コロナウイルス、核酸、蛋白質、ならびにワクチンの生成方法、薬剤および診断
新規コロナウイルス、HcoV−NL63は、ヒトを含む指向性とともにここで開示される。手段および方法が、(以前に)ウイルスに感染した対象を診断するために提供される。また、特にワクチン、薬剤、核酸および特異的結合要素が提供される。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はウイルス学および医薬の分野に関連する。さらに、特に本発明は新規コロナウイルスの同定と、種々の試料中のウイルスを分類し、疾患を診断する手段および方法、感染した対象またはその危険のある対象の治療のためのワクチンおよび薬剤を開発する手段および方法等の、ウイルスに関連する手段および方法とに関連する。
【0002】
コロナウイルスはコロナウイルス科の中の属であるが、大きなエンベロープを有するプラス鎖RNAウイルスである。ゲノムRNAは大きさが27〜32kbであり、キャップされ、ポリアデニル化されている。コロナウイルスの3種の血清学的に別個の群が同定された。各群内で、ウイルスは宿主域およびゲノム配列によって同定される。コロナウイルスは、マウス、ラット、ニワトリ、シチメンチョウ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ウシおよびヒトにおいて同定された(39,40)。大部分のコロナウイルスは1種の宿主のみを感染させ、胃腸炎を含む重度の疾患および気道疾患を引き起こす。ヒトにおいて、3種のコロナウイルスが詳細に研究されている。HCoV−229EおよびHCoV−OC43は60代半ばで同定されており、一般的な感冒を引き起こすことが知られている(13−17,19,41,42)。一般的な感冒の他に、HCoV−229Eウイルスはより悪い状態の気道疾患を罹患している幼児から単離されているので、HCoV−229Eは幼児においてさらに重度の疾患を引き起こし得ることが示唆されている(28)。第3の最近同定されたコロナウイルス、すなわちSARS−CoVは、生命に関わる肺炎を引き起こす可能性を有しており(43)、これまで同定された最も病原性を有するヒトコロナウイルスである。SARS−CoVはコロナウイルスの第4の群の第1の要素である、または該ウイルスは群2のコロナウイルスの異常型であることが示唆されている(27,44)。
【0003】
コロナウイルスのゲノムは4種の構造タンパク質、すなわち、スパイク蛋白質と、膜蛋白質と、エンベロープ蛋白質と、ヌクレオカプシド蛋白質とをコードする。数種の非構造蛋白質が複製および転写に関与しており、ゲノム(1Aおよび1B)の5’末端で、2つの長いオーバーラップするオープンリーディングフレーム(ORF)によってコードされる。これらの2つのORFはリボソームフレームシフトを経て結合される。ORF1Aおよび1Bにコードされるポリペプチドは、ウイルスコードプロテアーゼによって、翻訳後処理される。さらに、さらなる非構造蛋白質がSおよびE遺伝子間、またはMおよびN遺伝子間もしくはN遺伝子の下流でコードされる。これらの「補助非構造蛋白質遺伝子」の中には、ウイルス複製に必須ではないと分かっているものもある(45,46)。1Aおよび1Bのコロナウイルス遺伝子産物は、ゲノムRNAから翻訳されるが、残りのウイルス蛋白質はサブゲノムmRNA(sg mRNA)から翻訳され、それぞれ、ゲノムの5’部分由来の5’末端を有している。sg mRNAは、ほとんどがマイナス鎖合成に間に起こる可能性のある不連続的翻訳処理を経て得られる(47)。不連続的翻訳は、シス作用エレメント間の塩基対、すなわち転写関連配列(TRS)を必要とし、一方はゲノムの5’部分に位置する配列(始端部TRS)であり、他方はORFの上流に位置する配列(本体TRS)である(48)。
【0004】
ここに示す新規コロナウイルスは気管支梢炎に罹患している小児から単離された。本発明者らはウイルスを有する、気道疾患に罹患している7名以上のヒトを見つけたので、このウイルスによる感染は他に類のない事例ではない。さらに、本発明者らはここで完全なゲノム配列を示し、新規コロナウイルスのゲノム構造に関する臨床情報を提供する。
【0005】
今日、一連の原因不明のヒトの疾患が存在する。これらの多くに関して、ウイルス起源であることが示唆されており、新規ウイルスの継続的な調査の重要性を強調している22,23,24。新規ウイルスの調査の際に、重大な問題に遭遇する。第1にウイルスの中には体外で複製しない、少なくとも、ウイルス診断において一般的に使用される細胞中で複製しないものもある。第2に、体外で複製し、細胞変性効果(CPE)を引き起こすそれらのウイルスに関して、その後に行うウイルス同定法がうまくいかないことがある。既知のウイルスに対してもたらされる抗体は培養ウイルスを認識しないこともあり、ウイルス特異的PCR法は新規ウイルスゲノムを増幅しないこともある。本発明者らはcDNA増幅制限断片長多型性技術(cDNA−AFLP)に基づくウイルス発見のための方法を開発した。この技術を用いて、RNAまたはDNAは再生可能に増幅される。標的遺伝子の配列の予備的知識は必要ない1。一般的にcDNA−AFLP法が使用され、異なる遺伝子発現を観察する。しかしながら、本発明者らはこの方法を修正し、患者のリンパ漿/血清試料から直接でも、CPE陽性ウイルス培養物から間接的にでもウイルス配列を増幅可能にした(図1)。修正されたウイルス発見cDNA−AFLP(VIDISCA)法において、増幅の前のmRNA単離工程は、ウイルス核酸に対して選択的に豊富にする処理によって置き換えられる。遠心分離段階は精製に関連し、残余の細胞およびミトコンドリアを除去する。さらに、DNAse処理が使用され、分解した細胞由来の妨害染色体DNAおよび妨害ミトコンドリアDNAを除去する一方、ウイルス核酸がウイルス粒子内で保護される。最終的に、頻繁に切断する制限酵素を選択することによって、該方法は微調整され、大部分のウイルスが増幅される。
【0006】
2003年1月、7ヶ月の小児が鼻感冒、結膜炎および熱を伴って来院した。胸部X線は気管支梢炎の典型的特徴を示し、発病の5日後に鼻咽頭吸引物の試料が収集された(試料nr:NL63)。この試料についての、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)と、アデノウイルスと、インフルエンザAおよびBウイルスと、パラインフルエンザウイルス型1,2および3と、ライノウイルスと、エンテロウイルスと、HCoV−229Eと、HCoV−OC43とに対するあらゆる診断試験は陰性であった。ウイルスの培養物において、RSVと、アデノウイルスと、インフルエンザAおよびBウイルスと、パラインフルエンザウイルス型1,2および3とを検出するための免疫蛍光分析は依然として陰性であった。酸不安定性およびクロロホルム感受性試験は、ウイルスがエンベロープを有している可能性が大きく、ピコルナウイルス群の要素ではないことを示した。実際に、これは新規コロナウイルスであった。本発明において、本発明者らは新規ヒトコロナウイルスの詳細な説明を示す。コロナウイルスは、およそ27〜31kbの、非常に長く分節していない単一鎖の(+)センスRNAによって特徴付けられる。これはどの既知のRNAウイルスの中でも最も長いゲノムである。該ゲノムは、5’メチル化キャップおよび3’ポリ−Aを有しており、mRNAとしてそのまま機能する。これまで、3種のヒトコロナウイルスのみが特徴付けられており、したがって第4のヒトコロナウイルスの特徴を分類することによって、ヒトコロナウイルス間の差違に関する興味深い情報が提供される。新規ウイルスは群1のコロナウイルスの要素であり、HCoV−229Eに最も関連しているが、その差違は顕著である。類似点は、ヌクレオチドレベルで85%より大きくなく、HCoV−229Eの4Aおよび4B遺伝子の位置で唯1つのORFがHCoV−NL63(ORF3)に存在し、HCoV−NL63のS遺伝子の5’領域は537個のヌクレオチドのフレーム挿入点において他とは異なるものを含んでいる。レセプタの結合が蛋白質のN末端部分に対して位置付けられているので挿入点にコードされる179個のアミノ酸はレセプタ結合に関与している可能性が大きい。スパイク蛋白質のN末端におけるこの特異的な部分は、細胞培養物中のウイルスの広範な宿主域を明らかにすることもある。HCoV−229Eが狭い宿主域を有する細胞培養物中で扱い難い場合、HCoV−NL63はサル腎臓細胞において効果的に複製される。HCoV−NL63の他に、SARS−CoVも、サル腎臓細胞(SARS−CoVに対するVero−E6細胞およびNCI−H292細胞(21))で複製可能である。しかしながら、予測スパイク遺伝子を比較することによって、両ウイルスによって共有され体外のウイルスの一般的な宿主域を明確にする蛋白質領域は同定されない。また、HCoV−NL63のS遺伝子における挿入点はSARSのS遺伝子において存在しなかった。または、他のウイルス蛋白質がウイルスの細胞指向性に関与することもある。しかしながら、本発明者らは、HCoV−229EよりもSARS−CoV対して、蛋白質レベルで、より類似しているHCoV−NL63のいずれの遺伝子も同定していない。
【0007】
HCoV−229EとHCoV−NL63との間の、すなわちS遺伝子における挿入点と改変非構造補助蛋白質遺伝子との間の2つの重要な差違は、ブタコロナウイルスPRCoVとTGEVとの間で注目される差違に匹敵するものである。これらの2種のブタウイルスは抗原的および遺伝学的に関連しているが、これらの病原性は非常に異なる。TGEVは新生ブタにおいて、高い死亡率で重症の下痢を引き起こす。PRCoVは腸組織においてほとんど複製せず、呼吸組織に特異的指向性を有するのに対して、それは小さい腸において腸細胞を複製し、破壊する。TGEVとPRCoVとの間のS,3Aおよび3B遺伝子におけるゲノムの差違は、HCoV−NL63とHCoV−229Eとの間の差違に匹敵する。HCoV−NL63のようにTEGVは672〜681ntにわたるS遺伝子の5’部分のフレーム挿入点において他とは異なる(53)。さらに、TGEVにおいて正常な補助蛋白質遺伝子3Aおよび3Bは、PRCoVにおいて突然変異または不活性であることが多い。ヒトコロナウイルスに対するこれらのデータから推定して、HCoV−NL63はHCoV−229Eと比較してより病原性のヒトウイルスである可能性があることが推測される。しかしながら、これを支持する疫学データはない。本発明者らのデータに基づくと、HCoV−NL63およびHCoV−229Eはおそらく、同じ病原性を共有しているようである。一般的な感冒ウイルスHCoV−229Eは幼児においてさらに重症疾患を引き起こす可能性があり(28)、HCoV−NL63が幼児および免疫障害患者においてのみ呼吸器疾患を引き起こしていることを示唆する本発明者らのデータに匹敵する。
【0008】
今日まで、ウイルス性病原体はヒトにおける呼吸器疾患の症例の大部分において同定されておらず(平均して20%59)、本発明者らのデータはこれらの症例の一部においてHCoV−NL63が関与していることを示唆している。HCoV−NL63が呼吸器疾患に罹患している患者において検出される頻度は、2003年1月の時点で5%以下であった。ウイルスは2003年の春または夏に収集されたいずれの試料においても検出されず、主に冬期に蔓延する傾向にあるヒトコロナウイルスの疫学と一致する(15)。本発明者らの診断PCRのためのプライマは1B遺伝子に位置し、ゲノムRNAは鋳型として用いられる。ヌクレオカプシド遺伝子または3’UTRにおいてアニーリングするプライマを用いることによって、PCRにおいて、より多くの鋳型が与えられる。なぜなら、ゲノムRNAの他に、感染細胞中のあらゆるsg mRNAも、増幅のための鋳型であるからである。HCoV−NL63に対して陽性であると判った人の人数は、HCoV−NL63を有している人の正確な人数を過小評価している可能性もある。
【0009】
新規に発見されたコロナウイルス(HCoV−NL63と表される)は特徴付けられ、配列決定された。典型HCoV−NL63の配列は図19に与えられ、その一部が表3に与えられる。したがって、1つの特徴において、本発明は単離および/または組換え核酸を提供し、図19および/または表3に示される配列、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含む。ウイルスHCoV−NL63は、典型によって特徴付けられる。しかしながら、多くの自然変異体が、たとえば図16に示されるように、ORF1a領域における多型に対して存在する。このような自然変異体の存在は、たとえば、ゲノムを複製するポリメラーゼによる誤りの導入を経た頻繁な突然変異を受けるRNAウイルスにとって通常のことである。したがって、僅かに相違する核酸配列を有するHCoV−NL63ウイルスもまた本発明によって提供される。このようなウイルスは典型核酸配列を有する核酸の誘導体であるとみなされる。変異体は必ずしも自然変異体でなくてもよい。当然組換え手段を経た変異体を生成することも可能である。たとえば、ウイルスの大部分が、特定のアミノ酸に対するトリプレット遺伝子コードにおける余分量を使用するヌクレオチド置換によって変更され得る。したがって、コードされた蛋白質のアミノ酸配列は変更されない。しかしながら、アミノ酸の変更でさえ、一般的に、ウイルスの複製およびコード能力に影響を与えることなく導入可能である。たとえば、保守的アミノ酸置換は許容されることが多い。典型ウイルスにおける変更は、ウイルスの複製能力を変更することなく、核酸配列の70%まで可能である。したがって、一実施形態において、本発明は、単離および/または組換え核酸を提供し、典型HCoV−NL63の核酸に対して少なくとも70%相同である。しかしながら、大部分の生存可能な変異体は、典型HCoV−NL63に従う核酸に少なくとも95%相同であり、さらに好ましくは少なくとも99パーセント相同である。UTR領域における異種コロナウイルス間の相同性は通常高く、この理由により、本出願における相同性はUTR領域外の領域、好ましくは蛋白質コード領域において測定される。したがって、本発明はHCoV−NL63の誘導体を提供し、図20,図21,図22,図23または表3に示される少なくとも1つの蛋白質コード領域において(核酸レベルで)少なくとも95%の相同性および好ましくは少なくとも99%の相同性を含む。ウイルスの核酸またはその一部の核酸は複製され、プローブとして使用され、試料中のウイルスを検出する。したがって、本発明はさらに単離および/または組換え核酸を提供し、典型ウイルスの核酸の100個の連続したヌクレオチドの伸張部または前記100個の連続したヌクレオチドに対して少なくとも95%および好ましくは少なくとも99%相同である領域を含む(UTR領域外で核酸レベルで測定される場合)。100の連続したヌクレオチドの伸張部は、本発明のウイルスの機能的部分とみなされる。さらに、バクテリアベクタが提供され、HCoV−NL63またはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸を含む。さらに、前記バクテリアベクタを含むバクテリアが提供される。HCoV−NL63の配列またはその一部が使用され、HCoV−NL63に特異的であり、したがってHCoV−NL63核酸を特異的に複製可能なプライマを生成する。同様に厳しい条件下でHCoV−NL63核酸に特異的にハイブリッド形成するプローブが生成される。したがって、本発明はさらにHCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体の核酸に特異的にハイブリッド形成可能なプライマおよび/またはプローブを提供する。好ましくは、前記プライマまたはプローブは厳しい条件下で前記核酸にハイブリッド形成可能である。特に好ましい実施形態において、前記プライマおよび/またはプローブは表3,表7,表10または図16〜図18に示される配列を含む。
【0010】
典型ウイルスの核酸は種々の蛋白質およびポリ蛋白質をコードする。これらの蛋白質はたとえばウイルスを生成するまたは(ポリ)蛋白質をコードする核酸で形質転換される細胞中で発現される。したがって、本発明はさらに単離および/または組換え蛋白様分子を提供し、図20,図21,図22,図23または表3に示されるような配列、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含む。蛋白質の多くの種々の変異体は、必ずしも量においてではなく質において同じ機能を有し、上述のように、天然に存在し、人工的に生成されることが可能であり、したがって、本発明はさらに上述の蛋白様分子に少なくとも70%相同である単離および/または組換え蛋白様分子を提供する。このような相同の蛋白質は典型によってコードされる蛋白質の誘導体とみなされる。好ましくは、誘導体蛋白質は、典型HCoV−NL63によってコードされる蛋白質と少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%の相同性を含む。典型ウイルスによってコードされる蛋白様分子の断片および一部が生成され、したがって、このような部分もまた、本発明によって提供される。好ましい実施形態において、単離および/または組換え蛋白様分子が提供され、典型ウイルスによってコードされる蛋白様分子の少なくとも30個の連続したアミノ酸の伸張部を含む。典型ウイルスによってコードされる蛋白質は遺伝子コードの余分量を使用して種々の異なる核酸配列によってコードされる。したがって、本発明はさらに図20,図21,図22,図23または表3に示される蛋白質をコードする核酸を提供する。HCoV−NL63ウイルスは複製され、体外で細胞株を培養するのに用いる。ウイルスはこのような培養物から収集されることが可能であり、種々の異なる用途に用いられ、対象における免疫応答の発生を含むがこれに限定されない。したがって、本発明はさらに単離または組換えウイルスを提供し、HCoV−NL63核酸配列またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含む。さらに、単離または組換えウイルスが提供され、図20,図21,図22,図23または表3に示される蛋白様分子、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含む。HCoV−NL6に感染した対象は多くの種々の臨床症状および/または無症状を示す。したがって、さらにHCoV−NL63関連疾患を誘導可能な、単離または組換えウイルスまたはその、機能的部分、誘導体または類似体が提供される。
【0011】
ウイルスは、ウイルスの物質を特異的に結合できる特異的結合相手を生成するために使用される物質を含む。結合相手は免疫担当対象へのウイルスの注入によって生成され得る。免疫付与の結果として、対象から得られた血清は、一般的にウイルスまたはその、免疫原性部分、誘導体および/もしくは類似体に特異的な多くの種々の抗体を含むであろう。特異的結合相手は、当然、多くの種々の異なる技術を経て生成され得る。たとえば、ファージ提示技術によって生成され得る。特異的結合相手を生成する方法はこれに限定されない。結合は一般的にウイルスの蛋白様部分に特異的である。しかしながら、当然、結合はまた、ウイルス中に含まれる蛋白質のウイルス特異的翻訳後修飾に特異的でもある。したがって、本発明はさらに好ましくは典型HCoV−NL63の核酸によってコードされるものに対して、HCoV−NL63ウイルスの蛋白様分子を特異的に結合可能な単離結合分子を提供する。好ましくは、図20,図21,図22,図23または表3に示される蛋白様分子、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体である。結合分子は、好ましくは図19または表3の、HCoV−NL63の核酸配列を特異的に結合可能である。結合分子は好ましくは蛋白様分子である。しかしながら、他の結合分子もまた、本発明の範囲内である。たとえば、必ずしも量においてではなく質において蛋白質と同じ結合性質を有する蛋白質類または類似体を生成可能である。さらに、本発明に従う結合分子を生成する方法が提供され、該方法は、
HCoV−NL63の典型核酸によってコードされる、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、あるいは単離および/または組換え蛋白様分子を結合可能な分子を生成し、
前記ウイルスおよび/または前記蛋白様分子に特異的な蛋白様結合分子を選択することを含む。
【0012】
他のヒトコロナウイルスとHCoV−NL63との全体的な相同性はあまり高くない。したがって、HCoV−NL63ウイルスに特異的に結合可能な多くの種々の結合分子が生成され得る。このような結合分子が使用され、試料中のHCoV−NL63ウイルスを検出する。したがって本発明はさらに、HCoV−NL63ウイルスを特異的に結合可能な結合分子と免疫反応する単離または組換えウイルスを提供する。同様に、本発明は図20,図21,図22,図23または表3に示される、単離および/または組換え蛋白様分子、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体の使用を提供し、試料中の、HCoV−NL63ウイルスを特異的に結合可能な結合分子または前記ウイルスの、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を検出する。逆に、HCoV−NL63ウイルスが使用され、試料中の前記ウイルスを特異的に結合可能な分子を検出する。感受性標的細胞に対するHCoV−NL63ウイルスの結合は特異的受容体を経て起こる。この受容体は本発明の結合分子として使用され得る。好ましくは、結合分子は抗体またはその機能的同等物を含む。検出方法が使用され、対象中のHCoV−NL63関連疾患を診断する。したがって、試料中の、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を検出する方法が提供され、該方法は、HCoV−NL63特異的プライマおよび/またはプローブを用いて前記ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸をハイブリッド形成するおよび/または増幅することと、ハイブリッド形成したおよび/または増幅した生成物を検出することとを含む。さらにキット、好ましくは診断キットが提供され、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、本発明に従う結合分子、および/または、本発明に従うHCoV−NL63ウイルス特異的プライマ/プローブを含む。特に好ましい実施形態において、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸、あるいは図20,図21,図22,図23または表3に示される蛋白様分子を特異的に結合可能な分子、あるいはHCoV−NL63ウイルスおよび/または典型HCoV−NL63の、核酸または機能的部分、誘導体もしくは類似体に特異的にハイブリッド形成可能なプライマまたはプローブの使用が提供され、試料中のHCoV−NL63コロナウイルスを検出および/または同定する。好ましくは、前記核酸は表3に示される配列を含む。
【0013】
本発明はさらにワクチンを提供し、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を含む。さらにワクチンが提供され、図20,図21,図22,図23または表3に示される蛋白様分子、または、このような蛋白様分子の機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含む。本発明の蛋白様分子は、それ自身ワクチンとして、または蛋白質の一部として、またはその、誘導体もしくは類似体として提供されてもよい。適切な類似体とはHCoV−NL63ウイルス蛋白様分子またはその、機能的部分もしくは誘導体をコードする核酸である。核酸は本発明においても提供されるDNAワクチン方法において使用されてもよい。DNAワクチンのための担体として、ウイルスレプリコン中に発現可能なHCoV−NL63ウイルス核酸を組み込むことが適切であることが多く、標的細胞においてHCoV−NL63ウイルス核酸の複製を可能にし、これによりもたらされる免疫応答を促進する。このようなDNAワクチン方法に適している蛋白質をコードするHCoV−NL63ウイルスは、図22に示されるS蛋白質またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体である。好ましくは、S蛋白質の一部はHCoV−229Eウイルスと比較すると、フレーム挿入点において537の免疫原性部分を含む。好ましくは、前記部分は実質的に前記537挿入点を含む。537挿入点とは、図19の配列20472〜21009に対応する配列のことである。
【0014】
他の適切な候補はMおよびまたはN蛋白質,またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体である。一般的にワクチンは適切なアジュバントを含む。ワクチンにおける使用の他に、記載されるウイルスおよび/または蛋白様分子もまた使用され、対象中でHCoV−NL63ウイルス特異的免疫応答を発生および/または促進する。免疫応答は細胞性でも体液性でもあり得る。したがってさらに、単離T−細胞が提供され、HCoV−NL63ウイルスに特異的であるT細胞受容体、または典型HCoV−NL63によってコードされる蛋白様分子を含む。さらに、単離B細胞が提供され、HCoV−NL63ウイルスに特異的な抗体、またはHCoV−NL63ウイルスによってコードされる蛋白様分子を生成する。細胞株は複製された受容体または抗体を含む発現カセットを与えられるとすぐに、抗体またはT−細胞受容体が複製される。したがって、本発明はさらにこのような受容体または抗体を生成する細胞を提供する。このような細胞は、好ましくはCHO細胞等の、記載される蛋白質の大規模な生成に適している細胞である。
【0015】
HCoV−NL63ウイルスに対する受動免疫を対象に与えることももまた可能である。このために、対象は本発明のHCoV−NL63特異的結合分子を与えられる。このような免疫性が使用され、対象中にHCoV−NL63ウイルスでの(さらなる)感染のための障壁を与え、したがってさらにワクチンが提供され、本発明に従うHCoV−NL63ウイルス特異的結合分子を含む。好ましい実施形態において、受動免疫は、本発明のHCoV−NL63ウイルスを特異的に結合可能なヒトまたはヒト化抗体によって与えられる。障壁は完全でなくてもよい。結合分子の存在は少なくとも、対象における他の標的細胞へのウイルスの拡散を減少させる。受動免疫は予防として対象に投与されてもよく、ウイルスに曝された場合、少なくとも、対象におけるHCoV−NL63ウイルスの拡散を減少させる。または、受動免疫はウイルスに既に感染した対象に与えられてもよい。後者の場合、本発明の1以上のHCoV−NL63ウイルス特異的結合分子は薬剤として使用され、少なくとも、対象におけるウイルスの拡散を減少させ、したがって少なくとも部分的にウイルス感染に有効である。したがって本発明はさらに薬剤を提供し、本発明に従うHCoV−NL63ウイルス特異的結合分子を含む。さらに、本発明のウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、あるいは本発明の蛋白様分子、あるいは本発明のHCoV−NL63ウイルス特異的結合分子の使用を提供し、コロナウイルス属関連疾患に対するワクチンを調製する。さらにHCoV−NL63ウイルス関連疾患に罹患しているまたは罹患する危険のあるヒトを治療するための方法が提供され、本発明に従うワクチンまたは薬剤を前記ヒトに投与することを含む。さらに別の実施形態において、ヒトがHCoV−NL63関連疾患に罹患しているか否かを判断する方法が提供され、前記ヒトから試料を得ることと、前記試料中の、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を検出することとを含む。
【0016】
さらに別の実施形態において、単離細胞または組換え体もしくは細胞株が提供され、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を含む。好ましくは、前記細胞は霊長類細胞であり、好ましくはサル細胞である。好ましい実施形態において、前記細胞は本発明のHCoV−NL63ウイルスを複製する細胞である。特定の実施形態において、細胞は腎細胞である。該細胞が使用され、本発明のHCoV−NL63ウイルスを生成する、または病原性が低下するようにHCoV−NL63を弱毒化する。ウイルスの弱毒化は、記載される好ましい細胞株でのウイルスの継代培養の際に自然に起こる。弱毒化HCoV−NL63ウイルスはワクチンとして使用される。
【0017】
HCoV−NL63ウイルスはエンドプロテアーゼをコードする。典型HCoV−NL63ウイルス中のプロテアーゼに対する配列は図(21)に示されている。プロテアーゼはHCoV−NL63にコードされるポリ蛋白質の処理に関して重要である。プロテアーゼの作用はここでさらに記載されるウイルスプロテアーゼ阻害剤によって少なくとも部分的に阻害される。したがって、本発明はさらに、HCoV−NL63ウイルス複製を少なくとも部分的に阻害するための化合物を提供する。好ましい化合物は、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ(55)(たとえば、リバビリン(54)およびミコフェノール酸)、オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ阻害剤(たとえば、6−アザウリジンおよびピラゾフリン)、3CLプロテアーゼ阻害剤(56)(たとえば、VNSTLQ−AG7088エステル、下記参照)、キャップ−メチル化阻害剤(58)(カルボン酸アデノシン類似体、たとえば、Neoplanocin Aおよび3−deazaneoplancin A)、亜酸化窒素シンターゼ誘導化合物(たとえば、グリシルリジン)およびインターフェロン(57)の阻害剤である。これらのプロテアーゼ阻害剤が特に好ましい。配列VNSTLQは、3Clpro阻害剤VNSTLQ−AG7088(56)において使用されるSARS−3CLproのN末端蛋白質分解処理部位である。この化合物において、ヘキサペプチドVNSTLQは、SARS 3CLpro活性を阻害するビニル性エチルエステル(AG7088、下記構造式1を参照)のC末端に結合する。
【0018】
【化1】
【0019】
ヘキサペプチドVNSTLQはHCoV−NL63におけるYNSTLQに対応する。したがって、YNSTLQ−AG7088はHCoV−NL63 3CLpro相同分子種を阻害する。したがって、好ましい実施形態において、プロテアーゼ阻害剤はアミノ酸配列VNSTLQ、さらに好ましくはYNSTLQを含む。必ずしも量においてではなく質において同じ活性を含むこのようなプロテアーゼ阻害剤の類似体もまた本発明によって提供される。このような類似体は好ましい配列を有するペプチドを含む化合物を含み、ペプチドは修飾を含む。他の類似体は好ましいアミノ酸配列に似た蛋白様活性を有する化合物を含む。S−アデノシルメチオニン依存リボース2’−オルトメチルトランスフェラーゼは、ウイルスRNAの5’末端におけるキャップ構造(GpppNm)のメチル化に関与する。反応に対してメチル基のこの転位を阻害する抗ウイルス化合物(カルボン酸アデノシン類似体、たとえばNeoplanocin Aおよび3−deazaneoplancin A)は、ウイルス蛋白質の発現を抑制する。
【0020】
