説明

コンクリート壁面緑化構造およびその構築方法

【課題】より短い作業時間でかつ構造的にも安定した状態に構築することのできるコンクリート壁面緑化構造体を提供する。
【解決手段】コンクリート壁1の構築時にコンクリート壁1内に埋設されたセパレータ23の先端に網支持部材42を取り付ける。その網支持部材42を利用して緑化植物Pを保護するための網部材2をコンクリート壁面1aに沿って取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁面緑化構造およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境改善および省エネルギーの観点から、工場や学校などの建物において、屋上緑化と共に、壁面を緑化することが求められており、壁面緑化構造として、いくつかの提案がなされている。例えば、特許文献1には、既存のコンクリート壁面等に沿って緑化植物登攀用助材を配置し、かつコンクリート壁面にアンカーを打ち込んで、そのアンカーを利用して緑化植物を保護するための網部材を壁面に沿って取り付け、植物登攀用助材と網部材との間で、ヘデラ類のように吸着型蔓性植物を登攀させながら育成することで、壁面を緑化する技術が記載されている。登攀用助材としては、ヤシ殻繊維などが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−89420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような、壁面に沿って配置した植物登攀用助材と網部材との間の空間に緑化植物が配置されている壁面緑化構造体は、網部材によって植物を保護できるので、植物が安定して生育するのを期待することができる。しかし、既存の壁面に新たにアンカーを打ち込んで、そこに網部材を取り付けるようにしており、既存の壁に損傷を与えることなくアンカーを打ち込むことのできる場所を慎重に選定する作業が求められる。そのために、アンカーの打ち込み作業に長い作業時間を必要としている。また、アンカーの打ち込み時にコンクリート壁に損傷を生じさせた場合、アンカーの止め付け強度が低下して網部材の取り付けが不安定となる恐れがある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、より短い作業時間でかつ構造的にも安定した状態に構築することのできるコンクリート壁面緑化構造体とその構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるコンクリート壁面緑化構造体は、コンクリート壁の構築時にコンクリート壁内に埋設された全部または一部のセパレータの先端に網支持部材が取り付けてあり、前記網支持部材を利用して緑化植物を保護するための網部材がコンクリート壁面に沿って取り付けてあり、コンクリート壁面と前記網部材との間に緑化植物が配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によるコンクリート壁面緑化構造体では、コンクリート壁に新たにアンカーを打ち込むことなく、コンクリート壁を構築するときにコンクリート壁内に埋設されるセパレータを利用し、その先端に網支持部材を取り付け、該網支持部材を利用して緑化植物を保護するための網部材を取り付ける。そのために、コンクリート壁面緑化構造体の構築作業を大幅に短縮することができる。また、容易に脱落することのない状態で前記網支持部材を取り付けることができる。そのために、前記網部材の取り付け態様はきわめて安定化したものとなる。
【0008】
なお、本発明でのコンクリート壁面緑化構造体におけるコンクリート壁は、新規な建造物におけるコンクリート壁であってもよく、既存の適宜の建造物の壁面に沿って支持型枠を立て込んで追加的に構築したコンクリート壁であってもよい。
【0009】
本発明によるコンクリート壁面緑化構造体において、コンクリート壁面は平坦な面であってもよく、多孔質化した面であってもよい。さらに、コンクリート壁面に凹凸模様が賦形されていてもよい。コンクリート壁表面を多孔質化することあるいは凹凸模様を賦形することで、例えば緑化植物が蔓生植物のような場合に、植物が登攀するのを一層助長することができる。また植物の壁面に対する付着性も安定する。
【0010】
