説明

コロナ帯電装置、これを用いた画像形成装置

【課題】トナーや粉塵の静電的な付着を防止して集塵作用及び放電ムラを抑制し、画像ムラを低減するコロナ帯電装置やこれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】鋸歯状電極11の突起部11bの先端を非導電背物質でコーティングして、鋸歯状電極11に対するトナーや粉塵の静電的な付着を防止する。鋸歯状電極11と、グリッド電極12と、保持部材14と、シールドケース15とを備え、感光体ドラムに臨み、感光体ドラムの長手方向に沿って配置されるコロナ帯電装置1において、鋸歯状電極11の突起部11bの先端をシリコーン樹脂で被覆し、被覆範囲を、鋸歯状電極11の突起部11bの針状部から半径0.1mm以上、1.0mm以下の範囲に、また、コーティング厚は、10〜100μmの範囲になるようにコーティングする構成から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に用いるコロナ帯電装置、これを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置において、感光体ドラム(静電潜像担持体)を回転させつつ、帯電装置により感光体ドラムの表面を均一に帯電させ、光ビームにより感光体ドラムの表面を走査して、静電潜像を感光体ドラム上に形成する。さらに、現像剤(トナー)を感光体ドラム上の静電潜像に付着させ、トナー像を感光体ドラム上に形成する。トナー像を感光体ドラムから記録媒体(用紙)へと転写させて用紙上のトナー像を加熱及び加圧して定着させている。
【0003】
帯電装置としては、主に、コロナ電極及びグリッド電極とを備えるコロナ帯電装置が用いられている。コロナ電極からのコロナ放電によって感光体ドラムの表面を所定の電位及び極性に帯電させ、内部電源からの所定の電圧をグリッド電極に印加し、感光体ドラムに付与される電荷量が調節されて帯電電位が制御されている。コロナ帯電装置は、グリッド電極によって感光体ドラムの表面の帯電電位を正確に制御できる。
【0004】
このコロナ帯電装置におけるコロナ電極として、高電圧が印加されコロナ放電を生じさせ、感光体ドラムを帯電する帯電ワイヤが知られている。
【0005】
シロキサン結合を介して、フッ化アルキル基を含有する化学吸着膜を帯電ワイヤの表面に形成させ、帯電ワイヤの表面におけるトナー離型性を向上し、連続した画像形成動作を行う場合においても高品質な画像を得ることが可能な技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−043730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の帯電装置におけるワイヤ電極は、先鋭状の突起である鋸歯状電極に比べて、構成部品数が増え、耐久性にも劣るというマイナス面が在り、また、オゾンの発生量が多い。さらに、コロナ放電によりワイヤ電極が酸化され、ワイヤ電極に印加される電圧の制御能力が低下し、感光体ドラムの表面の帯電電位が不均一になり、所望の帯電電位に帯電できないという課題がある。
【0008】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、鋸歯状電極を採用し、鋸歯状電極の先端を絶縁性物質でコーティングして、鋸歯状電極の先端(針状部)に対するトナーや粉塵の静電的な付着を防止して鋸歯状電極おける集塵作用及び放電ムラを抑制し、画像ムラを低減するコロナ帯電装置、これを用いた画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために本発明に係るコロナ帯電装置の各構成は、次のとおりである。
【0010】
本発明のコロナ帯電装置は、感光体ドラムの表面を帯電するコロナ帯電装置において、コロナ放電を発生する鋸歯状電極と、前記感光体ドラムの表面の帯電電位を制御するグリッド電極と、を備え、前記鋸歯状電極は、絶縁性材料によって被覆される針状部を備え、
