説明

コンクリート構造物の破砕装置

【課題】 クレーンによって設備搭載台を吊り上げてこの設備搭載台の下面に吊支している一対の破砕刃により煙突等の高層のコンクリート構造物を解体する際に、破砕時に発生する衝撃力が上記設備搭載台上に搭載している無線通信部・無線操作制御部等の精密機器に伝達しないようにする。
【解決手段】 設備搭載台1の下面に、一対の破砕刃4B、4Cを備えている破砕部4を連結棒3bを介して上下動可能に吊支すると共に、設備搭載台1と破砕部4との対向面間にコイルバネ3aを圧縮状態で介在させ、上記破砕刃4B、4Cによるコンクリート構造物Aの破砕時に発生する衝撃力をこのコイルバネ3aによって吸収して設備搭載台1側への伝達を防止するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突等の中空搭状のコンクリート構造物や高層建築物のコンクリート壁等のコンクリート構造物を破砕するのに適した破砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から煙突等の高層コンクリート構造物を解体する破砕装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。このコンクリート構造物の破砕装置は、クレーンによって吊り下げられる台上に、エンジンや発電機、油圧ポンプ等の動力供給部や制御盤、無線通信手段等を搭載すると共に破砕状況を監視するテレビジョンカメラ等を設置し、さらに、この台の下面に旋回フレームを水平方向に回動自在に枢着し、この旋回フレームの下面に油圧シリンダによって作動する一対の破砕刃を備えた本体をブラケットを介して吊支してなる構造のものが知られている。
【0003】
そして、この破砕装置をクレーンによって吊り上げ、地上からの無線操縦による遠隔操作によって旋回フレームや破砕刃を作動させると共に、破砕刃によって挟圧、破砕される煙突等のコンクリート構造物の破砕状況をテレビジョンカメラによって撮像して地上側で監視しながら破砕刃の作動を制御し、コンクリート構造物の解体を行っている。
【特許文献1】特公平5−29747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一定厚みを有するコンクリート構造物を上記一対の破砕刃によって該構造物の内外両面を挟むようにして破砕する場合、コンクリート構造物は硬いが脆いため、これらの破砕刃の刃先がコンクリート構造物の内外面にそれぞれ食い込んだ状態からコンクリート構造物を破砕するのに必要な一定量の挟圧力を作用させると、該コンクリート構造物が厚み方向に一気に破壊に至る破砕形態となる。
【0005】
このため、コンクリートが破壊された瞬間に破砕刃の破砕力に対向するコンクリート構造物側の抵抗力、即ち、応力が開放され、破壊された直後に、間隔を存して対向していた破砕刃の刃先間が油圧シリンダの押圧力によって狭められる方向に瞬時に急速に作動し、刃先同士が激突してこれらの破砕刃を上方に突き上げようとする方向に大きな衝撃力が発生する。特に、コンクリート構造物のコンクリート強度が高い場合に、この現象が顕著に現れる。このような破砕刃同士の衝突によって発生する突き上げ力は、これらの破砕刃を支持しているブラケットを介してエンジン等の動力供給部や制御盤、無線通信手段を搭載している台に衝撃的に伝達し、制御盤等の精密機器がその衝撃力によって損傷して、それ以後破砕作業が行えなくなるといった問題点がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、一対の破砕刃によるコンクリート構造物の破砕時において、これらの破砕刃を吊支している設備搭載台上の制御盤や無線操作部等に、破砕時に発生する衝撃力が直接伝達するのを遮断して衝撃力による機器の損傷を防止するようにしたコンクリート構造物の破砕装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明のコンクリート構造物の破砕装置は、請求項1に記載したように、クレーンのブームから吊り下げられ、エンジンや油圧ポンプの駆動部とこれらの駆動部の無線操作制御部等の設備を搭載した設備搭載台の下面に、上記駆動部により作動してコンクリート構造物を挟圧、破砕する一対の破砕刃を備えた破砕部を配設してなるコンクリート構造物の破砕装置において、上記台と破砕部との間に破砕時の衝撃力を吸収する緩衝部を介在、連結させた構造としている。
【0008】
