脂質二重層粒子と接触している細胞のER膜を標識するために使用することができる。そのような標識は、真核細胞における生及び/又は固定細胞イメージングに有用であり得る。脂質粒子の使用により、結果として細胞のER膜に介在部分を送達することができる。
【0055】
用途
コレステロール阻害が可能である脂質粒子は、コレステロールレベル増加に起因する又はコレステロールレベル増加を随伴する疾患又は状態の治療及び/又は予防に直接使用することができる。そのような疾患/状態の例としては、アテローム性動脈硬化症及び冠動脈疾患が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、コレステロール阻害が可能である脂質粒子を使用し、それにより、免疫不全ウイルスに感染した被験体(該被験体は、HIVに感染したヒトである場合がある)におけるコレステロールレベル増加に起因する又はコレステロールレベル増加を随伴するものを治療又は予防することができる。そのような被験体におけるコレステロールレベル増加は、感染症を生じさせる結果となることがある。免疫不全感染症は、細胞コレステロールの蓄積を随伴する場合があり、並びにその結果、アテローム性動脈硬化症及び/又はCADの発現をもたらす場合があるので、脂質粒子は、ターゲッティング分子により免疫不全ウイルス感染細胞をターゲットにすることができる。一定の実施形態において、前記脂質粒子は、1つ又はそれ以上の抗レトロウイルス薬を封入することができる。そのような脂質粒子は、その抗レトロウイルス薬を免疫不全ウイルス感染細胞に送達することができ、また同時に、細胞コレステロールのレベルを低下させて、アテローム性動脈硬化症及び/又はCADを予防することができる。
【0056】
コレステロール阻害が可能である脂質粒子は、その複製をコレステロールに依存するウイルスに起因する又は関連づけられる疾患又は状態を治療及び/又は予防するために使用することができる。一定の場合、前記疾患又は状態は、ウイルス感染症であることがある。そのようなウイルスの例としては、単純ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、マウス白血病ウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオーマウイルス、エプスタイン・バーウイルス、セムリキ森林ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デングウイルス、麻疹ウイルス、HIV、C型肝炎ウイルス及びB型肝炎ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスに起因する又は関連づけられる疾患又は状態に使用されるとき、前記脂質粒子は、それらのウイルスに対する1つ又はそれ以上の抗ウイルス薬を含有することができる。あるいは、前記脂質粒子は、HCVのようなウイルスの形態形成阻害剤として作用することにより、薬物又はプロドラッグとして直接使用することができる。
【0057】
投与
前記脂質粒子を含む組成物を、被験体に、該被験体における細胞コレステロールを低下させる目的で、投与することができる。この投与前のコレステロールの初期レベルは、正常であることもあり、又は増加されていることもある。
【0058】
一部の実施形態において、前記被験体は、細胞であることがある。脂質粒子を含む組成物は、マクロファージを含む、末梢血単核細胞(PBMC)、及びヒトヘパトーマ細胞株、例えばHuh7.5細胞、をはじめとする(しかし、これらに限定されない)様々な細胞タイプにおいて、細胞コレステロールレベルを低下させることができる。
【0059】
場合によっては、前記細胞は、その複製をコレステロールに依存するウイルスである場合があるウイルスに感染した細胞であることがある。そのような場合、前記脂質粒子によるコレステロール阻害は、ウイルス複製の阻害、ウイルス構築及び分泌の阻害、ウイルスエンベロープ内のコレステロールレベルが減少した非感染ウイルス粒子の生産、及び/又はウイルス侵入のための細胞表面上の細胞受容体の誤局在をもたらすことがある。一部の実施形態では、前記脂質粒子を含む組成物を、温血動物、例えば哺乳動物又は鳥、に投与することができる。多くの場合、被験体は、ヒトでありうる。一部の実施形態では、前記脂質粒子を含む組成物を、静脈内注射によって投与することができる。さらに一部の実施形態では、前記脂質粒子を含む組成物を、静脈内注射以外の非経口経路、例えば、腹腔内、皮下、皮内、表皮内、筋肉内又は経皮経路、によって投与することができる。さらに一部の実施形態では、前記脂質粒子を含む組成物を、粘膜表面、例えば、眼球、鼻腔内、肺、腸管、直腸及び尿管表面、経由で投与することができる。脂質含有組成物、例えばリポソーム組成物、についての投与経路は、例えば、A. S. Ulrich, Biophysical Aspects of Using Liposomes as Delivery Vehicles, Bioscience Reports, Volume 22, Issue 2, Apr 2002, 129 - 150に開示されている。
【0060】
一定の場合、脂質粒子の皮下注射が好ましいことがある。そのような投与は、マクロファージ内での脂質粒子の蓄積をもたらし、それによって、泡沫細胞の発生を予防すること及び従って早期のアテローム性動脈硬化症を予防することができるからである。以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、いかなる点においても、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0061】
実施例