前記針状部の被覆される範囲は、前記針状部の先端部の中心から半径0.1mm以上、1.0mm以下であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のコロナ帯電装置に用いる前記絶縁性材料は、シリコーン樹脂であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のコロナ帯電装置に用いる前記絶縁性材料のコーティング厚は、10μmから100μmであることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の画像形成装置は、レーザ光を偏向走査する光走査装置と、前記感光体ドラムの表面を一様に帯電させる帯電装置と、前記光走査装置による前記レーザ光の照射により静電潜像が形成される前記感光体ドラムと、前記感光体ドラムに形成された前記静電潜像に現像剤を供給することによって現像する現像装置と、前記現像装置により付着された前記現像剤を被記録媒体に転写する転写装置と、を備えた画像形成装置において、前記感光体ドラムを帯電する帯電装置は、前記コロナ帯電装置を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コロナ帯電装置は、感光体ドラムの表面を帯電するコロナ帯電装置において、コロナ放電を発生する鋸歯状電極と、前記感光体ドラムの表面の帯電電位を制御するグリッド電極と、を備え、前記鋸歯状電極は、絶縁性材料によって被覆される針状部を備え、前記針状部の被覆される範囲は、前記針状部の先端部の中心から半径0.1mm以上、1.0mm以下であることで、鋸歯状電極の針状部を絶縁性材料で被覆して静電的にトナーや粉塵が鋸歯状電極の針状部に付着することを防止しでき、さらに、放電ムラを抑制し、画像ムラを低減できるため、画像形成における印刷品位を長期間に亘り正常に保つことができるという優れた効果を奏し得る。
【0015】
本発明によれば、コロナ帯電装置に用いる前記絶縁性材料は、シリコーン樹脂であることで、鋸歯状電極の針状部を絶縁性材料で被覆するための材料に係る費用を抑え、スプレー状にして鋸歯状電極の針状部に付着することができるため、鋸歯状電極の針状部を被覆する工程を少なくすることができるという優れた効果を奏し得る。
【0016】
本発明によれば、コロナ帯電装置に用いる前記絶縁性材料のコーティング厚は、10μmから100μmであることで、トナーや粉塵をより効果的に集塵することができ、長期間に亘り抑制効果を保つことができるという優れた効果を奏し得る。
【0017】
本発明によれば、画像形成装置は、レーザ光を偏向走査する光走査装置と、前記感光体ドラムの表面を一様に帯電させる帯電装置と、前記光走査装置による前記レーザ光の照射により静電潜像が形成される前記感光体ドラムと、前記感光体ドラムに形成された前記静電潜像に現像剤を供給することによって現像する現像装置と、前記現像装置により付着された前記現像剤を被記録媒体に転写する転写装置と、を備えた画像形成装置において、前記感光体ドラムを帯電する帯電装置は、前記コロナ帯電装置を用いることで、鋸歯状電極の針状部を絶縁性材料で被覆して静電的にトナーや粉塵が鋸歯状電極の針状部に付着することを防止しでき、さらに、放電ムラを抑制し、画像ムラを低減できるため、画像形成における印刷品位を長期間に亘り正常に保つことができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るコロナ帯電装置を備える画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態に係るコロナ帯電装置の構成を示す概略図である。
【図3】本実施形態に係るコロナ帯電装置の構成を示す断面図である。
【図4】本実施形態に係るコロナ帯電装置の鋸歯状電極の構成を示す概略図である。
【図5】本実施形態に係るコロナ帯電装置の鋸歯状電極の突起部の針状部に絶縁性物質が塗布された状態を示す説明図である。
【図6】本実施形態に係るコロナ帯電装置を用いて実施した評価結果を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本実施形態に係る画像形成装置100を説明する。図1は、本実施形態に係るコロナ帯電装置1を備えた画像形成装置100の構成を示す概略図である。
【0020】