本発明はさらに、HCoV−NL63核酸によってコードされる蛋白様分子を提供し、前記蛋白様分子は3CLプロテアーゼまたはその機能的同等物である。機能的同等物は、1またはそれ以上の保守的アミノ酸置換を有する蛋白質分解活性部分および/または誘導体を含む。化合物が抗コロナウイルス活性、好ましくはコロナウイルスの抗蛋白質分解活性を有するか否かを判断するための方法は当技術分野で多く知られている。したがって、本発明はさらに、化合物が抗コロナウイルス複製活性を含むか否かを判断する方法を提供し、前記方法はHCoV−NL63ウイルスまたはHCoV−NL63の複製に関与するHCoV−NL63蛋白質、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を使用するという点で特徴付けられる。好ましくは、本発明は化合物がウイルスプロテアーゼを少なくとも部分的に阻害可能か否かを判断する方法を提供し、前記プロテアーゼがHCoV−NL63の3CLプロテアーゼまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体であるという点で特徴付けられる。3CL阻害性に関して試験される好ましい化合物は3Clpro切断部位のN末端に位置するヘキサペプチドである。3Cl蛋白質分解活性を少なくとも部分的に阻害するのに有効な化合物が、HCoV−NL63ウイルス感染に罹患しているまたは罹患する危険のあるヒトの治療のための薬剤の調製に使用される。
【0021】
1以上の好ましい抗コロナウイルス複製化合物が、HCoV−NL63ウイルス感染に罹患しているまたは罹患する危険のある対象を治療するための薬剤として使用される。したがって本発明はさらに、コロナウイルス感染に罹患しているヒトまたは罹患する危険のあるヒトの治療のための薬剤を提供し、前記コロナウイルスはHCoV−NL63典型ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体の核酸配列を含む。
【0022】
本発明において、複数の種々の組換えウイルスが、HCoV−NL63ウイルス核酸を骨格として使用して生成される。このような複製能力のあるまたは複製欠陥の組換えウイルスは、たとえば、遺伝子運搬担体として使用されることが可能である。他方、HCoV−NL63ウイルスの一部は細胞に遺伝物質を運搬するための他の手段に基づく遺伝子運搬担体において使用される。したがって、本発明はさらに、遺伝子運搬担体を提供し、HCoV−NL63ウイルス、好ましくは典型ウイルスの核酸の少なくとも一部を含む。好ましくはHCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体の蛋白質をコードする核酸を含む。本発明はまた、キメラコロナウイルスを示し、少なくとも2つのコロナウイルスに由来する核酸を含み、前記部分の少なくとも1つはHCoV−NL63ウイルスに由来する。前記HCoV−NL63ウイルス由来部分は好ましくは蛋白質コード領域の少なくとも50個のヌクレオチドを含む。さらに好ましくは前記HCoV−NL63由来部分は図19に示される配列またはその機能的誘導体の少なくとも500、さらに好ましくは1000個のヌクレオチドを含む。好ましい実施形態において、本発明はキメラコロナウイルスを提供し、図19に示される配列の少なくとも1000個のヌクレオチドおよび別のコロナウイルスの少なくとも1000個のヌクレオチドを含み、前記後者の1000個のヌクレオチドは図19に示される配列と5%以上配列が相違する配列を含む。多くのHCoV−NL63ウイルス断片の配列は表3に示されている。広域のゲノムRNAにおける断片の位置は図5に示されている。したがって、本発明は1つの特徴において、単離または組換えウイルスを提供し、表3に示される核酸配列または前記ウイルスの、機能的部分、誘導体もしくは類似体を含む。同定典型断片を用いて、さらにゲノムの配列を決定することが可能である。ゲノム上を歩行するプライマによってこれをなす1つの方法。プライマは配列が既知である領域に向けられており、このプライマが使用され、未知の隣接領域の配列を決定する。次のプライマが新たに同定された配列に対して生成され、さらなる領域が配列決定される。この手順はウイルスの全配列が解明されるまで繰り返される。ウイルスの出典として、オランダ、アムステルダム、アムステルダム大学、学術医学センター、ヒトレトロウイルス学科のC. van der Hoek博士に問い合わせてもよい。
【0023】
決定された核酸配列の整列によって、検出された配列に使用されるリーディングフレームが明らかになった。したがって本発明はさらに単離または組換えウイルスを提供し、(表3)に示されるアミノ酸配列または前記ウイルスの、機能的部分、誘導体もしくは類似体を含む。特定のアミノ酸配列は使用されたコドンに依存する種々の核酸から生成され得る。したがって、本発明はさらに(表3)に示されるアミノ酸配列をコードする核酸を提供する。さらに単離または組換えウイルスが提供され、(表3)に示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列または前記ウイルスの、機能的部分、誘導体もしくは類似体を含む。
【0024】
多くの他の種類のウイルスのように、コロナウイルスは、対象の個体群を経たウイルスの拡散の際におよび/または生体外で培養している間に、複数の自然および選択された突然変異体を得る。さらに人工的な変異体は、認識された対応物を天然に有しておらず、ウイルス性および/または疾患を引き起こすウイルスの性質を変更することなく、典型ウイルスの配列またはその誘導体に導入され得る。新規に発見された亜型の典型を特徴付けたことによって、同じ亜型に属するこのウイルス群に手掛かりが与えられる。したがって、本発明はさらに単離または組換えウイルスを提供し、表3に示される配列に対しておよそ80%相同である、または表3に示されるアミノ酸配列に対して80%相同である核酸配列を含む。好ましくは、相同性は少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0025】
それぞれの典型断片はウイルス配列のデータベースと比較され、特に高い相同性を有する対象データが表5および表6に述べられている。比較される断片は現在既知のいずれのコロナウイルスとも広範囲の相同性を有していない。したがって本発明は単離および/または組換えウイルスを提供し、表3に示される163−2のアミノ酸配列に対して89%以上相同であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、前記相同性は少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0026】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される163−4のアミノ酸配列に対して60%以上相同であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、前記相同性は少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%である。
【0027】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される163−9の核酸配列に対して85%以上相同である核酸配列を含む。好ましくは、前記相同性は少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%である。
【0028】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される163−10のアミノ酸配列に対して94%以上相同であるアミノ酸配列を含む。好ましくは前記相同性は、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0029】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される163−11のアミノ酸配列に対して50%以上相同であるアミノ酸配列を含む。好ましくは前記相同性は、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0030】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される163−14のアミノ酸配列に対して87%以上相同であるアミノ酸配列を含む。好ましくは前記相同性は、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0031】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される163−15のアミノ酸配列に対して83%以上相同であるアミノ酸配列を含む。好ましくは前記相同性は、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0032】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される163−18のアミノ酸配列に対して78%以上相同であるアミノ酸配列を含む。好ましくは前記相同性は、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0033】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される核酸配列に対して50%以上相同である核酸配列を含む。好ましくは前記相同性は、少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0034】
本発明はまた、単離および/または組換えHCoV−NL63ウイルスの機能的部分、誘導体および/または類似体を提供する。ウイルスの一部は膜組織含有部分、ヌクレオカプシド含有部分、蛋白様断片および/または核酸含有部分であってもよい。該部分の機能性は、該部分に対して選ばれる用途によって異なる。たとえば、該ウイルスの一部は免疫化の目的のために使用されてもよい。この実施形態において、機能性は、必ずしも量においてではなく質において完全なウイルスと同様の免疫原性を含む。ウイルスの別の使用はウイルスの感染性である。たとえば、生体外(または生体内)での培養に関して、この実施形態において、機能性は必ずしも量においてではなく質において同様の感染性を含む。ウイルスに対して多くの種々の使用が存在するため、多くの他の機能性が定義されてもよく、限定されない実施例はキメラウイルスの生成(すなわち、1以上の他の(コロナ)ウイルス)を用いて)、およびワクチン化および/または遺伝子治療目的のウイルスベクタの生成である。このようなウイルスおよび/またはベクタもまた、HCoV−NL63の機能的部分を含み、したがってまた、本発明に含まれる。本発明のウイルスの機能的誘導体は、前記化合物の性質が必ずしも量においてではなく質において本質的に同じであるように変更されたウイルスとして定義される。誘導体は、たとえば(好ましくは“ウォッブル”に基づく)ヌクレオチド置換を経て、(保守的)アミノ酸置換、それに続く修飾を経て、等の多くの方法で提供され得る。
【0035】
ウイルスの類似化合物もまた当技術分野の方法を使用して生成され得る。たとえば、キメラウイルスまたはキメラ蛋白質を有するHCoV−NL63ウイルスが生成される。たとえばHCoV−NL63は、HCoV−NL63表面蛋白質の少なくとも一部および非HCoV−NL63免疫原性部分を含む細胞表面関連融合蛋白質を生成することによって、さらに免疫原性になり得る。このようなキメラ蛋白質を含むHCoV−NL63ウイルスが使用され、たとえばワクチン化目的のために、宿主において向上した免疫応答を誘導する。
【0036】
ここで使用されるように、「本発明のウイルス」という用語はまた、前記ウイルスの機能的部分、誘導体および/または類似体を含むことを意味している。
【0037】
コロナウイルスの3種のグループはヒトおよび家畜の種々の疾患と関連し、胃腸炎および上下気道疾患を含む。ヒトコロナウイルスHCoV−229EおよびHCoV−OC43は軽い疾患(一般的な感冒)に関連するが、さらに重症の疾患が子供16において、非常に低い罹患率ではあるが観察される。複数のコロナウイルスは動物において重症の疾患を引き起こし、SARS−CoVがヒトにおいて重症の疾患を引き起こすコロナウイルスの第1例である。しかしながら、ヒトにおける呼吸器疾患の症例の実質的部分は診断が下されていないことは強調されるべきである。たとえば、気管支梢炎を伴って入院しているカナダの子供における呼吸器ウイルスの最近の調査では、約20%の患者においてウイルス性病原体が明らかにされていない17。本発明者らが、気管支梢炎を伴った子供において新規コロナウイルスを同定したという事実は、HCoV−NL63が病原性呼吸器系ウイルスであることを示している。
【0038】
HCoV−NL63が、感染した子供に気管支梢炎を引き起こし得る病原性呼吸器系ウイルスであることを考慮すると、なぜHCoV−NL63が以前に細胞培養によって認められなかったのかという興味深い疑問が残る。本発明者らは、該ウイルスが、ルーチン診断設定において使用されることが多い細胞である、サル腎細胞(tMKまたはLLC−MK2細胞)において培養され得ることを発見し、したがって、SARS−CoVに似たHCoV−NL63が、病原体保有動物からヒトの個体群に新規に導入された、またはこれは最近宿主細胞域を拡大したヒトウイルスであるということが推測される。明らかにHCoV−NL63感染の有病率を調査することは重要であり、HCoV−NL63診断RT−PCRを用いて、気道疾患を伴う患者からの試料をスクリーニングすることは、この問題の解明に役立つであろう。
【0039】
コロナウイルスは狭い宿主域の細胞培養において一般的に扱い難いため、新規ヒトコロナウイルスはtMK細胞およびLLC−MK2細胞から得られたということは注目すべきことである。しかしながら、SARS−CoVもHCoV−NL63もサル腎細胞(SARS−CoVに対するベロ−E6細胞およびNCI−H292細胞)中で効率的に複製するようである。最近記載されたSARS−CoVのゲノムは複数の他にない特徴を有しており、おそらく生物学的に重要ないくつかの特有のオープンリーディングフレームを含んでいる15,18。したがって本発明者らはHCoV−NL63の完全なゲノム配列を分析し、これらのウイルスの拡大した宿主細胞域および向上した病原性を決定し得る、SARS−CoVとの類似性および差違をスクリーニングするであろう。
【0040】
HCoV−NL63は感染した対象における特定の表現型に関連する。表現型は気管支梢炎、鼻感冒、結膜炎および熱を包含し得る、および表現型はさらに他の呼吸器系の問題および下痢を包含することもある。したがって、一実施形態において、本発明はさらに(上述の1以上の相同性を有する)本発明の単離およびまたは組換えウイルスを提供し、前記ウイルスまたは、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体は、さらに、対象中にHCoV−NL63関連疾患または症状を引き起こす能力を含む。別の実施形態において、本発明は単離および/または組換えウイルスを提供し、さらに、第3のサル腎細胞(tMK;カニクイザル37)において、および/またはサル細胞株LLC−MK2(ECCAC85062804,ATCC CCL−7)への継代の際に、CPEを引き起こす性質を含む。好ましい実施形態において、前記ウイルスはベロ−細胞においてCPEを生成しない(ATCC CRL−1586)34。
【0041】
本発明はさらに表3に示される核酸、および表3に示されるアミノ酸配列、またはこのような核酸および/またはアミノ酸配列の、機能的部分および/もしくは同等物を提供する。前記核酸の機能的同等物は必ずしも量においてではなく質において、前記核酸(またはその一部)と同じハイブリッド形成性を含む。本発明のアミノ酸配列の機能的同等物は必ずしも量においてではなく質において、前記アミノ酸配列(またはその一部)と同じ免疫原性を含む。本発明の核酸の一部は少なくとも15個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも20、さらに好ましくは少なくとも30個のヌクレオチドを含む。アミノ酸配列の一部は互いにペプチド結合している少なくとも5個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも8、さらに好ましくは少なくとも12、さらに好ましくは少なくとも16個のアミノ酸を含む。好ましい実施形態において、前記ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸は少なくとも半連続しており、さらに好ましくは、前記ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸は連続している。本発明の核酸および/またはアミノ酸配列またはその部分の同等物は、本発明の核酸および/またはアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性、本発明の核酸および/またはアミノ酸配列およびその一部に対して、好ましくは少なくとも90%の相同性、さらに好ましくは95%およびさらに好ましくは少なくとも99%の相同性を含む。本発明はさらにプライマおよび/またはプローブを提供し、本発明に従うウイルスまたは、機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸に特異的にハイブリッド形成可能であり、好ましくはプライマおよび/またはプローブは表3に示される核酸配列に特異的にハイブリッド形成可能である。さらに好ましくは、プライマおよび/またはプローブは、厳しい条件下で前記核酸にハイブリッド形成可能である。特に好ましい実施形態において、プライマおよび/またプローブが提供され、表7に示される配列を含む。
【0042】
当該技術分野において、特異的結合要素が、同定された核酸、脂質および/またはアミノ酸配列に対して生成され得る多くの方法が知られている。このような特異的結合要素はいかなる性質であってもよいが、一般的に核酸および/または蛋白様性質である。したがって、本発明はさらに、本発明に従う、ウイルス、核酸および/またはアミノ酸、またはその機能的部分、誘導体もしくは類似体を特異的に結合可能な単離分子を提供する。前記単離分子はまた、特異的結合要素と呼ばれる。好ましくは前記特異的結合要素は、表3に示される核酸配列の少なくとも一部、および/または表3に示されるアミノ酸配列の少なくとも一部を特異的に結合可能である。好ましい実施形態において、前記結合要素は、蛋白様分子である。好ましくは、抗体またはその、機能的部分、誘導体および/または類似体である。特異的結合要素は好ましくは、無関係の対照と比較して、HCoV−NL63に対する有意なよりよい結合性質を含む。しかしながら、たとえば抗体に関して、HCoV−NL63において特異的に認識されるエピトープはまた、限られた数の他の分子にも存在することが可能である。したがって、結合要素の結合は特異的なこともあるが、HCoV−NL63に存在する分子以外の分子を認識することもある。この交叉反応は特異的結合と分けられるべきであり、抗体の一般的性質である。交叉反応は通常、特定の目的の適切な特異的結合要素の選択を妨げない。たとえば、肝細胞中の蛋白質もまた認識する特異的結合要素は、肝細胞の存在下でさえ多くの用途において使用され、細胞中の位置等の追加情報が、識別するために使用されることが多い。
【0043】
本発明の抗体の1つの供給源は、本発明のウイルスをスクリーニングした感染対象の血液である。さらに、一種が前記対象から得られるB細胞を特徴付けることもある。適切のB細胞が培養され、抗体が収集されてもよい。または、抗体は当該B細胞から配列決定され、人工的に生成されてもよい。本発明の別の抗体供給源は実験動物の免疫付与または人工ライブラリを使用してウイルスの精製フラクションをスクリーニングすることによって生成され得る。抗体の機能的部分は、必ずしも量においてではなく、質において、実質的に前記抗体と同じ性質を有している。前記機能的部分は好ましくはHCoV−NL63の抗原を特異的に結合可能である。しかしながら、前記機能的部分は前記全抗体と比較して、異なる程度にこのような抗原を結合することもある。抗体の機能的部分または誘導体はFAB断片または単一鎖抗体を含む。抗体の類似体は、たとえばキメラ抗体を含む。ここで使用されるように、「抗体」という文言はまた、前記抗体の機能的部分、誘導体および/または類似体を含むということである。
【0044】
本発明の抗体が得られると、その結合能等の所望の性質が改良され得る。これは、たとえばAla走査および/または置換ネットマッピング法(replacement net mapping
method)によってなされ得る。これらの方法を用いて、当初のアミノ酸配列に基づいて多くの種々の蛋白様分子が生成されるが、各分子は少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。前記アミノ酸残基は、アラニン(Ala走査)、または他の任意のアミノ酸残基(
replacement net mapping)のいずれによっても置換され得る。各変異体は続いて前記所望の性質についてスクリーニングされる。生成されたデータが使用され、改良蛋白様分子が設計される。
【0045】
特異的結合要素が生成される多くの種々の方法がある。好ましい実施形態において、本発明は、特異的蛋白様結合要素を生成するための方法を提供し、本発明に従うウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体に結合可能な蛋白様分子を生成し、前記ウイルスに特異的な蛋白様分子を選択することを含む。必要であれば、該方法は前記ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体に結合可能な蛋白様分子の収集物を生成し、前記ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を特異的に結合可能な1以上の結合要素を前記収集物から選択する。
【0046】
任意の特異的結合要素は、本発明のHCoV−NL63ウイルスについて特有である。したがって、このような結合要素と特異的に反応するウイルスはHCoV−NL63ウイルスであり、このように本発明によって提供される。したがって、本発明は、本発明の特異的結合要素、好ましくは蛋白様結合要素と免疫反応する単離および/または組換えウイルスを提供する。本発明はさらに単離HCoV−NL63ウイルスを含む物質の組成、および/または実質的にHCoV−NL63に対応するウイルスを提供する。「実質的にHCoV−NL63に対応する」ウイルスという文言は、上述のようにHCoV−NL63鎖に同一であるか、または前記HCoV−NL63鎖と比較して1以上の変異を含むHCoV−NL63ウイルスのことを言及している。これらの変異は、自然変異または人工変異を含んでもよい。前記変異は当然、必ずしも全ての特異的結合要素ではないが、HCoV−NL63の特異的結合要素を用いる検出を可能にするはずである。前記変異は抗体相互作用、増幅および/またはハイブリッド形成等の一般的検出方法を使用して、変異体を検出することを可能にする。
【0047】
特異的結合要素が、たとえば診断目的に重要な分子であることを考慮すると、本発明はさらに本発明のウイルスまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体の使用を提供し、試料中の前記ウイルスを特異的に結合可能な分子を検出する。さらに、本発明によって定義される、ウイルスまたは、機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸および/またはアミノ酸配列の使用が提供され、試料中の前記ウイルスまたは機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を特異的に結合可能な分子を検出する。好ましくは、前記核酸および/またはアミノ酸配列は、表3に示される配列またはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を含む。好ましくは、前記部分は、少なくとも30個のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸長であり、前記部分は好ましくは、95%以上、好ましくは99%以上の配列同一性を含む。好ましい特徴において、前記特異的結合要素は前記ウイルスの特異的配位子および/または抗体を含む。
【0048】
さらに、本発明に従うプライマおよび/またはプローブ、本発明の特異的結合要素、ならびに/あるいは、本発明に従う、ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸が提供され、試料中のHCoV−NL63コロナウイルスまたはその一部を検出および/または同定する。好ましくは、前記核酸は表3に示される配列を含む。
【0049】
HCoV−NL63ウイルスが使用され、対象中において免疫応答を発生させる。これは、たとえばワクチン接種戦略において有用である。したがって、本発明はさらにワクチンまたは薬剤として使用するためのHCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を提供する。該薬剤が使用されるのは、一般的に、対象が既にウイルスに感染しており、免疫原が使用されウイルスに対する免疫応答を増化する場合である。本発明はさらに、ワクチンまたは薬剤としての使用のための、本発明の特異的結合要素を提供する。当該使用は、特異的結合要素が蛋白様分子、好ましくは抗体またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含む。このような抗体は受動免疫を提供するが、それに付着するプロテアーゼ等の活性要素を有してもよい。該薬剤の使用は、さらに、HCoV−NL63ウイルスに感染した対象が特異的結合要素で治療される場合であってもよい。
【0050】
ワクチンは種々の方法で生成されてもよい。1つの方法は、たとえば記載されるサル細胞株でHCoV−NL63ウイルスを培養し、培養物から得られた不活性ウイルスを使用することである。または、弱毒化ウイルスは、不活性または生ワクチンのいずれとしても使用され得る。コロナウイルスワクチンの生成のための方法が適応され、本発明のHCoV−NL63のためのワクチンを生成する。したがって、本発明はさらにHCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体の使用を提供し、コロナウイルス属関連疾患に対するワクチンを調製する。さらに本発明は本発明の特異的結合要素の使用を提供し、コロナウイルス属関連疾患に対するワクチンまたは薬剤を調製する。さらに、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、本発明の特異的結合要素、本発明の核酸あるいは本発明のプライマおよび/またはプローブが提供され、コロナウイルス属関連疾患を診断する。好ましくは、前記コロナウイルス属関連疾患はHCoV−NL63コロナウイルス関連疾患を含む。
【0051】
さらに、ワクチンが提供され、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、および/または、本発明の特異的結合要素を含む。さらに、薬剤が提供され、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、および/または、本発明の特異的結合要素を含む。好ましくは、前記ワクチンまたは薬剤が使用され、HCoV−NL63関連疾患を少なくとも部分的に予防するおよび/または治療する。
【0052】
本発明の重要な使用は診断ツールを生成し、対象がHCoV−NL63ウイルス感染に罹患しているか否かまたは対象がHCoV−NL63ウイルス感染に曝されているか否かを判断することである。多くの種々の診断上の利用が予想される。それらは一般的に、対象中に存在するまたは存在したウイルスの分類を可能にする要素を同定することを含む。HCoV−NL63のための1種の診断ツールは、種々の細胞株におけるウイルスの特異的拡散特性を使用する。それは記載される好ましいサル細胞株において複製するが、ベロ細胞においては複製されない。当該性質が使用され、他の既知のコロナウイルスからHCoV−NL63を識別する。したがって、1つの特徴において、本発明は診断キットを提供し、少なくとも1種の好ましいサル細胞株、好ましくは第3のサル腎細胞(tMK;カニクイザルまたはサル細胞株LLC−MK2)を含む。
【0053】
多くの最新の診断キットは、(ウイルスまたはウイルス感染細胞を検出するための)特異的結合要素、および/または、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、および/または、(診断される対象の血液成分中の抗体を検出するための)本発明のアミノ酸またはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を含む。多くの他の一般的に知られる診断キットは試料中のHCoV−NL63ウイルス特異的核酸の同定を利用している。このようなアッセイが実施される種々の方法があり、1つは試料中のHCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を検出する方法であり、本発明に従うプライマおよび/またはプローブを用いて前記ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸をハイブリッド形成および/または増幅することと、ハイブリッド形成および/または増幅された生成物を検出することとを含む。したがって、本発明はまた、診断キットを提供し、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、本発明に従う特異的結合要素、および/または、本発明に従うプライマ/プローブを提供する。
【0054】
さらにHCoV−NL63関連疾患に罹患しているまたは罹患する危険のあるヒトを治療するための方法が提供され、本発明に従うワクチンまたは薬剤を前記ヒトに投与することを含む。さらに、ヒトがHCoV−NL63関連疾患に罹患しているか否かを判断するための方法が提供され、前記ヒトからの試料を得ることと、本発明の方法および/または診断キットを用いて前記試料中のHCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を検出することとを含む。
【0055】
さらに、本発明に従うウイルスまたは機能的部分、誘導体および/もしくは類似体と、本発明に従う核酸とをコードする単離または組換え核酸が提供され、少なくとも、表3に示される配列の機能的部分を含む。さらに本発明に従う核酸によってコードされるアミノ酸配列および本発明に従うアミノ酸配列が提供され、少なくとも、表3に示される配列の機能的部分を含む。さらに本発明に従う方法によって得られる、HCoV−NL63を特異的に結合可能な蛋白様分子、および、ワクチンにおけるこのような蛋白様分子の使用またはHCoV−NL63検出のための診断方法が提供される。
【0056】
実施例
実施例1
ウイルス発見のためのcDNA−AFLP
本発明者らはcDNA−AFLP技術を修正し、血漿/血清試料から、またはCPE陽性培養上清からウイルス配列を増幅できるようにした(図1)。調整された方法においては、増幅前のmRNA単離段階は、ウイルス核酸を精製する処理に置き換えられる。残余の細胞およびミトコンドリアを除去するための遠心分離段階は、精製に重要である。さらに分解細胞由来の妨害染色体DNAおよび妨害ミトコンドリアDNAを取り除くには、DNAse処理単独で充分であり、最終的に頻繁に切断する制限酵素を選択することによって、該方法は充分調整され、大部分のウイルスが増幅される。このいわゆるウイルス発見cDNA−AFLP(VIDISCA)を用いて、本発明者らは肝炎Bウイルスに感染しているヒトおよび急性パルボB19に感染しているヒトのEDTA−血漿由来のウイルス核酸を増幅できた(結果は示されていない)。該技術もまた、陽性培養上清中のHIV−1を検出可能であり、RNAおよびDNAウイルス両方を同定する能力を示す(結果は示されていない)。