ターゲット細胞の細胞内区画への水溶性小分子の効率的なキャリアであるリポソームで処置した細胞のプロテオーム解析により、処置が、細胞コレステロール生合成に関与する重要な酵素、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル(HMG)−CoAシンターゼ、のダウンレギュレーションをもたらすことを証明した。さらなる実験により、このダウンレギュレーションが、結果として、処置細胞内の(遊離しているものとエステル化されたもの両方の)コレステロールレベルを減少させることができることを証明した。早期のアテローム性動脈硬化症及び冠動脈疾患は、コレステロール沈着マクロファージである泡沫細胞の形成で始まるので、及びリポソームは、例えば皮下注射後、マクロファージ内に蓄積するため、リポソーム処置は、これらの疾患のための新しいターゲット指向型処置であるだろう。さらに、多くのウイルスが、正常細胞内コレステロールレベルから増加された細胞内コレステロールレベルに依存することは証明されているため、ターゲット細胞への抗ウイルス薬の効率的な送達に加えてのコレステロールレベル減少の併用は、新規の、さらに有効な抗ウイルス療法でありうる。
【0062】
1.リポソーム調製
1.1.リポソーム調製のための方法論:
記載するすべてのアッセイのためにリポソームを新たに調製した。脂質のクロロホルム溶液をガラス管に入れ、窒素ガス流下で溶媒を蒸発させた。別様に述べない限り、1×PBSバッファー中でボルテックスにより脂質皮膜を5mMの最終脂質濃度に水和した。得られた多層小胞を、Mini−Extruder装置を使用して、100nm 細孔径のポリカルボナートフィルターを通して、11回押し出した。0.22μmフィルターユニットを使用して、リポソームを濾過滅菌した。図2A〜Fは、これらの研究において使用した脂質:A.22:6 PE;B.22:6 PC;C.PI;D.PS;E.DOPE;F.CHEMS、を図示するものである。
【0063】
2.多不飽和ERリポソームで処置した細胞におけるHMG CoAシンターゼ(HMGCS)タンパク質の減少:
pH感受性リポソーム(すなわち、PE及びCHMES脂質を含むがPI及びPS脂質を含有しないリポソーム)とERリポソーム(すなわち、PE脂質とPI又はPS脂質の少なくとも一方とを含むリポソーム)の両方で5日間処置した細胞をプロテオーム解析のために使用して、細胞内のすべての検出可能タンパク質の増加又は減少を判定した。pH感受性リポソームとERターゲッティングリポソーム両方の処置の結果として減少した1つのタンパク質は、酵素HMG−CoAシンターゼ(HMGCS)であった。HMGCSは、アセチル−CoAからのアセトアセチルCoA経由でのHMG−CoAの合成であるメバロン酸−イソプレノイド経路における第一段階を触媒する。Huh7.5細胞の22:6 多不飽和(pu)ERリポソーム処置が、この酵素の類似の低減をもたらすかどうかを判定するために、様々な濃度のリポソームで細胞を4日間処置した後、全細胞を溶解し、ウエスタンブロットにより分析してHMGCSを特異的に同定した。
【0064】
2.1.ウエスタンブロットによりHMGCS及びアクチンを同定するための方法論:
培地中の1μMから100μMにわたる最終濃度のpuERリポソーム(22:6 PE:22:6 PC:PI:PS、1.5:1.5:1:1)での処置後、Huh7.5細胞を1×PBSで2回洗浄し、1×PBS/1% Triton X−100に再び浮遊させて1mg/mLの最終タンパク質濃度にした。BSA標準物質を使用するBradford Assay(Bio−Rad)によってタンパク質濃度を決定した。4〜12% ビス−トリスNuPAGEゲル(Invitrogen)にウエルあたり10μgのタンパク質を負荷することによりSDS−PAGEを行い、製造業者の推奨基準に従ってNuPAGE MES SDSバッファーを使用して分離した。タンパク質をニトロセルロース膜に移し、製造業者のプロトコルに従って、WesternBreeze(登録商標)抗ヤギAP化学発光キット(Invitrogen)を使用して1:100に希釈した一次ヤギ抗ヒトHMGCoAシンターゼ及び抗ヒトアクチン抗体(Santa Cruz)で免疫ブロットを行った。
【0065】
2.2.puERリポソーム処置でのHMGCSのダウンレギュレーション:
主として18:1 脂質(18:1 PE:18:1 PC:PI:PS、1.5:1.7:1.5:0.3)から構成されるERリポソームで証明されたように、22:6 ERリポソームでの処置も、用量依存様式でHMGCoA−シンターゼの量を減少させた(図3)。
図3は、抗アクチン抗体と抗HMGCS抗体の両方を使用した、22:6 ERリポソーム処置、JC−1感染Huh7.5細胞(MOI=5)のウエスタンブロット分析の結果を示すものである。細胞を様々な濃度の22:6 ERリポソームで4日間処置し、4日の時点で細胞を回収し、1% Triton X−100/1×PBSに再び浮遊させることにより分解した。細胞溶解産物をタンパク質含有量についてアッセイし、ウエルあたり30μgの全タンパク質を負荷し、その後、SDS−PAGEにより分離した。単回実験からの代表画像を示す。この実験を独立して3回繰り返した。
【0066】
3.puERリポソームでの細胞の処置は、細胞コレステロールレベルを減少させる:
リポソーム処置が、細胞内のHMGCSレベルを減少させることは証明されたので、これらの細胞内の遊離コレステロールレベルとエステル化コレステロールレベルの両方を判定するためのアッセイを行って、コレステロール生合成の阻害に関してこの阻害を定量した。全コレステロール及び遊離コレステロールレベルを22:6 ERリポソーム及び22:6 PEG−ERリポソーム処置Huh7.5細胞において定量した。全コレステロール値と遊離コレステロール値の差を算出することにより、エステル化コレステロールを決定した。
【0067】
3.1.細胞内の全及び遊離コレステロールレベルの定量方法:
処置後、Huh7.5細胞又はPBMCを1×PBSで2回洗浄し、1×PBS/1% Triton X−100に再び浮遊させて1mg/mLの最終タンパク質濃度にした。BSA標準物質を使用するBradford Assay(Bio−Rad)によってタンパク質濃度を決定した。10μg 全タンパク質に相当する細胞溶解産物を用いてコレステロールアッセイを行った。Amplex(登録商標)Redコレステロールアッセイキット(Invitrogen)をその製造業者のプロトコルに従って使用して、コレステロールエステラーゼの存在下又は不在下いずれかで、全コレステロール及び遊離コレステロールレベルをそれぞれ定量した。
【0068】
3.2.puER及びPEG化puERリポソームでの処置後のHuh7.5細胞とPBMCの両方における全及び遊離コレステロールレベルの定量:
22:6 ERリポソーム及び22:6 PEG−ERリポソーム処置Huh7.5細胞における全コレステロール及び遊離コレステロールレベルを定量した。全コレステロール値と遊離コレステロール値の差を算出することにより、エステル化コレステロールを決定した。結果は、全コレステロールレベルの用量依存的減少(図4)と、PEG−ERリポソーム処置が非PEG化組成物と同様の効果を有することを明示しており、これは、PEG化が、ERリポソームによるコレステロール生合成の阻害に影響を及ぼさないことを明示している。全コレステロールレベルは、50μM 22:6 ERリポソーム処置サンプルにおいて未処置の対照と比較して有意に低下される(56%、SD=2.7%)。この減少の大部分は、細胞内のエステル化コレステロールレベル(未処置値の75%、SD=1.1%)に比べて低い遊離コレステロールレベル(未処置値の47%、SD=2.5%)のためであり得る。
【0069】
図4は、22:6 PE:22:6 PC:PI:PS処置、JC1感染Huh7.5細胞(MOI=0.5)からの遊離コレステロールと全コレステロール両方の定量結果を示すものである。22:6 ERリポソームのPEG化バージョンを含めて、様々な濃度のリポソームで4日間、細胞を処置した。インキュベーション後、細胞を回収し、1% Triton(登録商標)X−100/1×PBSで分解し、10μgの各サンプルを、コレステロールエステラーゼの存在下と不在下の両方でのコレステロールアッセイに使用して、細胞内の全コレステロールと遊離コレステロールの両方をそれぞれ定量した。
【0070】
それら2つの値の差としてエステル化コレステロールを算出した。結果は、3回の独立した実験からの三重反復実験サンプルの平均(及びSD)を表す。データを未処置対照(100%)に対して提示し、この値からの有意差を(P<0.05)又は**(P<0.001)で示す。
【0071】
フィトヘムアグルチニン(PHA)刺激PBMCを22:6 ERリポソームと共にインキュベートし、4日のインキュベーション後、遊離コレステロールレベルとエステル化コレステロールレベルの両方を定量した。図5において証明されるように、未処置PBMCは、78%(SD=5.9%)遊離コレステロール及び22%(SD=3.8%)エステル化コレステロールを含有する。50μM 22:6 ERリポソームでの処置は、28%(SD=6.5%)の細胞コレステロールの総合的減少をもたらした。遊離コレステロールレベルは、有意に33%(SD=6.3%、p<0.001)低下されたが、この濃度では未処置対照と比較して有意なエステル化コレステロール減少はなかった。PEG化22:6 ERリポソームも遊離コレステロールレベルを29%(SD=3.9、p<0.001)減少させて、エステル化コレステロールレベルに対する有意な効果はなかった。
【0072】
図5は、22:6 ERリポソームで4日間処置したPHA刺激PBMCについての実験結果を証明するものである。その後、細胞を回収し、1% Triton(登録商標)X−100/1×PBSへ再び浮遊させて分解し、10μgの各サンプルを、コレステロールエステラーゼの存在下と不在下の両方でのコレステロールアッセイに使用して、細胞内の全コレステロールと遊離コレステロールの両方をそれぞれ定量した。それら2つの値の差としてエステル化コレステロールを算出した。データは、3回の独立した実験からの三重反復実験品の平均及びSDを表す。すべての値を未処置対照(100%)に対する百分率として示し、この値からの有意差を(P<0.05)又は**(P<0.001)で示す。
【0073】
4.細胞内コレステロール減少は、HCVに対して抗ウイルス効果を有する:
HCVは、効率的なウイルス複製を細胞コレステロールレベルに依存することが証明されている。加えて、ERリポソームは、細胞受容体についてのウイルスとの競合により、HCVに対して抗ウイルス性であることが証明されている。HCVに対するpuERリポソームとPEG化puERリポソームの複合抗ウイルス活性をモニターするために、リポソームの存在下で16日間(4ラウンドの4日処置)、ウイルスを培養した。細胞におけるウイルス感染、並びに処置全体にわたってのウイルス分泌及び分泌されたビリオンの感染力を定量することにより、抗ウイルス活性をモニターした。処置細胞内の細胞コレステロールレベルも測定した。
【0074】
4.1.HCV細胞培養並びにウイルス感染及び分泌の定量についての方法論:
JC−1 HCV細胞培養(HCVcc):記載するすべてのアッセイにおいて、既知感染力価(フォーカス形成単位(ffu)/mL)のウイルスストックを使用して天然Huh7.5細胞を感染させた。リポソーム処置アッセイのために、JC1感染Huh7.5細胞を、リポソームを伴う又は伴わない完全DMEM/10% FBS中、3×10細胞/ウエルの密度で、ウエルあたり2mLの総容量で6ウエルプレートに接種し、4日、インキュベートしておいた。インキュベーション後、HCV RNA定量のために上清を回収した。細胞を1×PBSで1回洗浄し、0.5% トリプシン/EDTA(Invtrogen)中で剥離させ、カウントし、さらなる分析に先立ち−20℃で凍結した。多継代でのアッセイのために、トリパンブルーで細胞をカウントした後、もう1ラウンドの上記の処置のために3×10細胞を6ウエルプレートに再接種した。