画像形成装置100は、図1に示すように、通信ネットワークを介して外部から送信された画像データや外部記憶装置(図示せず)から入力された画像データに基づいて記録部材(用紙)に対して多色及び単色の画像を形成する。
【0021】
画像形成装置100は、図1に示すように、画像形成装置本体110と自動原稿処理装置120とを備える。画像形成装置本体110は、コロナ帯電装置1、現像装置2、感光体ドラム3、クリーナユニット4、露光ユニット5、中間転写ベルトユニット6、定着ユニット7、給紙カセット81、排紙トレイ91及び制御部10を備える。
【0022】
画像形成装置本体110の上部には、原稿が載置される透明ガラスからなる原稿載置台92が設けられ、原稿載置台92の上側には、自動原稿処理装置120が取り付けられている。自動原稿処理装置120は、原稿載置台92の上に自動で原稿を搬送する。また、原稿処理装置120は、図1に示す矢印M方向に回転自在に構成され、原稿載置台92の上を開放することにより原稿を手置きで置くことが可能になっている。
【0023】
本実施形態に係る画像形成装置100において、画像データは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像に応じたものである。従って、コロナ帯電装置1、現像装置2、感光体ドラム3及びクリーナユニット4は、各色に応じた4種類の静電潜像を形成するように、それぞれ4個設けられている。そして、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローに設定され、4つの可視像形成ユニットが構成されている。尚、本実施形態では、4色を用いたカラー画像の形成を行っているが、6色を用いるなど複数色のカラー画像形成及びモノクロの画像形成にも適用できる。
【0024】
露光ユニット5は、レーザ光源においてレーザダイオードを使用するレーザスキャニングユニット(LSU)である。露光ユニット5は、入力された画像データに応じて、コロナ帯電装置1によって均一に帯電された感光体ドラム3の外周面を露光することによって、感光体ドラム3の外周面に上記入力画像データに応じた静電潜像を形成するものである。尚、レーザダイオードの代わりにEL(Electro Luminescence)又はLED(Light Emitting Diode)等の発光素子をアレイ状に並べた書込みヘッドを用いる構成であっても良い。
【0025】
現像装置2は、それぞれの感光体ドラム3上に形成された静電潜像をブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のトナーにより顕像化する。
【0026】
クリーナユニット4は、クリーニングブレード(図示せず)を備え、該クリーニングブレードを感光体ドラム3の外周面に沿って当接(又は摺接)するように配置し、現像及び静電潜像の転写後における感光体ドラム3の表面上に残留したトナーを除去及び回収する。
【0027】
感光体ドラム3は、外周面の一部が中間転写ベルト61の表面に接触するように配置されるとともに、ドラムの外周面に沿って電界発生部としてのコロナ帯電装置1、現像装置2及びクリーナユニット4が近接配置されている。それぞれの感光体ドラム3は、制御部10によって制御が行われ回転駆動される。
【0028】
感光体ドラム3は、円筒状のアルミニウムからなる導電性基体(厚さ約1μm)、該導電性基体の表面に設けられる下引き層(厚さ約1μm)、電荷と正孔が発生する電荷発生層(厚さ約0.5μm)、発生した正孔が感光体ドラム3の表面の電子と中和するために移動するための電荷輸送層(厚さ約20μm)を備える有機感光体ドラムである。
【0029】
感光体ドラム3の表面がコロナ帯電装置1によって帯電(例えば、負帯電)された後に、露光ユニット5によって露光されると、電荷発生層に電子と正孔が発生する。この電子は、下引き層からアルミニウム等の材料で構成される導電性基体へ移動し、正孔は、電荷輸送層を移動し、感光体ドラム3の表面の電子と中和して静電潜像を形成する。
【0030】
コロナ帯電装置1は、図2に示すように、感光体ドラム3の外周面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段である。尚、コロナ帯電装置1の詳細は、後述する。
