説明

コンクリート型枠連結具

【課題】コンクリート型枠の周縁に配設された木製桟木11どうし、又は木製桟木11と合成樹脂製桟木13とを、釘を使用せずに隣接状態で結合する、合成樹脂で一体成形するのに好適なコンクリート型枠連結具を提供する。
【解決手段】コンクリート型枠12,14/12A,12Bの周縁に配設された桟木11,13どうしを隣接状態で結合するコ字形のコンクリート型枠連結具であって、連結部2とその両端から同一方向に連設された一対の挟持片部3a,3bとを備え、前記連結部2の内側辺には、前記桟木11,13の上面に対して凹入する凹入部7を形成する少なくとも1つの突出部6が設けられ、この突出部6が前記桟木11の上面に当接したとき、前記凹入部7が、当該桟木11,13の上面と前記連結部2との間の工具差し込み用空間Sを形成する構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート型枠の周縁に配設された桟木どうしを、釘を使用せずに隣接状態で結合するコンクリート型枠連結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のコンクリート型枠連結具としては、特許文献1に記載されるように、金属板製の連結金物が知られている。この金属板製の連結金物は、1枚の適当厚さの金属板をコ字形に切り抜いたもので連結部と、その両端から同一方向に連設された一対の挟持片部とを備えたもので、前記連結部には、この連結金物を型枠から取り外す際にバールや釘抜きを差し込むための工具差し込み用孔が設けられたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3160202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されたような従来の連結具では、この連結具を隣接する2本の桟木に跨るように嵌合させて両桟木を互いに結合したとき、当該桟木の上面に当接する連結部の前記工具差し込み用孔が桟木上面から大きく離れるため、バールや釘抜きで金物を取り外すときに力を金物に伝える効率が悪く、取外し作業が容易でなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできるコンクリート型枠連結具を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係るコンクリート型枠連結具は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、コンクリート型枠(12,14/12A,12B)の周縁に配設された桟木(11,13)どうしを隣接状態で結合するコ字形のコンクリート型枠連結具であって、連結部(2)とその両端から同一方向に連設された一対の挟持片部(3a,3b)とを備え、前記連結部(2)の内側辺には、前記桟木(11,13)の上面に対して凹入する凹入部(7)を形成する少なくとも1つの突出部(6)が設けられ、この突出部(6)が前記桟木(11)の上面に当接したとき、前記凹入部(7)が、当該桟木(11,13)の上面と前記連結部(2)との間の工具差し込み用空間(S)を形成する構成になっている。
【0006】
上記本発明を実施する場合、具体的には請求項2に記載のように、前記突出部(6)は、前記一対の挟持片部(3a,3b)間の中央位置から一側方に偏った一箇所にのみ設け、前記工具差し込み用空間(S)が前記突出部(6)の片側に形成されるように構成することが出来るし、請求項3に記載のように、前記突出部(6a,6b)は、前記一対の挟持片部(3a,3b)間の中央位置に対して左右対称の二箇所に設け、前記工具差し込み用空間(S)が前記両突出部(6a,6b)の中間に形成されるように構成することが出来る。
【発明の効果】
【0007】