本発明によるコンクリート壁面緑化構造体において、好ましくは、セパレータと網支持部材の接続部近傍には止水処理が施される。止水処理を施すことにより、セパレータと網支持部材の接続部近傍から水がコンクリート壁内に入り込むのを確実に阻止することができ、コンクリート壁の耐久性が低下するのを阻止することができる。止水処理の具体的に手段は任意であるが、パッキン材を埋め込む手段、団子状としたモルタルを埋め込む手段、等を例示できる。
【0011】
本発明によるコンクリート壁面緑化構造体の一形態において、コンクリート壁面の全部または一部に植物の登攀を誘引することのできる材料が設けられる。この態様では、コンクリート壁に沿って緑化植物が生長するのを一層確実に補助することができる。植物の登攀を誘引することのできる材料としては、コンクリート壁面に付着させた、発泡樹脂、砂、火山礫、軽石、人工軽量骨材等の粒子状材料、保水性を有するセラミック材、等を例示することができる。
【0012】
本発明によるコンクリート壁面緑化構造体の一形態において、コンクリート壁の壁面の全部または一部に沿って緑化植物登攀用助材が配置され、緑化植物は前記緑化植物登攀用助材と前記網部材との間に配置される。緑化植物登攀用助材には、植物が登攀しやすい材料の具体例として、ヤシ殻繊維や発泡ポリスチレンシートや綿シートが挙げられる。さらに、緑化植物登攀用助材は、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの発泡シートであってもよく、発泡モルタルや発泡ウレタン樹脂なども例として挙げられる。上記した材料は多孔性であり、それを利用して、緑化植物は助材に張り付いた状態で、迅速に登攀していくことができる。
【0013】
本発明によるコンクリート壁面緑化構造体の一形態において、コンクリート壁の壁面はブラウン系に着色される。この態様では、植物でコンクリート壁面が覆われるまでは、地肌色のコンクリート壁と比較して、周辺の景観と調和した状態を作り出すことができ、コンクリート壁面が植物で覆われた後には、植物の緑とブラウン系色相とにより、色彩の相乗効果を期待することができる。
【0014】
本発明は、さらに、上記のコンクリート壁面緑化構造体の構築方法として、構築しようとするコンクリート壁の少なくとも屋外側となる位置にセパレータを用いて支持型枠を設置する工程、前記支持型枠の内側にコンクリートを打設する工程、打設したコンクリートの養生硬化後に前記支持型枠を除去する工程、形成したコンクリート壁に沿って緑化植物または緑化植物資材を配置する工程、形成したコンクリート壁に埋設された全部または一部の前記セパレータの先端に網支持部材を取り付ける工程、前記網支持部材を利用して緑化植物を保護するための網部材をコンクリート壁面に沿って取り付ける工程、とを少なくとも備えることを特徴とするコンクリート壁面緑化構造体の構築方法を開示する。
【0015】
上記の構築方法では、コンクリート壁を構築するときに支持型枠とともに配置されるセパレータの先端に取り付けた網支持部材を利用して、緑化植物を保護するための網部材をコンクリート壁面に沿って取り付けるようにしており、従来のコンクリート壁面に新たにアンカーを打ち打ち込んで、そこに網部材を取り付ける構築方法と比較して、施工を短縮化することができる。また、網支持部材がコンクリート壁に堅固に固定されたコンクリート壁面緑化構造体が得られる。
【0016】
本発明によるコンクリート壁面緑化構造体の構築方法の一態様において、前記支持型枠の全部または一部として、打設するコンクリートに面する側が凹凸面となっている化粧型枠を用いる。前記化粧型枠は任意の材料で作ることができるが、成形性や取り扱い性の便から発泡樹脂製の化粧型枠であることが望ましい。この態様では、前記化粧型枠が持つ表面凹凸模様をコンクリート壁面に転写することができ、構築されるコンクリート壁面には凹凸模様が賦形される。
【0017】
本発明によるコンクリート壁面緑化構造体の構築方法の一態様において、前記支持型枠または化粧型枠のコンクリート打設面側に植物の登攀を誘引することのできる材料を積層あるいは付着あるいは塗布等の手法により配置しておき、該植物の登攀を誘引することのできる材料をコンクリート壁面に転写する工程をさらに含むようにしてもよい。用いる植物の登攀を誘引することのできる材料としては、発泡樹脂、砂、火山礫、軽石、人工軽量骨材等の粒子状材料、保水性を有するセラミック材、等を例示することができる。また、前記支持型枠または化粧型枠のコンクリート打設面側に染料や顔料を塗布しておき、それをコンクリート壁表面に転写するようにしてもよい。そのような手法の具体例は、例えば、特開平6−92757号公報等に記載されている。
【0018】