【0031】
中間転写ベルトユニット6は、感光体ドラム3の上方に配置され、中間転写ベルト61、中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルト従動ローラ63及び中間転写ベルトクリーニングユニット65を備える。また、中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルト従動ローラ63、中間転写ローラ64によって、中間転写ベルト61が張架され、回転駆動させられる。
【0032】
中間転写ベルト61は、それぞれの感光体ドラム3に当接するように設けられている。感光体ドラム3に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト61に順次重ねて転写することで中間転写ベルト61上にカラーのトナー像(多色トナー像)を形成する。また、中間転写ベルト61は、厚さ100μm〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されたベルト部材である。中間転写ベルト61の材質は、主にポリイミド、ポリカーボネート、サーモプラスティック・エラストマー・アロイ等が用いられている。
【0033】
中間転写ローラ64によって感光体ドラム3上に形成されたトナー像は中間転写ベルト61に転写される。中間転写ローラ64は、中間転写ローラ取付部(図示せず)に回転可能に支持されており、感光体ドラム3上に形成したトナー像を、中間転写ベルト61上に転写するために転写バイアスを与える。
【0034】
中間転写ローラ64には、トナー像を転写するために高電圧の転写バイアス(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加されている。中間転写ローラ64は、直径8〜10mmの金属(ステンレス等)軸をベースとし、その表面は、例えば、EPDM(Ethylene Propylene Diene Methylene Linkage)や発泡ウレタン等の導電性の弾性材により覆われているローラである。この導電性の弾性材により、中間転写ベルト61に対して均一に高電圧を印加することができる。尚、本実施形態では、転写電極としてローラ形状のものを使用しているが、それ以外にブラシなども用いることができる。
【0035】
このように、感光体ドラム3上で顕像化された各色相の静電潜像は中間転写ベルト61で積層され、入力された画像データに対応して画像が形成される。積層されたトナー像は、中間転写ベルト61の回転によって、転写ローラ20が配置されている位置に搬送される。転写ローラ20は、トナー像を記録部材(用紙)に転写させるための電圧(トナーの帯電極性(−)とは逆極性(+)の高電圧)が印加される。また、中間転写ベルト61と転写ローラ20とは所定のニップ圧で圧接される。転写ローラ20がニップ圧を定常的に得るために、転写ローラ20若しくは中間転写ベルト駆動ローラ62のいずれか一方を硬質材料(金属等)とし、他方を弾性ローラ等の軟質材料(弾性ゴムローラ又は発泡性樹脂ローラ)が用いられる。
【0036】
また、感光体ドラム3との接触により中間転写ベルト61に付着したトナー、若しくは、転写ローラ20によって用紙上に転写が行われず中間転写ベルト61上に残存したトナーは、次工程でトナーの混色を発生させる原因となるために、中間転写ベルトクリーニングユニット65によって除去・回収される。中間転写ベルトクリーニングユニット65には、中間転写ベルト61に当接するクリーニング部材としてクリーニングブレード(図示せず)が備えられており、クリーニングブレードが当接する中間転写ベルト61は、裏側から中間転写ベルト従動ローラ63で支持されている。
【0037】
給紙カセット81は、画像形成に使用する記録媒体(用紙)を蓄積しておくためのトレイであり、画像形成装置本体110の露光ユニット5の下側に設けられている。また、手差し給紙カセット82は、主に手動で不定型サイズの用紙を設置して印刷を行う際に用いられ、画像形成装置本体110の側面に設けられている。また、画像形成装置本体110の上部に設けられている排紙トレイ91は、印字済みの用紙をフェイスダウンで載置するためのトレイである。