このように構成したコンクリート構造物の破砕装置において、請求項2に係る発明は、設備搭載台の下面に旋回フレームを回動自在に装着し、この旋回フレームと破砕部とを緩衝部を介して連結していることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は上記緩衝部の望ましい構造であって、旋回フレームの下面に破砕部の本体を上下動可能に連結している連結棒と、この連結棒を中心としてその回りに巻装して上記旋回フレームと破砕部本体との対向面間に圧縮状態で介入させているコイルバネとからなることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項4に係る発明は、上記請求項2、請求項3に記載の緩衝部において、旋回フレームと破砕部本体との一側部と他側部とにおける上下対向面に、上下一対の取付金具をそれぞれ枢着し、上側の取付金具に対して下側の取付金具を連結棒によって上下動可能に吊支していると共にこれらの上下に対向する取付金具間にコイルバネを圧縮状態で介在させていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、エンジンや油圧ポンプの駆動部とこれらの駆動部の無線操作制御部等の設備を搭載した設備搭載台の下面に、コンクリート構造物を挟圧、破砕する一対の破砕刃を備えた破砕部を配設し、上記設備搭載台をクレーンのブームから吊り下げて無線通信により駆動部を操作しながら破砕刃により煙突等の高層コンクリート構造物を破砕するように構成した破砕装置において、上記設備搭載台と破砕部との間に破砕時の衝撃力を吸収する緩衝部を介在、連結させているので、一対の破砕刃によって硬くて脆いコンクリート構造物を挟圧、破砕した際に、コンクリート構造物の破壊直後の応力の開放によって破砕刃が瞬時に閉止する方向に作動して互いに衝突し、コンクリート構造物の上端破砕面に反力をとって突き上げられるが、この突き上げによる衝撃力が上記設備搭載台の下面に伝達する前に、設備搭載台と破砕部との間に介在、連結させている緩衝部によって吸収されて設備搭載台に伝達するのを確実に防止することができ、従って、設備搭載台上に設置している制御盤や無線操作制御部等の精密機器が衝撃力による影響を受けることなく、所定の機能を発揮してコンクリート構造物の破砕作業を円滑に行うことができる。
【0012】
さらに、請求項2に係る発明によれば、設備搭載台の下面に旋回フレームを回動自在に装着し、この旋回フレームと破砕部とを緩衝部を介して連結しているので、旋回フレームによって一対の破砕刃による挟持方向の向きをコンクリート構造物の破砕すべき部分に応じて簡単且つ正確に変更させながら能率よく破砕作業を行うことができると共に、旋回フレームを旋回させても、緩衝部がこの旋回フレームと破砕部間に介在、連結しているので、破砕時に発生する上記衝撃力を該衝撃部によって常に確実に吸収して設備搭載台に伝達するのを防止することができる。
【0013】
また、請求項3に係る発明によれば、上記緩衝部を、旋回フレームの下面に破砕部の本体を上下動可能に連結している連結棒と、この連結棒の回りに巻装して上記旋回フレームと破砕部本体との対向面間に圧縮状態で介入させているコイルバネとから構成しているので、一対の破砕刃を備えている破砕部本体を旋回フレームの下面に連結棒を介して該下面から下方に一定間隔を存した位置に安定した状態で吊支することができ、クレーンのブームや旋回フレームを操作してコンクリート構造物に対する破砕刃の挟着位置を容易に設定し得ると共に、破砕時に生じる上記衝撃力をコイルバネの弾性収縮によって簡単且つ確実に吸収させることができる。
【0014】
その上、請求項4に係る発明によれば、旋回フレームと破砕部本体との対向面両側部に上下一対の取付金具を枢着し、上側の取付金具に対して下側の取付金具を上記連結棒によって上下動可能に吊支していると共にこれらの上下に対向する取付金具間にコイルバネを圧縮状態で介在させてなる緩衝部の構造としているので、上下一対の取付金具間に連結棒とコイルバネとを配設してなる緩衝部を旋回フレームと破砕部本体との対向面における一側部間と他側部間とに配設しているから、これらの一対の緩衝部によって破砕部本体が旋回フレームの下面に対して前後左右に不測に揺動するのを確実に防止して常に安定した吊支状態を保持することができると共に、破砕時における破砕刃の破砕位置を円滑に設定することができてコンクリート構造物の解体作業を能率よく行うことができる。
【0015】