【0057】
残余の細胞を除去するために、110μlのウイルス培養上清をエッペンドルフ微小遠心(13500rpm)において最大速度で10分間沈降させた。100μlが未使用の試験管に移され、15μlのDNAseバッファおよび20ユニットのDNAseI(Ambion)を使用して、37℃で45分間DNAse処理された。DNAse処理が含まれ、分解細胞由来の染色体DNAを除去する。この900μlのL6溶解バッファおよび40μlのシリカ懸濁液が加えられ、Boom4に記載のように核酸が抽出された。ウイルス核酸は40μlのH2Oに溶出された。20μlの溶出液を用いて、逆転写が行われ、10mM トリスHClpH8.3と、50mM KClと、0.1% Triton X−100と、4.8mM MgCl2と、0.4mMの各dNTPとを含むバッファ中、2.5μgのランダム6量体(Amersham Bioscience)、200U MMLV−RT(In Vitrogen)を使用した。試料は37℃で90分間培養された。続いて、第2鎖DNA合成が行われ、0.25mM dNTPsそれぞれと、17.5mM MgCl2と、トリス−HClpH7.5中、26 U Sequenase II
(Amersham Bioscience)、7.5U RNAse H(Amersham Bioscience)を使用した。37℃90分間の培養の後、フェノール/クロロホルム抽出が行われ、エタノール沈殿が続いた。ペレットが30μlのH2Oに溶解された。cDNA−AFLPは、基本的に、いくつかの修正を加えたBachem1に記載のように行われた。dsDNAは製造業者のプロトコルに従って、HinP IおよびMseI制限酵素(New England Biolabs)を用いて分解された。分解の後、MseIアダプタおよびHinP Iアダプタ(以下参照)が5Uリガーゼ酵素(In Vitrogen)およびリガーゼバッファと共に加えられ、続いて37℃で2時間のさらなる培養が行われた。MseIアダプタおよびHinP Iアダプタは、MSEおよびHinP1アダプタ(表1)に対する先端鎖オリゴとMSEアダプタおよびHinP1アダプタに対する下端鎖オリゴとを混合することによって、前もって調製され、65℃で培養され、続いてリガースバッファの1:40希釈物の存在下で室温まで冷却した。
【0058】
第1PCRは、投入量として、10μlのライゲーション混合物と、2.5UのAmpliTaqポリメラーゼ(Perkin−Elmer)と、100ngのHinPI標準プライマと、100ngのMseI標準プライマとで行われた。PCR反応は5分95℃、20周期の1分95℃−1分55℃−2分72℃、10分72℃のデータに従って行われた。投入量として5μlの第1PCR生成物が、100ngのHinPI−Nプライマと、100ng MseI−N(1ヌクレオチドで拡張された標準プライマの配列)と、2U AmpliTaqポリメラーゼとを含む第2「選択的」増幅段階において使用された。選択的PCRが、「タッチダウンPCR」のデータに従って増幅された。すなわち10周期の60秒94℃−30秒65℃−1分72℃で増幅され、アニーリング温度は各サイクルで65℃から1℃に下げられ、続いて、23周期の30秒94℃−30秒56℃−1分72℃で増幅された。最後に、試料は10分72℃で培養された。PCR生成物は、4%Metaphor(登録商標)ゲル(Cambrex,Rockland,USA)で評価された。ゲルのバンドがかなり薄ければ、PCR生成物は、60μlのPCR生成物を使用して、真空乾燥によって濃縮された。製造業者のプロトコルに従ってQuiagenゲル精製キットを使用して、関心のあるPCR断片はゲルから切断され、DNAがゲルから溶離された。PCR生成物はpCR(登録商標)2.1−TOPOプラスミド(In Vitrogen)と、化学的に適格なOne Shot E.coli(In Vitrogen)とを使用して複製された。コロニーにおけるPCRが行われ、このPCR生成物が投入され、Big Dyeターミネータ ケミストリ(terminator chemistry)(Applied Biosystems)を使用して、挿入部分が配列決定された。逆転写段階は除かれ、HinPI分解およびアダプタ ライゲーションのみが行われ、第1PCRは20周期の代わりに35周期で行われ、それらの第1PCR断片はアガロースゲル電気泳動上で視覚化された。
【0059】
DNA配列決定および分析
プラスミドを含むコロナウイルス−PCR生成物はBigDyeTM Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems,Foster City,Calif.)を用いて配列決定され、−21 M13RPおよびT7プライマを使用した。反応混合物を配列決定する電気泳動はApplied Biosystems377自動シークエンサーを用いて行われ、製造業者のプロトコルに従った。Sequence Navigator(バージョン 1.01)およびAuto Assembler(バージョン 2.1)ソフトウェアパッケージ(ABI,California,USA)が使用され、全ての配列決定データを分析した。配列は、NCBIウェブページhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/blastのBLASTツールを使用して、Genbankデータベースにおける全ての配列と比較された。系統発生解析のために、配列がClustalXソフトウェアパッケージを使用して、以下の設定で整列された34。Gap Opening Penalties:10.00,Gap extention penalty 0.20,Delay divergent sequences switch 30%,transition weight 0.59。系統発生解析はMEGAプログラムの近隣結合法を使用して実施された(9)。ヌクレオチド距離マトリックスは、Kimuraの2パラメータ推定値またはp距離推定値のいずれか一方によって生成された(5)。ブートストラップ再サンプリング(500複製)が使用され、個々の枝上におおよその信用限界を置いた。
【0060】
完全なHCoV−NL63ゲノムのヌクレオチド配列の決定
HCoV−NL63ゲノムの既に配列決定されている領域に位置する、特異的プライマの組み合わせと、特許PALM法(WO0151661)を使用して、本発明者らは当該新規コロナウイルスに対する完全長ゲノム配列を複製および決定する過程にある。HCoV−NL63ゲノムの分析部分に位置する5’−オリゴヌクレオチドと、3’標識化ランダムプライマ(JZH2R)との組み合わせを使用して、さらなる断片が前記プロトコルと同様のネストRT−PCRプロトコルを使用して増幅された。
【0061】
SZ163の単離
2003年1月、鼻感冒、結膜炎および熱を伴った7ヶ月の子供が来院した。胸部X線は気管支梢炎の典型的特徴を示し、発病から4日後に、鼻咽頭吸引物が収集された(試料nr:HCoV−NL63)。アデノウイルスと、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)と、インフルエンザAおよびBと、パラインフルエンザ1,2および3と、ライノウイルスと、HCoV−229Eと、HCoV−OC43とに対する、当該試料についての通常使用されるあらゆる試験は陰性であった。続いて、臨床試料がヒト線維芽肺(HFL)細胞と、第3のサル腎細胞(tMK;カニクイザル)と、R−ヒーラ細胞とを含む種々の細胞に接種された。CPEはtMK細胞でのみ検出され、接種後8日に最初に観察された。CPEは、ウイルス感染した細胞における屈折の出現と共に拡散し、7日後に細胞分離された。さらに顕著なCPEがLLC−MK2細胞への継代の際に観察された。さらに、全体的な細胞円形化、適度な細胞増大が観察された。ヒト内皮肺細胞、HFL、横紋筋肉腫細胞およびベロ細胞におけるさらなる継代培養は、CPEに対して依然として陰性であった。培養物中のインフルエンザAおよびB、RSV、アデノウイルスまたはパラインフルエンザウイルス型1,2もしくは3を検出するための免疫蛍光アッセイは依然として陰性であった。
【0062】
続いて、感染LLC−MK2細胞の培養上清がVIDISCAによって分析された。対照として、本発明者らは非感染LLC−MK2細胞の上清を使用した。第2PCR増幅段階後、複数のDNA断片が試験試料中に存在したが、該対照中には存在しなかった。これらの断片は複製され、配列決定された。GenbankにおけるBlast検索は16断片中8断片が、最も高い相同性を有するコロナウイルス科のヒトコロナウイルス229Eに対して配列類似性を有していることが明らかとなった(表4および5)。
【0063】
レプリカーゼ1B領域の270nt断片の系統発生解析は、本発明者らがコロナウイルス群1の別個の新規要素を同定したことを示した。VIDISCA技術を用いて、163−2,163−4,163−9,163−10,163−11,163−14,163−15および163−18という名の8HCOV−163−特異的断片が単離され、複製され、配列決定され、Genbankからの関連配列を用いて整列された。使用された配列のGenbank登録番号は、MHV(マウス肝炎ウイルス):AF201929、HCoV−229E:AF304460、PEDV(ブタ伝染性下痢症ウイルス):AF353511、TGEV(伝染性胃腸炎ウイルス):AJ271965、SARS−CoV:AY278554、IBV(鳥類伝染性気管支炎ウイルス):NC_001451、BCoV(ウシコロナウイルス):NC_003045、FCoV(ネココロナウイルス):Y13921およびX80779、CCoV(イヌコロナウイルス):AB105373およびA22732、PRCoV(ブタ呼吸器コロナウイルス):M94097、FIPV(ネコ伝染性腹膜炎ウイルス):D32044である。HCoV−229E(AF304460)と比較されるHCoV−NL63断片の位置:レプリカーゼ1AB遺伝子:15155−15361,16049−16182,16190−16315,18444−18550,スパイク遺伝子:22124−22266、ヌクレオカプシド遺伝子:25667−25882および25887−25957、3’UTR:27052−27123。枝の長さは配列ごとの置換の数を示している。最も密接に関連した種の配列から同一性スコアが計算される(表5および表6)。
【0064】
また、推定アミノ酸配列が関連コロナ(様)ウイルスのオープンリーディングフレームにおける対応する領域に対して整列された(表6)。
【0065】
ヒトコロナウイルスはヒトにおける一般的な感冒の10〜30%を占めており7、呼吸器疾患を伴う子供においてコロナウイルスが見つかることは珍しいことではない。しかしながら、ウイルスHCoV−NL63がLLC−MK細胞から得られるということは印象的である。ヒトコロナウイルス229EおよびOC−43は、サル腎細胞において複製できないことが知られている。興味深いことに、SARSの原因である新たに同定されたヒトコロナウイルスもまた、サル腎細胞において複製可能である30。
【0066】
細胞培養物におけるHCoV−NL63の増殖
鼻咽頭吸引物は発症の4日後に収集された。試料は、アデノウイルスと、RSVと、インフルエンザAと、インフルエンザBと、パラインフルエンザ型1,2および3の存在するかについて、ウイルス性呼吸器キット(Bartels:Trinity Biotech plc,Wicklow Ireland)を用いて試験された。さらに、ライノウイルスと、メタ−肺炎ウイルス属と、HCoV−OC43およびHCoV−229Eとに対するPCR診断が行われた2,10。続いて、元の鼻咽頭吸引物が、HFL細胞、tMK細胞およびRHaLa細胞を含む種々の細胞培養物に接種された。試験管はローラドラム中で34℃に保たれ、3〜4日毎に観察された。維持培地は3〜4日毎に補給された。2種の異なる培地が実施された。ウシ胎児血清を含まないOptimem1(Gibco)がtMK細胞に対して使用され、3%ウシ胎児血清を含むMEM Hanks’/Earle’s培地(Gibco)が残りの細胞型に使用された。ウイルス培養物において、インフルエンザウイルスAおよびBと、RSVと、アデノウイルス(Imagen,DAKO)とに対する蛍光標識マウス抗体のプールを用いて直接染色が行われた。間接染色はマウス抗体(Chemicon,Brunschwig,Amsterdam Netherlands)を用いてパラインフルエンザウイルス型1,2または3に対して行われ、続いて標識ウサギ抗マウス抗体(Imagen,DAKO)を用いて染色が行われた。
【0067】
鼻咽頭標本におけるHCoV−NL63の検出方法
診断RT−PCRに対して、核酸がBoom法4によって、50μlウイルス上清または50μl懸濁鼻咽頭標本から抽出された。10ngの逆転写プライマrepSZ−RT(表7)が使用されたことを除いて、逆転写は上述のように行われた。RT混合物全体が、100ngのプライマrepSZ−1および100ngのプライマrepSZ−3を含む第1PCR混合物に加えられた。PCR反応は5分95℃、20周期の1分95℃−1分55℃−2分72℃、10分72℃のデータに従って行われた。ネストPCRは100ngのプライマrepSZ−2および100ngのプライマrepSZ−4を含む5μlの第1PCRを使用して開始された。第1PCRと同じデータの25周期PCRが行われた。10μlの第1および10μlのネストPCRがアガロースゲル電気泳動によって分析された(図2)。断片の複製および配列決定は、基本的に上述のように行われた。
【0068】
ポリクローナル抗体を培養する方法
HCoV−NL63表面蛋白(たとえば、S−糖蛋白質またはHE−糖蛋白質)内の適切な領域が選択され、適切なオリゴヌクレオチドおよびRT−PCRを用いて増幅された。相当する、精製されたウイルス抗原は、適切な宿主(たとえば、前記Yarrowia lipolytica38)における発現によって得られる。メスNZWウサギ(およそ4kg)は0.5〜5.0mgのウイルス蛋白質抗原調製品を与えられる。抗原は0.5mlのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.3)中で懸濁され、等体積の完全フロイントアジュバント(CFA)において乳化された。フロイントアジュバントは、既知のアジュバントシステムであり、該システムは少量の抗原が使用され、抗原の免疫原性が(おそらくであるが)未知であるこれらの実験における使用に適している。刊行されている使用のためのガイドラインに従い、該ガイドラインは、各部において注入を0.1mlまでに制限し、最初の免疫化投与量に関してCFAのみを使用する。この抗原調製(全量1ml)は、ウサギの首の後部の弛緩性皮膚に皮下注射される。この注射投与法は免疫学的に有効であり、片側面または両側面注射に関連する局部炎症の可能性を最小限にする(このような側面炎症は動物の移動性を低下させ得る)。3週間の安静状態の後、1mlの血液が試験出血のために耳動脈から取り出される。所望の抗体の力価が小さすぎると判断されると、抗体が増やされる。適切な抗体レベルのウサギは皮下的に、CFAに含まれる1.0mgの抗原を用いて促進される。促進された動物は2週間後に出血させられる、すなわち、15mlの血液が、赤外線灯を用いて血管を広げて、耳動脈から採取される。ウサギは市販の拘束手段の内に置かれ、全部で7回以下のキシラジンを用いて鎮静され、ウサギは、キシラジン/ケタミンを使用して麻酔に続いて心臓の穿刺によって放血させられた。
【0069】
ワクチン生成のための方法
サブユニットワクチン生成のために、HE,MおよびN蛋白質とおそらく組み合わされるS−糖蛋白質は適切な真核性宿主(たとえば、Y.lipolyticaまたはLLC−MK2細胞)において発現され、選択的に2つの小さな親和性タグ(たとえば、HisタグまたはStrepIIタグ)を使用して精製される。適切な精製の後、得られたウイルス蛋白質はサブユニットワクチンとして使用され得る。
【0070】
あるいは、HCoV−NL63ウイルスが適切な細胞株において上述のように増殖され、続いてWu11に記載のように処理され得る。簡潔に、ウイルスは20%ポリエチレングリコール6000を用いて培地から沈殿させられ、不連続な40〜65%スクロース変化率を経て、4時間80000×g、続いて、直線的な5〜40%CsCl変化率、120000×gで4時間、超遠心分離によって精製される。得られたウイルス調製物は、Blondel3に記載のように65℃で30分間加熱することによって不活性化され得る。
【0071】
光学バイオセンサにおける、固定化した配位子に結合する、S糖蛋白質または任意のHCOV−NL63ウイルス蛋白質の解析
結合反応は20℃で、わずかな修正をした、IAsys 2チャネル共鳴ミラーバイオセンサにおいて実行された(Affinity Sensors,Saxon Hill,Cambridge,United Kingdom)。平面ビオチン表面は、600arc sシグナルが、1ng結合蛋白質/mm2に対応し、製造業者の教授に従い、ストレプトアビジンを用いて誘導化された。対照は、ウイルス蛋白質はストレプトアビジン誘導ビオチン表面に結合しないということを示した(結果は示されていない)。ビオチン化抗体は平面ストレプトアビジン誘導表面に固定化され、その後PBSで洗浄された。バイオセンサキュベットの表面上の、固定化した配位子および結合したS−糖蛋白質の分布が共鳴走査によって調べられ、常にこれらの分子はセンサ表面上に均一に分布し、したがってミクロの状態で集合しないことが示された。結合アッセイが20±0.1℃で30μlのPBSの最終体積において実施された。ライゲート(ligate)がキュベットに対して、1μl〜5μlのPBS中に既知の濃度で追加され、14〜70nMのS−糖蛋白質の最終濃度を与えた。解離段階後、残余の結合したライゲートを除去し、固定した配位子を再生するために、キュベットは50μlの2M NaCl−10mMNa2HPO4,pH7.2で3回、50μlの20mM HClで3回洗浄した。データは、種々の量の固定した抗体(0.2,0.6および1.2ng/mm2)を用いて実行された実験からプールされた。konの計算のために、低濃度のライゲート(S−糖蛋白質)が使用されたが、koffの測定のために、より高濃度のライゲートが使用され(1μM)、再結合の影響を避けた。結合パラメータkonおよびkoffは結合反応の会合および解離段階からそれぞれ計算され、手段を提供する非線形曲線適合FastFitソフトウェア(Affinity Sensor)を使用した。解離定数(kd)は会合および解離速度定数と平衡付近で観測される結合の程度とから計算された。
【0072】
実施例2
方法
ウイルス単離
子供は、アムステルダムに住んでいたが、3日以来のコリザおよび結膜炎の症状を伴って病院に収容された。入院時、彼女は息切れしており、飲むことを拒絶した。患者の体温は39℃、呼吸数は96%の酸素飽和状態で50回呼吸/分であり、脈拍は177打/分であった。聴診の際、左右の持続性イクスピリウム(expirium)および終末呼気性喘鳴が見られた。胸部X線検査は気管支梢炎の典型的特徴を示した。子供は1日目にサルブタモールおよびイプラトロピウムを用い、続いて5日間、サルブタモールを用いて治療された。子供は外来で毎日みられ、症状は徐々に軽減した。鼻咽頭吸引物は発症5日後に収集された。試料は、RSVと、アデノウイルスと、インフルエンザAおよびBウイルスと、パラインフルエンザウイルス型1,2および3の存在についてウイルス呼吸器キット(Bartels:Trinity Biotech plc,Wicklow Ireland)を使用して試験された。さらに、ライノウイルスと、エンテロウイルスと、メタ−肺炎ウイルス属と、HCoV−OC43およびHCoV−229Eに対するPCR試験が行われた(2,10)。元の鼻咽頭吸引物は種々の細胞に接種された。培養物はローラドラム中34℃に保たれ、3〜4日毎に観察された。維持培地は3〜4日毎に補給された。2種の異なる培地が実施された。ウシ胎児血清を含まないOprimem1(In Vitrogen,Breda,The Netherlands)がtMK細胞に対して使用され、3%のウシ胎児血清を含むMEM Hanks’/Earle’s培地(In Vitrogen Breda,The Netherlands)が残余の細胞型に対して使用された。吸引物試料に感染した細胞培養物は培養の1週間後に呼吸器ウイルスの存在に関して染色された。直接染色がRSVと、インフルエンザAおよびBウイルス(Imagen,DakoCytomation Ltd,Cambridge,UK)とに対する蛍光標識マウス抗体のプールを用いて行われた。間接染色が、マウス抗体(Chemicon International,Temecula,California)を用いてアデノウイルスとパラインフルエンザウイルス型1,2または3とに対して行われ、FITC−標識ウサギ抗マウス抗体(Imagen,DakoCytomation Ltd,Cambridge,UK)を用いて次の染色が行われた。
【0073】
VIDISCA法
残余の細胞およびミトコンドリアを除去するために、110μlのウイルス培養物の上清が、エッペンドルフ微小遠心(13500rpm)において、最大速度で10分間沈降させられた。染色体DNAおよびミトコンドリアDNAを溶解細胞から除去するために、100μlが未使用の試験管に移され、37℃で45分間DNAseI(Ambion,Huntingdon,UK)を用いて処理された。核酸はBoomに記載のように抽出された(4)。逆転写反応がランダム6量体プライマ(Amersham Bioscience,Roosendaal,The Netherlands)およびMMLV−RT(In Vitrogen,Breda The Netherlands)を用いて行われ、一方、第2鎖DNA合成がSequenaseII(Amersham Bioscience,Roosendaal,The Netherlands)を用いて実施された。フェノール/クロロホルム抽出の後にエタノール精製が行われた。cDNA−AFLPが基本的に、いくつかの修正をしたBachem(1)に記載のように行われた。dsDNAはHinPIおよびMseI制限酵素を用いて分解された(New England Biolabs,Beverly,Massachusetts)。続いてMseI−およびHinPI−アンカ(下記)が、5Uリガーゼ酵素(In Vitrogen,Breda,The Netherlands)と共に提供されたリガーゼ中に37℃で2時間、加えられた。MseI−およびHinPI−アンカが先端鎖オリゴ(MseIアンカに対する5’−CTCGTAGACTGCGTACC−3’およびHinPIアンカに対する5’−GACGATGAGTCCTGAC−3’)を下端鎖オリゴ(MseIアンカに対する5’−TAGGTACGCATGC−3’およびHinPIアンカに対する5’−CGGTCAGGACTCAT−3’)と共に、リガーゼバッファ1:40希釈物中で混合することによって調製される。20周期のPCRは、10μlのライゲーション混合物と、100ngHinPI標準プライマ(5’−GACGATGAGTCCTGACCGC−3’)と、100ngのMseI標準プライマ(5’−CTCGTAGACTGCGTACCTAA−3’)とを用いて行われた。5μlのこのPCR生成物は、100ng HinPI−Nプライマおよび100ng MseI−N(「N」は標準プライマが1つのヌクレオチドG,A,TまたはCで拡張されることを示している)を用いた第2「選択的」増幅段階における投入物として使用された。増幅の選択的巡回は、「タッチダウンPCR」すなわち10周期の[60秒94℃−30秒65℃−1分72℃]で行われ、アニーリング温度は各周期1℃低下され、続いて23周期の[30秒94℃−30秒56℃−1分72℃]および1周期の10分72℃が行われた。PCR生成物は4%Metaphor(登録商標)アガロースゲル(Cambrex,Rockland,Maine)上で分析され、関心のある断片がBigDyeターミネータ試薬を用いて複製および配列決定された。電気泳動およびデータ収集がABI377機器上で行われた。
【0074】
cDNAライブラリ構築および全ゲノム配列決定
cDNAライブラリは、わずかな修正をしたMarra17に記載のように生成された。逆転写反応の間、ランダム6量体プライマのみが使用され、オリゴdT−プライマは使用されず、増幅されたcDNAはPCR2.1−TOPO TA複製ベクタ中に複製された。コロニーが採取され、BHI培地中に懸濁された。E.coli懸濁液は、増幅のためのT7およびM13RPを使用して、PCR増幅において投入物として使用された。続いて、PCR生成物がPCR−増幅において使用されたものと同じプライマとBigDyeターミネータ試薬とを用いて配列決定された。電気泳動およびデータ収集はABI377機器上で行われた。配列は、AutoAssembler DNAsequence Assembly ソフトウェア バージョン 2.0を用いて集められた。
【0075】
診断RT−PCR
492人から、総数600の呼吸器試料が2002年8月から2002年12までの間に収集された。物質の種類は、口腔/鼻咽頭吸引物から咽頭スワブ、気管支肺胞洗浄物、唾液に至った。試料は上下気道疾患に罹患しているヒトの定期的ウイルス診断スクリーニングのために収集された。100μlの試料がBoom抽出において使用された(4)。逆転写が、10ngを使用したMMLV−RT(In Vitrogen)または逆転写プライマ(repSZ−RT:5’−CCACTATAAC−3’)を用いて行われた。RT混合物全体が、100ngのプライマrepSZ−1(5’−GTGATGCATATGCTAATTTG−3’)および100ngのプライマrepSZ−3(5’−CTCTTGCAGGTATAATCCTA−3’)を含む第1PCR混合物に加えられた。PCR反応は、5分95℃、20周期の1分95℃−1分55℃−2分72℃、10分72℃のデータに従って行われた。ネストされたPCRは100ngのプライマrepSZ−2(5’−TTGGTAAACAAAAGATAACT−3’)および100ngのプライマrepSZ−4(5’−TCAATGCTATAAACAGTCAT−3’)と共に、5μlの第1PCRを使用して開始された。第1PCRと同じデータの25周期のPCRが行われた。10μlのPCR生成物がアガロースゲル電気泳動によって分析された。あらゆる陽性試料が配列決定され、試料中のHCoV−NL63の存在を確認した。
【0076】
配列分析
配列はNCBIウェブページhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/blastのBLASTツールを使用して、Genbankデータベース中のあらゆる配列と比較された。系統発生解析のために、配列は以下の設定でClustalXソフトウェアパッケージを使用して整列された。Gap Opening Penalties:10.00,Gap extention penalty 0.20,Delay divergent sequences switch 30%,transition weight 0.5(9)。系統発生解析は、1遺伝子内のあらゆる断片の情報を使用するMEGAプログラム(5)の近隣結合法を使用して実行された。ヌクレオチド距離マトリックスはKimuraの2パラメータ推定値またはp距離推定値のいずれか一方によって生成された(6)。ブートストラップ再サンプリング(500複製)が使用され、個々の枝上におおよその信用限界を置いた。
【0077】
結果
急性呼吸器疾患を伴う子供からのウイルスの単離
2003年1月、鼻感冒、結膜炎および熱を伴う7ヶ月の子供が来院した。胸部X線は気管支梢炎の典型的特徴を示し、発病から5日後に、鼻咽頭吸引物試料が収集された(試料 NL63)。呼吸器合胞体ウイルス(RSV)と、アデノウイルスと、インフルエンザAおよびBウイルスと、パラインフルエンザウイルス型1,2および3と、ライノウイルスと、エンテロウイルスと、HCoV−229Eと、HCoV−OC43とに対する診断試験は、依然として陰性であった。続いて、臨床試料はヒト胎児肺線維芽細胞(HFL)と、第3のサル腎細胞(tMK;カニクイザル)と、ヒーラ細胞とに接種された。CPEはtMK細胞でのみ検出され、接種後8日に最初に観察された。CPEはウイルス感染した細胞における屈折の出現と共に拡散し、7日後に細胞分離された。さらに顕著なCPEがサル腎細胞株LLC−MK2への継代の際に、全体的な細胞円形化および適度な細胞増大とともに観察された(図1)。HFL、横紋筋肉腫細胞およびベロ細胞におけるさらなる継代培養は、CPEに対して依然として陰性であった。培養物中のRSV、アデノウイルス、インフルエンザAおよびBウイルスまたはパラインフルエンザウイルス型1,2および3を検出するための免疫蛍光アッセイは依然として陰性であった。酸不安定性およびクロロホルム感受性試験は、ウイルスはおそらくエンベロープを有しておりピコルナウイルス群24の要素ではないということを示した。
【0078】
VIDISCA法によるウイルス発見
分子生物学ツールによる未知の病原体の同定は、標的配列が未知であり、ゲノム特異的PCR−プライマを設計することができないという問題に直面する。この問題を克服するために、本発明者らは、cDNA−AFLP技術4に基づくVIDISCA法を開発した。VIDISCAの利点は、制限酵素部位の存在は充分増幅を保証するので、配列の予備的知識が要求されないということである。投入試料は、血漿/血清または培養上清のいずれであってもよい。cDNA−AFLPは単離mRNAを用いて開始するのに対して、VIDISCA技術はウイルス核酸に関して選択的に濃縮する処理で始まり、遠心分離段階を含み、残余の細胞およびミトコンドリアを除去する。さらに、DNAse処理が使用され、分解した細胞由来の妨害染色体DNAおよび妨害ミトコンドリアDNAを除去し、一方、ウイルス核酸はウイルス粒子内で保護される。最終的に、頻繁に切断する制限酵素を選択することによって、該方法は微調整され、大部分のウイルスが増幅される。VIDISCAを使用して、本発明者らは肝炎Bウイルスに感染しているヒトおよび急性パルボウイルスB19に感染しているヒトのEDTA血漿由来のウイルス核酸を増幅することができた。該技術はまた細胞培養物中のHIV−1を検出することが可能であり、RNAおよびDNAウイルス両方を同定する能力を示す。
【0079】
CPE−陽性培養物NL63の上清がVIDISCAによって分析された。本発明者らは対照として非感染細胞の上清を使用した。第2PCR増幅段階の後、特有で顕著なDNA断片が対照中でなく試験試料中に存在した。これらの断片は複製され、配列決定された。16断片中12はコロナウイルス科の要素に対して配列類似性を示したが、有意な配列相違はあらゆる断片において明白であった。これらの結果は本発明者らが新規コロナウイルス(HCoV−NL63)を同定したということを示している。
【0080】
患者試料におけるHCoV−NL63の検出
HCoV−NL63が子供の鼻咽頭吸引物に由来するということを示すために、本発明者らはHCoV−NL63を特異的に検出する診断RT−PCRを設計した。この試験は1b遺伝子内の特有の配列に基づいており、臨床試料中のHCoV−NL63の存在を確認した。このPCR生成物の配列は、LLC−MK2細胞における生体外での継代の際に同定されたウイルスの配列と同一であった(結果は示されていない)。
【0081】