【0038】
また、画像形成装置本体110には、給紙カセット及び手差し給紙カセット82の用紙を、転写ローラ20や定着ユニット7を経由させて排紙トレイ91に送るための略垂直形状の用紙搬送路Sが設けられている。
【0039】
また、給紙カセット81又は手差し給紙カセット82から排紙トレイ91までの用紙搬送路Sの近傍には、ピックアップローラ22(22a、22b)、複数の搬送ローラ21(12a〜12d)、レジストローラ13、転写ローラ20、定着ユニット7が配置されている。
【0040】
搬送ローラ21(21a〜21d)は、記録媒体(用紙)の搬送を促進・補助するための小型のローラであり、用紙搬送路Sに沿って複数設けられている。ピックアップローラ22aは、給紙カセット81の端部近傍に備えられ、給紙カセット81から、用紙を1枚毎に用紙搬送路Sに供給する呼び込みローラである。
【0041】
レジストローラ13は、用紙搬送路Sを搬送されている用紙をいったん保持するローラである。制御部10の制御に基づき、レジストローラ13を再回転させることによって、用紙搬送路Sにより搬送された用紙をいったん所定位置に停止させて次の搬送タイミングを計る。用紙の先端の位置と、感光体ドラム3の外周に形成されている画像の先端の位置とが合致するように、用紙を転写ローラ20に搬送する。
【0042】
定着ユニット7は、ヒートローラ71及び加圧ローラ72を備えている。ヒートローラ71及び加圧ローラ72は、用紙を挟んで回転するような構成をとる。また、ヒートローラ71は、図示しない温度検出器からの信号に基づいて制御部10によって所定の定着温度となるように設定される。ヒートローラ71は、加圧ローラ72と共に用紙を熱圧着することにより、用紙に転写された多色トナー像を溶融・混合・圧接し、用紙に対して熱定着させる。また、ヒートローラ71を外部から定着するための外部定着ベルト73が設けられている。
【0043】
次に、用紙搬送経路上の用紙の搬送について詳細に説明する。上述するように、画像形成装置本体110には、用紙を収納する給紙カセット81及び手差し給紙カセット82が設けられている。これらの給紙カセット81及び手差し給紙カセット82からピックアップローラ22a、22bによって用紙が1枚ずつ呼び込まれて、用紙搬送路Sに導かれる。
【0044】
給紙カセット81及び手差し給紙カセット82から搬送される用紙は、用紙搬送路Sの搬送ローラ21aによってレジストローラ13まで搬送される。用紙の先端と感光体ドラム3の外周に形成されている画像の先端の位置とが合致するタイミングで用紙が転写ローラ20に搬送され、用紙上に画像が書き込まれる。その後、用紙は、定着ユニット7を通過することで用紙上の未定着トナーが熱で溶融及び固着され、搬送ローラ21bによって、排紙トレイ91上に排出される。
【0045】
次に、画像形成装置100の動作を制御する制御部10について説明する。制御部10は、画像形成装置100における画像形成における動作を制御する。制御部10は、マイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータが実行する処理の手順を示した制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)と、作業用のワークエリアを提供するRAM(Random Access Memory)と、算出した累積トナー補給時間を一時的に記憶するEEPROM(Electronically Erasable Programmable ROM)不揮発性メモリ、スイッチ(図示せず)からの信号を入力する回路であって入力バッファやA/D変換回路を含む入力回路と、モータやソレノイド又はランプなどを駆動するドライバを含む出力回路等とから構成される。尚、これらの記憶する手段を総称して記憶部(図示せず)と称す。
【0046】
感光体ドラム3や現像剤における長期間に亘る使用による経時的な変化に影響されないように、制御部10は、一定のトナー濃度や画像出力を得るため、様々な処理の条件を調整して動作が行われている。この調整をプロセスコントロールと称する。具体的に述べると、帯電電位、露光量、トナー濃度の補正量、現像バイアス値、転写電圧値及び定着温度等の調整を行うことである。このプロセスコントロールを行うことで、長期間に亘り安定した画像形成を行うことができる。コロナ帯電装置1に印加される電圧も、制御部10の制御に基づいて調整される。