さらにまた、この緩衝部を従来の吊り上げ式のコンクリート構造物破砕装置に組み込んで破砕時の緩衝機能を有する破砕装置に簡単に改良することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1はコンクリート構造物Aの破砕装置の正面図であって、この破砕装置は、クレーンCのブームBから吊り下げられ、破砕部操作用等の各種設備を搭載している設備搭載台1と、この設備搭載台1の下面に装着された旋回フレーム2と、該旋回フレーム2に緩衝部3を介して吊支された破砕部4とからなり、この破砕部4によってコンクリート構造物Aを挟圧、破砕するように構成している。
【0017】
詳しくは、上記設備搭載台1上には、エンジン10、油圧ポンプ11、油圧モータ12、発電機13、蓄電器14、無線通信部・無線操作制御部15、アンテナ16等の設備が搭載されていると共に、水槽17と、この水槽17内の水を配管(図示せず)を通じて破砕部4側に配設した水噴射ノズル(図示せず)に供給する水ポンプ18とを設置してあり、さらに、この設備搭載台1上に吊り治具19を取付けて該吊り治具18の上端に上記クレーンCのフックcによって吊り下げるワイヤ20を装着している。
【0018】
旋回フレーム2はその上面中央部に立設、固着している回転中心軸5を上記設備搭載台1の中央部に回転自在に挿通、支持させていると共に、上記油圧モータ12によって回転させられるピニオンと、上記回転中心軸5を中心として旋回フレーム2内に固定されている大径歯車とからなる噛合歯車機構(図示せず)を介して設備搭載台1の下面下で正逆方向に回動可能に構成されていると共に、その外周面一側部にアーム部材6を突設し、このアーム部材6の先端に上記破砕部4による破砕状況を監視するテレビジョンカメラ7を取付けている。
【0019】
また、破砕部4は、縦長長方形の垂直な板又は枠からなる破砕部本体4Aの下端両側部にコンクリート構造物Aを挟圧、破砕する左右一対の破砕刃4B、4Cの長さ方向の中間部を軸8、8によって回動自在に枢着していると共に、これらの破砕刃4B、4Cの上端部間を油圧シリンダ9によって連結して該油圧シリンダ9のロッドを伸縮させることにより、上記軸8、8を中心としてこれらの破砕刃4B、4Cの下端部対向面に突設している刃先部4b、4cを接近、離間する方向に作動させるように構成している。
【0020】
なお、これらの破砕刃4B、4Cの刃先部4b、4cは、下端と該下端から上方に小間隔を存した下端部対向面とに突設していると共に一方の破砕刃4Bにおける上記枢軸8の下方近傍部に鉄筋切断刃4b' を固着してあり、この鉄筋切断刃4b' と破砕部本体4Aの下端面一側部に固着している鉄筋切断刃4c' とによってコンクリート構造物Aの鉄筋を切断するように構成している。また、これらの破砕刃4B、4Cのいずれか一方には、図示していないが破砕すべきコンクリート構造物Aの被破砕部に向かって水を噴射する上記水噴射ノズルが装着されている。
【0021】
さらに、上記旋回フレーム2の下面と破砕部本体4Aの上面との一側部間と他側部間とに上記緩衝部3、3を介在させ、これらの緩衝部3、3の上下端を旋回フレーム2と破砕部本体4Aとの対向面における両側部にそれぞれ連結して、上記一対の破砕刃4B、4Cによってコンクリート構造物Aを破砕した際に生じる衝撃力をこの緩衝部3、3によって吸収して旋回フレーム2側に直接、伝達しないようにしている。
【0022】
これらの緩衝部3の具体的な構造は、図2に示すように上下一対の取付金具3c、3dと、これらの取付金具3c、3d間を連結して上側取付金具3cに対して下側取付金具3dを上下方向に移動可能に吊支している連結棒3bと、この連結棒3bの回りに隙間を存して巻装し、且つ上記取付金具3c、3dの対向面間に圧縮状態で介在させているコイルバネ3aとから構成されている。なお、図中、3gは上下取付金具3c、3dの対向面外周部にその上下端部を固着している可撓性の保護カバーである。
【0023】
上記上側の取付金具3cは、上端中央部に取付孔3c1 を穿設していると共に両側部に一定長さの脚片部3c2 、3c2 を下方に向かって突設した正面下向きコ字状に形成されていると共に、これらの脚片部3c2 、3c2 の下端面間に、中央部に上記連結棒3bの上端部を上下動可能に挿通させた挿通孔3c3 を設けている連結板片3c4 を固着してなり、この上側取付金具3cをその取付孔3c1 によって上記旋回フレーム2の下面に下方に向かって突設しているブラケット2aに枢着、支持させていると共に、連結板片3c4 の上記挿通孔3c3 に挿通している連結棒3bの上端螺子部にナット体3eを螺合して、このナット体3eの下面を連結板片3c4 の上面に受止させている。