本発明によるコンクリート壁面緑化構造体の構築方法の一態様において、前記セパレータの先端部分の近傍に止水処理を施す工程をさらに含む。止水処理を施すことにより、セパレータと網支持部材の接続部近傍から水がコンクリート壁内に入り込むのを確実に阻止することができ、コンクリート壁の耐久性が低下するのを阻止することができる。
【0019】
本発明によるコンクリート壁面緑化構造体の構築方法の一態様において、形成したコンクリート壁面の全部または一部に沿って緑化植物登攀用助材を配置する工程をさらに含む。用いる緑化植物登攀用助材の具体例は、前記コンクリート壁面緑化構造体の説明において記載したとおりである。
【0020】
本発明におけるコンクリート壁面緑化構造およびその構築方法において、緑化植物をコンクリート壁面と網部材との間に配置する態様には特に制限はなく、任意の手法で配置すればよい。コンクリート壁の下端部近傍の土壌にコンクリート壁面に沿って直接植物を植え込み、その植物の生長によってコンクリート壁面の緑化を行うようにしてもよく、コンクリート壁に沿って緑化植物資材を配置し、その緑化植物資材から成長する植物によってコンクリート壁面の緑化を行うようにしてもよい。そのような緑化植物資材をコンクリート壁面の上下方向に多段に配置することもできる。
【0021】
緑化植物資材には、植物を植え込んだポット、あるいはヤシ殻繊維のような植物繊維の集成体に植物が予め植裁されている植裁基材、等が例示できる。使用する植物も任意であるが、ヘデラカナリエンシスに代表されるような登攀性植物は好ましい。また、蔓性植物も好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コンクリート壁に沿った緑化構造体をより短い作業時間でかつ構造的にも安定した状態に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明によるコンクリート壁面緑化構造の一形態を説明する図。
【図2】コンクリート壁のためのコンクリート打ち込み用型枠を説明する図。
【図3】図2に示す打ち込み型枠の要部断面図。
【図4】図1に示すコンクリート壁面緑化構造の要部断面図。
【図5】本発明によるコンクリート壁面緑化構造の他の形態における要部断面図。
【図6】コンクリート壁のためのコンクリート打ち込み用型枠の他の例を説明する図。
【図7】図6に示す打ち込み型枠の要部断面図。
【図8】本発明によるコンクリート壁面緑化構造のさらに他の形態における要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明によるコンクリート壁面緑化構造を実施の形態に基づき説明する。
図1に示す形態において、コンクリート壁面緑化構造10は、学校や工場などの建物のコンクリート壁1の壁面表面に沿うようにして作られる。コンクリート壁1の壁面1aから所定の距離を置いて、壁面に沿うようにして金網等である網部材2が所要面積にわたって取り付けてあり、緑化植物Pはコンクリート壁1の壁面1aと網部材2との間に配置される。この例において、緑化植物Pはコンクリート壁1の下端部近傍に置かれたプランターのような緑化植物資材3に植え込まれた蔓性植物であり、壁面1aに沿うようにして上方および側方に成長している。
【0025】
前記網部材2は、コンクリート壁1を構築するときに用いられた後記するセパレータ23の先端に取り付けた網支持部材42を利用して、コンクリート壁1の壁面1aに沿うようにして、しっかりと取り付けられている。以下、その取り付け態様について説明する。
【0026】
図2は、通常のコンクリート壁を作るときのコンクリート打ち込み用型枠20の一例を示す。このコンクリート打ち込み用型枠20は従来知られたものであってよく、図示の例では、合板等からなる屋内側支持型枠21および屋外側支持型枠22が、セパレータ23によって所定の距離を確保した状態で立てられている。すなわち、図3に屋外側支持型枠22側を断面で示すように、セパレータ23の端部にはピーコン24のような連結材の一端が螺合され、該ピーコン24の他端には短い軸25が螺合される。短い軸25は屋外側支持型枠22を貫通して外側に飛び出ており、そこにフォームタイ26が螺合される。屋内側支持型枠21においても同様な構成となっている。
【0027】
屋内側支持型枠21および屋外側支持型枠22の外側には、縦締鋼管27および横締鋼管28がそれぞれ建て込まれており、締め金具29、29をフォームタイ26、26に差し込み、ねじ30、30で締め付けることによって、屋内側支持型枠21と屋外側支持型枠22のとの間には、セパレータ23の長さに規定される横幅であるコンクリート流し込み用空間31が形成される。なお、図において、32は必要に応じて設けられる配筋である。