培養されたコロナウイルスは該子供由来であることが確認されたが、該問題は、依然として、これは他に類のない臨床事例であるのか、またはHCoV−NL63はヒトにおいて広まっているのかというところにとどまっている。この問題に対処するために、本発明者らは、HCoV−NL63の存在に関して2002年12月から2003年8月までの間の、入院患者および外来診療室を訪れた人の呼吸器試料を調べた。本発明者らはHCoV−NL63を有するさらなる7人を確認した。PCR生成物の配列分析は、種々の試料においてわずかな特徴的な(および複製可能な)点変異の存在を示し、NL63の種々の部分群が相互に広がっていることを示唆した。HCoV−NL63陽性の少なくとも5人は気道疾患に罹患しており、2人の臨床データは得られなかった。初発症例を含んでおり、5人の患者が1歳以下の子供であり、3人の患者が大人である。2人の大人は免疫抑制されているようであり、それは、彼らのうちの1人が骨髄移植者であり、もう1人がCD4細胞の総数が非常に少ないAIDSに罹患しているHIV陽性患者であるからである。第3の大人の臨床データは得られなかった。1人の患者のみがRSV(nr72)に重感染しており、HIV感染患者(nr466)はニューモシスティス・カリニを有していた。他の呼吸器病因は他のHCoV−NL63陽性患者において見つからず、呼吸器症状はHCoV−NL63によって引き起こされることを示唆している。あらゆるHCoV−NL63陽性試料が昨冬季に収集され、2003年1月においては7%の検出頻度であった。2003年の春および夏に収集された306の試料はいずれも該ウイルスを含んでいなかった(P<0.01,2−tailed t−test)。
【0082】
HCoV−NL63完全ゲノム分析
コロナウイルスのゲノムは特徴的なゲノム組織を有している。5’halfはラージ1aおよび1b遺伝子を含んでおり、非構造ポリ蛋白質をコードしており、4つの構造蛋白質、すなわちスパイク(S)、膜組織(M)、エンベロープ(E)およびヌクレオカプシド(N)をコードする遺伝子を含む。さらなる非構造蛋白質が1bおよびS遺伝子間、SおよびE遺伝子間、MおよびN遺伝子間またはN遺伝子下流のいずれかでコードされる。
【0083】
HCoV−NL63ゲノム組織がこれらの特徴を共有しているか否かを判断するために、本発明者らは提供物質として、精製したウイルスのストックを用いてcDNAライブラリを構築した。総数475ゲノム断片が、ヌクレオチドごとに7配列という平均範囲で分析された。特異的PCRが設計され、質の低い配列データの、隙間を埋め、領域を配列決定した。5’RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)および3’RACE実験と組み合わせて、完全HCoV−NL63ゲノム配列が解明された。
【0084】
HCoV−NL63のゲノムはポリA末端を有する27,553個のヌクレオチドのRNAである。それは34%のG−C含有量を有し、37%〜42%25にわたるコロナウイルス科のうちで最も低いG−C含有量を有している。ZCurveソフトウェアが使用され、ORF26を同定し、ゲノム配置は既知のコロナウイルスとの類似性を使用して描かれる(図6)。1aおよび1b遺伝子は、ウイルス複製に必須である、RNAポリメラーゼおよびプロテアーゼをコードする。潜在的偽結節構造は12439位に存在し、−1フレームシフト信号を提供し、1bポリ蛋白質を翻訳する。S,E,MおよびN蛋白質をコードすると予測される遺伝子がゲノムの3’部分に見られる。286個および287個のヌクレオチドの短い非翻訳領域(UTR)はそれぞれ5’および3’末端に存在する。血球凝集素エステラーゼ遺伝子は、群2および群3コロナウイルス中に存在するものであるが、存在していなかった。SおよびE遺伝子間のORF3はおそらくただ1つの補助非構造蛋白質をコードする。
【0085】
1aおよび1abポリ蛋白質はゲノムRNAから翻訳されるが、残りのウイルス蛋白質はサブゲノムmRNA(sg mRNA)から翻訳され、それぞれ、ゲノムの5’部分(5’リーダー配列)由来の共通の5’末端および3’共通末端部を有する。sg mRNAはマイナス鎖合成の間、不連続的転写によって作成された27。不連続的転写はシス作用転写調節配列(TRS)間の塩基対を必要とし、一方はゲノムの5’部分(リーダーTRS)の近くに位置し、他方は各ORF上流(TRS本体)に位置する28。本発明者らが配列決定のために使用したcDNAバンクは、N蛋白質のsg mRNAの複製を含んでおり、あらゆるsg mRNAに対して融合されるリーダー配列を正確に解読する機会を提供する。72個のヌクレオチドのリーダーは5’UTRで同定された。リーダーTRS(5’−UCUCAACUAAAC−3’)はN遺伝子のTRS本体上流と11/12個のヌクレオチド類似性を示した。推定TRSもまたS,ORF3,EおよびM遺伝子の上流で同定された。
【0086】
HCoV−NL63の配列は他のコロナウイルスの完全ゲノムと共に整列された。ヌクレオチド同一性比率が各遺伝子に対して決定された。M遺伝子を除く全ての遺伝子に対して、HCoV−229Eとの同一性比率が最も高かった。HCoV−NL63が群1コロナウイルスの新たな要素であることを確認するために、病原分析が1A,1B,S,MおよびN遺伝子のヌクレオチド配列を使用して行われた。分析された各遺伝子に対して、HCoV−NL63は群1コロナウイルスと共に集団化された。部分群HCoV−NL63/HCoV−229Eのブートストラップ値は1a,1bおよびS遺伝子に対して100であった。しかしながら、MおよびN遺伝子に対して、この、部分クラスタのブートストラップ値は(それぞれ78および41に)減少し、HCoV−229E,HCoV−NL63およびPEDVを含む部分クラスタが明らかになる。病原分析がORF3およびE遺伝子に対して行われなかったが、これは、それぞれ、当該領域が種々のコロナウイルス群間で非常に変化していたから、または当該領域が分析するには小さすぎたからである。Simplotソフトウェア バージョン2.029によるブートスキャン分析は組換えの徴候を検出しなかった(結果は示されていない)。
【0087】
SおよびE遺伝子間のただ1つの非構造蛋白質遺伝子の存在は注目に値する。それはPEDVおよびOC43を除いて、ほとんど全てのコロナウイルスがこの領域において2以上のORFを有するからである30,31。恐らくHCoV−229Eと比較して、S遺伝子の5’部分における537個のヌクレオチドの大きな挿入部分は最も注目に値する。Blast検索は、Genbankに寄託されている任意のコロナウイルス配列または任意の他の配列に対する、スパイク蛋白質のこのさらなる179個のアミノ酸領域の類似性を検出しなかった。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
【表9】
【0097】
【表10】
【0098】
【表11】
【0099】
【表12】
【0100】
【表13】
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】cDNA−AFLPは、配列の予備知識がなくとも核酸の増幅を可能にする。CPE−陽性および非感染細胞由来の培養上清はcDNA−AFLP法で扱われた。非感染対照試料に存在しない、CPE−陽性培養物由来の増幅生成物は複製され、配列決定された。
【図2】HCoV−NL163に感染したLLC−MK2細胞。パネルAおよびBは非染色細胞であり、一方パネルCおよびDはヘマトキシリンエオシンで染色されている。HCoV−NL163の典型的CPEはパネルAおよびCに示されている。対照非感染LLC−MK細胞はパネルBおよびDに示されている。
【図3】Metaphor(登録商標)アガロースゲル電気泳動によって視覚化されたVD−cDNA−AFLP PCR生成物。選択的増幅段階の間に使用される、16プライマ対結合のうちの1(HinP I−GおよびMse I−A)のPCR生成物。レーン1および2:ウイルス培養物NL163の複製PCR生成物;レーン5および6:LLC−MK2細胞の対照上清およびレーン7および8:陰性PCR対照。レーンM:25bp分子量マーカー(In Vitrogen)。矢印はゲルから切除され、配列決定された新規コロナウイルス断片を示す。
【図4】HCoV−NL163配列の系統発生解析。G1,G2およびG3は群1、群2および群3コロナウイルスクラスタを示す。使用された配列のGenbank受託番号は以下のとおりである。MHV(マウス肝炎ウイルス):AF201929、HCoV−229E:AF304460、PEDV(ブタ伝染性下痢症ウイルス):AF353511、TGEV(伝染性胃腸炎ウイルス):AJ271965、SARS−CoV:AY278554、IBV(鳥類伝染性気管支炎):NC_001451、BCoV(ウシコロナウイルス):NC_003045、FCoV(ネココロナウイルス):Y13921およびX80799、CCoV(イヌコロナウイルス):AB105373およびA22732、PRCoV(ブタ呼吸器コロナウイルス):M94097およびFIPV(ネコ感染性腹膜炎ウイルス):D32044。HCoV−229E(AF304460)と比較したHCoV−163断片の位置。レプリカーゼ1AB遺伝子:15155−15361、16049−16182、16190−16315および18444−18550、スパイク遺伝子:22124−22266、ヌクレオカプシド遺伝子:25667−25882および25887−25957、3’UTR:27052−27123。枝長は配列ごとの置換数を示す。
【図5】コロナウイルスの配置図および表3に記載の163断片の位置。
【図6】HCoV−NL63’の制限地図。ssRNAゲノムの完全27553nt cDNA誘導体。オープンリーディングフレーム(ORF)が番号が付された黒矢印として表されており、これらのORF内の同定された(PFAM)領域が灰色の箱として示されている。
【図7】HCoV NL63および他のヒトコロナウイルスのSimplot分析。HCoV NL63のSARS、HCoV−OC43およびHCoV−229Eに対する比較における差は、スパイク蛋白質コードORFにおける特有の537in−frame挿入によって引き起こされる(この記載の別の場所を参照)。Sigmaplot分析は、Lole, K. S. , R. C. Bollinger, R. S. Paranjape, D. Gadkari, S. S.Kulkarni, N. G. Novak,R. Ingersoll, H. W. Sheppard, and S. C. Ray. 1999. Full-length human immunodeficiency virus type 1 genomes from subtype C-infected seroconverters in India, with evidence of intersubtype recombination. J. Virol. 73: 152-160に記載されている。
【図8】HCoV−NL63スパイクおよびマトリックス蛋白質のための発現構築。HisおよびStrepII標識スパイク融合蛋白質の発現はバクテリア成長培地へのIPTGの添加によって誘導され得る。attB1/B2介在再結合を介して、S遺伝子挿入部分は他の市販の発現ベクタへ転写され、他の宿主における蛋白質の生成を促進する。pGP7Sに関して同一の複製手順を経て、HCoV−NL63 M−遺伝子に対するGateway適合発現ベクタが構築され得る。プラスミドはNおよびC−末端親和性標識マトリックス融合蛋白質のIPTG誘導生成を指示し、完全長融合蛋白質の選択的復元を可能にする。
【図9】再結合部位 NL63−229E。NL63由来配列は下線付の黒色太字であり、229E由来配列は灰色太字である。
【図10】制限地図 cDNA複製NL63/229Eハイブリッド。NL63由来部分は灰色の箱として示され、229E由来領域は線として示されている。2つのゲノム間の接合部は、連続する、2つの黒矢印で印をつけている、1b’とハイブリッド1bORFを示す‘ORF−1bとによって示されている。 第2キメラゲノムは相互組換えによって、HCoV−NL63のヌクレオチド19653をHCoV−OC43のヌクレオチド20682に融合し、ハイブリッドORF1bを再び生成し、ハイブリッド1abレプリカーゼ ポリ蛋白質を生成した。組換えが保存配列AATTATGG内で起こった。
【図11】組換え部位 NL63/OC43ハイブリッド。先と同様にNL63由来領域は下線付きの黒色太字であり、OC43由来配列は灰色太字である。得られたcDNA制限地図は図12に示される。
【図12】制限地図 組換えNL63/OC43ゲノム。NL63由来部分は灰色のボックスで示されており、組換え部位は黒矢印1b’および‘1bの間に示されている。
【図13】HCoV−NL63、HCoV−229E、HCoV−OC43ならびに2つのハイブリッドNL63/229EおよびNL63/OC43由来のORF1bの類似性プロット推定蛋白質配置構造。
【図14】HCoV−NL63誘導体を発現する緑色蛍光蛋白質。機能的同等物NL63/4GEPは、ヒトコドン最適化緑色蛍光蛋白質(EGFP、Stratagene)と共に、E蛋白質(ORF4)のin−frame C末端融合を有している。感染細胞は4−EGFP融合蛋白質の励起後、蛍光を発しているようであった。HCoV−NL63が使用され、ウイルス感染およびポリシストロニックサブゲノムメッセンジャの翻訳の過程を解明した。
【図15】機能的誘導体NL63D2052021011の制限地図。NL63の欠失誘導体はスパイク蛋白質のN末端における大部分の挿入部分を欠いている。ヌクレオチド20520−21011を欠失することによって、特有の領域が除去され、一方、予測分泌シグナル配列は保持される(Nielsen, H. , J. Engelbrecht, S. Brunak, and G. Von Heijne. 1997. Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites. Protein Eng 10: 1-6)。
【図16】さらなる患者試料由来のHCoV−NL63における配列変異。6人の患者試料由来のRT−PCR生成物の両鎖の直接配列決定は、ORF1a領域における多型性の存在を明らかにした。
【図17】HCoV−NL63特異的および一般的ヒトコロナウイルス検出プローブ。コロナウイルスポリメラーゼは複数のサブゲノムRNAを生成する。HCoV−NL63およびSARSの配列決定ライブラリにおいてcDNAクローンをコードするS,E,MおよびNの頻度(Snijder, E. J. , P. J. Bredenbeek, J. C. Dobbe, V. Thiel, J. Ziebuhr, L. L. Poon, Y. Guan, M. Rozanov, W. J. Spaan, and A. E. Gorbalenya. 2003,Unique and conserved features of genome and proteome of SARS-coronavirus, an early split-off from the coronavirus group 2 lineage. J. Mol. Biol. 331: 991-1004)。ノーザンブロットデータは感染細胞中のこれらのサブゲノムRNAの高い存在度を示す。したがってこれらの遺伝子は診断試験に対する魅力的な標的である。ゲノムおよびサブゲノムRNAは同一の3’末端を有するので、N遺伝子を含むプローブはそれら全てに対してハイブリッド形成するであろう。あらゆるヒトコロナウイルスの完全長配列の整列を経て、ORF1b中の保存領域が同定され、ネストされたRT−PCRアッセイを用いてそれらの検出を行った。
【図18】一般的コロナウイルス検出プライマ。
【図19】ヌクレオチド配列 HcoV_NL63。
【図20】HCoV_NL63のORF1a、レプリカーゼ酵素複合体。
【0102】
【図21】HCoV_NL63のORF1abレプリカーゼ ポリ蛋白質。
【図22】スパイク蛋白質(ORF3)は(下記の連続配列の第1行目に示される)16AAのN末端分泌シグナル配列を含む(Nielsen, H. , J. Engelbrecht, S. Brunak, and G. Von Heijne. 1997. Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites. Protein Eng 10: 1-6)。
【図23】ORF−4コロナウイルス_NS4、コロナウイルス非構造蛋白質4。この科は複数の非構造蛋白質4(NS4)配列または小さな膜蛋白質からなる。ORF−5。この科は膜貫通型糖蛋白質である種々のマトリックス蛋白質からなる。M蛋白質またはE1糖蛋白質はウイルス集合に関わる。E1ウイルス膜蛋白質は、ウイルスエンベロープの形成のために要求され、ゴルジ複合体を介して輸送される。マトリックス蛋白質は、(連続配列の第1部分に示されている)N末端分泌シグナル配列を含むと予測される(Nielsen, H. , J. Engelbrecht, S. Brunak, and G. Von Heijne. 1997.Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites. Protein Eng 10: 1-6.)。ORF−6 Pfam 00937、コロナウイルス ヌクレオカプシド蛋白質。ゲノムRNAと複合体を形成する構造蛋白質。
【0103】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はウイルス学および医薬の分野に関連する。さらに、特に本発明は新規コロナウイルスの同定と、種々の試料中のウイルスを分類し、疾患を診断する手段および方法、感染した対象またはその危険のある対象の治療のためのワクチンおよび薬剤を開発する手段および方法等の、ウイルスに関連する手段および方法とに関連する。
【0002】
コロナウイルスはコロナウイルス科の中の属であるが、大きなエンベロープを有するプラス鎖RNAウイルスである。ゲノムRNAは大きさが27〜32kbであり、キャップされ、ポリアデニル化されている。コロナウイルスの3種の血清学的に別個の群が同定された。各群内で、ウイルスは宿主域およびゲノム配列によって同定される。コロナウイルスは、マウス、ラット、ニワトリ、シチメンチョウ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ウシおよびヒトにおいて同定された(39,40)。大部分のコロナウイルスは1種の宿主のみを感染させ、胃腸炎を含む重度の疾患および気道疾患を引き起こす。ヒトにおいて、3種のコロナウイルスが詳細に研究されている。HCoV−229EおよびHCoV−OC43は60代半ばで同定されており、一般的な感冒を引き起こすことが知られている(13−17,19,41,42)。一般的な感冒の他に、HCoV−229Eウイルスはより悪い状態の気道疾患を罹患している幼児から単離されているので、HCoV−229Eは幼児においてさらに重度の疾患を引き起こし得ることが示唆されている(28)。第3の最近同定されたコロナウイルス、すなわちSARS−CoVは、生命に関わる肺炎を引き起こす可能性を有しており(43)、これまで同定された最も病原性を有するヒトコロナウイルスである。SARS−CoVはコロナウイルスの第4の群の第1の要素である、または該ウイルスは群2のコロナウイルスの異常型であることが示唆されている(27,44)。
【0003】
コロナウイルスのゲノムは4種の構造タンパク質、すなわち、スパイク蛋白質と、膜蛋白質と、エンベロープ蛋白質と、ヌクレオカプシド蛋白質とをコードする。数種の非構造蛋白質が複製および転写に関与しており、ゲノム(1Aおよび1B)の5’末端で、2つの長いオーバーラップするオープンリーディングフレーム(ORF)によってコードされる。これらの2つのORFはリボソームフレームシフトを経て結合される。ORF1Aおよび1Bにコードされるポリペプチドは、ウイルスコードプロテアーゼによって、翻訳後処理される。さらに、さらなる非構造蛋白質がSおよびE遺伝子間、またはMおよびN遺伝子間もしくはN遺伝子の下流でコードされる。これらの「補助非構造蛋白質遺伝子」の中には、ウイルス複製に必須ではないと分かっているものもある(45,46)。1Aおよび1Bのコロナウイルス遺伝子産物は、ゲノムRNAから翻訳されるが、残りのウイルス蛋白質はサブゲノムmRNA(sg mRNA)から翻訳され、それぞれ、ゲノムの5’部分由来の5’末端を有している。sg mRNAは、ほとんどがマイナス鎖合成に間に起こる可能性のある不連続的翻訳処理を経て得られる(47)。不連続的翻訳は、シス作用エレメント間の塩基対、すなわち転写関連配列(TRS)を必要とし、一方はゲノムの5’部分に位置する配列(始端部TRS)であり、他方はORFの上流に位置する配列(本体TRS)である(48)。
【0004】
ここに示す新規コロナウイルスは気管支梢炎に罹患している小児から単離された。本発明者らはウイルスを有する、気道疾患に罹患している7名以上のヒトを見つけたので、このウイルスによる感染は他に類のない事例ではない。さらに、本発明者らはここで完全なゲノム配列を示し、新規コロナウイルスのゲノム構造に関する臨床情報を提供する。
【0005】
今日、一連の原因不明のヒトの疾患が存在する。これらの多くに関して、ウイルス起源であることが示唆されており、新規ウイルスの継続的な調査の重要性を強調している22,23,24。新規ウイルスの調査の際に、重大な問題に遭遇する。第1にウイルスの中には体外で複製しない、少なくとも、ウイルス診断において一般的に使用される細胞中で複製しないものもある。第2に、体外で複製し、細胞変性効果(CPE)を引き起こすそれらのウイルスに関して、その後に行うウイルス同定法がうまくいかないことがある。既知のウイルスに対してもたらされる抗体は培養ウイルスを認識しないこともあり、ウイルス特異的PCR法は新規ウイルスゲノムを増幅しないこともある。本発明者らはcDNA増幅制限断片長多型性技術(cDNA−AFLP)に基づくウイルス発見のための方法を開発した。この技術を用いて、RNAまたはDNAは再生可能に増幅される。標的遺伝子の配列の予備的知識は必要ない1。一般的にcDNA−AFLP法が使用され、異なる遺伝子発現を観察する。しかしながら、本発明者らはこの方法を修正し、患者のリンパ漿/血清試料から直接でも、CPE陽性ウイルス培養物から間接的にでもウイルス配列を増幅可能にした(図1)。修正されたウイルス発見cDNA−AFLP(VIDISCA)法において、増幅の前のmRNA単離工程は、ウイルス核酸に対して選択的に豊富にする処理によって置き換えられる。遠心分離段階は精製に関連し、残余の細胞およびミトコンドリアを除去する。さらに、DNAse処理が使用され、分解した細胞由来の妨害染色体DNAおよび妨害ミトコンドリアDNAを除去する一方、ウイルス核酸がウイルス粒子内で保護される。最終的に、頻繁に切断する制限酵素を選択することによって、該方法は微調整され、大部分のウイルスが増幅される。
【0006】
2003年1月、7ヶ月の小児が鼻感冒、結膜炎および熱を伴って来院した。胸部X線は気管支梢炎の典型的特徴を示し、発病の5日後に鼻咽頭吸引物の試料が収集された(試料nr:NL63)。この試料についての、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)と、アデノウイルスと、インフルエンザAおよびBウイルスと、パラインフルエンザウイルス型1,2および3と、ライノウイルスと、エンテロウイルスと、HCoV−229Eと、HCoV−OC43とに対するあらゆる診断試験は陰性であった。ウイルスの培養物において、RSVと、アデノウイルスと、インフルエンザAおよびBウイルスと、パラインフルエンザウイルス型1,2および3とを検出するための免疫蛍光分析は依然として陰性であった。酸不安定性およびクロロホルム感受性試験は、ウイルスがエンベロープを有している可能性が大きく、ピコルナウイルス群の要素ではないことを示した。実際に、これは新規コロナウイルスであった。本発明において、本発明者らは新規ヒトコロナウイルスの詳細な説明を示す。コロナウイルスは、およそ27〜31kbの、非常に長く分節していない単一鎖の(+)センスRNAによって特徴付けられる。これはどの既知のRNAウイルスの中でも最も長いゲノムである。該ゲノムは、5’メチル化キャップおよび3’ポリ−Aを有しており、mRNAとしてそのまま機能する。これまで、3種のヒトコロナウイルスのみが特徴付けられており、したがって第4のヒトコロナウイルスの特徴を分類することによって、ヒトコロナウイルス間の差違に関する興味深い情報が提供される。新規ウイルスは群1のコロナウイルスの要素であり、HCoV−229Eに最も関連しているが、その差違は顕著である。類似点は、ヌクレオチドレベルで85%より大きくなく、HCoV−229Eの4Aおよび4B遺伝子の位置で唯1つのORFがHCoV−NL63(ORF3)に存在し、HCoV−NL63のS遺伝子の5’領域は537個のヌクレオチドのフレーム挿入点において他とは異なるものを含んでいる。レセプタの結合が蛋白質のN末端部分に対して位置付けられているので挿入点にコードされる179個のアミノ酸はレセプタ結合に関与している可能性が大きい。スパイク蛋白質のN末端におけるこの特異的な部分は、細胞培養物中のウイルスの広範な宿主域を明らかにすることもある。HCoV−229Eが狭い宿主域を有する細胞培養物中で扱い難い場合、HCoV−NL63はサル腎臓細胞において効果的に複製される。HCoV−NL63の他に、SARS−CoVも、サル腎臓細胞(SARS−CoVに対するVero−E6細胞およびNCI−H292細胞(21))で複製可能である。しかしながら、予測スパイク遺伝子を比較することによって、両ウイルスによって共有され体外のウイルスの一般的な宿主域を明確にする蛋白質領域は同定されない。また、HCoV−NL63のS遺伝子における挿入点はSARSのS遺伝子において存在しなかった。または、他のウイルス蛋白質がウイルスの細胞指向性に関与することもある。しかしながら、本発明者らは、HCoV−229EよりもSARS−CoV対して、蛋白質レベルで、より類似しているHCoV−NL63のいずれの遺伝子も同定していない。
【0007】
HCoV−229EとHCoV−NL63との間の、すなわちS遺伝子における挿入点と改変非構造補助蛋白質遺伝子との間の2つの重要な差違は、ブタコロナウイルスPRCoVとTGEVとの間で注目される差違に匹敵するものである。これらの2種のブタウイルスは抗原的および遺伝学的に関連しているが、これらの病原性は非常に異なる。TGEVは新生ブタにおいて、高い死亡率で重症の下痢を引き起こす。PRCoVは腸組織においてほとんど複製せず、呼吸組織に特異的指向性を有するのに対して、それは小さい腸において腸細胞を複製し、破壊する。TGEVとPRCoVとの間のS,3Aおよび3B遺伝子におけるゲノムの差違は、HCoV−NL63とHCoV−229Eとの間の差違に匹敵する。HCoV−NL63のようにTEGVは672〜681ntにわたるS遺伝子の5’部分のフレーム挿入点において他とは異なる(53)。さらに、TGEVにおいて正常な補助蛋白質遺伝子3Aおよび3Bは、PRCoVにおいて突然変異または不活性であることが多い。ヒトコロナウイルスに対するこれらのデータから推定して、HCoV−NL63はHCoV−229Eと比較してより病原性のヒトウイルスである可能性があることが推測される。しかしながら、これを支持する疫学データはない。本発明者らのデータに基づくと、HCoV−NL63およびHCoV−229Eはおそらく、同じ病原性を共有しているようである。一般的な感冒ウイルスHCoV−229Eは幼児においてさらに重症疾患を引き起こす可能性があり(28)、HCoV−NL63が幼児および免疫障害患者においてのみ呼吸器疾患を引き起こしていることを示唆する本発明者らのデータに匹敵する。
【0008】
今日まで、ウイルス性病原体はヒトにおける呼吸器疾患の症例の大部分において同定されておらず(平均して20%59)、本発明者らのデータはこれらの症例の一部においてHCoV−NL63が関与していることを示唆している。HCoV−NL63が呼吸器疾患に罹患している患者において検出される頻度は、2003年1月の時点で5%以下であった。ウイルスは2003年の春または夏に収集されたいずれの試料においても検出されず、主に冬期に蔓延する傾向にあるヒトコロナウイルスの疫学と一致する(15)。本発明者らの診断PCRのためのプライマは1B遺伝子に位置し、ゲノムRNAは鋳型として用いられる。ヌクレオカプシド遺伝子または3’UTRにおいてアニーリングするプライマを用いることによって、PCRにおいて、より多くの鋳型が与えられる。なぜなら、ゲノムRNAの他に、感染細胞中のあらゆるsg mRNAも、増幅のための鋳型であるからである。HCoV−NL63に対して陽性であると判った人の人数は、HCoV−NL63を有している人の正確な人数を過小評価している可能性もある。
【0009】
新規に発見されたコロナウイルス(HCoV−NL63と表される)は特徴付けられ、配列決定された。典型HCoV−NL63の配列は図19に与えられ、その一部が表3に与えられる。したがって、1つの特徴において、本発明は単離および/または組換え核酸を提供し、図19および/または表3に示される配列、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含む。ウイルスHCoV−NL63は、典型によって特徴付けられる。しかしながら、多くの自然変異体が、たとえば図16に示されるように、ORF1a領域における多型に対して存在する。このような自然変異体の存在は、たとえば、ゲノムを複製するポリメラーゼによる誤りの導入を経た頻繁な突然変異を受けるRNAウイルスにとって通常のことである。したがって、僅かに相違する核酸配列を有するHCoV−NL63ウイルスもまた本発明によって提供される。このようなウイルスは典型核酸配列を有する核酸の誘導体であるとみなされる。変異体は必ずしも自然変異体でなくてもよい。当然組換え手段を経た変異体を生成することも可能である。たとえば、ウイルスの大部分が、特定のアミノ酸に対するトリプレット遺伝子コードにおける余分量を使用するヌクレオチド置換によって変更され得る。したがって、コードされた蛋白質のアミノ酸配列は変更されない。しかしながら、アミノ酸の変更でさえ、一般的に、ウイルスの複製およびコード能力に影響を与えることなく導入可能である。たとえば、保守的アミノ酸置換は許容されることが多い。典型ウイルスにおける変更は、ウイルスの複製能力を変更することなく、核酸配列の70%まで可能である。したがって、一実施形態において、本発明は、単離および/または組換え核酸を提供し、典型HCoV−NL63の核酸に対して少なくとも70%相同である。しかしながら、大部分の生存可能な変異体は、典型HCoV−NL63に従う核酸に少なくとも95%相同であり、さらに好ましくは少なくとも99パーセント相同である。UTR領域における異種コロナウイルス間の相同性は通常高く、この理由により、本出願における相同性はUTR領域外の領域、好ましくは蛋白質コード領域において測定される。したがって、本発明はHCoV−NL63の誘導体を提供し、図20,図21,図22,図23または表3に示される少なくとも1つの蛋白質コード領域において(核酸レベルで)少なくとも95%の相同性および好ましくは少なくとも99%の相同性を含む。ウイルスの核酸またはその一部の核酸は複製され、プローブとして使用され、試料中のウイルスを検出する。したがって、本発明はさらに単離および/または組換え核酸を提供し、典型ウイルスの核酸の100個の連続したヌクレオチドの伸張部または前記100個の連続したヌクレオチドに対して少なくとも95%および好ましくは少なくとも99%相同である領域を含む(UTR領域外で核酸レベルで測定される場合)。100の連続したヌクレオチドの伸張部は、本発明のウイルスの機能的部分とみなされる。さらに、バクテリアベクタが提供され、HCoV−NL63またはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸を含む。さらに、前記バクテリアベクタを含むバクテリアが提供される。HCoV−NL63の配列またはその一部が使用され、HCoV−NL63に特異的であり、したがってHCoV−NL63核酸を特異的に複製可能なプライマを生成する。同様に厳しい条件下でHCoV−NL63核酸に特異的にハイブリッド形成するプローブが生成される。したがって、本発明はさらにHCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体の核酸に特異的にハイブリッド形成可能なプライマおよび/またはプローブを提供する。好ましくは、前記プライマまたはプローブは厳しい条件下で前記核酸にハイブリッド形成可能である。特に好ましい実施形態において、前記プライマおよび/またはプローブは表3,表7,表10または図16〜図18に示される配列を含む。