【0047】
次に、本実施形態に係るコロナ帯電装置1について説明する。
【0048】
コロナ帯電装置1は、図2及び図3に示すように鋸歯状電極11と、グリッド電極12と、保持部材14と、シールドケース15とを備える。コロナ帯電装置1は、図示しない感光体ドラム3に臨み、感光体ドラム3の長手方向に沿って配置される。
【0049】
コロナ帯電装置1において、鋸歯状電極11に電圧が印加されることによってコロナ放電が行われ、感光体ドラム3の表面を帯電させるとともに、グリッド電極12に、所定の電圧を印加させることによって、感光体ドラム3の表面の帯電状態を均一化し、感光体ドラム3の表面を所定の電位及び極性に帯電する。
【0050】
以下にコロナ帯電装置1の各構成要素について説明する。
【0051】
鋸歯状電極11は、ステンレス鋼製で薄板状に形成され、一方向に長く延びる平板部11aと、該平板部11aの短手方向の一端面から短手方向に突出するように形成される先鋭状の突起部11bとを有する鋸歯状の放電電極である。尚、突起部11bの先端を針状部11cと称する。
【0052】
複数の突起部11bが、所定の間隔(ピッチ)で配置される。本実施形態では、2〜5mmのピッチを採用する。また、突起部11bの曲率Rを30〜40μmとする。鋸歯状電極11は、板厚0.1mmのステンレス鋼を用いる。
【0053】
鋸歯状電極11には、図示しない電源が接続されている。制御部10の制御に基づき、電源からの印加電圧が鋸歯状電極11に印加され、感光体ドラム3の表面に対してコロナ放電を行う。
【0054】
鋸歯状電極11の製造方法として、例えば、化学研磨、水洗、酸浸漬、純水浸漬等の工程を含む製造方法が挙げられる。化学研磨工程では、板金にマスキング及びエッジングを行うことにより、板金に複数の針形状が形成される。エッジングとして、塩化第2鉄水溶液などのエッジング溶液を板金に噴射する方法を採用する。ここで、板金の材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、銅、鉄が挙げられるが、SUS304、SUS309、SUS316等のステンレス鋼が好ましい。化学研磨工程で得られる針形状が形成された板金を、水洗、酸浸漬及び純水浸漬の工程を経て板金の表面から異物が除去され、鋸歯状電極11が製造される。
【0055】
グリッド電極12は、鋸歯状電極11と感光体ドラム3との間に電気的に絶縁され設けられる板状電極である。グリッド電極12は、感光体ドラム3の表面の帯電電位を均一になるように調整する。
【0056】
本実施形態では、グリッド電極12に板厚0.1mmのステンレス鋼をエッジング加工した部材を採用した。また、グリッド電極12は、幅1mm程度の線部材がメッシュ状に配置された構成をとる。
【0057】
保持部材14は、鋸歯状電極11を保持し、コロナ帯電装置の長手方向に直交する断面が逆T字状の保持部材である。保持部材14は、絶縁性を有する合成樹脂、例えば、ABS樹脂、アクリル等の材料によって形成される。また、保持部材14は、該長手方向の両端部付近の一側面に、ねじ部材16を備える。鋸歯状電極11は、ねじ部材16によって保持部材14にねじ止めされる。
【0058】
シールドケース15は、感光体ドラム3を臨む面が開放されて開口部が形成され、側面と感光体ドラム3を臨む面と対向する底面17とによって形成される内部空間を有する直方体状の容器部材である。シールドケース15の内部空間には、鋸歯状電極11及び保持部材14が収容される。
【0059】
シールドケース15は、ステンレス鋼によって形成される。尚、シールドケース15の内側面の一部又は全面に、絶縁性層又は半導電性層を形成してもよい。
【0060】
次に、コロナ帯電装置1の鋸歯状電極11の突起部11bの先端である針状部11cのコーティング(被覆)について説明する。
【0061】
図4に示すように、鋸歯状電極11の突起部11bの先端である針状部11cを絶縁性材料でコーティング(被覆)する。本実施形態では、絶縁性材料として、シリコーン樹脂を使用するが、フッ素系樹脂、セラミック若しくはエポキシ樹脂等を用いてもよい。