【0028】
コンクリート壁1の構築に当たっては、前記コンクリート流し込み用空間31に現場打ちコンクリートCを打設して養生硬化させる。コンクリートCの養生硬化後、締め金具29を外し、縦締鋼管27および横締鋼管28を除去し、さらにフォームタイ26を取り外す。それにより、屋内側支持型枠21および屋外側支持型枠22を取り外すことが可能となり、支持型枠を取り外すことにより、コンクリート壁1が形成される。本発明においては、少なくとも屋外側支持型枠22を取り外した後、前記ピーコン24と短い軸25とを、セパレータ23から分離する。
【0029】
ピーコン24と短い軸25とを分離した後、図4に示すように、形成された空洞部33に止水パッキン40を埋め込むとともに、前記セパレータ23の先端に長ナット41の一端を螺合し、該長ナット41の他端に、所定長さの網支持部材42の一端を螺合する。それにより、網支持部材42はコンクリート壁1内に埋め込まれたセパレータ23の先端にしっかりと固定される。必要な場合には、前記に空洞部33内に、モルタル43のような他の止水材を埋め込む。
【0030】
そのようにして必要本数の網支持部材42を固定した後、緑化植物を保護するための前記した例えば金網等である網部材2を、該網支持部材42の先端に取り付けた適宜の留め金具44を利用して、コンクリート壁1の壁面に沿って取り付ける。なお、前記した網支持部材42の固定は、コンクリート壁1内に埋め込まれたセパレータ23のすべてに対して行うことが必要となる場合もあり、緑化すべき領域や前記網部材2を固定するのに必要となる場所を考慮して、セパレータ23の一部に対してのみ行う場合もある。
【0031】
上記のようにして網部材2を取り付けた後、図1に示すように、緑化植物Pをコンクリート壁1の壁面1aと網部材2との間で成長させることにより、本発明によるコンクリート壁面緑化構造体10が形成される。
【0032】
なお、上記の説明では、前記したピーコン24を除去したことにより形成された空洞部に止水パッキン40とモルタル43のような他の止水材を埋め込むことにより、コンクリート内部への水の浸入を阻止するようにしたが、モルタル43のみで止水処理を行うこともできる。また、上記の説明では、ピーコン24と短い軸25とをセパレータ23から分離した後、別部材である長ナット41と網支持部材42を取り付けたが、ピーコン24の強度等の物性が許す場合には、ピーコン24を取り外すことなくそのまま利用し、短い軸25を除去した後のねじ穴に、網支持部材42を取り付けるようにしてもよい。さらに、寸法等が許容する場合には、ピーコン24を取り外すことなく、かつそこに螺合されている前記短い軸25を、網支持部材42として利用することもできる。その場合でも、セパレータ23と網支持部材として用いられる短い軸25の接続部近傍には適宜の止水処理を施すことは望ましい。
【0033】
また、図示の例では、セパレータ23と短い軸25と接続をピーコン24を用いて行う例を示したが、セパレータ23と短い軸25との接続はこれに限らず、従来のコンクリート打ち込み用型枠の構築において用いられている任意の接続手段を用いることができる。例として、チューブコーンや長ナットなどを用いる接続手段が挙げられる。
【0034】
図5は、本発明によるコンクリート壁面緑化構造体10の他の例を示す、図4に相当する図である。ここでは、コンクリート壁1の壁面1aに沿って、例えばヤシ殻繊維などである緑化植物登攀用助材45が配置されている点で、図1から図4を用いて説明したものと相違する。他の構成は同じであってよく、同じ符号を付している。この緑化植物登攀用助材45は、前記した網支持部材42を利用して、コンクリート壁1の壁面1aに対してしっかりと固定することもできる。
【0035】
この形態のコンクリート壁面緑化構造体10では、緑化植物Pは緑化植物登攀用助材45と網部材2との間に配置され、そこで成長することとなるが、成長時に、緑化植物Pは緑化植物登攀用助材45に張り付いた状態で、迅速に登攀していくことができるので、より安定したコンクリート壁面緑化構造体とすることができる。
【0036】
また、コンクリート壁1の壁面1aを、適宜の手段でブラウン系に着色するようにしてもよい。この態様では、緑化植物Pでコンクリート壁面1aが十分に覆われるまで、地肌色のコンクリート壁の場合と比較して、周辺の景観と調和した状態を作り出すことができる利点がある。また、コンクリート壁面1aが緑化植物Pで覆われた後には、植物の緑とブラウン系色相とにより、色彩の相乗効果を期待することができる。