【0024】
同様に、上記下側の取付金具3dは、下端中央部に取付孔3d1 を穿設していると共に両側部に一定長さの脚片部3d2 、3d2 を上方に向かって突設した正面上向きコ字状に形成されていると共に、これらの脚片部3d2 、3d2 の上端面間に、中央部に上記連結棒3bの下端部を上下動可能に挿通させた挿通孔3d3 を設けている連結板片3d4 を固着してなり、この下側取付金具3dをその取付孔3d1 によって上記破砕部本体4Aの上面に上方に向かって突設しているブラケット4aに枢着、支持させていると共に、連結板片3d4 の上記挿通孔3d3 に挿通している連結棒3bの下端螺子部にナット体3fを螺合してこのナット体3fの上面を連結板片3d4 の下面に係止させている。
【0025】
そして、これらの上下取付金具3c、3dの連結板片3c4 、3d4 の対向面間にコイルバネ3aを圧縮状態で配設して該コイルバネ3aの上下端面を連結板片3c4 、3d4 の対向面に圧着させ、常態においては、上下ナット体3e、3fを連結板片3c4 、3d4 の上下面にそれぞれ係止させて上下取付金具3c、3dが最大限まで離間した状態に保持している。このように構成した緩衝部3、3を一対、左右に配して一方の緩衝部3を上記旋回フレーム2と破砕部本体4Aとの上下対向面における一側部間に介在させてその上下取付金具3c、3dを一側部のブラケット2a、4aに連結し、他方の緩衝部3を上記旋回フレーム2と破砕部本体4Aとの上下対向面における他側部間に介在させてその上下取付金具3c、3dを他側部のブラケット2a、4aに連結し、これらの緩衝部3、3を介して上記旋回フレーム2の下面に破砕部本体4Aを吊支させている。
【0026】
また、旋回フレーム2上に搭載している上記油圧ポンプ11を配管(図示せず)を介して左右一対の上記破砕刃4B、4Cを開閉方向に作動させる油圧シリンダ9に連結、連通させている。さらに、発電機13は無線通信部・無線操作制御部15やテレビジョンカメラ7等に電力を供給する。なお、緩衝部3における連結棒3bはその上下いずれか一方の端部を上下取付金具3c、3dのいずれか一方に上下動自在に支持させ、他方を固定した構造としておいてもよい。
【0027】
このように構成したコンクリート構造物の破砕装置は、作業現場において、図1に示すようにクレーンCの下端フックcに上記吊り治具19の上端四隅部に連繋しているワイヤ20を引っ掛けて高層のコンクリート構造物Aにおける解体すべき箇所まで吊り上げられる。この際、緩衝部3における連結棒3bの上下端部に螺合しているナット体3e、3fが上下取付金具3c、3dの連結板片3c4 、3d4 に係止して破砕部4を旋回フレーム2から下方の所定位置に吊支した状態に保持する。この状態で地上から無線操作してアンテナ16を介してエンジン10を駆動し、油圧ポンプ11を始動させると共に発電機13を駆動する。
【0028】
そして、破砕部4の一対の破砕刃4B、4Cが解体すべき位置に達すると、監視カメラ12を通じて送られている破砕部4の映像を作業員が地上において確認しながら遠隔操作により、旋回フレーム2を破砕すべきコンクリート構造物Aの位置や形状に応じて適宜に回動させると共に破砕刃4B、4C間を開放させた状態で吊り下ろすことによって該破砕刃4B、4Cを図1の実線で示すように、コンクリート構造物Aの上端部における破砕すべき部分を介して対向させた状態にする。この際、旋回フレーム2から左右一対の緩衝部3、3を介して上記破砕部4が吊支されているので、旋回フレーム2を水平方向に回動させると、これらの一対の緩衝部3、3を介して破砕不4が旋回フレーム2と一体的に該旋回フレーム2の回動度に応じて簡単且つ正確に回動させることができ、一対の破砕刃4B、4Cをコンクリート構造物Aの破砕すべき部分に円滑に位置させることができる。
【0029】
この状態にして破砕刃4B、4Cの上端部間を連結している油圧シリンダ9を遠隔操作によって伸長させると、破砕刃4B、4Cの下端部が閉止する方向に接近してその刃先部4b、4cでコンクリート構造物Aの破砕すべき部分を挟み込み、さらに、これらの刃先部4b、4cが破砕すべき部分に食い込んで亀裂を生じさせながら枢軸6、6を支点として互いに接近する方向に回動して該コンクリート構造物Aの破砕すべき部分を破壊させる。そして、破砕刃4B、4Cによるコンクリート構造物Aの破砕時に、設備搭載台1上の水槽17から一方の破砕刃4Bに装着されている水噴射ノズル(図示せず)に給水して該ノズルから破砕部に向かって水を噴射させることにより、破砕時の粉塵が飛散するのを防止する。