【0010】
典型ウイルスの核酸は種々の蛋白質およびポリ蛋白質をコードする。これらの蛋白質はたとえばウイルスを生成するまたは(ポリ)蛋白質をコードする核酸で形質転換される細胞中で発現される。したがって、本発明はさらに単離および/または組換え蛋白様分子を提供し、図20,図21,図22,図23または表3に示されるような配列、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含む。蛋白質の多くの種々の変異体は、必ずしも量においてではなく質において同じ機能を有し、上述のように、天然に存在し、人工的に生成されることが可能であり、したがって、本発明はさらに上述の蛋白様分子に少なくとも70%相同である単離および/または組換え蛋白様分子を提供する。このような相同の蛋白質は典型によってコードされる蛋白質の誘導体とみなされる。好ましくは、誘導体蛋白質は、典型HCoV−NL63によってコードされる蛋白質と少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%の相同性を含む。典型ウイルスによってコードされる蛋白様分子の断片および一部が生成され、したがって、このような部分もまた、本発明によって提供される。好ましい実施形態において、単離および/または組換え蛋白様分子が提供され、典型ウイルスによってコードされる蛋白様分子の少なくとも30個の連続したアミノ酸の伸張部を含む。典型ウイルスによってコードされる蛋白質は遺伝子コードの余分量を使用して種々の異なる核酸配列によってコードされる。したがって、本発明はさらに図20,図21,図22,図23または表3に示される蛋白質をコードする核酸を提供する。HCoV−NL63ウイルスは複製され、体外で細胞株を培養するのに用いる。ウイルスはこのような培養物から収集されることが可能であり、種々の異なる用途に用いられ、対象における免疫応答の発生を含むがこれに限定されない。したがって、本発明はさらに単離または組換えウイルスを提供し、HCoV−NL63核酸配列またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含む。さらに、単離または組換えウイルスが提供され、図20,図21,図22,図23または表3に示される蛋白様分子、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含む。HCoV−NL6に感染した対象は多くの種々の臨床症状および/または無症状を示す。したがって、さらにHCoV−NL63関連疾患を誘導可能な、単離または組換えウイルスまたはその、機能的部分、誘導体または類似体が提供される。
【0011】
ウイルスは、ウイルスの物質を特異的に結合できる特異的結合相手を生成するために使用される物質を含む。結合相手は免疫担当対象へのウイルスの注入によって生成され得る。免疫付与の結果として、対象から得られた血清は、一般的にウイルスまたはその、免疫原性部分、誘導体および/もしくは類似体に特異的な多くの種々の抗体を含むであろう。特異的結合相手は、当然、多くの種々の異なる技術を経て生成され得る。たとえば、ファージ提示技術によって生成され得る。特異的結合相手を生成する方法はこれに限定されない。結合は一般的にウイルスの蛋白様部分に特異的である。しかしながら、当然、結合はまた、ウイルス中に含まれる蛋白質のウイルス特異的翻訳後修飾に特異的でもある。したがって、本発明はさらに好ましくは典型HCoV−NL63の核酸によってコードされるものに対して、HCoV−NL63ウイルスの蛋白様分子を特異的に結合可能な単離結合分子を提供する。好ましくは、図20,図21,図22,図23または表3に示される蛋白様分子、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体である。結合分子は、好ましくは図19または表3の、HCoV−NL63の核酸配列を特異的に結合可能である。結合分子は好ましくは蛋白様分子である。しかしながら、他の結合分子もまた、本発明の範囲内である。たとえば、必ずしも量においてではなく質において蛋白質と同じ結合性質を有する蛋白質類または類似体を生成可能である。さらに、本発明に従う結合分子を生成する方法が提供され、該方法は、
HCoV−NL63の典型核酸によってコードされる、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、あるいは単離および/または組換え蛋白様分子を結合可能な分子を生成し、
前記ウイルスおよび/または前記蛋白様分子に特異的な蛋白様結合分子を選択することを含む。
【0012】
他のヒトコロナウイルスとHCoV−NL63との全体的な相同性はあまり高くない。したがって、HCoV−NL63ウイルスに特異的に結合可能な多くの種々の結合分子が生成され得る。このような結合分子が使用され、試料中のHCoV−NL63ウイルスを検出する。したがって本発明はさらに、HCoV−NL63ウイルスを特異的に結合可能な結合分子と免疫反応する単離または組換えウイルスを提供する。同様に、本発明は図20,図21,図22,図23または表3に示される、単離および/または組換え蛋白様分子、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体の使用を提供し、試料中の、HCoV−NL63ウイルスを特異的に結合可能な結合分子または前記ウイルスの、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を検出する。逆に、HCoV−NL63ウイルスが使用され、試料中の前記ウイルスを特異的に結合可能な分子を検出する。感受性標的細胞に対するHCoV−NL63ウイルスの結合は特異的受容体を経て起こる。この受容体は本発明の結合分子として使用され得る。好ましくは、結合分子は抗体またはその機能的同等物を含む。検出方法が使用され、対象中のHCoV−NL63関連疾患を診断する。したがって、試料中の、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を検出する方法が提供され、該方法は、HCoV−NL63特異的プライマおよび/またはプローブを用いて前記ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸をハイブリッド形成するおよび/または増幅することと、ハイブリッド形成したおよび/または増幅した生成物を検出することとを含む。さらにキット、好ましくは診断キットが提供され、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、本発明に従う結合分子、および/または、本発明に従うHCoV−NL63ウイルス特異的プライマ/プローブを含む。特に好ましい実施形態において、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸、あるいは図20,図21,図22,図23または表3に示される蛋白様分子を特異的に結合可能な分子、あるいはHCoV−NL63ウイルスおよび/または典型HCoV−NL63の、核酸または機能的部分、誘導体もしくは類似体に特異的にハイブリッド形成可能なプライマまたはプローブの使用が提供され、試料中のHCoV−NL63コロナウイルスを検出および/または同定する。好ましくは、前記核酸は表3に示される配列を含む。
【0013】
本発明はさらにワクチンを提供し、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を含む。さらにワクチンが提供され、図20,図21,図22,図23または表3に示される蛋白様分子、または、このような蛋白様分子の機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含む。本発明の蛋白様分子は、それ自身ワクチンとして、または蛋白質の一部として、またはその、誘導体もしくは類似体として提供されてもよい。適切な類似体とはHCoV−NL63ウイルス蛋白様分子またはその、機能的部分もしくは誘導体をコードする核酸である。核酸は本発明においても提供されるDNAワクチン方法において使用されてもよい。DNAワクチンのための担体として、ウイルスレプリコン中に発現可能なHCoV−NL63ウイルス核酸を組み込むことが適切であることが多く、標的細胞においてHCoV−NL63ウイルス核酸の複製を可能にし、これによりもたらされる免疫応答を促進する。このようなDNAワクチン方法に適している蛋白質をコードするHCoV−NL63ウイルスは、図22に示されるS蛋白質またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体である。好ましくは、S蛋白質の一部はHCoV−229Eウイルスと比較すると、フレーム挿入点において537の免疫原性部分を含む。好ましくは、前記部分は実質的に前記537挿入点を含む。537挿入点とは、図19の配列20472〜21009に対応する配列のことである。
【0014】
他の適切な候補はMおよびまたはN蛋白質,またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体である。一般的にワクチンは適切なアジュバントを含む。ワクチンにおける使用の他に、記載されるウイルスおよび/または蛋白様分子もまた使用され、対象中でHCoV−NL63ウイルス特異的免疫応答を発生および/または促進する。免疫応答は細胞性でも体液性でもあり得る。したがってさらに、単離T−細胞が提供され、HCoV−NL63ウイルスに特異的であるT細胞受容体、または典型HCoV−NL63によってコードされる蛋白様分子を含む。さらに、単離B細胞が提供され、HCoV−NL63ウイルスに特異的な抗体、またはHCoV−NL63ウイルスによってコードされる蛋白様分子を生成する。細胞株は複製された受容体または抗体を含む発現カセットを与えられるとすぐに、抗体またはT−細胞受容体が複製される。したがって、本発明はさらにこのような受容体または抗体を生成する細胞を提供する。このような細胞は、好ましくはCHO細胞等の、記載される蛋白質の大規模な生成に適している細胞である。
【0015】
HCoV−NL63ウイルスに対する受動免疫を対象に与えることももまた可能である。このために、対象は本発明のHCoV−NL63特異的結合分子を与えられる。このような免疫性が使用され、対象中にHCoV−NL63ウイルスでの(さらなる)感染のための障壁を与え、したがってさらにワクチンが提供され、本発明に従うHCoV−NL63ウイルス特異的結合分子を含む。好ましい実施形態において、受動免疫は、本発明のHCoV−NL63ウイルスを特異的に結合可能なヒトまたはヒト化抗体によって与えられる。障壁は完全でなくてもよい。結合分子の存在は少なくとも、対象における他の標的細胞へのウイルスの拡散を減少させる。受動免疫は予防として対象に投与されてもよく、ウイルスに曝された場合、少なくとも、対象におけるHCoV−NL63ウイルスの拡散を減少させる。または、受動免疫はウイルスに既に感染した対象に与えられてもよい。後者の場合、本発明の1以上のHCoV−NL63ウイルス特異的結合分子は薬剤として使用され、少なくとも、対象におけるウイルスの拡散を減少させ、したがって少なくとも部分的にウイルス感染に有効である。したがって本発明はさらに薬剤を提供し、本発明に従うHCoV−NL63ウイルス特異的結合分子を含む。さらに、本発明のウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、あるいは本発明の蛋白様分子、あるいは本発明のHCoV−NL63ウイルス特異的結合分子の使用を提供し、コロナウイルス属関連疾患に対するワクチンを調製する。さらにHCoV−NL63ウイルス関連疾患に罹患しているまたは罹患する危険のあるヒトを治療するための方法が提供され、本発明に従うワクチンまたは薬剤を前記ヒトに投与することを含む。さらに別の実施形態において、ヒトがHCoV−NL63関連疾患に罹患しているか否かを判断する方法が提供され、前記ヒトから試料を得ることと、前記試料中の、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を検出することとを含む。
【0016】
さらに別の実施形態において、単離細胞または組換え体もしくは細胞株が提供され、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を含む。好ましくは、前記細胞は霊長類細胞であり、好ましくはサル細胞である。好ましい実施形態において、前記細胞は本発明のHCoV−NL63ウイルスを複製する細胞である。特定の実施形態において、細胞は腎細胞である。該細胞が使用され、本発明のHCoV−NL63ウイルスを生成する、または病原性が低下するようにHCoV−NL63を弱毒化する。ウイルスの弱毒化は、記載される好ましい細胞株でのウイルスの継代培養の際に自然に起こる。弱毒化HCoV−NL63ウイルスはワクチンとして使用される。
【0017】
HCoV−NL63ウイルスはエンドプロテアーゼをコードする。典型HCoV−NL63ウイルス中のプロテアーゼに対する配列は図(21)に示されている。プロテアーゼはHCoV−NL63にコードされるポリ蛋白質の処理に関して重要である。プロテアーゼの作用はここでさらに記載されるウイルスプロテアーゼ阻害剤によって少なくとも部分的に阻害される。したがって、本発明はさらに、HCoV−NL63ウイルス複製を少なくとも部分的に阻害するための化合物を提供する。好ましい化合物は、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ(55)(たとえば、リバビリン(54)およびミコフェノール酸)、オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ阻害剤(たとえば、6−アザウリジンおよびピラゾフリン)、3CLプロテアーゼ阻害剤(56)(たとえば、VNSTLQ−AG7088エステル、下記参照)、キャップ−メチル化阻害剤(58)(カルボン酸アデノシン類似体、たとえば、Neoplanocin Aおよび3−deazaneoplancin A)、亜酸化窒素シンターゼ誘導化合物(たとえば、グリシルリジン)およびインターフェロン(57)の阻害剤である。これらのプロテアーゼ阻害剤が特に好ましい。配列VNSTLQは、3Clpro阻害剤VNSTLQ−AG7088(56)において使用されるSARS−3CLproのN末端蛋白質分解処理部位である。この化合物において、ヘキサペプチドVNSTLQは、SARS 3CLpro活性を阻害するビニル性エチルエステル(AG7088、下記構造式1を参照)のC末端に結合する。
【0018】
【化1】
【0019】
ヘキサペプチドVNSTLQはHCoV−NL63におけるYNSTLQに対応する。したがって、YNSTLQ−AG7088はHCoV−NL63 3CLpro相同分子種を阻害する。したがって、好ましい実施形態において、プロテアーゼ阻害剤はアミノ酸配列VNSTLQ、さらに好ましくはYNSTLQを含む。必ずしも量においてではなく質において同じ活性を含むこのようなプロテアーゼ阻害剤の類似体もまた本発明によって提供される。このような類似体は好ましい配列を有するペプチドを含む化合物を含み、ペプチドは修飾を含む。他の類似体は好ましいアミノ酸配列に似た蛋白様活性を有する化合物を含む。S−アデノシルメチオニン依存リボース2’−オルトメチルトランスフェラーゼは、ウイルスRNAの5’末端におけるキャップ構造(GpppNm)のメチル化に関与する。反応に対してメチル基のこの転位を阻害する抗ウイルス化合物(カルボン酸アデノシン類似体、たとえばNeoplanocin Aおよび3−deazaneoplancin A)は、ウイルス蛋白質の発現を抑制する。
【0020】
本発明はさらに、HCoV−NL63核酸によってコードされる蛋白様分子を提供し、前記蛋白様分子は3CLプロテアーゼまたはその機能的同等物である。機能的同等物は、1またはそれ以上の保守的アミノ酸置換を有する蛋白質分解活性部分および/または誘導体を含む。化合物が抗コロナウイルス活性、好ましくはコロナウイルスの抗蛋白質分解活性を有するか否かを判断するための方法は当技術分野で多く知られている。したがって、本発明はさらに、化合物が抗コロナウイルス複製活性を含むか否かを判断する方法を提供し、前記方法はHCoV−NL63ウイルスまたはHCoV−NL63の複製に関与するHCoV−NL63蛋白質、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を使用するという点で特徴付けられる。好ましくは、本発明は化合物がウイルスプロテアーゼを少なくとも部分的に阻害可能か否かを判断する方法を提供し、前記プロテアーゼがHCoV−NL63の3CLプロテアーゼまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体であるという点で特徴付けられる。3CL阻害性に関して試験される好ましい化合物は3Clpro切断部位のN末端に位置するヘキサペプチドである。3Cl蛋白質分解活性を少なくとも部分的に阻害するのに有効な化合物が、HCoV−NL63ウイルス感染に罹患しているまたは罹患する危険のあるヒトの治療のための薬剤の調製に使用される。
【0021】
1以上の好ましい抗コロナウイルス複製化合物が、HCoV−NL63ウイルス感染に罹患しているまたは罹患する危険のある対象を治療するための薬剤として使用される。したがって本発明はさらに、コロナウイルス感染に罹患しているヒトまたは罹患する危険のあるヒトの治療のための薬剤を提供し、前記コロナウイルスはHCoV−NL63典型ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体の核酸配列を含む。
【0022】
本発明において、複数の種々の組換えウイルスが、HCoV−NL63ウイルス核酸を骨格として使用して生成される。このような複製能力のあるまたは複製欠陥の組換えウイルスは、たとえば、遺伝子運搬担体として使用されることが可能である。他方、HCoV−NL63ウイルスの一部は細胞に遺伝物質を運搬するための他の手段に基づく遺伝子運搬担体において使用される。したがって、本発明はさらに、遺伝子運搬担体を提供し、HCoV−NL63ウイルス、好ましくは典型ウイルスの核酸の少なくとも一部を含む。好ましくはHCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体の蛋白質をコードする核酸を含む。本発明はまた、キメラコロナウイルスを示し、少なくとも2つのコロナウイルスに由来する核酸を含み、前記部分の少なくとも1つはHCoV−NL63ウイルスに由来する。前記HCoV−NL63ウイルス由来部分は好ましくは蛋白質コード領域の少なくとも50個のヌクレオチドを含む。さらに好ましくは前記HCoV−NL63由来部分は図19に示される配列またはその機能的誘導体の少なくとも500、さらに好ましくは1000個のヌクレオチドを含む。好ましい実施形態において、本発明はキメラコロナウイルスを提供し、図19に示される配列の少なくとも1000個のヌクレオチドおよび別のコロナウイルスの少なくとも1000個のヌクレオチドを含み、前記後者の1000個のヌクレオチドは図19に示される配列と5%以上配列が相違する配列を含む。多くのHCoV−NL63ウイルス断片の配列は表3に示されている。広域のゲノムRNAにおける断片の位置は図5に示されている。したがって、本発明は1つの特徴において、単離または組換えウイルスを提供し、表3に示される核酸配列または前記ウイルスの、機能的部分、誘導体もしくは類似体を含む。同定典型断片を用いて、さらにゲノムの配列を決定することが可能である。ゲノム上を歩行するプライマによってこれをなす1つの方法。プライマは配列が既知である領域に向けられており、このプライマが使用され、未知の隣接領域の配列を決定する。次のプライマが新たに同定された配列に対して生成され、さらなる領域が配列決定される。この手順はウイルスの全配列が解明されるまで繰り返される。ウイルスの出典として、オランダ、アムステルダム、アムステルダム大学、学術医学センター、ヒトレトロウイルス学科のC. van der Hoek博士に問い合わせてもよい。
【0023】
決定された核酸配列の整列によって、検出された配列に使用されるリーディングフレームが明らかになった。したがって本発明はさらに単離または組換えウイルスを提供し、(表3)に示されるアミノ酸配列または前記ウイルスの、機能的部分、誘導体もしくは類似体を含む。特定のアミノ酸配列は使用されたコドンに依存する種々の核酸から生成され得る。したがって、本発明はさらに(表3)に示されるアミノ酸配列をコードする核酸を提供する。さらに単離または組換えウイルスが提供され、(表3)に示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列または前記ウイルスの、機能的部分、誘導体もしくは類似体を含む。
【0024】
多くの他の種類のウイルスのように、コロナウイルスは、対象の個体群を経たウイルスの拡散の際におよび/または生体外で培養している間に、複数の自然および選択された突然変異体を得る。さらに人工的な変異体は、認識された対応物を天然に有しておらず、ウイルス性および/または疾患を引き起こすウイルスの性質を変更することなく、典型ウイルスの配列またはその誘導体に導入され得る。新規に発見された亜型の典型を特徴付けたことによって、同じ亜型に属するこのウイルス群に手掛かりが与えられる。したがって、本発明はさらに単離または組換えウイルスを提供し、表3に示される配列に対しておよそ80%相同である、または表3に示されるアミノ酸配列に対して80%相同である核酸配列を含む。好ましくは、相同性は少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0025】
それぞれの典型断片はウイルス配列のデータベースと比較され、特に高い相同性を有する対象データが表5および表6に述べられている。比較される断片は現在既知のいずれのコロナウイルスとも広範囲の相同性を有していない。したがって本発明は単離および/または組換えウイルスを提供し、表3に示される163−2のアミノ酸配列に対して89%以上相同であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、前記相同性は少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0026】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される163−4のアミノ酸配列に対して60%以上相同であるアミノ酸配列を含む。好ましくは、前記相同性は少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%である。
【0027】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される163−9の核酸配列に対して85%以上相同である核酸配列を含む。好ましくは、前記相同性は少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%である。
【0028】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される163−10のアミノ酸配列に対して94%以上相同であるアミノ酸配列を含む。好ましくは前記相同性は、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0029】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される163−11のアミノ酸配列に対して50%以上相同であるアミノ酸配列を含む。好ましくは前記相同性は、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0030】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される163−14のアミノ酸配列に対して87%以上相同であるアミノ酸配列を含む。好ましくは前記相同性は、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0031】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される163−15のアミノ酸配列に対して83%以上相同であるアミノ酸配列を含む。好ましくは前記相同性は、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0032】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される163−18のアミノ酸配列に対して78%以上相同であるアミノ酸配列を含む。好ましくは前記相同性は、少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0033】
さらに、単離または組換えウイルスが提供され、表3に示される核酸配列に対して50%以上相同である核酸配列を含む。好ましくは前記相同性は、少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%およびさらに好ましくは少なくとも99%である。
【0034】
本発明はまた、単離および/または組換えHCoV−NL63ウイルスの機能的部分、誘導体および/または類似体を提供する。ウイルスの一部は膜組織含有部分、ヌクレオカプシド含有部分、蛋白様断片および/または核酸含有部分であってもよい。該部分の機能性は、該部分に対して選ばれる用途によって異なる。たとえば、該ウイルスの一部は免疫化の目的のために使用されてもよい。この実施形態において、機能性は、必ずしも量においてではなく質において完全なウイルスと同様の免疫原性を含む。ウイルスの別の使用はウイルスの感染性である。たとえば、生体外(または生体内)での培養に関して、この実施形態において、機能性は必ずしも量においてではなく質において同様の感染性を含む。ウイルスに対して多くの種々の使用が存在するため、多くの他の機能性が定義されてもよく、限定されない実施例はキメラウイルスの生成(すなわち、1以上の他の(コロナ)ウイルス)を用いて)、およびワクチン化および/または遺伝子治療目的のウイルスベクタの生成である。このようなウイルスおよび/またはベクタもまた、HCoV−NL63の機能的部分を含み、したがってまた、本発明に含まれる。本発明のウイルスの機能的誘導体は、前記化合物の性質が必ずしも量においてではなく質において本質的に同じであるように変更されたウイルスとして定義される。誘導体は、たとえば(好ましくは“ウォッブル”に基づく)ヌクレオチド置換を経て、(保守的)アミノ酸置換、それに続く修飾を経て、等の多くの方法で提供され得る。
【0035】
ウイルスの類似化合物もまた当技術分野の方法を使用して生成され得る。たとえば、キメラウイルスまたはキメラ蛋白質を有するHCoV−NL63ウイルスが生成される。たとえばHCoV−NL63は、HCoV−NL63表面蛋白質の少なくとも一部および非HCoV−NL63免疫原性部分を含む細胞表面関連融合蛋白質を生成することによって、さらに免疫原性になり得る。このようなキメラ蛋白質を含むHCoV−NL63ウイルスが使用され、たとえばワクチン化目的のために、宿主において向上した免疫応答を誘導する。
【0036】
ここで使用されるように、「本発明のウイルス」という用語はまた、前記ウイルスの機能的部分、誘導体および/または類似体を含むことを意味している。
【0037】
コロナウイルスの3種のグループはヒトおよび家畜の種々の疾患と関連し、胃腸炎および上下気道疾患を含む。ヒトコロナウイルスHCoV−229EおよびHCoV−OC43は軽い疾患(一般的な感冒)に関連するが、さらに重症の疾患が子供16において、非常に低い罹患率ではあるが観察される。複数のコロナウイルスは動物において重症の疾患を引き起こし、SARS−CoVがヒトにおいて重症の疾患を引き起こすコロナウイルスの第1例である。しかしながら、ヒトにおける呼吸器疾患の症例の実質的部分は診断が下されていないことは強調されるべきである。たとえば、気管支梢炎を伴って入院しているカナダの子供における呼吸器ウイルスの最近の調査では、約20%の患者においてウイルス性病原体が明らかにされていない17。本発明者らが、気管支梢炎を伴った子供において新規コロナウイルスを同定したという事実は、HCoV−NL63が病原性呼吸器系ウイルスであることを示している。
【0038】
HCoV−NL63が、感染した子供に気管支梢炎を引き起こし得る病原性呼吸器系ウイルスであることを考慮すると、なぜHCoV−NL63が以前に細胞培養によって認められなかったのかという興味深い疑問が残る。本発明者らは、該ウイルスが、ルーチン診断設定において使用されることが多い細胞である、サル腎細胞(tMKまたはLLC−MK2細胞)において培養され得ることを発見し、したがって、SARS−CoVに似たHCoV−NL63が、病原体保有動物からヒトの個体群に新規に導入された、またはこれは最近宿主細胞域を拡大したヒトウイルスであるということが推測される。明らかにHCoV−NL63感染の有病率を調査することは重要であり、HCoV−NL63診断RT−PCRを用いて、気道疾患を伴う患者からの試料をスクリーニングすることは、この問題の解明に役立つであろう。
【0039】
コロナウイルスは狭い宿主域の細胞培養において一般的に扱い難いため、新規ヒトコロナウイルスはtMK細胞およびLLC−MK2細胞から得られたということは注目すべきことである。しかしながら、SARS−CoVもHCoV−NL63もサル腎細胞(SARS−CoVに対するベロ−E6細胞およびNCI−H292細胞)中で効率的に複製するようである。最近記載されたSARS−CoVのゲノムは複数の他にない特徴を有しており、おそらく生物学的に重要ないくつかの特有のオープンリーディングフレームを含んでいる15,18。したがって本発明者らはHCoV−NL63の完全なゲノム配列を分析し、これらのウイルスの拡大した宿主細胞域および向上した病原性を決定し得る、SARS−CoVとの類似性および差違をスクリーニングするであろう。
【0040】