【0037】
図6から図8は、本発明によるコンクリート壁面緑化構造体10のさらに他の形態を説明している。ここでは、コンクリート壁1を構築するのに、例えば特開平6−92757号公報に記載されるような、発泡樹脂製の化粧型枠50を用いるようにしている。化粧型枠50は、構築するコンクリート壁1の壁面1aに適宜の凹凸模様を賦形するのに用いられるものであり、化粧型枠50の打設コンクリートに面する側には、壁面に形成しようとする凹凸模様と逆の凹凸が形成された凹凸模様面51とされている。図6に示すように、化粧型枠50は凹凸模様面51を内側として、コンクリート打ち込み用型枠10における屋外側支持型枠22の内側に取り付けられる。なお、図6に示すコンクリート打ち込み用型枠10は、前記化粧型枠50を備えることを除き、図2に示したコンクリート打ち込み用型枠10と同じ構成であり、同じ部材には同じ符号を付し、説明は省略する。
【0038】
図7は、前記化粧型枠50を用いた場合での、コンクリート打ち込み後の状態の一部の断面を示す、図3に相当する図である。図示のように、打設したコンクリートの表面には、化粧型枠50の凹凸模様面51の凹凸が賦形される。そして、図8に示すように、支持型枠21,22および化粧型枠50を取り外した後のコンクリート壁1における化粧型枠50を除去した側の壁面1bには、凹凸模様が形成される。
【0039】
図8は、図4に相当する図であり、このコンクリート壁1に対して、先に図4に基づき説明したと同様にして、セパレータ23の先端に長ナット41の一端を螺合し、該長ナット41の他端に、所定長さの網支持部材42の一端を螺合し、さらに、該網支持部材42の先端に網部材2をコンクリート壁1の壁面に沿って取り付ける。網部材2を取り付けた後、図1に示すように、緑化植物Pをコンクリート壁1の壁面1aと網部材2との間で成長させることにより、本発明によるコンクリート壁面緑化構造体10が形成される。
【0040】
この形態のコンクリート壁面緑化構造体10では、コンクリート壁1の壁面1bに凹凸形状が賦形されているために、緑化植物Pはその凹凸面を利用して迅速に登攀していくことができる。そのために、より安定したコンクリート壁面緑化構造体10とすることができる。
【0041】
図示しないが、化粧型枠50を用いる態様の変形例として、化粧型枠50として、その凹凸模様面51に、緑化植物Pの登攀を誘引することのできる材料を積層あるいは付着あるいは塗布等の手法により配置したものを用いる態様が挙げられる。打設コンクリートの養生硬化後に化粧型枠50を取り外すと、凹凸模様面51に配置してあった前記材料は、コンクリート壁1の壁面1b側に転写され、それにより、コンクリート壁面は、緑化植物にとって一層成長しやすい面となっている。また、化粧型枠50の凹凸模様面51に、好ましくはブラウン系色相の染料や顔料を塗布しておき、それをコンクリート壁表面に転写することもできる。より具体的には、例えば、前記した特開平6−92757号公報等に記載されるようなコンクリートの着色方法によって、前記転写方法を行うことができる。
【0042】
また、図示しないが、必要な場合には、凹凸面となったコンクリート壁面に沿って、前記した緑化植物登攀用助材45を貼り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
P…緑化植物、
1…コンクリート壁、
1a、1b…コンクリート壁の壁面、
2…網部材、
3…緑化植物資材、
10…コンクリート壁面緑化構造、
20…コンクリート打ち込み用型枠、
21…屋内側支持型枠、
22…屋外側支持型枠、
23…セパレータ、
31…コンクリート流し込み用空間、
33…空洞部、
40…止水パッキン、
41…長ナット、
45…緑化植物登攀用助材、
50…化粧型枠、
51…化粧型枠の凹凸模様面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート壁面緑化構造体であって、