【0030】
こうして、破砕部4を吊り下ろしながら破砕刃4B、4Cを開閉させることによってコンクリート構造物Aを下端に向かって解体していくものであるが、コンクリート構造物は硬いが脆いため、解体時においては、これらの破砕刃4B、4Cの刃先部4b、4cがコンクリート構造物の内外面にそれぞれ食い込んだ状態からコンクリート構造物Aを挟圧した場合、刃先部4b、4c同士が互いに衝合する前にコンクリート構造物Aが破壊されることになる。
【0031】
この破壊が生じると、油圧シリンダ9によってこれらの破砕刃4B、4Cを一定の挟圧力でもって互いに接近する方向に作動させているにもかかわらず、該挟圧力に対向するコンクリート構造物A側の抵抗力、即ち、応力が瞬時に消滅、開放され、そのため、破壊直後に小間隔を存して対向していた破砕刃4B、4Cの刃先部4b、4cが、これらの刃先部4b、4c間の間隔部が油圧シリンダ9の上記圧力によって狭められる方向に瞬時に且つ急速に作動して刃先部同士が図1に仮想線で示すように激突し、破砕されたコンクリート構造物Aの上端破砕面に反力をとって破砕部4が破壊跡の上方空間部に向かって突き上げられる。
【0032】
この突き上げによる衝撃力が破砕部4の上端ブラケット4aの両側部にその下端部を連結している緩衝部3、3に伝達され、これらの緩衝部3、3の下側取付金具3dが、この下側取付金具3dと旋回フレーム2の下面両側部に取付けている上側取付金具3c間に圧入したコイルバネ3aを圧縮させながら上動し、このコイルバネ3aの圧縮によって衝撃力を吸収して上記設備搭載台1側に伝達するのを防止するものである。従って、設備搭載台1上に設置している無線通信部・無線操作制御部15等が上記衝撃力による影響を受けることなく、所定の機能を発揮してコンクリート構造物の破砕作業を長時間に亘って円滑に行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】コンクリート構造物の破砕装置の正面図。
【図2】緩衝部の一部を断面した拡大正面図。
【符号の説明】
【0034】
A コンクリート構造物
C クレーン
1 設備搭載台
2 旋回フレーム
3 緩衝部
3a コイルバネ
3b 連結棒
3c、3d 上下取付金具
4 破砕部
4A 破砕部本体
4B、4C 破砕刃
9 油圧シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンのブームから吊り下げられ、エンジンや油圧ポンプの駆動部とこれらの駆動部の無線操作制御部等の設備を搭載した設備搭載台の下面に、上記駆動部により作動してコンクリート構造物を挟圧、破砕する一対の破砕刃を備えた破砕部を配設してなるコンクリート構造物の破砕装置において、上記設備搭載台と破砕部との間に破砕時の衝撃力を吸収する緩衝部を介在、連結させていることを特徴とするコンクリート構造物の破砕装置。
【請求項2】
設備搭載台の下面に旋回フレームを回動自在に装着し、この旋回フレームと破砕部とを緩衝部を介して連結させていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物の破砕装置。
【請求項3】
緩衝部は、旋回フレームの下面に破砕部の本体を上下動可能に連結している連結棒と、この連結棒に巻装して上記旋回フレームと破砕部本体との対向面間に圧縮状態で介入させているコイルバネとからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリート構造物の破砕装置。
【請求項4】
旋回フレームと破砕部本体との一側部と他側部とにおける上下対向面に、上下一対の取付金具をそれぞれ枢着し、上側の取付金具に対して下側の取付金具を連結棒によって上下動可能に吊支していると共にこれらの上下に対向する取付金具間にコイルバネを圧縮状態で介在させていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のコンクリート構造物の破砕装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−170035(P2007−170035A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368948(P2005−368948)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(504331495)株式会社技建 (3)
【Fターム(参考)】