HCoV−NL63は感染した対象における特定の表現型に関連する。表現型は気管支梢炎、鼻感冒、結膜炎および熱を包含し得る、および表現型はさらに他の呼吸器系の問題および下痢を包含することもある。したがって、一実施形態において、本発明はさらに(上述の1以上の相同性を有する)本発明の単離およびまたは組換えウイルスを提供し、前記ウイルスまたは、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体は、さらに、対象中にHCoV−NL63関連疾患または症状を引き起こす能力を含む。別の実施形態において、本発明は単離および/または組換えウイルスを提供し、さらに、第3のサル腎細胞(tMK;カニクイザル37)において、および/またはサル細胞株LLC−MK2(ECCAC85062804,ATCC CCL−7)への継代の際に、CPEを引き起こす性質を含む。好ましい実施形態において、前記ウイルスはベロ−細胞においてCPEを生成しない(ATCC CRL−1586)34。
【0041】
本発明はさらに表3に示される核酸、および表3に示されるアミノ酸配列、またはこのような核酸および/またはアミノ酸配列の、機能的部分および/もしくは同等物を提供する。前記核酸の機能的同等物は必ずしも量においてではなく質において、前記核酸(またはその一部)と同じハイブリッド形成性を含む。本発明のアミノ酸配列の機能的同等物は必ずしも量においてではなく質において、前記アミノ酸配列(またはその一部)と同じ免疫原性を含む。本発明の核酸の一部は少なくとも15個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも20、さらに好ましくは少なくとも30個のヌクレオチドを含む。アミノ酸配列の一部は互いにペプチド結合している少なくとも5個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも8、さらに好ましくは少なくとも12、さらに好ましくは少なくとも16個のアミノ酸を含む。好ましい実施形態において、前記ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸は少なくとも半連続しており、さらに好ましくは、前記ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸は連続している。本発明の核酸および/またはアミノ酸配列またはその部分の同等物は、本発明の核酸および/またはアミノ酸配列に対して少なくとも80%の相同性、本発明の核酸および/またはアミノ酸配列およびその一部に対して、好ましくは少なくとも90%の相同性、さらに好ましくは95%およびさらに好ましくは少なくとも99%の相同性を含む。本発明はさらにプライマおよび/またはプローブを提供し、本発明に従うウイルスまたは、機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸に特異的にハイブリッド形成可能であり、好ましくはプライマおよび/またはプローブは表3に示される核酸配列に特異的にハイブリッド形成可能である。さらに好ましくは、プライマおよび/またはプローブは、厳しい条件下で前記核酸にハイブリッド形成可能である。特に好ましい実施形態において、プライマおよび/またプローブが提供され、表7に示される配列を含む。
【0042】
当該技術分野において、特異的結合要素が、同定された核酸、脂質および/またはアミノ酸配列に対して生成され得る多くの方法が知られている。このような特異的結合要素はいかなる性質であってもよいが、一般的に核酸および/または蛋白様性質である。したがって、本発明はさらに、本発明に従う、ウイルス、核酸および/またはアミノ酸、またはその機能的部分、誘導体もしくは類似体を特異的に結合可能な単離分子を提供する。前記単離分子はまた、特異的結合要素と呼ばれる。好ましくは前記特異的結合要素は、表3に示される核酸配列の少なくとも一部、および/または表3に示されるアミノ酸配列の少なくとも一部を特異的に結合可能である。好ましい実施形態において、前記結合要素は、蛋白様分子である。好ましくは、抗体またはその、機能的部分、誘導体および/または類似体である。特異的結合要素は好ましくは、無関係の対照と比較して、HCoV−NL63に対する有意なよりよい結合性質を含む。しかしながら、たとえば抗体に関して、HCoV−NL63において特異的に認識されるエピトープはまた、限られた数の他の分子にも存在することが可能である。したがって、結合要素の結合は特異的なこともあるが、HCoV−NL63に存在する分子以外の分子を認識することもある。この交叉反応は特異的結合と分けられるべきであり、抗体の一般的性質である。交叉反応は通常、特定の目的の適切な特異的結合要素の選択を妨げない。たとえば、肝細胞中の蛋白質もまた認識する特異的結合要素は、肝細胞の存在下でさえ多くの用途において使用され、細胞中の位置等の追加情報が、識別するために使用されることが多い。
【0043】
本発明の抗体の1つの供給源は、本発明のウイルスをスクリーニングした感染対象の血液である。さらに、一種が前記対象から得られるB細胞を特徴付けることもある。適切のB細胞が培養され、抗体が収集されてもよい。または、抗体は当該B細胞から配列決定され、人工的に生成されてもよい。本発明の別の抗体供給源は実験動物の免疫付与または人工ライブラリを使用してウイルスの精製フラクションをスクリーニングすることによって生成され得る。抗体の機能的部分は、必ずしも量においてではなく、質において、実質的に前記抗体と同じ性質を有している。前記機能的部分は好ましくはHCoV−NL63の抗原を特異的に結合可能である。しかしながら、前記機能的部分は前記全抗体と比較して、異なる程度にこのような抗原を結合することもある。抗体の機能的部分または誘導体はFAB断片または単一鎖抗体を含む。抗体の類似体は、たとえばキメラ抗体を含む。ここで使用されるように、「抗体」という文言はまた、前記抗体の機能的部分、誘導体および/または類似体を含むということである。
【0044】
本発明の抗体が得られると、その結合能等の所望の性質が改良され得る。これは、たとえばAla走査および/または置換ネットマッピング法(replacement net mapping
method)によってなされ得る。これらの方法を用いて、当初のアミノ酸配列に基づいて多くの種々の蛋白様分子が生成されるが、各分子は少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。前記アミノ酸残基は、アラニン(Ala走査)、または他の任意のアミノ酸残基(
replacement net mapping)のいずれによっても置換され得る。各変異体は続いて前記所望の性質についてスクリーニングされる。生成されたデータが使用され、改良蛋白様分子が設計される。
【0045】
特異的結合要素が生成される多くの種々の方法がある。好ましい実施形態において、本発明は、特異的蛋白様結合要素を生成するための方法を提供し、本発明に従うウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体に結合可能な蛋白様分子を生成し、前記ウイルスに特異的な蛋白様分子を選択することを含む。必要であれば、該方法は前記ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体に結合可能な蛋白様分子の収集物を生成し、前記ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を特異的に結合可能な1以上の結合要素を前記収集物から選択する。
【0046】
任意の特異的結合要素は、本発明のHCoV−NL63ウイルスについて特有である。したがって、このような結合要素と特異的に反応するウイルスはHCoV−NL63ウイルスであり、このように本発明によって提供される。したがって、本発明は、本発明の特異的結合要素、好ましくは蛋白様結合要素と免疫反応する単離および/または組換えウイルスを提供する。本発明はさらに単離HCoV−NL63ウイルスを含む物質の組成、および/または実質的にHCoV−NL63に対応するウイルスを提供する。「実質的にHCoV−NL63に対応する」ウイルスという文言は、上述のようにHCoV−NL63鎖に同一であるか、または前記HCoV−NL63鎖と比較して1以上の変異を含むHCoV−NL63ウイルスのことを言及している。これらの変異は、自然変異または人工変異を含んでもよい。前記変異は当然、必ずしも全ての特異的結合要素ではないが、HCoV−NL63の特異的結合要素を用いる検出を可能にするはずである。前記変異は抗体相互作用、増幅および/またはハイブリッド形成等の一般的検出方法を使用して、変異体を検出することを可能にする。
【0047】
特異的結合要素が、たとえば診断目的に重要な分子であることを考慮すると、本発明はさらに本発明のウイルスまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体の使用を提供し、試料中の前記ウイルスを特異的に結合可能な分子を検出する。さらに、本発明によって定義される、ウイルスまたは、機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸および/またはアミノ酸配列の使用が提供され、試料中の前記ウイルスまたは機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を特異的に結合可能な分子を検出する。好ましくは、前記核酸および/またはアミノ酸配列は、表3に示される配列またはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を含む。好ましくは、前記部分は、少なくとも30個のヌクレオチドおよび/またはアミノ酸長であり、前記部分は好ましくは、95%以上、好ましくは99%以上の配列同一性を含む。好ましい特徴において、前記特異的結合要素は前記ウイルスの特異的配位子および/または抗体を含む。
【0048】
さらに、本発明に従うプライマおよび/またはプローブ、本発明の特異的結合要素、ならびに/あるいは、本発明に従う、ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸が提供され、試料中のHCoV−NL63コロナウイルスまたはその一部を検出および/または同定する。好ましくは、前記核酸は表3に示される配列を含む。
【0049】
HCoV−NL63ウイルスが使用され、対象中において免疫応答を発生させる。これは、たとえばワクチン接種戦略において有用である。したがって、本発明はさらにワクチンまたは薬剤として使用するためのHCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を提供する。該薬剤が使用されるのは、一般的に、対象が既にウイルスに感染しており、免疫原が使用されウイルスに対する免疫応答を増化する場合である。本発明はさらに、ワクチンまたは薬剤としての使用のための、本発明の特異的結合要素を提供する。当該使用は、特異的結合要素が蛋白様分子、好ましくは抗体またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含む。このような抗体は受動免疫を提供するが、それに付着するプロテアーゼ等の活性要素を有してもよい。該薬剤の使用は、さらに、HCoV−NL63ウイルスに感染した対象が特異的結合要素で治療される場合であってもよい。
【0050】
ワクチンは種々の方法で生成されてもよい。1つの方法は、たとえば記載されるサル細胞株でHCoV−NL63ウイルスを培養し、培養物から得られた不活性ウイルスを使用することである。または、弱毒化ウイルスは、不活性または生ワクチンのいずれとしても使用され得る。コロナウイルスワクチンの生成のための方法が適応され、本発明のHCoV−NL63のためのワクチンを生成する。したがって、本発明はさらにHCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体の使用を提供し、コロナウイルス属関連疾患に対するワクチンを調製する。さらに本発明は本発明の特異的結合要素の使用を提供し、コロナウイルス属関連疾患に対するワクチンまたは薬剤を調製する。さらに、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、本発明の特異的結合要素、本発明の核酸あるいは本発明のプライマおよび/またはプローブが提供され、コロナウイルス属関連疾患を診断する。好ましくは、前記コロナウイルス属関連疾患はHCoV−NL63コロナウイルス関連疾患を含む。
【0051】
さらに、ワクチンが提供され、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、および/または、本発明の特異的結合要素を含む。さらに、薬剤が提供され、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、および/または、本発明の特異的結合要素を含む。好ましくは、前記ワクチンまたは薬剤が使用され、HCoV−NL63関連疾患を少なくとも部分的に予防するおよび/または治療する。
【0052】
本発明の重要な使用は診断ツールを生成し、対象がHCoV−NL63ウイルス感染に罹患しているか否かまたは対象がHCoV−NL63ウイルス感染に曝されているか否かを判断することである。多くの種々の診断上の利用が予想される。それらは一般的に、対象中に存在するまたは存在したウイルスの分類を可能にする要素を同定することを含む。HCoV−NL63のための1種の診断ツールは、種々の細胞株におけるウイルスの特異的拡散特性を使用する。それは記載される好ましいサル細胞株において複製するが、ベロ細胞においては複製されない。当該性質が使用され、他の既知のコロナウイルスからHCoV−NL63を識別する。したがって、1つの特徴において、本発明は診断キットを提供し、少なくとも1種の好ましいサル細胞株、好ましくは第3のサル腎細胞(tMK;カニクイザルまたはサル細胞株LLC−MK2)を含む。
【0053】
多くの最新の診断キットは、(ウイルスまたはウイルス感染細胞を検出するための)特異的結合要素、および/または、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、および/または、(診断される対象の血液成分中の抗体を検出するための)本発明のアミノ酸またはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を含む。多くの他の一般的に知られる診断キットは試料中のHCoV−NL63ウイルス特異的核酸の同定を利用している。このようなアッセイが実施される種々の方法があり、1つは試料中のHCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を検出する方法であり、本発明に従うプライマおよび/またはプローブを用いて前記ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸をハイブリッド形成および/または増幅することと、ハイブリッド形成および/または増幅された生成物を検出することとを含む。したがって、本発明はまた、診断キットを提供し、HCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体、本発明に従う特異的結合要素、および/または、本発明に従うプライマ/プローブを提供する。
【0054】
さらにHCoV−NL63関連疾患に罹患しているまたは罹患する危険のあるヒトを治療するための方法が提供され、本発明に従うワクチンまたは薬剤を前記ヒトに投与することを含む。さらに、ヒトがHCoV−NL63関連疾患に罹患しているか否かを判断するための方法が提供され、前記ヒトからの試料を得ることと、本発明の方法および/または診断キットを用いて前記試料中のHCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を検出することとを含む。
【0055】
さらに、本発明に従うウイルスまたは機能的部分、誘導体および/もしくは類似体と、本発明に従う核酸とをコードする単離または組換え核酸が提供され、少なくとも、表3に示される配列の機能的部分を含む。さらに本発明に従う核酸によってコードされるアミノ酸配列および本発明に従うアミノ酸配列が提供され、少なくとも、表3に示される配列の機能的部分を含む。さらに本発明に従う方法によって得られる、HCoV−NL63を特異的に結合可能な蛋白様分子、および、ワクチンにおけるこのような蛋白様分子の使用またはHCoV−NL63検出のための診断方法が提供される。
【0056】
実施例
実施例1
ウイルス発見のためのcDNA−AFLP
本発明者らはcDNA−AFLP技術を修正し、血漿/血清試料から、またはCPE陽性培養上清からウイルス配列を増幅できるようにした(図1)。調整された方法においては、増幅前のmRNA単離段階は、ウイルス核酸を精製する処理に置き換えられる。残余の細胞およびミトコンドリアを除去するための遠心分離段階は、精製に重要である。さらに分解細胞由来の妨害染色体DNAおよび妨害ミトコンドリアDNAを取り除くには、DNAse処理単独で充分であり、最終的に頻繁に切断する制限酵素を選択することによって、該方法は充分調整され、大部分のウイルスが増幅される。このいわゆるウイルス発見cDNA−AFLP(VIDISCA)を用いて、本発明者らは肝炎Bウイルスに感染しているヒトおよび急性パルボB19に感染しているヒトのEDTA−血漿由来のウイルス核酸を増幅できた(結果は示されていない)。該技術もまた、陽性培養上清中のHIV−1を検出可能であり、RNAおよびDNAウイルス両方を同定する能力を示す(結果は示されていない)。
【0057】
残余の細胞を除去するために、110μlのウイルス培養上清をエッペンドルフ微小遠心(13500rpm)において最大速度で10分間沈降させた。100μlが未使用の試験管に移され、15μlのDNAseバッファおよび20ユニットのDNAseI(Ambion)を使用して、37℃で45分間DNAse処理された。DNAse処理が含まれ、分解細胞由来の染色体DNAを除去する。この900μlのL6溶解バッファおよび40μlのシリカ懸濁液が加えられ、Boom4に記載のように核酸が抽出された。ウイルス核酸は40μlのH2Oに溶出された。20μlの溶出液を用いて、逆転写が行われ、10mM トリスHClpH8.3と、50mM KClと、0.1% Triton X−100と、4.8mM MgCl2と、0.4mMの各dNTPとを含むバッファ中、2.5μgのランダム6量体(Amersham Bioscience)、200U MMLV−RT(In Vitrogen)を使用した。試料は37℃で90分間培養された。続いて、第2鎖DNA合成が行われ、0.25mM dNTPsそれぞれと、17.5mM MgCl2と、トリス−HClpH7.5中、26 U Sequenase II
(Amersham Bioscience)、7.5U RNAse H(Amersham Bioscience)を使用した。37℃90分間の培養の後、フェノール/クロロホルム抽出が行われ、エタノール沈殿が続いた。ペレットが30μlのH2Oに溶解された。cDNA−AFLPは、基本的に、いくつかの修正を加えたBachem1に記載のように行われた。dsDNAは製造業者のプロトコルに従って、HinP IおよびMseI制限酵素(New England Biolabs)を用いて分解された。分解の後、MseIアダプタおよびHinP Iアダプタ(以下参照)が5Uリガーゼ酵素(In Vitrogen)およびリガーゼバッファと共に加えられ、続いて37℃で2時間のさらなる培養が行われた。MseIアダプタおよびHinP Iアダプタは、MSEおよびHinP1アダプタ(表1)に対する先端鎖オリゴとMSEアダプタおよびHinP1アダプタに対する下端鎖オリゴとを混合することによって、前もって調製され、65℃で培養され、続いてリガースバッファの1:40希釈物の存在下で室温まで冷却した。
【0058】
第1PCRは、投入量として、10μlのライゲーション混合物と、2.5UのAmpliTaqポリメラーゼ(Perkin−Elmer)と、100ngのHinPI標準プライマと、100ngのMseI標準プライマとで行われた。PCR反応は5分95℃、20周期の1分95℃−1分55℃−2分72℃、10分72℃のデータに従って行われた。投入量として5μlの第1PCR生成物が、100ngのHinPI−Nプライマと、100ng MseI−N(1ヌクレオチドで拡張された標準プライマの配列)と、2U AmpliTaqポリメラーゼとを含む第2「選択的」増幅段階において使用された。選択的PCRが、「タッチダウンPCR」のデータに従って増幅された。すなわち10周期の60秒94℃−30秒65℃−1分72℃で増幅され、アニーリング温度は各サイクルで65℃から1℃に下げられ、続いて、23周期の30秒94℃−30秒56℃−1分72℃で増幅された。最後に、試料は10分72℃で培養された。PCR生成物は、4%Metaphor(登録商標)ゲル(Cambrex,Rockland,USA)で評価された。ゲルのバンドがかなり薄ければ、PCR生成物は、60μlのPCR生成物を使用して、真空乾燥によって濃縮された。製造業者のプロトコルに従ってQuiagenゲル精製キットを使用して、関心のあるPCR断片はゲルから切断され、DNAがゲルから溶離された。PCR生成物はpCR(登録商標)2.1−TOPOプラスミド(In Vitrogen)と、化学的に適格なOne Shot E.coli(In Vitrogen)とを使用して複製された。コロニーにおけるPCRが行われ、このPCR生成物が投入され、Big Dyeターミネータ ケミストリ(terminator chemistry)(Applied Biosystems)を使用して、挿入部分が配列決定された。逆転写段階は除かれ、HinPI分解およびアダプタ ライゲーションのみが行われ、第1PCRは20周期の代わりに35周期で行われ、それらの第1PCR断片はアガロースゲル電気泳動上で視覚化された。
【0059】
DNA配列決定および分析
プラスミドを含むコロナウイルス−PCR生成物はBigDyeTM Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems,Foster City,Calif.)を用いて配列決定され、−21 M13RPおよびT7プライマを使用した。反応混合物を配列決定する電気泳動はApplied Biosystems377自動シークエンサーを用いて行われ、製造業者のプロトコルに従った。Sequence Navigator(バージョン 1.01)およびAuto Assembler(バージョン 2.1)ソフトウェアパッケージ(ABI,California,USA)が使用され、全ての配列決定データを分析した。配列は、NCBIウェブページhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/blastのBLASTツールを使用して、Genbankデータベースにおける全ての配列と比較された。系統発生解析のために、配列がClustalXソフトウェアパッケージを使用して、以下の設定で整列された34。Gap Opening Penalties:10.00,Gap extention penalty 0.20,Delay divergent sequences switch 30%,transition weight 0.59。系統発生解析はMEGAプログラムの近隣結合法を使用して実施された(9)。ヌクレオチド距離マトリックスは、Kimuraの2パラメータ推定値またはp距離推定値のいずれか一方によって生成された(5)。ブートストラップ再サンプリング(500複製)が使用され、個々の枝上におおよその信用限界を置いた。
【0060】
完全なHCoV−NL63ゲノムのヌクレオチド配列の決定
HCoV−NL63ゲノムの既に配列決定されている領域に位置する、特異的プライマの組み合わせと、特許PALM法(WO0151661)を使用して、本発明者らは当該新規コロナウイルスに対する完全長ゲノム配列を複製および決定する過程にある。HCoV−NL63ゲノムの分析部分に位置する5’−オリゴヌクレオチドと、3’標識化ランダムプライマ(JZH2R)との組み合わせを使用して、さらなる断片が前記プロトコルと同様のネストRT−PCRプロトコルを使用して増幅された。
【0061】
SZ163の単離
2003年1月、鼻感冒、結膜炎および熱を伴った7ヶ月の子供が来院した。胸部X線は気管支梢炎の典型的特徴を示し、発病から4日後に、鼻咽頭吸引物が収集された(試料nr:HCoV−NL63)。アデノウイルスと、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)と、インフルエンザAおよびBと、パラインフルエンザ1,2および3と、ライノウイルスと、HCoV−229Eと、HCoV−OC43とに対する、当該試料についての通常使用されるあらゆる試験は陰性であった。続いて、臨床試料がヒト線維芽肺(HFL)細胞と、第3のサル腎細胞(tMK;カニクイザル)と、R−ヒーラ細胞とを含む種々の細胞に接種された。CPEはtMK細胞でのみ検出され、接種後8日に最初に観察された。CPEは、ウイルス感染した細胞における屈折の出現と共に拡散し、7日後に細胞分離された。さらに顕著なCPEがLLC−MK2細胞への継代の際に観察された。さらに、全体的な細胞円形化、適度な細胞増大が観察された。ヒト内皮肺細胞、HFL、横紋筋肉腫細胞およびベロ細胞におけるさらなる継代培養は、CPEに対して依然として陰性であった。培養物中のインフルエンザAおよびB、RSV、アデノウイルスまたはパラインフルエンザウイルス型1,2もしくは3を検出するための免疫蛍光アッセイは依然として陰性であった。
【0062】
続いて、感染LLC−MK2細胞の培養上清がVIDISCAによって分析された。対照として、本発明者らは非感染LLC−MK2細胞の上清を使用した。第2PCR増幅段階後、複数のDNA断片が試験試料中に存在したが、該対照中には存在しなかった。これらの断片は複製され、配列決定された。GenbankにおけるBlast検索は16断片中8断片が、最も高い相同性を有するコロナウイルス科のヒトコロナウイルス229Eに対して配列類似性を有していることが明らかとなった(表4および5)。
【0063】
レプリカーゼ1B領域の270nt断片の系統発生解析は、本発明者らがコロナウイルス群1の別個の新規要素を同定したことを示した。VIDISCA技術を用いて、163−2,163−4,163−9,163−10,163−11,163−14,163−15および163−18という名の8HCOV−163−特異的断片が単離され、複製され、配列決定され、Genbankからの関連配列を用いて整列された。使用された配列のGenbank登録番号は、MHV(マウス肝炎ウイルス):AF201929、HCoV−229E:AF304460、PEDV(ブタ伝染性下痢症ウイルス):AF353511、TGEV(伝染性胃腸炎ウイルス):AJ271965、SARS−CoV:AY278554、IBV(鳥類伝染性気管支炎ウイルス):NC_001451、BCoV(ウシコロナウイルス):NC_003045、FCoV(ネココロナウイルス):Y13921およびX80779、CCoV(イヌコロナウイルス):AB105373およびA22732、PRCoV(ブタ呼吸器コロナウイルス):M94097、FIPV(ネコ伝染性腹膜炎ウイルス):D32044である。HCoV−229E(AF304460)と比較されるHCoV−NL63断片の位置:レプリカーゼ1AB遺伝子:15155−15361,16049−16182,16190−16315,18444−18550,スパイク遺伝子:22124−22266、ヌクレオカプシド遺伝子:25667−25882および25887−25957、3’UTR:27052−27123。枝の長さは配列ごとの置換の数を示している。最も密接に関連した種の配列から同一性スコアが計算される(表5および表6)。
【0064】
また、推定アミノ酸配列が関連コロナ(様)ウイルスのオープンリーディングフレームにおける対応する領域に対して整列された(表6)。
【0065】
ヒトコロナウイルスはヒトにおける一般的な感冒の10〜30%を占めており7、呼吸器疾患を伴う子供においてコロナウイルスが見つかることは珍しいことではない。しかしながら、ウイルスHCoV−NL63がLLC−MK細胞から得られるということは印象的である。ヒトコロナウイルス229EおよびOC−43は、サル腎細胞において複製できないことが知られている。興味深いことに、SARSの原因である新たに同定されたヒトコロナウイルスもまた、サル腎細胞において複製可能である30。
【0066】
細胞培養物におけるHCoV−NL63の増殖
鼻咽頭吸引物は発症の4日後に収集された。試料は、アデノウイルスと、RSVと、インフルエンザAと、インフルエンザBと、パラインフルエンザ型1,2および3の存在するかについて、ウイルス性呼吸器キット(Bartels:Trinity Biotech plc,Wicklow Ireland)を用いて試験された。さらに、ライノウイルスと、メタ−肺炎ウイルス属と、HCoV−OC43およびHCoV−229Eとに対するPCR診断が行われた2,10。続いて、元の鼻咽頭吸引物が、HFL細胞、tMK細胞およびRHaLa細胞を含む種々の細胞培養物に接種された。試験管はローラドラム中で34℃に保たれ、3〜4日毎に観察された。維持培地は3〜4日毎に補給された。2種の異なる培地が実施された。ウシ胎児血清を含まないOptimem1(Gibco)がtMK細胞に対して使用され、3%ウシ胎児血清を含むMEM Hanks’/Earle’s培地(Gibco)が残りの細胞型に使用された。ウイルス培養物において、インフルエンザウイルスAおよびBと、RSVと、アデノウイルス(Imagen,DAKO)とに対する蛍光標識マウス抗体のプールを用いて直接染色が行われた。間接染色はマウス抗体(Chemicon,Brunschwig,Amsterdam Netherlands)を用いてパラインフルエンザウイルス型1,2または3に対して行われ、続いて標識ウサギ抗マウス抗体(Imagen,DAKO)を用いて染色が行われた。
【0067】
鼻咽頭標本におけるHCoV−NL63の検出方法
診断RT−PCRに対して、核酸がBoom法4によって、50μlウイルス上清または50μl懸濁鼻咽頭標本から抽出された。10ngの逆転写プライマrepSZ−RT(表7)が使用されたことを除いて、逆転写は上述のように行われた。RT混合物全体が、100ngのプライマrepSZ−1および100ngのプライマrepSZ−3を含む第1PCR混合物に加えられた。PCR反応は5分95℃、20周期の1分95℃−1分55℃−2分72℃、10分72℃のデータに従って行われた。ネストPCRは100ngのプライマrepSZ−2および100ngのプライマrepSZ−4を含む5μlの第1PCRを使用して開始された。第1PCRと同じデータの25周期PCRが行われた。10μlの第1および10μlのネストPCRがアガロースゲル電気泳動によって分析された(図2)。断片の複製および配列決定は、基本的に上述のように行われた。
【0068】
ポリクローナル抗体を培養する方法