【0075】
RT−PCRによるHCVの定量:QIAGEN QIAamp(登録商標)Viral RNA Purificaiton Kitを製造業者のプロトコルに従って使用する、500μLの上清から抽出したウイルスRNAでの定量的PCRにより、ウイルス分泌分析を行った。Centricon(登録商標)濃縮装置(10,000KDa MWカットオフ、Millipore)を使用して、500μLの上清を、先ず、140μLに濃縮した。先ず、プライマーRC21(5’−CTCCCGGGGCACTCGCAAGC−3’)での逆転写酵素反応(TaqMan(登録商標)、ABI)を用いる単離されたRNAのcDNAへの変換、続いて、SyBr(登録商標)Green mix(QIAGEN)並びにHCV cDNAに対するRC21及びRC1プライマー(5’−ATGCCATGGCGTTAGTA−3’)両方を使用する実時間PCRにより、分泌されたウイルスRNAの定量を行った。HCV JC−1 cDNAの系列希釈物で構成された標準曲線に比べてHCV転写産物レベルを決定した。
【0076】
4.2.ウイルス感染力を測定するためのHCVコア免疫蛍光検査:
処置したJC−1感染Huh7.5細胞の上清中の分泌HCVビリオンの感染力を、天然Huh7.5細胞を感染させることによって判定した。天然Huh7.5細胞を48ウエルプレートに5×10細胞/ウエルの密度で接種し、一晩放置して付着させた後、培地の200μLのサンプル上清で置換した。上清を1時間放置して天然Huh7.5細胞を感染させた後、細胞を1×PBSで2回洗浄し、その後、2日間、500μL 完全DMEM/10% FCS中でインキュベートした。2日のインキュベーションの後、細胞を1×PBSで2回洗浄し、メタノール/アセトン(1:1、容量/容量)中で10分間固定し、1×PBS/0.1% Tween(登録商標)−20中で2回洗浄した。その後、3μg/mL マウス抗HCVコア抗体(Affinity BioReagents)を含有する1×PBS/0.1% Tween(登録商標)−20中で細胞を1時間インキュベートし、1×PBS/0.1% Tween(登録商標)−20で2回洗浄し、1×PBS/0.1% Tween(登録商標)−20/1:1000 FITC標識抗マウス二次抗体(Sigma)中で1時間インキュベートし、さらに2回洗浄し、DAPIで染色した。Nikon Eclipse TE2000−U顕微鏡で蛍光画像を撮影した。そのアッセイにおける細胞の総数(DAPI染色によって検出)で割ったHCVに感染した細胞の総数(抗HCV抗体によって検出)をカウントすることにより、感染細胞の百分率を算出する。
【0077】
4.3.puER及びPEG化puERリポソームでのHCVcc感染Huh7.5細胞の長期処置:
JC−1 HCVcc感染Huh7.5細胞を、16日の期間にわたってERリポソームで処置した(4ラウンドの処置)。4日ごとに、処置剤を含有する新たな培地に細胞を継代させ、細胞におけるウイルス感染、HCVcc分泌、及び分泌粒子の感染力を定量した。細胞をMOI=0.02で感染させ、細胞における感染レベルが(コアタンパク質免疫蛍光検査によって判定して)全細胞の30%〜40%に達したら、処置を開始した。図6aは、22:6 ERリポソームの異なる処置剤での16日の処置期間にわたっての細胞におけるHCVcc感染レベルを示すものである。すべてのリポソーム処置剤が、Huh7.5細胞内でのウイルス感染の拡大を防止し、及びたった4日の処置後に感染細胞の総数の用量依存的減少をもたらした。50μM 22:6 ERリポソームでの16日処置の後、培養物において感染細胞は観察されなかった。16日の処置全体にわたってのHCV分泌の結果(図6b)は、HCV分泌が未処置サンプルと比較して用量依存様式で減少される、類似したパターンを明示した。単一処置ラウンド後、22:6 ERリポソームは、50μMの濃度でHCV分泌を有意に27%(SD=11.3%)減少させることが証明され;50μM 22:6 PEG−ERリポソーム処置で類似した減少が観察された(23%、SD=6.6%)。50μM 22:6 ERリポソーム処置細胞からの第16日の上清は、RT−PCRにより定量したとき、未処置サンプルと比較して1%未満のHCV RNAを含有した。本発明は、いずれの理論による制限も受けないが、この結果は、この時点では感染が除去されていなかったかもしれない(RNAレベルは、バックグラウンドレベルより有意に高かった)が、リポソーム処置は、ウイルス分泌を二桁より大きく首尾よく減少させたことを示唆し得る。分泌ウイルス粒子の感染力を各継代で判定した。結果を図6cに提示する。ERリポソームの最大効果は、50μM 22:6 ERリポソームでの第16日の処置によりゼロに(又は一切の検出可能限界より下に)低減されたウイルス感染力に対するものであった。しかし、わずか単一処置ラウンドの後、50μM 22:6 ERリポソームは、HCV感染力を91%(SD=2.2%)減少させた。試験した最低濃度、1μM、の22:6 ERリポソームでさえ、感染力を52%(SD=5.3%)減少させた。これは、ERリポソームがウイルス感染力の強力な阻害剤であることを示唆している。
【0078】