【0062】
図4に示すように、鋸歯状電極11の突起部11bの針状部11cの中心Cから半径0.1mm以上、1.0mm以下の範囲になるように被覆範囲Hを設定する。画像形成装置では、シリコン系ガス(シロキサンガス)が装置の内部で発生する場合がある。このシリコン系ガスは、装置内で重合又は酸化され、凝集により個体粒子となって、鋸歯状電極11の突起部11bの針状部11cに付着し、放電ムラの原因となる。本実施形態では、被覆範囲Hを前述の範囲にすることで、鋸歯状電極11の突起部11bの針状部11cにトナーや粉塵が静電的に付着することを防止でき、鋸歯状電極11からの放電ムラを抑制して画像ムラを防止できる。
【0063】
被覆範囲Hが、突起部11bの針状部11cの中心Cから半径0.1mm未満の場合、集塵の抑制が不十分になり、画像ムラが生じる。一方、被覆範囲Hが、突起部11bの針状部11cの中心Cから半径0.1mmを越える場合、集塵の抑制効果は持続されるが、製造コストの増加となり低価格化の実現には不向きである。
【0064】
また、突起部11bの針状部11cを被覆する際のコーティング厚は、10〜100μmの範囲になるようにする。コーティング厚が10μm以下であると、長期間の使用によってコーティング膜の耐久性が悪化し、十分な集塵抑制効果が得られない。また、コーティング厚が100μmを超える場合、集塵抑制効果は持続するが、製造コストの増加となり低価格化の実現には不向きである。
【0065】
次に、鋸歯状電極11の突起部11bの先端である針状部11cのコーティング(被覆)方法について説明する。
【0066】
前述したように、絶縁性材料としてシリコーン樹脂S1を用い、スプレー(スプレーガン、オリンポス製、PC−308W)を使用し、以下に記載するスプレー条件にて、突起部11bの針状部11cのコーティングを行った。
【0067】
スプレーと突起部11bの針状部11cとの距離(スプレー距離)は、50mmとする。スプレー圧(エア圧)は、0.5Kgf/cm2とする。スプレーガンの開口度は、0.5(相対値)とする。また、スプレーガンの移動速度は、10mm/秒とする。スプレーの回数は、2回とする。尚、スプレー後の乾燥条件は、120℃で10分間の乾燥を行う。
【0068】
上記のスプレー条件にて、鋸歯状電極11の突起部11bの針状部11cの中心Cから半径0.1mm以上、1.0mm以下の範囲に被覆され、コーティング厚が、10〜100μmの範囲になるようになる。尚、スプレー回数を変えることで、所望する膜厚になるよう調整できる。
【0069】
図5に示すように、鋸歯状電極11の突起部11bの針状部11c以外にシリコーン樹脂S1が付着しないように、マスク部材90を用いてスプレーの塗布を行う。
【0070】
このように、鋸歯状電極11の突起部11bの針状部11cをシリコーン樹脂でコーティングすることで、コーティングされた部分にトナーや粉塵等が静電的に付着することを防止でき、鋸歯状電極11に電圧が印加されコロナ放電が起こる際に放電ムラが抑制されるため、感光体ドラム3の表面の帯電電位を均一に帯電できる。従って、画像ムラの発生が防止でき、画像形成における印刷品位を長期間に亘り正常に保つことができる。
【0071】
次に、本実施形態に係るコロナ帯電装置1を備える画像形成装置100を使用して行った実施例を説明する。本実施形態に係る画像形成装置100の一例として、シャープ株式会社製のフルカラー画像形成装置MX2300改良型を使用し、ブラック、シアン、マセンタ及びイエローのトナーを用いて、印字率5%のA4サイズの用紙を横送り、温度25℃、湿度85%の環境条件で、1ヶ月間で30000枚の画像形成動作を行った。
【0072】
図6は、本実施形態に係る画像形成装置100を用いてフルカラーによる画像形成を行った際の実施結果を示した実験データ表図50である。
【0073】
実験データ表図50には、図6に示すように、鋸歯状電極11の突起部11bの針状部11cに塗布する絶縁性材料(コーティング樹脂種52)、針状部11cにおいて絶縁性材料を塗布する範囲(コーティング半径51)、絶縁性材料の塗布量(コーティング厚53)及び中間調画像における横黒スジの有無(横黒スジ画像欠陥54)の項目が記載されている。以下に各評価項目について説明する。