HCoV−NL63表面蛋白(たとえば、S−糖蛋白質またはHE−糖蛋白質)内の適切な領域が選択され、適切なオリゴヌクレオチドおよびRT−PCRを用いて増幅された。相当する、精製されたウイルス抗原は、適切な宿主(たとえば、前記Yarrowia lipolytica38)における発現によって得られる。メスNZWウサギ(およそ4kg)は0.5〜5.0mgのウイルス蛋白質抗原調製品を与えられる。抗原は0.5mlのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.3)中で懸濁され、等体積の完全フロイントアジュバント(CFA)において乳化された。フロイントアジュバントは、既知のアジュバントシステムであり、該システムは少量の抗原が使用され、抗原の免疫原性が(おそらくであるが)未知であるこれらの実験における使用に適している。刊行されている使用のためのガイドラインに従い、該ガイドラインは、各部において注入を0.1mlまでに制限し、最初の免疫化投与量に関してCFAのみを使用する。この抗原調製(全量1ml)は、ウサギの首の後部の弛緩性皮膚に皮下注射される。この注射投与法は免疫学的に有効であり、片側面または両側面注射に関連する局部炎症の可能性を最小限にする(このような側面炎症は動物の移動性を低下させ得る)。3週間の安静状態の後、1mlの血液が試験出血のために耳動脈から取り出される。所望の抗体の力価が小さすぎると判断されると、抗体が増やされる。適切な抗体レベルのウサギは皮下的に、CFAに含まれる1.0mgの抗原を用いて促進される。促進された動物は2週間後に出血させられる、すなわち、15mlの血液が、赤外線灯を用いて血管を広げて、耳動脈から採取される。ウサギは市販の拘束手段の内に置かれ、全部で7回以下のキシラジンを用いて鎮静され、ウサギは、キシラジン/ケタミンを使用して麻酔に続いて心臓の穿刺によって放血させられた。
【0069】
ワクチン生成のための方法
サブユニットワクチン生成のために、HE,MおよびN蛋白質とおそらく組み合わされるS−糖蛋白質は適切な真核性宿主(たとえば、Y.lipolyticaまたはLLC−MK2細胞)において発現され、選択的に2つの小さな親和性タグ(たとえば、HisタグまたはStrepIIタグ)を使用して精製される。適切な精製の後、得られたウイルス蛋白質はサブユニットワクチンとして使用され得る。
【0070】
あるいは、HCoV−NL63ウイルスが適切な細胞株において上述のように増殖され、続いてWu11に記載のように処理され得る。簡潔に、ウイルスは20%ポリエチレングリコール6000を用いて培地から沈殿させられ、不連続な40〜65%スクロース変化率を経て、4時間80000×g、続いて、直線的な5〜40%CsCl変化率、120000×gで4時間、超遠心分離によって精製される。得られたウイルス調製物は、Blondel3に記載のように65℃で30分間加熱することによって不活性化され得る。
【0071】
光学バイオセンサにおける、固定化した配位子に結合する、S糖蛋白質または任意のHCOV−NL63ウイルス蛋白質の解析
結合反応は20℃で、わずかな修正をした、IAsys 2チャネル共鳴ミラーバイオセンサにおいて実行された(Affinity Sensors,Saxon Hill,Cambridge,United Kingdom)。平面ビオチン表面は、600arc sシグナルが、1ng結合蛋白質/mm2に対応し、製造業者の教授に従い、ストレプトアビジンを用いて誘導化された。対照は、ウイルス蛋白質はストレプトアビジン誘導ビオチン表面に結合しないということを示した(結果は示されていない)。ビオチン化抗体は平面ストレプトアビジン誘導表面に固定化され、その後PBSで洗浄された。バイオセンサキュベットの表面上の、固定化した配位子および結合したS−糖蛋白質の分布が共鳴走査によって調べられ、常にこれらの分子はセンサ表面上に均一に分布し、したがってミクロの状態で集合しないことが示された。結合アッセイが20±0.1℃で30μlのPBSの最終体積において実施された。ライゲート(ligate)がキュベットに対して、1μl〜5μlのPBS中に既知の濃度で追加され、14〜70nMのS−糖蛋白質の最終濃度を与えた。解離段階後、残余の結合したライゲートを除去し、固定した配位子を再生するために、キュベットは50μlの2M NaCl−10mMNa2HPO4,pH7.2で3回、50μlの20mM HClで3回洗浄した。データは、種々の量の固定した抗体(0.2,0.6および1.2ng/mm2)を用いて実行された実験からプールされた。konの計算のために、低濃度のライゲート(S−糖蛋白質)が使用されたが、koffの測定のために、より高濃度のライゲートが使用され(1μM)、再結合の影響を避けた。結合パラメータkonおよびkoffは結合反応の会合および解離段階からそれぞれ計算され、手段を提供する非線形曲線適合FastFitソフトウェア(Affinity Sensor)を使用した。解離定数(kd)は会合および解離速度定数と平衡付近で観測される結合の程度とから計算された。
【0072】
実施例2
方法
ウイルス単離
子供は、アムステルダムに住んでいたが、3日以来のコリザおよび結膜炎の症状を伴って病院に収容された。入院時、彼女は息切れしており、飲むことを拒絶した。患者の体温は39℃、呼吸数は96%の酸素飽和状態で50回呼吸/分であり、脈拍は177打/分であった。聴診の際、左右の持続性イクスピリウム(expirium)および終末呼気性喘鳴が見られた。胸部X線検査は気管支梢炎の典型的特徴を示した。子供は1日目にサルブタモールおよびイプラトロピウムを用い、続いて5日間、サルブタモールを用いて治療された。子供は外来で毎日みられ、症状は徐々に軽減した。鼻咽頭吸引物は発症5日後に収集された。試料は、RSVと、アデノウイルスと、インフルエンザAおよびBウイルスと、パラインフルエンザウイルス型1,2および3の存在についてウイルス呼吸器キット(Bartels:Trinity Biotech plc,Wicklow Ireland)を使用して試験された。さらに、ライノウイルスと、エンテロウイルスと、メタ−肺炎ウイルス属と、HCoV−OC43およびHCoV−229Eに対するPCR試験が行われた(2,10)。元の鼻咽頭吸引物は種々の細胞に接種された。培養物はローラドラム中34℃に保たれ、3〜4日毎に観察された。維持培地は3〜4日毎に補給された。2種の異なる培地が実施された。ウシ胎児血清を含まないOprimem1(In Vitrogen,Breda,The Netherlands)がtMK細胞に対して使用され、3%のウシ胎児血清を含むMEM Hanks’/Earle’s培地(In Vitrogen Breda,The Netherlands)が残余の細胞型に対して使用された。吸引物試料に感染した細胞培養物は培養の1週間後に呼吸器ウイルスの存在に関して染色された。直接染色がRSVと、インフルエンザAおよびBウイルス(Imagen,DakoCytomation Ltd,Cambridge,UK)とに対する蛍光標識マウス抗体のプールを用いて行われた。間接染色が、マウス抗体(Chemicon International,Temecula,California)を用いてアデノウイルスとパラインフルエンザウイルス型1,2または3とに対して行われ、FITC−標識ウサギ抗マウス抗体(Imagen,DakoCytomation Ltd,Cambridge,UK)を用いて次の染色が行われた。
【0073】
VIDISCA法
残余の細胞およびミトコンドリアを除去するために、110μlのウイルス培養物の上清が、エッペンドルフ微小遠心(13500rpm)において、最大速度で10分間沈降させられた。染色体DNAおよびミトコンドリアDNAを溶解細胞から除去するために、100μlが未使用の試験管に移され、37℃で45分間DNAseI(Ambion,Huntingdon,UK)を用いて処理された。核酸はBoomに記載のように抽出された(4)。逆転写反応がランダム6量体プライマ(Amersham Bioscience,Roosendaal,The Netherlands)およびMMLV−RT(In Vitrogen,Breda The Netherlands)を用いて行われ、一方、第2鎖DNA合成がSequenaseII(Amersham Bioscience,Roosendaal,The Netherlands)を用いて実施された。フェノール/クロロホルム抽出の後にエタノール精製が行われた。cDNA−AFLPが基本的に、いくつかの修正をしたBachem(1)に記載のように行われた。dsDNAはHinPIおよびMseI制限酵素を用いて分解された(New England Biolabs,Beverly,Massachusetts)。続いてMseI−およびHinPI−アンカ(下記)が、5Uリガーゼ酵素(In Vitrogen,Breda,The Netherlands)と共に提供されたリガーゼ中に37℃で2時間、加えられた。MseI−およびHinPI−アンカが先端鎖オリゴ(MseIアンカに対する5’−CTCGTAGACTGCGTACC−3’およびHinPIアンカに対する5’−GACGATGAGTCCTGAC−3’)を下端鎖オリゴ(MseIアンカに対する5’−TAGGTACGCATGC−3’およびHinPIアンカに対する5’−CGGTCAGGACTCAT−3’)と共に、リガーゼバッファ1:40希釈物中で混合することによって調製される。20周期のPCRは、10μlのライゲーション混合物と、100ngHinPI標準プライマ(5’−GACGATGAGTCCTGACCGC−3’)と、100ngのMseI標準プライマ(5’−CTCGTAGACTGCGTACCTAA−3’)とを用いて行われた。5μlのこのPCR生成物は、100ng HinPI−Nプライマおよび100ng MseI−N(「N」は標準プライマが1つのヌクレオチドG,A,TまたはCで拡張されることを示している)を用いた第2「選択的」増幅段階における投入物として使用された。増幅の選択的巡回は、「タッチダウンPCR」すなわち10周期の[60秒94℃−30秒65℃−1分72℃]で行われ、アニーリング温度は各周期1℃低下され、続いて23周期の[30秒94℃−30秒56℃−1分72℃]および1周期の10分72℃が行われた。PCR生成物は4%Metaphor(登録商標)アガロースゲル(Cambrex,Rockland,Maine)上で分析され、関心のある断片がBigDyeターミネータ試薬を用いて複製および配列決定された。電気泳動およびデータ収集がABI377機器上で行われた。
【0074】
cDNAライブラリ構築および全ゲノム配列決定
cDNAライブラリは、わずかな修正をしたMarra17に記載のように生成された。逆転写反応の間、ランダム6量体プライマのみが使用され、オリゴdT−プライマは使用されず、増幅されたcDNAはPCR2.1−TOPO TA複製ベクタ中に複製された。コロニーが採取され、BHI培地中に懸濁された。E.coli懸濁液は、増幅のためのT7およびM13RPを使用して、PCR増幅において投入物として使用された。続いて、PCR生成物がPCR−増幅において使用されたものと同じプライマとBigDyeターミネータ試薬とを用いて配列決定された。電気泳動およびデータ収集はABI377機器上で行われた。配列は、AutoAssembler DNAsequence Assembly ソフトウェア バージョン 2.0を用いて集められた。
【0075】
診断RT−PCR
492人から、総数600の呼吸器試料が2002年8月から2002年12までの間に収集された。物質の種類は、口腔/鼻咽頭吸引物から咽頭スワブ、気管支肺胞洗浄物、唾液に至った。試料は上下気道疾患に罹患しているヒトの定期的ウイルス診断スクリーニングのために収集された。100μlの試料がBoom抽出において使用された(4)。逆転写が、10ngを使用したMMLV−RT(In Vitrogen)または逆転写プライマ(repSZ−RT:5’−CCACTATAAC−3’)を用いて行われた。RT混合物全体が、100ngのプライマrepSZ−1(5’−GTGATGCATATGCTAATTTG−3’)および100ngのプライマrepSZ−3(5’−CTCTTGCAGGTATAATCCTA−3’)を含む第1PCR混合物に加えられた。PCR反応は、5分95℃、20周期の1分95℃−1分55℃−2分72℃、10分72℃のデータに従って行われた。ネストされたPCRは100ngのプライマrepSZ−2(5’−TTGGTAAACAAAAGATAACT−3’)および100ngのプライマrepSZ−4(5’−TCAATGCTATAAACAGTCAT−3’)と共に、5μlの第1PCRを使用して開始された。第1PCRと同じデータの25周期のPCRが行われた。10μlのPCR生成物がアガロースゲル電気泳動によって分析された。あらゆる陽性試料が配列決定され、試料中のHCoV−NL63の存在を確認した。
【0076】
配列分析
配列はNCBIウェブページhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/blastのBLASTツールを使用して、Genbankデータベース中のあらゆる配列と比較された。系統発生解析のために、配列は以下の設定でClustalXソフトウェアパッケージを使用して整列された。Gap Opening Penalties:10.00,Gap extention penalty 0.20,Delay divergent sequences switch 30%,transition weight 0.5(9)。系統発生解析は、1遺伝子内のあらゆる断片の情報を使用するMEGAプログラム(5)の近隣結合法を使用して実行された。ヌクレオチド距離マトリックスはKimuraの2パラメータ推定値またはp距離推定値のいずれか一方によって生成された(6)。ブートストラップ再サンプリング(500複製)が使用され、個々の枝上におおよその信用限界を置いた。
【0077】
結果
急性呼吸器疾患を伴う子供からのウイルスの単離
2003年1月、鼻感冒、結膜炎および熱を伴う7ヶ月の子供が来院した。胸部X線は気管支梢炎の典型的特徴を示し、発病から5日後に、鼻咽頭吸引物試料が収集された(試料 NL63)。呼吸器合胞体ウイルス(RSV)と、アデノウイルスと、インフルエンザAおよびBウイルスと、パラインフルエンザウイルス型1,2および3と、ライノウイルスと、エンテロウイルスと、HCoV−229Eと、HCoV−OC43とに対する診断試験は、依然として陰性であった。続いて、臨床試料はヒト胎児肺線維芽細胞(HFL)と、第3のサル腎細胞(tMK;カニクイザル)と、ヒーラ細胞とに接種された。CPEはtMK細胞でのみ検出され、接種後8日に最初に観察された。CPEはウイルス感染した細胞における屈折の出現と共に拡散し、7日後に細胞分離された。さらに顕著なCPEがサル腎細胞株LLC−MK2への継代の際に、全体的な細胞円形化および適度な細胞増大とともに観察された(図1)。HFL、横紋筋肉腫細胞およびベロ細胞におけるさらなる継代培養は、CPEに対して依然として陰性であった。培養物中のRSV、アデノウイルス、インフルエンザAおよびBウイルスまたはパラインフルエンザウイルス型1,2および3を検出するための免疫蛍光アッセイは依然として陰性であった。酸不安定性およびクロロホルム感受性試験は、ウイルスはおそらくエンベロープを有しておりピコルナウイルス群24の要素ではないということを示した。
【0078】
VIDISCA法によるウイルス発見
分子生物学ツールによる未知の病原体の同定は、標的配列が未知であり、ゲノム特異的PCR−プライマを設計することができないという問題に直面する。この問題を克服するために、本発明者らは、cDNA−AFLP技術4に基づくVIDISCA法を開発した。VIDISCAの利点は、制限酵素部位の存在は充分増幅を保証するので、配列の予備的知識が要求されないということである。投入試料は、血漿/血清または培養上清のいずれであってもよい。cDNA−AFLPは単離mRNAを用いて開始するのに対して、VIDISCA技術はウイルス核酸に関して選択的に濃縮する処理で始まり、遠心分離段階を含み、残余の細胞およびミトコンドリアを除去する。さらに、DNAse処理が使用され、分解した細胞由来の妨害染色体DNAおよび妨害ミトコンドリアDNAを除去し、一方、ウイルス核酸はウイルス粒子内で保護される。最終的に、頻繁に切断する制限酵素を選択することによって、該方法は微調整され、大部分のウイルスが増幅される。VIDISCAを使用して、本発明者らは肝炎Bウイルスに感染しているヒトおよび急性パルボウイルスB19に感染しているヒトのEDTA血漿由来のウイルス核酸を増幅することができた。該技術はまた細胞培養物中のHIV−1を検出することが可能であり、RNAおよびDNAウイルス両方を同定する能力を示す。
【0079】
CPE−陽性培養物NL63の上清がVIDISCAによって分析された。本発明者らは対照として非感染細胞の上清を使用した。第2PCR増幅段階の後、特有で顕著なDNA断片が対照中でなく試験試料中に存在した。これらの断片は複製され、配列決定された。16断片中12はコロナウイルス科の要素に対して配列類似性を示したが、有意な配列相違はあらゆる断片において明白であった。これらの結果は本発明者らが新規コロナウイルス(HCoV−NL63)を同定したということを示している。
【0080】
患者試料におけるHCoV−NL63の検出
HCoV−NL63が子供の鼻咽頭吸引物に由来するということを示すために、本発明者らはHCoV−NL63を特異的に検出する診断RT−PCRを設計した。この試験は1b遺伝子内の特有の配列に基づいており、臨床試料中のHCoV−NL63の存在を確認した。このPCR生成物の配列は、LLC−MK2細胞における生体外での継代の際に同定されたウイルスの配列と同一であった(結果は示されていない)。
【0081】
培養されたコロナウイルスは該子供由来であることが確認されたが、該問題は、依然として、これは他に類のない臨床事例であるのか、またはHCoV−NL63はヒトにおいて広まっているのかというところにとどまっている。この問題に対処するために、本発明者らは、HCoV−NL63の存在に関して2002年12月から2003年8月までの間の、入院患者および外来診療室を訪れた人の呼吸器試料を調べた。本発明者らはHCoV−NL63を有するさらなる7人を確認した。PCR生成物の配列分析は、種々の試料においてわずかな特徴的な(および複製可能な)点変異の存在を示し、NL63の種々の部分群が相互に広がっていることを示唆した。HCoV−NL63陽性の少なくとも5人は気道疾患に罹患しており、2人の臨床データは得られなかった。初発症例を含んでおり、5人の患者が1歳以下の子供であり、3人の患者が大人である。2人の大人は免疫抑制されているようであり、それは、彼らのうちの1人が骨髄移植者であり、もう1人がCD4細胞の総数が非常に少ないAIDSに罹患しているHIV陽性患者であるからである。第3の大人の臨床データは得られなかった。1人の患者のみがRSV(nr72)に重感染しており、HIV感染患者(nr466)はニューモシスティス・カリニを有していた。他の呼吸器病因は他のHCoV−NL63陽性患者において見つからず、呼吸器症状はHCoV−NL63によって引き起こされることを示唆している。あらゆるHCoV−NL63陽性試料が昨冬季に収集され、2003年1月においては7%の検出頻度であった。2003年の春および夏に収集された306の試料はいずれも該ウイルスを含んでいなかった(P<0.01,2−tailed t−test)。
【0082】
HCoV−NL63完全ゲノム分析
コロナウイルスのゲノムは特徴的なゲノム組織を有している。5’halfはラージ1aおよび1b遺伝子を含んでおり、非構造ポリ蛋白質をコードしており、4つの構造蛋白質、すなわちスパイク(S)、膜組織(M)、エンベロープ(E)およびヌクレオカプシド(N)をコードする遺伝子を含む。さらなる非構造蛋白質が1bおよびS遺伝子間、SおよびE遺伝子間、MおよびN遺伝子間またはN遺伝子下流のいずれかでコードされる。
【0083】
HCoV−NL63ゲノム組織がこれらの特徴を共有しているか否かを判断するために、本発明者らは提供物質として、精製したウイルスのストックを用いてcDNAライブラリを構築した。総数475ゲノム断片が、ヌクレオチドごとに7配列という平均範囲で分析された。特異的PCRが設計され、質の低い配列データの、隙間を埋め、領域を配列決定した。5’RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)および3’RACE実験と組み合わせて、完全HCoV−NL63ゲノム配列が解明された。
【0084】
HCoV−NL63のゲノムはポリA末端を有する27,553個のヌクレオチドのRNAである。それは34%のG−C含有量を有し、37%〜42%25にわたるコロナウイルス科のうちで最も低いG−C含有量を有している。ZCurveソフトウェアが使用され、ORF26を同定し、ゲノム配置は既知のコロナウイルスとの類似性を使用して描かれる(図6)。1aおよび1b遺伝子は、ウイルス複製に必須である、RNAポリメラーゼおよびプロテアーゼをコードする。潜在的偽結節構造は12439位に存在し、−1フレームシフト信号を提供し、1bポリ蛋白質を翻訳する。S,E,MおよびN蛋白質をコードすると予測される遺伝子がゲノムの3’部分に見られる。286個および287個のヌクレオチドの短い非翻訳領域(UTR)はそれぞれ5’および3’末端に存在する。血球凝集素エステラーゼ遺伝子は、群2および群3コロナウイルス中に存在するものであるが、存在していなかった。SおよびE遺伝子間のORF3はおそらくただ1つの補助非構造蛋白質をコードする。
【0085】
1aおよび1abポリ蛋白質はゲノムRNAから翻訳されるが、残りのウイルス蛋白質はサブゲノムmRNA(sg mRNA)から翻訳され、それぞれ、ゲノムの5’部分(5’リーダー配列)由来の共通の5’末端および3’共通末端部を有する。sg mRNAはマイナス鎖合成の間、不連続的転写によって作成された27。不連続的転写はシス作用転写調節配列(TRS)間の塩基対を必要とし、一方はゲノムの5’部分(リーダーTRS)の近くに位置し、他方は各ORF上流(TRS本体)に位置する28。本発明者らが配列決定のために使用したcDNAバンクは、N蛋白質のsg mRNAの複製を含んでおり、あらゆるsg mRNAに対して融合されるリーダー配列を正確に解読する機会を提供する。72個のヌクレオチドのリーダーは5’UTRで同定された。リーダーTRS(5’−UCUCAACUAAAC−3’)はN遺伝子のTRS本体上流と11/12個のヌクレオチド類似性を示した。推定TRSもまたS,ORF3,EおよびM遺伝子の上流で同定された。
【0086】
HCoV−NL63の配列は他のコロナウイルスの完全ゲノムと共に整列された。ヌクレオチド同一性比率が各遺伝子に対して決定された。M遺伝子を除く全ての遺伝子に対して、HCoV−229Eとの同一性比率が最も高かった。HCoV−NL63が群1コロナウイルスの新たな要素であることを確認するために、病原分析が1A,1B,S,MおよびN遺伝子のヌクレオチド配列を使用して行われた。分析された各遺伝子に対して、HCoV−NL63は群1コロナウイルスと共に集団化された。部分群HCoV−NL63/HCoV−229Eのブートストラップ値は1a,1bおよびS遺伝子に対して100であった。しかしながら、MおよびN遺伝子に対して、この、部分クラスタのブートストラップ値は(それぞれ78および41に)減少し、HCoV−229E,HCoV−NL63およびPEDVを含む部分クラスタが明らかになる。病原分析がORF3およびE遺伝子に対して行われなかったが、これは、それぞれ、当該領域が種々のコロナウイルス群間で非常に変化していたから、または当該領域が分析するには小さすぎたからである。Simplotソフトウェア バージョン2.029によるブートスキャン分析は組換えの徴候を検出しなかった(結果は示されていない)。
【0087】
SおよびE遺伝子間のただ1つの非構造蛋白質遺伝子の存在は注目に値する。それはPEDVおよびOC43を除いて、ほとんど全てのコロナウイルスがこの領域において2以上のORFを有するからである30,31。恐らくHCoV−229Eと比較して、S遺伝子の5’部分における537個のヌクレオチドの大きな挿入部分は最も注目に値する。Blast検索は、Genbankに寄託されている任意のコロナウイルス配列または任意の他の配列に対する、スパイク蛋白質のこのさらなる179個のアミノ酸領域の類似性を検出しなかった。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
【表4】
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
【表9】
【0097】
【表10】
【0098】
【表11】
【0099】
【表12】
【0100】
【表13】
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】cDNA−AFLPは、配列の予備知識がなくとも核酸の増幅を可能にする。CPE−陽性および非感染細胞由来の培養上清はcDNA−AFLP法で扱われた。非感染対照試料に存在しない、CPE−陽性培養物由来の増幅生成物は複製され、配列決定された。
【図2】HCoV−NL163に感染したLLC−MK2細胞。パネルAおよびBは非染色細胞であり、一方パネルCおよびDはヘマトキシリンエオシンで染色されている。HCoV−NL163の典型的CPEはパネルAおよびCに示されている。対照非感染LLC−MK細胞はパネルBおよびDに示されている。
【図3】Metaphor(登録商標)アガロースゲル電気泳動によって視覚化されたVD−cDNA−AFLP PCR生成物。選択的増幅段階の間に使用される、16プライマ対結合のうちの1(HinP I−GおよびMse I−A)のPCR生成物。レーン1および2:ウイルス培養物NL163の複製PCR生成物;レーン5および6:LLC−MK2細胞の対照上清およびレーン7および8:陰性PCR対照。レーンM:25bp分子量マーカー(In Vitrogen)。矢印はゲルから切除され、配列決定された新規コロナウイルス断片を示す。
【図4】HCoV−NL163配列の系統発生解析。G1,G2およびG3は群1、群2および群3コロナウイルスクラスタを示す。使用された配列のGenbank受託番号は以下のとおりである。MHV(マウス肝炎ウイルス):AF201929、HCoV−229E:AF304460、PEDV(ブタ伝染性下痢症ウイルス):AF353511、TGEV(伝染性胃腸炎ウイルス):AJ271965、SARS−CoV:AY278554、IBV(鳥類伝染性気管支炎):NC_001451、BCoV(ウシコロナウイルス):NC_003045、FCoV(ネココロナウイルス):Y13921およびX80799、CCoV(イヌコロナウイルス):AB105373およびA22732、PRCoV(ブタ呼吸器コロナウイルス):M94097およびFIPV(ネコ感染性腹膜炎ウイルス):D32044。HCoV−229E(AF304460)と比較したHCoV−163断片の位置。レプリカーゼ1AB遺伝子:15155−15361、16049−16182、16190−16315および18444−18550、スパイク遺伝子:22124−22266、ヌクレオカプシド遺伝子:25667−25882および25887−25957、3’UTR:27052−27123。枝長は配列ごとの置換数を示す。
【図5】コロナウイルスの配置図および表3に記載の163断片の位置。
【図6】HCoV−NL63’の制限地図。ssRNAゲノムの完全27553nt cDNA誘導体。オープンリーディングフレーム(ORF)が番号が付された黒矢印として表されており、これらのORF内の同定された(PFAM)領域が灰色の箱として示されている。
【図7】HCoV NL63および他のヒトコロナウイルスのSimplot分析。HCoV NL63のSARS、HCoV−OC43およびHCoV−229Eに対する比較における差は、スパイク蛋白質コードORFにおける特有の537in−frame挿入によって引き起こされる(この記載の別の場所を参照)。Sigmaplot分析は、Lole, K. S. , R. C. Bollinger, R. S. Paranjape, D. Gadkari, S. S.Kulkarni, N. G. Novak,R. Ingersoll, H. W. Sheppard, and S. C. Ray. 1999. Full-length human immunodeficiency virus type 1 genomes from subtype C-infected seroconverters in India, with evidence of intersubtype recombination. J. Virol. 73: 152-160に記載されている。
【図8】HCoV−NL63スパイクおよびマトリックス蛋白質のための発現構築。HisおよびStrepII標識スパイク融合蛋白質の発現はバクテリア成長培地へのIPTGの添加によって誘導され得る。attB1/B2介在再結合を介して、S遺伝子挿入部分は他の市販の発現ベクタへ転写され、他の宿主における蛋白質の生成を促進する。pGP7Sに関して同一の複製手順を経て、HCoV−NL63 M−遺伝子に対するGateway適合発現ベクタが構築され得る。プラスミドはNおよびC−末端親和性標識マトリックス融合蛋白質のIPTG誘導生成を指示し、完全長融合蛋白質の選択的復元を可能にする。
【図9】再結合部位 NL63−229E。NL63由来配列は下線付の黒色太字であり、229E由来配列は灰色太字である。
【図10】制限地図 cDNA複製NL63/229Eハイブリッド。NL63由来部分は灰色の箱として示され、229E由来領域は線として示されている。2つのゲノム間の接合部は、連続する、2つの黒矢印で印をつけている、1b’とハイブリッド1bORFを示す‘ORF−1bとによって示されている。 第2キメラゲノムは相互組換えによって、HCoV−NL63のヌクレオチド19653をHCoV−OC43のヌクレオチド20682に融合し、ハイブリッドORF1bを再び生成し、ハイブリッド1abレプリカーゼ ポリ蛋白質を生成した。組換えが保存配列AATTATGG内で起こった。
【図11】組換え部位 NL63/OC43ハイブリッド。先と同様にNL63由来領域は下線付きの黒色太字であり、OC43由来配列は灰色太字である。得られたcDNA制限地図は図12に示される。
【図12】制限地図 組換えNL63/OC43ゲノム。NL63由来部分は灰色のボックスで示されており、組換え部位は黒矢印1b’および‘1bの間に示されている。
【図13】HCoV−NL63、HCoV−229E、HCoV−OC43ならびに2つのハイブリッドNL63/229EおよびNL63/OC43由来のORF1bの類似性プロット推定蛋白質配置構造。
【図14】HCoV−NL63誘導体を発現する緑色蛍光蛋白質。機能的同等物NL63/4GEPは、ヒトコドン最適化緑色蛍光蛋白質(EGFP、Stratagene)と共に、E蛋白質(ORF4)のin−frame C末端融合を有している。感染細胞は4−EGFP融合蛋白質の励起後、蛍光を発しているようであった。HCoV−NL63が使用され、ウイルス感染およびポリシストロニックサブゲノムメッセンジャの翻訳の過程を解明した。
【図15】機能的誘導体NL63D2052021011の制限地図。NL63の欠失誘導体はスパイク蛋白質のN末端における大部分の挿入部分を欠いている。ヌクレオチド20520−21011を欠失することによって、特有の領域が除去され、一方、予測分泌シグナル配列は保持される(Nielsen, H. , J. Engelbrecht, S. Brunak, and G. Von Heijne. 1997. Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites. Protein Eng 10: 1-6)。
【図16】さらなる患者試料由来のHCoV−NL63における配列変異。6人の患者試料由来のRT−PCR生成物の両鎖の直接配列決定は、ORF1a領域における多型性の存在を明らかにした。