処置期間全体にわたって、処置したHuh7.5細胞内の遊離コレステロール及びエステル化コレステロールのレベルも定量した(それぞれ、図6d及び6e)。興味深いことに、遊離コレステロールレベルは、わずか1ラウンドの処置後に低下されるが、このレベルは、後続のラウンドにおいてさらに有意には減少しない。その代り、第4日から第12日の処置においてエステル化コレステロールの用量依存的漸減が観察された。その第12日の時点で、すべての処置においてレベルがプラトーに達するようである。未処置細胞における遊離:エステル化コレステロールの標準比率は、これらのアッセイによって検出して、おおよそ2:1であり、及び50μM 22:6 ERリポソーム処置は、第4日の処置によってこの比を1.3:1ほどもの低さに低下させるが、すべての処置サンプルにおいて第12日までに2:1比に戻る。
【0079】
図6A−Eは、16日間の22:6 ERリポソームでのJC−1感染Huh7.5細胞(MOI=0.02)の処置についての実験結果を示すものである。(A)処置全体を通してのHuh7.5細胞におけるJC−1 HCVcc感染レベル。(B)JC−1 HCVcc分泌。(C)分泌されたJC−1 HCVcc粒子の感染力。(D)細胞内の遊離コレステロールレベル。(E)細胞内のエステル化コレステロール。データは、2回の独立した実験からの三重反復実験サンプルの平均を表す。高レベルのビリオン会合コレステロールがウイルス感染力に必要とされることは以前に立証されている(Aizaki, Morikawa et al. 2008)。従って、ERリポソーム処置の結果としてのウイルス感染力の減少は、分泌された粒子のウイルス膜内のコレステロール低減の結果であり得る。この可能性を試験するために、50μM 22:6 ERリポソーム処置、50μM 22:6 PEG−ERリポソーム処置及び未処置細胞から分泌されたHCVccを、ウイルス感染力を回復させる試みで遊離コレステロールと共にインキュベートした。
【0080】
4.4.HCVccと遊離コレステロールのインキュベーションについての方法論:
4日のインキュベーション期間の後、未処置及び50μM リポソーム処置Huh7.5細胞から分泌されたHCVcc粒子のRNAを、前に説明したようにRT−PCRによって定量した。
【0081】
完全DMEM/10% FBS中での希釈によりサンプルを最低濃度に正規化した。以前に記載されている(Aizaki, Morikawa et al. 2008)ように1時間、37℃で遊離コレステロール(Sigma)と共にHCVccをインキュベートし、上で説明したようなHCVコアタンパク質免疫蛍光感染度アッセイのためにそれを使用して天然Huh7.5細胞を感染させた。
【0082】
4.5.puER及びPEG化puERリポソーム処置HCVccと遊離コレステロールのインキュベーションに付随する結果:
50μM 22:6 ERリポソーム処置、50μM 22:6 PEG−ERリポソーム処置及び未処置細胞から分泌されたHCVccを、RT−PCRによって定量し、2×10 RNA コピー/mLに正規化した。正規化したウイルス上清を、以前に記載されている(Aizaki, Morikawa et al. 2008)ように1時間、37℃で、15μg/mL若しくは150μg/mLいずれかの最終濃度のコレステロールと共にプレインキュベートし又は未処置のまま放置し、その後、天然Huh7.5細胞を感染させるために使用した。
【0083】
図7に示すように、すべてのHCVcc上清は、外因性コレステロール共にプレインキュベートしたとき、感染力の増加を明示したが、15μg/mLのコレステロールの濃度で、ERリポソーム処置細胞からのHCVccは、未処置HCVccと比較してウイルス感染力のより大きな増加をもたらした(それぞれ、無コレステロール対照の282%及び138%)。ERリポソーム処置HCVccへの外因性コレステロールの添加は、ウイルス感染力の有意な百分率を回復させたが、それらのレベルは、未処置ビリオンで観察されたものに匹敵しなかった。これは、ERリポソーム処置細胞から分泌されるHCVcc粒子内にウイルス感染力を低減するさらなる欠陥がことによると存在する場合があることを示唆し得る。図7は、外因性コレステロール(15μg/mL及び150μg/mLの最終濃度のコレステロール)で処置した、22:6 ERリポソーム処置、PEG化22:6 ERリポソーム処置及び未処置JC−1 HCVccの感染力を示すものである。リポソームの存在下での4日のインキュベーションからウイルスサンプルを採取し、最低JC−1 RNA濃度(定量的PCRによって決定)に正規化し、37℃で1時間、コレステロールで前処置した。コレステロールの添加後、ウイルスサンプルを使用して天然Huh7.5細胞を感染させ、前に説明したようにこれらのサンプルの感染力を定量した。結果は、3回の独立した実験からの三重反復実験サンプルの平均(及びSD)を表す。
【0084】
細胞コレステロールレベルの減少が、細胞を感染させるHCVccの能力を低下させることも、研究により証明されている(Aizaki, Morikawa et al. 2008)。この効果は、原形質膜への局在(HCV感染に必要とされ得るプロセス(Kapadia, Barth et al. 2007))のためにCD81とSR−BI(HCVの2つの主要細胞受容体)の両方が脂質ラフトの形態でのコレステロールを必要すること(Soldaini, Wack et al. 2003;Cherukuri, Shoham et al. 2004; Rhainds, Bourgeois et al. 2004)に起因し得る可能性が高い。ERリポソームが、細胞コレステロールレベルを減少させることによってHCVcc感染を予防することができるかどうかを調査するために、天然Huh7.5細胞を22:6 ERリポソームと共に4日間、前処置した後、未処置JC−1 HCVccに感染させた。
【0085】
4.6.puER及びPEG化puERリポソームでのHuh7.5細胞の前処置及びHCVccでの感染に付随する結果:
図8は、ERリポソーム前処置が、天然細胞を感染させるHCVccの能力の用量依存的減少を生じさせる結果となることを確証するものであり;最大効果は、50μM 22:6 ERリポソーム処置で見られ、ウイルス感染力が89%(SD=1.9%)減少された。図8は、JC−1 HCVccでの感染(MOI=0.5)前に4日間、22:6 ERリポソームで処置した未感染Huh7.5細胞についての実験の結果を示すものである。前に説明したようにウイルス感染力を定量した。結果は、3回の独立した実験からの三重反復実験サンプルの平均(及びSD)を表す。データを未処置対照(100%)に対して提示し、この値からの有意差を(P<0.05)又は**(P<0.001)で示す。
【0086】
5.細胞内コレステロール減少はHIVに対する抗ウイルス効果を有する:
HIVが、適正な構築及び感染力をそれぞれ細胞コレステロール(脂質ラフト)及びウイルス会合コレステロールに依存することも証明されている。ERリポソームがHIV−1抗ウイルス物質として作用できるかどうかを調査するために、PBMCを3つのHIV−1初代分離株(LAI、93UG067、及び93RW024)にTCID50=100で感染させ、感染後4日間、puER及びPEG化puERリポソームでの処置を続けた。HIV分泌及び感染力をp24 ELISAにより細胞上清から定量した。
【0087】
5.1.puER及びPEG化puERリポソームでの処置後にHIV分泌及び感染力を定量するための方法論:
HIV−1初代分離株細胞培養:細胞を感染させるために、4×10PHA活性化PBMC及び100 TCID50(組織培養感染用量50%)の初代分離株ストックを96ウエルプレートの各ウエルに添加した。16時間のオーバーナイトインキュベーション後、細胞を完全RPMI培地で3回洗浄し、リポソームを伴う又は伴わない完全RPMI/IL2に再び浮遊させた。第5日に、細胞から分泌されたHIVビリオンを含有する上清を回収し、それぞれについてのp24濃度をp24捕捉ELISAによって定量した。
【0088】
定量的p24ELISA:p24分析前にHIVサンプルを1% Empigen(容量/容量)で不活性化した。抗p24 D7320抗体(Aalto Bioreagents、英国ダブリン)を使用してp24を定量するためのELISAを行って処置済上清からp24を捕捉し、抗p24二次抗体[BC1071−AP(Aalto Bioreagents)]をその製造業者のプロトコルに従って使用して検出した。AMPAK(商標)ELISAキット(Dako、英国イーリー)をその製造業者のプロトコルに従って使用して、アルカリホスファターゼ活性を測定した。組換えp24タンパク質(Aalto Bioreagents)を使用してサンプルを標準化した。
【0089】
HIV感染力アッセイ:リポソームで処置したPBMCから分泌されたHIVビリオンの感染力を、リポソーム処置細胞から分泌されたHIVビリオンを含有する上清を使用して判定した。すべての上清を完全RPMI/IL2中10ng/mLの最終p24濃度に希釈し、5ng/mLの最終p24濃度のために、100μLを、同じく100μLの培地中の、4×10PHA活性化PBMCに添加し、一晩、インキュベートしておいた。翌日、細胞を、説明したように洗浄し、200μLの新たなRPMI/IL2に再び浮遊させ、4日間、インキュベートしておき、その後、上清を回収し、捕捉ELISAによってp24含有量についてアッセイした。
【0090】
5.2.puER及びPEG化puERリポソームでのHIV−1感染PBMCの処置に付随する結果:
4日の処置後にp24 ELISAにより細胞上清からHIV分泌を定量した。結果は、HIV分泌と分泌粒子の感染力の両方に関して用量依存的減少を明示した(それぞれ、図9a及び9b)。HCVccで証明されたように、抗ウイルス活性についての主要メカニズムは、感染性ビリオンの形成を減少させることによるようであり得る:50μM 22:6 ERリポソーム処置で分泌HIVの感染力の50%(SD=4.6%)減少が観察されたのに対して、ウイルス分泌は22%(SD=4.6%)しか減少されなかった。
【0091】
図9Aは、22:6 ERリポソームでの4日の処置中のHIV−1の3つの遺伝的に異なる初代分離株(LAI、93UG067、及び93RW024)の平均分泌を示すものである。捕捉ELISAを使用してHIV−1 p24マトリックスタンパク質を定量することにより、HIV−1分泌を測定した。図9Bは、22:6 ERリポソーム処置PBMCから分泌されたHIV−1の感染力を示すものである。分泌されたビリオンの感染力を、その上清を使用して天然PBMCを感染させること、その後、p24ELISAを使用して感染後の分泌をモニターすることによって判定した。データは、3回の独立した実験の三重反復実験品の平均及びSDを表す。すべての値を未処置対照(100%)に対しての百分率として示し、この値からの有意差を(P<0.05)又は**(P<0.001)で示す。
【0092】
6.多不飽和ERリポソームは、細胞表面リポタンパク質受容体への結合についてHCVccと競合する:
低密度リポタンパク質受容体(LDLr)は、VLDL由来リポタンパク質粒子のカルトリン媒介エンドサイトーシスにより、コレステロールが細胞に侵入する主要経路を制御することができる、膜糖タンパク質である。LDLrはまた、HCV粒子がリポタンパク質と会合する、及び培養細胞によるウイルス粒子の取込みがLDLrの発現と相関するという発見に基づき、候補HCV受容体である。リポソームが、細胞への取込みにLDLrを用いるかどうかを見るために、Huh7細胞におけるLDLrの発現をアップ及びダウンレギュレートすることが証明されている薬物(それぞれ、スクアレスタチン及び25−ヒドロキシコレステロール)を使用して、JC−1 HCVcc感染の存在下でHuh7.5細胞へのERリポソーム取込みに対する一切の効果を観察した。
【0093】
6.1.Huh7.5細胞におけるLDLr発現をアップ及びダウンレギュレートする薬物の存在下でリポソーム取込みをモニターするための方法論:
米国特許公開第20090252785号に記載されているようにリポソームを調製し、1%(全モル)のrh−PEを、細胞へのそれらの取込みをモニターするために含めた。JC−1感染(MOI=0.5)又は未感染Huh7.5細胞を、2mLの完全DMEM/10% FCS培地中、3×10 細胞/ウエルの密度で、6ウエルプレートに接種した。無血清完全DMEM中で24時間、細胞を1μm及び10μm スクアレスタチン(SQ、Sigma)又は25−ヒドロキシコレステロール(25−HC、Sigma)で前処置した又はしなかった。24時間のプレインキュベーション後、rh標識リポソームを50μMの最終脂質濃度まで添加し、さらに24時間、インキュベートしておいた。インキュベーション時間の後、細胞を1×PBSで2回洗浄し、剥離させ、カウントし、200μL 1×PBS/1% Triton(登録商標)X−100に再び浮遊させ、その後、96ウエルプレートに移して分光蛍光計でλex=550nm、λem=590nmで読み取った。
【0094】
6.2.スクアレスタチン及び25−ヒドロキシコレステロールの存在下でのHuh7.5細胞へのリポソーム取込みの結果:
SQ又は25HC(両方について10μM及び1μMの最終濃度)いずれかの存在下で24時間細胞を培養した後、ローダミン標識22:6 ERリポソームを24時間にわたって添加した。10μM 25−HCでの細胞の処置は、リポソーム取込みの69%(SD=4.9%)減少をもたらしたのに対して、10μm SQは、リポソーム取込みを117%(SD=10.7%)に有意に増加させた。これは、Huh7.5細胞へのERリポソームの取込みについてのLDLrに対する依存性を明示している(図10)。
【0095】
図10は、無血清完全DMEM中で24時間、リポタンパク質受容体の発現をアップレギュレート又はダウンレギュレートするために使用した薬物(それぞれ、SQ及び25−HC)の存在下でインキュベートした未感染Huh7.5細胞についての実験の結果を示すものである。その後、脂質二重層に関して1% rh−PEで標識した22:6 ERリポソーム(50μMの最終脂質濃度)を細胞に添加し、さらに24時間、インキュベートしておいた。その後、細胞を回収し、カウントし、rh−PE蛍光をλex=550nm、λem=590nmで測定した。すべてのデータは、3回の独立した実験からの三重反復実験品の平均及びSDを表す。データを未処置対照(100%)に対して提示し、この値からの有意差を(P<0.05)又は**(P<0.001)で示す。
【0096】
HCVは、LDLrを細胞受容体として使用すると考えることができるので、ERリポソームもHCVccの感染力を、内在化に必要な細胞受容体について該ウイルスと直接競合することにより、低減することができる。この仮説を試験するために、22:6 ERリポソームをJC−1 HCVccと混合し、天然Huh7.5細胞を感染させるために使用した。結果は、ERリポソームが、5μMより高い脂質濃度を用いたとき、Huh7.5のHCVcc感染を50%より大きく中和することができることを明示している(図11)。最高効果は、50μMの最終濃度まで添加したERリポソームで見られ、ウイルス感染力を87%(SD=2.9%)減少させた。感染のために天然細胞に添加する前にウイルス及びリポソームを1時間、プレインキュベートして、この実験を繰り返した。結果は、提示したものと事実上同一である(データを示さない)。本発明は、いずれの理論による制限も受けないが、この結果は、リポソームがHCVcc粒子と直接相互作用するのではなく、細胞受容体とのみ相互作用することを示唆し得る。図11は、Huh7.5細胞の1時間の感染中のHCVccウイルスストックへの22:6 puERリポソームの添加についての実験の結果を示すものである。リポソームをウイルスストックに様々な濃度で添加し、天然Huh7.5細胞を感染させるために使用した。HCVコアタンパク質免疫蛍光アッセイを用いて2日のインキュベーション期間後の感染細胞数を定量することにより、HCVcc感染を中和するpuERリポソームの能力をモニターした。すべてのデータは、3回の独立した実験からの三重反復実験品の平均及びSDを表す。データを未処置対照(100%)に対して提示し、この値からの有意差を(P<0.05)又は**(P<0.001)で示す。
【0097】
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【0098】
上述したことは、特定の好ましい実施形態を指すが、本発明を限定しないことは理解されるだろう。通常の当業者は、開示した実施形態に様々な修飾を加えることができること、及びそのような修飾は本発明の範囲内であると解釈されることを認識するであろう。本明細書において引用した出版物、特許出願及び特許のすべては、それら全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表フリーテキスト】
【0099】
配列番号1:合成プライマー
配列番号2:合成プライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞侵入が可能な脂質粒子を含む組成物を、その必要がある被験体に投与することを含む、細胞コレステロールレベルを低下させる方法。
【請求項2】