【0074】
[評価方法]
実施例1〜3及び比較例1〜2について、以下の評価を行った。
ブラック、シアン、マセンタ、イエローのトナー及びサイズA4が用紙Pを使用して画像形成動作を行い、鋸歯状電極11の突起部11bの針状部11cに塗布する絶縁性材料(コーティング樹脂種52)、絶縁性材料の塗布する範囲(コーティング半径51)、絶縁性材料の塗布量(コーティング厚53)を変化させて、中間調画像における横黒スジの有無(横黒スジ画像欠陥54)の発生状態を目視で判別した。評価基準は次のとおりである。
◎:横黒スジ画像欠陥の発生がない。
○:横黒スジ画像欠陥が発生し、横黒スジの幅は1mmである。
△:横黒スジ画像欠陥が発生し、横黒スジの幅は3mmである。
×:横黒スジ画像欠陥が発生し、横黒スジの幅は5mmである。
【0075】
<総合評価>
図6から明らかなように、本実施例に用いたコロナ帯電装置1を備える画像形成装置100による画像形成では、鋸歯状電極11の突起部11bの先端(針状部11c)にシリコーン樹脂をコーティングすることで、中間調画像における横黒スジの発生を抑制することができる。また、鋸歯状電極11の突起部11bの針状部11cの中心Cから半径0.1mm以上、1.0mm以下の範囲にコーティングすることで、中間調画像における横黒スジの発生は、効果的に抑制される。さらに、コーティング厚は、10〜100μmの範囲に収まるようにすることで、横黒スジの発生は、効果的に抑制されることが分かる。このため長期に亘って、画像形成における印刷品位を長期間に亘り正常に保つことができる。
【符号の説明】
【0076】
1 コロナ帯電装置
2 現像装置
3 感光体ドラム
4 クリーナユニット
5 露光ユニット
6 中間転写ベルトユニット
7 定着ユニット
10 制御部
11 鋸歯状電極
11a 平板部
11b 突起部
11c 針状部
12 グリッド電極
13 レジストローラ
14 保持部材
15 シールドケース
16 ねじ部材
61 中間転写ベルト
62 中間転写ベルト駆動ローラ
63 中間転写ベルト従動ローラ
65 中間転写ベルトクリーニングユニット
90 マスク部材
100 画像形成装置
120 自動原稿処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体ドラムの表面を帯電するコロナ帯電装置において、
コロナ放電を発生する鋸歯状電極と、
前記感光体ドラムの表面の帯電電位を制御するグリッド電極と、
を備え、
前記鋸歯状電極は、絶縁性材料によって被覆される針状部を備え、
前記針状部の被覆される範囲は、前記針状部の先端部の中心から半径0.1mm以上、1.0mm以下であることを特徴とするコロナ帯電装置。
【請求項2】
前記絶縁性材料は、シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のコロナ帯電装置。
【請求項3】
前記絶縁性材料のコーティング厚は、10μmから100μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のコロナ帯電装置。
【請求項4】
レーザ光を偏向走査する光走査装置と、前記感光体ドラムの表面を一様に帯電させる帯電装置と、前記光走査装置による前記レーザ光の照射により静電潜像が形成される前記感光体ドラムと、前記感光体ドラムに形成された前記静電潜像に現像剤を供給することによって現像する現像装置と、前記現像装置により付着された前記現像剤を被記録媒体に転写する転写装置と、を備えた画像形成装置において、
前記感光体ドラムを帯電する帯電装置は、請求項1から3のいずれか1項に記載のコロナ帯電装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−123321(P2012−123321A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276065(P2010−276065)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】