【図17】HCoV−NL63特異的および一般的ヒトコロナウイルス検出プローブ。コロナウイルスポリメラーゼは複数のサブゲノムRNAを生成する。HCoV−NL63およびSARSの配列決定ライブラリにおいてcDNAクローンをコードするS,E,MおよびNの頻度(Snijder, E. J. , P. J. Bredenbeek, J. C. Dobbe, V. Thiel, J. Ziebuhr, L. L. Poon, Y. Guan, M. Rozanov, W. J. Spaan, and A. E. Gorbalenya. 2003,Unique and conserved features of genome and proteome of SARS-coronavirus, an early split-off from the coronavirus group 2 lineage. J. Mol. Biol. 331: 991-1004)。ノーザンブロットデータは感染細胞中のこれらのサブゲノムRNAの高い存在度を示す。したがってこれらの遺伝子は診断試験に対する魅力的な標的である。ゲノムおよびサブゲノムRNAは同一の3’末端を有するので、N遺伝子を含むプローブはそれら全てに対してハイブリッド形成するであろう。あらゆるヒトコロナウイルスの完全長配列の整列を経て、ORF1b中の保存領域が同定され、ネストされたRT−PCRアッセイを用いてそれらの検出を行った。
【図18】一般的コロナウイルス検出プライマ。
【図19】ヌクレオチド配列 HcoV_NL63。
【図20】HCoV_NL63のORF1a、レプリカーゼ酵素複合体。
【0102】
【図21】HCoV_NL63のORF1abレプリカーゼ ポリ蛋白質。
【図22】スパイク蛋白質(ORF3)は(下記の連続配列の第1行目に示される)16AAのN末端分泌シグナル配列を含む(Nielsen, H. , J. Engelbrecht, S. Brunak, and G. Von Heijne. 1997. Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites. Protein Eng 10: 1-6)。
【図23】ORF−4コロナウイルス_NS4、コロナウイルス非構造蛋白質4。この科は複数の非構造蛋白質4(NS4)配列または小さな膜蛋白質からなる。ORF−5。この科は膜貫通型糖蛋白質である種々のマトリックス蛋白質からなる。M蛋白質またはE1糖蛋白質はウイルス集合に関わる。E1ウイルス膜蛋白質は、ウイルスエンベロープの形成のために要求され、ゴルジ複合体を介して輸送される。マトリックス蛋白質は、(連続配列の第1部分に示されている)N末端分泌シグナル配列を含むと予測される(Nielsen, H. , J. Engelbrecht, S. Brunak, and G. Von Heijne. 1997.Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites. Protein Eng 10: 1-6.)。ORF−6 Pfam 00937、コロナウイルス ヌクレオカプシド蛋白質。ゲノムRNAと複合体を形成する構造蛋白質。
【0103】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図19および/または表3に示される配列を含む単離および/または組換え核酸、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体。
【請求項2】
請求項1記載の核酸に対して少なくとも70%相同である単離および/または組換え核酸。
【請求項3】
請求項1記載の核酸に対して少なくとも95%相同である単離および/または組換え核酸。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸の100個の連続ヌクレオチドの伸張部を含む単離および/または組換え核酸。
【請求項5】
図20,図21,図22,図23または表3に示される配列を含む単離および/または組換え蛋白様分子、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体。
【請求項6】
請求項5記載の蛋白様分子に対して少なくとも70%相同である単離および/または組換え蛋白様分子。
【請求項7】
請求項5記載の蛋白様分子に対して少なくとも95%相同である単離および/または組換え蛋白様分子。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の蛋白様分子の少なくとも30個の連続アミノ酸の伸張部を含む単離および/または組換え蛋白様分子。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の蛋白様分子をコードする核酸。
【請求項10】
請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の核酸配列を含む単離または組換えウイルス、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体。
【請求項11】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の蛋白様分子を含む単離または組換えウイルス、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体。
【請求項12】
HCoV−NL63関連疾患を誘導可能な請求項10または請求項11記載の、単離または組換えウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体。
【請求項13】
請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の核酸を含むベクタ。
【請求項14】
請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の、ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸に特異的にハイブリッド形成可能なプライマおよび/またはプローブ。
【請求項15】
請求項8または9に記載のプライマおよび/またはプローブであって、厳しい条件下で前記核酸にハイブリッド形成可能なプライマおよび/またはプローブ。
【請求項16】
請求項14または15記載のプライマおよび/またはプローブであって、表3,表7,表10および図16〜図18に示される配列を含むプライマおよび/またはプローブ。
【請求項17】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の蛋白様分子に特異的に結合可能な単離結合分子、および/または請求項10〜12のいずれか1項に記載の単離または組換えウイルス。
【請求項18】
請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の、ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸配列を特異的に結合可能な単離結合分子。
【請求項19】
表3に示される核酸配列の少なくとも一部を特異的に結合可能な単離結合分子。
【請求項20】
蛋白様分子である請求項17〜19のいずれか1項に記載の単離結合分子。
【請求項21】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の、ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体を結合可能な分子、あるいは請求項5〜8のいずれか1項に記載の単離および/または組換え蛋白様分子を生成し、
前記ウイルスおよびまたは前記蛋白様分子に対して特異的である蛋白様結合分子を選択することを特徴とする請求項17〜20のいずれか1項に記載の結合分子を生成する方法。
【請求項22】
請求項17〜21のいずれか1項に記載の分子と免疫反応する単離または組換えウイルス。
【請求項23】
試料中の前記ウイルスを特異的に結合可能な分子を検出するための、請求項10〜12のいずれか1項に記載のウイルス、または機能的部分、誘導体および/もしくは類似体の使用。
【請求項24】
請求項10〜12のいずれか1項に記載のウイルスを特異的に結合可能な結合分子を検出するための、請求項5〜8のいずれか1項に記載の単離および/または組換え蛋白様分子、または試料中の前記ウイルスの、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体の使用。
【請求項25】
請求項24記載の使用であって、前記結合分子は前記ウイルスに対する特異的配位子および/または抗体を含むことを特徴とする使用。
【請求項26】
試料中のHCoV−NL63コロナウイルスを検出および/または同定するための、請求項14〜16のいずれか1項に記載のプライマおよび/またはプローブ、請求項17〜20のいずれか1項に記載の結合分子、および/または請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の、核酸または機能的部分、誘導体もしくは類似体の使用。
【請求項27】
請求項26記載の使用であって、表3に示される配列を含むことを特徴とする使用。
【請求項28】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の、ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体を含むワクチン。
【請求項29】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の蛋白様分子を含むワクチン。
【請求項30】
請求項17〜20のいずれか1項に記載の結合分子を含むワクチン。
【請求項31】
請求項17〜20のいずれか1項に記載の結合分子を含む薬剤。
【請求項32】
コロナウイルス属関連疾患に対するワクチンを調製するための、請求項10〜12のいずれか1項に記載の、ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体の使用。
【請求項33】
コロナウイルス属関連疾患に対するワクチンを調製するための、請求項5〜8のいずれか1項に記載の蛋白様分子の使用。
【請求項34】
コロナウイルス属関連疾患に対するワクチンを調製するための、請求項17〜20のいずれか1項に記載の結合分子の使用。
【請求項35】
試料中のコロナウイルスを検出する方法であって、請求項17〜20のいずれか1項に記載の結合分子、または請求項14〜17のいずれか1項に記載の、プライマおよび/またはプローブが使用されることを特徴とする方法。
【請求項36】
コロナウイルスに対して結合分子を検出する方法であって、請求項10〜12のいずれか1項に記載のウイルス、または請求項5〜8のいずれか1項に記載の蛋白様分子が使用されることを特徴とする方法。
【請求項37】
コロナウイルス属関連疾患の診断のための、請求項35または請求項36記載の方法。
【請求項38】
請求項37記載の使用であって、前記コロナウイルス属関連疾患はHCoV−NL63コロナウイルス関連疾患を含むことを特徴とする使用。
【請求項39】
試料中の請求項10〜12のいずれか1項に記載の、ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体を検出する方法であって、請求項14〜16のいずれか1項に記載の、プライマおよび/またはプローブを用いて、前記ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体を、ハイブリッド形成および/または増幅し、ハイブリッド形成したおよび/または増幅した生成物を検出することを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の、ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体、請求項17〜20のいずれか1項に記載の結合分子、および/または請求項14〜16のいずれか1項に記載の、プライマ/プローブを含むことを特徴とする診断キット。
【請求項41】
HCoV−NL63関連疾患に罹患しているまたは罹患している危険のあるヒトを治療する方法であって、請求項28〜31のいずれか1項に記載の、ワクチンまたは薬剤を前記ヒトに投与することを特徴とする方法。
【請求項42】
ヒトがHCoV−NL63関連疾患に罹患しているか否かを判断する方法であって、前記ヒトから試料を得ることと、請求項10〜12のいずれか1項に記載のHCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を検出することを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の単離および/または組換えウイルスまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含む細胞。
【請求項44】
前記細胞は霊長類細胞であることを特徴とする請求項43記載の細胞。
【請求項45】
前記細胞は腎細胞であることを特徴とする請求項43または44記載の細胞。
【請求項46】
前記細胞はサル細胞であることを特徴とする請求項44または請求項45に記載の細胞。
【請求項47】
3CLプロテアーゼをコードすることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の蛋白様分子。
【請求項48】
化合物がウイルスプロテアーゼを少なくとも部分的に阻害可能であるか否かを判断するための方法であって、前記プロテアーゼは請求項47記載のプロテアーゼまたは機能的部分、誘導体および/もしくは類似体であることを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項47記載のウイルスプロテアーゼを少なくとも部分的に阻害可能な化合物。
【請求項50】
前記化合物はアミノ酸配列YNSTLQまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含むことを特徴とする請求項49記載の化合物。
【請求項51】
コロナウイルス感染に罹患しているヒトまたは罹患する危険のあるヒトを治療する薬剤であって、前記コロナウイルスは請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の核酸配列を含み、前記薬剤はアミノ酸配列YNSTLQまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含むことを特徴とする薬剤。
【請求項52】
コロナウイルス感染に罹患しているまたは罹患している危険のあるヒトの治療のための薬剤の調製のための、推定3Clpro切断部位のN末端に位置する任意のヘキサペプチドの使用であって、前記コロナウイルスは請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の配列を含むことを特徴とする使用。
【請求項53】
請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の配列を含む遺伝子運搬担体。
【請求項54】
前記ベクタは請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の核酸に基づくことを特徴とする請求項53記載の遺伝子運搬担体。
【請求項55】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の弱毒化ウイルス。
【請求項56】
図19に示される核酸において、12433〜12439位にある配列を含むリボソーム不安定部位(ribosome slippery site)を含むポリシストロニックメッセンジャRNA。
【請求項57】
少なくとも、図22に示される配列を有するスパイク蛋白質の免疫原性部分を含むことを特徴とする請求項29記載のワクチン。
【請求項58】
前記部分は図19の20472〜21009の配列、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含むことを特徴とする請求項57記載のワクチン。
【請求項59】
図19に示される配列の少なくとも1000個のヌクレオチドと別のコロナウイルスの少なくとも1000個のヌクレオチドとを含むキメラコロナウイルスであって、前記後者の1000個のヌクレオチドは図19に示される配列と5%以上の配列相違がある配列を含むことを特徴とするキメラコロナウイルス。
【請求項1】
図19および/または表3に示される配列を含む単離および/または組換え核酸、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体。
【請求項2】
請求項1記載の核酸に対して少なくとも70%相同である単離および/または組換え核酸。
【請求項3】
請求項1記載の核酸に対して少なくとも95%相同である単離および/または組換え核酸。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の核酸の100個の連続ヌクレオチドの伸張部を含む単離および/または組換え核酸。
【請求項5】
図20,図21,図22,図23または表3に示される配列を含む単離および/または組換え蛋白様分子、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体。
【請求項6】
請求項5記載の蛋白様分子に対して少なくとも70%相同である単離および/または組換え蛋白様分子。
【請求項7】
請求項5記載の蛋白様分子に対して少なくとも95%相同である単離および/または組換え蛋白様分子。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の蛋白様分子の少なくとも30個の連続アミノ酸の伸張部を含む単離および/または組換え蛋白様分子。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の蛋白様分子をコードする核酸。
【請求項10】
請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の核酸配列を含む単離または組換えウイルス、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体。
【請求項11】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の蛋白様分子を含む単離または組換えウイルス、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体。
【請求項12】
HCoV−NL63関連疾患を誘導可能な請求項10または請求項11記載の、単離または組換えウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体。
【請求項13】
請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の核酸を含むベクタ。
【請求項14】
請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の、ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸に特異的にハイブリッド形成可能なプライマおよび/またはプローブ。
【請求項15】
請求項8または9に記載のプライマおよび/またはプローブであって、厳しい条件下で前記核酸にハイブリッド形成可能なプライマおよび/またはプローブ。
【請求項16】
請求項14または15記載のプライマおよび/またはプローブであって、表3,表7,表10および図16〜図18に示される配列を含むプライマおよび/またはプローブ。
【請求項17】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の蛋白様分子に特異的に結合可能な単離結合分子、および/または請求項10〜12のいずれか1項に記載の単離または組換えウイルス。
【請求項18】
請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の、ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体の核酸配列を特異的に結合可能な単離結合分子。
【請求項19】
表3に示される核酸配列の少なくとも一部を特異的に結合可能な単離結合分子。
【請求項20】
蛋白様分子である請求項17〜19のいずれか1項に記載の単離結合分子。
【請求項21】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の、ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体を結合可能な分子、あるいは請求項5〜8のいずれか1項に記載の単離および/または組換え蛋白様分子を生成し、
前記ウイルスおよびまたは前記蛋白様分子に対して特異的である蛋白様結合分子を選択することを特徴とする請求項17〜20のいずれか1項に記載の結合分子を生成する方法。
【請求項22】
請求項17〜21のいずれか1項に記載の分子と免疫反応する単離または組換えウイルス。
【請求項23】
試料中の前記ウイルスを特異的に結合可能な分子を検出するための、請求項10〜12のいずれか1項に記載のウイルス、または機能的部分、誘導体および/もしくは類似体の使用。
【請求項24】
請求項10〜12のいずれか1項に記載のウイルスを特異的に結合可能な結合分子を検出するための、請求項5〜8のいずれか1項に記載の単離および/または組換え蛋白様分子、または試料中の前記ウイルスの、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体の使用。
【請求項25】
請求項24記載の使用であって、前記結合分子は前記ウイルスに対する特異的配位子および/または抗体を含むことを特徴とする使用。
【請求項26】
試料中のHCoV−NL63コロナウイルスを検出および/または同定するための、請求項14〜16のいずれか1項に記載のプライマおよび/またはプローブ、請求項17〜20のいずれか1項に記載の結合分子、および/または請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の、核酸または機能的部分、誘導体もしくは類似体の使用。
【請求項27】
請求項26記載の使用であって、表3に示される配列を含むことを特徴とする使用。
【請求項28】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の、ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体を含むワクチン。
【請求項29】
請求項5〜8のいずれか1項に記載の蛋白様分子を含むワクチン。
【請求項30】
請求項17〜20のいずれか1項に記載の結合分子を含むワクチン。
【請求項31】
請求項17〜20のいずれか1項に記載の結合分子を含む薬剤。
【請求項32】
コロナウイルス属関連疾患に対するワクチンを調製するための、請求項10〜12のいずれか1項に記載の、ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体の使用。
【請求項33】
コロナウイルス属関連疾患に対するワクチンを調製するための、請求項5〜8のいずれか1項に記載の蛋白様分子の使用。
【請求項34】
コロナウイルス属関連疾患に対するワクチンを調製するための、請求項17〜20のいずれか1項に記載の結合分子の使用。
【請求項35】
試料中のコロナウイルスを検出する方法であって、請求項17〜20のいずれか1項に記載の結合分子、または請求項14〜17のいずれか1項に記載の、プライマおよび/またはプローブが使用されることを特徴とする方法。
【請求項36】
コロナウイルスに対して結合分子を検出する方法であって、請求項10〜12のいずれか1項に記載のウイルス、または請求項5〜8のいずれか1項に記載の蛋白様分子が使用されることを特徴とする方法。
【請求項37】
コロナウイルス属関連疾患の診断のための、請求項35または請求項36記載の方法。
【請求項38】
請求項37記載の使用であって、前記コロナウイルス属関連疾患はHCoV−NL63コロナウイルス関連疾患を含むことを特徴とする使用。
【請求項39】
試料中の請求項10〜12のいずれか1項に記載の、ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体を検出する方法であって、請求項14〜16のいずれか1項に記載の、プライマおよび/またはプローブを用いて、前記ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体を、ハイブリッド形成および/または増幅し、ハイブリッド形成したおよび/または増幅した生成物を検出することを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の、ウイルスまたは機能的部分、誘導体もしくは類似体、請求項17〜20のいずれか1項に記載の結合分子、および/または請求項14〜16のいずれか1項に記載の、プライマ/プローブを含むことを特徴とする診断キット。
【請求項41】
HCoV−NL63関連疾患に罹患しているまたは罹患している危険のあるヒトを治療する方法であって、請求項28〜31のいずれか1項に記載の、ワクチンまたは薬剤を前記ヒトに投与することを特徴とする方法。
【請求項42】
ヒトがHCoV−NL63関連疾患に罹患しているか否かを判断する方法であって、前記ヒトから試料を得ることと、請求項10〜12のいずれか1項に記載のHCoV−NL63ウイルスまたはその、機能的部分、誘導体もしくは類似体を検出することを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の単離および/または組換えウイルスまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含む細胞。
【請求項44】
前記細胞は霊長類細胞であることを特徴とする請求項43記載の細胞。
【請求項45】
前記細胞は腎細胞であることを特徴とする請求項43または44記載の細胞。
【請求項46】
前記細胞はサル細胞であることを特徴とする請求項44または請求項45に記載の細胞。
【請求項47】
3CLプロテアーゼをコードすることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の蛋白様分子。
【請求項48】
化合物がウイルスプロテアーゼを少なくとも部分的に阻害可能であるか否かを判断するための方法であって、前記プロテアーゼは請求項47記載のプロテアーゼまたは機能的部分、誘導体および/もしくは類似体であることを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項47記載のウイルスプロテアーゼを少なくとも部分的に阻害可能な化合物。
【請求項50】
前記化合物はアミノ酸配列YNSTLQまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含むことを特徴とする請求項49記載の化合物。
【請求項51】
コロナウイルス感染に罹患しているヒトまたは罹患する危険のあるヒトを治療する薬剤であって、前記コロナウイルスは請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の核酸配列を含み、前記薬剤はアミノ酸配列YNSTLQまたはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含むことを特徴とする薬剤。
【請求項52】
コロナウイルス感染に罹患しているまたは罹患している危険のあるヒトの治療のための薬剤の調製のための、推定3Clpro切断部位のN末端に位置する任意のヘキサペプチドの使用であって、前記コロナウイルスは請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の配列を含むことを特徴とする使用。
【請求項53】
請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の配列を含む遺伝子運搬担体。
【請求項54】
前記ベクタは請求項1〜4または9のいずれか1項に記載の核酸に基づくことを特徴とする請求項53記載の遺伝子運搬担体。
【請求項55】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の弱毒化ウイルス。
【請求項56】
図19に示される核酸において、12433〜12439位にある配列を含むリボソーム不安定部位(ribosome slippery site)を含むポリシストロニックメッセンジャRNA。
【請求項57】
少なくとも、図22に示される配列を有するスパイク蛋白質の免疫原性部分を含むことを特徴とする請求項29記載のワクチン。
【請求項58】
前記部分は図19の20472〜21009の配列、またはその、機能的部分、誘導体および/もしくは類似体を含むことを特徴とする請求項57記載のワクチン。
【請求項59】
図19に示される配列の少なくとも1000個のヌクレオチドと別のコロナウイルスの少なくとも1000個のヌクレオチドとを含むキメラコロナウイルスであって、前記後者の1000個のヌクレオチドは図19に示される配列と5%以上の配列相違がある配列を含むことを特徴とするキメラコロナウイルス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19−1】
【図19−2】
【図19−3】
【図19−4】
【図19−5】
【図19−6】
【図19−7】
【図19−8】
【図19−9】
【図20−1】
【図20−2】
【図21−1】
【図21−2】
【図21−3】
【図21−4】
【図21−5】
【図21−6】
【図21−7】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19−1】
【図19−2】
【図19−3】
【図19−4】
【図19−5】
【図19−6】
【図19−7】
【図19−8】
【図19−9】
【図20−1】
【図20−2】
【図21−1】
【図21−2】
【図21−3】
【図21−4】
【図21−5】
【図21−6】
【図21−7】
【図22】
【図23】
【公表番号】特表2007−502612(P2007−502612A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523800(P2006−523800)
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000582
【国際公開番号】WO2005/017133
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(505430012)
【氏名又は名称原語表記】AMSTERDAM INSTITUTE OF VIRAL GENOMICS B.V.
【住所又は居所原語表記】Meibergdreef 59 Amsterdam The Netherlands
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月18日(2004.8.18)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000582
【国際公開番号】WO2005/017133
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(505430012)
【氏名又は名称原語表記】AMSTERDAM INSTITUTE OF VIRAL GENOMICS B.V.
【住所又は居所原語表記】Meibergdreef 59 Amsterdam The Netherlands
【Fターム(参考)】
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