上記請求項1に記載の本発明のコンクリート型枠連結具によれば、この連結具で2本の並列隣接する桟木どうしを結合したとき、当該連結具の連結部は、前記突出部において桟木上面に当接するので、当該突出部に隣接する前記連結部の凹入部によって、桟木上面と前記連結部との間に工具差し込み用空間が自動的に形成される。従って、連結具をバールや釘抜きで取り外すとき、前記工具差し込み用空間にバールや釘抜きの操作端部を差し込んで、梃作用により連結具を桟木から抜き取るように操作するとき、バールや釘抜きの操作端部を桟木上面に対面する前記凹入部の内側面に作用させて、バールや釘抜きに加える操作力を連結具の取外し方向に効率良く作用させ、連結具の取外し操作が容易に行える。又、従来のように、連結具に工具差し込み用孔を形成する場合と比較して当該連結具の強度低下を抑えることが出来るので、この連結具を合成樹脂により成形するときに特に効果的である。
【0008】
尚、コンクリート型枠には、桟木を合成樹脂で成形したものがある。この合成樹脂製桟木を備えた特殊コンクリート型枠は、木製桟木を使用した汎用コンクリート型枠と比較して桟木の厚さが大巾に薄いため、この特殊コンクリート型枠の合成樹脂製桟木どうしを本発明に係る連結具で連結しようとした場合、前記突出部に隣接して工具差し込み用空間を形成するのに寸法的に無理があるが、特殊コンクリート型枠の合成樹脂製桟木と汎用コンクリート型枠の木製桟木とを連結する場合、請求項2に記載の構成によれば、1つの突出部と片側の挟持片部との間の凹入部の巾を工具差し込み用空間に利用出来る程度の巾に確保出来るので、特殊コンクリート型枠の合成樹脂製桟木と汎用コンクリート型枠の木製桟木とを連結する連結具としても活用出来る。
【0009】
又、請求項3に記載の構成によれば、汎用コンクリート型枠の木製桟木どうしを連結する場合の、工具差し込み用空間を両挟持片部間の中央位置に形成出来る、使用勝手の良い連結具として活用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は第一実施例を示す図であって、図1Aは、ハンマーでの打込み直前の状態を示す縦断正面図、図1Bは、ハンマーでの打込み完了時の状態を示す縦断正面図、図1Cは、図1Bの縦断側面図である。
【図2】図2は、第二実施例における連結具のハンマーでの打込み直前の状態を示す縦断正面図である。
【図3】図3は、第二実施例における連結具のハンマーでの打込み完了時の状態を示す縦断正面図である。
【図4】図4は、第三実施例における連結具の正面図である。
【図5】図5Aは、図4のX−X線拡大断面図、図5Bは、図4のY−Y線拡大断面図である。
【図6】図6は、第三実施例における連結具の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、1は合成樹脂で一体成形された連結具であって、連結部2と、当該連結部2の両端から同一側へ連設された一対の挟持片部3a,3bとから構成されている。一対の挟持片部3a,3bの内側面には、当該挟持片部3a,3bの先端から一定長さの領域に互いにほぼ平行に形成された仮挟持面部4a,4bと、当該仮挟持面部4a,4bに対し前記連結部2のある側に隣接する位置で前記仮挟持面部4a,4bよりも内側に円弧形に突出する圧接部5a,5bが形成されている。又、連結部2の内側面には、当該連結部2の長さ方向中央位置に対し一方の挟持片部3aに寄った位置に1つの突出部6が形成され、この突出部6と他方の挟持片部3bとの間に1つの凹入部7が形成されている。
【0012】
尚、連結部2と一対の挟持片部3a,3bとの間の入隅部8a,8bは、外側の円弧形の出隅部9a,9bの円弧中心とほぼ同一位置に円弧中心を有する大きな半径の円弧形に形成されている。そして連結部2の外側面2aは、両端の円弧形出隅部9a,9bを段差なくつなぐ大きな半径の円弧形突曲面に形成されると共に、一対の挟持片部3a,3bの外側面は、円弧形出隅部9a,9bと先端とを段差なくつなぐ直線状平坦面(最も大きな半径の円弧形突曲面でも良い)に形成されている。
【0013】
上記構成の連結具1は、型枠板10の周囲に木製桟木11を配設した汎用コンクリート型枠12と、型枠板10の周囲に板厚の薄い合成樹脂製桟木13を配設した特殊コンクリート型枠14とを、連結一体化するために、両コンクリート型枠12,14の互いに並列隣接する木製桟木11と合成樹脂製桟木13とを挟持締結するものである。而して、連結具1の一対の挟持片部3a,3bの仮挟持面部4a,4b間の間隔は、両コンクリート型枠12,14の互いに並列隣接する木製桟木11の板厚と合成樹脂製桟木13の全体の厚さと等しいか又は当該全体の厚さより若干狭くなるように構成されている。勿論、コンクリート型枠12,14の製作精度の関係で、仮挟持面部4a,4b間の間隔Dが並列隣接する2本の桟木11,13の全体の厚さより若干広くなることもある。