コンクリート壁の構築時にコンクリート壁内に埋設された全部または一部のセパレータの先端に網支持部材が取り付けてあり、前記網支持部材を利用して緑化植物を保護するための網部材がコンクリート壁面に沿って取り付けてあり、コンクリート壁面と前記網部材との間に緑化植物が配置されていることを特徴とするコンクリート壁面緑化構造体。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート壁面緑化構造体であって、コンクリート壁面には凹凸模様が賦形されていることを特徴とするコンクリート壁面緑化構造体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンクリート壁面緑化構造体であって、セパレータと網支持部材の接続部近傍には止水処理が施されていることを特徴とするコンクリート壁面緑化構造体。
【請求項4】
請求項3に記載のコンクリート壁面緑化構造体であって、前記止水処理はパッキン材の埋め込みによって行われていることを特徴とするコンクリート壁面緑化構造体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のコンクリート壁面緑化構造体であって、コンクリート壁面の全部または一部に植物の登攀を誘引することのできる材料が設けられていることを特徴とするコンクリート壁面緑化構造体。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載のコンクリート壁面緑化構造体であって、コンクリート壁面の全部または一部に沿って緑化植物登攀用助材が配置されており、緑化植物は前記緑化植物登攀用助材と前記網部材との間に配置されていることを特徴とするコンクリート壁面緑化構造体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のコンクリート壁面緑化構造体であって、コンクリート壁面はブラウン系の色に着色されていることを特徴とするコンクリート壁面緑化構造体。
【請求項8】
コンクリート壁面緑化構造体の構築方法であって、
構築しようとするコンクリート壁の少なくとも屋外側となる位置にセパレータを用いて支持型枠を設置する工程、
前記支持型枠の内側にコンクリートを打設する工程、
打設したコンクリートの養生硬化後に前記支持型枠を除去する工程、
形成したコンクリート壁に沿って緑化植物または緑化植物資材を配置する工程、
形成したコンクリート壁に埋設された全部または一部の前記セパレータの先端に網支持部材を取り付ける工程、
前記網支持部材を利用して緑化植物を保護するための網部材をコンクリート壁面に沿って取り付ける工程、
とを少なくとも備えることを特徴とするコンクリート壁面緑化構造体の構築方法。
【請求項9】
請求項8に記載のコンクリート壁面緑化構造体の構築方法であって、前記支持型枠の全部または一部として、打設するコンクリートに面する側が凹凸面となっている化粧型枠を用いることを特徴とするコンクリート壁面緑化構造体の構築方法。
【請求項10】
請求項9に記載のコンクリート壁面緑化構造体の構築方法であって、前記化粧型枠として発泡樹脂製の化粧型枠を用いることを特徴とするコンクリート壁面緑化構造体の構築方法。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか一項に記載のコンクリート壁面緑化構造体の構築方法であって、前記支持型枠または化粧型枠のコンクリート打設面側に植物の登攀を誘引することのできる材料を配置しておき、該植物の登攀を誘引することのできる材料をコンクリート壁面に転写する工程をさらに含むことを特徴とするコンクリート壁面緑化構造体の構築方法。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか一項に記載のコンクリート壁面緑化構造体の構築方法であって、セパレータの先端部分の近傍に止水処理を施す工程をさらに含むことを特徴とするコンクリート壁面緑化構造体の構築方法。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか一項に記載のコンクリート壁面緑化構造体の構築方法であって、形成したコンクリート壁の壁面の全部または一部に緑化植物登攀用助材を配置する工程をさらに含むことを特徴とするコンクリート壁面緑化構造体の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−268764(P2010−268764A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125268(P2009−125268)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フォームタイ
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】