前記脂質粒子が、少なくとも1つのホスファチジルエタノールアミン脂質又はその誘導体を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂質粒子が、コレステリルヘミスクシナート脂質をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記脂質粒子が、ホスファチジルコリン脂質、ホスファチジルイノシトール脂質又はホスファチジルセリン脂質の少なくとも1つをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記脂質粒子が、ホスファチジルコリン脂質、ホスファチジルイノシトール脂質及びホスファチジルセリン脂質を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記脂質粒子が、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン脂質を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記脂質粒子が、PEG−PE脂質を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記脂質粒子が、少なくとも1つの多不飽和脂質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記脂質粒子が、少なくとも1つの多不飽和PE脂質を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記不飽和PE脂質が、22:6 PE脂質である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記脂質粒子が、少なくとも1つの多不飽和PC脂質を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記多不飽和PE脂質が、22:6 PC脂質である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記脂質粒子が、22:6 PE脂質、22:6 PC脂質、PI脂質及びPS脂質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記脂質粒子が、18:1 PE脂質、18:1 PC脂質、PI脂質及びPS脂質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記被験体が、少なくとも1つの細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記投与前、前記少なくとも1つの細胞が、ウイルスに感染した少なくとも1つの細胞を含み、かつ、前記投与が、該感染細胞の感染能力を低下させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ウイルスが、HCVウイルスである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記被験体が、温血動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記被験体が、ヒトである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記投与が、細胞コレステロールレベル増加に起因する若しくは細胞コレステロールレベル増加を随伴する疾患又は状態の処置あるいは予防の少なくとも一方を生じさせる結果となる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記疾患又は状態が、アテローム性動脈硬化症又は冠動脈疾患である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記被験体が、免疫不全ウイルスに感染した被験体であり、かつ、前記アテローム性動脈硬化症又は冠動脈疾患が、免疫不全ウイルスに起因する又は関連づけられるものである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記投与が、複製を細胞内コレステロールに依存するウイルスに起因する若しくは関連づけられる疾患又は状態の処置あるいは予防を生じさせる結果となる、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記ウイルスが、単純ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、マウス白血病ウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオーマウイルス、エプスタイン・バーウイルス、セムリキ森林ウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、デングウイルス、麻疹ウイルス、HIV、C型肝炎ウイルス及びB型肝炎ウイルスから選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、前記脂質粒子内に封入された抗ウイルス薬をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記投与が、皮下的に行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記脂質粒子が、リポソームである、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2012−521981(P2012−521981A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501413(P2012−501413)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000873
【国際公開番号】WO2010/109330
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511232293)ザ チャンセラー,マスターズ アンド スカラーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ オックスフォード (2)
【Fターム(参考)】