【0014】
従って、連結具1によってコンクリート型枠12,14どうしを連結一体化するとき、図1Aに示すように、一対の挟持片部3a,3bの仮挟持面部4a,4bで並列隣接する2本の桟木11,13を挟むように、当該2本の桟木11,13に対して連結具1を嵌合させる。この結果、並列隣接する2本の桟木11,13の内側面と仮挟持面部4a,4bとの間の摩擦力で連結具1が、図1Aに示すように並列隣接する2本の桟木11,13に対して平行な打込み姿勢で保持される。勿論、先に説明したようにコンクリート型枠12,14の製作誤差などで、並列隣接する2本の桟木11,13の内側面と仮挟持面部4a,4bとの間に必要な摩擦力が生じずに、連結具1が桟木11,13の長さ方向に倒れる可能性もあるが、この場合でも、連結具1を手で起こして、桟木11,13の長さ方向に対して直角の打ち込み姿勢に保持させれば良い。
【0015】
何れにしても、ハンマーで連結具1を打込むときは、連結具1を手で把持して桟木11,13の長さ方向に対して直角の打ち込み姿勢に保持させた状態で打込み操作を行うのが望ましい。ハンマーでの打込み操作によって、両挟持片部3a,3bが弾性に抗して開く変形を伴いながら、その圧接部5a,5bが並列隣接する2本の桟木11,13の内側面上に乗り上げると共に、最後に連結部2における突出部6が片側の木製桟木11の上面に当接したところで、図1Bに示すように、連結具1の打ち込み操作が完了する。尚、突出部6は、当該突出部6が合成樹脂製桟木13の側に位置する向きで使用した場合でも、巾広の木製桟木11の上面に当接するように位置させるのが望ましいが、勿論、突出部6が合成樹脂製桟木13の側に位置する向きで使用した場合に、当該突出部6が合成樹脂製桟木13の上面又は両桟木11,13の上面に跨って当接するように構成されていても良い。
【0016】
上記のハンマーによる打ち込み操作の結果、隣り合うコンクリート型枠12,14の並列隣接する2本の桟木11,13は、連結具1の一対の挟持片部3a,3bの弾性復元力をそれぞれの圧接部5a,5bから受けて互いに挟持締結される。このとき、図1B,図1Cに示すように、連結具1の連結部2に設けられた凹入部7と木製桟木11との間には、当該木製桟木11の上面に接する工具差し込み用空間Sが形成されているので、型枠解体時に連結具1を取り外す際には、バールや釘抜きなどの工具15の先端部15aを前記工具差し込み用空間Sに差し込み、当該工具15の梃作用により、前記先端部15aから連結具1の連結部2における凹入部7の内側面に取外し方向の操作力を働かせ、連結具1を桟木11,13から抜き取ることが出来る。
【0017】
尚、図2及び図3に示すように、木製桟木11を備えた汎用コンクリート型枠12A,12Bどうしを連結するための連結具1は、図示のように両挟持片部3a,3b間の間隔が広くなる(連結部2の長さが長くなる)ので、連結部2の内側面には、2つの突出部6a,6bをそれぞれ挟持片部3a,3bに接近させて左右対称に形成し、両突出部6a,6bの間に1つの凹入部7を形成することが出来る。この場合、両突出部6a,6bが互いに隣接する両コンクリート型枠12A,12Bの木製桟木11の上面それぞれに当接し、工具差し込み用空間Sは、両木製桟木11の上面間に跨って形成されることになる。
【0018】
図1に示す連結具1、又は図2及び図3に示す連結具1を実施する場合、図4〜図6に示すように、当該連結具1の両側のコ字形側面1a,1bの内、片側のコ字形側面1aには、両挟持片部3a,3bの圧接部5a,5bの内側の位置において円柱状の突起部16a,16bを突設し、反対側のコ字形側面1bには、同一構造の連結具1を重ねたときに前記突起部16a,16bがそれぞれ嵌合する2つの凹部17a,17bを設けることが出来る。上記構成の連結具1が合成樹脂により一体成形されるときは、当該連結具1の両側のコ字形側面1a,1bに多数の材料削減用凹部18が、当該連結具1の厚さのほぼ中央位置に隔壁部19を残すように形成されるが、この場合には、両挟持片部3a,3bの圧接部5a,5bの内側の位置から先端に至る領域に形成された大きな材料削減用凹部18a,18bの内、片側の材料削減用凹部18aの底面から前記突起部16a,16bを一体成形し、反対側の材料削減用凹部18bの周側面には、この材料削減用凹部18b内に嵌まり込む他方の連結具1における前記突起部16a,16bを位置決めする周方向複数の突起20を一体成形により突設することが出来る。
【0019】
上記図4〜図6に示す構成によれば、連結具1を複数枚積み重ねるとき、各連結具1の突起部16a,16bが同一方向に突出するように積み重ねることにより、上下に隣接する2つの連結具1を、突起部16a,16bと凹部17a,17bとにおいて互いに嵌合させて、横滑りを防止することが出来る。このとき、互いに嵌合する突起部16a,16bと凹部17a,17bとの間に適当な摩擦力が働くように構成すれば、その摩擦力で各連結具1を積み重ね状態に保持させることが出来る。
【0020】
更に、連結具1には、複数枚の連結具1を同一向きで積み重ねたとき、互いに連通する位置に貫通孔を設けて、この貫通孔に紐を通して束ねることが出来るように構成することが出来るが、上記図4〜図6に示す構成を採用する場合は、図示のように、各突起部16a,16bと同心状に、反対側の凹部17a,17b内に開口する紐通し用の貫通孔21を設けることが出来る。
【0021】
尚、両挟持片部3a,3bの内側面に仮挟持面部4a,4bを形成する場合、当該仮挟持面部4a,4bの先端から直角又は鋭角の角を経由して両挟持片部3a,3bの外側面に連なるように形成する必要はなく、当然のことであるが、仮挟持面部4a,4b間への2本の隣接並列する桟木の相対的な嵌合操作を容易にするために、仮挟持面部4a,4bの先端に外広がりに傾斜した斜面又は外広がりの円弧面から成る導入部を形成することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のコンクリート型枠連結具は、コンクリート型枠の周縁に配設された桟木どうしを、釘を使用せずに隣接状態で結合する、合成樹脂で一体成形するのに好適なコンクリート型枠連結具として活用出来る。
【符号の説明】
【0023】
1 連結具
2 連結部
3a,3b 挟持片部
4a,4b 仮挟持面部
5a,5b 圧接部
6,6a,6b 突出部
7 凹入部
8a,8b 入隅部
9a,9b 出隅部
10 型枠板
11 木製桟木
12,12A,12B,14 コンクリート型枠
13 合成樹脂製桟木
15 工具
15a 工具先端部
16a,16b 突起部
17a,17b 凹部
18,18a,18b 材料削減用凹部
19 隔壁部
20 突起
21 紐通し用の貫通孔
S 工具差し込み用空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート型枠の周縁に配設された桟木どうしを隣接状態で結合するコ字形のコンクリート型枠連結具であって、連結部とその両端から同一方向に連設された一対の挟持片部とを備え、前記連結部の内側辺には、前記桟木の上面に対して凹入する凹入部を形成する少なくとも1つの突出部が設けられ、この突出部が前記桟木の上面に当接したとき、前記凹入部が、当該桟木の上面と前記連結部との間の工具差し込み用空間を形成するように構成された、コンクリート型枠連結具。
【請求項2】
前記突出部は、前記一対の挟持片部間の中央位置から一側方に偏った一箇所にのみ設けられ、前記工具差し込み用空間が前記突出部の片側に形成されるように構成された、請求項1に記載のコンクリート型枠連結具。
【請求項3】
前記突出部は、前記一対の挟持片部間の中央位置に対して左右対称の二箇所に設けられ、前記工具差し込み用空間が前記両突出部の中間に形成されるように構成された、請求項1に記載のコンクリート型枠連結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−23878(P2013−23878A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158798(P2011−158798)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000143558)株式会社国元商会 (64)
【Fターム(参考)】